説明

呼気検査装置

【課題】人が吐き出した呼気に含まれるウイルス等を安全にかつ正確に検査することができる呼気検査装置を提供する。
【解決手段】呼気に含まれる病原体を検出する呼気検査装置1であって、被験者が呼気を吹きかける呼気吸引部5と、呼気吸引部5が吸引した空気を排出する排出部6と、呼気吸引部5と排出部6とを連通する接続通路10と、接続通路10と排出部6との間をバイパスするバイパス通路21およびバイパス通路21内を通過する空気中の病原体を検査する検査手段22とを有する空気検査部20と、を備えており、接続通路10には、接続通路10内を通過する呼気中の病原体を無害化する無害化手段30が設けられている。よって、人が吐き出した呼気に含まれるウイルス等を検査することができるから、病原体に感染している感染者を発見することができるし、装置から排出される空気によって、検査員や周囲の人等への感染も防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼気検査装置に関する。さらに詳しくは、人が吐き出した呼気に含まれるインフルエンザウイルスなどを感染初期に検出することができる呼気検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザウイルスや結核菌等の感染性を有する病原体には、これら病原体に感染した人や生物の呼吸や飛沫中に含まれて、空気中に飛散し、これらを吸引した人に感染するものがある。
とくに、飛沫として空気中に飛散した病原体には、落下後に水分が蒸発して飛沫核となってもなお病原性を保つものがあり、かかる病原体は、単体で長時間浮遊して移動するので、他人への感染(空気感染)を生じやすくなる。
【0003】
空気感染する病原体は、感染者が移動することによって、簡単に病原体が拡散されてしまい、感染範囲が拡大するので、できる限り早期に感染者を発見し、感染者を隔離することが必要になる。
【0004】
このような感染者を発見するために、人や生物の呼気を検査する装置が開発されている(特許文献1)。
特許文献1には、被験者の吹き込んだ息に含まれる成分を解析することにより、被験者の状態判定を行なう被験者状態判定装置が開示されており、被験者の息に含まれるウイルスや細菌のチェックにも使用できる旨が開示されている。
【0005】
しかるに、特許文献1の被験者状態判定装置では、被験者の吹き込んだ息に含まれる成分を解析することによって、その成分を検査することまでは行っても、装置に吹き込まれた呼気の処理については何ら触れられておらず、呼気はそのまま外部に排出されてしまう可能性がある。
すると、検査を行った人(被験者)が病原体に感染している場合、被験者の感染は把握することができるが、その際に、被験者が吐き出した呼気に含まれる病原体が周囲に飛散してしまう可能性があり、検査員が病原体に感染してしまう可能性がある。
また、特許文献1の被験者状態判定装置では、検査員が感染対策をしておけば、検査員が病原体に感染することは防ぐことができるものの、例えば、空港等で検査を行った場合には、検査員には感染しなくても、他の利用者等への感染の可能性が生じる。
【0006】
さらに、空港等において、新型インフルエンザ拡大防止のために、赤外線サーモグラフィシステムなどによって新型インフルエンザに感染しているか否かについて検査が行われていた。かかる検査では、空港の入国検査付近に赤外線サーモグラフィシステムを設置して、入国者の体温をチェックし、38度以上の発熱がみられた場合には新型インフルエンザに感染しているとして、指定場所にて精密に検査することが行われていた。
しかし、この方法では、新型インフルエンザに感染している人がいても、その人が38度以上発熱してない場合には、感染者を把握できない。すると、発熱していない感染者がそのまま入国し、その後、自宅やホテル等で発症する可能性があり、感染拡大を阻止することは困難である。
また、他の病で発熱している方も感染者として再検査の対象となるなど、特定の病原体への感染を把握することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009―229307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑み、感染者が吐き出した呼気に含まれるウイルス等を安全にかつ正確に検査することができ、しかも、初期感染を把握することができる呼気検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明の呼気検査装置は、呼気に含まれる病原体を検出する呼気検査装置であって、被験者の呼気を導入する呼気吸引部と、該呼気吸引部から導入された空気を排出する排出部と、前記呼気吸引部と前記排出部との間を連通する接続通路と、該接続通路と前記排出部との間をバイパスするバイパス通路および該バイパス通路内を通過する空気を検査する検査手段とを有する空気検査部と、を備えており、前記接続通路には、該接続通路内を通過する呼気中の病原体を無害化する無害化手段が設けられていることを特徴とする。
