説明

呼気検査装置、呼気検査方法

【課題】
本発明では、被験者が検査装置に入力する呼気量を増加させ、当該呼気に含まれる成分の検出精度を改善した呼気検査装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明に係る呼気検査装置では、本発明に係る呼気検査装置では、被験者の呼気に含まれる所定の成分を検出する検出器を有する呼気検査装置であって、当該呼気検査装置による検査を行う場合に、前記被験者の体に刺激を与え、該被験者の呼気量を増加させるように、該検査を行う室内の環境を調整する室内調整手段と、前記被験者に対し、前記室内で、前記検出器を使用して、前記所定の成分を検出するための検査を行う検査手段と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の状態にした検査室内において、被験者の呼気からアルコールを検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
交通事故は、周知のごとく大きな社会問題となっているが、交通事故の中でも飲酒運転による事故が多発しており、ドライバーのモラル低下が指摘されている。
【0003】
これに対し、ドライバーの飲酒運転をチェックする技術としては、ドライバーの呼気に含まれるアルコール濃度を検出し、ドライバーの飲酒状態を判定するものがある(特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−148950号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記技術においては、被験者が検査装置に入力した呼気に基づき、当該呼気に含まれるアルコールを検出するという形態であるため、被験者であるドライバーの健康状態や、老齢状態などの個人差によって、十分な呼気量を検査装置に入力できず、飲酒状態の検出精度が低下するおそれがあるという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明では、上記問題点に鑑み、被験者が検査装置に入力する呼気量を増加させ、当該呼気に含まれる成分の検出精度を改善した呼気検査装置、呼気検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る呼気検査装置では、被験者の呼気に含まれる所定の成分を検出する検出器を有する呼気検査装置であって、当該呼気検査装置による検査を行う場合に、前記被験者の体に刺激を与え、該被験者の呼気量を増加させるように、該検査を行う室内の環境を調整する室内調整手段と、前記被験者に対し、前記室内で、前記検出器を使用して、前記所定の成分を検出するための検査を行う検査手段と、を有することを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る呼気検査装置の一形態では、前記室内調整手段は、前記室内の除湿を行う除湿手段を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る呼気検査装置の一形態では、前記室内調整手段は、前記室内の冷房を行う冷房手段を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る呼気検査装置の一形態では、前記室内調整手段は、前記室内に、前記被験者の喉又は/及び鼻の粘膜を刺激する物質を拡散させる刺激物質拡散手段を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る呼気検査装置の一形態では、前記所定の成分は、アルコールであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る呼気検査装置の一形態では、前記室内は、前記被験者が運転する車両の室内であることを特徴とする。
【0012】
従って、本発明では、被験者が検査装置に入力する呼気量を増加させ、当該呼気に含まれる成分の検出精度を改善した呼気検査装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、被験者が検査装置に入力する呼気量を増加させ、当該呼気に含まれる成分の検出精度を改善した呼気検査装置、呼気検査方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0015】
(本実施の形態に係る呼気検査装置の動作原理)
