説明

噛合チェーン式昇降装置

【課題】昇降テーブルの位置決めを確実かつ簡便に制御するとともに昇降テーブルの最下降位置を低床化して被昇降物の昇降テーブルに対する搬出搬入作業と昇降機構に対する保守メンテナンス作業を大幅に軽減する噛合チェーン式昇降装置を提供すること。
【解決手段】昇降駆動用噛合チェーン150、150の上端に固着されて一体に昇降する昇降テーブル110と、一対の昇降用スプロケット140、140を駆動する駆動モータ160とを備え、昇降駆動用噛合チェーン150、150の噛み外れて分岐した一方を引き込む収納レール182が昇降テーブル110の最下降位置周辺域に向けて敷設されているとともに、昇降駆動用噛合チェーン150、150の引き込み位置P0,P1,P2,・・・,Pnを検知して駆動モータ160側に送信するチェーン先端検知センサー190が収納レール182に沿って配置されている噛合チェーン式昇降装置100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、各種製造分野の製造設備、運輸分野の移送設備、医療福祉分野の介護設備、芸術分野の舞台設備などに用いて昇降テーブルを設置面に対して平行に昇降動させる昇降装置であって、特に、噛合チェーンを昇降動作の駆動媒体として採用した噛合チェーン式昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、重量物などの被昇降物を昇降する昇降装置として、昇降台を固定基台との平行を保ちつつ昇降させる複数のクロスリンクを電動モータ式ボールねじ機構によって起伏駆動させるように構成したものがある(特許文献1参照)。
また、互いに噛み合って一体的に昇降する噛合チェーン、所謂、チャックチェーンを用いて物体を昇降移動または押し上げを行う昇降装置がある。(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平11−193199号公報(特に、第1頁、図1参照)
【特許文献2】特開平11−278797号公報(特に、第1頁、図1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前者の電動モータ式ボールねじ機構を用いた昇降装置は、複数のクロスリンクを起伏駆動させるように電動モータ式ボールねじ機構を組み込んでいるため、昇降台の昇降動作をクロスリンクの起伏角度との関係で等速かつ迅速に達成できず、昇降高さの調整、変更などがきわめて困難であるという昇降操作上の問題があり、また、この電動モータ式ボールねじ機構が昇降台の真下位置に配置されているため、この電動モータ式ボールねじ機構の高さ寸法分だけ昇降台の下降位置を低くすることができない、すなわち、昇降台を低床化できず、昇降台に対する被昇降物の搬出搬入に多大な作業負担を強いられるという昇降作業上の問題があった。
【0004】
また、後者の噛合チェーンを用いた昇降装置は、荷重支持部材の昇降動作と噛合いチェーンを駆動するモータとの駆動制御が十分に関連付けられていないため、荷重支持部材の昇降操作が各種分野で要求される様々な昇降動作に必ずしも的確に対応してないという問題があり、また、下降する噛合いチェーンを渦巻き状態に引き込むための収納ガイド部が一対のスプロケット近傍にそれぞれ垂直壁状に配置されているため、この一対の垂直案内面と収納ガイド部の高さ寸法分だけ荷重支持部材の下降位置を低くすることができない、すなわち、荷重支持部材を低床化できず、荷重支持部材に対する被昇降物の搬出搬入に多大な作業負担を強いられるという昇降作業上の問題があった。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする技術的課題、すなわち、本発明の目的は、昇降テーブルの位置決めを確実かつ簡便に制御するとともに昇降テーブルの最下降位置を低床化して被昇降物の昇降テーブルに対する搬出搬入作業と昇降機構に対する保守メンテナンス作業を大幅に軽減する噛合チェーン式昇降装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
