説明

営巣防止装置

【課題】 営巣をより効果的に防止する。
【解決手段】 腕金101の両端側に配設される取付金具2、3と、取付金具2、3に配設される複数の支持棒4と、対向する支持棒4間に配設される複数のテグス5と、を備え、複数のテグス5が腕金101の上方周辺に位置する電線103を覆うように、支持棒4が配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鳥類が電柱周りに巣を作るのを防止する営巣防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カラスなどの鳥類が、春先に電柱の腕金などに巣を作ることで、配電線事故が発生するケースが後を絶たない。このため、巡視点検などで巣を見つけた場合には、巣を撤去して、風車や針式の鳥害防止具などを腕金などに取り付け、鳥類が巣を作るのを防止している。しかしながら、このような防止策を施しても、次から次に営巣場所を変えられたり、鳥類が慣れたりするため、実効的に防止することが困難であった。
【0003】
一方、電柱の腕木に、糸を張り渡したカバーを取り付けることで、腕木に営巣するのを防止する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平02−060426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、本願発明者は、詳細な観察・調査、考察の結果、カラスなどが図7に示すようにして巣を作ることを確認した。すなわち、碍子102を介して腕金101に支持された電線103にカラスCがとまり、そこから枝などの営巣材110を腕金101に向けて落とし、腕金101に引っかかった営巣材110を基にして下地を作り、その中に巣を作るものである。このように、腕金101にとまって営巣するのではなく、腕金101近くの電線103にとまって腕金101に営巣することが確認された。
【0006】
このため、上記の特許文献1の技術では、糸を張り渡したカバーを腕木自体に取り付けたとしても、カラスなどが腕木近くの電線にとまって、カバーの上に巣を作ってしまう場合がある。つまり、営巣を効果的に防止することができない。
【0007】
そこでこの発明は、営巣をより効果的に防止することが可能な営巣防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、電柱に棒状の腕部材が配設され、前記腕部材上にケーブルが支持されている状態において、鳥類が前記腕部材に巣を作るのを防止する営巣防止装置であって、前記腕部材の一端側に配設される第1の取付部と、前記腕部材の他端側に配設される第2の取付部と、棒状で、前記腕部材の軸方向と略垂直な展開面を有する扇の骨のように、前記第1の取付部に配設される複数の第1の支持部と、棒状で、前記腕部材の軸方向と略垂直な展開面を有する扇の骨のように、前記第2の取付部に配設される複数の第2の支持部と、線状で、一端部が前記第1の支持部の上端部に固定され、張られた状態で、他端部が前記第1の支持部に対向する前記第2の支持部の上端部に固定される複数の線材と、を備え、前記複数の線材が前記腕部材の上方周辺に位置するケーブルを覆うように、前記第1の支持部と第2の支持部とが配設されている、ことを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、腕部材の一端側に、複数の第1の支持部が扇状に配設された第1の取付部が配設され、腕部材の他端側に、複数の第2の支持部が扇状に配設された第2の取付部が配設されて、各第1の支持部と第2の支持部との間に線材が配設される。そして、これらの複数の線材が、腕部材の上方周辺に位置するケーブルを覆う状態となる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載の営巣防止装置において、前記第1の取付部と第2の取付部とは、前記腕部材に差し込むことで前記腕部材に配設可能で、前記第1の支持部の第2の支持部との上端部に、一方の方向からのみ挿入可能な挿入孔が設けられ、前記線材を前記挿入孔に挿入することで、前記線材が前記第1の支持部と第2の支持部との間に配設される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、腕部材(腕金)の上方周辺に位置するケーブルを覆うように、複数の線材が配設されるため、カラスなどの鳥類が腕部材近くのケーブルにとまることが困難となる。このため、鳥類が腕部材近くのケーブルにとまって、枝などの営巣材を腕部材に向けて落として巣を作ることができなくなり、営巣をより効果的に防止することが可能となる。
