説明

咽喉、食道及び胃の治療のための局所的に活性である成分を放出する接着トローチ

口腔の下流部の疾患を接着トローチで治療する方法、抗ウィルス薬を接着円盤から放出させて喉組織におけるウィルスの増殖を治療して減少させる方法、接着円盤からカンゾウエキスまたはコラーゲンを継続放出させて喉の痛みを治療する方法、及びコバラミンを局所投与することにより喉の痛みを治療する方法が開示されている。また、制酸剤、アルギン酸塩、サルチル酸ビスマス、グルコン酸亜鉛等の溶解性亜鉛、生物活性ビタミンB12(メチルコバラミン)、抗生物質または抗ウィルス薬を放出する接着トローチが開示されている。さらに、局所投与されるキシリトールによって口腔の下流組織の細菌性疾患を治療する方法も開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は堆積されて硬化された少なくとも2方向の寸法が少なくとも5mmである接着トローチに関する。このトローチは、喉(咽頭)、食道または胃の局所治療のために活性分子を含有し、唾液内でゆっくりと溶解する。
【背景技術】
【0002】
咽喉、食道および胃の病気の長い間、液体形態で飲まれるか、スラリー形態で噛まれて飲み込まれる局所的に活性である成分によって治療されてきた。それぞれの場合に、このような局所治療は短時間であった。なぜなら液体あるいはスラリーは流動性が高かったからである。このような薬剤は胃の内部にも長くは留まらず、すぐに十二指腸に送られる。局所薬剤を希釈する胃が食物を消化しているときを除いて、飲下されて胃に入った薬剤は胃の中に十分長くは滞在しない。この理由で、咽喉、食道または胃に局所的に作用する薬剤は効果を長続きさせるために頻繁に投与されなければならなかった。
【0003】
“消化器系潰瘍疾患”とは、ほとんどが、ヘリコバクター・ピロリ菌が原因である様々な原因で発症する上部胃腸管、食道、胃および十二指腸の潰瘍である。治療のための局所用薬剤には、(1)アルギン酸塩(ガビストン)、スクラルファート(スルクラートまたはカラファート)およびミソプロストール(サイトテック)等である胃の内粘膜を胃酸から保護する粘膜保護剤、(2)重炭酸ナトリウム(アルカ・ゼルツァー)、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウムその他(ツムスおよびローライズ)等である制酸剤、並びに(3)サルチル酸ビスマス(ペプト・ビスモルおよびカオペクターゼ)が含まれる。
【0004】
H2ブロッカ、プロトンポンプ阻害剤、およびメトロニダゾール(フラギル)、テトラシクリン(アクロマイシンまたはスマイシン)、アモキシシリン(アモキシルまたはトリモックス)、並びにクラリトロマイシン(ビアキシン)のごとき抗生物質のごとき消化器系潰瘍の治療のための他の薬剤は、ピルまたは液体の形態で経口投与されるが、それら薬剤の局所的な治療効果はさほど大きくはない。その代わりに、それら薬剤は、腸から血液内に送られ、続いて作用部位に送られることで胃の通過時間よりも長い間、効果を発揮する。しかし、それら薬剤の活性は身体組織のほんの一部でのみ必要とされるにも拘わらず、それら薬剤が身体組織全体を通じて高濃度で維持されることが要求される。
【0005】
胃食道逆流症または胃酸逆流等の食道に関する痛みは食道内に逆流する胃酸によって引き起こされる。治療せずに放置すれば食道潰瘍の原因となる可能性がある。これは消化器系潰瘍の範疇であり、歯の侵食にも繋がる。局所薬剤は消化器系潰瘍の前述した薬剤の一部であり、(1)胃酸から喉粘膜を保護する粘膜保護剤と、(2)制酸剤とが含まれる。長時間にわたって薬剤を移送し続けることができないため、薬剤は症状が局所的に顕在化する直前に投与される。典型的には、それらは直ちに効果が現れるように症状に対応して摂取され、その後に必要な回数だけ追加的に摂取される。なぜなら薬剤の局所通過時間が短いため薬効が短時間だからである。
【0006】
喉の痛み(咽頭炎)は、ストレプトコッカス・ピオゲネスや風邪または感冒ウィルスのごとき細菌により引き起こされ、あるいは空中に漂う刺激物または摂取された食品等内の刺激物によって引き起こされることがある。細菌によるものであれば、最善の治療法は全身系抗生物質の利用である。ウィルス性疾患の種類によっては全身系抗ウィルス剤が有効である。その他の場合に最善である治療法は、喉用ロゼンジや“咳ドロップ”のごとき局所的な薬剤の利用である。
【0007】
