説明

和太鼓

【課題】 和太鼓の打面革の胴の端面への圧着を強大とし、打面部分全体の均一な緊張を確保し、更に打面革の挿入孔や縫い目からの亀裂の発生を防止した和太鼓とする。
【解決手段】 胴2の端面21外周より大径の革張用リング7上へ張ると共に、革張用リング7に沿って周囲を折り返した端部31と縫着8して革張用リング7に張設した打面革3を、胴2の両端面21に圧着した和太鼓1において、打面革3に加圧リング4を、胴2の端面外周と革張用リング7の間に設置し、押圧手段により加圧リング4で打面革3を押圧して緊張させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太鼓の胴の両端面に打面革が圧着されている和太鼓に係り、詳しくは、この種の和太鼓の打面革の胴への圧着を強大とし音質の改善を図った和太鼓に関するものである。
【背景技術】
【0002】
和太鼓で、太鼓の胴の両端面に打面革が圧着されて打面革に緊張をもたらす伝統的な手段として、和太鼓の胴と胴の両端面に当着した打面革及び革を胴に圧着固定するロープより構成されている。
すなわち、打面革は金属製の革張用リングに張設してあり、革張用リングは胴の外径より稍大きな径を有し、革張用リング上に打面革を張り置き、革張用リングに沿って周囲を折り返し、折り返し端部と打面革の表面とを凧糸等で縫着して形成する。
そして、革張用リングの内径に沿って適宜間隔でロープの挿通孔が空けられ、このように構成した打面革を胴の両端面に当て、ロープを両打面革の皮張用リンクに引き掛けながら挿通孔間に交互に通して胴に沿って渡し、ロープを緊締することで打面革を胴に圧着するのである。
【0003】
さらに、ロープの先方部を胴の中央部で打面革の間に渡したロープの外側から胴の円周に沿って巻き締めることによって、さらに打面革が胴の端面に圧着されて打面革に緊張をもたらすことができる。
このように、胴に当着された打面革はロープの緊締度合いによって張り具合に影響を受けると同時に、バチで打った音色も異なるものとなり、ロープの先方部の巻き締めを強弱に変えて設定することで、容易に目的の音色を得ることができるものとなる。
【0004】
また、ロープの代わりにフック型ボルトAを、革張用リングBと打面革Hの挿通孔Cに引っ掛け、胴Dに遊嵌した平板輪Eに設けた連通孔Fに挿通してナットGで平板輪Eと締着したものもある(図7)。
さらに、胴部の両端面に一対の打面革がそれぞれ配置されて、打面革の革張用リングに引張手段である複数のターンバックルを連繋し、互いに引き付け合うように引っ張られて打面革に緊張をもたらすものとしている(特開2006−030235)。
【特許文献1】特開2006−030235
【特許文献2】特開2006−113225
【特許文献3】特開2002−149154
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のロープで挿入孔を利用して締める手段では、人力で締め込むため打面革を緊張させるのに限界があり、極度の緊張まで期待できない。
また、打面革の挿入孔にロープを通し引っ張るため挿入孔からの亀裂が生じることがある。
更に、打面皮は強く引っ張られ緊張した状態であるため、革張用リング上に打面革を張り置き、革張用リングに沿って周囲を折り返し、折り返し端部と打面革の表面とを凧糸等で縫着した円周の部分は縫い目用の透孔が点在し他の円周部に比べ引っ張りに弱く、経年疲労等によって縫い目の在る当該円周部に亀裂が生じるのである。
【0006】
一方、フック型ボルトやターンバックルを利用するものは、人力に比べれば緊張度を強化は可能であるけれど、打面革の亀裂の発生については同様である。
そして、打面革の端部である革張用リングを引っ張るものであるから、打面部分(胴の端面内)以外の周端部分も同時に伸びて緊張させるため、ボルトの締め付け距離が長くなり、締め込み時間もかかるのである。
【0007】
また、胴の端面から革張用リングまでの距離があり、間隔を置いた配置された箇所で革張用リングを引っ張るものであるから、打面部分全体の均一な緊張を確保することが困難である。
更に、図7において、フック型ボルトと平板輪の挿通孔の関係は締め付け開始時に、フック型ボルトの頭部が打面革に斜めに馴染むことがあり、打面部に対して垂直に締め込めずに芯ズレを起こし、フック型ボルト及びナットの破損や、フック型ボルトの頭部が打面革に馴染まず空回りして打面革が破損することもある。
【0008】
