説明

嗅覚添加物を含む動物用補助飼料

本発明は、一般的に、動物飼料に関し、とりわけ上記動物飼料への、活性化合物、すなわちアミノ酸またはアミノ酸誘導体、例えばメチオニンの補給に関する。より特には、本発明は、少なくとも1種のアミノ酸若しくはアミノ酸誘導体、並びに少なくとも1種の嗅覚添加物を含む、動物用の補助飼料に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、一般に、動物への給餌に関し、特に、活性化合物、すなわちアミノ酸またはアミノ酸誘導体、例えばメチオニンを用いるこの給餌の補足に関する。本発明は、特に、少なくとも1種のアミノ酸またはアミノ酸誘導体、および少なくとも1種の嗅覚添加物(olfactory additive)を含む、動物用の補助飼料に関する。
【0002】
動物用の補助飼料は、通常の給餌を補うものとして、ある種の化合物の毎日の摂取における不足分を補うために取り込まれることを意図される製品である。例えば、飼育される動物の畜産学的な能力を高めるために、どのようにして、活性化合物を用いて、家畜飼料の不足分を補うかということは一般的に知られている。
【0003】
動物栄養学者の使命は、飼料製造業者および飼育者にとっての期待に合致する、広い範囲の補助飼料を提供することである。従って、様々な活性化合物を合成するための多くの方法が常に開発されつつあり、得られる活性化合物は、好ましくは、1日分単位の飼料(feed ration)に容易に添加することができる形態で出荷される。
【0004】
タンパク質代謝に取り入れられる活性化合物飼料は、必須である。炭化水素が、グリコーゲンとして、脂質がトリグリセリドとして貯蔵されるのに対して、動物のタンパク質代謝における活性化合物、特にアミノ酸の摂取は、生物のタンパク質の再生(その際、活性化合物は、生体内タンパク質合成に活性がある)と、不可欠な窒素含有分子(例えば、カルニチン、クレアチン、またはヌクレオチド)の合成を確実にする。
【0005】
それにも関らず、タンパク質代謝におけるある種の活性化合物、とりわけアミノ酸は、これらを摂取する気にあまりさせない感覚刺激性の(すなわち、感覚器官によって一般的に知覚できる)性質を有する。つまり、ある種の活性化合物は、動物の飼料摂取を減退させるように考えられ、これは、成長能力のはっきりとわかる低下により明白に表される。
【0006】
そこで、多くの調合物および方法が、この問題を解決することを試みている。
【0007】
特に、活性化合物の官能基を変える技術が、開発されている。これらの技術は、実際の活性化合物を、その感覚刺激性を変えるために変化させることを試みている。例えば、これは、出願 EP 0 015 668 の場合であり、この出願は、動物およびヒトの消化器系中に存在するタンパク質分解酵素により消化できるポリアミノ酸に関し、これは、対応する遊離アミノ酸と比べて「より不快でない」匂いを有する。
【0008】
また、ある種の甘味料が、ある活性化合物の苦い後味を抑えるために用いられている。特に、米国特許出願 2002/0193342 は、不快な味を有する少なくとも1種の化合物(アミノ酸、タンパク質加水分解物、および/またはタンパク成分)を含む味覚マスキング組成物を記載しており、ここで、味の点で受け入れることができる最終的な組成物を提供するために、この化合物の不快な味は、スクラロース(スクラロースは、非常に強い甘味力を有する合成甘味料)を添加することによりマスキングされる。組成物が、消費者、すなわち補助食品を購入し、続いてこの補助食品を再び購入する可能性を有する人により摂取されることを目的としているということに注意することは重要である。
【0009】
また、米国特許 4,175,121 は、メチオニンのヒドロキシ類似体に基づき、および味覚マスキング剤、例えばその味覚性が知られている合成糖蜜を含む食品添加物を記載しており、この味覚マスキング剤は、該類似体粒子の周囲に付着してコーティングを形成する。
【0010】
本発明による意図される補助飼料は、動物を対象としている。従って、これらは、人間を対象としている補助食品とは異なる、ある種の特性を有する必要がある。
【0011】
今日、動物用の補助飼料に対するさらなる改善を提供するという、および特に、動物によるそれらの摂取を高めるという問題が課されている。
【0012】
従って、本発明の目的は、特に以前に検討された補助飼料についての欲求を改善するための、先に記載された他の方法を保持することである。
【0013】
本発明の別の目的は、同時に、人間の技術者のために、上記した補助飼料を用いるための条件を改善することである。
【0014】
本発明者等は、活性化合物が、補助飼料中に高い含有量で存在していても、低い含有量の、またはほんの極微量の含有量の嗅覚添加物が、補助飼料中の活性化合物の匂いを中和するということを予想外にも見出した。
