呼吸気体供給用チューブならびにこれを用いた鼻孔カニューラ装置および口マスク装置
【課題】 押し潰されたり折り曲げられたりしても、内部空間35を流れる呼吸気体の流量が極端に少なくなる恐れがないとともに、十分な柔軟性を有している呼吸気体供給用チューブ11を提供する。
【解決手段】 呼吸気体供給用チューブ5は、HDA55〜HDA75の範囲の硬度を有するプラスチックから構成されている。チューブ5は、筒状部26と、この筒状部26の内周面に一体的に形成されかつ筒状部26のほぼ軸心方向Lに延びている複数本の突条部25a〜25dとを備えている。チューブ5の横断面においては、突状部25a〜25dの先端側が、チューブ5の軸心Lにほぼ向いているほぼ平坦な面32に構成されている。
【解決手段】 呼吸気体供給用チューブ5は、HDA55〜HDA75の範囲の硬度を有するプラスチックから構成されている。チューブ5は、筒状部26と、この筒状部26の内周面に一体的に形成されかつ筒状部26のほぼ軸心方向Lに延びている複数本の突条部25a〜25dとを備えている。チューブ5の横断面においては、突状部25a〜25dの先端側が、チューブ5の軸心Lにほぼ向いているほぼ平坦な面32に構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素などの呼吸気体を人体などに供給するのに用いられる呼吸気体供給用チューブに関するものである。また、本発明は、このような呼吸気体供給用チューブが呼吸気体を供給するために用いられる鼻孔カニューラ装置および口マスク装置にも関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、鼻孔カニューラ装置や口マスク装置には、酸素などの呼吸気体を人体に供給するのに呼吸気体供給用チューブが用いられている。そして、このような呼吸気体供給用チューブは、プラスチックからフレキシブルな中空構造に構成されている。また、このような中空構造は、外周面および内周面のいずれもが単なる円柱面形状である。一方、このような呼吸気体供給用チューブは、鼻孔カニューラ装置などの使用中に、何らかの理由で押し潰されたり折り曲げられたりしやすい。このような場合、チューブを構成しているプラスチックの硬度が小さいと、チューブに小さな外圧(すなわち、力)が加わっただけでチューブが大きく押し潰されたり大きく折り曲げられたりする。このために、チューブの耐キンク性能(すなわち、折れ曲り難さ)を維持するためや、チューブに力が加わった場合であっても、チューブの内部空間における呼吸気体の流れが比較的良好に行われるようにするために、上記プラスチックの硬度をかなり大きくしている。
【0003】
しかし、このようにプラスチックの硬度をかなり大きくしても、呼吸気体供給用チューブの上述のような押し潰しや折り曲げはしばしば発生する。このために、呼吸気体にこのようなチューブを経由させる場合には、医師などによって予め指示された流量でもって呼吸気体を鼻孔カニューラや口マウスに供給することができない場合が生じやすい。したがって、鼻孔カニューラや口マウスの着用者は、呼吸気体用供給用チューブの上述のような押し潰しや折り曲げが生じないように、細心の注意を払ってチューブを取り扱う必要がある。
【0004】
従来の呼吸気体供給用チューブの上述のような欠点を是正するようにした呼吸気体供給用チューブが、特許文献1に開示されている。図10に示すように、この特許文献1のチューブ41は、円筒状部42と、この円筒状部42の内周面にそれぞれ一体的に形成された例えば6本の突条部43a、43b、43c、43d、43e、43fとから構成されている。そして、これらの突条部43a〜43fが、上記円筒状部42の軸心方向Lに平行にかつ円周方向に順次ほぼ等間隔で延びている。また、チューブ41の横断面においては、各突条部43a〜43fは、先端側が直角である直角二等辺三角形に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の呼吸気体供給用チューブ41の場合には、鼻孔カニューラ装置などの使用中に、チューブ41が何らかの理由で強く押し潰されたり強く折り曲げられたりすると、図11に示すように、内部空間44がきわめて小さくなる。その理由は、突条部43a〜43fの先端部が、角張っているために、円筒状部42の内周面(すなわち、凹条部)に強く当接することによって、図11に示すように押し潰されてしまうからである。そして、このような現象は、チューブ41を構成しているプラスチックの硬度を小さくすればする程、顕著になる。したがって、特許文献1のチューブ41の場合にも、上記従来の呼吸気体供給用チューブの場合と同様に、このようなチューブ41を経由させて予め指示された流量でもって呼吸気体を鼻孔カニューラなどに供給することができない場合が生じることがある。
【0007】
本発明は、上記従来の呼吸気体供給用チューブや特許文献1の呼吸気体供給用チューブにおける上述のような欠点を、比較的簡単な構成でもって、効果的に是正し得るようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、その第1の観点においては、プラスチックから中空構造に構成されている呼吸気体供給用チューブにおいて、上記チューブが、HDA55〜HDA75(好ましくは、HDA60〜HDA70)の範囲の硬度を有するプラスチックから構成され、上記チューブが、筒状部と、この筒状部の内周面にそれぞれ一体的に形成された複数本(好ましくは、3〜8本、さらに好ましくは、4〜6本)の突条部とを備え、上記突条部のそれぞれが、上記筒状部のほぼ軸心方向に延びており、上記チューブの横断面においては、上記突条部の先端側が、上記チューブの軸心にほぼ向いているほぼ平坦な面に構成されていることを特徴とする呼吸気体供給用チューブに係るものである。なお、本文において、上記HDAとは、日本工業規格JIS K7215−1986「プラスチックのデュロメータ硬さ(A硬さ)の試験方法」に基づくデュロメータ硬さの記号である。
【0009】
本発明の上記第1の観点においては、上記チューブの横断面においては、上記突条部のそれぞれの形状が基端側から先端側に向かってほぼ尻すぼまりのほぼ四角形状であるのが好ましい。また、本発明の上記第1の観点においては、上記チューブの横断面においては、上記筒状部の外径に対する上記突条部のそれぞれの上記ほぼ平坦な面の長さの比が、好ましくは、0.044〜0.14(さらに好ましくは、0.068〜0.10)の範囲である。また、本発明の上記第1の観点においては、上記チューブの横断面においては、上記筒状部の内径に対する、上記筒状部の軸心と上記突条部のそれぞれの上記ほぼ平坦な面との相互の間隔の比が、好ましくは、0.16〜0.48(さらに好ましくは、0.24〜0.40)の範囲である。さらに、本発明の上記第1の観点においては、上記突条部のそれぞれが、上記チューブの内周面の軸心方向にほぼ平行に延びているのが好ましい。
【0010】
また、本発明は、その第2の観点においては、上記第1の観点における呼吸気体供給用チューブが、呼吸気体供給源から鼻孔カニューラまで呼吸気体を供給するための呼吸気体供給用チューブのうちの少なくとも一部分に用いられている。そして、本発明は、その第3の観点においては、上記第1の観点における呼吸気体供給用チューブが、呼吸気体供給源から口マスクまで呼吸気体を供給するための呼吸気体供給用チューブのうちの少なくとも一部分に用いられている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、呼吸気体供給用チューブがHDA55〜HDA75の範囲の硬度を有するプラスチックから構成されているから、呼吸気体供給用チューブが十分な柔軟性を有している。したがって、このようなチューブが用いられている鼻孔カニューラ装置、口マスク装置などをカニューラ、口マスクなどの着用者に装着するときに、この装着やこれらの装置の取り扱いのいずれもが容易である。
【0012】
また、呼吸気体供給用チューブの横断面においては、このチューブの筒状部の内周面に形成された突条部の先端側が、上記チューブの軸心にほぼ向いているほぼ平坦な面に構成されている。このために、鼻孔カニューラ装置、口マウス装置などの使用中に、酸素供給用チューブが何らかの理由で押し潰されたり折り曲げられたりしても、チューブの内部空間は或る程度の面積を確保され、しかも、このような面積の減少は、軸心方向には、部分的にしかすぎないから、呼吸気体供給用チューブの内部空間を流れる呼吸気体の流量が極端に少なくなる恐れがない。したがって、医師などによって予め指示された流量でもって呼吸気体を鼻孔カニューラに供給することに特別な困難性を生じる恐れがない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を鼻孔カニューラ装置に適用した一実施例におけるこの鼻孔カニューラ装置の部分的に省略した正面図である。(実施例1)
【図2】図1に示す鼻孔カニューラ装置が取り付けられたカニューラ着用者の頭部付近の正面図である。(実施例1)
【図3】図1に示す第2の酸素供給用チューブの一部分の拡大斜視図である。(実施例1)
