説明

呼吸により制御される吸入療法装置

本発明は、呼吸により制御される吸入療法装置(1)に関する。吸入療法装置は閉鎖手段(11)を含み、閉鎖手段は、装置の動作中に圧縮ガス(好ましくは圧縮エア)を放出するノズル開口(5)を閉塞させる。作動装置(12)が、患者の呼吸サイクルの呼気段階においてのみ、閉鎖手段(11)を作動させる。従って、噴霧化されるべき液体(8)は、実質的に、吸入段階においてのみ噴霧化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸入療法の一部として患者が使用するためのエアロゾル供給用の呼吸により制御される吸入療法装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のタイプの装置は、例えば、米国特許出願2004/1073209Aから知られる。この装置において、エアロゾルがノズルを用いて発生される。ノズル開口から放出される圧縮ガス(例えば圧縮エア)が、噴霧されるべき液体を、入口チャネルを通して引き出し、この液体を、液体がノズル開口に隣接した出口開口から出るときに噴霧化する。ノズルの前方にバフルが配置されており、バフルは、噴霧動作中に、吸入段階においてはノズル開口の付近に配置されて、放出されている圧縮ガスが偏向されることを保証する。この偏向は、噴霧化されるべき液体を引き込み、且つ噴霧化する作用を生じる。このバフルは移動可能であり、呼気段階中には、圧縮ガスがノズル開口から放出され続けていても噴霧化がもはや生じないように、ノズル開口から遠ざけられる。こうして、噴霧化を生じるようにバフルがノズル開口の十分に近くに配置されるのは吸入段階においてだけであるため、知られた装置において、呼吸による制御が達成されている。
【0003】
呼吸による制御は、吸入療法ネブライザにおいて、呼気段階中の薬剤又はエアロゾルの浪費を防止するために一般的に用いられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、呼吸により制御される(呼吸制御式の)吸入療法装置を更に改良することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、吸入療法の一部として患者が使用するためのエアロゾル供給用の呼吸により制御される吸入療法装置により達成される。この装置は、噴霧化領域の範囲を定めるハウジングと、圧縮ガス、好ましくは圧縮エアを噴霧化領域に入れるためのノズル開口と、噴霧化されるべき液体、好ましくは、治療的に有効な液体を噴霧化領域に入れるための少なくとも1つの出口開口と、ノズル開口を閉鎖する位置とノズル開口を閉鎖しない位置とに移動されることができるように、噴霧化領域内においてノズル開口に関連して配置された、ノズル開口を閉鎖するための閉鎖手段と、患者の呼吸サイクルに応答して、患者の呼吸サイクルの呼気段階中に、閉鎖手段がノズル開口閉鎖位置に配置されるように閉鎖手段を作動させるための作動装置と、を含む。
【0006】
こうして、本発明は、有利な環境を利用する。すなわち、圧縮ガスのためのノズル開口を閉鎖することにより、一方では、噴霧化が確実に中断され、また一方では、圧縮ガス源のために発生される抵抗により、通常、圧縮ガスの圧力の増大、及び、一時的保存(バッファリング)が生じ、これは、ノズル開口を再開放した後の噴霧化のために一時的に利用できる。この環境は、一方ではより大きい治療装置において、これらの大きい装置がその寸法によって非常に効率的であるように既に設計されていても、効率を増大するために利用することができる。また一方では、より小さい寸法でより大きい装置の効率が得られる、より小さい治療装置も実現することができる。
【0007】
簡単且つ有利な実施形態において、閉鎖手段は、ノズル開口に対向して配置される。これにより、必要な移動を簡単に行うことができる。
【0008】
ノズル開口露出位置において、閉鎖手段は、有利には、ノズル開口から出てくる圧縮ガス、及び、出口開口から出てくる液体のためのバフルを形成する。従って、閉鎖手段には2つの機能が与えられ、これらの機能を、本発明に従う装置の同一の1つの部品で、何の問題もなく実現することができる。従って、本発明に従えば、追加のバフルもガス流制御部も必要ない。しかし、これらの要素を追加として設けることはできる。