第2発明の呼気検査装置は、第1発明において、前記接続通路は、紫外線を透過する素材によって形成された中空な通路であり、前記無害化手段が、前記接続通路内に向けて紫外線を照射するように配設された紫外線照射手段であることを特徴とする。
第3発明の呼気検査装置は、第1または第2発明において、前記空気検査部が、空気中に存在する粒子を測定する機器であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第1発明によれば、呼気吸引部に被験者が呼気を吹きかければ、その呼気が呼気吸引部によって接続通路に導入される。導入された呼気は、一時接続通路内に充満し、その後接続通路を通って排出部に向かって流れ、排出部から排出される。このとき、一部の呼気は、接続通路からバイパス通路を通って排出部に流れる。そして、バイパス通路を通る呼気は、バイパス通路を通過する間に検査手段によって検査される。例えば、病原体の有無等が検査される。よって、人が吐き出した呼気を検査することができるから、病原体に感染している感染者を発見することができる。しかも、接続通路を通過する呼気は、無害化手段によって浄化されるので、接続通路から直接排出部に流れる呼気およびバイパス通路を通過して排出部に流れる呼気にたとえ病原体が存在していても、これらの病原体は無害化されている。よって、装置から排出される空気によって、検査員や周囲の人等への感染も防ぐことができる。
第2発明によれば、紫外線照射手段によって接続通路の空気に紫外線を照射するだけで、空気に含まれている病原体を無害化できる。しかも、接続通路が紫外線を透過する素材によって形成されているので、接続通路を外部から気密に維持しておいても、接続通路の空気を無害化することができる。よって、接続通路内の空気を無害化する際に、病原体を含む呼気などが外部に漏れることを防ぐことができる。
第3発明によれば、呼気に含まれる粒子を測定すれば、健康な人の測定結果と感染者の測定結果とを比較することによって、感染初期でも、ウイルスに感染しているか否かを検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態の呼気検査装置1の概略断面図である。
【図2】本実施形態の呼気検査装置1の概略側面図である。
【図3】本実施形態の呼気検査装置1の上部断面図である。
【図4】(A)は呼気吸引部5の先端部5aがない状態における本実施形態の呼気検査装置1の上部正面図であり、(B)は(A)の状態から接続通路10を取り外した状態の上部正面図である。
【図5】(A)は呼気吸引部5の先端部5aに交換式トラップ50を取り付けた状態の概略説明図であり、(B)は交換式トラップ50の概略断面図であり、(C)は(B)のC線矢視図であり、(D)は(B)のD線矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明の呼気検査装置は、人の呼気に含まれる病原体を検出するための装置であって、感染初期の患者であっても感染を検出することができ、しかも、検査した呼気による二次感染等を防止することができるようにしたことに特徴を有している。
【0013】
(本実施形態の呼気検査装置1)
図1および図2において、符号2は、本実施形態の呼気検査装置1のケースを示している。このケース2は、中空な箱型に形成されたものである。このケース2内は、仕切り板2aによって上部の空間と下部の空間に区切られており、仕切り板2aよりも上部には、外部から気密に密封された上部空間2hを備えている。
【0014】
図3において、上記ケース2の上部空間2hには、接続通路10および無害化手段である紫外線ランプ30が設けられている。
【0015】
接続通路10は、透明なアクリルを素材とする中空な筒状の部材によって形成されており、その先端(図1および図2では左端)および基端(図1および図2では右端)が、ケース2の正面(図1および図2では左側の面)の壁および背面(図1および図2では右側の面)の壁に保持され、その端面が正面及び背面から露出している。つまり、ケース2には、接続通路10によって、その正面と背面との間を連通する通路が形成されているのである。
【0016】
図3に示すように、接続通路10の側方には、無害化手段である紫外線ランプ30が設けられている。この紫外線ランプ30は、紫外線を接続通路10に向けて照射するように配設されている。