ピコルナウィルスとは、一般的に“風邪”ウィルスと称されるライノウィルスを含んで、喉およびその近辺表面組織に感染する多種ウィルスを含むウィルス族である。感冒ウィルスも喉と近辺に表面組織に感染する。一般的には、これらウィルスは全てがまず咽喉または付近の表面組織に定着し、そこで複製が生産され、続いて肺臓や血脈洞等である近接する粘膜組織に拡散すると考えられている。これら組織で増殖するウィルスに対して効果的に薬剤を移送する2つの方法が存在する。1つは局所投与であり、1つは血液介在投与である。局所投与の方法には、肺臓や気道内に局所投与する鼻スプレーや微粉末吸引が含まれる。
【0008】
口腔ケア研究者は、口内へのキシリトール分子の頻繁な投与により一定の細菌の繁殖を抑えることで、プラーク、虫歯および内耳疾患が減少することを確認している。これら細菌は、スクロース、グルコース、フルクトースおよび他の糖類のごとき炭水化物分子上で繁殖するが、それら細菌がキシリトール分子を消化すると増殖を停止し、人体組織に定着するのを停止する。消化器系潰瘍の約80%を引き起こすヘリコバクター・ピロリ菌および“咽喉炎”を引き起こすストレプトコッカス・ピオゲネスは両方ともキシリトールにより抑制される。
【0009】
本明細書ではミント、ロゼンジおよびロリポップ等はまとめて“トローチ”と呼称する。口内や喉内の疾患治療のために我々はこの何世紀もの間、局所用薬剤を含有した組成物を舐めてきた。中世期以来、このような組成物の名前はギリシャ語由来のラテン語から派生した“トローチ”であった。現在のトローチ形態は咳ドロップが一般的である。ドロップの命名は、熱せられた高粘性である糖ベースキャンディをシート上あるいは型内に垂下(ドロップ)し、そこで冷却させてトローチを製造したことに由来する。別な近代形態のトローチは“ロゼンジ”である。この名前は“ロゼンジ”を意味するダイヤ(トランプのダイヤ)形状に由来する。トローチは十分に大きく(少なくとも2方向寸法が約5mm以上)、摂取者は口内のどこの場所にそれが存在するかを感じることができ、舌で移動することができる。
【0010】
マーク・フリードマンの米国特許6139861は口内にトローチを接着する方法を開示する。この方法は、フリードマンが“粘膜接着侵食錠剤”と呼称する接着トローチの2形態を利用する。これら錠剤は、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリアクリル酸およびカルボポル934のごとき重合体を使用して形成される。2層錠剤の例は、2007年5月4日に出願された米国特許願11/800381で開示されている接着キシリトールトローチである。この出願物の内容を本願に援用する。別形態のトローチはフレキシブルな物品であり、一般的に“口内パッチ”と称される。例には、接着性であり溶解性である口内パッチ(2005年6月20日出願の米国特許願11/157054;内容を本願に援用)と、多層パッチ(2007年3月7日出願のPCT/US07/05947「非浸透性中央部を備えた多層医療用パッチ」;内容を本願に引用)等が含まれる。
【0011】
前述のフレキシブルな口内パッチは、物質で小丘塊を形成して硬化させ、中央部の最大厚が直径の1/4以下であり、縁部がテーパされている円盤を形成することで作製される。このように作製された口内パッチは接着錠剤よりも優れた口内感触を提供する。なぜなら、接着錠剤は粉末をプレス固化し、あるいはシートを型抜きして作製するからである。一方、口内パッチは十分に頑丈であり、溶解時にも形状崩壊せず、十分にフレキシブルであって、口内面と形状一致することができ、さらに崖状縁部ではなくて薄いテーパ形状縁部を有しており、口内接着性が増強されており(フレキシブルであり、縁部が薄いために歯や舌に引掛かり難い)、口内感触が優れている。喉や胃を治療するための薬剤成分を、時間をかけて放出するために好適である場所が口内の天井部である場合には特に感触が優れている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