【0009】
別の設計において、閉鎖手段は、ノズル開口の側方に配置される。
【0010】
これにより、本発明に従う装置は、ノズル開口を閉鎖するための閉鎖手段が、ノズル開口がその内部に形成された、軟質で柔軟な材料から成るノズル本体に作用するように設計することができる。
【0011】
本発明において重要な、圧縮ガスのためのノズル開口の封止に関して最良の成果を得るために、閉鎖手段は、有利には、少なくとも部分的に、軟質で柔軟な材料からつくられる。或いは、又は、更に、軟質で柔軟な材料からつくられた封止部をノズル開口に設けることができる。
【0012】
閉鎖手段の移動を確実にするために、作動装置は、有利には、作動装置を閉鎖手段に連結する連結手段を含む。このようにして、本発明に従う吸入療法装置における作動装置の配置を、より自由に行うことができる。作動装置と閉鎖手段とを互いに近接させて配置するならば、作動装置の連結部材を、非常に小型であるように実現することも、又は、完全に無くすこともできる。
【0013】
呼吸による制御のために特に適しているのは、ピストン部材を含み、ハウジング内に広がる圧力がピストン部材の位置を決定する作動装置である。
【0014】
決められた位置にピストンを運ぶために、作動装置は、有利には、ピストン部材の休止位置を決定するばね部材を含む。
【0015】
有利な実施形態において、作動装置は、ピストンがその内部で移動することができる円筒状の部材を含む。これにより、ばね部材は、ピストン部材及び円筒状部材により密閉された圧縮スペース内に配置される。円筒状部材がハウジングにより形成されることが更に有利である。
【0016】
閉鎖手段が移動されなければならないため、連結手段はピストン部材に連結されている。なぜなら、ピストン部材は、作動装置の、呼吸に応じて移動する要素を構成するからである。
【0017】
閉鎖手段の位置が表示されることが望ましいため、連結手段は、有利には、連結部材がハウジングから突出するように、ピストン部材を越えて延在する。こうして、突出した部分の位置が、閉鎖手段の位置を示すインジケータとなる。
【0018】
移動を妨げることのある、作動装置のピストンとシリンダとの間の圧縮スペースにおける逆圧を防止するために、好ましくは通気路が設けられ、この通気路は、ピストン部材が円筒状部材内で移動しているときに、ピストン部材により密閉された空間に空気を取り入れ、また、この空間から空気を排出させる。
【0019】
ピストンの移動、及び、移動を閉鎖手段に伝達することを機械的に確実にし、且つ安定させるために、作動装置は、好ましくはガイド部材を含み、このガイド部材内に連結部材が配置される。
【0020】
製造技術の点から好ましい実施形態において、連結部材は閉鎖手段と一体的に形成される。
【0021】
給気ダクトを有する吸入療法装置において、作動装置は、好ましくは給気ダクト内に配置される。従って、有用な空間が最適に用いられ、且つ、作動装置は、保護されるように収容される。
【0022】
以下に、本発明を、実施形態を用いて、また、図面を参照しつつ、更に詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1は、吸入療法の一部として患者が使用するためのエアロゾル供給用の、本発明に従う吸入療法装置1を示す。図1に示した実施形態において、吸入療法装置1はハウジング2を含み、ハウジング2はその内部に噴霧化領域3の範囲を定めている。動作中、噴霧化領域3においてエアロゾルが生成され、吸入のために患者に提供される。患者はエアロゾルを、吸入療法装置1上に設けられ、且つハウジング2の内部3に連通しているマウスピース4を通して吸入する。更に、図1に示されている実施形態において、少なくとも1つのノズル開口5が噴霧化領域3内に設けられており、このノズル開口5から、圧縮ガス、好ましくは圧縮エアが、動作中に放出されて噴霧化領域3に入る。圧縮ガス又は圧縮エアは、圧縮エア源、好ましくはコンプレッサ(図1には示さず)から、供給ライン6を通して装置1に供給される。