なお、紫外線ランプ30を設ける数はとくに限定されず、一対の紫外線ランプ30,30を接続通路10を挟むように対向させて配置したり、接続通路10の周囲を囲むように配置したりしてもよい。そして、紫外線ランプ30の設置数を多くすれば、接続通路10内での病原体の殺菌効果を高くできるという利点が得られる。
【0017】
また、ケース2における下方の空間には、接続通路10とケース2の背面との間を連通するバイパス通路21が設けられている。このバイパス通路21には、空気に含まれるインフルエンザウイルスや細菌等を検出する空気検査部22が介装されている。この空気検査部22は、例えば、エアロゾルモニタ(TSI製)等のように、空気を吸引する機能を有し、吸引した空気を検査する機能を有する検査機器であり、バイパス通路21を通して接続通路10内の空気を吸引し、検査後の空気をバイパス通路21を通してケース2の背面に排出するように設けられている。
【0018】
そして、接続通路10の先端、つまり、ケース2の正面には、検査を行う被験者が呼気を吹きかける呼気吸引部5が設けられている。呼気吸引部5は、その先端が広がった略コーン状に形成された先端部5aを有する部材であり、その基端が接続通路10の先端に接続されている。
一方、ケース2の背面には、接続通路10の基端およびバイパス通路21におけるケース2背面側の開口を覆うように、排出部6が設けられている。この排出部6は、ケース2の背面に気密に取り付けられており、接続通路10の基端およびバイパス通路21から排出された空気は、その背面に設けられた排出口6hのみから外部に排出されるように設けられている。
【0019】
以上のごとき構成であるので、検査を行う被験者が呼気吸引部5に対して息を吹きかければ、空気が接続通路10内に導入される。すると、導入された空気中に病原体が含まれている場合には、紫外線ランプ30から照射される紫外線によって、接続通路10内において空気中の病原体が無害化される。そして、病原体が無害化された空気が接続通路10の基端から排出部6内に排出され、排出部6の排出口6hから外部に排出される。
【0020】
一方、接続通路10内の空気の一部は、バイパス通路21を通して空気検査部22内に吸引される。すると、空気検査部22によって吸引された空気中の病原体(無害化された病原体)を検出することができる。つまり、人の呼気に含まれるウイルス等の病原体を検査することができるから、病原体に感染している感染者を発見することができる。
【0021】
そして、空気検査部22に吸引された空気もバイパス通路21を通して、排出部6内に排出され、排出部6の排出口6hから外部に排出されるが、この空気は既に接続通路10内において無害化されている。
【0022】
よって、接続通路10内に入って排出部6の排出口6hから外部に排出される空気は、いずれの経路を通った場合でも、全て紫外線ランプ30によって無害化されている。よって、たとえ検査した被験者が病原体に感染していても、装置から排出される空気によって、検査員や周囲の人等が病原体に感染することを防ぐことができる。
【0023】
なお、上記例では、略コーン状に形成された部材5aを呼気吸引部5とした場合を説明したが、上記のごとき独立した呼気吸引部5を設けなくてもよい。その場合には、接続通路10の先端を、特許請求の範囲にいう呼気吸引部とすればよい。
また、上記呼気吸引部5の先端(上記呼気吸引部5を設けない場合には接続通路10の先端)に、呼気に含まれる唾液等のミストを捕捉するフィルタfをもうけてもよい。この場合には、人が息を吹きかけたときに、唾液などが接続通路10内に侵入して接続通路10が汚損することを防ぐことができるし、唾液などが空気検査部22に侵入して検査ミスが発生することを防ぐことができる。
【0024】
さらに、上記例のごとく、接続通路10内の空気を紫外線ランプ30によって浄化する場合には、接続通路10から直接排出される空気も、空気検査部22を通ってバイパス通路21から排出される空気も、いずれも浄化され病原体が無害化される。よって、排出部6を設けずに、接続通路10およびバイパス通路21から直接外部に空気を排出するようにしてもよい。
しかし、排出部6を設けておけば、その内部またはにHEPAフィルタ等を設けておくことができる。すると、万が一、紫外線ランプ30によって無害化できなかった病原体が接続通路10およびバイパス通路21から排出されても、HEPAフィルタによって捕捉するとことができる。
【0025】