【0012】
請求項2の発明によれば、腕部材に差し込むだけで、第1の取付部と第2の取付部とを腕部材に配設することができ、しかも、線材を挿入孔に挿入するだけ、線材を第1の支持部と第2の支持部との間に配設することができる。つまり、単純な作業・操作で営巣防止装置を取り付けることができ、この結果、人が直接接しない間接工具・間接活線工具による取付・配設が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施の形態に係る営巣防止装置を示す概略正面図(a)と概略側面図(b)である
【図2】図1の営巣防止装置の取付金具を示す正面図(a)と、平面図(b)と、右側面図(c)と、左側面図(d)である。
【図3】図1の営巣防止装置のテグスが張られた状態(A)と切断した状態(B)とを示す図である。
【図4】図1の営巣防止装置の固定具を示す正面図(a)と、左側面図(b)と、平面図(c)と、底面図(d)と、テグスの挿入方向を示す図(e)である。
【図5】この発明の実施の形態において、第2の取付金具の取付位置を変えた変形例を示す概略正面図である。
【図6】図5の第2の取付金具を示す正面図(a)と、平面図(b)と、右側面図(c)と、左側面図(d)である。
【図7】従来におけるカラスの営巣方法を示す正面図(a)と側面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0015】
図1は、この発明の実施の形態に係る営巣防止装置1を示す概略正面図(a)と概略側面図(b)である。この営巣防止装置1は、鳥類が腕金(腕部材)101に巣を作るのを防止する装置であり、主として、第1の取付金具(第1の取付部)2と、第2の取付金具(第2の取付部)3と、支持棒(第1の支持部、第2の支持部)4と、テグス(線材)5とを備えている。ここで、電柱100の上部に、棒状の腕金101が水平に突出するように配設され、腕金101上に配設された碍子102を介して電線(ケーブル)103が支持されており、鳥類がカラスCの場合について主として説明する。
【0016】
第1の取付金具2は、腕金101の一端側(図1(a)中右側)に配設される金物で、第2の取付金具3は、腕金101の他端側(図1(a)中左側)に配設される金物であり、両取付金具2、3は、同等な構成のため、第1の取付金具2についてのみ説明する。この第1の取付金具2は、図2に示すように、一方が開口した筒状で、腕金101の端部を開口端から挿入し(第1の取付金具2を腕金101に差し込み)、ボルト21を締め付けることで、腕金101に取り付けられるようになっている。
【0017】
また、第1の取付金具2の他端には、略扇型の配設板22が設けられている。この配設板22の板面は、腕金101の軸方向と垂直で、上端から下端側に向って支持棒4を挿入する配設穴22aが、放射線状に複数形成されている。すなわち、支持棒4を挿入、配設した際に、腕金101の軸方向と略垂直な展開面を有する扇の骨のように、複数の支持棒4が配設されるようになっている。また、配設板22の自由端面には、配設穴22aに沿って配設ネジ23が螺合され、支持棒4を配設穴22aに挿入して配設ネジ23を締め付けることで、支持棒4が固定、配設されるようになっている。
【0018】
さらに、支持棒4を配設して、後述するようにしてテグス5を支持棒4間に配設した際に、図1に示すように、複数のテグス5が腕金101の上方周辺に位置する電線103を覆うように、支持棒4の配設、つまり配設穴22aの配置が設定されている。ここで、図1(b)に示すエリアSは、営巣をさせないようにカラスCの侵入を防止・制限する領域であり、このエリアSが支持棒4によって形成されるように、配設穴22aの配置および支持棒4の長さが設定されている。
【0019】
支持棒4は、棒状で、上記のようにして第1の取付金具2の配設板22に配設される。この支持棒4は、電気絶縁性や耐候性、さらには、高い弾性・バネ性を有する材料、例えば、グラファイトや強化プラスチックなどで構成されている。一方、配設板22は、図3に示すように、腕金101の軸方向に対して垂直ではなく、上方に行く従って斜め外側(1〜3°)に向くように形成、配設されている。そして、後述するようにして支持棒4の上端部に配設されたテグス5が、図中Aの状態から切断した場合に、図中Bに示すように支持棒4が外側(反腕金101側)に反り返り、これに伴ってテグス5も外側に反り返って、テグス5が電線103に触れないようになっている。
【0020】
また、支持棒4の上端部には、固定具41が取り付けられている。この固定具41は、図4に示すように、略円柱形で、下端面から装着穴41aが形成され、この装着穴41aに支持棒4が圧入・装着されることで、支持棒4に固定具41が取り付けられている。また、固定具41の側面から略円錐形の挿入孔41bが形成され、一方の方向、つまり大口径側からのみテグス5を挿入可能となっている。すなわち、図4(e)に示すように、方向Cからはテグス5を挿入孔41bに挿入できるが、方向Cと逆の方向へはテグス5をスライドさせることができず(挿入孔41bが変形してテグス5に対してクサビとなり)、テグス5を挿入孔41bに挿入して挿入を停止すれば、テグス5が挿入孔41bによって固定される。
【0021】
ここで、図4の固定具41は、図1における右側の固定具41を示し、図1における左側の固定具41は、図4の固定具41とは逆方向からのみテグス5を挿入可能となっている。そして、後述するようにして、固定具41間にテグス5が配設されるようになっている。
【0022】
テグス5は、透明な線状の釣糸で、一端部が第1の取付金具2の支持棒4の上端部に固定され、張られた状態で、他端部が対向する第2の取付金具3の支持棒4の上端部に固定される。具体的には、テグス5の一端部を第1の取付金具2の支持棒4の固定具41の挿入孔41bに、図4(e)の方向Cから挿入する。さらに、テグス5の他端部を第2の取付金具3の支持棒4であって、一端部が挿入された支持棒4に対向する支持棒4の固定具41に、図4(e)の逆方向Cから挿入する。そして、両固定具41から挿出されたテグス5の端部を引っ張ることで、テグス5が張られた状態となり、かつ、テグス5の両端部が両固定具41で固定される。
【0023】
このように、テグス5を固定具41の挿入孔41bに挿入することで、テグス5が互いに対向する支持棒4間に配設されるものである。そして、このような配設状態では、各テグス5が互いに平行で、しかも、腕金101に平行で、電線103に対して略直交している。
【0024】
次に、このような構成の営巣防止装置1の取付方法や作用などについて説明する。
【0025】
営巣防止装置1を取り付けるには、まず、配設板22に支持棒4を配設した状態で、取付金具2、3の開口端から腕金101の端部を挿入し、ボルト21を締め付けて、取付金具2、3を腕金101に取り付ける。この際、腕金101の挿入は、棒体の先端にヤットコ状の工具が付いた間接活線工具で行い、ボルト21の締め付けは、スパナ状の工具が付いた間接活線工具で行う。
【0026】
次に、上記のように、テグス5の両端部を両支持棒4の固定具41の挿入孔41bに挿入することで、互いに対向する支持棒4間にテグス5を配設する。この際、テグス5の挿入孔41bへの挿入は、先端にヤットコ状の工具が付いた間接活線工具で行う。
【0027】
このような取付状態では、図1に示すように、複数のテグス5が腕金101の上方周辺に位置する電線103を覆い、エリアSにはカラスCが侵入できない状態となる。このため、カラスCが腕金101近くの電線103にとまって、枝などの営巣材を腕金101に向けて落として巣を作ることができなくなり、営巣をより効果的に防止することが可能となる。
【0028】
しかも、カラスCなどは、目に見えにくいものが体に接触するのを嫌う性質を有するため、透明なテグス5がカラスCに接触することで、カラスCがエリアSに侵入するのをより効果的に防止することができる。さらに、テグス5によってカラスCの侵入を防止するだけであるため、カラスCに危害・損傷を与えることがない。
【0029】