【0024】
図1に示した実施形態において、少なくとも1つの出口開口7が、圧縮ガスのためのノズル開口5に隣接して配置されており、この出口開口7から、噴霧化されるべき液体、好ましくは、治療的に有効な液体が、動作中に放出されて噴霧化領域3に入る。噴霧化されるべき液体8は、吸入療法装置1の液体リザーバ9内に貯蔵されており、このリザーバ9は、図1に示した実施形態に示されているように、好ましくは、ハウジング2の一部を形成している。液体出口開口7がノズル開口5に隣接して配置されているため、ノズル開口から出てくる圧縮ガスが、出口開口から出てくる液体の噴霧化を生じる。これに関して、好ましくは、ある効果が用いられ、この効果により噴霧化されるべき液体8が入口開口7を通して引き出される。この効果は、圧縮ガスがノズル開口5から流出し、そして、液体のための出口開口7において負圧を発生させることのみによる。圧縮ガスのノズル開口5と、治療に必要な液体の出口開口7とが空間的に近接していることにより、圧縮ガスノズル開口5と液体出口開口7は、示されている実施形態において、リザーバ9及びリザーバ9内に貯蔵されている液体8の中に延在するノズル本体10に収容されている。また、図1に示されている実施形態は、液体8のための、1つのみでなく2つの、対称に配置された出口開口7がノズル開口5に隣接して設けられているため、特に有利である。別の有利な実施形態は、ノズル開口を取り囲み、ノズル開口5付近で開放されている、環状の間隙又は環状の溝を含む。
【0025】
本発明に従えば、図1に示されている実施形態において、ハウジング3の内部に閉鎖手段11が設けられる。閉鎖手段11はノズル開口5を閉鎖し、この閉鎖のために、閉鎖手段11は、噴霧化領域3内で、ノズル開口5に対向して配置されている。閉鎖手段11は、ノズル開口を露出させる位置(ノズル開口露出位置)、及び、ノズル開口を閉鎖する位置(ノズル開口閉鎖位置)に配置されることができる。
【0026】
図1において、閉鎖手段11は、ノズル開口閉鎖位置で示されている。この位置において、閉鎖手段11は、圧縮ガスがノズル開口5から出ていくことを防止し、従って、液体8も出口開口7から出て行かず、噴霧化もされない。ノズル開口5が閉鎖されているため、供給ライン6における圧力が増大する。なぜなら、圧縮ガス源(例えば、上記のコンプレッサ)は圧縮ガスを供給し続けるが、閉鎖されているノズル開口5の抵抗を受けるからである。
【0027】
図2において、閉鎖手段11が、ノズル開口露出位置で示されている。その他の点では、図2は図1に対応しており、従って、それらの点に関しては、図1に関して記載した説明を参照することができる。ノズル開口を露出させる位置において、閉鎖手段11は、圧縮ガスのためのノズル開口5から所定の距離に位置し、この距離は、供給ラインを通して供給される圧縮ガスがノズル開口5から放出され、且つ、出口開口から出てくる液体が噴霧化されるような距離である。これにより、供給ライン6における圧力は、圧縮ガス源(例えば、上記のコンプレッサ)により供給される動作圧力まで降下する。
【0028】
本発明に従う装置1の好ましい設計において、閉鎖手段11は、ノズル開口を露出させる位置にあるときに、バフルとしても機能し、このバフルに、放出された圧縮ガス及び噴霧化された液体が衝突する。ガス流制御部とも称されるこのようなバフルの、ネブライザノズル10の開口5及び開口7の出口領域における有利な効果は当業者に知られている。既知のガス流制御部を、閉鎖手段11として機能するためにノズル開口露出位置とノズル開口閉鎖位置の間を移動可能であるように設計することにより、本発明に従う吸入療法装置1の特に有利な設計が得られる。
【0029】
本発明に従って、患者の呼気段階中に閉鎖手段11をノズル開口閉鎖位置に移動させるために、図1及び図2に示した実施形態には、作動装置12が設けられており、この作動装置12は、閉鎖手段11の、ノズル開口露出位置からノズル開口閉鎖位置への移動を生じさせる。これにより、作動装置12は、患者の呼吸サイクルに応答して、患者の呼吸サイクルの呼気段階中に、ノズル開口5が閉鎖されるように閉鎖手段11を作動させる。
