説明

哺乳瓶ミルク冷却器

【課題】 常温の水道水などの冷却媒体を用いて、効率よく哺乳瓶内のミルクを冷却することができる哺乳瓶ミルク冷却器を提供する。
【解決手段】 哺乳瓶ミルク冷却器1を、哺乳瓶2の瓶本体4および液状の冷却媒体を収容可能な収容空間33が形成される容器本体20と、哺乳瓶2の飲み口部5を収容可能な収容空間44が形成される蓋体と、可撓性および弾発性を有し、前記哺乳瓶2を保持する環状の保持体であって、蓋体の蓋体開口部26に設けられる外周部60と、哺乳瓶2の凹溝3に嵌り込む内周部61とが形成される保持体22とによって構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳瓶内に収容される高温のミルクを適切な温度に冷却するために用いられる哺乳瓶ミルク冷却器に関する。
【背景技術】
【0002】
WHOおよびFAO作成の「乳児用調整粉乳の安全な調乳、保存及び取扱いに関するガイドライン」によれば、乳児に与える調乳(以下、「ミルク」ともいう。)に用いる飲料水は、70℃以上に沸かして、使用しなければならないとされる。このため、乳児に調乳を与えるためには、哺乳瓶に収容された70℃程度の調乳を40℃程度にまで冷却する必要がある。
【0003】
哺乳瓶内の高温のミルクを冷やすための第1の従来技術として、特許文献1記載の哺乳ビン急冷用容器が挙げられる。この従来技術では、蓋体を有し、外壁と内壁との間に断熱材が充填される保温容器に、筒状の氷に嵌まり込んだ状態の哺乳瓶を収容し、哺乳瓶内のミルクを冷却するようにしている。第1の従来技術では、哺乳瓶は、保温容器内での移動が制限された状態で保持され、冷却される。
【0004】
また第2の従来技術として、特許文献2記載の哺乳びん冷却容器が挙げられる。この従来技術では、冷却容器に、哺乳瓶が収容され、排水口を有する冷却室と、常温の水道水が供給され、冷却室と連通する給水室とを形成し、前記給水室に常温の水道水を継続的に供給し、排水口から哺乳瓶との接触による熱交換によって温度が上昇した水を排出して、哺乳瓶内のミルクを冷却するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭54−93479号公報
【特許文献2】実開昭63−159166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
第1の従来技術では、哺乳瓶内のミルクを冷却するのに際して円筒状の氷が必要となるため、授乳をしようとする度に氷を準備しなければならず、使い勝手が悪いという問題がある。
【0007】
また第2の従来技術では、継続的に水を供給する必要があり、哺乳瓶内のミルクを冷却するために、大量の水を準備しなければならないので、冷却効率が悪いという問題がある。またこの従来技術では、継続的に水を供給する必要があるので、哺乳びん冷却容器は水周り近傍でしか使用ができず、携帯性が悪いという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、常温の水道水などの冷却媒体を用いて、効率よく哺乳瓶内のミルクを冷却することができる哺乳瓶ミルク冷却器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本件発明者らは試行錯誤を積み重ね、研究開発を行った。その結果、哺乳瓶ミルク冷却器に、該哺乳瓶ミルク冷却器内で哺乳瓶を揺動可能に保持する保持手段を設け、哺乳瓶冷却容器を揺動することにより哺乳瓶を揺動させ、これによって哺乳瓶内のミルクを攪拌するとともに、哺乳瓶の揺動により冷媒を攪拌する構成を見出した。
【0010】
本発明は、ミルクを収容する瓶本体と、可撓性を有する飲み口部とを含み、前記瓶本体には、前記飲み口部が着脱可能に装着される飲み口部用開口部が形成され、前記飲み口部および前記瓶本体には、前記飲み口部用開口部に前記飲み口部が装着された状態で、前記飲み口部と前記瓶本体との間に環状の凹溝を形成する凹溝形成部がそれぞれ設けられる哺乳瓶を収容して冷却する哺乳瓶ミルク冷却器であって、
