説明

呼吸マスクのために張設するヘッドギア

【課題】本発明は、例えば非観血陽圧換気法を利用して睡眠呼吸障害を治療する際に利用される呼吸マスクのような患者用インターフェースを保持する際に利用するためのヘッドギア組立体に関する。
【解決手段】患者用インターフェースのためのヘッドギアは、少なくとも1つのヘッドギアのストラップと、前記少なくとも1つのヘッドギアのストラップに作用するヘッドギアの張力に反応して、ヘッドギアの理想的な調整設定を得たことを示すように構成され、該少なくとも1つのヘッドギアのストラップに設けられた表示部とを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[出願の相互参照]
本願は、オーストラリア国特許仮出願番号2006905236に基づく優先権を主張するものである。あり、参照によって本明細書に完全に組み込まれている。
【0002】
本発明は、例えば非観血陽圧換気法(Non-Invasive Positive Pressure Ventilation;NIPPV)を利用して睡眠呼吸障害(Sleep Disordered Breathing;SDB)を治療する際に利用される呼吸マスクのような患者用インターフェースを保持する際に利用するためのヘッドギア組立体に関する。
【背景技術】
【0003】
例えば睡眠時無呼吸(OSA)のようなSDBの治療のための呼吸マスク組立体は、一般にヘッドギア組立体によって患者の頭部に固定されている。
【0004】
ヘッドギア組立体は、良好な密閉性が維持されるように、例えば鼻マスクのような患者用インターフェースを患者の顔面に位置決めし安定させるような構造とされる。ヘッドギア組立体は、一組の側部及び後部を含んでいる。側部は、患者用マスクと係合するように適合され、後部は、患者の後頭部に係合するように適合されている。
【0005】
従来のヘッドギア装置は、マスクのループ又はマスクに接続するコネクタに側部ストラップの端部を通し、その後側部ストラップの端部を側部ストラップに折り返すことによって、例えばVELCRO(登録商標)のようなマジックテープ(登録商標)(hook and loop material)を利用して所定位置に保持される側部ストラップを有している。このようにして、側部ストラップは、患者の特定の要求に適合し、且つ、快適で効果的なマスクの密閉性を実現するために、ヘッドギアの張力(tension)、ひいてはヘッドギアが患者の顔面に対してマスクを保持するように作用させる力を調整するように調節可能とされる。
【0006】
ヘッドギアの張力を正しく調整することは、治療の成功、及び患者が処方箋を遵守することにとって重要である。
【0007】
現在、患者は、ヘッドギアの張力の調整を決定することを補助するマスクを利用している。しかしながら、患者が張力を調整する時間間隔は、治療セッションと比較すると短い。5分又は10分の調整間隔に亘り快適に感じることは、8時間の治療セッションに亘り快適性を維持するためには厳しすぎる場合がある。また、マスクでの治療圧力(treatment pressure)が変化すると、最適な性能を発揮するために異なるヘッドギアの張力の設定が必要とされる場合がある。
【0008】
ヘッドギアに作用する理想的な張力は、マスククッションと患者の顔面との間の密閉を最低限度で維持することができる程度に小さい。しかしながら、患者がマスクからの漏出を完全に無くすようにヘッドギアのストラップを継続的に締めていなければならないことは言うまでもない。幾つかの実例では、ヘッドギアを顆状に締めることによって、マスクを密閉するクッションが破損し、漏出量が実際に大きくなった。
【0009】
さらに、過剰な締め付けによって、患者の顔や首に跡や皺が付いて、翌日になっても残ってしまい、患者を不快にし、さらには傷跡が残るか、又は組織が壊死する場合もある。他にも、過剰な締付によって歯や歯茎の機能障害が生じ、顎関節(temporomandibular joints)に作用する圧力によって頭痛が生じ、無呼吸の発生頻度が高まり、鼻孔の断面積が小さくなることにより呼吸抵抗が高まる場合がある。すべてのこれら障害は、患者にとって治療を不快にするものであり、患者が処方箋を守らなくなる原因である。
【0010】
代替的には、ヘッドギアに作用する張力が不十分であると、マスクと患者の顔面との間の密閉性を保つことができず、又は患者の睡眠中にマスクが動いてしまうので、マスクから漏出することになる。このことは、治療の成功を阻害するものであり、患者の目を覚まし、治療を中断させるものである。
【特許文献1】国際公開第02/47749号パンフレット
【非特許文献1】英国Shadow Robot Company社のShadow Air Muscles[online]、インターネット<URL: http://www.shadowrobot.com/airmuscles>
