説明

呼気圧力調整式人工呼吸器

本発明は、使用者の気道に気体流を供給しかつ制御された方法により使用者の気道からの気体流を伝達する人工呼吸器に関する。人工呼吸器は、患者の気道からの気体流を搬送する導管(1,3)と、導管に動作連結しかつ導管から排出される気体流の圧力又は流量を制御する第1の弁(7)と、導管に動作連結されかつ導管内の気体の圧力を監視する第1のセンサ(10)と、第1のセンサの出力に基づいて第1の弁を制御する制御部(12)とを備える。流量制限器(8)は、圧力センサと患者との間の導管内に設けられ、第1の弁と流量制限器との間の導管内に第1の容量が形成されると共に、患者と流量制限器との間の導管内に第2の容量が形成さる。制御部は、第1のセンサにより監視される第1の容量内の圧力に基づいて第1の弁の作動を制御する。

【発明の詳細な説明】
【優先権主張】
【0001】
本特許出願は、2004年11月11日に出願したスウェーデン特許出願第0402741−0号に基づく優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、使用者(患者、被験者)の気道に気体流を供給する人工呼吸器、特に、呼気間の圧力制御を改善できる人工呼吸器に関する。
【背景技術】
【0003】
二対アーム人工呼吸器又は麻酔装置を利用して、酸素、空気又はその他の呼吸用気体又は混合気体等の流体を患者の気道に供給し、患者自身の換気動作を増大させ、補充し又は代替させることは、周知である。用語「人工呼吸器」は、麻酔薬、補充気体、噴霧剤(エーロゾル剤)、粉末状薬剤若しくは何らかの他の物質又は患者の気道に供給できることが既知の流体等の他の治療薬の供給と気体とを組み合わせて又は気体単独で、使用者の気道に気体流又は加圧気体を供給する全ての装置又は器具を指称する。前記状態では、呼吸周期の呼気段階に患者から排出される気体の圧力、流量及び/若しくは流量体積を正確に調整又は制御する性能が重要である。
【0004】
従来の人工呼吸器では、患者からの呼気気体流は、二対アーム回路の呼気アームに流入する。呼気アームから排出される気体流は、排気弁を使用する多くの方法により制御される。例えば、オン/オフ排気弁又は比例排気弁を呼気アームに設けて、人工呼吸器装置から搬送される排気気体の流量を制御することは、公知である。排気気体の流量制御により、換気回路の圧力も制御される。
【0005】
吸気間に排気弁を完全に閉弁しかつ呼気間に完全に開弁する場合が多い。呼気間に比較的障害のない(開弁状態)経路を形成すると、呼気間に最高の快適性を患者に与えることができる。しかしながら、呼気の終期に患者の肺内を特定の圧力に維持する必要な場合もある。例えば、肺胞(気体交換が行われる気管支の末端の半球状の膨出部分)を拡張状態に維持して、肺の圧潰を防止するのにこの最終圧力が必要である。呼気の終期のこの最終圧力は、呼気終末陽圧(PEEP)と通常指称される。
【0006】
特定の呼吸終末陽圧(PEEP)を維持するため、呼気アーム内に圧力センサを設け、圧力センサの出力に基づいて制御部により排気弁の作動及び/又は位置を調整することは、公知である。呼気の流量/圧力を正確に制御するため、例えば、周知の比例積分(PI)制御部又は比例積分微分(PID)制御技術を使用する「閉回路」又は「帰還回路」形態により制御部が構成される。人工呼吸器により排気弁の作動を制御して、呼気間の呼吸終末陽圧(PEEP)を調整することができる。更に、換気モード、圧力レベル又は他の状態に依存すべきとき又はこれが望ましいときに、呼吸周期の他の期間のみならず、吸気段階でも排気弁を制御することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特に、患者が自発的に呼吸するとき、極力呼気抵抗を低減することが重要である点は十分に立証されている。従って、比較的大きな容量を有する排気弁を使用して、排気弁の圧力降下を最小化する場合もある。しかしながら、大容量の排気弁では、流量の微細な調整を要する呼吸終末陽圧(PEEP)の制御がより困難になる。また、排気弁が大型化する程、排気弁を「微調整」して呼吸終末陽圧(PEEP)レベルを正確(厳密)に維持することが益々困難となる。
【0008】