まず、本請求項1に係る発明は、設置面に対して平行に併置された一対の回転軸を中心に同一面内で相互に対向して反対方向に正逆回転する一対の昇降用スプロケットと、該一対の昇降用スプロケットにより水平方向から垂直方向への偏向駆動直後に相互に噛み合わせて一体に自立状態で上昇するとともに前記一対の昇降用スプロケットにより垂直方向から水平方向へ偏向駆動時に相互に噛み外れて分岐する一対の昇降駆動用噛合チェーンと、該昇降駆動用噛合チェーンの上端に固着されて一体に昇降する昇降テーブルと、前記一対の昇降用スプロケットを駆動制御する駆動モータとを備えている噛合チェーン式昇降装置において、前記昇降駆動用噛合チェーンの噛み外れて分岐した少なくとも一方を引き込む収納レールが前記一対の昇降用スプロケットから昇降テーブルの最下降位置周辺域に向けて敷設されているとともに、前記昇降駆動用噛合チェーンの引き込み位置を検知して駆動モータ側に送信するチェーン先端検知センサーが前記収納レールに沿って配置されていることを特徴とする噛合チェーン式昇降装置。
【0007】
そして、本請求項2に係る発明は、請求項1に係る噛合チェーン式昇降装置において、前記駆動モータが、昇降テーブルの最下降位置周辺域に離間配置されていることにより、前記課題をさらに解決したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の噛合チェーン式昇降装置は、設置面に対して平行に併置された一対の回転軸を中心に同一面内で相互に対向して反対方向に正逆回転する一対の昇降用スプロケットと、該一対の昇降用スプロケットにより水平方向から垂直方向への偏向駆動直後に相互に噛み合わせて一体に自立状態で上昇するとともに前記一対の昇降用スプロケットにより垂直方向から水平方向へ偏向駆動時に相互に噛み外れて分岐する一対の昇降駆動用噛合チェーンと、該昇降駆動用噛合チェーンの上端に固着されて一体に昇降する昇降テーブルと、前記一対の昇降用スプロケットを駆動制御する駆動モータとを備えていることによって、昇降テーブルが昇降位置に関係なく昇降用スプロケットの正逆回転に合わせて昇降制御可能であるため、昇降テーブルの迅速な昇降動作を達成できるとともにチェーン収納手段と駆動部分の高い設計自由度を実現でき、加えて、以下のような特有の構成に対応した格別の効果を奏することができる。
【0009】
すなわち、本請求項1に係る噛合チェーン式昇降装置は、昇降駆動用噛合チェーンの噛み外れて分岐した少なくとも一方を引き込む収納レールが、一対の昇降用スプロケットから昇降テーブルの最下降位置周辺域に向けて敷設されていることにより、従来のような昇降駆動用噛合チェーンの巻き上げによる収納スペースの高さ寸法分に配慮することなく、昇降テーブルの最下降位置を低くすること、すなわち、昇降テーブルの低床化が可能となるため、昇降テーブルに対して被昇降物を搬出搬入する作業負担が大幅に軽減できるとともに、昇降駆動用噛合チェーンの保守メンテナンスを簡便に達成できる。
【0010】
また、昇降駆動用噛合チェーンの引き込み位置を検知して駆動モータ側に送信するチェーン先端検知センサーが収納レールに沿って配置されていることにより、このチェーン先端検知センサーによって検出された収納レール上における昇降駆動用噛合チェーンの水平移動距離が昇降テーブルの昇降移動距離と1対1で対応するため、従来のようなクロスリンクの起伏角度、ボールねじの螺合ピッチなどの影響を受けることなく、昇降テーブルの位置決めを駆動モータ側で確実かつ簡便に駆動制御することができる。
【0011】
そして、本請求項2に係る発明は、請求項1に係る噛合チェーン式昇降装置において、駆動モータが昇降テーブルの最下降位置周辺域に離間配置されていることにより、この駆動モータの高さ寸法分に配慮することなく、昇降テーブルの低床化が可能となるため、昇降テーブルに対して被昇降物を搬出搬入する作業負担が大幅に軽減できるとともに、昇降機構の保守メンテナンスの際に駆動モータが作業障害要因にならず安全且つ簡便なメンテナンス作業が達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の噛合チェーン式昇降装置は、設置面に対して平行に併置された一対の回転軸を中心に同一面内で相互に対向して反対方向に正逆回転する一対の昇