説明

商品販売データ処理装置

【課題】 支払いや両替等のために札を操作者に渡した相手に、偽札か否かを判別していることを気づかせないようにするとともに、省スペースに設置できる商品販売データ処理装置を提供する。
【解決手段】 商品販売データ処理装置であるECR1が、偽札か否かを判別するための光を照射する光源を有する偽札判別部40と、一取引の終了を宣言する締め操作に応じて前記光源を点灯させる手段を備え、又は、偽札判別部40と、例えば偽札判別キー42のような前記光源の点灯を指示するキーボタンと、前記キーボタンの操作に応じて前記光源を点灯させる手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ECR(Electronic Cash Register:電子式キャッシュレジスター)やPOS(Point of Sales:販売時点管理)端末などの商品販売データ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、本物の札であるのか、偽物の札であるのかを判別する、いわゆる偽札判別装置の一例として特許文献1のような紙幣識別装置が提案されている(特許文献1参照)。この紙幣識別装置は、紙幣(以下、札という。)には通常その表面に紫外線反応インク等により印刷された模様等が印刷されているため、そのことを利用して当該模様等に紫外線を照射することができるように構成されている。紫外線の照射により、紙幣に印刷された模様等が浮き出るため、模様等が浮き出るかどうかをもって紙幣の真偽の判別を行なうことができる。そこで、特許文献1記載の紙幣識別装置は、このような札の特徴を捉えて、判別の対象となる札を広げて検査台部に載置させ、札の上方から紫外線を照射することで札に印刷された模様等を浮き出させるようにしている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−281595公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
札が偽札であるか否かの判断は、例えば、商品の売上処理を行なうに伴って客から支払料金として札を渡された場合や、両替のために札を渡された際に行なわれる。しかしいずれの場合も、客に偽札であるか否かの判断をしていることがわかってしまうと客の心証が悪くなるので、できるだけ売上処理や両替の処理の中の一処理として目立たずに判断を行なう必要がある。また、特許文献1に記載の紙幣識別装置を、例えばレジに設置する場合、レジでは商品販売データ処理装置用のスペースの他に紙幣識別装置用のスペースを確保する必要があり、スペース効率が悪い。さらに、例えば、商品の売上処理を行なうに伴って客から支払料金として渡された札について偽札か否かの判断を行なう場合、偽札か否かの判断だけは商品販売データ処理とは別に行なう必要があったり、偽札判別装置の電源の入り切りを商品販売データ処理装置から独立して行なう必要があり煩雑である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明における商品販売データ処理装置は、偽札か否かを判別するための光を照射する光源を有する偽札判別部と、一取引の終了を宣言する締め操作に応じて前記光源を点灯させる手段を備える。又は、本発明における商品販売データ処理装置は、偽札か否かを判別するための光を照射する光源を有する偽札判別部と、前記光源の点灯を指示するキーボタンと、前記キーボタンの操作に応じて前記光源を点灯させる手段とを備えている。
【発明の効果】
【0006】
本発明における商品販売データ処理装置によれば、偽札判別部を有するとともに、一取引の終了を宣言する締め操作に応じて偽札判別部の光源を点灯させる手段や、或いは前記光源の点灯を指示するキーボタンと、前記キーボタンの操作に応じて前記光源を点灯させる手段を備えているので、省スペースに設置でき、偽札の判別だけを独立に行なうことなく、また、商品販売データ処理装置のほかに別途偽札判別装置を設ける必要もなく、客に偽札であるか否かの判別をしていることがわかり、不快な気持ちにさせないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の第一の実施形態を、図1ないし図5に基づいて説明する。本実施の形態は、商品販売データ処理装置としての、例えばECRへの適用例である。
【0008】