なお、接続通路10内の空気は、ある程度、接続通路10内に滞留するのであるが、空気検査部22における検査の精度を向上させる上では、接続通路10内に空気を所定の時間貯留させることができるような機能を追加してもよい。例えば、排出部6の排出口6hに、排出部6内と外部との間を連通遮断できる開閉弁等を設けておく。すると、開閉弁を閉じれば、接続通路10内に空気を貯留しておくことができるし、開閉弁を開けば接続通路10内と外部との間を連通させて接続通路10内に空気を外部に排出させることができる。
【0026】
また、上述した例では、空気検査部22が空気を吸引する機能を有しており、この吸引力だけ接続通路10内に空気を吸引している。しかし、HEPAフィルタ等を設けた場合には、空気抵抗が大きくなり、空気検査部22の吸引力だけでは、十分に空気を吸引できない可能性がある。よって、HEPAフィルタ等を設けた場合には、ブロア等の空気を吸引する吸引手段を別途設けることが好ましい。配置吸引した空気痛気抵抗がによって完全に病原体を捕捉できるのであれば、紫外線ランプ30を用いずに、排出部6内にHEPAフィルタを配置して無害化手段としてもよい。
【0027】
さらに、排出部6の内部に設けたHEPAフィルタ等によって完全に病原体を捕捉できるのであれば、紫外線ランプ30を用いずに、排出部6内にHEPAフィルタを配置して無害化手段としてもよい。
【0028】
さらに、HEPAフィルタ等は必ずしも排出部6内に配置する必要はなく、排出口6hから外部に排出される空気が、必ずHEPAフィルタ等を通過してから外部に排出されるようになっていればよく、排出部6外に設けてもよい。
【0029】
(空気検査部22について)
空気検査部22は、上述したように、空気を吸引してその空気を検査する機能を有する検査機器であればよく、とくに限定されない。
しかし、病原体の有無を把握する機器として、空気中の粒子の重量、具体的には、粒子径毎の重量を測定できる機器が、初期の感染を検出する上では、好ましい。
その理由は以下のとおりである。
【0030】
人などに感染したウイルスが複製されるまで(細胞に感染して、子孫ウイルスができるまで)には、8〜12時間程度を要するが、1回の複製で1個のウイルスから100〜1000個程度の子孫ウイルスが形成される。そして、感染から1日経過すれば、ウイルスが100万個位まで増えることになる。ウイルスが増えれば、呼気等に含まれるウイルスの数も増加するので、呼気に含まれるウイルスの数も増加する。
呼気に含まれるウイルスが増加すれば、ウイルスに感染していない場合に比べて、呼気中におけるウイルスが属する粒子径の粒子の重量が増加するから、この粒子径の重量に基づいてウイルスの感染を把握することができる。しかも、ウイルスに感染してはいるが発症していない人でも、上記のごとく、体内のウイルスは1日で膨大な数になるので、感染から1日しか経過していなくても、呼気に含まれる粒子において、ウイルスが属する粒子径の重量は大幅に増加する。
よって、粒子径毎の重量を測定できる機器によって呼気に含まれる粒子の各粒子径毎の重量を測定すれば、感染していない人の呼気(つまり、健康な人の呼気)における粒子の各粒子径毎の重量と比較することによって、感染初期でも、ウイルスに感染しているか否かを検査することができるのである。
【0031】
例えば、上述したようなエアロゾルモニタ(TSI製)などでは、測定粒子径0.1〜15μmの範囲で、設定粒径1、2.5、4、10μmの各重量と、すべての粒子の重量とを、3.0L/分で測定することができる。インフルエンザウイルスであれば、鳥でも人でも豚でも基本的に形も大きさも同じであり、大きさ(直径)は約0.1μmである(なお、ウイルス粒子を作るのは、遺伝子から合成される蛋白質とエンベロープと呼ばれる宿主細胞の細胞膜であり、分離直後のウイルスには約1〜2μmの長さの紐状(太さは約0.1μm)となるものもある)。すると、エアロゾルモニタによって、粒径1.25μmの重量(mg/m)を測定すれば、ウイルスに感染していない人の呼気中における重量と比較することによって、インフルエンザウイルスに感染しているか否かを把握することができる。
【0032】
なお、空気検査部22として、空気中の粒子の数、具体的には、粒子径毎の粒子数を測定できる機器も使用できる。かかる機器でも、実質的には、上記のごとき粒子の重量を測定する機器と同じ理由により同様の効果(初期感染の検出等)を得ることができる。
【0033】
(接続通路10について)
つぎに、接続通路10について詳細に説明する。
【0034】
図1および図2に示すように、ケース2には、その正面および背面に、上部空間2h内と外部との間を連通する貫通孔a,bが形成されている。この貫通孔a,bは、背面側に設けられた貫通孔bの内径が、正面側に設けられた貫通孔aの内径よりも小さくなるように形成されている。
【0035】