容器本体であって、前記瓶本体が通過可能な容器本体開口部を有し、前記瓶本体および液状の冷却媒体を収容可能な瓶本体収容空間が形成される容器本体と、
蓋体であって、前記容器本体開口部に着脱可能に装着される蓋体開口部を有し、前記飲み口部を収容可能な飲み口部収容空間が形成される蓋体と、
可撓性および弾発性を有し、前記哺乳瓶を保持する環状の保持体であって、前記蓋体開口部に設けられる外周部と、哺乳瓶の前記凹溝に嵌り込む内周部とが形成される保持体とを含むことを特徴とする哺乳瓶ミルク冷却器である。
【0011】
また本発明は、前記蓋体は、蓋本体と、蓋本体に着脱可能に装着される外挿リングとを有し、
蓋本体と外挿リングとによって前記保持体の外周部が挟持されることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記容器本体には、容器本体開口部に近接して、瓶本体収容空間から外部への流体の通過を許容し、かつ、外部から瓶本体収容空間への流体の通過を遮断する逆止弁が設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、哺乳瓶は、飲み口部と瓶本体との間の凹溝に保持体が嵌り込むことによって、瓶本体収容空間内で保持される。保持体は、可撓性および弾発性を有するので、哺乳瓶は、瓶本体収容空間内で揺動可能に保持される。このような構成を採用することによって、哺乳瓶ミルク冷却器を揺動することにより、哺乳瓶を瓶本体収容空間内で揺動させることができる。
【0014】
これによって、哺乳瓶内のミルクを攪拌することができるとともに、哺乳瓶を揺動させて瓶本体収容空間内の冷却媒体を攪拌することができる。したがって、哺乳瓶内のミルクのうち、冷却媒体の熱回収によって温度が低下した領域である冷却媒体近傍のミルクを攪拌によって分散することができるとともに、冷却媒体のうち、哺乳瓶からの熱回収によって温度が上昇した領域の冷却媒体を攪拌によって分散することができるので、常に温度の低いミルクを冷却媒体近傍に滞留させないとともに、哺乳瓶に、常に温度の低い冷却媒体を接触させて哺乳瓶をより温度の低い状態とすることができ、哺乳瓶内のミルクを効率よく冷却することができる。
【0015】
また本発明によれば、蓋体は、蓋本体と、蓋本体に着脱可能に装着される外挿リングとを有する。保持体は、外周部が蓋本体と外挿リングとによって挟持される。このような構成を採用することによって、哺乳瓶ミルク冷却器は、蓋本体および外挿リングを取り外して容易に保持体を交換することができる。また保持体に、蓋本体および外挿リングに比べて軟質な材料を用いても、保持体を容易に製造することができる。
【0016】
また本発明によれば、容器本体には、容器本体開口部に近接して、瓶本体収容空間から外部への流体の通過を許容し、かつ、外部から瓶本体収容空間への流体の通過を遮断する逆止弁が設けられるので、瓶本体収容空間内の流体を外部へ放出することができる。これによって、瓶本体収容空間内の冷却媒体の量が予め定める基準量を超えることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係る哺乳瓶ミルク冷却器1を示す断面図である。
【図2】哺乳瓶ミルク冷却器1の正面図である。
【図3】哺乳瓶ミルク冷却器1の平面図である。
【図4】哺乳瓶ミルク冷却器1の分解図である。
【図5】保持体22を示す平面図である。
【図6】容器本体20に蓋体21および保持体22が装着された状態を示す部分拡大断面図である。
【図7】逆止弁39の構造を示す部分断面図である。
【図8】哺乳瓶ミルク冷却器1の使用状態を示す図である。
【図9】実施例、比較例1および比較例2の冷却時間を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の実施の形態に係る哺乳瓶ミルク冷却器1を示す断面図であり、図2は、哺乳瓶ミルク冷却器1の正面図であり、図3は、哺乳瓶ミルク冷却器1の平面図であり、図4は、哺乳瓶ミルク冷却器1の分解図である。