図1は、第一の実施形態のECR1を含む商品販売データ処理システム全体を示した概略斜視図である。ECR1は、ハウジング2を備え、ハウジング2内に各部を収納し、一方でハウジング2の外部に各部を露出させている。ハウジング2の上面には、キーボード3、操作者用表示器4、客用表示器5、レシート発行口6、及び客から預かった札を一時的に置いておくための札置き台7が配置されている。そして、例えば、店員等のECR1の操作者(以下、操作者という。)から見て操作者用表示器4が正面に、キーボード3はその下方に、レシート発行口6及び札置き台7はその左方にそれぞれ配置され、操作者が商品情報等を入力しやすいようにまとめられている。また、客用表示器5は、操作者用表示器4よりも高い位置に設けられ、客に見やすいように配置されている。ハウジング2の内部には、レシートを印刷するためのプリンタ6a(図2参照)が設けられている。
【0009】
ECR1は、顧客から受領した金銭や小切手等の有価証券を保管しておくための装置であるドロワ装置20の上に載置されている。当該ドロワ装置20の内部には、引出し21が設けられており、締め処理時には手前に引き出され、その中に顧客から受領した金銭等を収納する。ECR1には、商品コード等を光学的に読み取るコードスキャナ30が接続されている。
【0010】
ECR1のキーボード3よりも低い位置であってハウジング2の正面略中央には、偽札判別部40が設けられている。偽札判別部40は、光源(図示せず)及びこの光源を覆うカバー41により構成されている。光源としては例えば、単数或いは複数の紫外線LED(Light Emitting Diode)又は可視光線を照射するLED(以下、可視光線LEDという。)が好適に使用され、カバー41を通して発光する。この偽札判別部40は、客が支払いのために、或いは両替のために操作者に渡した札に紫外線又は可視光線を照射する。また、偽札判別部40の光源を点灯させるためのキーとして、本実施形態ではキーボード3に偽札判別キー42が設けられている。
【0011】
図2は、ECR1に備えられる各部の電気的接続を示すブロック図である。図2に示すように、ECR1は、各種演算や各部の制御を実行するCPU(Central Processing Unit)11a、コンピュータプログラム等を格納するROM(Read On Memory)11b及び各種データを書き換え自在に格納するRAM(Random Access Memory)11c等で構成される制御部11を備えている。RAM11cは、可変的なデータを書き換え自在に格納する機能を利用して、各種ワークエリアとしての機能を果たす。
【0012】
制御部11には、バスライン12を介して、前述したキーボード3、操作者用表示器4、客用表示器5、プリンタ6a、図示しないホストコンピュータなどの外部電子機器との間でデータ通信を実行する通信インターフェイス13、ドロワ装置20、コードスキャナ30、偽札判別部40等が接続されている。また、制御部11を動作させる制御プログラムや商品マスタファイル等が格納されているHDD(Hard Disc Drive)14もバスライン12を介して、制御部11に接続されている。
【0013】
ここで、偽札判別部40のうち、バスライン12を介して制御部11に接続されているのは、図示しないスイッチング回路である。つまり、スイッチング回路は、CPU11aからの点灯信号に対してスイッチオンにし、偽札判別部40の光源に対する点灯電流の供給を許容する。
【0014】
図3は、ECR1の制御部11が実行する商品販売データ処理を概略的に示すフローチャートである。この図3に基づいて商品販売データ処理について説明する。
【0015】
商品販売データ処理は、まず、キーボード3やコードスキャナ30等の入力手段からの商品コードや販売個数等の商品情報の入力に待機する(S1)。入力手段からの商品情報の入力があったと判断されると(S1のY)、商品販売データ処理が実行される。この商品販売データ処理では、入力された商品コードに基づいて、RAM11cにある商品マスタファイルを検索し(S2)、この検索により得られた、商品名、単価や部門コード等からなる売上データがRAM11cのワークエリアに記憶される(S3)。RAM11cのワークエリアに記憶された単価等の取引情報は、操作者用表示器4及び客用表示器5に表示される(S4)。
【0016】
ステップS1からステップS4の処理は、キーボード3の例えば、預/現計キーが押下されて、締めが宣言されたと判断されるまで(S5のY)、繰り返される。そして、例えば預/現計キーが押されて、締めが宣言されたと判断されると(S5のY)、ステップS6において締め処理が実行され、売上メモリに記憶される。この締め処理が実行されると、商品販売データ処理は終了する。
【0017】
図4は、締め処理の流れを示すフローチャートである。次に、図4に基づいて、締め処理の流れの中で偽札を判別する処理について説明する。
【0018】