従来の人工呼吸器の呼吸終末陽圧(PEEP)の調節に伴う他の問題は、比較的大きな容量に対して制御装置による調整を行うとき、固有の不安定性を生ずる点である。大きな容量は、呼気アーム内の容量と肺容量とを含む。搬送すべき気体質量と流れ抵抗とを伴う大きな容量により、気体流の搬送に遅延と不安定性が生じる。例えば、流体の体積流量が大きい程、流体の移動時間が長くなるので、大きな流体体積内に発生する圧力変化を伴う流体の移動時間中に圧力を制御する性能が悪化する。換言すれば、制御装置により制御する流体の体積流量が大きい程、制御装置は、容量内の圧力変化に対して益々遅れて反応する。更に、患者回路(患者管)と患者自身とに含まれる内部流れ抵抗及び気体容量は、排気弁が誘起する圧力変更作用に影響を与え、延いては装置全体に影響を与える。
【0009】
患者管及び患者の呼吸器系は、弾性(エラスタンス)と呼ばれるある程度の固有可撓性を有するため、圧力変化により呼吸器系の容量が膨張又は収縮して、圧力を制御する制御装置の容量が変化する。排気弁の動作を制御する制御装置が圧力を増加又は減少するときに気体容量が変化すると、制御装置によりその気体容量を特定の呼吸終末陽圧(PEEP)に正確に制御することが一層困難になることは、理解できよう。更に、流体自体が圧縮性を有する。排気弁と圧電変換器(圧力センサ)との間に圧力が発生するとき、流体の圧縮性は、圧力の低周波数成分のみを通過させる濾波作用を生じる。従って、排気気体の制御装置により、正確、迅速かつ安定に圧力を制御することは困難である。
【0010】
呼吸終末陽圧(PEEP)制御に伴う頻繁に生じる別の問題は、制御装置により圧力を正しい呼吸終末陽圧(PEEP)に調整するとき、正しい呼吸終末陽圧(PEEP)に対するオーバーランにより、圧力の増大及び減少がしばしば発生することである。圧力の減少時に、制御装置から気体が除去されているため、厳しい許容範囲内に制御できずに、過度に急速に気体が除去されると、気体の過放出が生じて、最悪の場合、肺胞が圧潰する。患者が新生児又は小さな肺容量を持つ児童の場合、制御装置から気体が排出される圧力減少により、肺内の気体が急激に排気され、これは、特に問題である。換言すれば、小さい肺容量の患者では、厳密に圧力減少を制御しなければ、肺から多量の気体が排出されて、肺の圧潰を生ずる危険がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従って、本発明の目的は、従来の人工呼吸器の欠点を解決する人工呼吸器を提供することである。この目的は、患者の気道から気体流を搬送する導管と、導管に連結されかつ導管から排出された気体流量の圧力又は流量を制御する第1の弁と、導管に連結されかつ導管内の気体の圧力を監視する第1のセンサと、第1のセンサの出力に基づいて第1の弁を制御する制御部とを備える本発明の一実施の形態による人工呼吸器を提供することにより達成される。また、圧力センサと患者との間の導管に流量制限器(絞り弁、リストリクタ)を設けて、第1の弁と流量制限器との間の導管に第1の容量が形成され、患者と流量制限器との間の導管内に第2の容量が形成される。制御部は、第1のセンサが監視する第1の容量の圧力に基づいて第1の弁の作動を制御する。
【0012】
参照符号により各図の対応する部分を示す添付図面に関する以下の説明、特許請求の範囲及び本明細書の全構成部分により、本発明の前記目的及び他の目的、特徴及び特性、構造の関連要素の操作法及び機能、部品の組み合わせ並びに製造経済性は、明らかとなろう。しかしながら、図面は、図示及び説明の目的に過ぎず、発明の範囲を制限しないものであることは、明確に理解できよう。別途明記しない限り、明細書及び特許請求の範囲に使用する用語「1つ(a)」、「1つ(an)」及び「その(the)」の単数形は、複数の対象を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の原理による人工呼吸器の呼気部のみを示す図1及び図3について以下説明する。例えば、図1では、人工呼吸器の吸気構成部、Y型接続器(Yコネクタ)、患者又は患者の気道に人工呼吸器の管類を接続する患者界面体を省略する。その代わり、図1は、本発明の特徴に重点を置き、患者から周囲大気までの気体流を制御する人工呼吸器回路の呼気アームに接続される呼気構成要素を示す。