1実施形態において、本発明は堆積されて硬化された少なくとも2方向の寸法が少なくとも5mmである接着トローチである。このトローチは、喉(咽頭)、食道または胃の局所治療のために活性分子を含有し、唾液内でゆっくりと溶解する。このトローチは、水分と接触すると膨張する親水性ゴム(ガム)を含有する。このゴムはトローチをゆっくりと溶解させる。水分子と結合して膨張することでゴム分子は活性分子への水の流れをブロックし、溶解速度を遅くする。親水性ゴム分子は、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロース等である任意のセルロースゴム、カルボポル、ポリビニル酸およびポリアクリル酸のごとき他の任意の合成ゴム、キサンタンゴム、コニャックゴム、タラゴム、ゼラチンゴム、ローカストビーンゴム、アカシアゴム、アルギン酸塩、カラギーナン、アガーおよびペクチン等の任意の親水性天然植物ゴムまたはゼラチン等の親水性タンパク質ゴムあるいは他のコラーゲンでよい。治療対象症状は、喉の炎症、消化器系潰瘍または胃酸逆流症あるいは喉およびその付近の組織でのウィルス増殖症状等である。1実施態様では、これら活性分子はキシリトール、カンゾウ根エキス、制酸剤、アルギン酸塩、コラーゲン、サルチル酸ビスマス、スクラルファート、ミソプロストール、グルコン酸亜鉛等の溶解性亜鉛、メトロニダゾール、テトラシクリン、アモキシシリン、またはクラリトロマイシン等の抗生物質およびザナマビル、インターフェロン・アルファまたはプレコナリル等の抗ウィルス剤である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
口内におけるこのトローチの溶解時間は平均で25分以上であり、好適には約1時間である。このトローチは水分と接触すると膨張する親水性ゴムを含むことができる。このゴムはトローチをゆっくり溶解させる。水分子と結合して膨張することでゴム分子は活性分子への水の流れを阻害し、溶解速度を遅くする。この親水性ゴムの分子は、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロース等である任意のセルロースゴム、およびカルボポル、ポリビニル酸およびポリアクリル酸のごとき他の親水性合成ゴム、キサンタンゴム、コニャックゴム、タラゴム、ゼランゴム、ローカストビーンゴム、アカシアゴム、アルギン酸塩、カラギーナンゴム、アガーおよびプクチンのごとき親水性天然植物ゴム、またはゼラチンのごとき親水性タンパク質ゴム、またはコラーゲンの他形態のものでよい。
【0014】
別な形態においては、この接着トローチは活性分子の粉末と1種以上のゴムとを錠剤プレス器によってプレス加工することで錠剤形状にされる。すなわち、組成物が粉末粒体物サイズの活性分子の塊体を形成し、親水性ゴムの分子をこの粒体物と混合し、あるいは粒体物をコーティングし、または自身が粉末粒体物サイズの粒体となるように凝集させる。口内でのトローチの溶解時間は平均で25分以上である。この接着性分子はアカシアゴムを含むことができる。あるいは、それらはゼラチン(コラーゲン)、アルギン酸塩、スターチ、ペクチン、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニル酸、ポリアクリル酸およびカルボポルから選択される。このトローチは2層で成ることができる。この場合、一方の層は非接着性で、他方の層は少なくとも30乾燥重量%の接着性分子を含むことができる。
【0015】
別な形態によれば、本発明は口内に接着された接着溶解円盤から咽頭および隣接組織に対して局所的にインターフェロン-アルファまたはプレコナリルのごとき抗ウィルス薬をゆっくりと投与する物品(器具)および方法を提供する。ザナマビル(商品名“リレンザ”)のごときカプセルでは効果を発揮しない薬剤の投与に特に適している。本発明の方法と物品によれば、薬剤は粘膜を介して、そこから離れるほど薄まった濃度で隣接組織に分散する。高濃度の薬剤をゆっくりと投与することで、ウィルスが接触して増殖を試みる全組織において適した濃度となる。薬剤は口内および咽頭では必要以上に高濃度である。また薬剤の一部は粘膜上皮細胞を経由して血液内に送られ、その後に対象組織に分配される。
【0016】
薬剤の濃度は肺臓内では相対的に低いため、本発明は対象者がウィルスに曝露される前に予防措置として利用されることが望ましい。ウィルスが増殖(複製)して肺臓に広がると、治療には吸入器による投与が望ましい。曝露前の予防のためには、接着円盤の形態が好適である。なぜなら、しばしば1日2回から5回となる毎日の使用においては吸入器よりも快適だからである。また、接着円盤は肺臓と気道の不調の合併症状を回避させる。
【0017】
別な形態では、本発明は局所的に投与されるキシリトールによる口腔の下流(咽頭、食道または胃)における細菌感染症の治療方法に関する。この場合のキシリトールはロリポップまたは“おしゃぶり”、接着トローチ、チューイングガム、高粘性または低粘性の液体、または口内で溶解する粒体等の形態であるトローチから投与できる。