【非特許文献2】ヨセフ バー−コーヒン博士(Dr. Yoseph Bar-Cohen)による“材料のすべて(The A to Z of Materials)”[online]、インターネット<URL: http://www.azom.com/details.asp?ArtjclelD=885>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の一の態様は、例えば呼吸用マスクのような、呼吸可能な気体を患者に供給する患者用インターフェースに取り付けるためのヘッドギア組立体であって、患者の頭部に取り付け可能なように適合され、患者用インターフェースに接続するように適合された接続部を有しているヘッドギア本体と、ヘッドギアを調整するための調整手段と、ヘッドギアの理想的な調整設定を得たことを示すための、ヘッドギアの調整パラメータに応答する表示手段とを備えているヘッドギア組立体に関する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の他の実施態様は、呼吸可能な気体を患者に供給するように適合された患者用インターフェースであって、調整可能なヘッドギアによって患者に取り付け可能なように適合され、ヘッドギアの理想的な調整設定を得たことを示すための、ヘッドギアの調整パラメータに応答する表示手段を含んでいる患者用インターフェースに関する。
【0013】
本発明の他の実施態様は、呼吸可能なガスを患者に供給する患者用インターフェースに取り付けるためのヘッドギア組立体であって、患者の頭部に取り付け可能なように適合され、患者用インターフェースに接続するように適合された接続部を有しているヘッドギア本体と、ヘッドギア本体を調整するための調整機構と、ヘッドギア本体の締め付け調整を制限する制限機構とを含んでいるヘッドギア組立体に関する。
【0014】
本発明の他の実施態様は、呼吸可能なガスを患者に供給する患者用インターフェースに取り付けるためのヘッドギア組立体であって、患者の頭部に取り付け可能なように適合され、患者用インターフェースに接続するように適合された接続部を有しているヘッドギア本体と、ヘッドギア本体を調整するための調整機構と、ヘッドギア本体に作用する張力を調整する制御機構とを含んでいるヘッドギア組立体に関する。
【0015】
本発明の他の実施態様は、ヘッドギアを調整するステップと、ヘッドギアの理想的な調整設定を得たことを視覚的に表示するステップとを備えているヘッドギアを制御する方法に関する。
【0016】
本発明の他の実施態様は、患者用インターフェースのための接続装置に関する。この接続装置は、マスクに設けられたコネクタと、ヘッドギアに設けられたクリップとを含んでいる。クリップは、クリップが一の段階から次の段階に移行したことが理想的なヘッドギアの張力を得たことを示すような多数の段階を有する接続装置に接続するように適合されている。
【0017】
本発明の他の実施態様は、患者用インターフェースのためのヘッドギアに関する。このヘッドギアは、少なくとも1つのヘッドギア用ストラップと、少なくとも1つのヘッドギア用ストラップに作用する張力に応答して、ヘッドギアの理想的な調整設定を得たことを示すように構成され、少なくとも1つのヘッドギア用ストラップに設けられた表示手段とを含んでいる。
【0018】
本発明の他の実施態様は、患者用インターフェースのための接続装置に関する。この接続装置は、マスクに設けられたコネクタとヘッドギアに設けられたクリップとを含んでいる。このクリップは、クリップに作用する過大な張力によってクリップが完全にコネクタから解放されるようにコネクタに接続するように適合されている。
【0019】
本発明の他の実施態様は、ヘッドギアに作用する張力を制御する方法に関する。この方法は、ヘッドギアのヘッドギア用ストラップをマスクに接続するステップと、ヘッドギア用ストラップに過大な張力が作用した場合に張力を解放するステップとを含んでいる。
【0020】
本発明のさらなる他の実施態様は、患者用インターフェースとヘッドギアとの組み合わせ、及び患者用インターフェースのためのヘッドギアの調整方法に関する。
【0021】
本発明における他の実施態様、特徴、及び利点は、添付の図面と関連して以下の詳細な説明を精査することによって明らかとなる。本願に添付する図面は、本発明の開示内容の一部であり、例示として本発明の技術的思想を示すものである。
【0022】
添付図面は、本発明の様々な実施例の理解を容易にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1は、出願人の従来技術であるMIRAGE(登録商標)フルフェイスマスク100と、出願人の特許文献1に開示されるヘッドギア102とを表わす。この特許文献は、参照によって本明細書に完全に組み込まれている。
【0024】
マスク100は、呼吸に適した気体(breathable gas)を睡眠時無呼吸症候群治療用マスクに供給する陽気性気道圧(PAP)装置又は流れ発生装置(図示しない)に接続されている。
【0025】
