説明

商品販売データ処理装置

【課題】電子タグデータが読取られた客買上商品のうち一部の商品の購入取止めを効率よく処理できるようにする。
【解決手段】電子タグデータバッファと商品アイテムバッファを設ける。電子タグリーダで読取った電子タグデータと同一のデータが電子タグデータバッファに記憶されていない場合に、読取った電子タグデータを電子タグデータバッファに追加する。入力モードと取消モードとを切換え可能とし、取消モードに切換えられたことに応じて電子タグデータバッファをクリアする。入力モードが選択されている場合には、電子タグデータバッファに追加された電子タグデータを基に商品販売データを取得し商品アイテムバッファに追加する。取消モードが選択されている場合には、電子タグデータバッファに追加された電子タグデータを基に得られる商品販売データを商品アイテムバッファから削除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子タグに記憶されたデータを非接触で読取る電子タグリーダを有し、この電子タグリーダで電子タグから読取った電子タグデータに基づいて当該電子タグが付された商品の販売データを処理する商品販売データ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、流通業界においては、電子タグを利用したチェックアウトシステムの開発が進められている。このシステムは、各商品に電子タグをそれぞれ付し、その電子タグのメモリに、当該電子タグが付されている商品を特定するための商品コードなどの商品データを記憶させる。また、POS(Point Of Sales)端末等の商品販売データ処理装置に電子タグリーダを接続し、この電子タグリーダのアンテナをチェックアウトカウンタの近傍に設ける。かくして、客が買上商品を会計のためにチェックアウトカウンタに載せると、各商品にそれぞれ付されている電子タグのデータが電子タグリーダによって読取られ、商品販売データ処理装置に送られるので、商品販売データ処理装置は、電子タグリーダから受信した電子タグデータに基づいて、当該電子タグが付された商品の販売データを処理するというものである。
【0003】
この種のチェックアウトシステムに用いられる商品販売データ処理装置において、従来、電子タグデータの二重読取防止機能を備えたものはあった。すなわち、電子タグデータから得られる商品コードとシリアルナンバーとを対にして記憶可能なメモリエリアを有する。そして、電子タグリーダから電子タグデータを受信する毎に、その電子タグデータ中の商品コードとシリアルナンバーが上記メモリエリアに記憶されているか否かをチェックする。ここで、商品コードとシリアルナンバーの両方が上記メモリエリアに記憶されている場合には、既に読取った電子タグのデータであるのでそれを破棄する。これに対し、いずれか一方が異なる場合には、新たな商品に付された電子タグのデータであるので、そのデータ中の商品コードとシリアルナンバーとをメモリエリアに追加する。そして、メモリエリアに追加された商品コードに基づいて商品販売データを処理する。その後、1商取引の登録締めが指示されると、次客との商取引に備えるためにメモリエリアに記憶されたデータをクリアする。ただし、既に決済を終えた前客の商品が誤って次客の買上商品として再登録されることを防止するため、決済を終えた客が所定距離離れるまでメモリエリアのデータが保持されるように制御していた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3373860号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、客が買上商品をチェックアウトカウンタに載せた後でその中の一部の商品の購入を取止めることを申し出る場合がある。このような場合、その商品に付された電子タグデータは既に電子タグリーダによって読取られ、商品販売データ処理装置に送られているので、店員は以下に示す手順の作業を行うこととなる。
【0005】
先ず、チェックアウトカウンタから客の買上商品を全て退ける。次に、既に読取られた電子タグデータの商品コードとシリアルナンバーとが記憶されたメモリエリアをクリアするためのキー操作を行う。しかる後、客買上商品の中から客が購入を取り止めた商品を取り除いたならば、客買上商品を再度チェックアウトカウンタに載せて、電子タグデータを再読込みさせる。
【0006】