降用スプロケットと、これらの一対の昇降用スプロケットにより水平方向から垂直方向への偏向駆動直後に相互に噛み合わせて一体に自立状態で上昇するとともに一対の昇降用スプロケットにより垂直方向から水平方向へ偏向駆動時に相互に噛み外れて分岐する一対の昇降駆動用噛合チェーンと、この昇降駆動用噛合チェーンの上端に固着されて一体に昇降する昇降テーブルと、前記一対の昇降用スプロケットを駆動制御する駆動モータとを備え、昇降駆動用噛合チェーンの噛み外れて分岐した少なくとも一方を引き込む収納レールが一対の昇降用スプロケットから昇降テーブルの最下降位置周辺域に向けて敷設されているとともに、昇降駆動用噛合チェーンの引き込み位置を検知して駆動モータ側に送信するチェーン先端検知センサーが収納レールに沿って配置され、昇降テーブルの位置決めを確実かつ簡便に制御するとともに昇降テーブルの最下降位置を低床化して被昇降物の昇降テーブルに対する搬出搬入作業と昇降機構に対する保守メンテナンス作業を大幅に軽減するものであれば、その具体的な実施の態様は如何なるものであっても何ら構わない。
【0013】
たとえば、本発明の噛合チェーン式昇降装置は、設置面が据え置き設置形態となる床面であっても、吊り下げ設置形態となる天井面であっても昇降動作に何ら支障はなく、さらには、片持ち支持形態となる垂直壁面であっても前述した昇降動作に相当する進退動作に何ら支障はない。
【0014】
また、本発明の噛合チェーン式昇降装置で用いる昇降駆動用噛合チェーンは、所謂、チャックチェーンと称するものであって、一対の昇降用スプロケットにより水平方向から垂直方向への偏向駆動直後に相互に噛み合わせて一体に自立状態で上昇するとともに一対の昇降用スプロケットにより垂直方向から水平方向へ偏向駆動時に相互に噛み外れて分岐するものであれば、その具体的なチェーン形態は如何なるものであっても良く、例えば、ローラを有するもの、ブシュを有するもの、チェーン幅方向に単列であるもの、チェーン幅方向に複列であるもの、あるいは、これらの組み合わせによるものなど何れであっても構わない。
【0015】
そして、本発明の噛合チェーン式昇降装置で用いるチェーン先端検知センサーは、収納レールに沿って配置された状態で昇降駆動用噛合チェーンの引き込み位置を検知して駆動モータ側に送信することができるものであれば、このチェーン先端検知センサーの具体的センサー形態は如何なるものであっても良く、たとえば、接近してくる昇降駆動用噛合チェーンの磁性を検知する磁気式近接センサー、あるいは、接近してくる昇降駆動用噛合チェーンの有無を検知する光電式近接センサーなどの近接センサーを用いるのが好ましい。
また、そのチェーン先端検知センサーの設置数については、少なくとも1ヶ所以上であれば、昇降テーブルの所望する駆動制御パターンに応じて適宜増減しても良い。
【0016】
さらに、本発明の噛合チェーン式昇降装置は、被昇降物を昇降させる昇降テーブルが昇降駆動用噛合チェーンの駆動力によって昇降するものであるが、この昇降テーブルの安定した昇降動作を確保するために昇降テーブルと設置面側との間に昇降補助ガイド手段を介在させることが望ましく、この昇降補助ガイド手段の具体的な形態については、シザーリフタ等に用いられているX字状のパンタアームであっても良く、ガイドポストリフタ等に用いられているテレスコパイプであっても良い。
【0017】
本発明の一実施例を図1乃至図7に基づいて説明する。
ここで、図1は、本発明の第1実施例である噛合チェーン式昇降装置の全体斜視図であり、図2は、図1から昇降テーブルとパンタアームを除いた状態の斜視図であり、図3は、図2に示す昇降駆動用スプロケット近傍の一部拡大図であり、図4は、本実施例で用いた昇降駆動用噛合チェーンの噛み外れ状態を示した図であり、図5は、本実施例である噛合チェーン式昇降装置の最上昇位置を示す側面図であり、図6は、本実施例である噛合チェーン式昇降装置の最下降位置を示す側面図であり、図7は、テーブル昇降位置と昇降駆動用噛合チェーンの引き込み位置との相対関係図である。
【0018】
まず、本発明の第1実施例である噛合チェーン式昇降装置100は、図1に示すように、重量物(図示していない)を搭載する昇降テーブル110を設置面に対して平行に昇降させるために、作業床面に設置したものである。