締めキーである預/現計キーが押下されると(S5)、偽札判別部40に設けられている光源である紫外線LED又は可視光線LED(以下、紫外線LED等という。)を点灯させるための指示が出され(S6−1)、この指示により偽札判別部40の紫外線LED等が発光する。上述のように、一般にわが国で発行される札(日本銀行券)の表面には、紫外線反応インク等により、紫外線に反応して紫外線に当たった部分の印刷が浮き上がって見える部分(模様等)が設けられている。このため、操作者がこの偽札判別部40に札をかざして札の当該部分に紫外線を当てることで、この模様等が浮き出るようになっていて、偽札であるか否かを判別することができる。また、札には透かしも設けられていることから、操作者が可視光線LEDから照射される可視光線にかざすことで、透かしの有無により偽札か否かを判別できる。
【0019】
このように、キーボード3の預/現計キーの押下と、偽札判別部40の点灯が関連付けられており、締め処理の中の一処理として、客から預かった札が偽札であるか否かを判別することができるため、客に偽札であるか否かの判別をしていることがわかり、不快な気持ちにさせないようにすることができる。
【0020】
締め処理では、売上メモリに記憶された売上データやこの売上データに基づいて算出される消費税額、売上合計金額等で構成される印字データが生成されて印字バッファに記憶される(S6−2)。この印字データは、プリンタ6aによってレシートに印刷され、レシート発行口6から発行される(S6−3)。
【0021】
また、売上メモリに記憶された売上データ等は、例えば、売上金額、商品ごとの売上数量、買上客数等の算出にも供され、その算出結果は、HDD14の売上ファイルに記憶される(S6−4)。
【0022】
そして、その後、ドロワ装置20に引出し21を開放するようにドロワー開放信号が出力され(S6−5)、これに応じて引出し21が開放される。
【0023】
偽札判別部40の光源である紫外線LED等は、キーボード3の預/現計キーが押下されることにより発光し、例えば、ドロワ装置20の引出し21が閉められることにより、その発光を止めるように調整することができる。例えば、引出し21が操作者によって閉められると、CPU11aに信号が送られ、その後、CPU11aにより紫外線LED等に対して発光を止めるように指示が出されるようにすることができる。また、例えば、引出し21が操作者によって閉められると、紫外線LED等の発光を止めるスイッチが入るようにすることも可能である。
【0024】
なお、本実施形態では、偽札判別部40は、ECR1のキーボード3よりも低い位置であってハウジング2の正面略中央に設けられているが、客に不快な思いをさせないように、締め処理の中の処理の一部として偽札の判別をすることができれば、キーボード3よりも低い位置であってハウジング2の正面であればいずれの位置に配置しても良い。
【0025】
図5は、偽札判別キー42を使用して偽札判別部40の紫外線LED等を発光させる手順を示したフローチャートである。偽札であるか否かの判断を締め処理から独立した処理として行なう場合ついて、図1及び図5に基づいて説明する。
【0026】
図5のフローチャートに示されるように、偽札判別キー42が押下されたか否かを判断し(S10)、押下されたと判断した場合には(S10のY)偽札判別部40の紫外線LED等に対して発光の指示が出され、紫外線LED等が発光する。操作者は紫外線LED等の光に札をかざすことで、対象となる札が偽物か否かを判断することができる。特に、両替等、締め処理の流れとは全く関係なく客等から渡された札が偽札か否かを判断する場合に利用される。なお、偽札判別キー42が押下されていないと判断した場合は(S10のN)、そのまま待機する。
【0027】
この場合、偽札判別キー42が押下されている場合だけ紫外線LED等が発光するようにしてもよい。また、偽札判別キー42が押下されて所定の時間発光を続けるようにしてもよい。この場合は、例えば、CPU11aにより発光する時間を計測し、所定の時間経過後に発光を止めるようにすることができる。或いは、一旦偽札判別キー42を押下し、再度当該キー42を押下するまで紫外線LED等の発光を続けるように調整することも可能である。
【0028】
なお、図1においてはキーボード3の右上端のキーを偽札判別キー42としているが、このキーに限られず、キーボード3のいずれのキーについても判別キーとしての機能を持たせることは可能である。また、キーボード3上に偽札判別キー42を設けなくても、別途ECR1のいずれかの部位に設けてもよい。
【0029】
以上、偽札であるか否かを判別するために、偽札判別部40の紫外線LED等を発光させる手段として、キーボード3の預/現計キーを押下する手段と、偽札判別キー42を設けて当該キーを押下する手段とを述べた。ECRには、その使用者の用途(要求)に従って、両手段をともに備えても、或いは、いずれか一方の手段のみを備えても良い。
【0030】
本発明の第二の実施形態を、図6ないし図8に基づいて説明する。なお、第一の実施形態の場合と同じ符号についての説明は、既に説明をしたことから省略する。図6は、ECR10を含む商品販売データ処理システム全体を示した概略斜視図である。