図1を用いて、本実施の形態に係る呼気検査装置の動作原理について説明する。図1は、本実施の形態に係る呼気検査装置100の動作原理を示す図である。
【0016】
図1に示すように、呼気検査装置100は、車両300の一部を構成する装置である。また、車両300は、呼気検査装置100以外にも、車両300の走行動力源であるエンジン310、エンジン310が停止したことを検知するエンジン停止検知センサ330、車両300からの降車及び車両300への乗車の際に使用するドア320、ドア320が施錠又は解錠されたことを検知するドアロックセンサ340、車両300の室内の環境を調整する空調装置350を有する。
【0017】
呼気検査装置100は、開始条件検知手段105、室内環境調整手段110、検査手段130、飲酒状態判定手段140、出力手段150、アルコール検出器250を有する。
【0018】
開始条件検知手段105は、エンジン停止検知センサ330の検知結果と、ドアロックセンサ340の検知結果とを取得し、これらの検知結果に基づいて、車両300の室内の除湿を開始する条件を検知する。
【0019】
また、開始条件検知手段105は、同様にして、車両300の室内の冷房を開始する条件を検知する。さらに、開始条件検知手段105は、同様にして、車両300の室内に、人間の喉又は鼻の粘膜を刺激する物質の拡散を開始する条件を検知する。
【0020】
ここで、上記の開始する条件とは、車両300のエンジン310が停止した後に、車両300のドア320がロックされたこと、つまり、運転者が車両300から降車したことである。
【0021】
従って、開始条件検知手段105は、車両300のエンジン310が停止し、運転者が車両300から降車したことを検知する。
【0022】
ただし、上記の開始する条件は、上記で述べた条件に限らず、適宜設定できるものとする。例えば、一定周期で到来する時刻をもって、開始する条件とする形態でも良いし、運転者が特定の開始操作をしたことをもって、開始する条件とする形態でも良い。
【0023】
室内環境調整手段110は、冷房手段115、除湿手段120、刺激物質拡散手段125を有する。
【0024】
室内環境調整手段110は、呼気検査装置100による検査を行う場合に、被験者である運転者の体に刺激を与え、呼気量を増加させるように、空調装置350を使用して、検査を行う室内の環境を調整する。
【0025】
除湿手段120は、呼気検査装置100による検査を行う場合に、当該検査を行う車両300の室内を除湿する。
【0026】
また、除湿手段120の一形態では、開始条件検知手段105により除湿を開始する条件が検知された場合に、空調装置350に対し、車両300の室内の除湿を行うよう要求する。その除湿要求に対応して、空調装置350は、車両300の室内の除湿を行う。
【0027】
さらに、除湿手段120は、空調装置350に対し、車両300の室内の湿度を所定の湿度以下に保つように要求する。当該要求に対し、空調装置350は、車両300の室内の湿度を所定の湿度以下に保つように室内の除湿を行う。
【0028】
ここで、所定の湿度とは、例えば、30%でも良いし、20%でも良く、適宜定めることができるものとする。
【0029】
また、本実施の形態においては、除湿手段120は、車両300の室内を除湿する形態を説明しているが、本発明の趣旨では、除湿を行うのは室内であれば足り、除湿を行う対象は車両300の室内に限られない。
【0030】
冷房手段115は、呼気検査装置100による検査を行う場合に、当該検査を行う車両300の室内の冷房を行う。
【0031】
また、冷房手段115の一形態では、開始条件検知手段105により冷房を開始する条件が検知された場合に、空調装置350に対し、車両300の室内の冷房を行うよう要求する。その冷房要求に対応して、空調装置350は、車両300の室内の冷房を行う。
【0032】
また、本実施の形態においては、冷房手段115は、車両300の室内を冷房する形態を説明しているが、本発明の趣旨では、冷房を行うのは室内であれば足り、冷房を行う対象は車両300の室内に限られない。
【0033】
刺激物質拡散手段125は、呼気検査装置100による検査を行う場合に、当該検査を行う車両300の室内に、被験者である車両300の運転者の喉又は鼻の粘膜を刺激する物質を拡散させる。
【0034】
また、刺激物質拡散120の一形態では、開始条件検知手段105により当該拡散を開始する条件が検知された場合に、空調装置350に対し、車両300の室内に当該刺激物質を拡散するよう要求する。その要求に対応して、空調装置350は、車両300の室内に当該刺激物質の拡散を行う。