【0015】
従って、本発明による、砕かれた固体形態または液体形態の動物用の補助飼料は、補助飼料の50重量%以上の含有量で存在する少なくとも1種の活性化合物、すなわち、アミノ酸またはアミノ酸誘導体を含み、さらに、補助飼料の3重量%以下の含有量で存在する、上記活性化合物の人間により知覚できる匂いを中和する嗅覚添加物を含むことを特徴とする。
【0016】
2つのタイプのアミノ酸は、給餌を通じて提供される必要がある必須アミノ酸(ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、トレオニン、トリプトファン、バリン)と、生物が合成できる必須でないアミノ酸(アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸塩、システイン、グルタミン酸塩、グリシン、プロリン、セリン、チロシン)とに区別される。このような化合物は、「栄養添加物」と呼ばれる。
【0017】
「アミノ酸誘導体」という語は、例えば、アミノ酸の塩、アミド、アルキルおよびアルコールエステル、およびヒドロキシ類似体、並びにそれら自体の誘導体を意味する。
【0018】
情報としてのみであるが、本発明によるアミノ酸誘導体である2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸(以後、HMBまたはメチオニンのヒドロキシ類似体と呼ぶ)が、家畜に給餌するためのメチオニン類似体として用いられることが知られている。これは、液体形態で存在するという利点を有し、このことは、飼料製造会社によるその使用を容易にする。
【0019】
これらは、メチオニンアルキルエステルまたはメチオニンのヒドロキシ類似体であり、そのアルキル鎖は、例えば1〜12個の炭素原子を含有する。アルキル鎖は、分岐しているか、直鎖または環状であってよく、例えばイソブチルまたはtert−ブチルであり得る。
【0020】
本発明の補助飼料は、また、複数種のアミノ酸および/またはアミノ酸誘導体、例えばメチオニンとそのヒドロキシ類似体の混合物を含むことができる。
【0021】
アミノ酸またはアミノ酸誘導体の選択が、血液中のその生物学的利用可能性に結びつくことは確かである。この生物学的利用可能性は、動物の1日分単位の飼料中に導入された活性化合物の量に対する、血液中の活性化合物の率の測定を経る。この測定は、消化期間中の腸における吸収速度、複胃動物の異なる胃の中への食塊(food bolus)の移行、並びに生物により直接的に吸収することができない場合の活性化合物の変質速度(例えば、メチオニンのヒドロキシ類似体の場合)を考慮に入れる。
【0022】
アミノ酸またはアミノ酸誘導体の選択は、動物に対する求められる畜産学的効果に関係する。例えば、受精割合を高めるような、繁殖における有益な効果を得ることが望まれ得る。また、ウシにおける乳体積または乳タンパク質含有量を高めることも所望され得る。動物の成長を高めることが所望され、例えばメチオニン補助飼料は、単胃動物に必要とされ、これは、最適な能力を確実にするためである。
【0023】
上記アミノ酸またはアミノ酸誘導体は、補助飼料に加えられるに適切な形態にある。特に、当然、例えば顆粒、粉末である砕かれた固体形態、あるいは液体形態にあってよく、または懸濁液中または溶液中に存在していてもよい。また、アミノ酸またはアミノ酸誘導体は、例えば反芻動物の第一胃におけるあるpHで生じる酵素による破壊を回避するため、同時に消化管の他の部位におけるアミノ酸またはアミノ酸誘導体の制御された放出を可能にするために、コーティングされた形態にあってもよい。アミノ酸またはアミノ酸誘導体は、徐放錠剤または制御放出錠剤の形態にあってよい。
【0024】
本発明の1つの選択肢によれば、上記の活性化合物は、メチオニン、および2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸である。
【0025】
「動物」という語は、より特には、家畜類を意味し、特に草食動物(中でも食肉用、乳用、チーズ用、および革製品用として育てられるウシ、食肉用、毛織物用およびチーズ用として育てられるヒツジ、ヤギ、ブタ)、ウサギ、家禽(ニワトリ、メンドリ、シチメンチョウ、カモ、ガチョウおよび他の家禽)、水産動物(例えば魚、エビ、カキおよびイガイ)、レジャー用動物およびペット(中でも馬、犬、ネコ)を意味する。ウシあるいはウシ属の動物は、ウシ科の亜科であり、反芻する複胃動物であって、これらは、数種の重要な家畜種(乳用種、肉用種、および混合種)を含む。
【0026】