【図4】図3に示す酸素供給用チューブの縦断面図である。(実施例1)
【図5】図3に示す酸素供給用チューブの横断面図である。(実施例1)
【図6】図5に示す酸素供給用チューブの一部分の拡大横断面図である。(実施例1)
【図7】図5に示す酸素供給用チューブにa方向およびb方向から力が加わってこのチューブが押し潰された状態におけるこのチューブの図5と同様の横断面図である。(実施例1)
【図8】図5に示す酸素供給用チューブにc方向およびd方向から力が加わってこのチューブが押し潰された状態におけるこのチューブの図5と同様の横断面図である。(実施例1)
【図9】図5に示す酸素供給用チューブにe方向およびf方向から力が加わってこのチューブが押し潰された状態におけるこのチューブの図5と同様の横断面図である。(実施例1)
【図10】従来の酸素供給用チューブの図5と同様の横断面図である。(従来例1)
【図11】図10に示す酸素供給用チューブにg方向およびh方向から力が加わってこのチューブが押し潰された状態におけるこのチューブの図9と同様の横断面図である。(従来例1)
【発明を実施するための形態】
【0014】
つぎに、本発明の一実施例を、「(1)鼻孔カニューラ装置の概略的構成」、「(2)呼吸気体供給用チューブの構成」および「(3)鼻孔カニューラ装置の作用および効果」に項分けして、図1〜図9を参照しつつ説明する。
【0015】
(1)鼻孔カニューラ装置の概略的構成
鼻孔カニューラ装置1は、図1および図2に示すように、中空構造でフレキシブルな鼻孔カニューラ2と、この鼻孔カニューラ2の両端部にそれらの一端部をそれぞれ連結されている呼吸気体供給用チューブとしての左右一対のフレキシブルで比較的短い第1の酸素供給用チューブ3、4と、これら一対の第1の酸素供給用チューブ3、4の他端部を呼吸気体供給用チューブとしての一本のフレキシブルで比較的短い第2の酸素供給用チューブ5の一端部に連結しているフレキシブルなY字形コネクタ6と、第2の酸素供給用チューブ5の他端部に取り付けられているコネクタ7とを備えている。また、鼻孔カニューラ装置1は、呼吸気体供給用チューブとしての一本のフレキシブルで比較的長い第3の酸素供給用チューブ11と、この第3の酸素供給用チューブ11の両端部にそれぞれ取り付けられたコネクタ12、13とをさらに備えている。そして、コネクタ12は、コネクタ7に着脱自在に連結される。また、コネクタ13は、鼻孔カニューラ装置1の使用時には、酸素タンクなどから成る呼吸気体供給装置(図示せず)に直接に接続されるか、あるいは、上記呼吸気体供給装置から延びている呼吸気体供給用チューブとしての第4の酸素供給用チューブ(図示せず)に接続される。
【0016】
カニューラ2は、図1および図2に示すように、低肺患者などのカニューラ着用者14(図2参照)の鼻15のすぐ下の形状に対応して多少前方に突出するように湾曲しているほぼ水平形状のチューブ状水平部16と、この水平部16の両端部からそれぞれ斜め上方外側に延びている左右一対のチューブ状連結部17a、17bと、水平部16の中間部分からカニューラ着用者14の左右の鼻孔18a、18b(図2参照)にそれぞれ対応するようにほぼ上方に延びている左右一対のチューブ状プロング部(すなわち、枝分れ部)19a、19bとを備えている。そして、上記一対の連結部17a、17bの上端部に左右一対の第1の酸素供給用チューブ3、4がそれぞれ連結されている。
【0017】
これら一対の第1の酸素供給用チューブ3、4の上端部は、図1および図2に示すように、リング21に共通に挿入されている。そして、カニューラ2の水平部16、左右一対の連結部17a、17b、左右一対の第1の酸素供給用チューブ3、4およびリング21から成るループ状部分によって囲まれる開口部22が形成されている。なお、この開口部22は、カニューラ着用者14の両耳23a、23bと顎部24とをほぼ取り囲む形状であって、この開口部22には、図2に示すように、鼻孔カニューラ装置1の使用時にカニューラ着用者14の両耳23a、23bと顎部24とがほぼ挿入される。そして、図2において、リング21を一対の第1の酸素供給用チューブ3、4に対して上昇させることによって、上記開口部22を小さくすることができるとともに、下降させることによって上記開口部22を大きくすることができる。
【0018】
図1にそれぞれ示す鼻孔カニューラ2、左右一対の第1の酸素供給用チューブ3、4、Y字形コネクタ6、第2の酸素供給用チューブ5および第3の酸素供給用チューブ11は、軟質ポリ塩化ビニルなどの柔軟性に富み無臭で軽量なプラスチックから構成されていてよい。そして、第1の酸素供給用チューブ3、4は、第2および第3の酸素供給用チューブ5、11に較べて或る程度細いものであってよい。また、第2の酸素供給用チューブ5も、第3の酸素供給用チューブ11に較べて或る程度細いものであってよい。例えば、図示の実施例においては、第1の酸素供給用チューブ3、4の外径は、約3.3mmに構成され、第2の酸素供給用チューブ5の外径は、約5.5mmに構成され、第3の酸素供給用チューブ11の外径は、約8.0mmに構成されている。さらに、図1および図2から明らかなように、第1および第2の酸素供給用チューブ3〜5のそれぞれの長さは、数十cm程度であってよいが、第3の酸素供給用チューブ11は、2〜12m程度であってよい。
【0019】
(2)呼吸気体供給用チューブの構成
第2の酸素供給用チューブ5の形状、その他の構成は、図3〜図6に示されている。なお、第1の酸素供給用チューブ3、4は、太さおよび必要があれば長さが異なる点を除いて、形状、その他の構成が第2の酸素供給用チューブ5と実質的に同一であってよく、したがって、第2の酸素供給用チューブ5と実質的に相似形状(すなわち、図5に示す横断面形状、図4に示す縦断面形状などが実質的に相似形状)であってよい。また、第3の酸素供給用チューブ11は、長さおよび太さが異なる点を除いて、その構成が第2の酸素供給用チューブ5と実質的に同一であってよく、したがって、第2の酸素供給用チューブ5と実質的に相似形状(すなわち、図5に示す横断面形状、図4に示す縦断面形状などが実質的に相似形状)であってよい。したがって、以下において、第2の酸素供給用チューブ5について詳細に説明し、第1および第3の酸素供給用チューブ3、4、11についての説明は、必要に応じて省略する。
【0020】
図3〜図6に示す第2の酸素供給用チューブ5(以下、「チューブ5」という。)は、基本的には、ほぼ円筒形状などのほぼ筒形状であってよい。ただし、チューブ5の内側表面は、単なる円柱面形状ではなくて、その軸心方向Lにほぼ平行にそのほぼ全長にわたってそれぞれ延びている複数本のほぼ柱状の突条部25a〜25dを備えている。したがって、チューブ5は、筒状部26と複数本の突条部25a〜25dとから構成されている。また、チューブ5の内側表面には、複数本の突条部25a〜25dの間にこれら複数本の突条部25a〜25dの本数と同数の凹条部27a〜27dがそれぞれ構成されている。そして、これら複数本の凹条部27a〜27dは、チューブ5の内周面の軸心方向Lにほぼ平行にそのほぼ全長にわたって延びている。なお、これらの突条部25a〜25d(換言すれば、上記凹条部27a〜27d)の本数は、図示の実施例においては4本であるが、本発明の目的を達成するためには、実用性の観点から見て一般的に、3〜8本の範囲であるのが好ましく、4〜6本の範囲であるのがさらに好ましい。また、上記複数本の突条部25a〜25d(換言すれば、凹条部27a〜27d)は、筒状部26の内周面にほぼ等間隔で配設されているのが好ましい。
【0021】
一方、図3〜図6に示すチューブ5の外側表面は、実質的には、単なる円柱面形状であってよい。ただし、この外側表面は、梨地状、その他の艶消し加工のようなエンボス処理を施されているのが好ましい。この場合、鼻孔カニューラ装置1の使用時におけるチューブ5の外側表面の滑りがよくなり、また、鼻孔カニューラ装置1の使用時におけるチューブ11の汚れが防止され、さらに、鼻孔カニューラ装置1の使用時におけるチューブ5の外側表面での光散乱によってチューブ5の外側表面がちらつくのを防止することができる。また、チューブ5の外側表面は、カニューラ装着者14などの好みに合わせて着色を施されることもできる。
【0022】
本発明の特徴の1つは、チューブ5の硬度を特に小さくしたことである。具体的には、図示の実施例においては、チューブ5の硬度は、HDAで約67である。そして、本発明の目的を達成するためには、実用性の観点から見て一般的に、チューブ5の硬度は、HDA55〜HDA75の範囲であるのが好ましく、HDA60〜HDA70の範囲であるのがさらに好ましい。
【0023】
各突条部25a〜25dの横断面の形状は、ほぼ長方形状、ほぼ台形状などのほぼ四角形状であってよいが、図示の実施例においては、図4〜図6に示すように、ほぼ等脚台形状である。この場合、図6に示す各突条部25a〜25dの横断面の形状において、基端側を下底31とし、先端側を上底32とすると、軸心Lから下底31に下した垂線Pは、交点P1および交点P2においてこれらの下底31および上底32とほぼ直角に交わる。そして、交点P1は、下底31の長さ方向におけるほぼ中心点であり、交点P2は、上底32の長さ方向におけるほぼ中心点である。また、上記等脚台形状の左右一対の脚33a、33bは、下底31から上底32に向かって垂線Pに近づく方向に傾斜している。したがって、本発明においては、各突条部25a〜25dの横断面の形状は、下底31から上底32に向かってほぼ尻すぼまりのほぼ四角形状であるのが好ましい。