このように、既に電子タグデータが読取られた客買上商品のうち一部の商品の購入が取り止められた場合には、実際に購入する商品の電子タグデータを再読込みさせる必要があった。このため、電子タグデータの再読込みにかかる分だけ処理効率が低下するという問題があった。
【0007】
本発明はこのような事情に基づいてなされたもので、その目的とするところは、電子タグデータの二重読取防止機能を備えたものにおいて、電子タグデータが読取られた客買上商品のうち一部の商品の購入取止めを効率よく処理できる商品販売データ処理装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、電子タグに記憶されたデータを読取る電子タグリーダを有し、この電子タグリーダで電子タグから読取った電子タグデータに基づいて当該電子タグが付された商品の販売データを処理する商品販売データ処理装置において、複数の電子タグデータを記憶保持可能な電子タグデータ記憶手段と、複数の商品販売データを記憶保持可能な商品アイテム記憶手段と、電子タグリーダで電子タグから読取った電子タグデータと同一のデータが電子タグデータ記憶手段に記憶されているか否かを判断するデータ有無判断手段と、このデータ有無判断手段により同一データが記憶されていないと判断されると、電子タグから読取った電子タグデータを電子タグデータ記憶手段に追加し、同一データが記憶されていると判断されると、電子タグから読取った電子タグデータを電子タグデータ記憶手段に追加しない電子タグデータ処理手段と、商品の入力モードと入力済商品の取消モードとを切換えるモード切換手段と、入力モードから取消モードに切換えられたことに応じて電子タグデータ記憶手段に記憶されている電子タグデータをクリアする電子タグデータクリア手段と、入力モードが選択されていることを条件に、電子タグデータ処理手段により電子タグデータ記憶手段に追加された電子タグデータを基に商品販売データを取得し商品アイテム記憶手段に追加する商品販売データ追加手段と、取消モードが選択されていることを条件に、電子タグデータ処理手段により電子タグデータ記憶手段に追加された電子タグデータを基に得られる商品販売データを商品アイテム記憶手段から取消処理する商品販売データ取消手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
かかる手段を講じた本発明によれば、電子タグデータの二重読取防止機能を備えたものにおいて、電子タグデータが読取られた客買上商品のうち一部の商品の購入取止めを効率よく処理できる商品販売データ処理装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は本発明に係る商品販売データ処理装置の一実施形態を示す模式図である。同図において、符号1はPOS(Point Of Sales)端末、2は電子タグリーダ、3はタグアンテナ板を示す。タグアンテナ板3には、電子タグリーダ2の一部として、電子タグとの間で電磁界あるいは電波の送受信を行うアンテナ4が取り付けられている。
【0011】
電子タグリーダ2は、アンテナ4の交信領域内に存在する電子タグと非接触で交信し、当該電子タグのメモリに記憶されている電子タグデータを読取るもので、アンチコリジョン方式という衝突防止機能を有している。この機能により、タグアンテナ板3の上に買い物籠等の収容体5に収容された1商取引分の客買上商品6A,6B,6C,…が置かれると、これら商品6A,6B,6C,…にそれぞれ付されている電子タグ7A,7B,7C,…のデータが電子タグリーダ2によって一括して読取られる。そして、電子タグリーダ2で読取られた電子タグデータは、POS端末1に順次送信される。POS端末1では、電子タグリーダ2が電子タグ7A,7B,7C,…から読取った電子タグデータに基づいて、当該電子タグが付された商品6A,6B,6C,…の販売データを処理するものとなっている。なお、各商品6A,6B,6C,…は、必ずしも収容体5に収容されていなくてもよい。また、電子タグリーダ2は、電子タグへのデータ書込み機能を有した電子タグリーダライタであってもよい。
【0012】
電子タグ7A,7B,7C,…は、無線タグ,RFID(Radio Frequency Identification),ICタグ等とも称され、既に実用化されているものである。そして、本実施の形態では、商品6A,6B,6C,…にそれぞれ付されている電子タグ7A,7B,7C,…を商品タグと称する。商品タグのメモリには、例えばタグ製造時に設定されるシリアルナンバー等のタグ固有のIDコードと、当該商品タグが付されている商品を特定するための商品コードが少なくとも格納されている。