そこで、本発明は上記の問題を解決するため、和太鼓の打面革の胴の端面への圧着を強大とし、打面部分全体の均一な緊張を確保し、更に打面革の挿入孔や縫い目からの亀裂の発生を防止した和太鼓を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1の和太鼓は胴の端面外周より大径の革張用リング上へ張ると共に、革張用リングに沿って周囲を折り返した端部を縫着して革張用リングに張設した打面革を、胴の両端面に圧着した和太鼓において、打面革に加圧リングを、胴の端面外周と革張用リングの間に設置し、押圧手段により加圧リングで打面革を押圧して緊張させることを特徴とするものである。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1において、打面革の革張用リングに沿って折り返した端部の逢着位置を、加圧リングの外側としたことを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、胴の両端面の打面革に設置した各加圧リングに互いに位置を違えて設けたボルト孔、このボルト孔に連続する打面革に空けられた連設孔、及び胴に遊嵌した平板輪の前記ボルト孔に対応する位置に設けた連通孔に、押圧用ボルトを挿通してナットで加圧リングと平板輪を締着し、押圧手段としたことを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1又は2において、胴の両端面の打面革に設置した各加圧リングに互いに対向する位置に設けたボルト孔、及びこのボルト孔に連続する打面革に空けられた連設孔に挿通した対向する押圧用ボルトを、ターンバックルで連繋し両端面の加圧リングを締着し、押圧手段としたことを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、請求項3又は4において、加圧リングの外周側に設けた突設片にボルト孔を有することを特徴とし、請求項6の発明は同じく加圧リングが内外二重のリングにより形成され、両リングを連結する連結部を有すると共に、この連結部にボルト孔を設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項7の発明は、請求項6において、打面革の革張用リングに沿って折り返した端部の逢着が、内外二重のリングの間に位置していることを特徴とし、請求項8の発明は、請求項1乃至7のいずれかにおいて、加圧リングに革張用リング押さえ部を有することを特徴とし、さらに、請求項9の発明は、請求項1乃至8のいずれかにおいて、革張用リングが筒体で形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、加圧リングは、革張用リングの内側に設置され、従来の伸ばす範囲に比べ、短径の範囲内の打面革を集中的に伸ばして緊張させるため、打面部の緊張をもたらす引き伸ばし距離が短くて良く、かつ従来よりも短時間で打面革の緊張をもたらす効果を発揮する。
また、加圧リングは、打面革に直接設置して打面部(胴の端面内)の全周に亘って囲繞し、加圧して伸ばすため、打面部の均一な緊張を保持する効果を得られる。
そして、加圧リングを胴端部に極力接近させて接置することで、打面革の緊張を一層効率よくもたらす効果を発揮するものである。
【0016】
請求項2の発明は、上記の効果に加えて、打面革の革張用リングに沿って折り返した端部の逢着位置を、加圧リングの外側としたため、逢着部分は加圧リングの内側の打面革の緊張に直接影響を受けず、逢着部からの亀裂の発生を回避できる効果を発揮する。
【0017】
請求項3の発明は、請求項1及び2の効果に加え、加圧リングをボルトで締めこむため、ロープ掛けより容易確実に太鼓打面の革の緊張が得られものである。
そして、打面革に形成する連設孔は、皮を引っ張り伸ばすための引っ掛け孔に利用するものでないため、この連設孔から打面革に亀裂を生じる虞はなく、従来の問題を解消する効果を有する。
更に、加圧リングと平板輪の関係は、打面革の締め付け開始から終了まで太鼓打面に対し 垂直に締め込むので、芯ズレが無く ボルト及びナットの破損の虞がない効果を得られる。
【0018】
請求項4の発明は、押圧用ボルトを、ターンバックルで連繋し両端面の加圧リングを締着するものであるから、打面革の緊張操作を容易迅速に行える効果を発揮する。
【0019】