【0018】
別形態では、本発明は、制酸剤、アルギン酸塩、サルチル酸ビスマス、グルコン酸亜鉛等の溶解性亜鉛、生物活性ビタミンB12(メチルコバラミン)、メトロニダゾール、テトラシクリン、アモキシシリンまたはクラリトロマイシン等の抗生物質、またはザナマビル、インターフェロン-アルファまたはプレコナリル等の抗ウィルス薬を放出する接着溶解性円盤を使用した口腔の下流(咽頭、食道または胃)の病状の治療法に関する。
【0019】
本発明の別形態によれば、本発明はゆっくりと接着トローチから放出される局所適用されるカンゾウエキス(グリシリザエキス)による喉の痛みを治療する方法である。このカンゾウエキスは、水、アルコールまたは液体の二酸化炭素のごとき溶媒による溶解を含んだ任意の方法により抽出することができる。
【0020】
別形態によれば、本発明は接着トローチから放出される局所投与用コラーゲンによる喉の痛みの治療方法に関する。
【0021】
別形態によれば、本発明は局所的に投与されるメチルコバラミンによる喉の痛みの治療方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は錠剤プレス装置で作製された2層接着トローチの断面図である。
【図2】図2はペーストの小丘を接着材料の層に堆積することにより製作された2層接着トローチの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明者は、米国特許7201930および米国特許願11/157054(両方ともその内容を本願に援用する)において教示されている方法によって作製されるコラーゲンとカンゾウエキスをゆっくりと放出する接着トローチが、喉が痛み始めたウィルス感染症の初期症状時に投与されると喉の痛みを緩和し、喉(咽頭)の痛みがさらに酷くなるのを効果的に防止することを発見した。喉を効果的にコーティングするのに適したコラーゲン量を投与するためにはトローチはゼラチンからの投与を含んで、少なくとも25%のコラーゲンでなければならない。
【0024】
制酸剤は、胃酸を中和するために4種の塩基塩であるナトリウム、マグネシウム、カルシウムおよびアルミニウムの水酸イオン、炭酸イオン、重炭酸イオンまたは類似イオンとの異なる組み合わせである。しかしながら制酸剤には副作用があり得る。マグネシウム塩は下痢を引き起こし、アルミニウム塩は便秘を引き起こす可能性がある。アルミニウム塩とマグネシウム塩はしばしば組み合わされ、これらの副作用のバランスが図られる。ツムス、ティトララックおよびアルカ-2等の炭酸カルシウム制酸剤はカルシウム供給源ともなり得る。それも便秘を引き起こす可能性がある。酢酸カルシウムまたは乳酸カルシウムは不都合な作用をバランスさせるように加えることができる。これらの成分はいずれもゆっくり放出する接着トローチの形成に利用できる。効果を十分に発揮するためにはトローチは少なくとも200mgの制酸化合物を含まなければならない。
【0025】
大量の制酸剤、抗菌剤または抗ウィルス剤を含有するトローチは、放出するこれら分子を、水分と接触すると膨張する性質を備えた相当量の親水性ゴム分子と混合することで製作できる。利用できる親水性ゴムの分子は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロース等であるセルロースゴム、カルボポル、ポリビニル酸およびポリアクリル酸等の他の合成親水性ゴム、キサンタンゴム、コニャックゴム、タラゴム、ゼランゴム、ローカストビーンゴム、アカシアゴム、アルギン酸塩、カラギーナン、アガーおよびペクチンのごとき親水性天然植物ゴム、またはゼラチン等の親水性タンパク質ゴム、等々でよい。キシリトールトローチにおいては、約3.4%の低粘性CMCが好適である。高粘性カルボキシメチルセルロース(TICゴムからのCMC15000)であれば2.4%で十分である。好適な実施形態は4%の低粘性カルボキシメチルセルロース(TICゴムからのCMC15)および96%キシリトールを有している。
【0026】