【0035】
また、本実施の形態においては、刺激物質拡散手段125は、車両300の室内に刺激物質を拡散させる形態を説明しているが、本発明の趣旨では、刺激物質を拡散させるのは室内であれば足り、当該拡散を行う場所は車両300の室内に限られない。
【0036】
検査手段130は、室内において、被験者の呼気に含まれる所定の成分を検出する検出器を用いて、検査を行う。
【0037】
また、検査手段130の一形態では、車両300の運転者に対し、車両300の室内で、アルコール検出器250を使用して、呼気に含まれるアルコールを検出するための検査を行う。
【0038】
当該検査は、アルコール検出器250に向かって、被験者である車両300の運転者が、自らの呼気を吹き掛けることによって実施する。
【0039】
また、車両300の室内は、除湿手段120によって除湿され、低湿度状態となっているため、運転者の咳、くしゃみを誘発し易い。従って、運転者が、咳、くしゃみを伴って、上記呼気の吹き掛けをおこなった場合、アルコール検出器250へ入力される呼気量が増大し、呼気に含まれるアルコールの検出精度が相対的に高くなることが期待できる。
【0040】
一方、車両300の室内は、冷房手段115による冷房が行われ、低温度状態となっているため、運転者の咳、くしゃみを誘発し易い。従って、運転者が、咳、くしゃみを伴って、上記呼気の吹き掛けをおこなった場合、アルコール検出器250へ入力される呼気量が増大し、呼気に含まれるアルコールの検出精度が相対的に高くなることが期待できる。
【0041】
他方、車両300の室内では刺激物質拡散手段125による刺激物質の拡散が行われ、被験者である運転者の喉や鼻の粘膜を刺激する刺激物質が多く浮遊する状態となっているため、運転者の咳、くしゃみを誘発し易い。従って、運転者が、咳、くしゃみを伴って、上記呼気の吹き掛けをおこなった場合、アルコール検出器250へ入力される呼気量が増大し、呼気に含まれるアルコールの検出精度が相対的に高くなることが期待できる。
【0042】
また、本実施の形態では、アルコール検出器250を用いた、運転者の呼気に含まれるアルコール検出について説明をしているが、被験者の呼気に含まれる他成分の検出を行う場合にも、本発明は適用することができる。
【0043】
また、当該呼気検査装置100の検出精度を向上させる手段は、上記で述べた手段に限られることなく、被験者である運転者を擽ること、当該運転者を驚かせること、大気中の酸素量を減少させ、当該運転者の呼吸を一時的に制限すること等により、検査時の呼気量を増やす形態としても良い。つまり、当該呼気検査装置100の検出精度を向上させる手段は、被験者である運転者の体に刺激を与え、それによる当該運転者の体の反射を促し、検査時の呼気量を増やす形態であれば良い。
【0044】
また、検査時の呼気量を増やす形態とは、単位時間当たりの呼気量を増大させることである。
【0045】
飲酒状態判定手段140は、検査手段130の検査結果に基づいて、車両300の運転者が飲酒状態にあるのか否かを判定する。
【0046】
出力手段150は、飲酒状態判定手段140により判定された結果を出力する。例えば、出力手段150は、車両300の運転者が飲酒状態にあるという飲酒状態判定手段140の判定結果を、車両300の走行動力源であるエンジン310の制御装置に出力し、その際、当該制御装置はエンジン310の点火を行わないようにする等の実施形態が考えられる。他の形態としては、呼気検査装置100の表示装置に、判定結果に係る情報を表示することも考えられる。
【0047】
以下で、本実施の形態に係る呼気検査装置100の処理動作の流れについて説明する。
【0048】
ここでは、呼気検査装置100がエンジン310の停止と運転者の降車とを検知した後、車両室内の除湿を行い、再び、当該運転者が乗車した際に、低い湿度に保たれた車両室内でアルコール検査を実施する処理について説明することとする。なお、本説明において、低い湿度とは20%とする。
【0049】
まず、開始条件検知手段105が、エンジン停止検知センサ330によるエンジン310の停止状態を検知した結果を取得した後、ドアロックセンサ340によるドア320が施錠状態を検知した結果を取得し、車両300の運転者の降車を検知する。
【0050】
