説明

味質の改善された酒類およびビール風味飲料、およびその製造方法

【課題】 芳醇さや風味等の香味、ボディ感(コク味、濃厚さ)、及びキレのバランスに優れ、かつ保存中の劣化臭が改善された酒類およびビール風味飲料、またはそれらの製造方法の提供。
【解決手段】 酒類およびビール風味飲料の製造に際して、希少糖を含有する副原料を添加することを特徴とする、酒類およびビール風味飲料の製造方法。製造される酒類およびビール風味飲料は、その酒類またはビール風味飲料に特有の香味(芳醇さ)を維持または改善し、その香味(芳醇さ)とボディ感(コク味、濃厚さ)とキレとの総合テイストに優れた、好ましくはさらに、保存中の劣化臭が低減または回避された、酒類およびビール風味飲料である。希少糖を含有する副原料は、希少糖含有異性化糖、あるいは希少糖である。
希少糖含有異性化糖は、D-グルコース、D-フラクトース、または異性化糖のうち1種、あるいは2種以上を0.005mol/l以上のアルカリにより異性化することで得られる、D-グルコースおよびD-フラクトース以外の糖の含有率が60質量%未満であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酒類およびビール風味飲料の製造に際して、副原料として希少糖含有異性化糖あるいは希少糖を添加することにより製造された、香味・ボディ感バランスに優れ、保存中の劣化臭が改善された酒類およびビール風味飲料、またはそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酒類およびビール風味飲料は、非常に嗜好性の高い飲料であることから、消費者ニーズにできる限り細きめ細かく対応するために、消費者の生活スタイルに合わせた様々な商品が上市されている。一方、メタボリックシンドロームに象徴される生活習慣病に対する認識の高まりから、その予防や改善に寄与する食品への関心はますます高まってきており、このような背景の中、酒類およびビール風味飲料においても、カロリーや糖分の摂取を抑える、いわゆる「低カロリー」、「糖質オフ」、「糖質ゼロ」といわれる商品が多く市販されている。
【0003】
しかし、低カロリーや低糖質の酒類およびビール風味飲料を得る手段としては、製造原料中の糖質のほとんどを資化性糖質に変えるといった方法が一般的であり、その結果、飲料中のエキス成分は極めて低くなり、風味やボディ感にかけ、味質のバランスに欠けた、物足りなく、「まずい」といわれる商品となるものがほとんどであった。
【0004】
このような欠点を改善するために、酒類およびビール風味飲料にコク味やボディ感を付与し、味質を改善する方法として種々の方法が開示されている。例えば、特許文献1、特許文献2には、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、エリスリトール、ソルビトール、マルチトール、キシリトールなどのノンカロリー、低カロリー素材を添加して、風味やボディ感のある低カロリーの酒類、醸造酒の製造方法が開示されており、特許文献3には、ビール等の酒類にコク味やボディ感を付与する方法として、イソマルトオリゴ糖を添加する方法や、仕込み工程でα-グルコシダーゼを添加して発酵性糖質を非発酵性糖質であるイソマルトオリゴ糖に変換させる方法が開示されている。また、特許文献4には、低カロリービール風味アルコール飲料の風味およびボディ感改善方法として、水溶性食物繊維と非発酵性糖質を併用する方法が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1や、特許文献2に記載の高甘味度甘味料や糖アルコールの添加では、ボディ感が得られにくく、また、ボディ感を得られるような添加量では甘味が強調され過ぎるという問題点があり、特許文献3に記載のイソマルトオリゴ糖を添加する方法では、イソマルトオリゴ糖が、栄養表示基準制度では4kcal/gの糖質として位置づけられているため、低カロリーや低糖質という点で問題があった。
【0006】
更に、特許文献4に開示された水溶性食物繊維と非発酵性糖質を併用する呈味質改善方法は、二種類の物質を併用することが大前提となっており、配合する手間や経済面を考えると、決して好ましいものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−127839号公報
【特許文献2】特開2003−47453号公報
【特許文献3】特開平5−68529号公報
【特許文献4】特開2009−142233号公報
【特許文献5】特開平6−125776号公報
【特許文献6】特開2002−17392号公報
【特許文献7】国際特許出願PCT/JP2010/5536、未公開
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Journal of Fermentation and Bioengineering、第85巻、539〜41頁(1998年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、従来の酒類およびビール風味飲料、特に低カロリーや低糖質の機能性を追求した酒類およびビール風味飲料と比較して、芳醇さや風味等の香味、ボディ感(コク味、濃厚さ)、及びキレのバランスに優れ、かつ保存中の劣化臭が改善された酒類およびビール風味飲料、またはそれらの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、酒類およびビール風味飲料、そのなかでも特に、低カロリーや低糖質を謳った酒類およびビール風味飲料の、芳醇さや風味等の香味、ボディ感(コク味、濃厚さ)、及びキレのバランスを改善する方法を鋭意検討する中で、酒類およびビール風味飲料の製造工程において、副原料として、希少糖含有異性化糖あるいは希少糖を添加することにより、ボディ感だけでなく、芳醇さやキレ、好ましい甘味や香味の付与も行うことができることを見出し、さらに、本方法によれば、酒類およびアルコール風味飲料の長期保存中に発生する劣化臭が低減または回避され香りが改善されるという、意外ともいうべき二重の効果を奏することを見出し、本発明を完成するに至った。保存中の劣化臭が低減または回避された。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(9)に記載の酒類およびビール風味飲料の製造方法を要旨とする。