【0031】
本実施形態においても第一の実施形態同様、操作者から見てキーボード3の左側に札置き台7が配置されており、偽札判別部50は、当該札置き台7を利用して設けられている。
【0032】
図7は、ECR10の札置き台7の部分拡大図である。この札置き台7は、上面51と当該上面51の三方を囲む壁7a、7b、7cによって構成されており、上面51は、札を載置する部分である。
【0033】
図8は、ECR10の札置き台7を図7に示すようなA−A線で切断した断面図である。上面51の下方には、上面51上に載置された札を照らすための紫外線LED等の光源52が設けられている。札置き台7の上面51は、紫外線LED等の光を通す性質をもった、例えばガラスやアクリル板等で構成されている。
【0034】
操作者が札を札置き台7の上面51の上に置き、キーボード3の預/現計キーや偽札判別キー42を押下すると、偽札判別部50の光源52に対して照射の命令が出され、紫外線LED等が発光する。つまり、札の模様等が設けられた面を下にして札置き台7の上面51に札を置いた場合は、操作者が札を持ち上げる際に紫外線又は可視光線が照射されて浮き出た模様等や透かしを判別することができる。また、札の模様等が設けられた面が上になった状態で札置き台7に置かれた場合は、直接模様等に紫外線が照射されないが、裏からの照射によって模様等が浮き出るため、判別することが可能である。札が複数枚ある場合には、1枚ずつ判別することになる。
【0035】
なお、偽札判別部50の紫外線LED等が発光するタイミングは、第一の実施形態で述べたように、締め処理の中の一処理として預/現計キーが押下された場合、或いは、締め処理とは関係なく、偽札判別キー42を押下した場合のいずれかとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】第一の実施形態のECRを含む商品販売データ処理システム全体を示した概略斜視図である。
【図2】ECRに備えられる各部の電気的接続を示すブロック図である。
【図3】商品販売データ処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】締め処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】偽札判別キーを使用して偽札判別部の紫外線LED等を発光させる手順を示したフローチャートである。
【図6】第二の実施形態のECRを含む商品販売データ処理システム全体を示した概略斜視図である。
【図7】ECRの札置き台の部分拡大図である。
【図8】ECRの札置き台をA−A線で切断した断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1…ECR、2…ハウジング、3…キーボード、7…札置き台、40…偽札判別部、42…偽札判別キー



【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された商品情報に基づいて商品販売データ処理を行う商品販売データ処理装置において、
偽札か否かを判別するための光を照射する光源を有する偽札判別部と、
一取引の終了を宣言する締め操作に応じて前記光源を点灯させる手段と、
を備えることを特徴とする商品販売データ処理装置。
【請求項2】
入力された商品情報に基づいて商品販売データ処理を行う商品販売データ処理装置において、
偽札か否かを判別するための光を照射する光源を有する偽札判別部と、
前記光源の点灯を指示するキーボタンと、
前記キーボタンの操作に応じて前記光源を点灯させる手段と、
を備えることを特徴とする商品販売データ処理装置。
【請求項3】
ハウジングの上面手前側にキーボードを備え、
前記偽札判別部は、前記ハウジングのうち、前記キーボードよりも低い位置であって、操作者と対面する位置に設けられている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の商品販売データ処理装置。
【請求項4】
札を置くために設けられた透光性を有する札置き部を有し、
前記偽札判別部は、その光源が前記札置き部の下方から上方に向けた光を照射するように配置されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の商品販売データ処理装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−107176(P2006−107176A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−293724(P2004−293724)
【出願日】平成16年10月6日(2004.10.6)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】