「嗅覚添加物」とは、他の化合物または組成物に意図的に加えられるいずれもの物質、化合物または組成物を意味し、それらが加えられる化合物あるいは組成物の固有の嗅覚特性を変化させる。この添加物は、栄養価を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよく、並びにそれ自体飼料として消費されてもよいし、されなくてもよい。「嗅覚添加物」という語は、物質のいずれもの混合物、または例えばプラントから得られる、いずれもの分画にも及ぶ。例えば、それは、揮発性の化合物の複合混合物であってもよい。つまり、「嗅覚添加物」とは、匂いの知覚に関するものである。正確には、味覚により知覚される性質または特性に関する「味」という語とは対照的に、鼻により知覚されるもののみに適用される。しかしながら、上記の嗅覚添加物は、匂いに影響を与えると同時に、味にも影響を与えてもよい。「味」または「風味」という語は、味覚器官系を刺激することによって、4つの基本の風味、すなわち酸味、苦味、塩味、甘味のうちの1以上を発現するという製品の性質を限定する。
【0027】
本発明の目的上、「嗅覚添加物」という語は、一般に香りを対象とし、芳香物質、芳香製剤、加工香料、スモーキーな香り、またはそれらの混合物を対象とする。これは、大部分は花植物から得られる自然な香り、またはより安価であるという利点を有する人工的な若しくは合成の香りであってよい。本発明による嗅覚添加物を、1種以上の芳香物質から調合することができる。
【0028】
「芳香」という語は、この芳香が、その味覚特性に加えて嗅覚特性により特徴付けられる場合には、「嗅覚添加物」という総称の下に含まれる。従って、それぞれ匂いの感覚と味の感覚を含む、嗅覚特性および味覚特性の双方を有する芳香は、本発明に適している。それにもかかわらず、本発明によれば、求められる効果は、添加物の嗅覚特性に関するものであるということを明確に述べられる必要がある。しかしながら、嗅覚特性に加えて味覚特性を有する化合物を、「嗅覚添加物」という語の定義の領域から排除してはならない。
【0029】
嗅覚添加物は、適切な物理的プロセスにより、または酵素的プロセス若しくは微生物学的プロセスにより、植物由来または動物由来の材料から、そのまま、または食品を調製する一般的な方法により摂取用に改変されたいずれかの状態で得られる。これは、化学合成により得られてもよいし、または化学的方法により単離されてもよい。最後に、この添加物は、複数成分(これらは、個々に嗅覚特性を必ずしも有する必要はない)の混合物を加熱することにより得ることができる。
【0030】
一般的に、嗅覚添加物は、さらに、動物により摂取されるため、特に、毒性レベルに関しては、適用し得る規制に関して、非常に厳格な制約を満たす必要がある。
【0031】
異なる知覚が、本発明による嗅覚添加物を特徴付け得る。一般的に、トップノート、ボディーノート若しくはミドルノート、およびバックノートが区別される。トップノートは、最初に知覚される嗅覚的な印象であり、これは含まれる揮発性のある種の原材料に由来する。これは、香りの迅速な検知を容易にする。例えば、これは、ラベンダー香料の場合である。2番目に知覚される香りは、ボディーノートであり、これは数時間持続し、例えば木質の香りである。最後に、バックノートは、3番目に知覚される香りである。例としては、これは、バニラおよび琥珀の場合である。
【0032】
本発明による嗅覚添加物を、一連の知覚を考慮に入れることにより選択することができる。
【0033】
本発明によれば、補助飼料は、補助飼料の50重量%以上の含有量で存在する、前記した少なくとも1種の補助飼料を含む。従って、アミノ酸またはアミノ酸誘導体は、補助飼料の重量で、組成の少なくとも半分割合を占める。従って、補助飼料は、主に、アミノ酸またはアミノ酸誘導体に基づく。
【0034】
また、本発明によれば、補助飼料は、補助飼料の3重量%以下の含有量で存在する嗅覚添加物を含む。
【0035】
本発明の1つの選択肢によれば、活性化合物は、上記補助飼料の90重量%以上の含有量で、補助飼料中に存在する。本発明の他の選択肢によれば、上記した嗅覚添加物は、上記補助飼料の1重量%以下の含有量で、好ましくは上記補助飼料の0.01重量%〜1重量%、あるいは0.03重量%〜0.1重量%の含有量で、補助飼料中に存在する。
【0036】
さらに、本発明は、上記嗅覚添加物が、上記活性化合物の匂いを中和することを特徴とする。「中和する」とは、動物および/またはヒトにより知覚できる活性化合物の匂いを消す、あるいは抑えるという働きを意味する。本発明の他の態様によれば、上記嗅覚添加物は、活性化合物の匂いをマスキングする。「マスキング」とは、活性化合物の匂いを消す働きのみでなく、これを、動物および/またはヒトにとって他の好ましい香りまたは受け入れることができる匂いに置き換える働きを意味する。従って、「マスキングする」という動詞は、「中和する」という動詞と比較して、より高い水準にある。本発明によれば、添加物は、活性化合物の不快な匂いを中和し、場合により活性化合物の不快な匂いをマスキングする。