(1)酒類およびビール風味飲料の製造に際して、希少糖を含有する副原料を添加することを特徴とする、酒類およびビール風味飲料の製造方法。
(2)製造される酒類およびビール風味飲料が、その酒類またはビール風味飲料に特有の香味(芳醇さ)を維持または改善し、その香味(芳醇さ)とボディ感(コク味、濃厚さ)とキレとの総合テイストに優れた酒類およびビール風味飲料である、上記の(1)に記載の酒類およびビール風味飲料の製造方法。
(3)希少糖を含有する副原料が、希少糖含有異性化糖、あるいは希少糖であることを特徴とする、上記の(1)または(2)に記載の酒類およびビール風味飲料の製造方法。
(4)希少糖含有異性化糖が、D-グルコース、D-フラクトース、または異性化糖のうち1種、あるいは2種以上を0.005mol/l以上のアルカリにより異性化することで得られる、D-グルコースおよびD-フラクトース以外の糖の含有率が60質量%未満であることを特徴とする、上記の(3)に記載の酒類およびビール風味飲料の製造方法。
(5)希少糖、あるいは含有する希少糖が、少なくともD-プシコースおよび/またはD-アロースであることを特徴とする、上記の(1)〜(4)のいずれかに記載の酒類およびビール風味飲料の製造方法。
(6)得られる酒類およびビール風味飲料に含まれる希少糖が、0.1〜20質量%であることを特徴とする上記の(1)〜(5)のいずれかに記載の酒類およびビール風味飲料の製造方法。
(7)酒類が、ビール類である上記の(1)〜(6)のいずれかに記載の酒類およびビール風味飲料の製造方法。
(8)酒類あるいはビール風味飲料が、低カロリービール風味アルコール飲料あるいは低カロリービール風味飲料である上記の(1)〜(7)のいずれかに記載の酒類およびビール風味飲料の製造方法。
(9)製造される酒類およびビール風味飲料が、その酒類またはビール風味飲料に特有の香味(芳醇さ)を維持または改善し、その香味(芳醇さ)とボディ感(コク味、濃厚さ)とキレとの総合テイストに優れ、さらに、保存中の劣化臭が低減または回避された酒類およびビール風味飲料である、上記の(1)〜(8)のいずれかに記載の酒類およびビール風味飲料の製造方法。
【0012】
また、本発明は、以下(10)および(11)の酒類およびビール風味飲料を要旨とする。
(10)上記の(1)〜(8)のいずれかに記載の製造方法によって製造された、その酒類またはビール風味飲料に特有の香味(芳醇さ)を維持または改善し、その香味(芳醇さ)とボディ感(コク味、濃厚さ)とキレとの総合テイストに優れた酒類およびビール風味飲料。
(11)上記の(9)に記載の製造方法によって製造された、その酒類またはビール風味飲料に特有の香味(芳醇さ)を維持または改善し、その香味(芳醇さ)とボディ感(コク味、濃厚さ)とキレとの総合テイストに優れ、さらに、保存中の劣化臭が低減または回避された酒類およびビール風味飲料。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、希少糖を含有する副原料を用いることを特徴とする、酒類およびビール風味飲料、とりわけ低カロリーや低糖質の機能性を持たせたために香味やボディ感が薄い酒類およびビール風味飲料に、良好な香味(芳醇さや風味〕、ボディ感(コク味、濃厚さ)、キレのバランスを付与し、かつ長期保存中に発生する劣化臭が低減または回避され香りが改善される方法を提供することが出来る。本発明によれば、生活習慣病の発病リスク低減と味の面での満足感という、二つの効果が得られるだけにとどまらず、製品設計面でも、経時劣化が少ない商品が得られるというメリットを享受できる。
稀少糖、特にD−プシコースおよび/またはD−アロースは、ダイエット甘味料をはじめとして多くの用途(例えば肥満などの場合のカロリー摂取制限、糖尿病などの疾患により血糖値上昇抑制等)に使用され、「低カロリー甘味料」としての特徴を持つが、アスパルテーム、ステビア、アセスルファムK、スクラロースなどの高甘味度の甘味料のようなコク感(ボディ感、味の厚みともいう)の不足が問題となることはなく、本発明の酒類およびビール風味飲料では、その酒類またはビール風味飲料に特有の香味(芳醇さ)を維持し、その香味(芳醇さ)とボディ感(コク味、濃厚さ)とキレとの総合テイストに優れるという利点がある。さらに希少糖の添加は、ボディ感を付与することができるだけでなく、成分が変質することにより、好ましくない異臭(いわゆる日光臭)など保存中の劣化臭がマスキングされその劣化臭が低減または回避され香りが改善されるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明における酒類およびビール風味飲料について説明する。
「酒類」には、日本酒、ワイン、果実酒、ビール、発泡酒、ビール風発酵飲料(麦芽を使用しない、いわゆる第3のビール)等の発酵工程を経たアルコール飲料、焼酎、スピリッツ、ブランデー、ウイスキー等の発酵工程を経た後に蒸留工程を経た蒸留酒、チューハイ、ハイボール、サワー、梅酒等のリキュール類、カクテル飲料、料理酒やみりん等の醸造調味料等が包含される。
「ビール風味飲料」は、「ノンアルコールビール」、「ノンアルコール・ビールテイスト飲料」、「ビールテイスト飲料」とも呼ばれ、一般的にはアルコール度数が1%未満のビール風味の麦芽飲料のことをいう。ビール風味飲料の製法としては、発酵の工程を経た後、生成したアルコールを除去して得る方法、発酵時にアルコールが生成しないようにする方法、清涼飲料水にビール風味を付与する方法等があり、いずれの方法によって得られたものでも構わない。また、たとえばキリンビールの「キリンフリー」のように、「炭酸飲料」との表示がなされた製品も包含する。
【0015】
本発明における希少糖を含有する副原料について説明する。まず、副原料について、お酒の定義や分類・税率などを定めている酒税法には、副原料という言葉はなく、わかりやすくするために便宜上、使用している用語である。副原料は、酒類およびビール風味飲料の種類によって異なる。例えば、日本酒でいう副原料とは米、麹、水以外の原材料のことをいう。これには醸造用アルコールの他、吟醸や本醸造など特定名称酒以外の普通酒では醸造用糖類、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、グルタミン酸ナトリウムなどが認められている。