【0019】
哺乳瓶ミルク冷却器1が使用可能な哺乳瓶2は、ミルクを収容する有底筒状の瓶本体4と、可撓性を有する飲み口部5とを含んで構成される。瓶本体4には、前記飲み口部5が着脱可能に装着される筒状の飲み口部用開口部6が形成される。瓶本体4には、飲み口部用開口部6近傍に形成される肩部7と、飲み口部用開口部6を形成する環状の側壁とによって、後述する凹溝3を形成する哺乳瓶側の凹溝形成部8が形成される。
【0020】
飲み口部5は、可撓性を有する乳首10と、乳首10が取付けられるキャップ部11とを含む。キャップ部11は、筒状に形成され、飲み口部用開口部6に刻設される外ねじと螺合する内ねじが刻設される嵌合部分12と、乳首10が取付けられる取付部分13とを有する。乳首10は、取付部分13に嵌り込み、キャップ部11に取付けられる。飲み口部5は、キャップ部11の嵌合部分12を飲み口部用開口部6に螺合させることによって、瓶本体4に装着される。瓶本体4に飲み口部5が装着された状態で、キャップ部11の瓶本体4に臨む外周部は、後述する凹溝3を形成する飲み口部5側の凹溝形成部14を形成する。
【0021】
瓶本体4に飲み口部5を装着すると、哺乳瓶2には、哺乳瓶側の凹溝形成部8と、飲み口部側の凹溝形成部14とによって、瓶本体4と飲み口部5との間に環状の凹溝3が形成される。瓶本体4の内部空間には、70℃程度の液体の調乳が収容される。
【0022】
哺乳瓶ミルク冷却器1は、有底筒状に形成される容器本体20と、容器本体20に着脱可能に装着される蓋体21と、可撓性および弾発性を有し、哺乳瓶2を保持する環状の保持体22とを含んで構成される。
【0023】
容器本体20は、瓶本体4が通過可能な容器本体開口部30と、容器本体開口部30に連なる側壁部分31と、側壁部分31に連なる底部分32と有する。容器本体20には、容器本体開口部30に連通して、瓶本体4および液状の冷却媒体を収容可能な瓶本体収容空間である収容空間33が形成される。容器本体20の側壁部分31のうち、底部分32と側壁部分31とが交差する湾曲部分34は、外方に凸に湾曲して形成される。本実施形態において、湾曲部分34は、その曲率半径が30〜60mm、好ましくは45mmとなるように形成される。
【0024】
容器本体開口部30は、側壁部分31に連なる第1開口部35と、第1開口部35に連なる第2開口部36とを有する。第1開口部35は、側壁部分31の外径寸法よりも小さい外径寸法に形成される。第1開口部35の外表面部には、外ねじ37が刻設される。第2開口部36は、第1開口部35から屈曲して、立上がって設けられ、その外径寸法は、第1開口部35よりも小さい外径寸法に形成される。第2開口部36の外表面部には、係止片38が刻設される。容器本体20には、容器本体開口部30に近接して、収容空間33から外部への流体の通過を許容し、かつ、外部から収容空間33への流体の通過を遮断する逆止弁39が設けられる。
【0025】
本実施形態において、容器本体20の外径寸法は、冷蔵庫のドアポケットに収容可能な大きさである99mmに設定され、第1開口部35の直径は、80mmに設定され、第2開口部36の直径は、76mmに設定される。したがって、収容空間33内に冷却媒体である水を収容した状態で、哺乳瓶ミルク冷却器1を冷蔵庫で冷やすことができる。これによって、水道水よりも低い温度の水を冷媒として用いることができる。
【0026】
蓋体21は、大略有底筒状の蓋本体23と、蓋本体23に着脱可能に装着される筒状の外挿リング24と、容器本体開口部30に着脱可能に装着される筒状の内挿リング25とを含んで構成される。
【0027】