【0013】
図2はPOS端末1の要部構成を示すブロック図である。このPOS端末1は、商品販売データ処理装置の一態様であり、制御部本体としてCPU(Central Processing Unit)11を搭載している。また、プログラム等の固定的データが予め格納されたROM(Read Only Memory)12、入力データ,演算処理データ等の可変的データを記憶するための種々のメモリエリアが形成されるRAM(Random Access Memory)13、現在の日時を計時する時計部14、オンライン接続されたストアサーバとの間で行うデータ通信を制御する通信コントローラ15、前記電子タグリーダ2が電気的に接続される電子タグリーダインターフェイス16、キーボード17の操作キーに対応したキー信号を取り込むキーボードコントローラ18、オペレータ用ディスプレイ19の画面表示を制御する第1の表示コントローラ20、客用ディスプレイ21の画面表示を制御する第2の表示コントローラ22、レシート印字等を行うプリンタ23の印字動作を制御するプリンタコントローラ24、現金等を収容するためのドロワ25とデータ読取音などを発するブザー26とにそれぞれ駆動信号を出力するI/O(Input/Output)ポート27等を備えている。そしてCPU11と、ROM12,RAM13,時計部14,通信コントローラ15,電子タグリーダインターフェイス16,I/Oポート27及び各種入出力機器のコントローラ18,20,22,24とを、アドレスバス,データバス等のバスライン28で接続している。
【0014】
キーボード17には、1商取引の締めを宣言する締め宣言手段としての締めキー31と、処理中の1商取引で販売商品として登録済である商品、すなわち電子タグデータが読取られた商品の取消を宣言する取消宣言手段としての取消キー32とを少なくとも設けている。
【0015】
RAM13には、複数の商品販売データを記憶保持可能な商品アイテムバッファ記憶手段としての商品アイテムバッファ41と、複数の電子タグデータを記憶保持可能な電子タグデータ記憶手段としての電子タグデータバッファ42と、商品の入力モードのとき“0”にリセットされ、入力済商品の取消モードになると“1”にセットされる取消フラグのメモリ43とを少なくとも形成している。
【0016】
商品アイテムバッファ41は、図3に示すように、商品コード,商品名,単価,売上点数及び売上金額の各項目からなる商品販売データを複数記憶するためのエリアと、売上点数及び売上金額の合計データを記憶するためのエリアと、取消情報を記憶するエリアとを有している。
【0017】
電子タグデータバッファ42は、図4に示すように、一定数N(N>1)のエリア番号に対応して電子タグデータを記憶するためのエリアを有している。この電子タグデータバッファ42は、エリア番号1のエリアから順に電子タグデータを記憶保持し、エリア番号Nのエリアまで電子タグデータが記憶保持されると、それ以後の電子タグデータをエリア番号1のエリアから順に上書きするようになっている。
【0018】
かかる構成のPOS端末1は、電源投入によりシステムが立ち上がると、CPU11が図5及び図6の流れ図に示す手順の制御処理を実行する。すなわちCPU11は、ST(ステップ)1として電子タグリーダインターフェイス16を介して接続された電子タグリーダ2に起動を指令する。また、ST2として前記取消フラグを“0”にリセットする。すなわち、動作開始時の初期モードを入力モードとする。
【0019】
電子タグリーダ2は、POS端末1からの起動指令に応じて、電子タグを読取るための読取信号を変調し、この変調電波をアンテナ4から連続して発信する。そして、電子タグからの応答電波をアンテナ4で受信するのを待機する。応答電波を受信すると、その電波を復調し、応答データつまりは電子タグのメモリに記憶されている電子タグデータをPOS端末1に送信するものとなっている。
【0020】