果実酒とは、果汁から作られた醸造酒であり、一般に原料の果実の酸味や風味を持つのが特色である。日本の酒税法による酒類の分類では、果実を原料として発酵させたものと規定されている。果実酒として知られているものには、具体的にはワイン(原料果実:ブドウ)、シードル(原料果実:リンゴ)、リモンチェッロ(原料果実:レモン)などがある。こうして作られた果実酒を蒸留してアルコール度数を上げたものをブランデーと呼ぶ。果汁に含まれる糖分(ブドウ糖、果糖、ショ糖)の約半量が酵母等により発酵しエタノールとなるが、その結果生成したエタノールの濃度 (アルコール度数)が低いと二次的に酢酸発酵を起こしやすいため、発酵前段階に糖分を補うか、発酵後に中性スピリッツなどを添加しアルコール度数を調整する必要がある。ワインの補糖はワインのアルコール度を高めるために行われる。ワインの補糖に使われる糖は、ほとんどの場合ショ糖である。いまひとつ、補糖の原料としてぶどうの濃縮果汁が用いられることもある。
しかし、通常は、果実を中性スピリッツのような酒に浸漬して作った混成酒のことを、果実酒と呼ぶ。例えば、梅酒やかりん酒などが、こちらのタイプの果実酒である。
また、日本のビールで使用可能な副原料(麦芽、ホップ、水を除いた原料)は、酒税法で麦・米・コーン・こうりゃん・ばれいしょ・スターチ・糖類・着色料(カラメル)に定められている。
発泡酒とは、日本の酒税法で定義されている酒類の一つである。日本の酒税法では、ビールと発泡酒は区別して定義されており、例として麦芽・ホップ・水を原料として発酵させても、「定められた副原料以外を用いる場合」はビールと認められず発泡酒に分類される。そのため、スパイスやハーブを用いたビールや、果実や果汁を用いるフルーツビールも発泡酒と区分される。第三のビールとは、ビール、発泡酒とは別の原料、製法で作られた、ビール風味の発泡アルコール飲料の名称である。ビール、発泡酒に続くことから、マスメディアによって作られた用語である。または第3の生ともいわれる。本発明においては、上記の様な酒類およびビール風味飲料の副原料として希少糖を含有する副原料を用いることを特徴としている。
【0016】
本発明における「希少糖」は、国際希少糖学会の定義によれば、「自然界に希にしか存在しない糖」であり、自然界における存在量が少ない単糖である。また、大量生産が難しいため、希少糖には未知の性質が多く潜んでいると考えられている。
六炭糖(ヘキソース)には、アルドースの場合、L-アロース、L-グロース、L-グルコース、L-ガラクトース、L-アルトロース、L-イドース、L-マンノース、L-タロース、D-タロース、D-マンノース、D-イドース、D-アルトロース、D-ガラクトース、D-グルコース、D-グロース、D-アロースの16種類、ケトースの場合はL-プシコース、L-ソルボース、L-フルクトース、L-タガトース、D-タガトース、D-フルクトース、D-ソルボース、D-プシコースの8種類が存在し、そのうち自然界に多量に存在する単糖は、D-グルコース、D-フルクトース、D-ガラクトース、D-マンノース、D-リボース、D-キシロース、L-アラビノースの7種類であり、それ以外の単糖は全て希少糖である。本発明における「希少糖」は、これらだけに限られず、その誘導体も包含し、その糖アルコール、ウロン酸、アミノ糖等が例示される。
【0017】
上記希少糖のうち、D-プシコースは、現在大量生産が可能な希少糖である。D-プシコースを得る方法は、現在のところ、フラクトースを酵素(エピメラーゼ)処理して得られる製法が一般的であるが、本発明におけるD-プシコースは、それだけに限られず、該酵素を生産する微生物を利用した製法により得られたものでも良いし、天然物から抽出されたもの、もしくは天然物中に含まれるものをそのまま用いても良いし、化学的な処理方法により異性化されたものでも良い。また、酵素を利用してD-プシコースを精製する方法は、例えば、特許文献5等に開示されている。
【0018】
一方、D-アロースも、大量生産が試みられている希少糖のひとつである。D-アロースを得る方法としては、L-ラムノース・イソメラーゼを用いてD-プシコースから合成する方法(非特許文献1)や、D-プシコース含有溶液にD-キシロース・イソメラーゼを作用させて得る方法(特許文献6等)が開示されているが、本発明におけるD-アロースは、それだけに限られず、化学的な処理方法により異性化されたものなど、いずれの方法によって得られたものでも構わない。
【0019】
本発明における希少糖含有異性化糖は、上述した希少糖のいずれかを含有する異性化糖であり、異性化糖とは、ブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)を主成分とする液状糖である。希少糖を得る方法は既にいくつか例示したが、現在のところ、大量安価に入手できる方法はほとんどなく、発明者らは鋭意研究を行った結果、異性化糖をアルカリ異性化するという、比較的単純な反応方法により、希少糖を約10質量%含有する希少糖含有異性化糖を安価に得ることに成功した(特許文献7)。本発明を完成させる過程において検討された希少糖含有異性化糖の糖組成のうち、同定されている希少糖は、D-プシコース0.5〜17質量%、D-アロース0.2〜10質量%であるほか、未同定の希少糖も存在しており、本発明にいうところの希少糖は、これら未同定のものも包含する。また、希少糖含有異性化糖は、希少糖ではないが、D-マンノースを0.5〜40質量%含むことがわかっている。
【0020】
一方、D-グルコースおよびD-フラクトースの濃度が40質量%程度に減少するまで異性化反応を進めると、褐変化が著しく、産業上の利用は難しいため、D-グルコースおよびD-フラクトース以外の糖の含有率は、60質量%未満であることが望ましい。
本発明における希少糖異性化糖は、上記方法により得られたものに限られず、その他の方法によって得られたものでも構わないし、そこに含有される希少糖が、現在のところ同定されているD-プシコースとD-アロースにのみ限られたものでもない。