また、取付金具2、3に腕金101の端部を挿入したり、テグス5を挿入孔41bに挿入したりするだけの単純な作業・操作で、営巣防止装置1を取り付けることができる。この結果、上記のように、間接活線工具1による取付・配設が可能となり、電線103が活線状態であっても、安全に作業を行うことができる。しかも、営巣防止装置1の取付に制限・制約がなく、既設の電柱100にも取り付けることができる。
【0030】
さらに、テグス5が切断した場合には、上記のように支持棒4とテグス5とが反り返り、テグス5が電線103に触れず、しかも、発見されやすくなる。また、このように切断した場合には、固定具41から挿出されたテグス5の端部、例えば、図4(e)において挿入孔41bの右側から突出した端部を、間接活線工具1で把持して引っ張ることで、テグス5を容易、安全に取り除くことができる。
【0031】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、第1の取付金具2と第2の取付金具3とを、それぞれ腕金101の端部に配設しているが、腕金101の取付状態や長さなどに応じて他の位置に配設してもよい。例えば、図5に示すように、第2の取付金具3を腕金101の付け根側に配設してもよい。この場合、第2の取付金具3は、図6に示すように、腕金101を挿入するための貫通孔3aが形成された筒状となり、腕金101の任意の位置に配設でき、配設板32は、本体31の端部上面に設けられる。
【0032】
また、上記の実施の形態では、取付金具2、3と支持棒4とが別体で、支持棒4が着脱自在となっているが、取付金具2、3と支持棒4(取付部と支持部)とを一体的に構成してもよい。同様に、固定具41(挿入孔41b)を支持棒4に一体的に設けてもよい。さらに、支持棒4の上端部にリールを備え、テグス5が切断した場合にテグス5を自動で巻き取ることで、電線103との接触をより確実に防ぐようにしてもよい。また、電柱は電力柱に限らず通信柱であってもよく、同様に、ケーブルは通信線であってもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 営巣防止装置
2 第1の取付金具(第1の取付部)
3 第2の取付金具(第2の取付部)
4 支持棒(第1の支持部、第2の支持部)
41 固定具
41b 挿入孔
5 テグス(線材)
100 電柱
101 腕金(腕部材)
102 碍子
103 電線(ケーブル)
C カラス(鳥類)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電柱に棒状の腕部材が配設され、前記腕部材上にケーブルが支持されている状態において、鳥類が前記腕部材に巣を作るのを防止する営巣防止装置であって、
前記腕部材の一端側に配設される第1の取付部と、
前記腕部材の他端側に配設される第2の取付部と、
棒状で、前記腕部材の軸方向と略垂直な展開面を有する扇の骨のように、前記第1の取付部に配設される複数の第1の支持部と、
棒状で、前記腕部材の軸方向と略垂直な展開面を有する扇の骨のように、前記第2の取付部に配設される複数の第2の支持部と、
線状で、一端部が前記第1の支持部の上端部に固定され、張られた状態で、他端部が前記第1の支持部に対向する前記第2の支持部の上端部に固定される複数の線材と、
を備え、
前記複数の線材が前記腕部材の上方周辺に位置するケーブルを覆うように、前記第1の支持部と第2の支持部とが配設されている、
ことを特徴とする営巣防止装置。
【請求項2】
前記第1の取付部と第2の取付部とは、前記腕部材に差し込むことで前記腕部材に配設可能で、
前記第1の支持部の第2の支持部との上端部に、一方の方向からのみ挿入可能な挿入孔が設けられ、前記線材を前記挿入孔に挿入することで、前記線材が前記第1の支持部と第2の支持部との間に配設される、
ことを特徴とする請求項1に記載の営巣防止装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−48587(P2013−48587A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188663(P2011−188663)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】