開始条件検知手段105が運転者の降車を検知した後、除湿手段120が空調装置350に対し、車両300の室内を湿度20%以下に保つように要求する。それに対し、空調装置350が車両300の室内を湿度20%以下に保つように除湿を行う。
【0051】
そして、運転者が車両300に再び乗車した際に、検査手段130が当該運転者に対し、アルコール検出器250を使用して、呼気からアルコールを検出するための検査を実施する。
【0052】
次に、飲酒状態判定手段140が検査手段130による検査結果に基づき、当該運転者が飲酒状態にあるか否かを判定し、出力手段150が飲酒状態判定手段140の判定結果を、例えば、エンジン310の制御装置に出力する。
【0053】
上記のように、低湿度状態にある室内で、被験者である運転者に咳、くしゃみを誘発させ、アルコール検出器250に入力させる呼気量を増大させることができるため、アルコール検出器250による呼気に含まれるアルコールの検出精度を向上させることができる。
【0054】
次に、呼気検査装置100がエンジン310の停止と運転者の降車とを検知した後、車両室内の冷房を行い、再び、当該運転者が乗車した際に、低い温度に保たれた車両室内でアルコール検査を実施する処理について説明することとする。なお、本説明において、低い温度とは10℃とする。
【0055】
まず、開始条件検知手段105が、エンジン停止検知センサ330によるエンジン310の停止状態を検知した結果を取得した後、ドアロックセンサ340によるドア320が施錠状態を検知した結果を取得し、車両300の運転者の降車を検知する。
【0056】
開始条件検知手段105が運転者の降車を検知した後、冷房手段115が空調装置350に対し、車両300の室内温度を10℃に保つように要求する。それに対し、空調装置350が車両300の室内温度を10℃に保つように冷房を行う。
【0057】
そして、運転者が車両300に再び乗車した際に、検査手段130が当該運転者に対し、アルコール検出器250を使用して、呼気からアルコールを検出するための検査を実施する。
【0058】
次に、飲酒状態判定手段140が検査手段130による検査結果に基づき、当該運転者が飲酒状態にあるか否かを判定し、出力手段150が飲酒状態判定手段140の判定結果を、例えば、エンジン310の制御装置に出力する。
【0059】
上記のように、低温状態にある室内で、被験者である運転者に咳、くしゃみを誘発させ、アルコール検出器250に入力させる呼気量を増大させることができるため、アルコール検出器250による呼気に含まれるアルコールの検出精度を向上させることができる。
【0060】
最後に、呼気検査装置100がエンジン310の停止と運転者の降車とを検知した後、車両室内に刺激物質を拡散させ、再び、当該運転者が乗車した際に、刺激物質が拡散された車両室内でアルコール検査を実施する処理について説明することとする。
【0061】
まず、開始条件検知手段105が、エンジン停止検知センサ330によるエンジン310の停止状態を検知した結果を取得した後、ドアロックセンサ340によるドア320が施錠状態を検知した結果を取得し、車両300の運転者の降車を検知する。
【0062】
開始条件検知手段105が運転者の降車を検知した後、刺激物質拡散手段125が空調装置350に対し、車両300の室内に刺激物質を拡散させるように要求する。それに対し、空調装置350が車両300の室内に刺激物質を拡散させる。
【0063】
そして、運転者が車両300に再び乗車した際に、検査手段130が当該運転者に対し、アルコール検出器250を使用して、呼気からアルコールを検出するための検査を実施する。
【0064】
次に、飲酒状態判定手段140が検査手段130による検査結果に基づき、当該運転者が飲酒状態にあるか否かを判定し、出力手段150が飲酒状態判定手段140の判定結果を、例えば、エンジン310の制御装置に出力する。
【0065】
上記のように、人間の喉や鼻の粘膜を刺激する刺激物質が浮遊する室内で、被験者である運転者に咳、くしゃみを誘発させ、アルコール検出器250に入力させる呼気量を増大させることができるため、アルコール検出器250による呼気に含まれるアルコールの検出精度を向上させることができる。
【0066】
従って、本発明では、被験者が検査装置に入力する呼気量を増加させ、当該呼気に含まれる成分の検出精度を改善した呼気検査装置を提供することができる。
【0067】
(本実施の形態に係る呼気検査装置のハードウェア構成)