蓋本体23は、容器本体20に装着された状態で、上壁となる上壁部分40と、上壁部分40に連なって形成される筒状の側壁部分41と、上壁部分40と側壁部分41との連結部分であり、側壁部分41よりも外方に隆起する当接部分42とを有する。上壁部分40は、外方に向かって凸に湾曲して形成され、その外表面部が球面の一部を成すように形成される。上壁部分40の外表面部を球面の一部を成すように形成することによって、蓋本体23は、掌にフィットさせた状態で安定的に把持することができる形状となる。これによって、使用者は容易に哺乳瓶ミルク冷却器1を揺動することができるので、使用者の手から哺乳瓶ミルク冷却器1が脱落してしまうという不都合を防止することができる。
【0028】
側壁部分41の当接部分42近傍には、外ねじ43が刻設される。このように構成される蓋本体23には、上壁部分40と側壁部分41とによって規定される、哺乳瓶2の飲み口部5を収容する飲み口部収容空間である収容空間44が形成される。
【0029】
外挿リング24は、本体部分45と、支持部48とを有する。外挿リング24は、蓋本体23の前記側壁部分41の外径寸法よりも大きい内径寸法を有する。本体部分45の内周部のには、蓋本体23の外ねじ43と螺合する内ねじ46が刻設されている。本体部分45の内周部のうち、長手方向一端部には、容器本体開口部30の外表面部に刻設される外ねじ37に螺合する内ねじ47が刻設される。
【0030】
本体部分45の内周部のうち、前記内ねじ46と前記内ねじ47との間には、半径方向内方に突出する支持部48が設けられる。支持部48は、蓋本体23の内周面に沿って形成される環状の基部48aと、基部48aから突出して形成される複数(本実施形態では4つ)の係合片部48bとを有する。基部48aは、半径方向内方に突出して形成され、後述する保持体22の外周部60を支持する。係合片部48bは、基部48aに連なって形成され、後述する保持体22の嵌合孔62に係合する。
【0031】
内挿リング25は、断面略L字状の本体部分50と、本体部分50の一端部に連なる係合部分51とを有する。係合部分51は、前記係合片38と係合することによって内挿リング25が容器本体20から離脱することを防止する。本体部分50は、前記第2開口部36の先端部と当接する。また本体部分50は、前記支持部48の裏面に当接し、外挿リング24を支持する。
【0032】
図5は、保持体22の平面図である。保持体22は、たとえば、天然ゴム、イソブレン、ウレタンゴムおよびシリコーンゴムなどの可撓性および弾発性を有する材料から成り、本実施形態では、シリコーンゴムによって実現される。保持体22には、蓋本体23に、外挿リング24および内挿リング25が装着された状態で、蓋体21の蓋体開口部26の一部を構成する支持部48に取り付けられる外周部60と、哺乳瓶2の前記凹溝3に嵌り込む内周部61とが形成される。外周部60の支持部48に対応する位置には、嵌合孔62がそれぞれ形成される。本実施形態では、4つの嵌合孔62が形成される。内周部61の直径L1は、適宜設定することができる。また保持体22の外径寸法は、外挿リング24の内周部の寸法に合わせて適宜設定することができる。本実施形態では、保持体22の外径寸法は、83mmに設定され、哺乳瓶2の大きさに合わせて、内周部61の直径L1は、35mm〜49mmに設定され、保持体22の厚み寸法は、1mm〜1.5mmに設定される。
【0033】
図6は、容器本体20に蓋体21および保持体22が装着された状態を示す部分拡大断面図である。図4も参照して、外挿リング24は、蓋本体23の側壁部分41を外挿リング24内に挿通させ、蓋本体23の外ねじ43と、外挿リング24の内ねじ46とを螺合させることによって蓋本体23に装着される。保持体22は、嵌合孔62に係合片42bが挿入された状態で外挿リング24内に設けられる。蓋本体23に外挿リング24を装着すると、蓋本体23の遊端部は、保持体22の外周部60に当接し、保持体22の外周部60は、蓋本体23の遊端部と外挿リング24の基部48aとによって挟持される。
【0034】