このトローチ組成物は放出対象の分子粉末と1種以上のゴムを錠剤プレス装置によって錠剤にプレス加工することで形成される。50から350ミクロンの粒体が好適である。この粒体は、圧縮バインダ(結合剤)として2%以下のカルボキシメチルセルロース(CMC)と共に顆粒化されるダニスコ・キシリタブ200のごときゴムを外側にコーティングすることで顆粒化できる。好適な溶解速度の遅延の達成にはこれでも十分なCMCではない。TICゴムからの少なくとも1.2%の粉末CMC15を加えるのが効果的である。圧縮バインダとしてどれだけの量のCMCがキシリトール粒体上に存在するか、および粒体上のCMCと追加された粉末CMCの両方の粘性によって、2.1%から3.5%の添加が好適である。1.2%のCMC15の追加によって、約4.5mm厚の0.7グラムキシリトールトローチは口内にて47分かけて溶解する。この溶解速度は25分の最低目標のほぼ2倍である。2.5%のCMC15の追加では溶解時間は90分となった。3.5%のCMC15の追加では溶解時間は120分であった。3.4%の低粘性CMCの0.5グラムキシリトールでは、唾液量にもよるが40分から120分であった。
【0027】
あるいは、ダニスコ・キシリタブ300のごときゴムでコーティングされていない純粋物質の粒体をゴム粉末と混合し、その後にプレスする。試験によって効果的であると判明したものは、3%のキサンタンとコニャックゴムおよび0.5%の高粘性CMC、10%のアルギン酸塩ゴム、30%のゼラチン、8%のアルギン酸塩と8%のゼラチン、11%のアカシアゴム、11%のペクチン、14%のグアゴム、および12%のローカストビーンゴムであった。トローチ組成物は図1および図2で示すような単純なトローチ形状に成型することができる。
【0028】
口内に保持されると接着トローチは溶解し、ゆっくりと活性分子を放出し、噛む動作やキャンディを舐めている外見を呈することなく活性分子を摂取させる。接着トローチは就寝時でも利用できる。1好適実施形態では、寸法および構造をトローチが25分以上かけて溶解するように設計することができる。
【0029】
好適実施形態においては、接着トローチは50から90乾燥重量%の固相活性分子を含む。これより少量であるとユーザにとって面倒である。なぜならユーザは頻繁にトローチを使用しなければならないからである。さらに多量の活性分子を含有させることは実現性がない。なぜなら、少なくとも10%は接着剤と、結合させて放出速度を遅くする結合剤とに必要だからである。残りの10から50%が、口内で接着させる接着分子と結合させる結合分子の割合である。
【0030】
接着分子はアカシアゴムを含有することができる。アカシアゴムは好適な接着場所である歯と歯肉に非常によく接着し、速く溶け過ぎることなく、不快な舌触りも残さない。接着性表面で、80から100%のアカシアゴムは良好な接着のために好適である。あるいは、接着分子はゼラチン、アルギン酸塩、スターチ、ペクチン、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニル酸、ポリアクリル酸、およびカルボポルでもよい。
【0031】
接着層は非常に薄くてもよい。約11.5mm径で4から5mm厚である好適サイズのトローチの試験では、約99%のアカシアゴムの好適厚は0.5ミリメートルであった。これは2層錠剤プレス法またはアカシアゴムのペーストを型に入れ、あるいは押し出し成型またはダイカットによって作製できる。
【0032】
このトローチは、合成物質、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニル酸、ポリアクリル酸およびカルボポルのごとき高接着分子を20から50%含有して単一で均質な組成物として作製できる。あるいは2層構造物として作製できる。この場合には、第1層は少なくとも75乾燥重量%の固相活性分子を含み、第2層は少なくとも30乾燥重量%の接着分子を含むことができる。必要とされるゴムの量を最少とし、活性分子の投与量を最少とするには、この2層トローチが好都合である。
【0033】
制酸トローチの1好適実施形態は、全重量の85から95%を約90から97%の活性分子の活性層に入れ、5から15重量%を30から99%の接着ゴムの接着層に入れることで2層錠剤プレス装置により作製される。12mm径で4から5mm厚の圧縮粉末2層丸形制酸トローチ(0.5mmの99%アカシアゴム層と3.4%CMCゴムを含む)は前述のように良好に接着し、約40から90分をかけて口内で溶解するが、これは25分以上の最短目標溶解時間の約2倍である。
【0034】
典型的なプレス装置で2層錠剤を作製するときには、第1粉末が下方パンチ上に置かれた型内に投入され、上方パンチがその粉末をプレス(圧縮)し、上方パンチの面形状をその粉末上面に残す。その後に第2層の粉末が追加され、上方パンチが再びプレスする。丸形2層経口接着錠剤を典型的な2層プレス装置で作製する方法は、プレス装置に、丸形錠剤面を成型する皿型下方パンチと、実質的に平坦である上方パンチとを提供することである。この場合、まず型内に口内接着性ではない顆粒状材料を投入し、続いてその顆粒材料を上方パンチでプレスし、続いて型に接着性顆粒材料を加え、上下両方のパンチ間でその顆粒材料をプレスし、口内接着面が実質的に平坦であり、他面は丘状である錠剤を製造する。