図2を用いて、本実施の形態に係る呼気検査装置のハードウェア構成について説明する。図2は、本実施の形態に係る呼気検査装置100のハードウェア構成の一例である。
【0068】
呼気検査装置100は、CPU(Central Processing Unit)210、ROM(Read−Only Memory)220、RAM(Ramdom Access Memory)230、HDD(Hard Disk Drive)240、アルコール検出器250、表示装置260、外部装置I/F(InterFace)270を有する。
【0069】
CPU210は、ROM220に記憶されたプログラムを実行する装置で、RAM230に展開(ロード)されたデータを、プログラムの命令に従って演算処理し、呼気検査装置100の全体を制御する。
【0070】
ROM220は、CPU210が実行するプログラムやデータを記憶している。
【0071】
RAM230は、CPU210でROM220に記憶されたプログラムを実行する際に、実行するプログラムやデータが展開(ロード)され、演算の間、演算データを一時的に保持する。
【0072】
HDD240は、基本ソフトウェアであるOS(Operating System)、本実施の形態に係るアプリケーションプログラムなどを、関連するデータとともに記憶する装置である。
【0073】
アルコール検出器250は、半導体アルコールセンサの出力に基づいて、入力された呼気に含まれるアルコール濃度に応じたレベルの検出信号を出力する装置である。半導体アルコールセンサは、酸化錫半導体等の電気伝導度が、その半導体表面に吸着したアルコール分子の量に応じて上昇する性質を利用し、呼気中のアルコール濃度に応じた電圧を出力するように構成されている。他の実施例において当該アルコール検出器250は、被験者の呼気に基づき、所定の成分を検出する装置とする形態でも良い。
【0074】
表示装置260は、ハードキーによるキースイッチとLCD(Liquid Crystal Display)とから構成され、呼気検査装置100が有する機能をユーザが利用する際に、各種設定を行うなどのユーザインタフェースとして機能する装置である。
【0075】
外部装置I/F270は、各種のセンサや制御装置から構成される外部装置と情報(データ)をやり取りするためのインタフェースである。本実施の形態では、外部装置I/F270を介し、エンジン停止検知センサ330、ドアロックセンサ340、空調装置350などとデータの送受信を行う。
【0076】
以下で、呼気検査装置100の動作処理について、上記で説明したハードウェアとの関連を含めて、説明する。ただし、各手段は、CPU210が、ROM220又はHDD240に記憶された各手段に対応するプログラムを実行することにより実現されるため、この点に関しては説明を省略する。
【0077】
ここでは、呼気検査装置100がエンジン310の停止と運転者の降車を検知した後、車両室内の除湿を行い、再び、当該運転者が乗車するときに、低い湿度に保たれた車両室内でアルコール検査を実施する処理について説明することとする。本説明において、低い湿度とは20%とする。
【0078】
まず、開始条件検知手段105がエンジン停止検知センサ330によるエンジン310の停止状態を検知した結果を、外部装置I/F270を介して取得した後、ドアロックセンサ340によるドア320が施錠状態を検知した結果を外部装置I/F270を介して取得し、車両300の運転者の降車を検知する。
【0079】
開始条件検知手段105が運転者の降車を検知した後、除湿手段120が外部装置I/F270を介して空調装置350に対し、車両300の室内を湿度20%以下に保つように要求する。それに対応して、空調装置350が車両300の室内を湿度20%以下に保つように除湿を行う。
【0080】
そして、運転者が車両300に再び乗車した際に、検査手段130が当該運転者に対し、アルコール検知機250を使用して、呼気からアルコールを検出するための検査を実施する。
【0081】
次に、飲酒状態判定手段140が検査手段130による検査結果に基づき、当該運転者が飲酒状態にあるか否かを判定し、出力手段150が飲酒状態判定手段140の判定結果を外部装置I/F270を介して、例えば、エンジン310の制御装置に出力する。
【0082】
また、上記の除湿手段120による処理を、冷房手段115又は刺激物質拡散手段125による処理で代用する形態としても良い。
【0083】
(本実施の形態に係る呼気検査装置の動作処理)