容器本体20の容器本体開口部30には、内挿リング25が装着される。内挿リング25は、第2開口部36の係合片38に、係合部分51を係合させることによって、第2開口部36に装着される。このとき、内挿リング25の本体部分50は、第2開口部36の先端部に嵌り込む。容器本体開口部30に内挿リング25が装着された状態の容器本体20の外ねじ37に、蓋本体23に装着された状態の外挿リング24の内ねじ47を螺合させることによって、容器本体20に蓋体21が装着される。このとき、内挿リング25の本体部分50の上面と、支持部48の基部48aの裏面とが当接する。これによって、シールを達成し、哺乳瓶ミルク冷却器1の水密性を高くすることができる。また外挿リング24は、内挿リング25を外囲して、容器本体20に装着されるので、第1開口部35と外挿リング24との螺合部分においても水密性を高くすることができる。
【0035】
図7は、逆止弁39の構造を示す部分断面図である。逆止弁39は、容器本体開口部30の近傍に形成される取付孔28に取付けられて設けられる。逆止弁39は、弁本体70と、複数の分割片72とを含む。弁本体70は、大略筒状に形成され、取付孔28に嵌り込み抜け止めされる。弁本体70は、収容空間33に臨んで開口する内方側開口部73と、外方に臨んで開口する外方側開口部74とを有する。分割片72は、弁本体70の前記内方側開口部73と、外方側開口部74との間の中間部に形成される。これによって、外方から収容空間33内に粉塵などが侵入することが防がれる。
【0036】
分割片72は、収容空間33から外方への流体の移動を許容しつつ、外方から収容空間33への流体の浸入を防止する。これによって、哺乳瓶ミルク冷却器1は、収容空間33内の流体を外部へ排出することができ、収容空間33内の冷却媒体の量が予め定める基準量を超えて過剰に収容空間33内に収容されてしまうことを防ぐことができる。
【0037】
哺乳瓶ミルク冷却器1の使い方について説明する。先ず、外挿リング24内に保持体22を取り付け、蓋本体23と外挿リング24とを螺合して、蓋本体23に外挿リング24を装着し、保持体22を挟持する。この状態で、外挿リング24の遊端部側から高温のミルクを収容した哺乳瓶2を案内し、乳首10およびキャップ部11を保持体22の内周部61から挿通せしめ、保持体22を凹溝3に位置させる。次に、容器本体20の収容空間33に、冷媒である水(本実施形態では500ccの水)を収容し、第2開口部36に、内挿リング25を装着する。そして、容器本体開口部30から、哺乳瓶2の瓶本体4を挿通し、外挿リング24を第1開口部35に装着する。このようにして、哺乳瓶2は、哺乳瓶ミルク冷却器1内に収容される。
【0038】
図8は、哺乳瓶ミルク冷却器1の使用状態を示す図である。哺乳瓶ミルク冷却器1の使用者は、略水平な表面部を有する机、床などに哺乳瓶ミルク冷却器1を載置し、蓋体21の上壁部分40に掌を乗せて、哺乳瓶ミルク冷却器1を揺動させる。図8に示すように、保持体22は、可撓性および弾発性を有するので、哺乳瓶ミルク冷却器1が揺動されると、哺乳瓶2は、哺乳瓶ミルク冷却器1の揺動により、収容空間33内で揺動する。このようにして、哺乳瓶2内のミルクは、哺乳瓶ミルク冷却器1によって冷却される。
【0039】
本実施形態によれば、哺乳瓶2は、飲み口部5と瓶本体4との間の凹溝3に保持体22が嵌り込むことによって、瓶本体収容空間内である収容空間33内で保持される。保持体22は、可撓性および弾発性を有するので、哺乳瓶2は、収容空間33内で揺動可能に保持される。このような構成を採用することによって、哺乳瓶ミルク冷却器1を揺動することにより、哺乳瓶2を収容空間33内で揺動させることができる。
【0040】