【0024】
第1、第2および第3の酸素供給用チューブ3〜5、11の横断面の形状についての具体的な数値を記述すると、つぎの(a)項〜(z8)項に記載のとおりである。そして、つぎの(a)項〜(z8)項におけるかっこ内の数値は、第1の酸素供給用チューブ3、4および第3の酸素供給用チューブ11の横断面の形状についての具体的数値が第2の酸素供給用チューブ5の具体的数値とは異なっている場合において、第1の酸素供給用チューブ3、4および第3の酸素供給用チューブ11の横断面の形状についての具体的数値を示している。具体的には、上記カッコ内の数値のうちの「および」の前の数値は、第1の酸素供給用チューブ3、4についての数値である。また、「および」の後の数値は、第3の酸素供給用チューブ11についての数値である。
(a)チューブ(換言すれば、筒状部26)の外径D1:約5.5mm(約3.3mmおよび約8.0mm)、
(b)突条部25a〜25dが存在しないと考えたときのチューブの内径D2(すなわち、凹条部27におけるチューブまたは筒状部26の内径D2):約3.9mm(約2.35mmおよび約5.67mm)、
(c)突条部25a〜25dが存在しないと考えたときのチューブの肉厚(すなわち、凹条部27におけるチューブの肉厚であって、(外径D1−内径D2)×1/2):約0.8mm(約0.48mmおよび約1.16mm)、
(d)各突条部25a〜25dの下底31の長さ:約0.8mm(約0.48mmおよび約1.16mm)、
(e)各突条部25a〜25dの上底32の長さ:約0.48mm(約0.29mmおよび約0.07mm)、
(f)各突条部25a〜25dの各脚33a、33bの長さ:約0.75mm(約0.45mmおよび約1.09mm)、
(g)各突条部25a〜25dの上底32と下底31との相互の間隔(換言すれば、下底31からの突条部25a〜25dの高さ):約0.65mm(約0.39および約0.95mm)、
(h)軸心Lと各突条部25a〜25dの上底32との相互の間隔:約1.25mm(約0.75mmおよび約2.18mm)、
(i)垂線Pと各脚33a、33bとが相互に成す角度θ1:約12.5°、
(j)各凹条部27の底面34が軸心Lに対して成す角度θ2:約65°、
(k)各突条部25a〜25dの下底31および上底32のそれぞれが軸心Lに対して成す角度θ3およびθ4:約24°および約22°、
(l)上記(a)項に記載の外径D1に対する上記(b)項に記載の内径D2の比(D2/D1):約0.70、
(m)上記(a)項に記載の外径D1に対する上記(c)項に記載の肉厚の比:約0.15、
(n)上記(b)項に記載の内径D2に対する上記(c)項に記載の肉厚の比:約0.21、
(o)上記(a)項に記載の外径D1に対する上記(d)項に記載の長さの比:約0.15、
(p)上記(b)項に記載の内径D2に対する上記(d)項に記載の長さの比:約0.21、
(q)上記(a)項に記載の外径D1に対する上記(e)項に記載の長さの比:約0.09、
(r)上記(b)項に記載の内径D2に対する上記(e)項に記載の長さの比:約0.12、
(s)上記(a)項に記載の外径D1に対する上記(f)項に記載の長さの比:約0.14、
(t)上記(a)項に記載の外径D1に対する上記(g)項に記載の間隔の比:約0.12、
(u)上記(b)項に記載の内径D2に対する上記(g)項に記載の間隔の比:約0.17、
(v)上記(a)項に記載の外径D1に対する上記(h)項に記載の間隔の比:約0.23、
(w)上記(b)項に記載の内径D2に対する上記(h)項に記載の間隔の比:約0.32、
(x)上記(d)項に記載の長さに対する上記(e)項に記載の長さの比:約0.60、
(y)上記(d)項に記載の長さに対する上記(f)項に記載の長さの比:約0.94、
(z1)上記(d)項に記載の長さに対する上記(g)項に記載の間隔の比:約0.81、
(z2)上記(d)項に記載の長さに対する上記(h)項に記載の間隔の比:約1.56、
(z3)上記(e)項に記載の長さに対する上記(f)項に記載の長さの比:約1.55、
(z4)上記(e)項に記載の長さに対する上記(g)項に記載の間隔の比:約1.35、
(z5)上記(e)項に記載の長さに対する上記(h)項に記載の間隔の比:約2.60、
(z6)上記(f)項に記載の長さに対する上記(g)項に記載の間隔の比:約0.87、
(z7)上記(f)項に記載の長さに対する上記(h)項に記載の間隔の比:約1.67、および
(z8)上記(g)項に記載の間隔に対する上記(h)項に記載の間隔の比:約1.92。
【0025】
本発明を呼吸気体供給装置における呼吸気体供給用チューブに適用する場合における好ましい構成を上記(a)項〜(z8)項の記載にそれぞれ対応させて列挙すれば、実用性の観点から見て一般的に、つぎの(A)項〜(Z8)項に記載のとおりである。そして、本発明が適用される呼吸気体供給用チューブは、本発明の目的を達成するためには、実用性の観点から見て一般的に、これらの(A)項〜(Z8)項に記載の構成のうちのいずれか1つの構成または複数の構成もしくは全部の構成を備えているのが好ましい。なお、つぎの(A)項〜(Z8)項におけるかっこ内の数値のそれぞれは、さらに好ましい数値を示している。
(A)チューブの外径D1:2.48〜10.0mm(2.75〜9.3mm)の範囲、
(B)突条部25a〜25dが存在しないと考えたときのチューブの内径D2:約1.76〜7.09mm(1.99〜6.62mm)の範囲、
(C)突条部25a〜25dが存在しないと考えたときのチューブの肉厚:0.36〜1.45mm(0.40〜1.35mm)の範囲、
(D)各突条部25a〜25dの下底31の長さ:0.36〜1.45mm(0.40〜1.35mm)の範囲、
(E)各突条部25a〜25dの上底32の長さ:0.22〜0.88mm(0.24〜0.82mm)の範囲、
(F)各突条部25a〜25dの各脚33a、33bの長さ:0.34〜1.36mm(0.38〜1.27mm)の範囲、
(G)各突条部25a〜25dの上底32と下底31との相互の間隔:0.29〜1.19mm(0.32〜1.11mm)の範囲、
(H)軸心Lと各突条部25a〜25dの上底32との相互の間隔:0.56〜2.73mm(0.62〜2.54mm)の範囲、
(I)垂線Pと各脚33a、33bとが相互に成す角度θ1:6.2°〜18.8°(9.4°〜15.6°)の範囲、
(J)各凹条部27の底面34が軸心Lに対して成す角度θ2:32.5°〜97.5°(48.8°〜81.20°)の範囲、
(K)各突条部25a〜25dの下底31および上底32のそれぞれが軸心Lに対して成す角度θ3およびθ4:12°〜36°および11°〜33°(18°〜30°および16.5°〜27.5°)の範囲、
(L)上記(A)項に記載の外径D1に対する上記(B)項に記載の内径D2の比(D2/D1):0.52〜0.88(0.56〜0.84)の範囲、
(M)上記(A)項に記載の外径D1に対する上記(C)項に記載の肉厚の比:0.076〜0.22(0.10〜0.18)の範囲、
(N)上記(B)項に記載の内径D2に対する上記(C)項に記載の肉厚の比:0.10〜0.32(0.14〜0.26)の範囲、
(O)上記(A)項に記載の外径D1に対する上記(D)項に記載の長さの比:0.076〜0.22(0.10〜0.18)の範囲、
(P)上記(B)項に記載の内径D2に対する上記(D)項に記載の長さの比:0.10〜0.32(0.16〜0.26)の範囲、
(Q)上記(A)項に記載の外径D1に対する上記(E)項に記載の長さの比:0.044〜0.14(0.068〜0.10)の範囲、
(R)上記(B)項に記載の内径D2に対する上記(E)項に記載の長さの比:0.060〜0.18(0.08〜0.16)の範囲、
(S)上記(A)項に記載の外径D1に対する上記(F)項に記載の長さの比:0.070〜0.20(0.10〜0.18)の範囲、
(T)上記(A)項に記載の外径D1に対する上記(G)項に記載の間隔の比:0.06〜0.18(0.08〜0.16)の範囲、
(U)上記(B)項に記載の内径D2に対する上記(G)項に記載の間隔の比:0.085〜0.26(0.12〜0.22)の範囲、
(V)上記(A)項に記載の外径D1に対する上記(H)項に記載の間隔の比:0.12〜0.34(0.16〜0.30)の範囲、
(W)上記(B)項に記載の内径D2に対する上記(H)項に記載の間隔の比:0.16〜0.48(0.24〜0.40)の範囲、
(X)上記(D)項に記載の長さに対する上記(E)項に記載の長さの比:0.30〜0.90(0.44〜0.76)の範囲、
(Y)上記(D)項に記載の長さに対する上記(F)項に記載の長さの比:0.46〜1.42(0.70〜1.18)の範囲、
(Z1)上記(D)項に記載の長さに対する上記(G)項に記載の間隔の比:0.40〜1.22(0.60〜1.00)の範囲、