図3を用いて、本実施の形態に係る呼気検査装置の処理の流れについて説明する。図3は、本実施の形態に係る呼気検査装置100の処理の流れを示すフローチャートである。
【0084】
S1で呼気検査装置100は処理を開始する。
【0085】
S2でエンジン停止検知センサ330がエンジン310の停止を検知し、その旨の情報を開始条件検知手段110に通知する。
【0086】
S3でドアロックセンサ340がドア320の施錠を検知し、その旨の情報を開始条件検知手段105に通知する。
【0087】
S4で開始条件検知手段105がエンジン停止検知センサ330によるエンジン310の停止を検知した旨の情報を取得した後に、ドアロックセンサ340によるドア320の施錠を検知した旨の情報を取得し、運転者が車両300から降車したことを検知する。
【0088】
S5で開始条件検知手段105が運転者の降車を検知した後に、除湿手段120が外部装置I/F270を介して、空調装置350に対し、車両300の室内の湿度を20%以下に保つように要求を通知する。それに対応し、空調装置350が車両300の室内の湿度を20%以下に保つよう除湿を行う。
【0089】
S6でドアロックセンサ340がドア320の解錠を検知し、その旨の情報を呼気検査装置100に通知する。
【0090】
S7で呼気検査装置100はドアロックセンサ340によるドア320の解錠を検知した旨の情報を取得し、運転者が車両300に再び乗車したことを検知する。
【0091】
S8で検査手段130がアルコール検出装置150を使用して、車両300の運転者の呼気に含まれるアルコールを検出するための検査を行う。
【0092】
S9で飲酒状態判定手段140が検査手段130による検査結果に基づき、運転者が飲酒状態であるか否かを判定し、飲酒状態であると判定した場合(S9でYesの場合)、S10で出力手段150が運転者は飲酒状態である旨の情報をエンジン310の制御装置に通知し、その通知を受けたエンジン310の制御装置はエンジン310をオン状態にしない制御を行う。
【0093】
S9で飲酒状態判定手段140が検査手段130による検査結果に基づき、運転者が飲酒状態であるか否かを判定し、飲酒状態ではないと判定した場合(S9でNoの場合)、S11で呼気検査装置100は処理を終了する。
【0094】
上記のように、低湿度状態にある室内で、被験者である運転者に咳、くしゃみを誘発させ、アルコール検出器250に入力させる呼気量を増大させることができるため、アルコール検出器250によるアルコールの検出精度を向上させることができる。
【0095】
(本実施の形態に係る呼気検査装置の動作処理の変形例)
本実施の形態に係る呼気検査装置100の動作処理の変形例について説明する。
【0096】
ここでは、上記説明の除湿手段120により車室内を除湿する処理に代えて、冷房手段115により車室内を冷房する処理について説明する。また、冷房手段115により車室内の温度は10℃に保たれることとする。
【0097】
なお、S1〜S4及びS6〜S11の動作処理は、上記説明と同じであるため、ここでの説明は省略する。
【0098】
S5で開始条件検知手段105が運転者の降車を検知した後に、冷房手段115が外部装置I/F270を介して、空調装置350に対し、車両300の室内の温度を10℃に保つように要求を通知する。それに対応し、空調装置350が車両300の室内の温度を10℃に保つよう冷房を行う。
【0099】
上記のように、低温度状態にある室内で、被験者である運転者に咳、くしゃみを誘発させ、アルコール検出器250に入力させる呼気量を増大させることができるため、アルコール検出器250によるアルコールの検出精度を向上させることができる。
【0100】
さらに、上記説明の除湿手段120により車室内を除湿する処理に代えて、刺激物質拡散手段125により車室内に刺激物質を拡散させる処理について説明する。
【0101】
なお、S1〜S4及びS6〜S11の動作処理は、上記説明と同じであるため、ここでの説明は省略する。
【0102】
S5で開始条件検知手段105が運転者の降車を検知した後に、刺激物質拡散手段125が外部装置I/F270を介して、空調装置350に対し、車両300の室内に被験者である運転者の喉又は鼻の粘膜を刺激するような刺激物質を拡散させるように要求を通知する。それに対応し、空調装置350が、車両300の室内に当該刺激物質を拡散させる。
【0103】
上記のように、刺激物質が浮遊する室内で、被験者である運転者に咳、くしゃみを誘発させ、アルコール検出器250に入力させる呼気量を増大させることができるため、アルコール検出器250によるアルコールの検出精度を向上させることができる。