そこでCPU11は、ST3として電子タグデータを受信するのを待機している。電子タグリーダ2から電子タグデータを受信すると(ST3のYES)、ST4として電子タグデータバッファ42を検索する。そして、受信した電子タグデータと同一のデータが電子タグデータバッファ42に記憶されているか否かを判断する(データ有無判断手段)。この判断処理は、受信した電子タグデータに含まれるタグ固有のIDコードで電子タグデータバッファ42を検索し、同一のIDコードを含む電子タグデータの有無を判断するものであり、記憶されている場合には同一データ有りと判断し、記憶されていない場合には同一データ無しと判断する。その結果、同一データ有りと判断した場合には(ST5のYES)、CPU11は、ST6として受信した電子タグデータを電子タグデータバッファ42に追加せず、破棄する。しかる後、ST3の処理に戻り、次の電子タグデータを受信するのを待機する。これに対し、同一データ無しと判断した場合には(ST5のNO)、ST7として受信した電子タグデータを電子タグデータバッファ42に追加する(電子タグデータ処理手段)。
【0021】
次に、CPU11は、ST8として電子タグデータバッファ42に追加された電子タグデータが、各商品にそれぞれ付されている商品タグのデータか否かを判断する。ここで、商品タグから読取った電子タグデータでない場合には、ST3の処理に戻り、次の電子タグデータを受信するのを待機する。
【0022】
一方、受信した電子タグデータが商品タグから読取った電子タグデータ、つまりIDコードとともに商品コードを含むデータであった場合には、CPU11は、ST9として取消フラグを調べる。
【0023】
ここで、取消フラグが“0”にリセットされていた場合には、入力モードが選択されているので、CPU11は、ST10としてその電子タグデータに含まれる商品コードに基づいて商品名,単価等の商品データを取得する。すなわちPOS端末1は、各商品の商品コードに対応して商品名,単価等の商品データがプリセットされた商品データファイルを備えており、CPU11は、電子タグデータから取得した商品コードで商品データファイルを検索して、当該商品コードに対応して設定されている商品名及び単価の商品データを取得する。なお、商品タグのメモリに商品コードと共に商品名,単価等の商品データも記憶するようにして、商品データファイルを省略することも可能である。
【0024】
CPU11は、商品コード,商品名,単価等の商品データを取得すると、次に、ST11として売上点数を“1”とし、売上金額を単価として、商品コード,商品名,単価,売上点数及び売上金額からなる商品販売データを生成する。そして、この商品販売データを商品アイテムバッファ41に追加する(商品販売データ追加手段)。また、ST12として商品アイテムバッファ41に記憶された各商品販売データの売上点数及び売上金額をそれぞれ加算し、合計点数及び合計金額(小計額)を算出して、商品アイテムバッファ41の合計エリアを更新する。そして、ST13としてオペレータ用ディスプレイ19及び客用ディスプレイ21に商品名,単価,小計額等を表示させる。また、ST14としてブザー26に駆動信号を送出して、商品読取確定音を鳴動させる。
【0025】
その後、CPU11は、ST15として取消キー32が操作入力されたか否かを判断する。取消キー32が操作入力されていない場合には、ST16として締めキー31が操作入力されたか否かを判断する。締めキー31も操作入力されていない場合には、ST3の処理に戻り、次の電子タグデータを受信するのを待機する。
【0026】
取消キー32が操作入力された場合には、入力モードから取消モードへの切換えが指令されたので、CPU11は、ST17として取引フラグを“1”にセットする(モード切換手段)。また、ST18として電子タグデータバッファ42内の電子タグデータを全てクリアする(電子タグデータクリア手段)。その後、ST3の処理に戻り、次の電子タグデータを受信するのを待機する。
【0027】
締めキー31が操作入力された場合には、CPU11は、ST19として商品アイテムバッファ41に記憶された商品販売データに基づいて1商取引を決済させる締め処理を行う(締め処理手段)。この締め処理は、商取引の合計金額に対して代金が支払われると、釣銭額を算出し、オペレータ用ディスプレイ19,客用ディスプレイ21に表示させるとともに、ドロワ25を開放動作させる処理を含む。また、プリンタ23を駆動して、商品アイテムバッファ41に記憶された商品名,売上点数,売上金額や合計点数,合計金額等の商取引明細データが印字されたレシートを発行する処理を含む。
【0028】
かかる締め処理が終了すると、CPU11は、ST20として商品アイテムバッファ41内の商品販売データを全てクリアする(商品販売データクリア手段)。このとき、電子タグデータバッファ42内の電子タグデータはクリアしない。