これによって、哺乳瓶2内のミルクを攪拌することができるとともに、哺乳瓶2を揺動させて収容空間33内の冷却媒体である水を攪拌することができる。したがって、哺乳瓶2内のミルクのうち、冷却媒体の熱回収によって温度が低下した領域である冷却媒体近傍のミルクを攪拌によって分散することができるとともに、冷却媒体のうち、哺乳瓶2からの熱回収によって温度が上昇した哺乳瓶2の周囲の領域の冷却媒体を攪拌によって分散することができるので、常に温度の低いミルクを冷却媒体近傍に滞留させないとともに、哺乳瓶に、常に温度の低い冷却媒体を接触させることができ、哺乳瓶2内のミルクを効率よく冷却することができる。
【0041】
また本実施形態によれば、蓋体21は、蓋本体23と、蓋本体23に着脱可能に装着される外挿リング24と、容器本体開口部30に着脱可能に装着される内挿リング25とを有する。保持体22は、外周部60が蓋本体23と外挿リング24とによって挟持される。このような構成を採用することによって、哺乳瓶ミルク冷却器1は、蓋本体23および外挿リング24を取り外して容易に保持体22を交換することができる。また保持体22に、蓋本体23および外挿リング24に比べて軟質な材料を用いても、保持体22を容易に製造することができる。また外挿リング24と内挿リング25とによって、水密性の高い哺乳瓶ミルク冷却器1を実現することができる。
【0042】
また本実施形態によれば、容器本体20には、容器本体開口部30に近接して、収容空間33から外部への流体の通過を許容し、かつ、外部から収容空間33への流体の通過を遮断する逆止弁39が設けられるので、収容空間33内の流体を外部へ放出することができる。これによって、収容空間33内の冷却媒体の量が予め定める基準量を超えることを防ぐことができ、哺乳瓶2の乳首10に冷却媒体が触れることを防止することができる。
【0043】
また本実施形態によれば、上壁部分40は、外方に凸となる、球面を成すように形成され、容器本体20には、湾曲部分34が形成される。このような構成を採用することによって、掌を上壁部分40に乗せ、哺乳瓶ミルク冷却器1を床面に向けて軽く押圧し、片手で哺乳瓶ミルク冷却器1を揺動することができる。したがって、乳児をあやしながら、哺乳瓶2内のミルクを冷却することができる。
【0044】
また本発明の他の実施形態として、容器本体20に袋状部材80を設けてもよい。この場合、袋状部材80を容器本体20と内挿リング25とで挟持する。袋状部材80設けることによって、哺乳瓶2を袋状部材80内に収容することができるので、哺乳瓶2が冷却媒体に直接触れることを防ぐことができる。これによって、冷却後に瓶本体4を拭く手間を省くことができる。
【0045】
またさらに他の実施形態として、容器本体20にリング部材90を取り付けてもよい。リング部材90は、環状の部材であり、その外周部に環状の取付部91を有する。リング部材90の内径は、第1開口部35よりもわずかに大きい値に選ばれる。リング部材90は、第1開口部35を外囲して取り付けられ、外挿リング24と容器本体20とによって挟持される。リング部材90には、環状の取付部91が形成されるので、使用者は、取付部91に鈴やキーホルダなどを装着することができる。これによって、哺乳瓶ミルク冷却器1の揺動時に、乳児がよろこぶ音などを発することができるので、乳児をあやしながら哺乳瓶2内のミルクを冷却することができる。
【0046】
図9は、実施例、比較例1および比較例2の冷却時間を示すグラフである。図9に示すグラフの縦軸は、哺乳瓶内のミルクの温度を示し、横軸は時間(分)を示す。図9中グラフ100は本発明の実施例を示し、グラフ101は比較例1を示し、グラフ102は比較例2を示す。
【0047】
実施例および比較例1に使用した哺乳瓶ミルク冷却器1は、容器本体20の外径寸法が99mm、内径寸法が93mmであった。また保持体22として、外径が89mm、内径が35mm、厚みが1mmの環状のシリコーンゴムを用いた。また実施例、比較例1および比較例2には、同一の哺乳瓶を使用した。
【0048】
実施例および比較例1において使用した哺乳瓶ミルク冷却器1には、冷却媒体として25℃の水道水を500cc収容した。哺乳瓶ミルク冷却器1を3時間冷蔵庫で冷却した後、使用した。このとき、収容空間33内の水の温度は7℃であった。