(Z2)上記(D)項に記載の長さに対する上記(H)項に記載の間隔の比:0.78〜2.34(1.16〜1.96)の範囲、
(Z3)上記(E)項に記載の長さに対する上記(F)項に記載の長さの比:0.78〜2.32(1.16〜1.94)の範囲、
(Z4)上記(E)項に記載の長さに対する上記(G)項に記載の間隔の比:0.68〜2.02(1.00〜1.70)の範囲、
(Z5)上記(E)項に記載の長さに対する上記(H)項に記載の間隔の比:1.30〜3.90(1.94〜3.26)の範囲、
(Z6)上記(F)項に記載の長さに対する上記(G)項に記載の間隔の比:0.44〜1.30(0.66〜1.08)の範囲、
(Z7)上記(F)項に記載の長さに対する上記(H)項に記載の間隔の比:0.84〜2.50(1.25〜2.08)の範囲、および
(Z8)上記(G)項に記載の間隔に対する上記(H)項に記載の間隔の比:0.96〜2.88(1.44〜2.40)の範囲。
【0026】
(3)鼻孔カニューラ装置の作用および効果
図1に示す鼻孔カニューラ装置1を用いて低肺患者などのカニューラ着用者14に呼吸気体供給装置からの呼吸気体を供給するときには、つぎに記述する手順で行えばよい。
【0027】
まず、従来から一般的に知られているように、コネクタ13を呼吸気体供給源としての呼吸気体供給装置(例えば、酸素供給装置)に連結する。また、図2に示すように、鼻孔カニューラ2の左右一対のチューブ状プロング部19a、19bをカニューラ着用者14の左右の鼻孔18a、18bにそれぞれ挿入する。さらに、リング21を上下動させて、鼻孔カニューラ装置1の開口部22が、カニューラ着用者14の両耳23a、23bと顎部24とをほぼ取り囲むようにする。なお、上述のような幾つかの手順は、どのような順序で行われてもよい。そして、上述のような手順で鼻孔カニューラ装置1がカニューラ着用者14に装着されてから、呼吸気体供給装置から鼻孔カニューラ2に呼吸気体を供給すれば、従来から一般的に知られている鼻孔カニューラ装置の場合と同様に、カニューラ着用者14は、鼻孔カニューラ装置1(ひいては、鼻孔カニューラ2)を介して、呼吸気体の供給を受けることができる。
【0028】
図1および図2に示す鼻孔カニューラ装置1においては、第1〜第3の酸素供給用チューブ3〜5、11の硬度がHDAで約67と小さいから、これらのチューブ3〜5、11は十分な柔軟性を有している。したがって、鼻孔カニューラ装置1をカニューラ着用者14に装着するときに、この装着や鼻孔カニューラ装置1の取扱いのいずれもが容易である。特に、カニューラ着用者14に最も近くに位置することになる第1の酸素供給用チューブ3、4が十分な柔軟性を有しているから、上述のように、鼻孔カニューラ装置1の開口部22にカニューラ着用者14の両耳23a、23bおよび顎部24を通す操作を非常にスムースに行うことができる。
【0029】
また、鼻孔カニューラ装置1の使用中に、第1〜第3の酸素供給用チューブ3〜5、11が何らかの理由で押し潰されたり折り曲げられたりしても、第1〜第3の酸素供給用チューブ3〜5、11の内部空間35を流れる呼吸気体の流量が極端に少なくなる恐れがない。第2の酸素供給用チューブ5を図示している図5〜図9を参照してこの点を説明すると、チューブ3〜5、11が押し潰されたり折れ曲がったりしていない場合には、中空構造を有するチューブ3〜5、11の内部空間35は、図5に示すように、突条部25a〜25dを除いてほぼ完全な円形に保持されている。そして、図5におけるa方向およびb方向からチューブ3〜5、11に力が加わると、図7に示すように、互いに対向する一対の突条部25b、25dのそれぞれの上底32が互いに当接するために、チューブ3〜5、11の内部空間35は、軸心方向Lには部分的に、多少減少する。また、図5におけるc方向およびd方向からチューブ3〜5、11に力が加わると、図8に示すように、互いに隣接する一対の突条部25a、25dのそれぞれの角部が互いに当接するとともに、互いに隣接する一対の突条部25b、25cのそれぞれの角部36が互いに当接するために、チューブ3〜5、11の内部空間35は、軸心方向Lには部分的に、多少減少する。さらに、図5におけるe方向およびf方向からチューブ3、5、11に力が加わると、図9に示すように、突条部25a〜25dの上底32が4つの凹条部27のうちのいずれか1つにそれぞれ当接するために、チューブ3、5、11の内部空間35は、軸心方向Lには部分的に、或る程度減少する。しかし、図7、図8および図9に示すいずれの場合にも、チューブ3、5、11の内部空間は或る程度の面積を確保されており、しかも、このような面積の減少は、軸心方向Lには、部分的にしかすぎない。したがって、呼吸気体を予め指示された流量でもって鼻孔カニューラ2に供給することに特別な困難性を生じる恐れがない。
【0030】
以上において、本発明の一実施例について詳細に説明したが、本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている発明の趣旨に基づいて各種の変更および修正が可能である。
【0031】
例えば、上述の実施例においては、本発明を鼻孔カニューラ装置に適用したが、本発明は、酸素マスク装置などの口マスク装置、その他の医療用などの装置や器具などにも適用することができる。
【0032】
また、上述の実施例においては、各突条部25a〜25dは、チューブ3、5、11の内周面(換言すれば、筒状部26)の軸心方向Lにほぼ平行に延びている。しかし、各突条部25a〜25dは、上記軸心方向Lにほぼらせん状などにかつ互いにほぼ平行に延びていてもよい。
【0033】
また、上述の実施例においては、各突条部25a〜25dの横断面の形状における左右一対の脚(換言すれば、左右一対の側面)33a、33bのそれぞれは、ほぼ直線状である。しかし、これらの脚33a、33bのそれぞれは、外側または内側に膨出するように円弧状などに湾曲していてもよく、また、折れ線状に折曲していてもよく、さらに、湾曲しかつ折曲していてもよい。
【符号の説明】
【0034】
3 第1の酸素供給用チューブ(呼吸気体供給用チューブ)
4 第1の酸素供給用チューブ(呼吸気体供給用チューブ)
5 第2の酸素供給用チューブ(呼吸気体供給用チューブ)
11 第3の酸素供給用チューブ(呼吸気体供給用チューブ)
25a ほぼ柱状の突条部
25b ほぼ柱状の突条部
25c ほぼ柱状の突条部
25d ほぼ柱状の突条部
26 筒状部
31 下底(基端側)
32 上底(基端側、ほぼ平坦な面)
L 軸心方向(軸心)
D1 外径
D2 内径
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素などの呼吸気体を人体などに供給するのに用いられる呼吸気体供給用チューブに関するものである。また、本発明は、このような呼吸気体供給用チューブが呼吸気体を供給するために用いられる鼻孔カニューラ装置および口マスク装置にも関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、鼻孔カニューラ装置や口マスク装置には、酸素などの呼吸気体を人体に供給するのに呼吸気体供給用チューブが用いられている。そして、このような呼吸気体供給用チューブは、プラスチックからフレキシブルな中空構造に構成されている。また、このような中空構造は、外周面および内周面のいずれもが単なる円柱面形状である。一方、このような呼吸気体供給用チューブは、鼻孔カニューラ装置などの使用中に、何らかの理由で押し潰されたり折り曲げられたりしやすい。このような場合、チューブを構成しているプラスチックの硬度が小さいと、チューブに小さな外圧(すなわち、力)が加わっただけでチューブが大きく押し潰されたり大きく折り曲げられたりする。このために、チューブの耐キンク性能(すなわち、折れ曲り難さ)を維持するためや、チューブに力が加わった場合であっても、チューブの内部空間における呼吸気体の流れが比較的良好に行われるようにするために、上記プラスチックの硬度をかなり大きくしている。
【0003】
しかし、このようにプラスチックの硬度をかなり大きくしても、呼吸気体供給用チューブの上述のような押し潰しや折り曲げはしばしば発生する。このために、呼吸気体にこのようなチューブを経由させる場合には、医師などによって予め指示された流量でもって呼吸気体を鼻孔カニューラや口マウスに供給することができない場合が生じやすい。したがって、鼻孔カニューラや口マウスの着用者は、呼吸気体用供給用チューブの上述のような押し潰しや折り曲げが生じないように、細心の注意を払ってチューブを取り扱う必要がある。
【0004】