【0014】
図1に示すように、導管1は、二対アーム人工呼吸器回路の呼気アームの少なくとも一部を形成し、患者からの気体の呼気流21の少なくとも一部は、導管1により患者から搬送される。図示の実施の形態では、流量制限器8により導管1の一部3内の気体流23に流量制限を与える。流量制限器8は、導管1に連結される空洞部9と患者との間に配置される。空洞部9に接続される出口導管5に設けられる第1の排気弁7は、制御装置から周囲大気まで排出される気体流25を制御する。空洞部9の圧力を測定する第1の圧力センサ10は、再構成を行う流量制限器8の下流で制御装置の空洞部9に接続される。詳細には、図示の実施の形態の第1の圧力センサ10は、空洞部9に連結される。第1の圧力センサ10の出力は、制御部12に付与される。制御部12は、第1の圧力センサ10の出力に基づいて第1の排気弁7の動作を制御する。
【0015】
この気体回路構成より、第1の排気弁7と流量制限器8との間の導管1内に第1の容量VB(図1に図示せず)が形成されると共に、患者と流量制限器8との間の導管1内に第2の容量VC(図1に図示せず)が形成される。第1の容量VBは、空洞部9内の容量と、空洞部9と第1の排気弁7との間の出口導管5の一部内の容量とを含む。第1の圧力センサ10は、第1の容量VBの圧力を測定する。本発明は、空洞部9を除去して、空洞部9により供給される付加容量を省略することも企図する。即ち、空洞部9は、任意であり、流量制限器8と第1の排気弁7との間に制御すべき十分な容量VBが存在する限り、空洞部9を省略することができる。第2の容量VCは、導管1の一部3内の容量を含む導管1の容量と、患者の気道内及び肺内の容量と、患者界面装置内の容量とを含む。
【0016】
本発明は、第1の容量VBを可変容量とすることも企図する。例えば、ピストン、折畳式管又は選択的に容量を変更する他のあらゆる装置を容量VBに連結し、例えば、第1の排気弁7と流量制限器8との間の導管1に調節可能な容量を連結して、第1の容量VBを調節しかつ制御することができる。例えば、第1の容量VBと第2の容量VCとの間に特定の比率を保持することが望ましい場合に、これは有効である。
【0017】
流量制限器8の機能を十分に理解するため、従来の換気装置の呼気部に使用する圧力/容量/流量制御法をまず説明する。図2に示すように、排気弁Vの上流に容量VAで示す比較的大きな物理的容量が存在する。容量VAは、人工呼吸器内の複数の導管1の容量と、人工呼吸器の外部連結部に接続される可撓性の患者回路(呼気アーム)と、患者の気道に患者回路を接続する患者界面装置と、口、上気道、気管及び肺を含む患者の気道とを含む。従来の人工呼吸器では、比較的大きな容量VAは、圧力センサPにより監視される。制御部C及び排気弁Vを備える制御装置は、圧力センサPが監視する媒介変数(パラメータ)に基づいて換気装置を正確に制御する。例えば、5cmH2O(水柱センチメートル)の呼吸終末陽圧(PEEP)を患者に供給する場合、圧力センサPは、実際の圧力を測定し、制御部Cは、排気弁Vを調整して、その目標圧力で気体流を供給する。
【0018】
しかしながら、制御装置は、固有の不安定性を生ずる比較的大きな容量VAを事実上制御するため、この種の制御装置では、有効な圧力制御が困難である。例えば、大容量の流体では、大きい容量の流体程、流体の移動時間が益々長くなるので、大きな流体体積に発生する圧力変化を伴う流体の移動時間中に、圧力制御性能が悪化する。換言すれば、制御装置が制御する容量VAが大きい程、制御装置は、益々緩慢に圧力変化に対応する。また、排気弁Vによる圧力制御性能に影響を与え、延いては換気装置全体に影響を及ぼす内部抵抗と容量とを患者回路(患者管)及び患者自身が備えている。患者管及び患者の呼吸器官は、弾性(エラスタンス)と称する一定の固有可撓性を有するため、圧力変化により患者管及び患者の呼吸器官内の容量が膨張又は収縮し、制御装置が制御する容量が変化する。制御部Cにより圧力を増加又は減少させるときに容量が変動するので、制御装置が特定の圧力レベルに容量を正確に制御することが困難となることは、理解できよう。また、流体自体が圧縮性を有する。流体の圧縮性により、排気弁Vと圧電変換器(圧力センサ)Pとの間に発生する圧力の低周波数成分を通過させる濾波作用が生じる。このように、圧電変換器(圧力センサ)Pにより圧力を測定し、測定した信号を使用して、正確、迅速かつ安定に圧力を制御することは、制御装置には困難である。