請求項5の発明は、請求項3又は4の発明の効果に加えて、加圧リングの外周側に設けた突設片にボルト孔を有するため、打面革を押圧する加圧リングと連設孔が干渉することが無くなり、連設孔から打面革に亀裂を生じることをより確実に防止する効果を有する。
また、胴の端面外周と革張用リングの間に設置される加圧リングは、自然に胴端部側へ接近して設置されることとなる効果も得られるのである。
【0020】
請求項6の発明は、請求項3又は4の発明の効果に加えて、加圧リングが内外二重のリングにより形成されているため、押圧力が一層確実強大となる効果があり、また、両リングの連結部にボルト孔を設けたため、連設孔の部分の打面革が固定されて加圧リングの押圧作用に影響を受けないので連設孔からの亀裂の発生を完全に防止できる効果を発揮する。
【0021】
請求項7の発明は、請求項6の発明の効果に加えて、打面革の革張用リングに沿って折り返した端部の逢着が、内外二重のリングの間に位置しているため、逢着部分の打面革が固定されて加圧リングの押圧作用に影響を受けないので、縫い目用の透孔亀裂の発生を完全に防止できる効果を発揮する。
【0022】
請求項8の発明は、上記の各請求項の発明の効果に加えて、加圧リングに革張用リング押さえ部を有するため、加圧リングと革張用リング間の革の部分が固定され、加圧リングの押圧作用が加圧リング内の打面革にのみ及んで伸ばして緊張させることとなる効果を発揮する。
【0023】
請求項9の発明は、上記の各請求項の発明の効果に加えて、革張用リングが筒体で形成されているため、従来の革張用リングより軽量で太鼓の取り扱いを容易とする効果を得られ、革張用リングを直接引っ張る必要がなく強度の制約が緩和されたことにより得られものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施の形態を示す和太鼓1の平面図、図2は同正面図、図3は同一部縦断正面図である。
和太鼓1は、胴2、胴2の上・下端面21に当着した打面革3、3、打面革3、3を胴2の端面に圧着固定する加圧リング4及び押圧手段より構成され、押圧手段は押圧用ボルト51、ナット52及び平板輪6より成る。
【0025】
胴2は、例えば欅の幹を輪切りにし、中をくり抜いて円筒状に鼓形としている。
打面革3は、革張用リング7に張設され、革張用リング7は胴2の外径より稍大きな径を有し、革張用リング7上に打面革3を張り置き、革張用リング7に沿って周囲を折り返し、折り返した端部31と表面とを縫着8して形成されている。
革張用リング7は金属製のパイプを輪状に成形し、逢着用の糸は従来から凧糸を用いるのが多く、縫着8の位置は当着する加圧リング4の外側に加圧リング4に沿って為されている。
【0026】
そして、この加圧リング4は、革張用リング7に張着された打面革3は胴2の上・下の端面21に当て、端面21の稍外側(当然に革張用リング7の内側)の打面革3上に設置されている。
加圧リング4は外周側に突設片41が定間隔で設けられ、各突設片41にはボルト孔42を有し、このボルト孔42に連続する打面革3には連設孔32が空けられている。
この連設孔32が前記逢着8と重ならないようにボルト孔42及び連設孔32を位置決めするか、又は、逢着8を迂回して施してもよい。
【0027】
一方、胴2の中央部には平板輪6が水平に遊嵌してあり、平板輪6の前記ボルト孔42に対応する位置に連通孔61が穿設されている。
したがって、上下一直線上に位置する、打面革3に設置した加圧リング4に設けた突設片41のボルト孔42、このボルト孔42に連続する打面革3に空けられた連設孔32、及び胴2に遊嵌した平板輪6の連通孔61に、押圧用ボルト51を挿通してナット52で加圧リング4と平板輪6を締着することで、加圧リング4がその径の範囲内の打面革3を伸ばして緊張させるのである。
【0028】
平板輪6は、遊嵌した胴2の上・下端面21に当着した打面革3、3の加圧リング4、4と、押圧用ボルト51とナット52で同等に締着することなるため、引っ張り力が各加圧リング4,4に作用する。
当然、上下方向からの押圧用ボルト51に対応する連通孔61・・・が干渉しないように配置されている。
また、図1乃至図3では、加圧リング4に設けた突設片41は、先部が延伸して革張用リング押さえ部43となっている。
【0029】
図4は他の実施の形態例を示す要部断面図であり、胴2の両端面21、21の打面革3、3に設置した各加圧リング4、4に互いに対向する位置に設けたボルト孔42、及びこのボルト孔42に連続する打面革3、3に空けられた連設孔61に挿通した押圧用ボルト51、51を、ターンバックル53で連繋し両端面21、21の加圧リング4、4を締着し、押圧手段としたものである。