【0029】
しかる後、CPU11は、ST21として取消フラグを調べる。この場合、取消フラグは“0”にリセットされているので、ST3の処理に進み、次の電子タグデータを受信するのを待機する。
【0030】
ST9にて取消フラグが“1”にセットされていた場合には、取消モードにおいて商品タグのデータが読取られたので、CPU11は、図6の流れ図に示す処理に進む。すなわち、ST31としてその電子タグデータに含まれる商品コードを検索キーとして商品アイテムバッファ41を検索する。その結果、検索キーと同一の商品コードを有するレコード(商品販売データ)を検出したならば(ST32のYES)、CPU11は、ST33としてこの検索キーと同一の商品コードを有する商品アイテムバッファ41のレコードに取消情報(例えば11)をセットする。また、ST34としてオペレータ用ディスプレイ19及び客用ディスプレイ21に表示されている当該レコードの商品名を取消表示する。例えば、商品名を白黒反転で表示する。あるいは、商品名に二重取消線を重ねて表示する。なお、取消表示の方法はこれに限定されるものではなく、オペレータが取消商品であることが把握できればそれでよい。
【0031】
次に、CPU11は、ST35として取消キー32が再度操作入力されたか否かを判断する。取消キー32が操作入力されていない場合には、ST39として締めキー31が操作入力されたか否かを判断する。締めキー31も操作入力されていない場合には、ST40として次の電子タグデータを受信するのを待機する。
【0032】
次の電子タグデータを受信した場合には(ST40のYES)、CPU11は、ST41として電子タグデータバッファ42を検索する。そして、受信した電子タグデータと同一のデータが電子タグデータバッファ42に記憶されているか否かを判断する。その結果、同一データ有りと判断した場合には(ST42のYES)、CPU11は、ST43として受信した電子タグデータを電子タグデータバッファ42に追加せず、破棄する。しかる後、ST35の処理に戻り、取消キー32が操作入力されるか、締めキー31が操作入力されるか、次の電子タグデータを受信するのを待機する。
【0033】
これに対し、同一データ無しと判断した場合には(ST42のNO)、ST31の処理に戻る。すなわち、その電子タグデータに含まれる商品コードを検索キーとして商品アイテムバッファ41を検索する。その結果、検索キーと同一の商品コードを有するレコードを検出したならば、この検索キーと同一の商品コードを有する商品アイテムバッファ41のレコードに取消情報をセットする。また、オペレータ用ディスプレイ19及び客用ディスプレイ21に表示されている当該レコードの商品名を取消表示する。
【0034】
ST35にて取消キー32の操作入力を検知した場合には、商品取消の確認操作がなされたので、CPU11は、ST36として商品アイテムバッファ41に記憶されている各レコードのうち取消情報がセットされたレコードの取消処理を行う(商品販売データ取消手段)。しかる後、商品アイテムバッファ41に記憶された各商品販売データの売上点数及び売上金額をそれぞれ加算し、合計点数及び合計金額(小計額)を再度算出して、商品アイテムバッファ41の合計エリアを更新する。そして、オペレータ用ディスプレイ19及び客用ディスプレイ21に小計額を表示させる。また、ST38としてブザー26に駆動信号を送出して、前記商品読取確定音とは異なる取消確定音を鳴動させる。その後、ST39に進み、締めキー31が操作入力されるか、次の電子タグデータが読取られるのを待機する。
【0035】
なお、ST32にて検索キーである商品コードと同一の商品コードを有するレコードを検出できなかった場合には(ST32のNO)、CPU11は、ST44としてオペレータ用ディスプレイ19のみに取消不可のメッセージを表示させる。また、ST45として電子タグデータバッファ42から最新の電子タグデータを削除する。その後、締めキー31が操作入力されるか、次の電子タグデータが読取られるのを待機する。
【0036】
ST39にて締めキー31が操作入力された場合には、図5におけるST19の処理に進む。すなわち、商品アイテムバッファ41に記憶された商品販売データに基づいて1商取引を決済させる締め処理を行う(締め処理手段)。かかる締め処理が終了すると、CPU11は、商品アイテムバッファ41内の商品販売データをクリアする(商品販売データクリア手段)。しかる後、CPU11は、取消フラグを調べる。この場合、取消フラグは“1”にセットされているので、ST2に戻り、取消フラグを“0”にリセットすることで、取消モードから入力モードに切換える(モード切換手段)。その後、ST3の処理に進み、次の電子タグデータを受信するのを待機する。