【0030】
本発明に従えば、閉鎖手段11と作動装置12との協同により、患者の呼吸サイクルの呼気段階中にはエアロゾルの生成が中断され、且つ、吸入段階中には、エアロゾルが患者に供給されることが達成される。こうして、圧縮ガスのためのノズル開口5を閉鎖することにより、本発明に従ってエアロゾルの生成を中断する結果として、様々な好ましい効果が得られる。一方では、エアロゾルの生成は、望ましくない遅延を生じる圧縮ガス源(例えばコンプレッサ)の反応時間なしに即時に中断される。閉鎖手段は、ノズル開口5に対して、この中断がほぼ即時に生じるように非常に迅速に作用する。また一方では、放出されている圧縮ガスが噴霧化されるべき液体を引き出す有利な場合において、噴霧化されるべき液体8の放出も、圧縮ガスの放出の中断とほぼ同時に停止する。なぜなら、液体8に対して行われる引き出し作用も、圧縮ガスの流れが中断されると即時に中断するからである。最後に、ノズル開口を閉鎖することは、供給ライン6における圧力の増大をもたらし、これが、ノズル開口を再開放させた後の、エアロゾル生成を促進させる。なぜなら、供給ラインにおける増大された圧力、及び、ある量の一時的に溜められた圧縮エアが、再開放後の短時間に利用できるからである。
【0031】
作動装置を別の方法で具体化することもできる。
【0032】
図1に示されている実施形態において、作動装置12は連結部材13を含み、連結部材13は、その一端で閉鎖手段11に連結され、他端でピストン部材14に連結されている。ピストン部材14は、円筒状部材15内に、通気路17により通気される圧縮スペース16を密閉するように配置されている。更に、ばね部材18が圧縮スペース16内に配置されており、ばね部材18は、ピストン部材14を、決められた休止(停止)位置に運ぶ。
【0033】
ピストン部材14は、連結部材13を介して閉鎖手段11に連結されているため、ピストン部材14が、ばね部材18の作用により配置される休止位置にあるならば、閉鎖手段11は、ノズル開口を露出させる位置にある。ピストン部材14、連結部材13、及び閉鎖手段11のこのような配置が図2に示されている。
【0034】
患者が、本発明に従う吸入療法装置1のハウジング2内に息を吐き出すならば、噴霧化領域3における圧力が増大する。なぜなら、吸入弁部材20(示されている実施形態において、柔軟な(可撓性の)材料からつくられた平坦な環状のディスクとして構成されている)が、周囲空気のための入口開口21を閉鎖するからである。圧力の増大により、ピストン部材14が、ばね部材18の作用に抗して移動される。この移動は、閉鎖手段11が、連結部材13を介してノズル開口閉鎖位置に配置されるような移動である。ピストン部材14、連結部材13、及び閉鎖手段11のこのような配置が図1に示されている。
【0035】
通気路17は、圧縮スペース16内に存在する空気が、ピストン部材14が休止位置から移動されるときに排出されることを可能にする。そしてその後、ピストン部材が休止位置に戻るときに、周囲空気が通気路17を通って圧縮スペース16内に流入する。こうして、ピストン部材の移動に必要な力と、従って、ピストン部材14を移動させる圧力とをばね部材18により非常に正確に画定できることが、通気路17を用いて達成される。
【0036】
図1及び図2に示されているように、連結部材13は、示された実施形態において、好ましくはガイド部材19内に配置されており、ガイド部材19は、円筒状部材15に取り付けられ、好ましくは、円筒状部材15と一体的に構成されている。ガイド部材19があることにより、連結部材13の安定したガイドを達成でき、それにより、作動装置12のピストン部材14の移動を、閉鎖手段11に確実に伝達させることができる。また一方で、ガイド部材19は、作動装置12の圧縮スペース16を封止することを容易にする。圧縮スペース16の、円筒状部材15とピストン部材14との接触点における対応する封止も確実に行われることになる。
【0037】