図2に表わすように、ヘッドギア102は、ポリウレタン発泡体と、上部側部ストラップ20、下部側部ストラップ30、及び三角状の後部40から成る一組を含む形態とされるマジックテープとから構成されている。(例えばVELCRO(登録商標)のような)1つのフック部(hook material)22が、側部ストラップがマスク100の取付位置に固定されるように4つの側部ストラップのそれぞれの端部に取り付けられている。
【0026】
フック部22は、側部ストラップの係止前に側部ストラップを重ねる過程でフック部がそれ自身に捕捉されないように、‘一方向’フック部(’one way’ hook material)とされる場合がある。
【0027】
他の図示されない従来技術の装置では、側部ストラップ20,30は、マスク100のマスクフレームに成形された雌型コネクタに挿通する雄型クリップコネクタに係合するように適合されている。
【0028】
図3は、ヘッドギア102、例えば側部ストラップ20,30に、又は着用者が鏡に映った状態で視認可能なヘッドギアの他の位置に印刷、そうでなければ形成されている一連の視認可能な表示部40を表わす。
【0029】
表示部40は、垂直方向に長軸を有し、連続的に大きくなるアスペクト比を有する一連の楕円とされる。表示部40には、例えば1,2,3,4などのような張力設定を示すラベルが付されている。一の実施例では、表示部は、鏡に映った状態で表示部自体が着用者によって判読されるように左右反転した状態のラベルを付されている場合がある。任意の適切な楕円状の数字が付され、任意の適切な設定表示方法で互いに離隔されていることは言うまでもない。
【0030】
前記実施例の一の代替的な形態では、設定用ラベルは、対応するヘッドギアの推奨調整設定についての治療圧力を示している場合がある。
【0031】
ヘッドギアの側部ストラップ(例えばヘッドギア102の側部ストラップ20)が前記ヘッドギアを締付けることによって引っ張られた状態(張力は矢印によって示される)なっている場合に、ヘッドギアを構成する材料は楕円の長軸に対して垂直方向に伸長し、楕円が円に近づく。最も円状となった楕円が張力設定を示すので、張力が大きくなるにつれて、第1の楕円、その後に次の楕円が略円状となる。着用者は、理想的な張力の設定になるまでヘッドギアを調整する。すなわち、最初に張力が作用すると楕円1が円状になり、さらに大きな張力が作用した場合に楕円2も円状になり、最大張力設定時に楕円4が円状となる。
【0032】
図4A及び図4Bに表わすさらなる実施例では、上層(top layer)によって覆われたヘッドギアの基材(underlying material)の上に印刷することによって、表示部140は側部ストラップ20,30上に形成されている。張力がヘッドギアに作用していない場合には、表示部140は上層の影響によって不明瞭な状態になっている(図4A参照)。しかし、ヘッドギアに作用する張力が理想的な状態になっている場合には、上層の材料が透けた状態となり、表示部140が視認可能となる(図4B参照)。
【0033】
図5に表わす一の実施例では、ヘッドギアの側部ストラップ20,30は、ヘッドギアに作用する張力が高まると幅狭化するネック部240を含んでいる。マーキング250は、ヘッドギアに作用する張力を判断するためにネック部240近傍に設けられている。例えば、マーキング250は、張力作用時にネック部240がどの程度幅狭化したかを示すことができる。
【0034】
図6A〜図6Cは、一連の数字又は他のシンボルが調整設定を示す形態をした、ヘッドギアの表示部260のさらなる実施例を示す。ヘッドギアは、折り曲げ線280(fold line)に沿ってヘッドギアの側部ストラップ(例えば側部ストラップ20)の表面に取り付けられたカバーフラップ270も有している。張力がヘッドギアに作用していない場合に(図6A)、前記カバーフラップは表示部260を不明瞭な状態にしている。張力が作用すると(張力は矢印によって示される)、ヘッドギアを構成する材料は伸長される。従って、張力が大きくなるにつれて表示部260とカバーフラップ270とが相対的に移動するので、表示部260(例えば1,2,3などのような数字)が徐々に露出する(uncovered)。最大張力が露出する数字(the highest value uncovered numerical)は、ヘッドギアの調整設定を示している。すなわち、張力が最初に作用すると数字1が露出し(図6B)、さらに張力が作用すると数字2が露出し(図6C)、最大張力設定時には、最大の数字が露出されるようになっている。
【0035】
さらなる図示しない実施例では、表示部は、マスクのリムとクッションとの間に位置する接触圧フィルム(contact pressure film)を備えている。前記接触圧フィルムは、ヘッドギアが締付けられるか、そうでなければ調整された場合にシールに作用する圧力の変化に伴って色を変化させるようになっている。接触圧フィルムは、マスクのリムとシールとの間に作用する過大な圧力、及び該圧力の分散を示すようになっている。適切な接触圧力フィルムとして、米国Sensor Products社のPressurex(登録商標)面圧感知フィルムや米国Austik Technologies社のFilmLOC(登録商標)色変化PETフィルムが挙げられる。