【0019】
図3に示すように、流量制限器8は、本質的に、容量VAを2つの小さい容量VBと容量VCとに分割する。第1の圧力センサ10は、第1の排気弁7に接近する小さい容量VBの圧力を測定するように配置され、制御装置(制御部12及び第1の排気弁7を備える)は、小さい容量VBの圧力を制御するように配置される。本発明の例示的な実施の形態では、容量VCは、容量VBの少なくとも2倍である。しかしながら、本発明は、容量VCが容量VBの10倍又はそれ以上でもよいことを企図する。
【0020】
制御装置は、容量VBの圧力を制御する。容量VBは、固有不安定性の低い比較的小さい容量であり、例えば、流れ抵抗が小さく、内部弾性(エラスタンス)が低く、加速する気体質量が小さくかつ容量VB内に含まれる流体容量が比較的小さいので、制御装置は、容量VAより良好に容量VBの圧力を安定、正確かつ迅速に制御することができる。このように、流量制限器8は、大きな容量VCから圧力制御閉回路を部分的に分離するので、制御装置が小さな容量VBの圧力を容易かつ正確に制御することができる。
【0021】
容量VBとVCとの間は、流量制限器8を介して流体接続される。従って、容量VBに対する圧力制御を微小な時差又は時間遅延で容量VCに伝達することができる。しかしながら、有用な異なる容量を容量VBとVCとに与えたまま、時間遅延を最小化するように流量制限器62の大きさを適宜選択して、制御装置を所望の精度で動作させることは、当業者に理解されよう。患者が体験する圧力を適切に制御するのに十分な量の気体流が流量制限器8を通るように、流量制限器8を構成できることも留意すべきである。
【0022】
人工呼吸器の呼気アームを意図的に制限することは、従来の人工呼吸器本来の機能から予測できないであろう。従来の知見では、少なくとも呼吸終末陽圧(PEEP)レベルに達するまで、患者内に存在する気体流は極力小さい流れ抵抗を持ち、再び最小量の圧力降下で患者が快適に呼気を行うべきであった。
【0023】
本発明の例示的な実施の形態では、予め決められた圧力流量曲線を生ずるように流量制限器8が構成される。この圧力流量曲線は、例えば、線形又は非線形等の様々な形状の何れか1つでよい。本発明は、所望の圧力流量曲線を生ずる流量制限器8の様々な形態を企図する。流量制限器8は、例えば、導管1の流路中に配置される網部材、篩部材、濾膜又は空気力学的に形成される単一若しくは複数の固定部材である。流量制限器8は、開口部又は形状を変形させて、圧力又は流量を変更する開閉弁、薄板又は羽根等の1つ又は2つ以上可動部材を備える。本発明は、導管1に流量制限器8を着脱可能に取り付けて、異なる範疇の患者に異なる寸法、形状又は構造の流量制限器8を選択することも企図する。これにより、流量制限器8を容易に清浄することもできる。
【0024】
また、調節可能な流量制限構造を流量制限器8に設けて、手動で又は自動的に流量制限率を制御することもできる。例えば、本発明は、制御装置及び/又は患者の監視状態に基づき、制御部12により流量制限器8の制限量を調整して、複数の前記目標を調和する適切な制限量を流量制限器8に付与することを企図する。
【0025】
更なる例示的な実施の形態では、流量制限器8による流体への流量制限を可変にして、容量VBとVCとの間の液体移動量を力学的に調整し、例えば、低い分時容量に対して流量制限を最大値に調整して、容量VCの圧力を極力迅速に制御することができる。これは、高精度でかつ迅速に圧力を制御して、小さな分時容量を制御すべき場合のある児童又は新生児の換気に特に有効である。同様に、大きい分時換気量が必要なとき、流量制限を解除して、未だ流量制限状態にあっても、所与の圧力差に対して人工呼吸器の呼気部により瞬間的に高流量を発生することができる。前記のように、例えば、着脱自在に流路中に挿入する網体又は空気力学的形状を有する部材による流量制限器8の可変流量制御機能を種々の方法で実施することができる。
【0026】