示されている実施形態において、連結部材13は、ピストン部材14の位置を越えて延在している。通気路17も、好ましくは、このセクションに形成される。従って、連結部材13はハウジング2から突出し、これにより、閉鎖手段11の位置を示すための視覚的インジケータとして働く。
【0038】
図1及び図2に示されている実施形態において、作動装置12は、有利には、吸入療法装置1の供給ダクト22内に配置されており、患者の吸入段階中に吸入弁が開いているとき、入口開口21を通って周囲環境から流入する供給空気が、この給気ダクト22を通って、ノズル開口5及び出口開口7のすぐ近くの領域にガイドされる。閉鎖手段11もこの領域に配置され、閉鎖手段11は、患者の呼吸サイクルに応じて、2つの位置(閉鎖位置と露出位置)の間を、連結部材13により往復移動される。
【0039】
図1及び図2に示されている実施形態において、有利には、呼吸空気の出口開口23が設けられており、呼気段階中に装置内に吐き出されたエアが、この開口23を通してハウジング2から排出されることができる。呼気中にハウジングの内部に蓄積し、且つ、閉鎖手段11の移動に必要な圧力を、呼吸空気出口開口23の形状、進行(progression)、及び直径の設計により画定することができる。これに関連し、呼気抵抗を増大することが必要な場合がしばしばあるため、吸入療法に対する有利な影響がこの方法でも得られることに留意されたい。更に、この方法では、閉鎖手段11をノズル開口露出位置に戻す圧力を、ばね部材18により加えられるばね力と協同して画定することも可能である。露出時間は、吸入段階の開始時には十分なエアロゾルが既に患者に提供されているように、吸入段階の開始前、すなわち、まだ呼気段階のうちに設定されることができる。
【0040】
図1及び図2に示されている実施形態において、閉鎖手段11は、作動装置12の連結部材13と一体的に形成される。図3に、別の設計が示されている。この図は、図1及び図2に示した内容のうち、ノズル本体10の開口領域のセクションを示す。この設計によれば、閉鎖手段11は、連結手段と一体的に形成されていない。この設計は、閉鎖手段11の材料を、連結部材13の材料とは別個に選択することができる限りにおいて有利である。ノズル開口5を良好に封止することを保証するために、閉鎖手段11、又は、閉鎖手段11の、ノズル開口5においてノズル本体10と接触する部分は、好ましくは、比較的軟質で柔軟な材料からつくられる。軟質で柔軟な材料は、連結部材13を製造するためには適さない場合が多い。連結部材13は、閉鎖手段13への作用、及び、閉鎖手段11に関連する力の伝達のために硬質でなければならない。
【0041】
図4は、軟質で柔軟な材料からつくられた封止部24がノズル本体10に設けられた、本発明に従う設計を示す。上記の図3に示した設計と全く同様に、非常に良好な封止が、この方法で達成される。
【0042】
軟質で柔軟な材料を、閉鎖手段11及びノズル開口5の両方に設けることができることが明らかであり、これは、図3及び図4に示した2つの設計の組合せに対応する。
【0043】
図5及び図6は、本発明に従う吸入療法装置1の更なる実施形態を示す。ノズル開口閉鎖位置(図5に示す)、及び、ノズル開口露出位置(図6に示す)に配置されることができる閉鎖手段11が、この実施形態においても設けられている。この実施形態の構造は、多くの点において、先に記載した実施形態に対応しており、従って、先に記載した説明を参照することができる。閉鎖手段11は、作動装置12により、1つの位置から別の位置に移動され、再び、元の位置に戻される。
【0044】
作動装置12は、連結部材13及びピストン部材14を含み、ピストン部材14は連結部材13に連結され、且つ、円筒状部材15内に配置されている。先に記載した実施形態とは異なり、図5及び図6に示した実施形態においては、ピストン部材に入口開口21が設けられており、入口開口21は、吸入段階中に周囲空気が吸入療法装置1の内部に流入することを可能にする。入口開口21は、呼気段階中には弁部材20により閉鎖される。従って、ピストン部材14の呼吸空気出口開口23(好ましくは、設けられる)のみが、正確に定めれた条件のもとで呼吸空気が排出されることを可能にする。こうして、例えば、呼気段階中に、円筒状部材15内のピストン部材14を、図5に示されている位置に移動させるための十分な圧力が装置内に存在することが保証される。ピストン部材14は、ばね部材18の戻り力に抗してこの位置に配置される。それ以外のとき、ばね部材18はピストン部材14を、図6に示した位置に移動させる。