【0021】
一般に、上記の副原料は、例えば、ビールの場合、ビールの味をまろやかにしたり、すっきりさせたりするので、副原料を使用しないビールとは、また違った味の違いを楽しむことができる。また、副原料は、ビールの香味、発酵度などのコントロールや泡立ちの調整にも役立っている。日本では古くからビールの原料に米が使われてきた。米はスターチ含有量が多く、スターチ補充原料として使われている。コーンはとうもろこしを粉砕したもの、スターチはコーン由来のスターチで、共に味をすっきりさせる役割があり、香味を調整する役割も果たしている。糖類の代表には、コーンシロップが挙げられる。これはコーン、スターチを酵素により液化・糖化させ、ろ過や脱色、濃縮などの工程を経て製造されたもので、糖組成を変更することにより、最終製品の香味、発酵度などをコントロールすることが可能である。
本発明において、副原料として希少糖を含有する副原料を用いることにより、その酒類またはビール風味飲料に特有の香味(芳醇さ)を維持または改善し、その香味(芳醇さ)とボディ感(コク味、濃厚さ)とキレとの総合テイストに優れた酒類およびビール風味飲料とすることができる。さらに、成分が変質することにより、好ましくない異臭(いわゆる日光臭)など保存中の劣化臭がマスキングされその劣化臭を低減または回避され香りを改善することができる。
味質は甘味、うま味、塩味、酸味、苦味から構成されるところ、希少糖を構成する各単糖は味質に個性があり、同じ味質のものはない。本発明の味質等が改善された酒類等は、製品中に少なくともD-アロースおよび/またはD-プシコースを適量含んでいることが好ましいが、添加された希少糖成分が酒類またはビール風味飲料の味質改善(香味やボディ感の付与)に明らかに良い影響を及ぼすものであると考えられる。品質に悪影響を及ぼさない範囲内で、D-アロースおよび/またはD-プシコース以外の希少糖や糖質、高甘味度甘味料等を含ませることにより、より良い味質等をもつ酒類等を得ることができる。希少糖含有異性化糖を使用する場合、アルカリ異性化による反応条件等の違いにより、生成する希少糖の種類や量が異なることから、反応条件の違いを利用した風味、味の改良を行うことが可能である。また、酒類またはビール風味飲料の製造方法において、希少糖を含有する副原料の添加時期は、仕込み工程、発酵工程および発酵終了後の工程のいずれにおいてでも良い。
【0022】
希少糖含有異性化糖を、酒類の発酵工程を経る過程で添加して酒類を製造する場合、異性化糖中の大部分(ブドウ糖と果糖)およびD-マンノースなどは酵母に資化され、希少糖部分は酵母に資化されないまま酒類中に残存する。このことから、発酵酒の場合はこの希少糖成分が酒類の味質改善(香味やボディ感の付与)に明らかに良い影響を及ぼすものであると考えられ、さらに、本発明により得られた酒類等を長期保存した場合、通常であれば発生する異味・異臭(劣化臭)が改善(マスキング、あるいは低減)されているという事実から、この効果についても、希少糖部分が大きく寄与していると考えられる。また、発酵しない場合においても、希少糖含有異性化糖は種々の甘味質や物性の違う糖を含んでいることから、これらが同様に良い影響を及ぼしているものと考えられる。
【0023】
本発明の味質の改善された酒類およびビール風味飲料の製造方法において、その味質を改善させるために必要な希少糖を含有する副原料の使用量は、所期の効果を得ることができるのであれば特に制限はないが、酒類およびビール風味飲料の種類に応じて好ましい濃度が存在する。例えば、ビールもしくはビール風味飲料など、元々甘味が殆どないものの場合、D-プシコースおよびD-アロースが合計で、最終製品に対して、0.1〜5.0質量%、好ましくは0.5〜2.0質量%となるように設定して添加することにより、効果的にその味質および劣化臭の改善効果を得ることができる。最終製品中における希少糖の含有量が0.1質量%未満の場合、味質改善効果が不十分なため、0.5質量%以上が好ましい。また、逆に5.0質量%以上では、みりんやリキュール類のような元来甘味の強い酒類等に対しては問題ないが、それ以外の酒類等には強い甘味を与えて全体的な味のバランスを損ねてしまうことになるし、経済的観点からも、2.0質量%までに留めるほうが良い。
みりんやリキュール類のような元来甘味の強い酒類等の場合は、40質量%程度の希少糖が含まれることになっても構わないが、経済的観点、および、通常の甘い酒類などに元来含まれている糖濃度を勘案し、0.5〜20質量%程度の希少糖を最終製品中に含ませるようにすることが好ましい。
【0024】
また、本発明の効果は、いずれの種類の酒類やビール風味飲料でも得られるが、低カロリーや低糖質の酒類やビール風味飲料の範疇にある、いわゆる香味やボディ感に欠けた酒類等において特に顕著である。
【0025】
このようにして得られる酒類およびビール風味飲料は、ボディ感と風味のバランスに優れ、しかも長期保存中に発生する劣化臭が改善され、さらに、低カロリーや低糖質の酒類およびビール風味飲料に利用された場合には、健康と嗜好性が両立されるという、産業上利用上、非常に高い価値を有するものとなる。
【0026】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。また、実施例中の%は、特に記載のない限り、すべて質量%である。
【実施例1】
【0027】
希少糖含有異性化糖を使用した発泡酒
〔醸造手順および得られた発泡酒の糖組成〕
希少糖含有異性化糖を使用して、麦芽使用量の少ない発泡酒を醸造した。その仕込み時の配合を表1に示す。
本実施例では、本来使用すべき麦芽の代わりに、麦芽エキスを使用したが、これは麦芽を糖化・煮沸、濃縮した麦汁に相当する。なお、麦芽エキス約14gは麦芽10gに相当する。
また、使用した希少糖含有異性化糖は、市販の異性化糖(果糖42%)を0.6NのNaOH溶液を用いてアルカリ異性化することにより得られたものであり、D-プシコースおよびD-アロースを約10%含んでいる。これを、最終的に得られる発酵液中のD-プシコースおよびD-アロースの含量が合計で0.1%、0.5%、および1.0%になるように配合した。
【0028】
【表1】