一方、接続通路10は、中空な筒状の部材であり、その軸方向の長さがケース2の奥行き(図1および図2では左右方向の長さ)とほぼ同じ長さとなるように形成されている。この接続通路10は、その外径が貫通孔aの内径と同じかまたはわずかに小さくなるように形成されている。
また、接続通路10は、その基端が閉じられており、接続通路10の本体外径よりも細い取付用筒状部10aによって外部と連通されている。そして、取付用筒状部10aは、貫通孔bの内径と同じまたはわずかに小さくなるように形成されている。
【0036】
接続通路10が以上のごとき形状であるので、接続通路10をその基端からケース2の正面から貫通孔aに挿入することができる。そして、接続通路10を貫通孔aに挿入した状態において、取付用筒状部10aを貫通孔bに挿入すれば、接続通路10をケース2の上部空間2h内に配置することができる。
つまり、接続通路10を、その基端の取付用筒状部10aが貫通孔bに保持され、かつ、その先端が貫通孔aに保持された状態で、ケース2の上部空間2h内に取り付けることができるのである。
【0037】
そして、接続通路10が上記のごとき形状であれば、接続通路10をケース2の貫通孔aから抜き差しするだけで交換できる。すると、呼気検査装置1を長期間使用することにより接続通路10が汚損して検査精度が低下した場合でも、簡単に接続通路10を交換できるから、検査精度を容易に回復させることができる。
【0038】
なお、取付用筒状部10aや貫通孔bは、必ずしも、その中心軸が接続通路10の中心軸や貫通孔aの中心軸と同軸となっていなくてもよい。具体的には、図1に示すように、取付用筒状部10aや貫通孔bが、接続通路10の中心軸や貫通孔aの中心軸からオフセットしていてもよい。かかる構成とすると、接続通路10を上部空間2h内に取り付けた状態において、接続通路10がその中心軸周りに回転することを防ぐことができる。そして、かかる構成を採用する場合には、接続通路10を貫通孔aに挿入した状態で、取付用筒状部10aを貫通孔bに挿入できる構成とするのはいうまでもない。つまり、取付用筒状部10aおよび貫通孔bは、接続通路10の中心軸に対する取付用筒状部10aのオフセット量と、貫通孔aの中心軸に対する貫通孔bオフセット量とが同じになるように設けられるのである。
【0039】
また、貫通孔a,bの内面と接続通路10の端部の外面との間には、それぞれ両者間の隙間を気密に密封するシール材が取り付けられていることが好ましい。例えば、Oリングやシリコーン系無溶剤型(液状ガスケット)等によって両者間の隙間を気密に密封すれば、接続通路10内を流れる空気が上部空間2h内に漏れても、上部空間2h内から外部に漏出することを防ぐことができる。
【0040】
(バイパス通路21について)
また、接続通路10から空気を吸引するバイパス通路21は、その一端に、つまり、接続通路10側の端部に、接続通路10内に設けられた吸入管21aと、この吸入管21a内に挿入される接続管21bとを備えている。
【0041】
接続通路10には、その内面と外面との間を半径方向に沿って貫通する貫通孔10sが設けられており、吸入管21aはその基端が貫通孔10sに挿入されて気密に固定されている。
一方、ケース2の仕切り板2aには、上部空間2hと下部空間との間を連通する貫通孔hが形成されている。この貫通孔hは、その内径が吸入管21aの内径とほぼ内径に形成されている。
そして、この貫通孔hには、接続管21bの一端が挿入されて気密に固定されている。そして、接続管21bの他端は、チューブ等の管状部材21cによって空気検査部22の給入口に接続されている。
【0042】
以上のごとき構成であるから、接続通路10をケース2の上部空間2h内に配置し、しかも、その貫通孔10sが仕切り板2aの貫通孔hと合わさるように位置決めして固定すれば、吸入管21a内部、接続管21b内部および管状部材21c内部を通して、接続通路10と空気検査部22とが連通されるので、空気検査部22によって接続通路10内の空気を吸引することができるのである。
【0043】
なお、取付用筒状部10aや貫通孔bが、接続通路10の中心軸や貫通孔aの中心軸からオフセットするようにした場合には、取付用筒状部10aを貫通孔bに挿入することによって、接続通路10の回転が固定される。よって、接続通路10の貫通孔10sと仕切り板2aの貫通孔hは、取付用筒状部10aが貫通孔bに挿入された状態で、両者が合わさるように形成されるのは、いうまでもない。
【0044】
また、接続通路10の貫通孔10sと仕切り板2aの貫通孔hとの間の気密性は、例えば、シール部材を両者の間に配置するなどの方法で維持することができる。しかし、接続通路10の貫通孔10sと仕切り板2aの貫通孔hとを合わせた状態で、接続管21bを、接続通路10の貫通孔10s内、つまり、吸入管21a内まで挿入すれば、より気密性を高くすることができる。