【0037】
このように本実施の形態においては、POS端末1の電源投入により、電子タグリーダ2のアンテナ4からは、電子タグを読取るための読取電波が連続して発信されている。また、通常は取消フラグが“0”にリセットされており、動作モードとして入力モードが選択されている。ここで、アンテナ4の交信領域内に電子タグが入ると、この電子タグのメモリに記憶されている電子タグデータが電子タグリーダ2によって非接触で読取られ、POS端末1に送信される。
【0038】
今、客が例えば10品目の商品6A,6B,6C,…を購入するために、POS端末1が設置された会計場所に来たとする。この場合、会計担当の店員いわゆるキャッシャは、各商品6A,6B,6C,…をタグアンテナ板3の上に載置する。そうすると、各商品6A,6B,6C,…にそれぞれ付されている電子タグ7A,7B,7C,…は、アンテナ4からの読取電波に応答して、それぞれIDコードと商品コードとを含む電子タグデータの応答電波を発信する。
【0039】
例えば、商品6Aに付された電子タグ7Aからの応答電波をアンテナ4で受信すると、この電子タグ7Aに記憶されているIDコードと商品コードを含む電子タグデータが電子タグリーダで読取られ、POS端末1に送り込まれる。これにより、POS端末1においては、当該電子タグデータ中のIDコードを含む電子タグデータが電子タグデータバッファ42に記憶されているか否かが判断される。そして、記憶されていない場合には、当該電子タグデータが電子タグデータバッファ42に追加される。また、この電子タグデータ中の商品コードに基づいて当該商品Aの商品名,単価が取得され、商品販売データが生成される。そして、この商品販売データが商品アイテムバッファ41に格納される。なお、商品アイテムバッファ41は、直前の客の締め処理後にクリアされている。
【0040】
次に、商品6Bに付された電子タグ7Bからの応答電波をアンテナ4で受信すると、この電子タグ7Bに記憶されているIDコードと商品コードを含む電子タグデータが電子タグリーダで読取られ、POS端末1に送り込まれる。これにより、POS端末1においては、当該電子タグデータ中のIDコードを含む電子タグデータが電子タグデータバッファ42に記憶されているか否かが判断される。そして、記憶されていない場合には、当該電子タグデータが電子タグデータバッファ42に追加される。また、この電子タグデータ中の商品コードに基づいて当該商品Bの商品名,単価が取得され、商品販売データが生成される。そして、この商品販売データが商品アイテムバッファ41に格納される。
【0041】
その他の8品目の商品6C,…に付された電子タグ7C,…からの応答電波をアンテナ4で受信した場合も同様である。その後、キャッシャが締めキー31を操作入力すると、商品アイテムバッファ41に記憶された各商品6A,6B,6C,…の各商品販売データに基づいて締め処理が行われる。そして締め処理後、商品アイテムバッファ41がクリアされる。これにより、次の客の会計処理が可能となる。
【0042】
ただしこの時点において、電子タグデータバッファ42はクリアされず、各商品6A,6B,6C,…にそれぞれ付された電子タグ7A,7B,7C,…の電子タグデータは、電子タグデータバッファ42で記憶保持されたままとなる。このため、決済を終えた直前の客の買上商品が電子タグリーダ2の近くにあっても、この商品に付されている電子タグのデータは破棄される。したがって、次の客の会計処理をスムーズに実行することができる。
【0043】
ところで、本実施の形態では、キーボード17に取消キー32を設けている。そして、この取消キー32が操作入力された場合には、取消フラグを“1”にセットして動作モードを取消モードに切換えるとともに、電子タグデータバッファ42をクリアするものとなっている。なお、このとき、商品アイテムバッファ41に記憶されている商品販売データはクリアされない。
【0044】