【0029】
上記成分を混合し、80℃で30分間の煮沸を行ったあと、ナイロンクロスと珪藻土によりろ過を行い、ろ液に酵母を加えて、10日間、20℃で酵母による発酵を行った。その後、発酵液1Lあたり6gの砂糖を加え、さらに14日間、20℃で発酵を行い、発泡酒を得た。得られた発泡酒について、定法に従い、エタノール除去、脱塩を実施したのち、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、糖組成の分析を実施した。その結果を表2に示す。
【0030】
【表2】

【0031】
以上の結果から、D-プシコースとD-アロースの残糖量は、ほぼ設計した通りの含量であった。一方で、実施例1−(1)、1−(2)、および1−(3)におけるその他糖質の含量は、コントロールと比較して多く、難資化性の糖質量は、D-アロースとD-プシコース以外にも含まれていることが推測された。このことから、希少糖含有異性化糖には、D-アロース、D-プシコース以外の希少糖が含まれていることが示唆され、複数の希少糖による味質の改善効果が期待できた。
【0032】
〔醸造直後の官能評価〕
醸造後の発泡酒のボディ感(コク味、濃厚さ)、風味(芳醇さ)、キレについて、6名のパネラーによる評価を行った。
パネラーに対して、コク味は、良い味の「口残り」で、濃厚さは口に含んだときに広がる「ふくらみ」であると説明された。芳醇さは、口に含んだ際に感じる、酒類またはビール風味飲料に特有の香味であると説明され、キレは、すっきりとした後味であると説明された。
評価は5段階で行い、それぞれの項目の味質を著しく損なっている場合を1、やや損なっている場合を2、特に感じない場合を3、やや改善している場合を4、著しく改善している場合を5とした。結果を下表(表3)に示す。
【0033】
【表3】