【0030】
更に、図5及び図6は他の実施の形態例を示す平面図であり、加圧リング4の外側に一回り長径の補助リング9を設けた二重のリングで形成され、突設片41で一体に連結されているものである。
補助リング9の径は革張用リング7よりも短径とし、加圧リング4及び補助リング9を胴2の端面21と革張用リング7間の打面革上に設置できるようにしたものである。
【0031】
上記の図1乃至図3の実施の態様例では、ボルト孔42が加圧リング4の複数の各突設片41に設けられているけれど、全周囲に亘る突設片を延設したり、或いは加圧リングを角部が丸みを持った板状とし、加圧リング自体にボルト孔を設けることもできる。
また、図4においても全周囲の加圧リング4と補助リング9間に、平板リングの突設片を介在させても良い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施の形態を示す平面図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】図1の一部縦断正面図である。
【図4】本発明の他の実施の形態を示す一部縦断正面図である。
【図5】本発明の他の実施の形態を示す平面図である。
【図6】図5の一部縦断正面図である。
【図7】従来例の一部縦断正面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 和太鼓
2 胴
21 端面
3 打面革
31 折り返した端部
32 連設孔
4 加圧リング
41 突設片
42 ボルト孔
43 革張用リング押さえ部
51 押圧用ボルト
52 ナット
53 ターンバックル
6 平板輪
61 連通孔
7 革張用リング
8 逢着
9 補助リング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴の端面外周より大径の革張用リング上へ張ると共に、革張用リングに沿って周囲を折り返した端部を縫着して革張用リングに張設した打面革を、胴の両端面に圧着した和太鼓において、打面革に加圧リングを、胴の端面外周と革張用リングの間に設置し、押圧手段により加圧リングで打面革を押圧して緊張させることを特徴とする和太鼓。
【請求項2】
打面革の革張用リングに沿って折り返した端部の逢着位置を、加圧リングの外側としたことを特徴とする請求項1記載の和太鼓。
【請求項3】
胴の両端面の打面革に設置した各加圧リングに互いに位置を違えて設けたボルト孔、このボルト孔に連続する打面革に空けられた連設孔、及び胴に遊嵌した平板輪の前記ボルト孔に対応する位置に設けた連通孔に、押圧用ボルトを挿通してナットで加圧リングと平板輪を締着し、押圧手段としたことを特徴とする請求1又は2記載の和太鼓。
【請求項4】
胴の両端面の打面革に設置した各加圧リングに互いに対向する位置に設けたボルト孔、及びこのボルト孔に連続する打面革に空けられた連設孔に挿通した対向する押圧用ボルトを、ターンバックルで連繋し両端面の加圧リングを締着し、押圧手段としたことを特徴とする請求1又は2記載の和太鼓。
【請求項5】
加圧リングの外周側に設けた突設片にボルト孔を有することを特徴とする請求3又は4記載の和太鼓。
【請求項6】
加圧リングが内外二重のリングにより形成され、両リングを連結する連結部を有すると共に、この連結部にボルト孔を設けたことを特徴とする請求項3又は4記載の和太鼓。
【請求項7】
打面革の革張用リングに沿って折り返した端部の逢着が、内外二重のリングの間に位置していることを特徴とする請求項6記載の和太鼓。
【請求項8】
加圧リングに革張用リング押さえ部を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の和太鼓。
【請求項9】
革張用リングが筒体で形成されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の和太鼓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−294368(P2009−294368A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146885(P2008−146885)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(508168077)有限会社スパーク工業 (1)