【0045】
図5及び図6に示した実施形態において、連結部材13が逆転要素25を介して閉鎖手段11に連結されているため、閉鎖手段11は、患者が吸入療法装置内に息を吐き出すときに、図5に示したノズル開口閉鎖位置に配置される。一方、患者が息を吸うときには、閉鎖手段11は、図6に示されているように、ノズル開口露出位置に移動される。なぜなら、ばね部材18の作用により、ピストン部材14が休止位置に移動されるからである。この結果、連結部材13は、逆転要素25を介して、閉鎖手段11をノズル開口露出位置に移動させる。
【0046】
図5及び図6に示した実施形態においては、ピストン部材14がハウジング2の内壁に沿っても容易に移動できることが明らかであるため、ハウジング2の一部を円筒状部材15に替えることができる。
【0047】
図7及び図8は、本発明に従う吸入療法装置1の更なる実施形態を示す。ノズル開口を閉鎖する位置(図7に示す)、及び、ノズル開口を露出させる位置(図8に示す)に配置されることができる閉鎖手段11が、この実施形態においても設けられ、この実施形態の構造は、多くの点において上記の実施形態に対応しており、従って、先に記載した説明を参照することができる。閉鎖手段11は、作動装置12により、1つの位置から別の位置に移動され、再び元の位置に戻される。
【0048】
作動装置12は、連結部材13、及び、連結部材13に連結されたピストン部材14を含む。ピストン部材14は、装置1のハウジング2内に、ピストン部材14がシリンダ内に配置されているかのように、ハウジング2の内壁に沿って移動できるように配置されている。図7及び図8の実施形態においては、先に記載した実施形態とは異なり、ピストン部材にスライド部26が設けられており、スライド部26は、装置1の給気ダクト22を取り囲み、且つ、ピストン部材14に、ピストン部材14の移動動作中の安定性をもたらす。ばね部材18が給気ダクトに取り付けられており、ばね部材18は、患者が呼気により、図7に示されている位置にピストン部材14を移動させるための十分な圧力を装置の内部にもたらさないときに、ピストン部材14をピストン部材14の休止位置に移動させる。ピストン部材14が、図7に示されている位置にあるとき、連結部材に連結された閉鎖手段11は、ノズル開口閉鎖位置にある。
【0049】
吸入段階において、ピストン部材14は、ばね部材18の作用により、図8に示されている位置に移動し、これにより閉鎖手段11がノズル開口露出位置に配置される。更に、吸入段階中には、エアロゾルが、給気ダクトを通って流入した供給空気と共に、通し穴27(呼気段階中には弁部材28により閉じられている)を通る。呼気段階中には、呼吸空気が、先に詳細に説明した呼吸空気出口開口23を通して排出される。これに関する先に記載した説明を、この実施形態に関しても参照されたい。
【0050】
図9A及び図9Bは、本発明に従う吸入療法装置の更なる実施形態の一部の領域を示し、この部分においては、実質的に、上記の実施形態と異なる点を説明するために必要な要素のみが示されている。異なる点を以下に記載する。それ以外の点に関しては、先に記載した説明を参照されたい。
【0051】
図9A及び図9Bに示されている実施形態において、閉鎖手段11は、少なくともその一部が軟質で柔軟な材料から形成されたノズル本体10の側方に配置されている。ノズル本体10は、圧縮エアのためのノズル開口5、及び、噴霧化されるべき液体のための出口開口7を含み、出口開口7は、本明細書中に示されている実施形態において、ノズル開口を取り囲む環状の間隙の形態で具体化されている。軟質で柔軟な材料を用いることにより、ノズル本体10が、閉鎖手段11の作用によって、ノズル開口5が閉じられる程度まで変形されることが可能にされている。図9Bに、閉鎖手段11がノズル開口閉鎖位置にある様子が示されており、閉鎖手段11は、この位置に、患者の呼吸に応じて作動装置12(図9Bには示さず)により移動される。一方、図9Aは、閉鎖手段11がノズル開口露出位置にある様子を示す。図から明らかであるように、閉鎖手段がノズル本体10に作用していないため、ノズル本体10は全く変形していない。