【0034】
比較例1(コントロール)では、全ての評価項目において点数が低く、味質が悪かった。一方、希少糖含有異性化糖を加えた実施例1−(1)、1−(2)、および1−(3)では、全ての項目において、比較例1より点数が高かった。
実施例1−(1)では、味質改善効果が明らかにみられるものの、その効果はさほど大きくなく、実施例1−(2)および1−(3)では、味質改善効果が著しく上昇していた。しかし、実施例1−(3)では、もはやそれ以上の劇的な味質改善効果はみられなかった。
すなわち、D-プシコースとD-アロースの残糖合計量が0.5%以上になった場合に、最も味質が改善され、香味(芳醇さ)とボディ感(コク味、濃厚さ)とキレとの総合テイストに優れることが明らかになった。
【0035】
〔虐待試験後の官能評価〕
さらに、表1に示した処方で製造した発泡酒を、37℃で72時間静置し、虐待試験を実施した。虐待試験前後のサンプルの味質(コク味、濃厚さ、キレ)と香りについて、6名のパネラーにより比較評価した。
パネラーに対して、香りは、保存試験による劣化臭による香りの悪化についての評価であると説明された。劣化臭が酒類またはビール風味飲料に特有の芳醇さに与える影響が評価される。
評価は5段階で行い、各々虐待試験前の発泡酒と比較して、それぞれの項目の味質が著しく劣化したものを1、やや劣化が認められたものを2、劣化しなかったものを3、むしろ味質が改善されたものを4、味質が著しく改善されたものを5とした。その結果を下表(表4)に示す。
【0036】
【表4】

【0037】
比較例1(コントロール)では、全ての項目の点数が低い一方、実施例1−(1)、1−(2)、および1−(3)では、味質、香りともに劣化が抑えられる(全ての項目の点数が高い)傾向が見られた。これらの保存性改善効果についても、実施例1−(1)では、やや改善効果が見られる程度であったが、実施例1−(2)では著しい改善効果が見られ、実施例1−(3)では、実施例1−(2)と同様の改善効果(保存中の劣化臭の低減または回避され香りが改善される効果)は見られるものの、もはやそれ以上の劇的な改善効果は見られなかった。
【実施例2】
【0038】
D-プシコースを使用した発泡酒
〔醸造手順および得られた発泡酒の糖組成〕
D-プシコースを使用して、麦芽使用量の少ない発泡酒を醸造した。その仕込み時の配合を表5に示す。
本実施例では、麦芽の代わりに、麦芽エキスを使用しているが、これは麦芽を糖化・煮沸、濃縮した麦汁に相当する。なお、麦芽エキス約14gは、麦芽10gに相当する。
D-プシコースは、市販品(純度98%以上)を使用し、発酵後のD-プシコース含量が最終的に0.1%、0.5%および1.0%になるように添加したものを設計した。
【0039】
【表5】

【0040】
上記成分を混合し、80℃で30分間の煮沸を行ったあと、ナイロンクロスと珪藻土によりろ過を行い、ろ液に酵母を加えて、10日間、20℃で酵母による発酵を行った。その後、発酵液1Lあたり6gの砂糖を加え、さらに14日間、20℃で発酵を行い、発泡酒を得た。得られた発泡酒について、定法に従い、エタノール除去、脱塩を実施したのち、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、糖組成の分析を実施した。その結果を表6に示す。
【0041】
【表6】

【0042】
以上の結果から、ほぼ設計通りのD-プシコースの残糖が見られた。従って、D-プシコースは、ほぼ全量が資化されず、残留することが明らかになった。
【0043】
〔醸造直後の官能評価〕
得られた発泡酒について、コク味、芳醇さ、濃厚さを、6名のパネラーにより評価した。評価は5段階で行い、それぞれの項目の味質を、著しく損なっている場合を1、やや損なっている場合を2、特に感じない場合を3、やや改善している場合を4、著しく改善している場合を5とした。結果を下表(表7)に示す。
【0044】
【表7】

【0045】
比較例2(コントロール)は、全項目で評価が低く、D-プシコースを使用して醸造した発泡酒である実施例2−(1)、2−(2)、および2−(3)は、全項目における評価が高かった。また、実施例2−(1)では、味質改善効果はそれほど大きくなかったが、実施例2−(2)および実施例2−(3)では、味質が著しく改善した。しかし、実施例2−(3)では、もはや実施例2−(2)以上の劇的な味質改善効果はみられなかった。すなわち、D-プシコースを0.5%以上投入した場合に、最も味質が改善されることが明らかになった。
【0046】
〔虐待試験後の官能評価〕
さらに、表5に示した処方で製造した発泡酒を、37℃で72時間静置し、虐待試験を実施した。虐待試験前後のサンプルの味質(コク味、芳醇さ、濃厚さ)と香りについて、6名のパネラーにより比較評価した。評価は5段階で行い、各々虐待試験前の発泡酒と比較して、それぞれの項目の味質が著しく劣化したものを1、やや劣化が認められたものを2、劣化しなかったものを3、むしろ味質が改善されたものを4、味質が著しく改善したものを5とした。結果を下表(表8)に示す。
【0047】
【表8】