【0035】
この皿形状は球体の一部であってもよい。この皿形状は、皿形状となるように中央部が平坦な下方パンチ面と、その平坦中央部を包囲する隆起縁部とで作製することもできる。12mm径の接着トローチにおける好適な皿の深さは、全錠剤厚4から5mmに対して1.5から3mmであり、好適には2.1mmである。
【0036】
前述した組成の接着トローチは口腔の下流で細菌と戦うように利用できる。人の口内で唾液に曝されると、純粋キシリトールで成るトローチの場合よりもゆっくりとキシリトール分子を放出する結晶キシリトールを含んだ溶解トローチが使用者に供給される。使用者はトローチを口内に配置し、トローチ内のキシリトールが溶解するまで口内で保持するように指示される。1実施形態においては、口内でのトローチの溶解時間は平均で25分以上である。一般的に口内でキシリトールが放出される時間が長いほどよい。毎日の終わりと、毎食後にトローチを、少なくとも4日間、一日2、3時間、前述のようにトローチを利用することが好適であると考えられる。
【0037】
戦う相手である菌類による症状には細菌性咽頭炎、細菌性食道炎および細菌性潰瘍がある。ユーザは接着トローチを一日の任意の時間(昼夜)に口の後ろの歯または歯茎に貼り付ける。好適には、毎食後であり、一日少なくとも4回である。接着トローチを歯の舌側に接着させると、頬側の場合よりも溶解速度が速い。頬の内粘膜に貼り付けることもできる。
【0038】
ザナマビルは本発明の物体または器具および方法による送達に適した物質である。人体によって代謝されず、変質せずに尿と共に排泄される。現在、ザナマビルは乾燥粉末吸引器によって局所的に送達され(吸引投与量の約4から17%が全身吸収される)、主として予防剤としてではなく治療剤として利用される。送達ビヒクルによるもの以外の副作用は稀である。カプセル等で胃に送達されると、2%が血中に吸収される。口内にゆっくりと放出されると、口や喉の粘膜を介した吸収率が高くなり、肺臓を介した4から17%の吸収率に接近する。
【0039】
1好適実施形態では、本発明治療具(接着トローチ)は唾液の少ない人の場合の60分から120分、唾液の多い人の場合の30分程度にまで調製できる。患者は治療具が薬剤を放出している間に食事や飲物を摂取しないように指示される。
【0040】
本発明の治療具および方法によるザナマビルの推奨される予防的使用方法は、感染を疑われる人と同じ部屋に入る約30分から60分前に口内に治療具(接着性円盤)を口内に1日2回まで接着させることである。大抵の人はこの製品を流行性感冒シーズンや、孫を訪問する前に、あるいは人込みに入る前に毎朝、週に5日使用する。また、家族の誰かが流行性感冒症状を伴う病気に罹患したとき、1日2回、他の家族によって使用される。また、朝は別々に過ごす家族であれば、夕方集まる直前に使用する。病気の人は治療のためにこの治療グを1日2、3回使用する。
【0041】
抗ウィルストローチはザナマビルあるいは抗ピコルナウィルス薬および1種以上のゴムを錠剤形態にプレス装置でプレスして形成できる。この場合、20から200ミクロンのザナマビル粒体が好適サイズである。この粒体は圧縮バインダとして2から10%のカルボキシメチルセルロース(CMC)により外側をゴムコーティングして顆粒化できる。
【0042】
あるいは、純粋ザナマビルの粒体または抗ピコルナウィルス薬をゴム粉末と混合してプレスすることができる。実験によって、3%のキサンタンとコニャックゴムおよび0.5%の高粘性CMC、10%のアルギン酸塩ゴム、30%のゼラチン、8%のアルギン酸塩と8%のゼラチン、11%のアカシアゴム、11%のペクチン、14%のグアゴム、および12%のローカストビーンゴムが有効であることが確認された。
【0043】
この組成物は図1および図2で示すような単純なトローチ形状や、ロリポップ形態の棒を備えたトローチ形状や、おしゃぶり形態のトローチ形状とすることができる。このようなロリポップ形態トローチやおしゃぶり形態トローチは6歳以下の子供に対してトローチ吸引リスクを回避すべく使用できる。ロリポップトローチの適した製造方法は、緩やかに流動するペースト状とするように材料を熱しながら捏ね、そのペースト物体を棒上に型で成型し、冷却するロリポップの通常製造方法でよい。