【0052】
図10A及び図10Bは、本発明に従う吸入療法装置の更なる実施形態を示し、図10A及び図10Bも、基本的に、以上に記載した実施形態と異なる点を説明するために必要な要素のみを示す。これらの異なる点を以下に記載する。それ以外の点に関しては、先に記載した説明を参照されたい。
【0053】
図10A及び図10Bに関し、これらの図が、ノズル開口5及び出口開口7を有するノズルヘッド10の上面図であることに留意されたい。先に記載した説明と同様に、出口開口7がノズル開口5に隣接して対称に配置されていることは明らかである。図10A及び図10Bに示した実施形態においても、閉鎖手段11がノズルヘッド10の側方に配置されている。図10Aは、閉鎖手段11がノズル開口5を露出させる位置にある様子を示し、一方、図10Bにおける閉鎖手段11は、ノズル開口を閉鎖する位置で示されている。閉鎖手段11は、これらの2つの位置の間を、患者の呼吸に応じて、作動装置12(図10A及び図10Bには示さず)により往復移動される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1は、本発明に従う吸入療法装置の一実施形態の概略断面図である。
【図2】図2は、図1の実施形態の更なる概略断面図である。
【図3】図3は、本発明に従う吸入療法装置の閉鎖手段の有利な設計を詳細に示す図である。
【図4】図4は、本発明に従う吸入療法装置のノズル開口の有利な設計を詳細に示す図である。
【図5】図5は、本発明に従う吸入療法装置の更なる実施形態の概略断面図である。
【図6】図6は、図5の実施形態の更なる概略断面図である。
【図7】図7は、本発明に従う吸入療法装置の更なる実施形態の概略断面図である。
【図8】図8は、図8の実施形態の更なる概略断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入療法の一部として患者が使用するためのエアロゾル供給用の呼吸制御式の吸入療法装置であって、
噴霧化領域(3)の範囲を定めるハウジング(2)と、
圧縮ガス、好ましくは圧縮エアを前記噴霧化領域(3)に入れるためのノズル開口(5)と、
噴霧化されるべき液体(8)、好ましくは、治療的に有効な液体を前記噴霧化領域(3)に入れるための少なくとも1つの出口開口(7)と、
ノズル開口閉鎖位置(図1,図5及び図7)とノズル開口露出位置(図2,図4及び図8)とに移動されることができるように前記ノズル開口(5)に関連して前記噴霧化領域(3)内に配置された、前記ノズル開口(5)を閉鎖するための閉鎖手段(11)と、
患者の呼吸サイクルに応答して、患者の呼吸サイクルの呼気段階中に、前記閉鎖手段(11)が前記ノズル開口閉鎖位置に配置されるように前記閉鎖手段(11)を作動させるための作動装置(12)と、
を含む吸入療法装置。
【請求項2】
前記閉鎖手段(11)が前記ノズル開口(5)に対向して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の吸入療法装置。
【請求項3】
前記ノズル開口露出位置において、前記閉鎖手段(11)が、前記ノズル開口から出てくる圧縮ガス、及び、前記出口開口から出てくる液体のためのバフルを形成することを特徴とする請求項2に記載の吸入療法装置。
【請求項4】
前記閉鎖手段(11)が前記ノズル開口(5)の側方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の吸入療法装置。
【請求項5】
前記ノズル開口(5)を閉鎖するための前記閉鎖手段(11)が、軟質で柔軟な材料からつくられた、前記ノズル開口(5)がその内部に形成されたノズル本体(10)に作用することを特徴とする請求項4に記載の吸入療法装置。