【0048】
比較例2(コントロール)においては、全ての項目で点数が低く、D-プシコースを添加した実施例2−(1)、2−(2)、および2−(3)では、全ての項目において点数が高く、すなわち、D-プシコースを添加した発泡酒では、虐待試験後の味質、香りともに劣化が少ない傾向が見られた。これらの保存性改善効果については、実施例1の結果と同様、実施例2−(1)では、大きな改善効果は得られなかったが、実施例2−(2)および実施例2−(3)では著しい改善効果が見られた。しかし、実施例2−(3)では、もはや実施例2−(2)以上の劇的な改善効果は見られなかった。
【実施例3】
【0049】
希少糖を使用した発泡酒と糖アルコールを使用した発泡酒
〔醸造手順および得られた発泡酒の糖組成〕
特許文献1および特許文献2では、低カロリー醸造酒の失われた風味やボディ感を改善する目的で、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、エリスリトール、ソルビトール、マルチトール、キシリトールなどのノンカロリーあるいは低カロリー素材を使用している。そこで、これらの素材が醸造酒の味質に及ぼす影響を、希少糖が醸造酒に及ぼす影響と比較するため、発泡酒を醸造することにより比較試験を行った。その仕込時の配合を下の表9に示す。
本実施例では、麦芽の代わりに麦芽エキスを使用しているが、これは麦芽を糖化・煮沸、濃縮した麦汁に相当する。なお、麦芽10gは、麦芽エキス約14gに相当する。
難資化性で味質に影響を与える糖質として、糖アルコール(ソルビトール)、実施例1で用いた希少糖含有異性化糖、および実施例2で用いたD-プシコースをそれぞれ使用した。これら糖質のそれぞれの含量が、得られる発泡酒中で、最終的に0.5%(希少糖含有異性化糖については、D-プシコースおよびD-アロースの合計量が0.5%)となるように添加したものを設計した。
【0050】
【表9】

【0051】
上記成分を混合し、80℃で30分間の煮沸を行ったあと、ナイロンクロスと珪藻土によりろ過を行い、ろ液に酵母を加えて、10日間、20℃で酵母による発酵を行った。その後、発酵液1Lあたり6gの砂糖を加え、さらに14日間、20℃で発酵を行い、発泡酒を得た。得られた発泡酒について、定法に従い、エタノール除去、脱塩を実施したのち、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、糖組成の分析を実施した。その結果を下表(表10)に示す。
【0052】
【表10】

【0053】
比較例3−(2)、実施例3−(1)、および実施例3−(2)において、ほぼ設計通りである約0.5%の、それぞれ、ソルビトール、希少糖、およびD-プシコースの残糖が見られた。つまり、仕込み時に投入したこれら糖質は、いずれも酵母によっては資化されず、醸造酒中に残っていることがわかった。
【0054】
〔醸造直後の官能評価〕
次に、得られた発泡酒について、コク味、芳醇さ、および濃厚さの評価を、6名のパネラーにより行った。評価は5段階で行い、それぞれの項目の味質を著しく損なっている場合を1、やや損なっている場合を2、特に感じない場合を3、やや改善している場合を4、著しく改善している場合を5とした。結果を下表(表11)に示した。
【0055】
【表11】

【0056】
比較例3−(2)(ソルビトール)、実施例3−(1)(希少糖含有異性化糖)、および実施例3−(2)(D-プシコース)のそれぞれにおいて、比較例3−(1)(コントロール)と比較した場合に、味質が改善される結果となった。しかし、希少糖含有異性化糖やD-プシコースでは、芳醇さや濃厚さも強く感じられたことに対し、ソルビトールでは、芳醇さや濃厚さに欠ける傾向が見られた。これは、糖アルコールと希少糖の甘味質の明確な違いに起因すると推測され、D-プシコースをはじめとする希少糖は、醸造酒にコク味、芳醇さ、および濃厚さを付与する効果に優れていることが示唆された。
【0057】
〔虐待試験後の官能評価〕
さらに、表9に示した処方で製造した発泡酒を、37℃で72時間静置し、虐待試験を実施した。虐待試験前後のサンプルの味質(コク味、芳醇さ、濃厚さ)と香りについて、6名のパネラーにより比較評価した。評価は5段階で行い、虐待試験前と比較して、それぞれの項目の味質が著しく劣化したものを1、やや劣化が認められたものを2、劣化しなかったものを3、むしろ味質が改善されたものを4、味質が著しく改善したものを5とした。結果を下表(表12)に示す。
【0058】
【表12】

【0059】
比較例3−(1)(コントロール)においては、全ての項目の点数が低く、比較例3−(2)
(ソルビトール)は、点数からも明らかなように、味質や香りの劣化に対しての改善効果は、ほぼ見られなかった。一方、希少糖含有異性化糖やD-プシコースを添加した発泡酒では、味質、香りともに劣化が少ない傾向が見られた。
【実施例4】
【0060】
希少糖を使用した梅酒1
〔調製手順〕
従来、梅酒を調製する際には、大半の場合、甘味付けと、浸透圧を利用した梅エキスの抽出のために砂糖を使用している。これを希少糖含有異性化糖、またはD-プシコースに一部置き換えた場合の、味質への影響を調べるため、梅酒を調製した。実施例4−(1)においてはD-アロースとD-プシコースの合計量が1.5%、実施例4−(2)においてはD-プシコースが1.5%となるよう、下表(表13)の配合で原材料を混合し、常温で6ヶ月間の熟成を行った。
【0061】
【表13】