本発明の例示的な実施の形態では、制御部12は、例えば、所望の呼吸終末陽圧(PEEP)レベル等の予め決められた圧力に第1の圧力センサ10が監視する空洞部内の圧力を維持する比例積分微分(PID)制御部である。勿論、本発明は、例えば、呼吸周期の吸気段階又は呼気段階の予め決められたデータに従う等、他の如何なる方法で容量VB内の圧力を制御することも企図する。
【0027】
図1に示すように、本発明は、患者から周囲大気に第2の排気気体流22を排出する第2の導管2を備えることを企図する。導管2に設けられる第2の排気弁6により周囲大気への排気ガス24の流量が制御される。図示の実施の形態では、第2の排気弁6は、制御部12の制御により動作される。第2の排気弁6の出口に任意の導管4が接続される。図4に示すように、この第2の排気流路は、本質的に流量を制限せずに容量VCを周囲大気に直接連結する。
【0028】
この排気気体流用の第2の排気流路の目的は、呼気間に最小流れ抵抗を有する気体流路を形成することである。従って、患者から周囲大気まで最小の圧力降下となるように、導管2及び第2の排気弁6が構成されかつ配置される。
【0029】
本発明は、呼吸終末陽圧(PEEP)の制御を要ないとき、第1の排気弁7を閉じたまま、第2の排気弁6を作動して、人工呼吸器回路VCの呼気部内の圧力を制御することを企図する。しかしながら、呼吸終末陽圧(PEEP)が望ましいとき、第2の排気弁6を使用して、容量VC内の圧力を「概略」制御し、第1の排気弁7を使用して、前記理由により容量VBの圧力を容易に制御することにより、容量VC内の圧力を「微細」制御することができる。
【0030】
呼吸終末陽圧(PEEP)による呼気間に、まず第2の排気弁6を開弁して、所望の呼吸終末陽圧(PEEP)レベルに向かって容量VC内の圧力が急激に変化する。本発明は、人工呼吸器回路(容量)VCの呼気部の圧力を監視する第2の圧力センサ11を設けることを企図する。第2の圧力センサ11の出力に基づき、制御部12により第2の排気弁6を制御することができる。所望の呼吸終末陽圧(PEEP)レベルに患者圧力が近づくとき、第2の排気弁6を閉弁し、第1の排気弁7は、第1の圧力センサ10の出力に基づいて、引き続き呼吸終末陽圧(PEEP)を可変制御する。
【0031】
留意すべきは、本発明は、可変流量制限器を流量制限器8に使用することを企図する。この場合、流量制限器8による再構成が、十分に大きな可変制限範囲(ダイナミックレンジ)を備えれば、第2の排出流経路から第2の排気弁6を省略してもよい。例えば、本発明は、第2の排気弁6を全開状態に開弁して得られる呼気抵抗に、可変制限を達成する呼気抵抗を匹敵させることを企図する。大きな呼気流量を有する身体の大きい患者は、子供より小さい呼気流量制限を要するので、呼気間に呼吸抵抗を体験する両患者のため、異なる範疇の患者に可変流量制限を適用できる利便性も有する。
【0032】
流量制限器8に生じる圧力降下を使用して、気体流23の流量を測定してもよいことに留意すべきである。即ち、流量センサの一部として流量制限器8を構成できる。
【0033】
比例積分微分(PID)制御部12の例示的な実施の形態を図5について説明する。容量VB内の圧力は、第1の圧力センサ10により測定され、容量VC内の圧力は、第2の圧力センサ11により測定される。切替器(スイッチ)18,19は、第1の排気弁6及び第2の排気弁7の作動を制御する弁アクチュエータ16,17を各々制御する。本実施の形態では、開離切替弁制御は、閉弁を意味する。即ち、切替器18又は切替器19が開離(オフ)されるとき、第2の排気弁6又は第1の排気弁7は、各々閉弁される。
【0034】
切替器19が閉成されるとき、弁アクチュエータ17は、第2の排気弁6を閉弁して、呼気アーム21内の圧力を増大し、容量VCは、第2の圧力センサ11により検出される。第2の圧力センサ11の出力は、加算器35に付与され、そこで、例えば、設定された呼吸終末陽圧(PEEP)である設定点圧力Pset40から第2の圧力センサ11の出力が減算される。加算器35の出力は、比例積分微分(PID)制御部34に付与される。精度と安定性に限界があるが、この制御閉回路により、容量VC内の圧力を所望の圧力に迅速に制御することができる。
【0035】