【0036】
さらなるヘッドギアの張力感知手段には、例えば歪みゲージや蓄電板間距離に従って静電容量を変化させる静電容量センサのような電気センサが含まれている。電気センサの読み取り値は、流れ発生装置にフィードバックされる。流れ発生装置のプロセッサは、ヘッドギアに作用する張力が理想的な状態になった場合に流れ発生装置のディスプレイに表示し、及び/又は可聴信号又は可視信号を供給するために、信号を圧力設定に変換するためのアルゴリズムを用いてプログラムされている。
【0037】
本発明のさらなる態様は、ヘッドギアに作用する張力を調整するための締付機構に関する。
【0038】
一の実施例では、側部ストラップ20,30は、マスク100のマスクフレーム上に固定されているコネクタによって前記マスクに接続されている。マスクとヘッドギアのコネクタとの接続は、理想的な張力に到達した場合に、可視信号、接触信号、又は可聴信号を発生し、及び/又は理想的な張力を超過した場合には、解放されるように適合されている。
【0039】
図7A〜図7Dは、本発明の一の実施例における、ヘッドギアの側部ストラップ20,30に設けられたクリップ300、及びマスク100のマスクフレームに設けられたコネクタ330の動作に関する概略図である。
【0040】
マスクフレーム上の(雄型コネクタ又はクリップ受容部の形態をした)コネクタ330は、それぞれが傾斜している前面336及び該前面よりも傾斜していない後面338を含む内方に突出する突起334を備えた一組の両側部332を有している。
【0041】
クリップ300は、本体302、及び外方に突出する突起、すなわち前突起306及び中央突起308を備えた一組のスプリングアーム304を有している。前記前突起及び前記中央突起には、コネクタ330の内方突起334を受容するための2つの凹所310,312が形成されている。
【0042】
クリップ接続部は、クリップ300が図7Aの位置から図7Dの位置に移動する二段階ラッチ装置を備えている。第1段階では、クリップ300が音を発生させてコネクタ330に係合する。前記クリップは、2つの可聴音及び/又は接触音を発生させる。すなわち図7Bの位置から図7Cの位置に移動する場合に一方の音が発生し、図7Cの位置から図7Dの位置に移動する場合に他方の音が発生する。
【0043】
例えば、スプリングアーム304を本体302に向かって内方に屈曲させることによって、内方突起334の傾斜している前面336が前突起306に係合され、その後に前突起306が内方突起334を通過して図7Cの位置に移動して初めて、クリップ300がコネクタ330に係合される。図示の如く、内方突起334が凹所310内部に延在し、前突起306が後面338によって保持されるので、スプリングアーム304は自身の初期位置に弾性復帰する。クリップ300がコネクタ330内部にさらに移動することによって、中央突起308が内方突起334に乗り上げ、図7Dの位置に移動するので、その結果として、内方突起334が凹所312内部に延在している。
【0044】
従って、利用者は、側部ストラップ20,30のマジックテープを利用することによってヘッドギアを締付け開始することができる。利用者がヘッドギアを締め続けると、ヘッドギアに作用する張力が理想的な張力に到達し、スプリングアームが内方に屈曲するので、中央突起308が前記コネクタの内方突起334に乗り上げ通過し、前記クリップは図7Cに示す位置に位置するようになる。この際に、利用者がヘッドギアの締め付けを停止するように可聴的な‘クリック音’又は他の合図が発せられる。従って、利用者は、ヘッドギアに作用する張力が適切な張力に到達したことを知ることができ、この調整設定でヘッドギアを固定するためにマジックテープを固定することができる。
【0045】
クリップの設定された解放張力は、スプリングアーム304の剛性、並びに中心突起308のフェイス角及び高さを変更させることによって調節することができる。
【0046】
任意に、クリップ型コネクタは、ヘッドギアに作用する張力は治療圧力及び患者の要求又は嗜好性に従って変更する必要があるので、異なる解放張力を有した類似するクリップと相互に交換することができる。
【0047】
一の実施例では、クリップ及びコネクタは、該クリップは過大な張力が該クリップに作用することによって該コネクタから完全に解放されるように構成されている。このような急速解放装置(quick release arrangement)によって、患者は、自身にとって不快であるか、又は有害でさえある過大な張力がストラップに作用することを防止するために、例えば緊急事態、パニック状態や閉所恐怖症の場合に手動でスプリングアームを屈曲させる必要もなく早くマスクを取り外すことができる。解放力は、例えばスプリングアームの剛性、内方突起334の後面338のフェイス角、及び/又は前突起306の後面のフェイス角(すなわちクリップがコネクタに結合した場合に後面338に面し、及び/又は係合するように適合されている前突起306の表面)を変化させることによって調節可能とされる。前記急速解放装置は、上述の複数の接続段階を有する装置と共に利用可能とされるか、又は独立して利用可能とされる。