従来の呼吸気体供給用チューブの上述のような欠点を是正するようにした呼吸気体供給用チューブが、特許文献1に開示されている。図10に示すように、この特許文献1のチューブ41は、円筒状部42と、この円筒状部42の内周面にそれぞれ一体的に形成された例えば6本の突条部43a、43b、43c、43d、43e、43fとから構成されている。そして、これらの突条部43a〜43fが、上記円筒状部42の軸心方向Lに平行にかつ円周方向に順次ほぼ等間隔で延びている。また、チューブ41の横断面においては、各突条部43a〜43fは、先端側が直角である直角二等辺三角形に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の呼吸気体供給用チューブ41の場合には、鼻孔カニューラ装置などの使用中に、チューブ41が何らかの理由で強く押し潰されたり強く折り曲げられたりすると、図11に示すように、内部空間44がきわめて小さくなる。その理由は、突条部43a〜43fの先端部が、角張っているために、円筒状部42の内周面(すなわち、凹条部)に強く当接することによって、図11に示すように押し潰されてしまうからである。そして、このような現象は、チューブ41を構成しているプラスチックの硬度を小さくすればする程、顕著になる。したがって、特許文献1のチューブ41の場合にも、上記従来の呼吸気体供給用チューブの場合と同様に、このようなチューブ41を経由させて予め指示された流量でもって呼吸気体を鼻孔カニューラなどに供給することができない場合が生じることがある。
【0007】
本発明は、上記従来の呼吸気体供給用チューブや特許文献1の呼吸気体供給用チューブにおける上述のような欠点を、比較的簡単な構成でもって、効果的に是正し得るようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、その第1の観点においては、プラスチックから中空構造に構成されている呼吸気体供給用チューブにおいて、上記チューブが、HDA55〜HDA75(好ましくは、HDA60〜HDA70)の範囲の硬度を有するプラスチックから構成され、上記チューブが、筒状部と、この筒状部の内周面にそれぞれ一体的に形成された複数本(好ましくは、3〜8本、さらに好ましくは、4〜6本)の突条部とを備え、上記突条部のそれぞれが、上記筒状部のほぼ軸心方向に延びており、上記チューブの横断面においては、上記突条部の先端側が、上記チューブの軸心にほぼ向いているほぼ平坦な面に構成されていることを特徴とする呼吸気体供給用チューブに係るものである。なお、本文において、上記HDAとは、日本工業規格JIS K7215−1986「プラスチックのデュロメータ硬さ(A硬さ)の試験方法」に基づくデュロメータ硬さの記号である。
【0009】
本発明の上記第1の観点においては、上記チューブの横断面においては、上記突条部のそれぞれの形状が基端側から先端側に向かってほぼ尻すぼまりのほぼ四角形状であるのが好ましい。また、本発明の上記第1の観点においては、上記チューブの横断面においては、上記筒状部の外径に対する上記突条部のそれぞれの上記ほぼ平坦な面の長さの比が、好ましくは、0.044〜0.14(さらに好ましくは、0.068〜0.10)の範囲である。また、本発明の上記第1の観点においては、上記チューブの横断面においては、上記筒状部の内径に対する、上記筒状部の軸心と上記突条部のそれぞれの上記ほぼ平坦な面との相互の間隔の比が、好ましくは、0.16〜0.48(さらに好ましくは、0.24〜0.40)の範囲である。さらに、本発明の上記第1の観点においては、上記突条部のそれぞれが、上記チューブの内周面の軸心方向にほぼ平行に延びているのが好ましい。
【0010】
また、本発明は、その第2の観点においては、上記第1の観点における呼吸気体供給用チューブが、呼吸気体供給源から鼻孔カニューラまで呼吸気体を供給するための呼吸気体供給用チューブのうちの少なくとも一部分に用いられている。そして、本発明は、その第3の観点においては、上記第1の観点における呼吸気体供給用チューブが、呼吸気体供給源から口マスクまで呼吸気体を供給するための呼吸気体供給用チューブのうちの少なくとも一部分に用いられている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、呼吸気体供給用チューブがHDA55〜HDA75の範囲の硬度を有するプラスチックから構成されているから、呼吸気体供給用チューブが十分な柔軟性を有している。したがって、このようなチューブが用いられている鼻孔カニューラ装置、口マスク装置などをカニューラ、口マスクなどの着用者に装着するときに、この装着やこれらの装置の取り扱いのいずれもが容易である。
【0012】
また、呼吸気体供給用チューブの横断面においては、このチューブの筒状部の内周面に形成された突条部の先端側が、上記チューブの軸心にほぼ向いているほぼ平坦な面に構成されている。このために、鼻孔カニューラ装置、口マウス装置などの使用中に、酸素供給用チューブが何らかの理由で押し潰されたり折り曲げられたりしても、チューブの内部空間は或る程度の面積を確保され、しかも、このような面積の減少は、軸心方向には、部分的にしかすぎないから、呼吸気体供給用チューブの内部空間を流れる呼吸気体の流量が極端に少なくなる恐れがない。したがって、医師などによって予め指示された流量でもって呼吸気体を鼻孔カニューラに供給することに特別な困難性を生じる恐れがない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を鼻孔カニューラ装置に適用した一実施例におけるこの鼻孔カニューラ装置の部分的に省略した正面図である。(実施例1)
【図2】図1に示す鼻孔カニューラ装置が取り付けられたカニューラ着用者の頭部付近の正面図である。(実施例1)
【図3】図1に示す第2の酸素供給用チューブの一部分の拡大斜視図である。(実施例1)
【図4】図3に示す酸素供給用チューブの縦断面図である。(実施例1)
【図5】図3に示す酸素供給用チューブの横断面図である。(実施例1)
【図6】図5に示す酸素供給用チューブの一部分の拡大横断面図である。(実施例1)
【図7】図5に示す酸素供給用チューブにa方向およびb方向から力が加わってこのチューブが押し潰された状態におけるこのチューブの図5と同様の横断面図である。(実施例1)
【図8】図5に示す酸素供給用チューブにc方向およびd方向から力が加わってこのチューブが押し潰された状態におけるこのチューブの図5と同様の横断面図である。(実施例1)
【図9】図5に示す酸素供給用チューブにe方向およびf方向から力が加わってこのチューブが押し潰された状態におけるこのチューブの図5と同様の横断面図である。(実施例1)
【図10】従来の酸素供給用チューブの図5と同様の横断面図である。(従来例1)
【図11】図10に示す酸素供給用チューブにg方向およびh方向から力が加わってこのチューブが押し潰された状態におけるこのチューブの図9と同様の横断面図である。(従来例1)
【発明を実施するための形態】
【0014】
つぎに、本発明の一実施例を、「(1)鼻孔カニューラ装置の概略的構成」、「(2)呼吸気体供給用チューブの構成」および「(3)鼻孔カニューラ装置の作用および効果」に項分けして、図1〜図9を参照しつつ説明する。
【0015】
(1)鼻孔カニューラ装置の概略的構成
鼻孔カニューラ装置1は、図1および図2に示すように、中空構造でフレキシブルな鼻孔カニューラ2と、この鼻孔カニューラ2の両端部にそれらの一端部をそれぞれ連結されている呼吸気体供給用チューブとしての左右一対のフレキシブルで比較的短い第1の酸素供給用チューブ3、4と、これら一対の第1の酸素供給用チューブ3、4の他端部を呼吸気体供給用チューブとしての一本のフレキシブルで比較的短い第2の酸素供給用チューブ5の一端部に連結しているフレキシブルなY字形コネクタ6と、第2の酸素供給用チューブ5の他端部に取り付けられているコネクタ7とを備えている。また、鼻孔カニューラ装置1は、呼吸気体供給用チューブとしての一本のフレキシブルで比較的長い第3の酸素供給用チューブ11と、この第3の酸素供給用チューブ11の両端部にそれぞれ取り付けられたコネクタ12、13とをさらに備えている。そして、コネクタ12は、コネクタ7に着脱自在に連結される。また、コネクタ13は、鼻孔カニューラ装置1の使用時には、酸素タンクなどから成る呼吸気体供給装置(図示せず)に直接に接続されるか、あるいは、上記呼吸気体供給装置から延びている呼吸気体供給用チューブとしての第4の酸素供給用チューブ(図示せず)に接続される。
【0016】
カニューラ2は、図1および図2に示すように、低肺患者などのカニューラ着用者14(図2参照)の鼻15のすぐ下の形状に対応して多少前方に突出するように湾曲しているほぼ水平形状のチューブ状水平部16と、この水平部16の両端部からそれぞれ斜め上方外側に延びている左右一対のチューブ状連結部17a、17bと、水平部16の中間部分からカニューラ着用者14の左右の鼻孔18a、18b(図2参照)にそれぞれ対応するようにほぼ上方に延びている左右一対のチューブ状プロング部(すなわち、枝分れ部)19a、19bとを備えている。そして、上記一対の連結部17a、17bの上端部に左右一対の第1の酸素供給用チューブ3、4がそれぞれ連結されている。
【0017】
これら一対の第1の酸素供給用チューブ3、4の上端部は、図1および図2に示すように、リング21に共通に挿入されている。そして、カニューラ2の水平部16、左右一対の連結部17a、17b、左右一対の第1の酸素供給用チューブ3、4およびリング21から成るループ状部分によって囲まれる開口部22が形成されている。なお、この開口部22は、カニューラ着用者14の両耳23a、23bと顎部24とをほぼ取り囲む形状であって、この開口部22には、図2に示すように、鼻孔カニューラ装置1の使用時にカニューラ着用者14の両耳23a、23bと顎部24とがほぼ挿入される。そして、図2において、リング21を一対の第1の酸素供給用チューブ3、4に対して上昇させることによって、上記開口部22を小さくすることができるとともに、下降させることによって上記開口部22を大きくすることができる。
