説明

和紙立体形状物の製造方法及び和紙立体形状物

【課題】製造が簡単であり、コストを抑制しつつ大量生産を実施することができる和紙立体形状物の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の和紙立体形状物の製造方法は、和紙原料と水と粘剤とを含む紙料液を調整する紙料液調整工程(S100)と、前記紙料液にハイドロゲルを分散しハイドロゲル分散紙料液を調整するハイドロゲル分散紙料液調整工程(S300〜S301)と、前記ハイドロゲル分散紙料液を型上に堆積させる堆積工程(S400)と、前記型上に堆積された前記ハイドロゲル分散紙料液を乾燥し和紙立体形状物とする乾燥工程(S401)と、からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、据え置き式電気照明器具、電気スタンド、行灯、提灯、天井吊下げ照明灯具等の照明器具用のシェード、或いはインテリア用のオブジェなどに好適な和紙立体形状物の製造方法に関するものである。また、本発明は、そのような方法を用いて製造した和紙立体形状物にも関連している。
【背景技術】
【0002】
近年、伝統工芸品など日本の古いものが見直されており、電気照明器具のランプシェードとして和紙材料を用いた商品が好まれる傾向がある。和紙材料を用いたランプシェードとしては、竹ひごなどの骨組みを形成し、この骨組の外周表面に、透光性被覆材である和紙材料を貼り付けて構成したものが従来より知られているが、骨組みとして竹ひごを用いるものでは、造形可能な形状が限定されてしまうこととなる。そこで、より柔軟な造形を可能とするために骨組みとして紐部材を用いる技術が、例えば、特許文献1(特開平5−156594号公報)に開示されている。この特許文献1には、破壊可能な素材からなる、所望の立体形状を有する原型1の表面に、表面が毛羽立った、複数の紐状部材2を交差させて配置し、この表面に、植物繊維3及びネリを含む紙料液を付着させ、上記紐状部材2と植物繊維3を乾燥して、上記原型1の外観に対応する和紙成形体を形成した後、上記原型1を破壊して上記和紙成形体の内部から取り出すことを特徴とする、和紙成形体の製造方法が開示されている。
【特許文献1】特開平5−156594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の技術では、紐状部材などの骨組みとなる部材を予め組んでおき、このような骨組み部材に対して紙料液を付着させることによって強度を確保し、もって和紙成形体の立体形状を維持するようにしている。しかしながら、このような骨組みを組むための工程においては、原型の表面に、表面が毛羽立った複数の紐状部材を交差させて配する必要があり、製造には専門的技能者の多大な労力がかかるものであり、これが大量生産のネックとなったり、コストアップの要因となったりして問題となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記のような問題点を解決するために、請求項1に係る発明は、和紙原料と水と粘剤とを含む紙料液を調整する紙料液調整工程と、前記紙料液にハイドロゲルを分散しハイドロゲル分散紙料液を調整するハイドロゲル分散紙料液調整工程と、前記ハイドロゲル分散紙料液を型上に堆積させる堆積工程と、前記型上に堆積された前記ハイドロゲル分散紙料液を乾燥し和紙立体形状物とする乾燥工程からなることを特徴とする和紙立体形状物の製造方法である。
【0005】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の和紙立体形状物の製造方法において、前記乾燥工程によって得られた前記和紙立体形状物に抗菌剤を塗布する抗菌剤塗布工程をさらに有することを特徴とする。
【0006】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の和紙立体形状物の製造方法において、前記乾燥工程によって得られた前記和紙立体形状物にガラス質を塗布するガラス質塗布工程をさらに有することを特徴とする。
【0007】
また、請求項4に係る発明は、請求項1又は請求項3のいずれか1項に記載の和紙立体
形状物の製造方法において、前記堆積工程はハイドロゲル分散紙料液を吹き付けることによって行うことを特徴とする。
【0008】
また、請求項5に係る発明は、請求項1又は請求項4のいずれか1項に記載の和紙立体形状物の製造方法において、前記型には空気の封入・排出によって、形状変更が可能なものを用いることを特徴とする。
【0009】
また、請求項6に係る発明は、請求項1又は請求項4のいずれか1項に記載の和紙立体形状物の製造方法において、前記型にはブロック化されたものを用いることを特徴とする。
【0010】
また、請求項7に係る発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の和紙立体形状物の製造方法によって製造されたことを特徴とする和紙立体形状物である。
【0011】
また、請求項8に係る発明は、ハイドロゲルが分散されたハイドロゲル分散紙料液によって造形されたことを特徴とする和紙立体形状物である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の和紙立体形状物の製造方法によれば、骨組みを組むための工程などを行うことなく、ハイドロゲル分散紙料液を直接、型上に堆積させることによって和紙立体形状物を製造することが可能となるので、専門的技能者が必要でなく、製造が簡単であり、コストを抑制しつつ大量生産を実施することができるようになる。また、本発明の和紙立体形状物の製造方法において用いるハイドロゲルが分散された紙料液は、立体形状をなす型に堆積したときにおいて、堆積されたときの状態を維持しようと特性を有するものであるために、本発明の和紙立体形状物の製造方法によれば、シームレスな和紙立体形状物を、手間をかけることなく製造することが可能となる。また、本発明の和紙立体形状物は、製造コストが抑制されるために、安価に提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る和紙立体形状物の製造方法における工程の流れを示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る和紙立体形状物の製造方法における型の構成を説明する図である。
【図3】本発明の実施形態に係る和紙立体形状物の製造方法においてセッティングされた型の様子を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る和紙立体形状物の製造方法においてハイドロゲル分散紙料液(生成物P300)を型に堆積させる様子を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る和紙立体形状物の製造方法においてハイドロゲル分散紙料液(生成物P300)の堆積が完了した状態を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る和紙立体形状物の製造方法における型抜き工程の様子を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係る和紙立体形状物の製造方法における抗菌剤塗布工程、ガラス質塗布工程の概念を説明する図である。
【図8】本発明の実施形態に係る和紙立体形状物の製造方法によって製造された和紙立体形状物の利用形態の一例を示す図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係る和紙立体形状物の製造方法においてハイドロゲル分散紙料液(生成物P300)を型に堆積させる様子を示す図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係る和紙立体形状物の製造方法における型の構成を説明する図である。
【図11】本発明の他の実施形態に係る和紙立体形状物の製造方法においてハイドロゲル分散紙料液(生成物P300)を型に堆積させる様子を示す図である。
【図12】本発明の他の実施形態に係る和紙立体形状物の製造方法によって製造される和紙立体形状物(生成物P400)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施形態に係る和紙立体形状物の製造方法における工程の流れを示す図である。
【0015】
製造工程におけるステップS100は、一般的な紙漉によって和紙を作成するための紙料液を調整する工程である。このステップS100では、和紙原料である楮塊、パルプ塊、及び水の中に粘剤が分散されたねり水が、攪拌槽に投入され攪拌されることによって実施され、所定の攪拌工程の後に生成物P100である紙料液を得ることができる。本実施形態においては、500gの楮塊、500gのパルプ塊、水100L中に10g以下の粘剤が溶解されているねり水を用いている。また、上記の粘剤としては、明成化学工業株式会社製アルコックスK−2を用いた。このアルコックスK−2は、和紙抄紙用合成粘剤であり、ポリエチレンオキサイド−アクリルアミド共重合物を主な組成とするものである。なお、紙料液に溶解する粘剤としては、これに限定されるものではなく、これ以外のものを用いることも可能である。
【0016】
なお、本実施形態のような和紙に関連する分野の製造工程においては、一般的な化学分野のような厳密な成分配合を行わず、職人の経験によって配合を若干変更することもあるために、上記のような各成分の配合はあくまで参考値であることを付記しておく。
【0017】
製造工程におけるステップS200は、CMCハイドロゲルを水(温水)に溶解して、CMCハイドロゲル溶液(生成物P200)を得る工程である。ここで、本実施形態において用いるCMCハイドロゲルとは、カルボキシメチルセルロース(CMC)に精製水を加え良く練ったペースト状態に電離性放射線を照射して得たものである。このCMCハイドロゲルは、土壌中の微生物により生分解する環境に優しい生分解性高分子吸水ゲルであるという特性を有する。また、CMCハイドロゲルは水を多量に吸収し保持できるという特性を有するため、使い捨てオムツなどの衛生用品や保湿材として医療、化粧品の分野でも使用できるものである。このようなハイドロゲルとしては、特開2008−11857号公報、特開2008−111027号公報、特開2007−277491号公報、特開2004−43543号公報、特開2003−48997号公報などに記載のものを用いることが可能である。なお、本実施形態においては、CMCハイドロゲルとしては、ゲル分率が10%〜80%のもの、より好ましくは40%〜70%のものを用いるようにする。
【0018】
さて、上記のようなCMCハイドロゲルは、比較的水に分散しにくいので、ステップS200における調整工程では、所定の攪拌槽に常温以上80℃以下の温水と、粉体状のCMCハイドロゲルとを投入して、よく攪拌するようにしている。ここで、用いる温水は1Lで、この中に分散させるCMCハイドロゲルは10gである。なお、ステップS200の調整工程においては、0.1〜10%程度の濃度範囲のCMCハイドロゲル溶液を用いることが可能である。
【0019】
ステップS300の調整工程では、生成物P100である紙料液と、生成物P200であるCMCハイドロゲル溶液とを攪拌槽で攪拌することによって、ハイドロゲルが分散されたハイドロゲル分散紙料液を調整する。このステップS300におけるハイドロゲル分散紙料液中のCMCハイドロゲルの濃度はおよそ0.01%程度である。
【0020】
続くステップS301における水分除去工程では、18〜20メッシュ程度のメッシュ
部材によっておよそ90%程度の水分を除去する。
【0021】
また、水分除去工程を経たハイドロゲル分散紙料液の粘性が低い場合には、ステップS302において調整用の高濃度のねり水が加えられ、攪拌される。なお、このステップS302における粘性調整によって0.01〜0.1%程度の粘剤濃度の向上を行うものである。
【0022】
以上のような工程を経て、適当な粘性を有するハイドロゲル分散紙料液(生成物P300)を得ることができる。本実施形態においては、生成物P300のようなCMCハイドロゲルが分散された紙料液を所定の立体形状をなす型に堆積させることによって、和紙立体形状物の造形を行うが、このようなCMCハイドロゲルが分散されている紙料液は、堆積されたときの状態を維持しようと特性を有するものであるために、骨組みなどの基材を用いることなく、立体形状の造形を行うことが可能となる。また、CMCハイドロゲルは天然由来の物質であると共に、生分解物質でもあるために、本発明により製造される和紙立体形状物は、廃棄時などにおいて環境に優しいものであるということができる。
【0023】
次に、上記のようなハイドロゲル分散紙料液(生成物P300)を用いて、立体形状の和紙構造物を製作するための工程について説明する。以下の実施形態では、開口を有する略球形状の和紙立体形状物を製作するための工程について説明する。図2は本発明の実施形態に係る和紙立体形状物の製造方法における型の構成を説明する図である。図2において、10は型、11は型本体部、12は管状部、20は遮蔽部材、21は開口部をそれぞれ示している。
【0024】
型10は略球形状の型本体部11と、この型本体部11に空気を導入したり、型本体部11に導入された空気を排出したりするために用いられる管状部12とから概略構成されている。型本体部11は厚さ数mm程度の樹脂材料やゴム材料でできており、型本体部11に空気を導入したり、或いは、型本体部11から空気を排出したりすることによって、形状の変更が可能なように構成されてなる。管状部12には不図示のバルブなどが設けられるており、当該バルブを閉めることにより型本体部11に導入した空気を型本体部11に封入して、型本体部11の略球形形状を維持させることができたり、或いは、バルブを開き型本体部11に導入した空気を排出することで、型本体部11を収縮させることができたりするようになっている。
【0025】
図2に示されている状態は、型本体部11に空気が封入されて、型本体部11が略球形形状とされている状態を示している。型10にハイドロゲル分散紙料液(生成物P300)を堆積させることよって和紙立体形状物の造形を行うときには図2に示すような型本体部11に空気が封入されたときの形状を用いる。
【0026】
遮蔽部材20は、円形の開口部21を有する板状の部材であり、型本体部11の底部を遮蔽することによって、ハイドロゲル分散紙料液(生成物P300)が型本体部11底部に付着しないようにするものである。
【0027】
本発明の実施形態に係る和紙立体形状物の製造方法において、和紙立体形状物の造形を行うときにおいては、まず管状部12から型本体部11に空気を導入して膨張させ略球形形状を維持させるようにする。そして、型本体部11底部に開口部21をはめ込むことによって、遮蔽部材20をセットする。図3は遮蔽部材20を型本体部11底部にセットした後の状態で、ハイドロゲル分散紙料液(生成物P300)による造形準備が整った状態を示している。図3は本発明の実施形態に係る和紙立体形状物の製造方法においてセッティングされた型の様子を示す図である。
【0028】
次に、図1及び図4に示すように、ステップS300乃至ステップS302で調整され
たハイドロゲル分散紙料液(生成物P300)を、スプレーガン30にセットする。このスプレーガン30としては、モルタル吹き付け用途のものを用いることができ、本実施形態ではVOYLET社製FR−300を用いている。ステップS400の吹き付け工程で
用いるスプレーガン30としては、これに限定されるものではなく、これ以外のものを用いることも可能である。
【0029】
図4に示すように、スプレーガン30にセットされたハイドロゲル分散紙料液(生成物P300)を、型本体部11になるべく均一となるように堆積させる。なお、ハイドロゲル分散紙料液(生成物P300)を型本体部11に堆積させる工程の前段に、必要に応じて型本体部11表面に離型剤を塗布しておくこともできる。ただ、本実施形態のように、CMCハイドロゲルが分散された紙料液を用いると、離型剤を利用しなくても離型性が良いという傾向はある。図4は本発明の実施形態に係る和紙立体形状物の製造方法においてハイドロゲル分散紙料液(生成物P300)を型に堆積させる様子を示す図である。また、図4は図1におけるステップS400を図に現したものでもある。CMCハイドロゲルが分散されている紙料液であるハイドロゲル分散紙料液(生成物P300)は、スプレーガン30の吹き付けによって、型本体部11に堆積されても、堆積されたときの状態を維持しようと特性を有しており、型本体部11からほとんど脱落することがなく、したがって、骨組みなどの骨材を用いることなく、立体形状の造形を行うことが可能となる。また、本実施形態に係るハイドロゲル分散紙料液(生成物P300)は、立体形状をなす型10に堆積した際、堆積されたときの状態を維持しようと特性を有するので、シームレスな和紙立体形状物を、手間をかけることなく製造することが可能となる。
【0030】
ハイドロゲル分散紙料液(生成物P300)を型10に堆積させるための、スプレーガン30による吹き付ける工程(ステップS400)が完了した状態が図5に示すものである。このように堆積が完了した状態とされた後には、乾燥工程(ステップS401)が実施される。この乾燥工程としては、自然乾燥或いは温風による強制乾燥の双方を用いることができるが、後者の方が前者より早く乾燥工程を完了させることができ、量産性がよいことは言うまでもない。ステップS401による乾燥工程が完了すると、和紙立体形状物が一応完成することとなる。
【0031】
次に、乾燥工程が完了した和紙立体形状物を型から取り外す工程が実施される。ステップS402の型抜き工程がその工程であり、その様子を具体的に示したものが図6である。図6は本発明の実施形態に係る和紙立体形状物の製造方法における型抜き工程の様子を示す図である。ステップS402の型抜き工程においては、管状部12における不図示のバルブを開き型本体部11に導入した空気を排出することで、型本体部11を収縮させて、遮蔽部材20の開口部21により形成された和紙立体形状物底部の開口から、型本体部11を取り外すようにする。
【0032】
ステップS402の型抜き工程を経た和紙立体形状物は、必要に応じて、図7に示すような抗菌剤塗布工程(ステップS403)又はガラス質塗布工程(ステップS404)のいずれかの工程、抗菌剤塗布工程(ステップS403)及びガラス質塗布工程(ステップS404)の双方の工程が施される。抗菌剤塗布工程(ステップS403)は、例えば、光触媒などの抗菌材料を和紙立体形状物の外表面、内面に塗布する工程である。また、ガラス質塗布工程(ステップS404)は、ポリシロキサンを主原料とするガラス質を和紙立体形状物の外表面に塗布することにより、和紙立体形状物の強度を向上させたり、和紙立体形状物の光透過性を向上させたり、撥水性を付与したりするものである。本実施形態では、テトラエトキシシランの濃度5〜10%程度のブタノール、エタノール溶液を和紙立体形状物の外表面に塗布した後に乾燥させることで行った。なお、この乾燥には、常温における自然乾燥、又は40℃〜80℃での強制乾燥のいずれの方法も用いることが可能
である。なお、テトラエトキシシランの濃度をより高くすれば、和紙立体形状物の強度をより向上させたりすることができるが、和紙立体形状物の和紙の質感を維持するためには、テトラエトキシシランの濃度としては、5〜10%であることが望ましい。
【0033】
以上のような工程を経て最終的に図1の生成物P400に示すような和紙立体形状物を得ることができる。このような和紙立体形状物の製造方法によれば、骨組みを組むための工程などを行うことなく、ハイドロゲル分散紙料液(生成物P300)を直接、型上に堆積させることによって和紙立体形状物を製造することが可能となるので、製造が簡単であり、コストを抑制しつつ大量生産を実施することができるようになる。このよう和紙立体形状物を利用形態の一例を図8に示す。図8は本発明の実施形態に係る和紙立体形状物の製造方法によって製造された和紙立体形状物の利用形態の一例を示す図である。図8は、所定の広さを有する基台部51上に電灯部52が設けられているような電気照明装置50に、和紙立体形状物(生成物P400)の底部開口を利用して、これを被せるようにして利用する利用形態を示している。このような利用形態によれば、和紙材料による温かみのある照明器具を提供することができるようになる。
【0034】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。先の実施形態においては、ハイドロゲル分散紙料液(生成物P300)を型10に堆積させた後に、和紙立体形状物から型10を取り外す例であったが、本実施形態は造形された和紙立体形状物を型から取り外すことなく型ごと最終製品とする例である。本実施形態は、このような型の使用形態が先の実施形態と異なるのみであり、その他の点については同様であるので、型に関連する相違事項についてのみ説明する。
【0035】
図9は本発明の他の実施形態に係る和紙立体形状物の製造方法においてハイドロゲル分散紙料液(生成物P300)を型に堆積させる様子を示す図である。本実施形態において利用する型60は、底部に開口部61を有し略球形形状をなす透明なガラス中空体である。本実施形態においては、このようなガラス中空体である型60に対して、スプレーガン30の吹き付けによって、ハイドロゲル分散紙料液(生成物P300)を堆積させる(ステップS400)。そして、その後、乾燥工程であるステップS401が実施され、ステップS402の型抜き工程については省略される。乾燥工程(ステップS401)を経た和紙立体形状物は、先の実施形態と同様、必要に応じて、抗菌剤塗布工程(ステップS403)又はガラス質塗布工程(ステップS404)のいずれかの工程、抗菌剤塗布工程(ステップS403)及びガラス質塗布工程(ステップS404)の双方の工程が施され、最終製品である和紙立体形状物(生成物P400)を得ることができる。このような実施形態によっても、先の実施形態と同様の効果を享受することが可能である。
【0036】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。第1に示した実施形態においては、型10として空気の封入・排出によって形状変更が可能なものを用いていたが、本実施形態では、型としてブロック化されたものを用いるようにしている。本実施形態は、このような型の使用形態が第1の実施形態と異なるのみであり、その他の点については同様であるので、型に関連する相違事項についてのみ説明する。
【0037】
図10は本発明の他の実施形態に係る和紙立体形状物の製造方法における型の構成を説明する図である。本実施形態における型70は、図中斜線で示すようなブロック単位に分割することができるように構成されている。このブロック単位の継ぎ目については、図10中の点線で示されている。
【0038】
このようなブロック化された型70を用いる場合、ハイドロゲル分散紙料液(生成物P300)を堆積させることよって和紙立体形状物の造形を行うときには、図10に示すようにブロック単位を組み上げることによって、造形しようとする形状となるようにする。
本実施形態においては、このようなブロック単位が組み上げられた型70に対して、スプレーガン30の吹き付けによって、ハイドロゲル分散紙料液(生成物P300)を堆積させる(ステップS400)。図11は本発明の他の実施形態に係る和紙立体形状物の製造方法においてハイドロゲル分散紙料液(生成物P300)を型70に堆積させる様子を示す図である。なお、スプレーガン30によるハイドロゲル分散紙料液(生成物P300)の吹き付けにおいては、型70の底部には行わないようにし、この底部から型70を抜くようにする。
【0039】
ステップS400の工程を経て、乾燥工程であるステップS401が実施されると、型70をブロック単位に分離し、分離されたブロック単位を和紙立体形状物の底部から取り出すようにして、ステップS402の型抜き工程を実施する。
【0040】
型抜き工程(ステップS402)を経た和紙立体形状物は、これまでの実施形態と同様、必要に応じて、抗菌剤塗布工程(ステップS403)又はガラス質塗布工程(ステップS404)のいずれかの工程、抗菌剤塗布工程(ステップS403)及びガラス質塗布工程(ステップS404)の双方の工程が施され、最終製品である図12に示すような和紙立体形状物(生成物P400)を得ることができる。このような実施形態によっても、先の実施形態と同様の効果を享受することが可能である。
【0041】
以上、本発明の和紙立体形状物の製造方法によれば、骨組みを組むための工程などを行うことなく、ハイドロゲル分散紙料液を直接、型上に堆積させることによって和紙立体形状物を製造することが可能となるので、専門的技能者が必要でなく、製造が簡単であり、コストを抑制しつつ大量生産を実施することができるようになる。また、本発明の和紙立体形状物の製造方法において用いるハイドロゲルが分散された紙料液は、立体形状をなす型に堆積したときにおいて、堆積されたときの状態を維持しようと特性を有するものであるために、本発明の和紙立体形状物の製造方法によれば、シームレスな和紙立体形状物を、手間をかけることなく製造することが可能となる。また、本発明の和紙立体形状物は、製造コストが抑制されるために、安価に提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0042】
10・・・型、11・・・型本体部、12・・・管状部、20・・・遮蔽部材、21・・・開口部、30・・・スプレーガン、50・・・電気照明装置、51・・・基台部、52・・・電灯部、60・・・型、61・・・開口部、70・・・型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
和紙原料と水と粘剤とを含む紙料液を調整する紙料液調整工程と、
前記紙料液にハイドロゲルを分散しハイドロゲル分散紙料液を調整するハイドロゲル分散紙料液調整工程と、
前記ハイドロゲル分散紙料液を型上に堆積させる堆積工程と、
前記型上に堆積された前記ハイドロゲル分散紙料液を乾燥し和紙立体形状物とする乾燥工程と、からなることを特徴とする和紙立体形状物の製造方法。
【請求項2】
前記乾燥工程によって得られた前記和紙立体形状物に抗菌剤を塗布する抗菌剤塗布工程をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の和紙立体形状物の製造方法。
【請求項3】
前記乾燥工程によって得られた前記和紙立体形状物にガラス質を塗布するガラス質塗布工程をさらに有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の和紙立体形状物の製造方法。
【請求項4】
前記堆積工程はハイドロゲル分散紙料液を吹き付けることによって行うことを特徴とする請求項1又は請求項3のいずれか1項に記載の和紙立体形状物の製造方法。
【請求項5】
前記型には空気の封入・排出によって、形状変更が可能なものを用いることを特徴とする請求項1又は請求項4のいずれか1項に記載の和紙立体形状物の製造方法。
【請求項6】
前記型にはブロック化されたものを用いることを特徴とする請求項1又は請求項4のいずれか1項に記載の和紙立体形状物の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の和紙立体形状物の製造方法によって製造されたことを特徴とする和紙立体形状物。
【請求項8】
ハイドロゲルが分散されたハイドロゲル分散紙料液によって造形されたことを特徴とする和紙立体形状物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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