【0048】
本発明の実施例におけるさらなる締付機構として、ヘッドギアの後部又は側部に組み込まれた圧電材料又は人工筋肉(例えばロボット制御システムで利用されるタイプの、動作時に長手方向に接触する装置)を利用する装置が挙げられる。
【0049】
適切な人工筋肉装置の一例として、ヘッドギアに組み込まれた1つ以上の空気圧式人工筋肉、すなわち流れ発生装置による空気圧によって膨張可能であり、膨張時に長手方向に接触する管状部が挙げられる。適切な空気圧式人工筋肉装置の例として、非特許文献1に公開されている英国Shadow Robot Company社のShadow Air Musclesが挙げられる。
【0050】
利用可能な代替的な人工筋肉装置は、電気エネルギの利用時に収縮する電気活性高分子(electro-active polymer; EAPs)を含んでいる。適切な電気活性高分子は電子又はイオンを含んでいる。直流活性(DC activation)に伴う伸長(strain)及び比較的高い動作力を維持することができる点において、電子的なEAPsが好ましいからである。電子的なEAPsの例として、例えばポリふっ化ビニリデン材料、低い縦弾性係数及び高い誘電率を有する誘電性EAPs(電歪高分子又はESSPs)材料、電歪移植エラストマー(electrostrictive graft elastomer)材料、電歪紙(electrostrictive paper)材料、電気粘性エラストマー材料、又は液晶エラストマー(LCE)材料のような強誘導性ポリマーが挙げられる。イオン化EAPsの例としては、イオン化高分子ジェル、イオン化高分子金属複合体(ionomeric polymer-metal composites)、導電性高分子、又はカーボンナノチューブが挙げられる。これらのタイプのEAPsに関しては、非特許文献2で論じられている。この非特許文献は、参照によって本明細書に完全に組み込まれている。
【0051】
さらにさらなるヘッドギアの自動調整機構は、例えば永久磁石のような一様な磁場強度の磁石間の距離を変化させるか、又は電磁装置の磁場強度を変化させることによって磁力調整機構を含んでいる。
【0052】
さらなるヘッドギアの調整機構は、前記ヘッドギア内に取り付けられるか、又は組み込まれたブラダー(bladder)を含んでいる。または、前記ヘッドギアの調整機構は、膨張することによって前記ヘッドギアに作用する張力を大きくすることができる複数の前記ブラダーを前記ヘッドギアの異なる位置に含んでいる。一の典型的な形態では、1つ以上のブラダーが、流れ発生装置によって運ばれる空気によって膨張される。一の実施例では、1つ以上のブラダーがヘッドギアの材料を共に成形されることによって形成されている。
【0053】
“〜を備えている(comprising)”は、本明細書では“広い”意味、すなわち“〜を含む(including)”の意味で理解されるべきであり、“狭い”意味、すなわち“〜のみから成る(consisting only of)”に限定されるべきでない。対応する意味は、対応する単語“comprise,comprised、及びcomprises”に帰属する。
【0054】
本発明は、現在最も実践的で好ましい実施例であると思われる例に関連して説明されているが、本発明が開示される実施例に限定される訳ではなく、逆に、本発明の技術的思想及び技術的範囲内に含まれる様々な改良及び均等な装置を包含することに留意すべきである。また、上述の様々な実施例は、他の実施例と関連して実施可能とされる。例えば一の実施例の態様は、さらなる他の実施例を実現するために他の実施例の態様と組み合わせ可能である。さらに、任意の組立体の各独立した特徴又は構成要素は、付加的な実施例を構成する場合がある。さらに、本発明はOSAに苦しむ患者に対する特定用途を有するが、他の症例(例えば鬱血性心不全、糖尿病、病的肥満、脳卒中、肥満手術(baratric surgery)等)に苦しむ患者が上記開示内容から恩恵を受けることができることに留意すべきである。さらに、上記開示内容は、非医療用途においても同様に患者及び非患者に対して適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】従来技術であるMIRAGEフルフェイスヘッドギア及びマスクから成る装置の斜視正面図である。
【図2】平坦に載置した場合の、図1のMIRAGEヘッドギア装置である。
【図3】本発明の一の実施例におけるヘッドギアに作用する張力を示すための、一連の視認可能な表示部の概略図である。