【0044】
接着トローチのこの実施形態は人の口内に保持されると溶解し、ザナマビルまたは抗ピコルナウィルス剤をゆっくりと放出し、噛み動作やドロップを口内に含んでいる外観を与えず抗ウィルス剤を投与する。就寝時でも使用できる。1好適実施形態では、25分以上かけて溶解するように寸法と構造を設計することができる。
【0045】
本発明のトローチの好適形態は2層錠剤プレス装置で作製され、全重量の60から80%をザナマビル層とし、10から20mgのザナマビルと賦形剤および20から40%を30から99%の接着ゴムによる接着層とする。前述のように、プレスされた粉末2層丸形ザナマビールトローチ(8mm径、2から4mm厚)は、1層内に0.5mm厚である99%のアカシアゴムと、ザナマビル内のCMCゴムを含んでおり、接着性が良好であり、約50から120分で溶解する。
【0046】
本発明の特定の実施形態を解説したが、本発明はそれら実施形態によって限定されず、「請求の範囲」でのみ限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔の下流の上皮疾患を局所治療する方法であって、活性分子と口内接着剤とを含んだ材料の小丘を硬化して作製され、少なくとも2方向でそれぞれ少なくとも5mmの寸法であり、縁部がテーパ状となっている溶解性トローチを投与するステップと、該トローチの使用者に対して、該トローチを口内に接着させ、溶解するまで保持するように使用法を教授するステップと、を含んで成ることを特徴とする方法。
【請求項2】
口内で唾液に曝露されたとき、日中の典型的な唾液量におけるトローチの溶解時間は25分以上であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
上皮疾患は、喉の痛み、ウィルス感染、消化器潰瘍及び/又は胃酸逆流症であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
活性分子は、カンゾウエキス、コラーゲン、制酸剤、アルギン酸塩、サルチル酸ビスマス、溶解性亜鉛、グルコン酸亜鉛、コバラミン、メチルコバラミン、抗生物質、抗ピコルナウィルス薬及び/又はザナマビルであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
トローチは、混合物を作製するために成分を水と混合し、混合物の小丘を形成し、該小丘を乾燥させてテーパ上の縁部を備えた円盤を作製し、該円盤の最大厚を該円盤の直径の1/4以下とするように作製されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
口内に接着された少なくとも2方向で少なくとも5mmである円盤からカンゾウエキスを継続放出することにより喉の痛みを治療する方法。
【請求項7】
口内で唾液に曝露されたとき、日中の典型的な唾液量における円盤の溶解時間は25分以上であることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
円盤は、混合物を作製するためにカンゾウエキスを水と混合し、混合物の小丘を形成し、該小丘を乾燥させてテーパ上の縁部を備えた円盤を作製し、該円盤の最大厚を該円盤の直径の1/4以下とするように作製されることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項9】
口内に接着され、少なくとも重量25%のコラーゲンを含有し、少なくとも2方向で少なくとも5mmである接着性円盤からコラーゲンを継続放出することにより喉の痛みを治療する方法。
【請求項10】
口内で唾液に曝露されたとき、日中の典型的な唾液量における円盤の溶解時間は25分以上であることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項11】
円盤は、混合物を作製するためにコラーゲンを水と混合し、混合物の小丘を形成し、該小丘を乾燥させてテーパ上の縁部を備えた円盤を作製し、該円盤の最大厚を該円盤の直径の1/4以下とするように作製されることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項12】
口内に接着された少なくとも2方向で少なくとも5mmである接着円盤から放出されるメチルコバラミンを局所投与することにより喉の痛みを治療する方法。
【請求項13】