そこで、例えば10品目の商品6A,6B,6C,…の電子タグデータが電子タグデータバッファ42に記憶されているとともに、当該各商品6A,6B,6C,…の商品販売データが商品アイテムバッファ41に記憶されている状態において、キャッシャが締めキー31を操作する前に、客が一部の商品、例えば商品6Cの購入取り止めを申し出た場合、キャッシャは、タグアンテナ板3から全ての商品6A,6B,6C,…を退けた後、取消キー32を操作入力する。
【0045】
そうすると、電子タグデータバッファ42内の全ての電子タグデータがクリアされる。そこで店員は、タグアンテナ板3から退けた10品目の商品の中から客が購入を取り止めた商品6Cを取り出し、タグアンテナ板3の上に載せる。そうすると、この商品6Cに付されている電子タグ7Cの電子タグデータが電子タグリーダ2によって読取られる。このとき、電子タグ7Cの電子タグデータは、電子タグデータバッファ42内に存在しないので、電子タグ7Cの電子タグデータは、新たに電子タグデータバッファ42に格納される。これにより、この格納された電子タグデータに基づいて、商品アイテムバッファ41に記憶されている商品6Cの商品販売データに取消情報が付加される。また、オペレータ用ディスプレイ19及び客用ディスプレイ21に表示されている商品6Cの商品名が取消表示される。
【0046】
そこで店員は、商品6Cの商品名が取消表示されていることを確認した後、取消キー32を再度操作入力する。そうすると、商品アイテムバッファ41から商品6Cの商品販売データが削除される。また、10品目の商品6A,6B,6C,…のうち商品6Cを除いた客買上商品の小計金額がオペレータ用ディスプレイ19及び客用ディスプレイ21に表示される。その後、締めキー31を操作入力すると、商品アイテムバッファ41に記憶された9品目の商品6A,6B,6D,…の各商品販売データに基づいて締め処理が行われる。
【0047】
このように、客が買上商品をチェックアウトカウンタのタグアンテナ板3に載せた後でその中の一部の商品の購入を取止めることを申し出た場合、本実施の形態では、その客買上商品全品をタグアンテナ板3から退けた後、購入を取り止める商品を再度タグアンテナ板3に載せて取消キー32を操作入力する。この際、実際に購入する商品の電子タグデータは既に商品アイテムバッファ41に記憶されているので、再読込みをさせる必要はない。電子タグデータは1点ずつ時系列的に読取られる。このため、再読込みが必要な商品の数が減れば減るほど、つまりは多くの商品を購入しようとした客が1〜2点程度の商品の購入を取り止めるような場合に、本実施の形態は処理効率を向上させることができる。
【0048】
また一般に、バーコードの読取操作等により商品コードを1品ずつ入力する形式の既存の商品販売データ処理装置においては、直前に入力した商品を取消す際には直前取消キーを操作入力すればよいが、直前に入力した商品以外の商品を取消す指定取消の場合には、指定取消キーの操作入力とともに取消す商品を指定するバーコード等の入力を行う必要があり、手間のかかるものであった。これに対して本実施の形態では、前述した操作を行えばよいので、操作が単純で効率的であり、また覚えやすく、アルバイト等の経験の少ないキャッシャでもミスなく操作できる利点がある。
【0049】
なお、前記実施の形態では、受信した電子タグデータと同一のデータが電子タグデータバッファ42に記憶されているか否かを判断する処理として、受信した電子タグデータに含まれるタグ固有のIDコードで電子タグデータバッファ42を検索し、同一のIDコードを含む電子タグデータの有無を判断するものとしたが、電子タグリーダ2で読取られる電子タグが商品タグに限定される運用である場合においては、受信した電子タグデータに含まれるIDコードと商品コードで電子タグデータバッファ42を検索し、同一のIDコード及び商品コードを含む電子タグデータの有無を判断するものとしてもよい。
【0050】
また、前記実施の形態では、POS端末のRAM13に電子タグデータバッファ42を形成するものとしたが、電子タグリーダ2に電子タグデータバッファ42を形成し、電子タグリーダ2において電子タグデータの二重読取りを防止するようにしてもよい。
【0051】
また、前記実施の形態では、入力モードから取消モードへの切替を指令するキーとして取消キー32を用いるとともに、この取消キー32を取消表示された商品の確認用キーとしても兼用したが、取消モードへの切換えキーとしての機能と確認用キーとしての機能をそれぞれ異なるキーに設定してもよい。また、確認用キーの入力を待たずに商品販売データの取消処理を行うことによって、確認用キーを省略することも可能である。