【図4A】本発明の他の実施例における理想的な張力がヘッドギアに作用したこと示す視認可能な表示部の概略図である。
【図4B】本発明の他の実施例における理想的な張力がヘッドギアに作用したこと示す視認可能な表示部の概略図である。
【図5】本発明の他の実施例におけるヘッドギアのネック部である。
【図6A】調整を示すためにヘッドギアの上部と下部との間で相対的に移動することを利用する、本発明のさらなる実施例である。
【図6B】調整を示すためにヘッドギアの上部と下部との間で相対的に移動することを利用する、本発明のさらなる実施例である。
【図6C】調整を示すためにヘッドギアの上部と下部との間で相対的に移動することを利用する、本発明のさらなる実施例である。
【図7A】本発明のさらなる実施例におけるクリップ係合装置である。
【図7B】本発明のさらなる実施例におけるクリップ係合装置である。
【図7C】本発明のさらなる実施例におけるクリップ係合装置である。
【図7D】本発明のさらなる実施例におけるクリップ係合装置である。
【符号の説明】
【0056】
20 上部側部ストラップ
22 フック部
30 下部側部ストラップ
40 表示部(後部)
100 フルフェイスマスク
102 ヘッドギア
140 表示部
240 ネック部
250 マーキング
260 表示部
270 カバーフラップ
280 折り曲げ線
300 クリップ
302 本体
304 スプリングアーム
306 前突起
308 中央突起
310 凹所
312 凹所
330 コネクタ
332 側部
334 内方突起
336 前面
338 後面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に呼吸可能なガスを供給する患者用インターフェースに取り付けるためのヘッドギア組立体であって、
患者の頭部に取り付け可能なように適合され、前記患者用インターフェースに接続するように適合された接続部を有しているヘッドギア本体と、
前記ヘッドギアを調整するための調整手段と、
前記ヘッドギアの理想的な調整設定を得たことを示すための、前記ヘッドギアの調整パラメータに応答する表示手段と、
を備えていることを特徴とするヘッドギア組立体。
【請求項2】
前記表示手段が応答する前記調整パラメータが、前記ヘッドギアに作用する張力であることを特徴とする請求項1に記載のヘッドギア組立体。
【請求項3】
前記表示手段は、前記ヘッドギアに作用する張力に応答して変化する1つ以上の視認可能な表示部を備えていることを特徴とする請求項2に記載のヘッドギア組立体。
【請求項4】
前記視認可能な表示部は、前記理想的な調整設定を示すために、所定の形状に一致する表示部とされることを特徴とする請求項3に記載のヘッドギア組立体。
【請求項5】
前記表時部は、前記ヘッドギアに作用する張力に応答して細長い形状に変化することを特徴とする請求項4に記載のヘッドギア組立体。
【請求項6】
前記表示部は、前記理想的な調整設定を表示するために略円状の形状に一致する楕円状の表示部を含んでいることを特徴とする請求項5に記載のヘッドギア組立体。
【請求項7】
前記表時部は、それぞれが異なる調整設定を表示するように適合された一連の表示部とされることを特徴とする請求項5又は6に記載のヘッドギア組立体。
【請求項8】
前記一連の表示部は、異なるアスペクト比を有する一連の楕円状の表示部とされることを特徴とする請求項7に記載のヘッドギア組立体。
【請求項9】
前記視認可能な表示部は、前記ヘッドギア上に位置していることを特徴とする請求項3〜8のいずれか一項に記載のヘッドギア組立体。
【請求項10】
前記視認可能な表示部は、前記理想的な調整設定を表示するために色及び/又は陰影を変化させることを特徴とする請求項3に記載のヘッドギア組立体。
【請求項11】
前記視認可能な表示部は、第1の外観を有する下部材及び第2の外観を有する上部材を含んでいる前記ヘッドギアの一部を構成し、
前記下部材は、前記理想的な調整設定に対応する張力が作用する場合に視認可能とされることを特徴とする請求項10に記載のヘッドギア組立体。
【請求項12】
前記第1の外観及び前記第2の外観は、異なる色を備えていることを特徴とする請求項11に記載のヘッドギア組立体。
【請求項13】
前記下部材は、前記上部材が前記下部材に重なっていない所定の位置に移動することによって視認可能となることを特徴とする請求項11に記載のヘッドギア組立体。
【請求項14】
呼吸可能なガスを患者に供給し、調整可能なヘッドギアによって患者に取り付けられるように適合された患者用インターフェースであって、
前記ヘッドギアの理想的な調整設定を得たことを表示するために、前記ヘッドギアの調整パラメータに応答する表示手段を備えていることを特徴とする患者用インターフェース。
【請求項15】
前記表示手段は、前記患者用インターフェースが患者に対して保持された状態で圧力に応答することを特徴とする請求項14に記載の患者用インターフェース。
【請求項16】