【0019】
そして、本実施例の噛合チェーン式昇降装置100は、図1乃至図4に示すように、前述した昇降テーブル110が平行に昇降する設置面に据え付けたベースプレート120と、このベースプレート120に対して平行に併置された一対の回転軸130、130を中心に同一面内で相互に対向して反対方向に正逆回転する一対の昇降用スプロケット140、140と、これらの一対の昇降用スプロケット140、140と噛み外れることによって昇降テーブル110を昇降する一対の昇降駆動用噛合チェーン150、150と、この昇降駆動用噛合チェーン150、150の上端に固着されて一体に昇降する前述した昇降テーブル110と、前記一対の昇降用スプロケット140、140を駆動制御する駆動モータ160とを基本的な装置構成として備えている。
【0020】
なお、図1及び図2に示す符号161、161は、駆動モータ160の出力軸側に同軸配置した一対の駆動側スプロケットであり、符号162、162は、駆動側スプロケット161、161から一対の昇降用スプロケット140、140側へ動力伝達するためのローラチェーンからなる一対の動力伝達チェーンであり、図3に示す符号163は、一対の動力伝達チェーン162、162から一方向の回転を変速させるとともに一対の昇降用スプロケット140、140へ相互に反対方向に正逆回転するように動力伝達するための変速ギア群であり、図3に示す符号164は、一対の昇降用スプロケット140、140に対して噛み外れる一対の昇降駆動用噛合チェーン150、150を誘導移動させるためのチェーン誘導プレートである。
【0021】
ここで、前記駆動モータ160は、図1に示すように、昇降テーブル110の最下降位置周辺域、すなわち、昇降テーブル110の投影傘下の領域外に離間配置されている。
【0022】
また、本実施例の噛合チェーン式昇降装置100で用いた一対の昇降駆動用噛合チェーン150、150は、所謂、チャックチェーンと称するものであって、図4で示すように、フック状の内歯プレート151と、この内歯プレート151と半ピッチ分ずらして重なり合うフック状の外歯プレート152と、内歯プレート151同士をチェーン幅方向に連結固定するブシュ153と、このブシュ153に外嵌されるローラ154と、外歯プレート152同士をチェーン幅方向に連結固定する連結ピン155とを用いてそれぞれチェーン幅方向に2列で編成されており、これらの一対の昇降用スプロケット140、140により水平方向から垂直方向への偏向駆動直後に相互に噛み合わせて一体に自立状態で上昇するとともに一対の昇降用スプロケット140、140により垂直方向から水平方向へ偏向駆動時に相互に噛み外れて分岐するようになっている。
【0023】
また、図1に示すように、昇降テーブル110と設置面側のベースプレート120との間にX字状のパンタアームと称するインナーアーム171とアウターアーム172からなる上下2段連結形態の昇降補助ガイド手段170を介在させることにより、昇降テーブル110の安定した昇降動作をガイドするように構成されている。
なお、図1の符号173は、インナーアーム171の下端が昇降動作に応じて摺動するスライドレールであり、符号174は、インナーアーム171の下端に設けられてスライドレール173に沿って摺動するためのスライダーである。
【0024】
そして、相互に噛み外れて分岐した一対の昇降駆動用噛合チェーン150、150の一方は、駆動モータ160側に配置した巻き取り型の収納ボックス181からなるチェーン収納手段180内に収納されるとともに、一対の昇降駆動用噛合チェーン150、150の他方は、駆動モータ160と対向する反対側に配置した直線状の収納レール182からなるチェーン収納手段180内に収納されるように構成されている。
すなわち、これらの収納ボックス181と収納レール182からなるチェーン収納手段180は、一対の昇降用スプロケット140、140から昇降テーブル110の最下降位置周辺域に向けて、換言すると、昇降テーブル110の投影傘下の領域外に離間配置した状態で敷設されている。
なお、図1などにおける符号183は、チェーン収納手段180の敷設されて昇降駆動用噛合チェーン150を保護するための非磁性体からなるレール用安全カバーである。