【0018】
図1にそれぞれ示す鼻孔カニューラ2、左右一対の第1の酸素供給用チューブ3、4、Y字形コネクタ6、第2の酸素供給用チューブ5および第3の酸素供給用チューブ11は、軟質ポリ塩化ビニルなどの柔軟性に富み無臭で軽量なプラスチックから構成されていてよい。そして、第1の酸素供給用チューブ3、4は、第2および第3の酸素供給用チューブ5、11に較べて或る程度細いものであってよい。また、第2の酸素供給用チューブ5も、第3の酸素供給用チューブ11に較べて或る程度細いものであってよい。例えば、図示の実施例においては、第1の酸素供給用チューブ3、4の外径は、約3.3mmに構成され、第2の酸素供給用チューブ5の外径は、約5.5mmに構成され、第3の酸素供給用チューブ11の外径は、約8.0mmに構成されている。さらに、図1および図2から明らかなように、第1および第2の酸素供給用チューブ3〜5のそれぞれの長さは、数十cm程度であってよいが、第3の酸素供給用チューブ11は、2〜12m程度であってよい。
【0019】
(2)呼吸気体供給用チューブの構成
第2の酸素供給用チューブ5の形状、その他の構成は、図3〜図6に示されている。なお、第1の酸素供給用チューブ3、4は、太さおよび必要があれば長さが異なる点を除いて、形状、その他の構成が第2の酸素供給用チューブ5と実質的に同一であってよく、したがって、第2の酸素供給用チューブ5と実質的に相似形状(すなわち、図5に示す横断面形状、図4に示す縦断面形状などが実質的に相似形状)であってよい。また、第3の酸素供給用チューブ11は、長さおよび太さが異なる点を除いて、その構成が第2の酸素供給用チューブ5と実質的に同一であってよく、したがって、第2の酸素供給用チューブ5と実質的に相似形状(すなわち、図5に示す横断面形状、図4に示す縦断面形状などが実質的に相似形状)であってよい。したがって、以下において、第2の酸素供給用チューブ5について詳細に説明し、第1および第3の酸素供給用チューブ3、4、11についての説明は、必要に応じて省略する。
【0020】
図3〜図6に示す第2の酸素供給用チューブ5(以下、「チューブ5」という。)は、基本的には、ほぼ円筒形状などのほぼ筒形状であってよい。ただし、チューブ5の内側表面は、単なる円柱面形状ではなくて、その軸心方向Lにほぼ平行にそのほぼ全長にわたってそれぞれ延びている複数本のほぼ柱状の突条部25a〜25dを備えている。したがって、チューブ5は、筒状部26と複数本の突条部25a〜25dとから構成されている。また、チューブ5の内側表面には、複数本の突条部25a〜25dの間にこれら複数本の突条部25a〜25dの本数と同数の凹条部27a〜27dがそれぞれ構成されている。そして、これら複数本の凹条部27a〜27dは、チューブ5の内周面の軸心方向Lにほぼ平行にそのほぼ全長にわたって延びている。なお、これらの突条部25a〜25d(換言すれば、上記凹条部27a〜27d)の本数は、図示の実施例においては4本であるが、本発明の目的を達成するためには、実用性の観点から見て一般的に、3〜8本の範囲であるのが好ましく、4〜6本の範囲であるのがさらに好ましい。また、上記複数本の突条部25a〜25d(換言すれば、凹条部27a〜27d)は、筒状部26の内周面にほぼ等間隔で配設されているのが好ましい。
【0021】
一方、図3〜図6に示すチューブ5の外側表面は、実質的には、単なる円柱面形状であってよい。ただし、この外側表面は、梨地状、その他の艶消し加工のようなエンボス処理を施されているのが好ましい。この場合、鼻孔カニューラ装置1の使用時におけるチューブ5の外側表面の滑りがよくなり、また、鼻孔カニューラ装置1の使用時におけるチューブ11の汚れが防止され、さらに、鼻孔カニューラ装置1の使用時におけるチューブ5の外側表面での光散乱によってチューブ5の外側表面がちらつくのを防止することができる。また、チューブ5の外側表面は、カニューラ装着者14などの好みに合わせて着色を施されることもできる。
【0022】
本発明の特徴の1つは、チューブ5の硬度を特に小さくしたことである。具体的には、図示の実施例においては、チューブ5の硬度は、HDAで約67である。そして、本発明の目的を達成するためには、実用性の観点から見て一般的に、チューブ5の硬度は、HDA55〜HDA75の範囲であるのが好ましく、HDA60〜HDA70の範囲であるのがさらに好ましい。
【0023】
各突条部25a〜25dの横断面の形状は、ほぼ長方形状、ほぼ台形状などのほぼ四角形状であってよいが、図示の実施例においては、図4〜図6に示すように、ほぼ等脚台形状である。この場合、図6に示す各突条部25a〜25dの横断面の形状において、基端側を下底31とし、先端側を上底32とすると、軸心Lから下底31に下した垂線Pは、交点P1および交点P2においてこれらの下底31および上底32とほぼ直角に交わる。そして、交点P1は、下底31の長さ方向におけるほぼ中心点であり、交点P2は、上底32の長さ方向におけるほぼ中心点である。また、上記等脚台形状の左右一対の脚33a、33bは、下底31から上底32に向かって垂線Pに近づく方向に傾斜している。したがって、本発明においては、各突条部25a〜25dの横断面の形状は、下底31から上底32に向かってほぼ尻すぼまりのほぼ四角形状であるのが好ましい。
【0024】
第1、第2および第3の酸素供給用チューブ3〜5、11の横断面の形状についての具体的な数値を記述すると、つぎの(a)項〜(z8)項に記載のとおりである。そして、つぎの(a)項〜(z8)項におけるかっこ内の数値は、第1の酸素供給用チューブ3、4および第3の酸素供給用チューブ11の横断面の形状についての具体的数値が第2の酸素供給用チューブ5の具体的数値とは異なっている場合において、第1の酸素供給用チューブ3、4および第3の酸素供給用チューブ11の横断面の形状についての具体的数値を示している。具体的には、上記カッコ内の数値のうちの「および」の前の数値は、第1の酸素供給用チューブ3、4についての数値である。また、「および」の後の数値は、第3の酸素供給用チューブ11についての数値である。
(a)チューブ(換言すれば、筒状部26)の外径D1:約5.5mm(約3.3mmおよび約8.0mm)、
(b)突条部25a〜25dが存在しないと考えたときのチューブの内径D2(すなわち、凹条部27におけるチューブまたは筒状部26の内径D2):約3.9mm(約2.35mmおよび約5.67mm)、
(c)突条部25a〜25dが存在しないと考えたときのチューブの肉厚(すなわち、凹条部27におけるチューブの肉厚であって、(外径D1−内径D2)×1/2):約0.8mm(約0.48mmおよび約1.16mm)、
(d)各突条部25a〜25dの下底31の長さ:約0.8mm(約0.48mmおよび約1.16mm)、
(e)各突条部25a〜25dの上底32の長さ:約0.48mm(約0.29mmおよび約0.07mm)、
(f)各突条部25a〜25dの各脚33a、33bの長さ:約0.75mm(約0.45mmおよび約1.09mm)、
(g)各突条部25a〜25dの上底32と下底31との相互の間隔(換言すれば、下底31からの突条部25a〜25dの高さ):約0.65mm(約0.39および約0.95mm)、
(h)軸心Lと各突条部25a〜25dの上底32との相互の間隔:約1.25mm(約0.75mmおよび約2.18mm)、
(i)垂線Pと各脚33a、33bとが相互に成す角度θ1:約12.5°、
(j)各凹条部27の底面34が軸心Lに対して成す角度θ2:約65°、
(k)各突条部25a〜25dの下底31および上底32のそれぞれが軸心Lに対して成す角度θ3およびθ4:約24°および約22°、
(l)上記(a)項に記載の外径D1に対する上記(b)項に記載の内径D2の比(D2/D1):約0.70、
(m)上記(a)項に記載の外径D1に対する上記(c)項に記載の肉厚の比:約0.15、
(n)上記(b)項に記載の内径D2に対する上記(c)項に記載の肉厚の比:約0.21、
(o)上記(a)項に記載の外径D1に対する上記(d)項に記載の長さの比:約0.15、
(p)上記(b)項に記載の内径D2に対する上記(d)項に記載の長さの比:約0.21、
(q)上記(a)項に記載の外径D1に対する上記(e)項に記載の長さの比:約0.09、
(r)上記(b)項に記載の内径D2に対する上記(e)項に記載の長さの比:約0.12、
(s)上記(a)項に記載の外径D1に対する上記(f)項に記載の長さの比:約0.14、
(t)上記(a)項に記載の外径D1に対する上記(g)項に記載の間隔の比:約0.12、
(u)上記(b)項に記載の内径D2に対する上記(g)項に記載の間隔の比:約0.17、
(v)上記(a)項に記載の外径D1に対する上記(h)項に記載の間隔の比:約0.23、