【0045】
(呼気吸引部5について)
上述したように、呼気吸引部5はとくに設けなくてもよいが、図1および図2に示すように、コーン状に形成された中空な先端部5aの基端にフランジ部5bを設け、このフランジ部5bによってケース2に固定するようにすれば、接続通路10を確実にケース2に固定しておくことができるので、好ましい。
とくに、ケース2の正面とフランジ部5bとの間にシール材を挟んでおけば、ケース2の貫通孔aと接続通路10の外面との間の気密性を高くすることができるという利点が得られる。
【0046】
(交換式トラップ50について)
また、図1では、上記呼気吸引部5の先端(上記呼気吸引部5を設けない場合には接続通路10の先端)に、呼気に含まれる唾液等のミストを捕捉するフィルタfを設けた構成が開示されている。唾液などが接続通路10内に侵入することを防ぎつつ、呼気吸引部5から被験者にウイルスなどが感染することを防ぐ上では、以下のような、呼気吸引部5に着脱できる交換式トラップTを設けることが好ましい。
例えば、図5に示すように、一端に開口を有する有底筒状の部材(例えば、紙コップのようなもの)を、その開口同士を合わせた状態で連結して交換式トラップTとしてもよい。この場合、一方の部材51の底に貫通孔51h、他方の部材52に貫通孔52h、を形成しておく。そして、両部材間に通気性を有するフィルタfを挟んだ構造とする。
すると、交換式トラップ50における部材51,52のいずれかを、呼気吸引部5の中空な先端部5aに取り付ければ、この交換式トラップ50を通過した空気を接続通路10内に流入させることができる。よって、唾液などが接続通路10内に侵入することをより効果的に防ぐことができるし、被験者が変わるたびに交換式トラップ50を交換すれば、呼気吸引部5から被験者にウイルスなどが感染する可能性を低くすることができる。
【0047】
なお、図5(C)、(D)に示すように、貫通孔51h、貫通孔52hの大きさに差を設けて、孔径が小さい方が接続通路10側に位置するよう、交換式トラップ50を呼気吸引部5の先端部5aに取り付けることが好ましい。すると、、被験者の呼気を交換式トラップ50内に導入しやすくなるし、唾液などが接続通路10内に侵入する可能性を低くすることができる。
【0048】
また、交換式トラップ50は上記のごとき形状に限られず、呼気吸引部5の中空な先端部5aに取り付けることができ、そして、一端に吹きかけられた呼気を、フィルタ等を介して接続通路10に供給できる通路を有する構成のものであればよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の呼気検査装置は、空港等の港湾施設や駅等のように多くの人が通行する場所などにおいて、病原体への感染を調査する装置に適している。
【符号の説明】
【0050】
1 呼気検査装置
5 呼気吸引部
6 排出部
10 接続通路
20 空気検査部
21 バイパス通路
22 検査手段
30 紫外線ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼気に含まれる病原体を検出する呼気検査装置であって、
被験者の呼気を導入する呼気吸引部と、
該呼気吸引部から導入された空気を排出する排出部と、
前記呼気吸引部と前記排出部との間を連通する接続通路と、
該接続通路と前記排出部との間をバイパスするバイパス通路および該バイパス通路内を通過する空気を検査する検査手段とを有する空気検査部と、を備えており、
前記接続通路には、
該接続通路内を通過する呼気中の病原体を無害化する無害化手段が設けられている
ことを特徴とする呼気検査装置。
【請求項2】
前記接続通路は、
紫外線を透過する素材によって形成された中空な通路であり、
前記無害化手段が、
前記接続通路内に向けて紫外線を照射するように配設された紫外線照射手段である
ことを特徴とする請求項1記載の呼気検査装置。
【請求項3】
前記空気検査部が、
空気中に存在する粒子を測定する機器である
ことを特徴とする請求項1または2記載の呼気検査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−68067(P2012−68067A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211562(P2010−211562)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(510126737)
【出願人】(510126519)
【Fターム(参考)】