口内で唾液に曝露されたとき、日中の典型的な唾液量における円盤の溶解時間は25分以上であることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項14】
コバラミンはメチルコバラミンであることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項15】
少なくとも2方向で少なくとも5mmであり、少なくとも200mgの制酸剤を含有する接着トローチであって、唾液内で時間をかけて継続溶解することを特徴とするトローチ。
【請求項16】
口内で唾液に曝露されたとき、日中の典型的な唾液量におけるトローチの溶解時間は25分以上であることを特徴とする請求項15記載のトローチ。
【請求項17】
制酸剤は、重炭酸ナトリウム、重炭酸カルシウム、重炭酸マグネシウム、重炭酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸ナトリウム、トリケイ酸マグネシウム、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム及び/又は水酸化アルミニウムを含んでいることを特徴とする請求項15記載のトローチ。
【請求項18】
接着トローチであって、少なくとも2方向で少なくとも5mmであり、少なくとも200mgのアルギン酸塩、サルチル酸ビスマス、スクラルファート及び/又はミソプロストルの分子を唾液内で時間をかけて継続放出することを特徴とするトローチ。
【請求項19】
口内で唾液に曝露されたとき、日中の典型的な唾液量におけるトローチの溶解時間は25分以上であることを特徴とする請求項18記載のトローチ。
【請求項20】
アルギン酸マグネシウム及び/又はアルギン酸ナトリウムを含有することを特徴とする請求項18記載のトローチ。
【請求項21】
接着トローチであって、少なくとも2方向で少なくとも5mmであり、少なくとも20mgの溶解性亜鉛化合物を唾液内で時間をかけて継続溶解することを特徴とするトローチ。
【請求項22】
口内で唾液に曝露されたとき、日中の典型的な唾液量におけるトローチの溶解時間は25分以上であることを特徴とする請求項21記載のトローチ。
【請求項23】
溶解性亜鉛化合物はグルコン酸亜鉛を含むことを特徴とする請求項21記載のトローチ。
【請求項24】
喉におけるウィルスの増殖を阻害する方法であって、少なくとも1種の局所的に有効である抗ウィルス活性成分を含んだトローチを溶解させるステップと、該トローチの使用者に対して、該トローチを口内に配置し、溶解するまで保持するように使用法を教授するステップと、を含んで成ることを特徴とする方法。
【請求項25】
口内で唾液に曝露されたとき、日中の典型的な唾液量におけるトローチの溶解時間は25分以上であることを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項26】
活性成分はザナマビルであることを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項27】
活性成分は抗ピコルナウイルス薬あることを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項28】
抗ウィルス薬を含有する接着トローチであって、少なくとも2方向で少なくとも5mmであり、唾液内で時間をかけて継続溶解することを特徴とするトローチ。
【請求項29】
口内で唾液に曝露されたとき、日中の典型的な唾液量における溶解時間は25分以上であることを特徴とする請求項28記載のトローチ。
【請求項30】
抗ウィルス薬はザナマビルであることを特徴とする請求項28記載のトローチ。
【請求項31】
抗ウィルス薬は抗ピコルナウイルス薬あることを特徴とする請求項28記載のトローチ。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−539096(P2010−539096A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524245(P2010−524245)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/075885
【国際公開番号】WO2009/036084
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(505333997)オラヘルス コーポレーション (4)
【Fターム(参考)】