【0062】
〔熟成直後の官能評価〕
得られた各梅酒の味質(コク味、芳醇さ、濃厚さ)について、6名のパネラーにより評価した。評価は5段階で行い、比較例4(コントロール)と比較して、各味質を著しく損なっている場合を1、やや損なっている場合を2、同等の場合を3、やや良好な場合を4、著しく良好な場合を5とした。結果を下表(表14)に示した。
【0063】
【表14】

【0064】
得られた点数からも明らかなように、希少糖含有異性化糖を添加することにより、各味質が良好となることがわかった(実施例4−(1))。
一方、D-プシコースを単独で添加した梅酒(実施例4−(2))の味質は、比較例4(コントロール)とほぼ同等であり、希少糖含有異性化糖に含まれるD-アロースとD-プシコースだけでなく、それ以外の糖が複合的に作用して、その味質に好ましい影響を及ぼしていることが示唆された。
【実施例5】
【0065】
希少糖を使用した梅酒2
〔調製手順〕
実施例4−(2)は、D-プシコースを1.5%含有するにもかかわらず、期待したほどの効果が得られなかった。これは、梅酒の元来の糖濃度が高いのに比して、D-プシコースの濃度が低いためと思われる。そこで、実施例4の氷砂糖の全量をD-プシコースに置き換えた場合の味質への影響を調べるため、下の表15配合で原材料を混合し、梅酒を調製した。熟成は、常温で6ヶ月間行った。
【0066】
【表15】

【0067】
〔熟成直後の官能評価〕
得られた各梅酒の味質(コク味、芳醇さ、濃厚さ)について、6名のパネラーにより評価した。評価は5段階で行い、比較例4(コントロール)と比較して、各味質を著しく損なっている場合を1、やや損なっている場合を2、同等の場合を3、やや良好な場合を4、著しく良好な場合を5とした。結果を下表(表16)に示した。
【0068】
【表16】

【0069】
得られた点数からも明らかなように、氷砂糖の全量をD-プシコースに置き換えることにより、味質が良好となることがわかった(実施例4−(3))。実施例4−(3)はD-プシコースを15%含んでおり、甘味の強い酒類の場合も、希少糖の代表例であるD-プシコースを15%含有させることで、味質の全体的なバランスを損なうことなく、十分な味質改善効果を得られることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酒類およびビール風味飲料の製造に際して、希少糖を含有する副原料を添加することを特徴とする、酒類およびビール風味飲料の製造方法。
【請求項2】
製造される酒類およびビール風味飲料が、その酒類またはビール風味飲料に特有の香味(芳醇さ)を維持または改善し、その香味(芳醇さ)とボディ感(コク味、濃厚さ)とキレとの総合テイストに優れた酒類およびビール風味飲料である請求項1に記載の酒類およびビール風味飲料の製造方法。
【請求項3】
希少糖を含有する副原料が、希少糖含有異性化糖、あるいは希少糖であることを特徴とする、請求項1または2に記載の酒類およびビール風味飲料の製造方法。
【請求項4】
希少糖含有異性化糖が、D-グルコース、D-フラクトース、または異性化糖のうち1種、あるいは2種以上を0.005mol/l以上のアルカリにより異性化することで得られる、D-グルコースおよびD-フラクトース以外の糖の含有率が60質量%未満であることを特徴とする、請求項3に記載の酒類およびビール風味飲料の製造方法。
【請求項5】
希少糖、あるいは含有する希少糖が、少なくともD-プシコースおよび/またはD-アロースであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の酒類およびビール風味飲料の製造方法。
【請求項6】
得られる酒類およびビール風味飲料に含まれる希少糖が、0.1〜20質量%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の酒類およびビール風味飲料の製造方法。
【請求項7】
酒類が、ビール類である請求項1〜6のいずれか1項に記載の酒類およびビール風味飲料の製造方法。
【請求項8】
酒類あるいはビール風味飲料が、低カロリービール風味アルコール飲料あるいは低カロリービール風味飲料である請求項1〜7のいずれか1項に記載の酒類およびビール風味飲料の製造方法。
【請求項9】
製造される酒類およびビール風味飲料が、その酒類またはビール風味飲料に特有の香味(芳醇さ)を維持または改善し、その香味(芳醇さ)とボディ感(コク味、濃厚さ)とキレとの総合テイストに優れ、さらに、保存中の劣化臭が低減または回避された酒類およびビール風味飲料である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の酒類およびビール風味飲料の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された、その酒類またはビール風味飲料に特有の香味(芳醇さ)を維持または改善し、その香味(芳醇さ)とボディ感(コク味、濃厚さ)とキレとの総合テイストに優れた酒類およびビール風味飲料。
【請求項11】
請求項9に記載の製造方法によって製造された、その酒類またはビール風味飲料に特有の香味(芳醇さ)を維持または改善し、その香味(芳醇さ)とボディ感(コク味、濃厚さ)とキレとの総合テイストに優れ、さらに、保存中の劣化臭が低減または回避された酒類およびビール風味飲料。

【公開番号】特開2012−60930(P2012−60930A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207940(P2010−207940)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000188227)松谷化学工業株式会社 (102)
【Fターム(参考)】