(w)上記(b)項に記載の内径D2に対する上記(h)項に記載の間隔の比:約0.32、
(x)上記(d)項に記載の長さに対する上記(e)項に記載の長さの比:約0.60、
(y)上記(d)項に記載の長さに対する上記(f)項に記載の長さの比:約0.94、
(z1)上記(d)項に記載の長さに対する上記(g)項に記載の間隔の比:約0.81、
(z2)上記(d)項に記載の長さに対する上記(h)項に記載の間隔の比:約1.56、
(z3)上記(e)項に記載の長さに対する上記(f)項に記載の長さの比:約1.55、
(z4)上記(e)項に記載の長さに対する上記(g)項に記載の間隔の比:約1.35、
(z5)上記(e)項に記載の長さに対する上記(h)項に記載の間隔の比:約2.60、
(z6)上記(f)項に記載の長さに対する上記(g)項に記載の間隔の比:約0.87、
(z7)上記(f)項に記載の長さに対する上記(h)項に記載の間隔の比:約1.67、および
(z8)上記(g)項に記載の間隔に対する上記(h)項に記載の間隔の比:約1.92。
【0025】
本発明を呼吸気体供給装置における呼吸気体供給用チューブに適用する場合における好ましい構成を上記(a)項〜(z8)項の記載にそれぞれ対応させて列挙すれば、実用性の観点から見て一般的に、つぎの(A)項〜(Z8)項に記載のとおりである。そして、本発明が適用される呼吸気体供給用チューブは、本発明の目的を達成するためには、実用性の観点から見て一般的に、これらの(A)項〜(Z8)項に記載の構成のうちのいずれか1つの構成または複数の構成もしくは全部の構成を備えているのが好ましい。なお、つぎの(A)項〜(Z8)項におけるかっこ内の数値のそれぞれは、さらに好ましい数値を示している。
(A)チューブの外径D1:2.48〜10.0mm(2.75〜9.3mm)の範囲、
(B)突条部25a〜25dが存在しないと考えたときのチューブの内径D2:約1.76〜7.09mm(1.99〜6.62mm)の範囲、
(C)突条部25a〜25dが存在しないと考えたときのチューブの肉厚:0.36〜1.45mm(0.40〜1.35mm)の範囲、
(D)各突条部25a〜25dの下底31の長さ:0.36〜1.45mm(0.40〜1.35mm)の範囲、
(E)各突条部25a〜25dの上底32の長さ:0.22〜0.88mm(0.24〜0.82mm)の範囲、
(F)各突条部25a〜25dの各脚33a、33bの長さ:0.34〜1.36mm(0.38〜1.27mm)の範囲、
(G)各突条部25a〜25dの上底32と下底31との相互の間隔:0.29〜1.19mm(0.32〜1.11mm)の範囲、
(H)軸心Lと各突条部25a〜25dの上底32との相互の間隔:0.56〜2.73mm(0.62〜2.54mm)の範囲、
(I)垂線Pと各脚33a、33bとが相互に成す角度θ1:6.2°〜18.8°(9.4°〜15.6°)の範囲、
(J)各凹条部27の底面34が軸心Lに対して成す角度θ2:32.5°〜97.5°(48.8°〜81.20°)の範囲、
(K)各突条部25a〜25dの下底31および上底32のそれぞれが軸心Lに対して成す角度θ3およびθ4:12°〜36°および11°〜33°(18°〜30°および16.5°〜27.5°)の範囲、
(L)上記(A)項に記載の外径D1に対する上記(B)項に記載の内径D2の比(D2/D1):0.52〜0.88(0.56〜0.84)の範囲、
(M)上記(A)項に記載の外径D1に対する上記(C)項に記載の肉厚の比:0.076〜0.22(0.10〜0.18)の範囲、
(N)上記(B)項に記載の内径D2に対する上記(C)項に記載の肉厚の比:0.10〜0.32(0.14〜0.26)の範囲、
(O)上記(A)項に記載の外径D1に対する上記(D)項に記載の長さの比:0.076〜0.22(0.10〜0.18)の範囲、
(P)上記(B)項に記載の内径D2に対する上記(D)項に記載の長さの比:0.10〜0.32(0.16〜0.26)の範囲、
(Q)上記(A)項に記載の外径D1に対する上記(E)項に記載の長さの比:0.044〜0.14(0.068〜0.10)の範囲、
(R)上記(B)項に記載の内径D2に対する上記(E)項に記載の長さの比:0.060〜0.18(0.08〜0.16)の範囲、
(S)上記(A)項に記載の外径D1に対する上記(F)項に記載の長さの比:0.070〜0.20(0.10〜0.18)の範囲、
(T)上記(A)項に記載の外径D1に対する上記(G)項に記載の間隔の比:0.06〜0.18(0.08〜0.16)の範囲、
(U)上記(B)項に記載の内径D2に対する上記(G)項に記載の間隔の比:0.085〜0.26(0.12〜0.22)の範囲、
(V)上記(A)項に記載の外径D1に対する上記(H)項に記載の間隔の比:0.12〜0.34(0.16〜0.30)の範囲、
(W)上記(B)項に記載の内径D2に対する上記(H)項に記載の間隔の比:0.16〜0.48(0.24〜0.40)の範囲、
(X)上記(D)項に記載の長さに対する上記(E)項に記載の長さの比:0.30〜0.90(0.44〜0.76)の範囲、
(Y)上記(D)項に記載の長さに対する上記(F)項に記載の長さの比:0.46〜1.42(0.70〜1.18)の範囲、
(Z1)上記(D)項に記載の長さに対する上記(G)項に記載の間隔の比:0.40〜1.22(0.60〜1.00)の範囲、
(Z2)上記(D)項に記載の長さに対する上記(H)項に記載の間隔の比:0.78〜2.34(1.16〜1.96)の範囲、
(Z3)上記(E)項に記載の長さに対する上記(F)項に記載の長さの比:0.78〜2.32(1.16〜1.94)の範囲、
(Z4)上記(E)項に記載の長さに対する上記(G)項に記載の間隔の比:0.68〜2.02(1.00〜1.70)の範囲、
(Z5)上記(E)項に記載の長さに対する上記(H)項に記載の間隔の比:1.30〜3.90(1.94〜3.26)の範囲、
(Z6)上記(F)項に記載の長さに対する上記(G)項に記載の間隔の比:0.44〜1.30(0.66〜1.08)の範囲、
(Z7)上記(F)項に記載の長さに対する上記(H)項に記載の間隔の比:0.84〜2.50(1.25〜2.08)の範囲、および
(Z8)上記(G)項に記載の間隔に対する上記(H)項に記載の間隔の比:0.96〜2.88(1.44〜2.40)の範囲。
【0026】
(3)鼻孔カニューラ装置の作用および効果
図1に示す鼻孔カニューラ装置1を用いて低肺患者などのカニューラ着用者14に呼吸気体供給装置からの呼吸気体を供給するときには、つぎに記述する手順で行えばよい。
【0027】
まず、従来から一般的に知られているように、コネクタ13を呼吸気体供給源としての呼吸気体供給装置(例えば、酸素供給装置)に連結する。また、図2に示すように、鼻孔カニューラ2の左右一対のチューブ状プロング部19a、19bをカニューラ着用者14の左右の鼻孔18a、18bにそれぞれ挿入する。さらに、リング21を上下動させて、鼻孔カニューラ装置1の開口部22が、カニューラ着用者14の両耳23a、23bと顎部24とをほぼ取り囲むようにする。なお、上述のような幾つかの手順は、どのような順序で行われてもよい。そして、上述のような手順で鼻孔カニューラ装置1がカニューラ着用者14に装着されてから、呼吸気体供給装置から鼻孔カニューラ2に呼吸気体を供給すれば、従来から一般的に知られている鼻孔カニューラ装置の場合と同様に、カニューラ着用者14は、鼻孔カニューラ装置1(ひいては、鼻孔カニューラ2)を介して、呼吸気体の供給を受けることができる。
【0028】
図1および図2に示す鼻孔カニューラ装置1においては、第1〜第3の酸素供給用チューブ3〜5、11の硬度がHDAで約67と小さいから、これらのチューブ3〜5、11は十分な柔軟性を有している。したがって、鼻孔カニューラ装置1をカニューラ着用者14に装着するときに、この装着や鼻孔カニューラ装置1の取扱いのいずれもが容易である。特に、カニューラ着用者14に最も近くに位置することになる第1の酸素供給用チューブ3、4が十分な柔軟性を有しているから、上述のように、鼻孔カニューラ装置1の開口部22にカニューラ着用者14の両耳23a、23bおよび顎部24を通す操作を非常にスムースに行うことができる。
【0029】
また、鼻孔カニューラ装置1の使用中に、第1〜第3の酸素供給用チューブ3〜5、11が何らかの理由で押し潰されたり折り曲げられたりしても、第1〜第3の酸素供給用チューブ3〜5、11の内部空間35を流れる呼吸気体の流量が極端に少なくなる恐れがない。第2の酸素供給用チューブ5を図示している図5〜図9を参照してこの点を説明すると、チューブ3〜5、11が押し潰されたり折れ曲がったりしていない場合には、中空構造を有するチューブ3〜5、11の内部空間35は、図5に示すように、突条部25a〜25dを除いてほぼ完全な円形に保持されている。そして、図5におけるa方向およびb方向からチューブ3〜5、11に力が加わると、図7に示すように、互いに対向する一対の突条部25b、25dのそれぞれの上底32が互いに当接するために、チューブ3〜5、11の内部空間35は、軸心方向Lには部分的に、多少減少する。また、図5におけるc方向およびd方向からチューブ3〜5、11に力が加わると、図8に示すように、互いに隣接する一対の突条部25a、25dのそれぞれの角部が互いに当接するとともに、互いに隣接する一対の突条部25b、25cのそれぞれの角部36が互いに当接するために、チューブ3〜5、11の内部空間35は、軸心方向Lには部分的に、多少減少する。さらに、図5におけるe方向およびf方向からチューブ3、5、11に力が加わると、図9に示すように、突条部25a〜25dの上底32が4つの凹条部27のうちのいずれか1つにそれぞれ当接するために、チューブ3、5、11の内部空間35は、軸心方向Lには部分的に、或る程度減少する。しかし、図7、図8および図9に示すいずれの場合にも、チューブ3、5、11の内部空間は或る程度の面積を確保されており、しかも、このような面積の減少は、軸心方向Lには、部分的にしかすぎない。したがって、呼吸気体を予め指示された流量でもって鼻孔カニューラ2に供給することに特別な困難性を生じる恐れがない。