【0037】
さらに、嗅覚添加物は、上記補助飼料に、上記嗅覚添加物を含まない同じ補助飼料の匂いとは異なる匂いを、動物により知覚できる程度で与えることができる。
【0038】
動物における嗅覚添加物の知覚を、それぞれ、嗅覚添加物を含まない補助飼料と、上記嗅覚添加物を含む補助飼料に関する、畜産学的な関心の挙動、例えば強い欲求をはっきりと、または明確に識別することにより認めることができる。
【0039】
動物におけるこのような知覚特性を、例えば、上記した様々な補助飼料を含む試料の消費と、これらを全く含まない試料の消費を比較することから成る消費試験を用いることにより実証することができる。
【0040】
従って、一般的に、試験の目的は、動物集団が、嗅覚添加物(これは、例えば、飼料に対する強い欲求を高めるために用いられる)を加えた活性化合物を含む飼料、および嗅覚添加物を含まない、アミノ酸若しくはアミノ酸誘導体を含む飼料の両者を自由に選べる場合に、この動物集団による消費を比較することである。「強い欲求」とは、この飼料の感覚刺激特性についての知覚に応じて、飼料を取り入れる欲求を意味する。
【0041】
従って、消費試験を、補助飼料の有効性を評価するために用いることができる。
【0042】
試験は、実験目的または他の科学的な目的に用いられる動物の保護に関する、ヨーロッパガイドラインの24.11.86の必要条件を満たす必要がある。
【0043】
嗅覚添加物を含むものと含まないもののいずれもの各補助飼料を、試験品目と呼ぶ。第1段階において、以下の実験プラン、すなわち、試験する動物種、各グループにおける数、続く食餌、食餌と各試験品目の投与期間を決める。試験される異なる試験品目を加えられる基本の飼料を選択することも必要である。この基本飼料は、例えば、トウモロコシ、小麦、エンドウ豆、および大豆を含んでよい。対照実験も検討に含むことができる。このような試験を、例えば、例2〜4において用いる。
【0044】
本発明による補助飼料は、活性化合物、すなわち、アミノ酸若しくはアミノ酸誘導体を補助飼料の50重量%以上の含有量で含み、並びに先に記載した嗅覚添加物を補助飼料の3重量%以下の含有量で含む。本発明による補助飼料は、さらに、他の成分を含んでいてもよい。これに含まれるものとしては、例えばバインダおよび希釈剤、例えば水、を述べることができる。また、数種のアミノ酸および/またはアミノ酸誘導体を含むことができる。
【0045】
上記で説明した通り、アミノ酸またはアミノ酸誘導体を、求められている畜産学的効果(成長、乳、生産等)に従って選択する。また、本発明による補助飼料の全体的な組成は、上記嗅覚添加物の畜産学的効果に依存する。好ましくは、上記嗅覚添加物は、同一の補助飼料であるが、この嗅覚添加物を含まないものと比較して、上記補助飼料に対する強い欲求を高める。
【0046】
本発明の補助飼料は、動物用に意図される。添加物が加えられる補助飼料の匂いは、同じ補助飼料であるが上記嗅覚添加物を含まないものの匂いと比較して、配給が意図される動物によりはっきりと、または明確に知覚できる必要がある。
【0047】
さらに、本発明による補助飼料は、特に、補助飼料または飼料を製造する間に添加物を用いるあらゆる人により取り扱われるので、嗅覚添加物を加える補助飼料の匂いが、人により知覚できる場合に有利である。従って、有利には、本発明による補助飼料は、人により知覚できるような方法で活性化合物の匂いを中和する嗅覚添加物を含む。さらに、この嗅覚添加物は、上記補助飼料に、人により知覚できる匂いであって、上記嗅覚添加物を含まない同じ補助飼料の匂いとは区別できる匂いを与える、すなわち、活性化合物またはそれらの特性に属する匂いを抑制または中和し、またはこの匂いを、人にとって好ましい、または受け入れることができる新しい匂い若しくは他の匂いで置き換える。
【0048】
上記補助飼料は、これらの異なる成分を混合することにより得られる。従って、上記嗅覚添加物と活性化合物を十分に混合する。これらの化合物の双方は、いかなる適当な隔てによっても分けられることはない。異なる芳香性の分子は、互いに接触している。
【0049】
従って、本発明の1つの選択肢によれば、活性化合物と嗅覚添加物を混合し、互いに接触させる。
【0050】
本発明は、また、上記した補助飼料を含む、特に1日分単位の飼料タイプの動物用の飼料に関する。
【0051】
本発明は、さらに、上記した補助飼料が、動物の一日分単位の飼料に加えられていることを特徴とする、飼育される動物に飼料を与えるための方法に関する。