前記表示手段は、前記圧力に応答して変化する1つ以上の視認可能な表示部とされることを特徴とする請求項15に記載の患者用インターフェース。
【請求項17】
前記患者用インターフェースは、患者の顔を密閉するための密閉部を含み、
前記表示手段は、前記密閉部と協働することを特徴とする請求項16に記載の患者用インターフェース。
【請求項18】
前記表示手段は、前記密閉部に作用する接触圧力に応答することを特徴とする請求項17に記載の患者用インターフェース。
【請求項19】
前記接触圧力は、前記密閉部と前記患者用インターフェースの本体との間の接触圧力とされることを特徴とする請求項18に記載の患者用インターフェース。
【請求項20】
前記表示手段は、前記密閉部と前記本体との間に感圧ディスプレイを含んでいることを特徴とする請求項19に記載の患者用インターフェース。
【請求項21】
前記感圧ディスプレイは、前記圧力に応答して色を変化させることを特徴とする請求項20に記載の患者用インターフェース。
【請求項22】
呼吸可能なガスを患者に供給する、患者用インターフェースに取り付けるためのヘッドギア組立体であって、
患者の頭部に取り付け可能なように適合され、前記患者用インターフェースに接続するように適合された接続部を有しているヘッドギア本体と、
前記ヘッドギア本体を調整するための調整機構と、
前記ヘッドギア本体の締め付け調整を制限する制限機構と、
を備えていることを特徴とするヘッドギア組立体。
【請求項23】
前記制限機構は、前記ヘッドギアに作用する張力を制限するように機能することを特徴とする請求項22に記載の患者用インターフェース。
【請求項24】
前記制限機構は、所定の解放張力で動作する解放機構を備えていることを特徴とする請求項23に記載の患者用インターフェース。
【請求項25】
前記解放機構は、前記ヘッドギアと前記患者用インターフェースとの間の接続装置内に組み込まれていることを特徴とする請求項24に記載の患者用インターフェース。
【請求項26】
前記解放張力は、調整可能とされることを特徴とする請求項25に記載の患者用インターフェース。
【請求項27】
前記解放機構は、異なる解放張力を有する他の解放機構に交換可能とされることを特徴とする請求項25に記載の患者用インターフェース。
【請求項28】
前記接続装置は、多数の接続段階を有し、
前記接続段階は、前記解放機構が動作することによって、第1の接続段階から第2の接続段階に移行することを特徴とする請求項25に記載の患者用インターフェース。
【請求項29】
呼吸可能なガスを患者に供給する患者用インターフェースに取り付けるためのヘッドギア組立体であって、
患者の頭部に取り付け可能なように適合され、前記患者用インターフェースに接続するように適合された接続部を有しているヘッドギア本体と、
前記ヘッドギア本体を調整するための調整機構と、
前記ヘッドギア本体に作用する張力を調整する制御機構と、
を備えていることを特徴とするヘッドギア組立体。
【請求項30】
前記調整機構は、人工筋肉装置とされることを特徴とする請求項29に記載のヘッドギア組立体。
【請求項31】
前記人工筋肉装置は、空気圧式筋肉装置とされることを特徴とする請求項30に記載のヘッドギア組立体。
【請求項32】
前記空気圧式筋肉装置のための空気供給は、前記患者用インターフェースに空気を供給する流れ発生装置と連通していることを特徴とする請求項31に記載のヘッドギア組立体。
【請求項33】
前記人工筋肉装置は、電気活性高分子装置とされることを特徴とする請求項30に記載のヘッドギア組立体。
【請求項34】
前記調整機構は、磁力調整装置とされることを特徴とする請求項29に記載のヘッドギア組立体。
【請求項35】
前記磁力式調整装置は、一組の磁石間の距離を調整するための装置とされることを特徴とする請求項34に記載のヘッドギア組立体。
【請求項36】
前記調整機構は、圧電式調整装置とされることを特徴とする請求項29に記載のヘッドギア組立体。
【請求項37】
前記制御機構は、前記ヘッドギア本体に作用する張力を、患者に供給されるガスの圧力に依存している張力に調整することを特徴とする請求項29に記載のヘッドギア組立体。
【請求項38】
ヘッドギアを調整するステップと、
前記ヘッドギアの理想的な調整設定を得たことを視覚的に表示するステップと、
を備えていることを特徴とするヘッドギアの調整を制御する方法。
【請求項39】
前記視覚的に表示するステップは、前記ヘッドギアに作用する張力に応答して形状を変化させるように構成された視認可能な表示部を備えるステップを含んでいることを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記視覚的に表示するステップは、前記理想的な調整設定に対応する張力が前記ヘッドギアに作用した場合に視認可能になるように構成されている視認可能な表示部を備えるステップを含んでいることを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記視覚的に表示するステップは、前記ヘッドギアに作用する張力が大きくなるにつれて幅狭化するように構成されているネック部を前記ヘッドギアに設けるステップを含んでいることを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記視覚的に表示するステップは、前記ヘッドギアに作用する張力が大きくなるにつれて色が変化するように構成されている前記ヘッドギアに設けられたマスクに感圧フィルムを設けるステップを含んでいることを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項43】