この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能であるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施の形態を示すシステム構成図。
【図2】同実施の形態におけるPOS端末の要部構成を示すブロック図。
【図3】同POS端末のRAMに形成される商品アイテムバッファのエリア構造を示す模式図。
【図4】同POS端末のRAMに形成される電子タグデータバッファのエリア構造を示す模式図。
【図5】同POS端末のCPUが実行する制御処理の要部手順を示す流れ図。
【図6】同POS端末のCPUが実行する制御処理の要部手順を示す流れ図。
【符号の説明】
【0053】
1…POS端末、2…電子タグリーダ、3…タグアンテナ板、4…アンテナ、6A,6B,6C…商品、7A,7B,7C…電子タグ、11…CPU、31…締めキー、32…取消キー、41…商品アイテムバッファ、42…電子タグデータバッファ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子タグに記憶されたデータを読取る電子タグリーダを有し、この電子タグリーダで前記電子タグから読取った電子タグデータに基づいて当該電子タグが付された商品の販売データを処理する商品販売データ処理装置において、
複数の電子タグデータを記憶保持可能な電子タグデータ記憶手段と、
複数の商品販売データを記憶保持可能な商品アイテム記憶手段と、
前記電子タグリーダで前記電子タグから読取った電子タグデータと同一のデータが前記電子タグデータ記憶手段に記憶されているか否かを判断するデータ有無判断手段と、
このデータ有無判断手段により同一データが記憶されていないと判断されると、前記電子タグから読取った前記電子タグデータを前記電子タグデータ記憶手段に追加し、同一データが記憶されていると判断されると、前記電子タグから読取った前記電子タグデータを前記電子タグデータ記憶手段に追加しない電子タグデータ処理手段と、
商品の入力モードと入力済商品の取消モードとを切換えるモード切換手段と、
前記入力モードから前記取消モードに切換えられたことに応じて前記電子タグデータ記憶手段に記憶されている電子タグデータをクリアする電子タグデータクリア手段と、
前記入力モードが選択されていることを条件に、前記電子タグデータ処理手段により前記電子タグデータ記憶手段に追加された電子タグデータを基に商品販売データを取得し前記商品アイテム記憶手段に追加する商品販売データ追加手段と、
前記取消モードが選択されていることを条件に、前記電子タグデータ処理手段により前記電子タグデータ記憶手段に追加された電子タグデータを基に得られる商品販売データを前記商品アイテム記憶手段から取消処理する商品販売データ取消手段と、
を具備したことを特徴とする商品販売データ処理装置。
【請求項2】
1商取引の締めを宣言する締め宣言手段と、
この締め宣言手段により1商取引の締めが宣言されると、前記商品アイテム記憶手段に記憶された商品販売データに基づいて当該1商取引を決済させる締め処理手段と、
この締め処理手段により前記商取引が決済された後に前記商品アイテム記憶手段に記憶されている商品販売データをクリアする商品販売データクリア手段と、
をさらに具備したことを特徴とする請求項1記載の商品販売データ処理装置。
【請求項3】
前記商品販売データ取消手段は、前記電子タグデータ処理手段により前記電子タグデータ記憶手段に追加された電子タグデータを基に得られる商品販売データを表示し、確認操作がなされると当該商品販売データを前記商品アイテム記憶手段から取消処理することを特徴とする請求項1記載の商品販売データ処理装置。
【請求項4】
商品の取消を宣言する取消宣言手段を備え、
前記モード切換手段は、初期モードを入力モードとし、前記取消宣言手段により取消が宣言されると取消モードに切換え、前記締め宣言手段により1商取引の締めが宣言されると入力モードに戻すことを特徴とする請求項2記載の商品販売データ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−226321(P2007−226321A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−43995(P2006−43995)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】