【0104】
(総括)
従って、本発明では、被験者が検査装置に入力する呼気量を増加させ、当該呼気に含まれる成分の検出精度を改善した呼気検査装置を提供することができる。
【0105】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲において、種々の変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本実施の形態に係る呼気検査装置の動作原理を示す図である。
【図2】本実施の形態に係る呼気検査装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【図3】本実施の形態に係る呼気検査装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0107】
100 呼気検査装置
105 開始条件検知手段
110 室内空調手段
115 冷房手段
120 除湿手段
125 刺激物質拡散手段
130 検査手段
140 飲酒状態判定手段
150 出力手段
210 CPU
220 ROM
230 RAM
240 HDD
250 アルコール検出装置
260 表示装置
270 外部装置I/F
300 車両
310 エンジン
320 ドア
330 エンジン停止検知センサ
340 ドアロック検知センサ
350 空調装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の呼気に含まれる所定の成分を検出する検出器を有する呼気検査装置であって、
当該呼気検査装置による検査を行う場合に、前記被験者の体に刺激を与え、該被験者の呼気量を増加させるように、該検査を行う室内の環境を調整する室内調整手段と、
前記被験者に対し、前記室内で、前記検出器を使用して、前記所定の成分を検出するための検査を行う検査手段と、を有することを特徴とする呼気検査装置。
【請求項2】
前記室内調整手段は、前記室内の除湿を行う除湿手段を有することを特徴とする請求項1に記載の呼気検査装置。
【請求項3】
前記室内調整手段は、前記室内の冷房を行う冷房手段を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の呼気検査装置。
【請求項4】
前記室内調整手段は、前記室内に、前記被験者の喉又は/及び鼻の粘膜を刺激する物質を拡散させる刺激物質拡散手段を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載の呼気検査装置。
【請求項5】
前記所定の成分は、アルコールであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一に記載の呼気検査装置。
【請求項6】
前記室内は、前記被験者が運転する車両の室内であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一に記載の呼気検査装置。
【請求項7】
被験者の呼気に含まれる所定の成分を検出する検出器を有する呼気検査装置の呼気検査方法であって、
前記呼気検査装置による検査を行う場合に、前記被験者の体に刺激を与え、該被験者の呼気量を増加させるように、該検査を行う室内の環境を調整する室内調整手順と、
前記被験者に対し、前記室内で、前記検出器を使用して、前記所定の成分を検出するための検査を行う検査手順と、を有することを特徴とする呼気検査方法。
【請求項8】
前記室内調整手順は、前記室内の除湿を行う除湿手順を有することを特徴とする請求項7に記載の呼気検査方法。
【請求項9】
前記室内調整手順は、前記室内の冷房を行う冷房手順を有することを特徴とする請求項7又は8に記載の呼気検査方法。
【請求項10】
前記室内調整手順は、前記室内に、前記被験者の喉又は/及び鼻の粘膜を刺激する物質を拡散させる刺激物質拡散手順を有することを特徴とする請求項7乃至9のいずれか一に記載の呼気検査方法。
【請求項11】
前記所定の成分は、アルコールであることを特徴とする請求項7乃至10のいずれか一に記載の呼気検査方法。
【請求項12】
前記室内は、前記被験者が運転する車両の室内であることを特徴とする請求項7乃至11のいずれか一に記載の呼気検査方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate