説明

咬合具およびこの咬合具を備えた包装袋

互いに咬合する一対の雌雄部材21、22を有する咬合具20は、分子量分布Mw/Mnが3.5以下のランダムポリプロプレンを主成分とする組成物を成形することにより構成される。このような組成物を成形して咬合具20を構成することにより、ランダムポリプロピレン中に低分子量成分が少なくなるため、セパレータ312によって咬合具20を雄部材21、雌部材22に分離する際、低分子量成分がブリードして雌雄部材21、22の表面部分がべたつくことがなく、添加するスリップ剤の量を低減しても滑り性を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、互いに咬合する一対の雌雄部材を有する咬合具およびこのような咬合具を備えた咬合具付き包装袋に関する。
【背景技術】
従来、包装袋の開口部周縁に沿って互いに咬合する一対の雌雄部材を固着した咬合具付き包装袋が知られている。この咬合具付き包装袋によれば、雌雄部材の咬合を解除して食品等を収納し、再度雌雄部材を咬合させることにより、食品等の内容物を外気から遮断して保存することができるため、食品等の内容物をその品質を損なうことなく長期に保存することができるという利点がある。
このような咬合具を構成する雄部材または雌部材は、包装袋を構成するシート内面に溶着される帯状基部と、この基部に立設される咬合部本体とを備えて構成される。
また、その材質は、包装袋を構成するシートが延伸、無延伸ポリプロピレンである場合、ランダムポリプロピレンが採用され、ヒートシール性を向上させるために、ランダムポリプロピレンに低密度ポリエチレンやエチレン酢酸ビニル共重合体等を添加する技術も知られている(例えば、特公昭64−8659号公報参照)。
このような咬合具は、ランダムポリプロピレンを、雄部材、雌部材としてそれぞれテープ状に押し出して成形し、両者を咬合した状態で製袋業者に出荷される。製袋業者では、雄部材、雌部材を、互いに咬合された状態のまま、包装袋を構成するシートの開口部周縁に沿ってそれぞれ溶着固定する。その後、包装袋の大きさに応じて包装袋のサイドシール部分で咬合具をつぶし、かつ切り離すことで、咬合具付き包装袋が製造される。
ここで、包装袋の製造にあたっては、長尺の咬合具およびシートを連続的に溶着してゆく。そして、咬合具の雄部材、雌部材を咬合状態のままシートに溶着する部分では、雌雄部材の間に金属製のセパレータという部材を介在させ、シートの両表面からあてがわれる溶着用のシールバー等を受けるようにしている。このため、咬合具とセパレータとの間の滑り性は製造効率上重要である。このため、従来は、咬合具を構成する樹脂中にスリップ剤を約3000ppm添加することで、セパレータとの滑り性を向上させていた。
しかしながら、このようにスリップ剤を添加してセパレータとの滑り性を向上させる方法は、セパレータと咬合具の分離時の摺動によってスリップ剤が微粉末となってセパレータ部分に析出することがあり、製袋時この微粉末が包装袋内に異物として混入する可能性があるため、スリップ剤の添加量をなるべく少なくする技術が要望されている。
また、ヒートシール性を向上させるために、低密度ポリエチレンやエチレン酢酸ビニル共重合体等を添加することは、雌雄部材の強度、特に、シートとの溶着部分となる帯状基部の強度が弱くなり、シートに雌雄部材を溶着する際、帯状基部の一部が破損して包装袋の密封性を確保できないことがある。
【発明の開示】
本発明の主な目的は、十分な強度を保持しつつヒートシール性が良好で、かつスリップ剤の添加量を少なくしても滑り性を確保することのできる咬合具、およびこの咬合具を備えた包装袋を提供することにある。
前記目的を達成するために、本発明の咬合具は、互いに咬合する一対の雌雄部材を有する咬合具であって、分子量分布Mw/Mnが3.5以下のランダムポリプロピレンを主成分とする組成物を成形してなることを特徴とする。
ここで、分子量分布は、質量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比で与えられ、この分子量分布が小さければ、低分子量成分が少ないランダムポリプロピレンであるといえる。
また、分子量分布Mw/Mnが3.5以下のランダムポリプロピレンは、所定の遷移金属錯体を触媒としてポリプロピレンを製造することにより得ることができる。触媒としては、2つのシクロペンタジエニル環が遷移金属を挟んだサンドイッチ構造の錯体を採用することができ、遷移金属としては、Ti、V、Cr、Co、Ni、Ru等を採用することができる。
さらに、本発明の咬合具は、前記ポリプロピレンが70wt%以上であれば主成分であると考えてよく、このポリプロピレンの性能を阻害しない範囲で他の樹脂を配合したり、スリップ剤、可塑剤、安定剤、充填剤、酸化防止剤、抗菌剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤等を必要に応じて添加してもよい。
このような本発明によれば、ランダムポリプロピレン中に低分子量成分が少ないため、前述したセパレータ等による咬合具の分離に際して、低分子量成分がブリードして雌雄部材の表面部分がべたつくことがなく、添加するスリップ剤の量を低減しても、滑り性を確保することができる。従って、包装袋の製造に際してスリップ剤がセパレータ等に析出して包装袋内に異物として混入することがない。
また、前記の遷移金属錯体からなる触媒を用いて製造されたランダムポリプロピレンを採用することにより、低融点のランダムポリプロピレンとすることができるため、低温で咬合具をつぶすことができ、エチレン等の添加量を少なくして、咬合具の強度を確保することができる。
以上において、前述したジエチルエーテル可溶分が1.0wt%以下であるのが好ましい。
このようにジエチルエーテル可溶分を1.0wt%以下とすることにより、低分子量成分であるジエチルエーテル可溶分のブリードアウトを一層少なくすることができるため、スリップ剤の添加量をより少なくすることができる。
また、前述のランダムポリプロピレンは、融点が130℃以下であるのが好ましい。
このように融点が130℃以下であることにより、雌雄部材をシートに溶着する際のヒートシール性を一層向上させることができるうえ、製袋時、包装袋のサイドシールにより、同時に雌雄部材の咬合本体部分を面外方向から容易につぶすことができるため、包装袋の製造効率を一層向上させることができる。
さらに、前述した組成物には、スリップ剤が0ppmを超え、1500ppm以下添加されているのが好ましい。
このような範囲でスリップ剤が添加されることにより、セパレータと咬合具間の滑り性が一層良好となり、生産性をさらに向上させることができるうえ、スリップ剤を必要最小限の添加量で済ませられるため、セパレータ等へのスリップ剤の析出を防止できる。
また、前述した組成物にエチレン系共重合体からなる改質剤が全体の3wt%〜30wt%配合されている場合、スリップ剤が100ppm〜1500ppm添加されているのが好ましい。
このようにエチレン系共重合体からなる改質剤が配合されている場合、サイドシール部における咬合具の雌雄部材部分の潰し性が向上し、咬合具を取り付けた包装袋の密封性を向上させることができる。
しかし、低融解物質である改質剤の影響からセパレータとの滑り性が低下する可能性があるため、セパレータでの走行性を阻害しない程度の上記範囲のスリップ剤を添加することにより、白粉の発生が少なく、かつサイドシール部における雌雄部材の潰し性が良好な咬合具とすることができる。
本発明において、前記雌雄部材はそれぞれシートに溶着するための基部を備えたことが望ましい。
このような基部により、包装袋に適用される場合に包装袋のシート材料に対して溶着が容易に行える。
本発明において、前記基部は少なくとも前記シートに溶着される側がメタロセン触媒を用いて製造されるランダムポリプロピレンを主成分とする組成物であることが望ましい。
シール溶着部分にメタロセン触媒を用いて製造されるランダムポリプロピレン(メタロセンRPP)を用いることで、溶着性能を向上することができる。
本発明において、前記基部は多層からなり、少なくとも前記シートに溶着される側の層がメタロセン触媒を用いて製造されるランダムポリプロピレンを主成分とする組成物の層であることが望ましい。
このような基部の多層化により、シート溶着部分をメタロセンRPPとしつつ、他の雌雄部材の咬合部分は他の組成とすることもできる。
そして、本発明の包装袋は、前述したいずれかに記載の咬合具を備えていることを特徴とし、これにより、製袋時、異物が混入する可能性の少ない包装袋とすることができるうえ、ヒートシール性を向上させた製造効率の良好な包装袋とすることができ、特に、食品包装用途に好適である。
【図面の簡単な説明】
図1は本発明の実施形態に係る包装袋を表す正面図である。
図2は前記実施形態における咬合具の咬合構造を表す幅方向断面図である。
図3は前記実施形態における咬合具付きの包装袋を製造する製造装置の構造を表す模式図である。
図4は前記実施形態における製造装置を構成する咬合具シール部の構造を表す断面図である。
図5は本発明の他の実施形態における咬合具の咬合構造を表す幅方向断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
図1には、本発明の実施形態に係る包装袋1が示されている。
この包装袋1は、平袋状の包装袋として構成され、延伸または無延伸のポリプロピレンシートを中央部で折り畳み袋の底部とし、重ね合わされたシート10に所定ピッチでサイドシール部11を形成することにより構成され、図中下側の底部とは反対側が開口部12とされるポリプロピレン製の包装袋である。
そして、この開口部12の周縁部分の内側には、本発明の実施形態に係る咬合具20が設けられ、この咬合具20は、サイドシール部11と交差する部分20Aでつぶされている。
咬合具20は、図2に示すように、シート10の内側の互いに対向する面に溶着される一対の雌雄部材21、22を備えている。
雄部材21は、シート内面に溶着される帯状基部211と、この帯状基部211から立ち上がりかつ先端に断面略円形状に膨出する部分を有する雄部本体212とを備えた断面を有する線状部材である。
雌部材22は、雄部材21と同様に帯状基部221と、この帯状基部221から立ち上がりかつ中央部で外側に拡がる一対の咬合片からなる雌部本体222とを備えた断面を有する線状部材である。
そして、雄部材21および雌部材22は、雄部本体211の膨出部分を雌部本体222の一対の咬合片の間に挿入することにより咬合され、咬合することにより、包装袋1の開口部12を閉鎖することができる。
このような咬合具20を構成する材料としては、分子量分布Mw/Mnが3.5以下のランダムポリプロピレンを主成分とし、これに従来よりも少量のスリップ剤500〜1500ppmを添加した組成物が採用されている。
このようなランダムポリプロピレンは、メタロセン触媒つまり一対のシクロペンタジエニル環が遷移金属を挟んだサンドイッチ構造の錯体からなる触媒を用いて製造することができる。メタロセン触媒における遷移金属としては、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)等が用いられる。
咬合具20を製造する場合には、例えば、雄部材21であれば、単軸または2軸の押出成形機のホッパに前述のランダムポリプロピレンを含む組成物からなるペレットを投入し、雄部材21の断面形状に応じた押出ダイから押し出し、引取装置で押出物を引き落としながら、押出物を冷却することにより製造される。雌部材22の場合も同様である。
そして、このように雄部材21、雌部材22が成型されたら、両部材21、22を互いに咬合した後、巻回、梱包して製袋業者に出荷する。
製袋業者では、雄部材21、雌部材22をシート10に溶着しながら製袋して包装袋1を製造している。
具体的には、包装袋1は、図3に示される製袋装置30により製造され、この製造装置30は、咬合具シール部31およびサイドシール部32の他、図示を略したが、シートを中央部で折り畳む機構を備えて構成される。
サイドシール部32は、サイドシール部11を形成するためのシールバー311(図4参照)を備えている。このサイドシール部32のシート送り方向下流側には、サイドシール部32によるシール部分の略中央でシート10を溶断するカット部(図示省略)が設置されている。
咬合具シール部31は、図4に示されるように、シート10の外側で互いに対向配置されるシールバー311と、シート10の内側に、雄部材21の雄部本体212、雌部材22の雌部本体222を囲むように配置される一対のセパレータ312とを備えている。
シールバー311は、シート10に雄部材21の帯状基部211、雌部材22の帯状基部221を溶着する部分であり、図3にも示されるように、シート10の送り方向に延びる棒状体として構成される(図4では紙面直交方向に延びる棒状体)。
この棒状のシールバー311の中間部分は、雄部本体212、雌部本体222をつぶさないように、凹形状の断面として構成されている。一方、このシールバー311の両端は、帯状基部211および帯状基部221をシート10とともにつぶす必要があるため、シール面が平坦化された断面矩形状に構成されている。
セパレータ312は、咬合された状態の雄部材21および雌部材22の間に入り込み、シールバー311による帯状基部211および帯状基部221の溶着時の受け面とされ、シールバー311の延出方向に延びる棒状体として構成される。
このセパレータ312は、シールバー311の凹形状断面の中間部分に応じた部分では、シート面と直交する高さ方向の寸法Hが互いに咬合状態にある雄部材21および雌部材の間隔寸法に対応した寸法になっている。
また、図示を略したが、このセパレータ312は、シールバー311よりもシート送り方向上流側に延出しており、この部分では、上流側に向かうにしたがって高さ寸法Hが小さく(上流側が細く)なっていて、上流側端部が雄部材21および雌部材22の間に円滑に導入されるようになっている。
このような製造装置30では、以下の手順で包装袋1が製造される。
まず、シート10を中央部で折り畳みながら間欠的に下流側に送るとともに、重ね合わされたシート10の間に咬合具20を、シート10の送り込みと同期させて間欠的にセパレータ312の上流側端部に供給する。
この際、咬合具20は、セパレータ312によって雄部材21、雌部材22に分離されていくが、雄部材21の帯状基部211および雌部材22の帯状基部221がセパレータ312の表面と擦れながら分離され、雄部材21、雌部材22中にスリップ剤が多く添加されていると、次第に白粉が析出してくる。
供給された咬合具20がセパレータ312によって雄部材21、雌部材22に分離されたら、シールバー311をシート10に押さえつけ、シート内面と帯状基部211、221をそれぞれ溶着する。
最後に、サイドシール部32によってシート10の幅方向を溶着するとともに、溶着部の中央を溶断してサイドシール部11を形成して包装袋1を完成させる。
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)咬合具20を構成する雄部材21、雌部材22を特定のランダムポリプロピレンを主成分とする組成物を用いて押出成形することにより、ランダムポリプロピレン中の低分子量成分が少なくなるため、セパレータ312による雄部材21、雌部材22の分離に際して、低分子量成分がブリードして雌雄部材21、22の表面がべたつくことがなく、添加するスリップ剤の量を低減しても、セパレータ312に対する雌雄部材21、22の滑り性を確保することができる。従って、咬合具20付きの包装袋1を製造する際、スリップ剤がセパレータ312に析出して包装袋内に異物として混入することがない。
(2)前記の遷移金属錯体からなる触媒を用いて製造されたランダムポリプロピレンで雌雄部材21、22を製造することにより、融点が130℃以下の雌雄部材21、22とすることができるため、咬合具20のサイドシール部11との交差部分21Aのつぶしを、低温かつ短時間で行うことができ、製造効率の向上を図ることができる。
(3)ジエチルエーテル可溶分が1.0wt%以下のランダムポリプロピレンを用いた咬合具20とすることで、ジエチルエーテル可溶分のブリードアウトを一層少なくすることができるため、スリップ剤の添加量をより少なくすることができる。
(4)咬合具20を備えた包装袋1とすることにより、包装袋1内部にスリップ剤が異物として混入することを防止でき、特に食品用包装袋として好適に用いることができる。
尚、本発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すような変形をも含むものである。
前記実施形態では、咬合具20を平袋状の包装袋1に適用していたが、これに限らず、底部にマチを形成した自立性の包装袋に適用してもよく、同じ平袋であっても、底部およびサイドをヒートシールにより形成した三方シール袋に本発明の咬合具を適用してもよい。
また、前記実施形態では、咬合具20を構成する雄部材21の雄部本体212の先端部分が断面円形状に形成され、雌部材22の雌部本体222がこれを囲む一対の咬合片を有する断面形状に形成されていたが、本発明はこれに限られない。すなわち、咬合具の断面形状は、再封止可能なものであれば、種々の断面形状を採用することができる。
更に、本発明において、帯状基部211,221は単層に限らず多層としてもよく、そのシート10に溶着される側の層をメタロセン触媒を用いて製造されるランダムポリプロピレン(メタロセンRPP)としてもよい。
図5には本発明の他の実施形態が示されている。図5において、帯状基部211,221は、雄部材212あるいは雌部材222に連続する第1層211A,221Aと、シート10に溶着される第2層211B,221Bとを積層した構成とされている。第1層211A,221Aは、雄部材212あるいは雌部材222と同様の素材で一体に成形されている。第2層211B,221Bは、メタロセンRPPを用いて成形され、第1層211A,221Aに対して張り合わされている。
このような本実施形態では、第2層211B,221BがメタロセンRPPであるため、シート10への溶着性を向上することができる。一方、第1層211A,221Aないし雄部材212あるいは雌部材222は前述した図1〜図4の実施形態と同様の素材であるため、咬合具として同様の性能を確保することができる。第1層211A,221Aないし雄部材212あるいは雌部材222は例えばポリエチレン等の別の素材としてもよい。
その他、本発明の具体的な構成および形状等は本発明の目的を達成できる範囲で他の構成等としてもよい。
以下、本発明に基づく具体的な実施例について説明する。
【実施例1、実施例2】
日本ポリケム株式会社製のプロピレン−エチレンランダム共重合体であるウィンテック(WFX4TA)のペレットを単軸押出成形機のホッパに投入して、少量のスリップ剤を添加し、溶融温度160℃で、引取装置で引き落としながら押出成形した後、冷却槽にて冷却して、咬合具20を構成する雄部材21、雌部材22(図2参照)を得た。
【実施例3】
実施例1、実施例2で使用したプロピレンランダム共重合体に改質剤として10wt%の低密度ポリエチレン((株)東ソー製、ペトロセン)を添加し、さらにスリップ剤を添加し、実施例1、実施例2と同様の手順・条件で雄部材21、雌部材22を押し出し成形した。
【実施例4】
多層の帯状基部を有する咬合具20(図5参照)の具体例として、雄部材21、雌部材22およびこれに連続する第1層211A,221Aは、前記実施例1とプロピレン−エチレンランダム共重合体に、改質剤として10wt%の低密度ポリエチレン(株式会社東ソー製、ペトロセン)を添加し、更に少量のスリップ剤を添加し、共押出しして成形した。一方、帯状基部のシール側の第2層211B,221Bは、前記実施例1と同じプロピレン−エチレンランダム共重合体を用い、テープ状に成形したうえ、前述した第1層に張り合わせた。
〔比較例1、比較例2〕
通常のランダムポリプロピレン(出光石油化学株式会社製 F−744NP)に改質剤として低密度ポリエチレン((株)東ソー製、ペトロセン)10wt%を配合した樹脂にスリップ剤を添加して、実施例1〜実施例3と同様の手順・条件で雄部材21、雌部材22を押し出し成形した。
〔比較例3〕
比較例1、比較例2で用いたランダムポリプロピレンにスリップ剤を添加した樹脂にスリップ剤を添加して、実施例1〜実施例3と同様の手順・条件で雄部材21、雌部材22を押し出し成形した。
〔比較例4〕
比較例1および比較例2で用いたランダムポリプロピレンおよび低密度ポリエチレンに、スリップ剤を添加することなく、実施例1〜実施例3と同様の手順・条件で雄部材21、雌部材22を押し出し成形した。
実施例1〜実施例4および比較例1〜比較例4の樹脂構成、ランダムポリプロピレンの分子量分布、融点、スリップ剤の添加量を表1に示す。

〔製袋方法〕
実施例1〜実施例4および比較例1〜比較例4で得られた咬合具20を、図4に示される咬合具シール部31に供給し、セパレータ312で連続的に雄部材21、雌部材22に分離させ、そのままシールバー311によってシート10の内面に帯状基部211、221を溶着し、咬合具20を包装袋1の開口部12の内部に溶着固定した。
セパレータ312への供給速度は50shot/min、シールバー311の設定温度は130℃であった。
最後に、サイドシール部32によってシート10の幅方向を溶着するとともに、溶着されたサイドシール部11の中央を切断して包装袋1を得た。
〔評価方法〕
(1)スリップ剤の析出
実施例1〜実施例4、比較例1〜比較例4に係る咬合具20を備えた包装袋1それぞれ連続製造し、セパレータ312上にスリップ剤が析出したと見られる白粉が生じているか否かを観察した。尚、セパレータ312上に咬合具20を引き通した長さは、各実施例、比較例とも4000mとして白粉の析出の有無を確認した。
評価は、白粉の発生が殆どないものを◎、わずかに発生したものを○、目立つ程度に発生したものを×として行った。その結果を表2に示す。
(2)セパレータでの走行性
製袋中における雄部材21、雌部材22同士のセパレータ312での走行性についての評価を行った。走行がスムースな場合を○、セパレータとの部分密着による走行不良が認められる場合を×として評価した。その結果を表2に示す。
(3)繰り返し開封時のつめ折れ
製袋後の咬合具20付きの包装袋1の開封操作の際、帯状基部211、221につめ折れが生じているか否かの評価を行った。10サンプルをそれぞれ10回開封した時のつめ折れ回数が2サンプル以下の場合を○、3サンプル以上の場合を×として評価した。その結果を表2に示す。
(4)つぶし性
製造した包装袋1の咬合具20のサイドシール部11との交差部分20Aにおける雄部材21、雌部材22のつぶれ状況を観察した。よくつぶれていて外観性が極めて良好なものを◎、良好なものを○、不良なものを×として評価した。その結果を表2に示す。不良なものについて超音波シール機を設置してつぶし性を改善する必要がある。

実施例1〜実施例4から判るように、いずれも分子量分布Mw/Mnが3.5以下であるため、通常より少ない500ppm〜1300ppmという少ないスリップ剤の添加量であっても、生産効率を落とすことなく生産することができた。
また、いずれの場合もセパレータ312上に生じた白粉も極微量であり、製袋後の包装袋1にこのような白粉が混入する可能性が極めて少ないことが確認された。
さらに、帯状基部211、221のつめ折れもなく、強度的にも充分な咬合具20であることが確認された。
そして、融点が135℃以下であるため、サイドシール部11との交差部分20Aで雄部材21、雌部材22がよくつぶれていて、外観性が良好であるのみならず、この端部における封止性も良好であり、内容物が漏れにくい包装袋1を製造できることが確認された。
これに対して、比較例1では、スリップ剤の添加量が多すぎたため、白粉の発生が多くなっている。
また、ポリエチレンが10wt%添加されているため、帯状基部211、221のつめ折れが多く、咬合具20の充分な強度が確保されているとは言い難い。
比較例2では比較例1よりもスリップ剤を少量としたため、白粉の発生は抑えられるのだが、雄部材21、雌部材22の表面がタック性を帯びてしまうため、セパレータ312での走行性が悪く、セパレータ312における分離スピードも遅くなり、製袋効率がダウンしてしまった。
さらに、比較例3では、スリップ剤を多量の添加に伴う白粉発生と、融点が高すぎるためにつぶし性に劣り、交差部分20Aのつぶしを長時間取る必要があり、製袋効率が悪くなってしまった。
比較例4ではスリップ剤を添加しなかったため、白粉の発生は認められなかったが、比較例2と同様に、セパレータ312での走行性が悪く、製袋効率がダウンしてしまった。
以上から本発明の有効性が明らかになった。
【産業上の利用可能性】
本発明は、互いに咬合する一対の雌雄部材を有する咬合具およびこの交合具を備えた包装袋として利用でき、例えば食品等の包装用袋として利用できる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに咬合する一対の雌雄部材を有する咬合具であって、
分子量分布Mw/Mnが3.5以下のランダムポリプロピレンを主成分とする組成物を成形してなることを特徴とする咬合具。
【請求項2】
請求項1に記載の咬合具において、
前記ランダムポリプロピレンは、ジエチルエーテル可溶分が1.0wt%以下であることを特徴とする咬合具。
【請求項3】
請求項1または請求項2のいずれかに記載の咬合具において、
前記ランダムポリプロピレンは、融点が130℃以下であることを特徴とする咬合具。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の咬合具において、
前記組成物には、スリップ剤が0ppmを超え、1500ppm以下添加されていることを特徴とする咬合具。
【請求項5】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の咬合具において、
前記組成物には、エチレン系共重合体からなる改質剤が全体の3wt%〜30wt%配合され、スリップ剤が100ppm〜1500ppm添加されていることを特徴とする咬合具。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の咬合具において、前記雌雄部材はそれぞれシートに溶着するための基部を備えたことを特徴とする咬合具。
【請求項7】
請求項6に記載の咬合具において、前記基部は少なくとも前記シートに溶着される側がメタロセン触媒を用いて製造されるランダムポリプロピレンを主成分とする組成物であることを特徴とする咬合具。
【請求項8】
請求項7に記載の咬合具において、前記基部は多層からなり、少なくとも前記シートに溶着される側の層がメタロセン触媒を用いて製造されるランダムポリプロピレンを主成分とする組成物の層であることを特徴とする咬合具。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれかに記載の咬合具を備えたことを特徴とする包装袋。

【国際公開番号】WO2004/024582
【国際公開日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【発行日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−535929(P2004−535929)
【国際出願番号】PCT/JP2003/011562
【国際出願日】平成15年9月10日(2003.9.10)
【出願人】(500163366)出光ユニテック株式会社 (128)
【Fターム(参考)】