患者用インターフェースのための接続装置であって、
マスクに設けられたコネクタと、
ヘッドギアに設けられたクリップと、
を備え、
前記クリップは、前記クリップが一の段階から次の段階に移行したことが理想的なヘッドギアの張力を得たことを示すように、多数の接続段階を有する接続装置のコネクタに接続するように適合されていることを特徴とする接続装置。
【請求項44】
前記コネクタは、それぞれ内方突起を備えた両側部を含み、
前記クリップは、第1の凹所を形成する前突起と第2の凹所を形成する中央突起とを有する少なくとも1つのスプリングアームを含み、
前記クリップは、第1の段階で前記内方突起が前記第1の凹所内部に延在し、且つ、第2の段階で前記内方突起が前記第2の凹所内部に延在する2つの接続段階で前記コネクタに接続するように適合され、
前記クリップは、前記ヘッドギアに作用する張力が理想的な状態になった場合に前記第2の段階から前記第1の段階に移行するように適合されていることを特徴とする請求項43に記載の接続装置。
【請求項45】
前記クリップは、自身が一の段階から他の段階に移行した場合に可聴的及び/又は接触的に応答することを特徴とする請求項43に記載の接続装置。
【請求項46】
マスクと、
前記マスクに設けられたヘッドギアと、
請求項43〜45のいずれか一項に記載の接続装置と、
を備えていることを特徴とする患者用インターフェース。
【請求項47】
少なくとも1つのヘッドギア用ストラップと、
前記少なくとも1つのヘッドギア用ストラップに作用する張力に応答して、ヘッドギアの理想的な調整設定を得たことを示すように構成され、前記少なくとも1つのヘッドギア用ストラップに設けられた表示手段と、
を備えていることを特徴とする、患者用インターフェースのためのヘッドギア。
【請求項48】
前記表示手段は、前記ヘッドギアに作用する張力に応答して形状を変化させるように構成された視認可能な表示部を含んでいることを特徴とする請求項47に記載のヘッドギア。
【請求項49】
前記表示手段は、前記理想的な調整設定に対応する張力が前記ヘッドギアに作用した場合に視認可能とされるように構成されている視認可能な表示部を含んでいることを特徴とする請求項47に記載のヘッドギア。
【請求項50】
前記表示手段は、前記ヘッドギアに作用する張力が大きくなるにつれて幅狭化されるように構成されているネック部を含んでいることを特徴とする請求項47に記載のヘッドギア。
【請求項51】
マスクと、
前記マスクに設けられた、請求項47〜50のいずれか一項に記載のヘッドギアと、
を備えていることを特徴とする患者用インターフェース。
【請求項52】
マスクに設けられたコネクタと、
ヘッドギアに設けられたクリップと、
を備え、
前記クリップは、前記クリップが前記クリップに作用する過大な張力によって完全に前記コネクタから解放されるように前記コネクタに接続するように適合されていることを特徴とする、患者用インターフェースのための接続装置。
【請求項53】
前記クリップは、多数の接続段階でコネクタに接続し、且つ、該多数の接続段階で前記コネクタから解放されるように適合されていることを特徴とする請求項52に記載の接続装置。
【請求項54】
前記クリップは、自身が一の段階から他の段階に移行した場合に可聴的及び/又は接触的に応答することを特徴とする請求項53に記載の接続装置。
【請求項55】
ヘッドギアのヘッドギア用ストラップをマスクに接続するステップと、
前記ヘッドギア用ストラップに過大な張力が作用した場合に、該張力を解放するステップと、
を備えていることを特徴とする、前記ヘッドギアに作用する張力を制御する方法。
【請求項56】
前記張力を解放するステップは、過大な張力が前記ヘッドギア用ストラップに作用した場合に、前記マスクから前記ヘッドギア用ストラップを解放するステップを含んでいることを特徴とする請求項55に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【公開番号】特開2008−73528(P2008−73528A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−244240(P2007−244240)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(500046450)レスメド リミテッド (192)