【0049】
哺乳瓶ミルク冷却器1の性能を測るため、実施例として、70℃のミルクを収容した哺乳瓶2を哺乳瓶ミルク冷却器1に収容し、哺乳瓶ミルク冷却器1を継続して揺動し、哺乳瓶2内のミルクの温度が40℃に達するまでに要した時間を測定した。
【0050】
比較例1として、70℃のミルクを収容した哺乳瓶2を、哺乳瓶ミルク冷却器1に収容し、哺乳瓶ミルク冷却器1を揺動せずに、哺乳瓶2内のミルクの温度が40℃に達するまでに要した時間を測定した。
【0051】
比較例2として、70℃のミルクを収容した哺乳瓶2に、流水として25℃の水道水を継続して放水し、哺乳瓶2内のミルクの温度が40℃に達するまでに要した時間を測定した。
【0052】
実施例では、哺乳瓶2内のミルクは6.43分後に40℃に達した。比較例1では、哺乳瓶2内のミルクは5.45分後に40℃に達した。比較例2では、哺乳瓶2内のミルクは、30.7分後に40℃に達した。
【0053】
実施例、比較例1および比較例2において使用した水の量を表1に示す。
【表1】

【0054】
図9から明らかなように、哺乳瓶ミルク冷却器1を継続して揺動すると、哺乳瓶2内のミルクは、効率よく冷却されることがわかる。また表1に示すように、流水によってミルクを冷却する比較例2では、実施例と比較して約16倍の水が必要となる。このため、比較例2は、大量の水を供給し得る設備がある場所でしか使用することができず、携帯性が悪いことがわかる。
【符号の説明】
【0055】
1 哺乳瓶ミルク冷却容器
2 哺乳瓶
3 凹溝
4 瓶本体
5 飲み口部
7 肩部
8 凹溝形成部
10 乳首
11 キャップ部
20 容器本体
21 蓋体
22 保持体
23 蓋本体
24 外挿リング
25 内挿リング
33 収容空間
34 湾曲部分
35 第1開口部
36 第2開口部
39 逆止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミルクを収容する瓶本体と、可撓性を有する飲み口部とを含み、前記瓶本体には、前記飲み口部が着脱可能に装着される飲み口部用開口部が形成され、前記飲み口部および前記瓶本体には、前記飲み口部用開口部に前記飲み口部が装着された状態で、前記飲み口部と前記瓶本体との間に環状の凹溝を形成する凹溝形成部がそれぞれ設けられる哺乳瓶を収容して冷却する哺乳瓶ミルク冷却器であって、
容器本体であって、前記瓶本体が通過可能な容器本体開口部を有し、前記瓶本体および液状の冷却媒体を収容可能な瓶本体収容空間が形成される容器本体と、
蓋体であって、前記容器本体開口部に着脱可能に装着される蓋体開口部を有し、前記飲み口部を収容可能な飲み口部収容空間が形成される蓋体と、
可撓性および弾発性を有し、前記哺乳瓶を保持する環状の保持体であって、前記蓋体開口部に設けられる外周部と、哺乳瓶の前記凹溝に嵌り込む内周部とが形成される保持体とを含むことを特徴とする哺乳瓶ミルク冷却器。
【請求項2】
前記蓋体は、蓋本体と、蓋本体に着脱可能に装着される外挿リングとを有し、
蓋本体と外挿リングとによって前記保持体の外周部が挟持されることを特徴とする請求項1記載の哺乳瓶ミルク冷却器。
【請求項3】
前記容器本体には、容器本体開口部に近接して、瓶本体収容空間から外部への流体の通過を許容し、かつ、外部から瓶本体収容空間への流体の通過を遮断する逆止弁が設けられることを特徴とする請求項1または2記載の哺乳瓶ミルク冷却器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−229594(P2011−229594A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100556(P2010−100556)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000112299)ピップ株式会社 (46)
【Fターム(参考)】