【0052】
本発明は、最終的に、飼育されている動物に飼料を与えるための、並びに場合により、その畜産学的な能力を改善するための、上記した補助飼料の使用に関する。
【0053】
以下の例および図によって、本発明の一部の利点および特徴を示すことができる。
【0054】
例1
2種の化成化合物の硫黄臭をマスキングすることができる、嗅覚添加物の最小濃度を決定することが目的である。
【0055】
選択した嗅覚添加物は、特にバニラタイプのバックノートとフルーツノート(パイナップル等)を有する組成物である。メチオニンのヒドロキシ類似体(活性化合物no.1)は、商標名AT88でAdisseoにより市販されている。メチオニンヒドロキシ類似体イソプロピルエステル(活性化合物no.2)は、商標名MetaSmartでAdisseoにより市販されている。
【0056】
可変の添加物濃度を含む、活性化合物no.1と活性化合物no.2の一連の溶液を調製する。100gの活性化合物no.1または活性化合物no.2を、125mlのフラスコの6つのグラス中に注ぎ入れる。6つのフラスコうちの5つにおいて、以下の量の嗅覚添加物を加えた;0.010g(すなわち、約0.01重量%の嗅覚添加物の溶液);0.030g(すなわち、約0.03重量%の嗅覚添加物の溶液);0.1g(すなわち、約0.1重量%の嗅覚添加物の溶液);0.3g(すなわち、0.3重量%の嗅覚添加物の溶液);および1g(すなわち、約1重量%の嗅覚添加物の溶液)。その後、フラスコに栓をし、手で振る。
【0057】
上記した溶液のヒトにより知覚される匂いの評価を、以下のように行った。すなわち、製品(いずれもの嗅覚添加物を伴う、または伴わない活性化合物)から放たれる匂いの心地よさまたは不快さを、12人から形成される鼻のパネラにより評価する。各人は、3つの基準、すなわち不快、受け入れることができる、心地よい、に従って、自分の知覚を述べる。混合物の6つのフラスコを、機能しているドラフト内部の作業台に置く。フラスコを順々にそれぞれ開け、試験者は、1cm以上、細長い試験紙を混合物中にさっと浸す。この紙を鼻の高さまで持ち上げ、パネラは紙の匂いをすばやく嗅ぎ、3つの基準に従う自分の評価を下す。まず、全く嗅覚添加物を含まない対照フラスコから始めた後、嗅覚添加物の濃度の低い方から順に試験を続ける。パネラの鼻により全ての答えが得られたらすぐに、フラスコに再び栓をし、42℃のオーブン中に、4週間置いておく。期間経過後、製品を室温に戻し、匂いについての新たな評価を、同一のパネラの鼻をにより行う。
【0058】
A.評価の表
表I:活性化合物no.1と異なる濃度の嗅覚添加物の混合物の匂いの評価。
【0059】
++:心地よい
+;受け入れることができる
−:不快である
【表1】

【0060】
表II:活性化合物no.2と異なる濃度の嗅覚添加物の混合物の匂いの評価。
【0061】
++:心地よい
+;受け入れることができる
−:不快である
【表2】

【0062】
B.レスポンス曲線
図IおよびIIを、表IおよびIIからそれぞれ得た。これらは、得られたレスポンスを平均化することにより、各混合物についての容認性を示す。
【0063】
注意:レスポンス++(すなわち、心地よい)は、混合物の各タイプを通じて1回得られたのみであるために、これは、+レスポンス(すなわち、受け入れることができる)として見なす。
【0064】
図1からわかるように、嗅覚添加物を加えることは、活性化合物no.1の匂いの知覚に対する顕著な効果を有する。
【0065】
嗅覚添加物の濃度が0.3g/kgになると、17%のパネラが、混合物の匂いを受け入れることができると感じる。
【0066】
しかしながら、混合量に関らず、匂いが受け入れることができると判断する集団はいなかった(1g/kg〜10g/kg)。
【0067】
パネラのメンバからのコメントにおいて、3g/kgを超えると、添加物の匂いが優勢となるが、混合物を心地よいものとはしないことに留意する。
【0068】
従って、活性化合物no.1の1kgあたり、1gの添加が、活性化合物no.1単独の悪臭の中和を最適化するために推奨される。
【0069】
1ヶ月間40℃で、嗅覚添加物を加えた溶液を熟成させると、異なるレスポンス曲線が得られる。今回は、中和効果が、活性化合物no.1の1kgあたり0.1gの芳香から認められる。33%のパネラが、今回は、製品の匂いを受け入れることができると判断しているためである。1g/kgから、大多数が許容するに至る。10gになると、逆の効果が生まれ、嗅覚添加物の強すぎる匂いが、著しく優勢となる。
【0070】
熟成後、混合物の容認性における改善が存在し、恐らく、活性化合物no.1からの悪臭を放つ揮発性化合物が、分解しているためである。嗅覚添加物は、これらの条件下で非常に安定である。1g/kgについての推奨は、変わらないままである。
【0071】
図IIにより示される通り、嗅覚添加物を加えることは、活性化合物no.2の匂いの知覚に対して顕著な効果を有する。活性化合物no.2についての0.3g/kgの添加から、25%のパネラが、製品の匂いを容認できると判断している。3g/kgの添加で、容認できるというレスポンスについての最適条件に至る(3人中2人)。10g/kgの投与量で、容認性(%)は低下する(あまりにも多い嗅覚添加物は、不快な匂いを与える)。従って、中和効果が効力を有するため、1〜3gの添加が推奨される。
【0072】
改善という意味において、中和剤の効力に対する熟成の同じ効果が、報告される。40℃、1ヶ月後、25%のパネラが、0.3g/kgの添加で、混合物の匂いを容認できると判断している(これに対し、作りたての製品については0%である)。パネラの大多数(58%)が、1g/kgの添加で、混合物を容認できると判断している。3gでは、知覚における差異はなく、10gでは、t=0とt=1ヶ月の間で、容認性における改善が存在する。
【0073】
このことから、嗅覚添加物は、40℃で1ヶ月の貯蔵期間中はいかなる劣化も被ることがなく、活性化合物no.2の悪臭を放つ揮発性化合物は、変質し得るということが推論される。
【0074】
例2
この試験の目的は、メチオニンの同様の供給について、メチオニンヒドロキシ類似体(試験品目no.1)、または1g/kgの嗅覚添加物を加えたメチオニンヒドロキシ類似体(試験品目no.2)を自由に選べる際のニワトリによる7日間の消費を比較することであり、2組に分けて、および飼料D0〜D6(試験品目no.1またはno.2)により提供されるメチオニン源によって比較する。
【0075】
従って、試験品目no.2は、99.9重量%のメチオニンヒドロキシ類似体と0.1重量%の嗅覚添加物を含む。
【0076】
試験品目は、トウモロコシおよび大豆の混合物中に取り込まれ、これを基本飼料として用いる。消費測定は、24時間に渡って行う。
【0077】
実験プランは、以下のものである
【表3】

【0078】
200羽のオスのロス種のヒヨコを選択し、水入れおよび0.3kgの容量を有する給餌器を備えたケージ内に入れる。10羽のヒヨコを、ケージにつき入れる。動物を2つのグループに分け、実験予備期間(すなわち、D0〜D6)中に、試験品目no.1またはno.2を与える。
【0079】
試験段階(すなわち、D7〜D8)の期間、動物は、最初の6日間食べた飼料と、他方の飼料を自由に選択し、これらの飼料のそれぞれは、同じケージの2つの異なる給餌ボウル中に入れる。給餌は、適宜行い、T0+1時間、T0+2時間、T0+4時間、T0+6時間、T0+8時間、T0+10時間、およびT0+24時間における消費量を調べる。さらに、各チェックにおいて、動物が給餌ボウルの配置に慣れてしまうことを防止するために、2つの給餌ボウルを交換する。
【0080】
結果
【表4】

【0081】
注意:同じ文字が続く平均は、5%の閾値で有意に異ならない。
【0082】
示す消費は、ケージ毎、すなわち10羽のニワトリ毎の消費である。この消費は、以下の式を満たす:(期間の最後における給餌器の重さ)−(期間の最初の給餌器の重さ)。
【0083】
平均は、食餌選択につき10ケージ以上で行った。T0+1時間では、試験項目no.2のほうが、試験品目no.1より好まれる。第1の組(食餌AおよびB)すなわち、試験品目no.1に基づいて予備実験的試料供給を受けたヒヨコについては、試験品目no.2の消費が、17.7g(食餌B)であるのに対して、試験品目no.1の消費が、13.4g(食餌A)である。つまり、試験品目no.1と比較して4.3g余分に、すなわち32%多く試験品目no.2を消費した。また第2の組(食餌CおよびD)については、すなわち、試験品目no.2に基づいて予備実験的飼料供給を受けたヒヨコについては、ニワトリは、18.7gの試験品目no.2(飼料D)に対して、14.6gの試験品目no.1(食餌C)を消費した。つまり、ニワトリは、試験品目no.1と比較して4.1g余分に、すなわち28.1%多く試験品目no.2を消費した。異なる時間における消費の確認は、いずれの時間においても、試験品目no.2が、試験品目no.1よりも好まれるということを示す。
【0084】
分散および標準偏差は、ばらつきの指標である。これらは、平均周囲でさほど分散していない値を示し、従って全体的に、一様な系である。つまり、食餌の比較は、動物が、試験品目no.1よりも試験品目no.2を含む飼料を好むということを示す。
【0085】
さらに、D0〜D6の飼料が、試験品目no.2を含む場合に、動物は、24時間に渡って、試験品目no.1よりも試験品目no.2を好むことが報告されていることは興味深い。
【0086】
低い嗅覚添加物含有量、すなわち、試験品目no.2中での0.1重量%が、消費に関しての動物の有意な優先傾向をもたらすことが、十分に示される。嗅覚添加物は、メチオニンヒドロキシ類似体の匂いを、これが99.9重量%の重量で存在していても、中和する。
【0087】
例3
本試験の目的は、メチオニンヒドロキシ類似体を含む飼料(試験品目no.1)、0.5g/kgの嗅覚添加物を加えたメチオニンヒドロキシ類似体を含む飼料(試験品目no.2)、またはメチオニンを含む飼料(試験品目no.3)を自由に選択する際の、シチメンチョウのヒナの6日間の飼料消費を比較することである。従って、試験品目no.2は、99.95%のメチオニンヒドロキシアナログに対して0.05%の嗅覚添加物を含む。試験品目を、トウモロコシおよび大豆の混合物中に取り込み、これを基本飼料として用いる。
【0088】
実験計画は以下の通りである。
【表5】

【0089】
BUT9種の150羽のシチメンチョウのヒナを選択し、水入れおよび約0.3kgの容量を有する2つの給餌器を備えたケージ内に入れる。1ケージにつき5羽のシチメンチョウのヒナを入れる。動物に、予備実験期間(すなわち、D0〜D6、午前8時)に、同一の標準の開始飼料を与える。実験段階(すなわち、D6、午前8時〜午後5時)中に、動物は3つのグループ、A、BおよびCに分けられる。各グループ、および該グループの各ケージについて、動物は、2つの試験品目を自由に選ぶ。例えば、グループAの動物は、試験品目no.3と試験品目no.1間で選択することができる。給餌は、適宜行い、T0+1h、T0+3h、T0+5h、T0+7h、およびT0+9hで消費量を調べる。さらに、各測定時間において、動物が、給餌器の配置に慣れてしまうことを防ぐために、2つの給餌器を交換する。
【0090】
パウダーである試験品目no.3、並びに液体である試験品目no.1およびno.2の間の、活性化合物の供給における差異のため、品目no.1、no.2、およびno.3の取り込み量は異なり、これらは、88%の活性材料を含む。試験品目no.3と、液体試験品目no.1およびno.2で用いた対応因数(correspondence factor)は、1.13である(0.2×1.13=0.23)。
【0091】
結果
【表6】

【0092】
示す消費は、1ケージ毎、すなわち5羽のシチメンチョウのヒナ毎の消費である。該消費は、以下の式を満たす:(期間の終了時の給餌器の重さ)−(期間の最初の給餌器の重さ)。
【0093】
T0+1時間では、試験品目no.2が、試験品目no.3よりも好まれる(グループB)、並びに試験品目no.2が、試験品目no.1よりも好まれる(グループC)ということが報告される。これらの違いは、異なる検査間ずっと高まった。例えば、T0+5時間において、グループAにおける試験品目no.1の消費と試験品目no.3の消費との間の差異は顕著ではないが、グループBは、平均28.1gの試験品目no.2を消費したのに対し、平均22.6gの試験品目no.3を消費した。つまり、シチメンチョウのヒナは、試験項目no.3に対して24%多く試験品目no.2を消費した。また、グループCは、平均26.1gの試験品目no.2を消費したのに対し、平均21.6gの試験品目no.1を消費した。つまり、シチメンチョウのヒナは、試験品目no.1に対して21%多い試験品目no.2を消費した。
【0094】
T0+9時間では、平均は、5%の閾値で有意に異なる。従って、品目no.1(グループC)または品目no.3(グループB)のいずれかと共に自由に選択できる際に、品目no.2(ヒドロキシ類似体+嗅覚添加物)を含む飼料に対する、動物の嗜好(+17%のより多い消費)が現れる。さらに、消費の違いは、試験品目no.1と試験品目no.3(グループA)の選択の場合には、顕著でなかった。
【0095】
最終的に、メチオニンヒドロキシアナログ(試験品目no.2)に嗅覚添加物を加えることは、メチオニンヒドロキシアナログ単独(試験品目no.1)と比較して、動物の非常に強い嗜好(p=0.009)を引き起こす。
【0096】
例4
本試験の目的は、メチオニンヒドロキシ類似体(試験品目no.1)、または0.5g/kgの嗅覚添加物を加えたメチオニンヒドロキシ類似体(試験品目no.2)を自由に選べる際の、7〜8kgの離乳後の子豚の飼料消費量を比較することである。従って、試験品目no.2は、99.95%のメチオニンヒドロキシ類似体に対して0.05%の嗅覚添加物を含む。試験品目を、5%のビート糖液を含む、トウモロコシおよび大豆に基づく基本飼料中に取り込む。
【0097】
実験計画は、以下の通りである。
【表7】

【0098】
4匹の子豚を選択し、2つの給餌器と給水を可能にするピペットを含む個々のケージに入れる。7日間、動物に、トウモロコシと大豆を含み、いずれものさらなるメチオニン源を含まない基本飼料を与える。離乳後の7日目の朝に、動物は、試験品目no.1と試験品目no.2を自由に選択し、それぞれのこれらの試験品目は、同じケージの2つの異なる給餌器に入れられる。消費測定は、第一の接触からT0+3時間、T0+6時間、T0+9時間、T0+24時間で行った。さらに、各測定時間において、ケージの形状によるいかなる習慣を防ぐために、両方の給餌器を入れ替える。
【0099】
結果
【表8】

【0100】
消費の結果は、早期においては非常に可変であるようにみられ、変動係数は、100%よりも大きい。しかしながら、24時間後の選択では、高いが、測定される消費のばらつきは、受け入れられる。得られたばらつきは、低い繰り返し数(わずか4)と、ヒヨコとは異なり24時間一様に飼料を与えるのではなく、より食事時間の形態で飼料を与えるためである。
【0101】
示す消費は、ケージ毎、すなわち1匹の子豚についての消費である。平均は、4ケージ以上で行った。試験品目no.2が、試験品目no.1よりも好まれるという傾向が報告される。実際に、試験品目no.1の消費量は、平均で163.9gであるのに対し、試験品目no.2の消費量は、平均で228.8gである。つまり、子豚は、平均で、試験品目no.1と比較して64.9g多い、すなわち40%より多い試験品目no.2を消費した。
【0102】
嗅覚添加物を加えることにより(試験品目no.2)、子豚に自由に選択させる際に、その受容性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】表1のデータから得られるもの。活性化合物no.1(メチオニンヒドロキシ類似体)の匂いに対する嗅覚添加物の効果を示す。
【図2】表2のデータから得られるもの。活性化合物no.2(メチオニンヒドロキシ類似体イソプロピルエステル)の匂いに対する嗅覚添加物の効果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
砕かれた固体、または液体の動物用の補助飼料であって、前記補助飼料の50重量%以上の含有量で存在する少なくとも1種の活性化合物、すなわちアミノ酸またはアミノ酸誘導体を含み、さらに、前記補助飼料の3重量%以下の含有量で存在する、前記活性化合物の人により知覚できる匂いを中和する嗅覚添加物を含むことを特徴とする補助飼料。
【請求項2】
前記活性化合物と前記嗅覚添加物が、混合され、互いに接触している請求項1に記載の補助飼料。
【請求項3】
前記活性化合物が、前記補助飼料の90重量%以上の含有量で存在する請求項1または2に記載の補助飼料。
【請求項4】
前記嗅覚添加物が、前記補助飼料の1重量%以下の含有量で存在する請求項1〜3のいずれか一項に記載の補助飼料。
【請求項5】
前記嗅覚添加物が、前記補助飼料の0.01〜1重量%の、または0.03〜0.1重量%の含有量で存在することを特徴とする請求項4に記載の補助飼料。
【請求項6】
前記活性化合物が、メチオニンおよび2−ヒドロキシ−4−メチルチオ−酪酸であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の補助飼料。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の補助飼料を含む、動物飼料、特に1日分単位の飼料(feed ration)。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の補助飼料を、前記動物の1日分単位の飼料に加えることを特徴とする飼育される動物に飼料を与えるための方法。
【請求項9】
飼育される動物に飼料を与えるための、請求項1〜6のいずれか一項に記載の補助飼料の使用。
【請求項10】
前記動物の畜産学的能力を高めるための、先行する請求項に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−501355(P2008−501355A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−526494(P2007−526494)
【出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【国際出願番号】PCT/FR2005/001395
【国際公開番号】WO2006/003301
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(504437960)アディッセオ・アイルランド・リミテッド (3)
【Fターム(参考)】