容量VC内の圧力が所望の圧力に達し又はそれに近い圧力のときに、切替器19をオフに切り替えると、弁アクチュエータ17の電源が切断される。同時に、切替器18は、弁アクチュエータ16(第2の排気弁7)と、第1の圧力センサ10と、加算器25と備えて容量VB内の圧力を制御する第2の制御閉回路に接続される。この第2の制御閉回路は、前記制御閉回路と同様に機能するが、患者圧力センサ(第2の圧力センサ)11からの信号により補償ブロック(補償圧力制御装置)26で設定点圧力Pset40を補償する点で相違する。
【0036】
しかしながら、容量VC又はVAとは対照的に、流量制限器8により、この第2の制御閉回路が作動して、主に小さい容量VB内の圧力を制御するので、第2の制御閉回路は、より安定する。このように、調整器は、補償ブロック26により所望の患者圧力に向かって圧力を調整すると同時に、安定な圧力制御を達成することができる。特に流量制限8を通る気体流23が存在するとき、補償ブロック26は、加算器27に付与される設定値を調整する。圧力制御過程間に、流動する気体流23が形成され、呼気間に人工呼吸器に迂回流(バイパス流)を生じても、気体流23は、一定流成分をとしてもよい。
【0037】
上記のように、本発明は、流量制限器8を可変制限器とすることができる、即ち、流量制限器により与えられる流量制限の形状(配置)及び/又は流量制限量を調節又は変更できることを企図する。図6は、第1の排気弁7'の作動に基づいて可変流量制限器50に付与される流量制限量を制御する可変流量制限器50の例を示す略示断面図である。詳細には、可変流量制限器50は、第1の排気弁7'に機械的に連結され、第1の排気弁7'の位置を変更して、呼気流量を制限する第1の排気弁7'の開口の大きさ及び/又は形状を変更することができる。
【0038】
本実施の形態では、第1の排気弁7'は、矢印52により示すように、弁座34に対して進退自在に移動できる弁板(プレート)33を備える。機械的連結部は、駆動装置56により移動される軸30を備え、駆動装置56を使用して弁板33を移動し、これにより、第1の排気弁7'の開弁量が制御される。アクチュエータ56は、可撓性膜60により弁室58の気体出口から分離される。
【0039】
第1の排気弁7'を制御するとき、アクチュエータ56が軸30を移動し、軸30を介して弁板33と流量制限器本体62との間が機械的に連結されるので、可変流量制限器50の流量制限器本体62も移動する。このように、気体流路23中の可変流量制限は、容量9の上流に設けられる。呼気流に対する最小の流れ抵抗で大きい呼気流が必要な場合、弁座34から離間して弁板33を移動することにより、アクチュエータ56は、第1の排気弁7'を開弁する。これにより、軸30を介して空洞部9に向かい流量制限器本体62を移動して、可変制限器50に付与される流量制限の大きさを減少し、患者回路の呼気アーム内に流量制限が少ないか又は全く生じない最小呼気流抵抗となる。
【0040】
本発明は、人工呼吸器に通常設けられる装置、部材、ソフトウェア及び通信リンク等を本発明の人工呼吸器に設けることを企図する。人工呼吸器に通常使用される装置の例は、加湿機、噴霧器及び濾過器等である。例えば、細菌濾過器及びその他の濾過器を通常呼気流路に設けて、患者から排出され又は患者が使用しない麻酔等の物質の周囲大気中への散乱を防止することができる。
【0041】
図示しないが、使用者が手動で人工呼吸器を設定しかつ/又は制御する使用者界面装置を設けてもよい。キーパッド、タッチスクリーン、摘み、目盛盤等の形式で人工呼吸器に直接使用者界面装置の制御装置を設け又は、配線接続又は無線通信接続を使用して、人工呼吸器60から離間して配置された使用者界面装置の制御装置を人工呼吸器に接続して、制御装置から人工呼吸器を設定しかつ/又は制御してもよい。
【0042】
現在最も実用的で及び好適と思われる実施の形態を図示して詳述したが、前記記載は単に説明の便宜に過ぎず、本発明を開示した実施の形態に限定されず、本発明は、特許請求の範囲内に該当すると共に、特許請求の範囲と同趣旨の変更態様並びに同等の装置を包含すること企図する。例えば、何れかの実施の形態の1つ又は2つ以上の特徴を何れかの他の実施の形態の1つ又は2つ以上の特徴に可能な範囲内で組み合わせられることを本発明が企図することは、理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の原理による人工呼吸器の呼気部の概略図