【0030】
以上において、本発明の一実施例について詳細に説明したが、本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている発明の趣旨に基づいて各種の変更および修正が可能である。
【0031】
例えば、上述の実施例においては、本発明を鼻孔カニューラ装置に適用したが、本発明は、酸素マスク装置などの口マスク装置、その他の医療用などの装置や器具などにも適用することができる。
【0032】
また、上述の実施例においては、各突条部25a〜25dは、チューブ3、5、11の内周面(換言すれば、筒状部26)の軸心方向Lにほぼ平行に延びている。しかし、各突条部25a〜25dは、上記軸心方向Lにほぼらせん状などにかつ互いにほぼ平行に延びていてもよい。
【0033】
また、上述の実施例においては、各突条部25a〜25dの横断面の形状における左右一対の脚(換言すれば、左右一対の側面)33a、33bのそれぞれは、ほぼ直線状である。しかし、これらの脚33a、33bのそれぞれは、外側または内側に膨出するように円弧状などに湾曲していてもよく、また、折れ線状に折曲していてもよく、さらに、湾曲しかつ折曲していてもよい。
【符号の説明】
【0034】
3 第1の酸素供給用チューブ(呼吸気体供給用チューブ)
4 第1の酸素供給用チューブ(呼吸気体供給用チューブ)
5 第2の酸素供給用チューブ(呼吸気体供給用チューブ)
11 第3の酸素供給用チューブ(呼吸気体供給用チューブ)
25a ほぼ柱状の突条部
25b ほぼ柱状の突条部
25c ほぼ柱状の突条部
25d ほぼ柱状の突条部
26 筒状部
31 下底(基端側)
32 上底(基端側、ほぼ平坦な面)
L 軸心方向(軸心)
D1 外径
D2 内径
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックから中空構造に構成されている呼吸気体供給用チューブにおいて、
上記チューブが、HDA55〜HDA75の範囲の硬度を有するプラスチックから構成され、
上記チューブが、筒状部と、この筒状部の内周面にそれぞれ一体的に形成された複数本の突条部とを備え、
上記突条部のそれぞれが、上記筒状部のほぼ軸心方向に延びており、
上記チューブの横断面においては、上記突条部の先端側が、上記チューブの軸心にほぼ向いているほぼ平坦な面に構成されていることを特徴とする呼吸気体供給用チューブ。
【請求項2】
上記チューブが、HDA60〜HDA70の範囲の硬度を有するプラスチックから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の呼吸気体供給用チューブ。
【請求項3】
上記突条部の本数が3〜8本の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の呼吸気体供給用チューブ。
【請求項4】
上記チューブの横断面においては、上記突条部のそれぞれの形状が基端側から先端側に向かってほぼ尻すぼまりのほぼ四角形状であることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか1つに記載の呼吸気体供給用チューブ。
【請求項5】
上記チューブの横断面においては、上記筒状部の外径に対する上記突条部のそれぞれのほぼ平坦な面の長さの比が、0.044〜0.14の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか1つに記載の呼吸気体供給用チューブ。
【請求項6】
上記チューブの横断面においては、上記筒状部の内径に対する、上記筒状部の軸心と上記突条部のそれぞれの上記ほぼ平坦な面との相互の間隔の比が、0.16〜0.48の範囲であることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか1つに記載の呼吸気体供給用チューブ。
【請求項7】
上記突条部のそれぞれが、上記チューブの内周面の軸心方向にほぼ平行に延びていることを特徴とする請求項1〜6のうちのいずれか1つに記載の呼吸気体供給用チューブ。
【請求項8】
請求項1〜7のうちのいずれか1つに記載の呼吸気体供給用チューブが、呼吸気体供給源から鼻孔カニューラまで呼吸気体を供給するための呼吸気体供給用チューブのうちの少なくとも一部分に用いられていることを特徴とする鼻孔カニューラ装置。
【請求項9】
請求項1〜7のうちのいずれか1つに記載の呼吸気体供給用チューブが、呼吸気体供給源から口マスクまで呼吸気体を供給するための呼吸気体供給用チューブのうちの少なくとも一部分に用いられていることを特徴とする口マスク装置。
【請求項1】
プラスチックから中空構造に構成されている呼吸気体供給用チューブにおいて、
上記チューブが、HDA55〜HDA75の範囲の硬度を有するプラスチックから構成され、
上記チューブが、筒状部と、この筒状部の内周面にそれぞれ一体的に形成された複数本の突条部とを備え、
上記突条部のそれぞれが、上記筒状部のほぼ軸心方向に延びており、
上記チューブの横断面においては、上記突条部の先端側が、上記チューブの軸心にほぼ向いているほぼ平坦な面に構成されていることを特徴とする呼吸気体供給用チューブ。
【請求項2】
上記チューブが、HDA60〜HDA70の範囲の硬度を有するプラスチックから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の呼吸気体供給用チューブ。
【請求項3】
上記突条部の本数が3〜8本の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の呼吸気体供給用チューブ。
【請求項4】
上記チューブの横断面においては、上記突条部のそれぞれの形状が基端側から先端側に向かってほぼ尻すぼまりのほぼ四角形状であることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか1つに記載の呼吸気体供給用チューブ。
【請求項5】
上記チューブの横断面においては、上記筒状部の外径に対する上記突条部のそれぞれのほぼ平坦な面の長さの比が、0.044〜0.14の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか1つに記載の呼吸気体供給用チューブ。
【請求項6】
上記チューブの横断面においては、上記筒状部の内径に対する、上記筒状部の軸心と上記突条部のそれぞれの上記ほぼ平坦な面との相互の間隔の比が、0.16〜0.48の範囲であることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか1つに記載の呼吸気体供給用チューブ。
【請求項7】
上記突条部のそれぞれが、上記チューブの内周面の軸心方向にほぼ平行に延びていることを特徴とする請求項1〜6のうちのいずれか1つに記載の呼吸気体供給用チューブ。
【請求項8】
請求項1〜7のうちのいずれか1つに記載の呼吸気体供給用チューブが、呼吸気体供給源から鼻孔カニューラまで呼吸気体を供給するための呼吸気体供給用チューブのうちの少なくとも一部分に用いられていることを特徴とする鼻孔カニューラ装置。
【請求項9】
請求項1〜7のうちのいずれか1つに記載の呼吸気体供給用チューブが、呼吸気体供給源から口マスクまで呼吸気体を供給するための呼吸気体供給用チューブのうちの少なくとも一部分に用いられていることを特徴とする口マスク装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−15731(P2011−15731A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160740(P2009−160740)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(390022541)アトムメディカル株式会社 (38)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(390022541)アトムメディカル株式会社 (38)
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