【請求項6】
前記閉鎖手段(11)の少なくとも一部が軟質で柔軟な材料からつくられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の吸入療法装置。
【請求項7】
軟質で柔軟な材料からつくられたシール部(24)が前記ノズル開口(5)に設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の吸入療法装置。
【請求項8】
前記作動装置(12)が、前記作動装置(12)を前記閉鎖手段(11)に連結する連結手段(13)を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の吸入療法装置。
【請求項9】
前記作動装置(12)がピストン部材(14)を含み、前記ハウジング(2)内に加えられる圧力が前記ピストン部材(14)の位置を決定することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の吸入療法装置。
【請求項10】
前記作動装置(12)が、前記ピストン部材(14)の休止位置を決定するばね部材(18)を含むことを特徴とする請求項9に記載の吸入療法装置。
【請求項11】
前記作動装置(12)が円筒状部材(15)を含み、且つ、前記ばね部材(18)が、前記ピストン部材(14)及び前記円筒状部材(15)により密閉される圧縮スペース(16)内に配置されていることを特徴とする請求項10に記載の吸入療法装置。
【請求項12】
前記円筒状部材(15)が前記ハウジング(2)により形成されていることを特徴とする請求項11に記載の吸入療法装置。
【請求項13】
前記連結手段(13)が前記ピストン部材(14)に連結されていることを特徴とする請求項9〜12のいずれか一項に記載の吸入療法装置。
【請求項14】
前記連結部材(13)が前記ハウジング(2)から突出するように、前記連結手段(13)が前記ピストン部材(14)を越えて延在することを特徴とする請求項13に記載の吸入療法装置。
【請求項15】
前記円筒状部材(15)内で前記ピストン部材(14)が移動しているときに、前記ピストン部材(14)及び前記円筒状部材(15)により密閉された圧縮スペース(16)内に空気を取り入れ、また、前記圧縮スペース(16)から空気を排出させるために通気路(17)が設けられていることを特徴とする請求項9〜14のいずれか一項に記載の吸入療法装置。
【請求項16】
前記作動装置(12)がガイド部材(19)を含み、前記ガイド部材(19)内に前記連結部材(13)が配置されていることを特徴とする請求項8〜15のいずれか一項に記載の吸入療法装置。
【請求項17】
前記連結部材(13)が前記閉鎖手段(11)と一体的に構成されていることを特徴とする請求項8〜16のいずれか一項に記載の吸入療法装置。
【請求項18】
前記作動装置(12)が吸入療法装置の給気ダクト(22)内に配置されていることを特徴とする請求項1〜17のいずれか一項に記載の吸入療法装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【公表番号】特表2008−541899(P2008−541899A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−513962(P2008−513962)
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【国際出願番号】PCT/EP2006/004540
【国際公開番号】WO2006/128567
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(505475046)パリ ゲーエムベーハー シュペツィアリステン フューア エフェクティブ インハレツィオーン (7)
【氏名又は名称原語表記】PARI GMBH SPEZIALISTEN FUR EFFEKTIVE INHALATION