【0025】
ここで、本発明の第1実施例である噛合チェーン式昇降装置100が最も特徴とする昇降駆動用噛合チェーン150の引き込み位置P0,P1,P2,・・・,Pnを検知して駆動モータ160側に送信するチェーン先端検知センサー190が、図1などに示すように、前述した収納レール182に沿って配置されている。
すなわち、このチェーン先端検知センサー190が、接近してくる昇降駆動用噛合チェーン150の磁性を検知する複数の磁気式近接センサー191から構成されている。
なお、前述した昇降駆動用噛合チェーン150が非磁性体のステンレス鋼(SUS)などで製造されている場合には、この昇降駆動用噛合チェーン150に磁性体からなるストライカーを設けることにより、このストライカーの磁気をチェーン先端検知センサー190で検知して駆動モータ160側に送信することも可能である。
【0026】
また、図2に示す符号192は、磁気式近接センサー191で検知された引き込み位置P0,P1,P2,・・・,Pnの検知信号を駆動モータ160側に送信して駆動制御するための送信配線である。
さらに、この磁気式近接センサー191から送信配線192を介した昇降駆動用噛合チェーン150の引き込み状態に関する検知信号が、コントローラ、モータ制御回路などを経て駆動モータ160側に送信され、次いで、駆動制御された駆動モータ160側の出力により、一対の駆動側スプロケット161、161から一対の動力伝達チェーン162、162を介して一対の昇降用スプロケット140、140へ動力伝達されることは言うまでもない。
したがって、上述した引き込み位置P0,P1,P2,・・・,Pnの検知信号をトリガーにして昇降動作の開始速度と停止速度とこの間の昇降速度を切り替えることも可能であり、また、昇降テーブル110を最下降位置と最上昇位置との間の所定位置に停止させる位置決め機能を発揮することもできる。
【0027】
つぎに、本発明の第1実施例である噛合チェーン式昇降装置100の昇降動作について図5乃至図7に基づいて説明する。
まず、図5に示すように、昇降テーブル110が最上昇位置に向けて上昇する場合は、一対の昇降駆動用噛合チェーン150、150が一対の昇降用スプロケット140、140によって収納ボックス181と収納レール182からなるチェーン収納手段180からそれぞれ繰り出され、この一対の昇降駆動用噛合チェーン150、150が重量物(図示していない)を搭載する昇降テーブル110の全重量を支えながら駆動モータ160の出力に応じて等速かつ迅速に上昇するようになっている。
なお、前述したX字状のパンタアームと称するインナーアーム171とアウターアーム172からなる上下2段連結形態の昇降補助ガイド手段170が、昇降テーブル110の安定した上昇動作をガイドするようになっている。
【0028】
このとき、図7に示すように、収納レール182側における昇降駆動用噛合チェーン150の引き込み位置P0,P1,P2,・・・,Pnを検知して駆動モータ側に送信する複数の磁気式近接センサー191からなるチェーン先端検知センサー190が収納レール182に沿って配置されていることにより、このチェーン先端検知センサー190によって検出された収納レール182上における昇降駆動用噛合チェーン150の水平移動距離X(すなわち、P0からPnまでの水平移動距離)が、上昇する昇降テーブル110の昇降移動距離Yと1対1(X=Y)で対応するため、上昇する昇降テーブル110の位置決めを駆動モータ160側で確実かつ簡便に駆動制御する。
【0029】
一方、図6に示すように、昇降テーブル110を最下降位置に向けて下降させる場合は、一対の昇降駆動用噛合チェーン150、150が一対の昇降用スプロケット140、140によってチェーン収納ボックス181と直線状収納レール182からなるチェーン収納手段180へそれぞれ分岐しながら引き込まれ、この一対の昇降駆動用噛合チェーン150、150が、重量物(図示していない)を搭載する昇降テーブル110の全重量を支えながら駆動モータ160の出力に応じて等速かつ迅速に下降するようになっている。