【図2】従来の人工呼吸器の呼気部の制御装置を示す概略図
【図3】本発明の原理による人工呼吸器の呼気部の制御装置を示す概略図
【図4】本発明の原理による人工呼吸器の呼気部の制御装置の他の実施の形態を示す概略図
【図5】図1に示す人工呼吸器の呼気部を制御するのに使用する制御装置の概略図
【図6】本発明の原理による人工呼吸器の呼気部に設けられる流量制限度を制御する技術の概略図
【符号の説明】
【0044】
(1,3)・・導管、 (7)・・第1の弁、 (8)・・流量制限器、 (9)・・空洞部、 (10)・・第1のセンサ、 (12)・・制御部、 (30)・・機械的連結部、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の気道に気体流を供給しかつ制御された方法により使用者の気道からの気体流を搬送する人工呼吸器において、
患者の気道からの気体流を搬送する導管(1,3)と、
導管に動作連結しかつ導管から排出される気体流の圧力又は流量を制御する第1の弁(7)と、
導管に動作連結されかつ導管内の気体の圧力を監視する第1のセンサ(10)と、
第1のセンサの出力に基づいて第1の弁を制御する制御部(12)とを備え、
第1のセンサと患者との間で導管内に流量制限器(8)を設け、第1の弁と流量制限器との間の導管内に第1の容量を形成すると共に、患者と流量制限器との間の導管内に第2の容量を形成し、
制御部は、第1のセンサにより監視される第1の容量内の圧力に基づいて第1の弁の作動を制御することを特徴とする人工呼吸器。
【請求項2】
流量制限器は、固定された形状又は可変の形状を有する請求項1に記載の人工呼吸器。
【請求項3】
流量制限器は、線形の圧力/流量特性又は非線形の圧力/流量特性を有する請求項1に記載の人工呼吸器。
【請求項4】
流量制限器は、流量制限量を調節可能であり、
制御部は、流量制限器が付与する流量制限量を制御する請求項1に記載の人工呼吸器。
【請求項5】
流量制限器と第1の弁との間の第1の導管に動作連結される空洞部(9)を更に備え、
空洞部は、第1の容量の少なくとも一部を形成する請求項1に記載の人工呼吸器。
【請求項6】
空洞部に動作連結される第1のセンサは、空洞部内の気体の圧力を測定する請求項5に記載の人工呼吸器。
【請求項7】
流量制限器と患者圧力との間の第1の導管に動作連結される第2のセンサを更に備え、
第2のセンサの出力に基づいて制御部により第1の弁を制御する請求項1に記載の人工呼吸器。
【請求項8】
流量制限器と患者との間の第1の導管に動作連結する第2の弁を更に備え、
制御部により第2の弁を制御する請求項1に記載の人工呼吸器。
【請求項9】
第2の弁を第1の導管に連結する第2の導管を更に備える請求項8に記載の人工呼吸器。
【請求項10】
流量制限器と患者圧力との間の第1の導管に動作連結する第2のセンサを更に備え、
第1のセンサ、第2のセンサ又はその両方の出力に基づいて制御部により第1の弁、第2の弁又はその両方を制御する請求項8に記載の人工呼吸器。
【請求項11】
第2の弁に沿う圧力降下量は、流量制限器及び第1の弁に沿う圧力降下量未満である請求項8に記載の人工呼吸器。
【請求項12】
第1の弁(7)と流量制限器(8)との間を接続する機械的連結部(30)を更に備え、
第1の弁(7)の作動に基づいて、流量制限器(8)が行う流量制限の大きさ、形状又はその両方を変更する請求項1に記載の人工呼吸器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−519661(P2008−519661A)
【公表日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541315(P2007−541315)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【国際出願番号】PCT/US2005/040736
【国際公開番号】WO2006/053124
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(505338497)アールアイシー・インベストメンツ・エルエルシー (81)