なお、前述したX字状のインナーアーム171とアウターアーム172からなる上下2段連結形態の昇降補助ガイド手段170が、折り畳まれながら昇降テーブル110の安定した下降動作をガイドするようになっている。
【0030】
このとき、図7に示すように、前述したチェーン先端検知センサー190によって検出された収納レール182上における昇降駆動用噛合チェーン150の水平移動距離(すなわち、PnからP0までの水平移動距離)が、下降する昇降テーブル110の昇降移動距離と1対1(X=Y)で対応するため、下降する昇降テーブル110の位置決めが駆動モータ160側で確実かつ簡便に駆動制御される。
【0031】
以上のように、本発明の第1実施例である噛合チェーン式昇降装置100は、昇降テーブル110の昇降動作を等速かつ迅速に達成できるとともにチェーン収納手段180と駆動モータ160を含めた駆動部分の高い設計自由度を実現でき、加えて、昇降駆動用噛合チェーン150の噛み外れて分岐した少なくとも一方を引き込む収納レール182が、一対の昇降用スプロケット140、140から昇降テーブル110の最下降位置周辺域に向けて敷設されていることにより、従来のような噛合いチェーンの巻き上げによる収納スペースの高さ寸法分に配慮することなく、昇降テーブル110の低床化が可能となるため、昇降テーブル110に対して被昇降物を搬出搬入する作業負担が大幅に軽減できるとともに、昇降駆動用噛合チェーン150の保守メンテナンスを簡便に達成できる。
【0032】
また、昇降駆動用噛合チェーン150の引き込み位置P0,P1,P2,・・・,Pnを検知して駆動モータ160側に送信するチェーン先端検知センサー190が収納レール182に沿って配置されていることにより、このチェーン先端検知センサー190によって検出された収納レール182上における昇降駆動用噛合チェーン150の水平移動距離Xが昇降テーブル110の昇降移動距離Yと1対1(X=Y)で対応するため、従来のようなクロスリンクの起伏角度、ボールねじの螺合ピッチなどの影響を受けることなく、昇降テーブル110の位置決めを駆動モータ160側で確実かつ簡便に駆動制御することができるなど、その効果は甚大である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施例である噛合チェーン式昇降装置の全体斜視図。
【図2】図1から昇降テーブルとパンタアームを除いた状態の斜視図。
【図3】図2に示す昇降駆動用スプロケット近傍の一部拡大図。
【図4】本実施例で用いた昇降駆動用噛合チェーンの噛み外れ状態を示した図。
【図5】本実施例である噛合チェーン式昇降装置の最上昇位置を示す側面図。
【図6】本実施例である噛合チェーン式昇降装置の最下降位置を示す側面図。
【図7】テーブル昇降位置とチェーン引き込み位置との相対関係図。
【符号の説明】
【0034】
100 ・・・噛合チェーン式昇降装置
110 ・・・昇降テーブル
120 ・・・ベースプレート
130 ・・・回転軸
140 ・・・昇降用スプロケット
150 ・・・昇降駆動用噛合チェーン
151 ・・・フック状の内歯プレート
152 ・・・フック状の外歯プレート
153 ・・・ブシュ
154 ・・・ローラ
155 ・・・連結ピン
160 ・・・駆動モータ
161 ・・・駆動側スプロケット
162 ・・・動力伝達チェーン
163 ・・・変速ギア群
164 ・・・チェーン誘導プレート
170 ・・・昇降補助ガイド手段
171 ・・・インナーアーム
172 ・・・アウターアーム
173 ・・・スライドレール
174 ・・・スライダー
180 ・・・チェーン収納手段
181 ・・・巻き取り型の収納ボックス
182 ・・・直線状の収納レール
183 ・・・レール用安全カバー
190 ・・・チェーン先端検知センサー
191 ・・・磁気式近接センサー
192 ・・・送信配線
P0,P1,P2,・・・,Pn ・・・昇降駆動用噛合チェーン150の引き込み位置
X ・・・昇降テーブル110の昇降移動距離
Y ・・・昇降駆動用噛合チェーン150の水平移動距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面に対して平行に併置された一対の回転軸を中心に同一面内で相互に対向して反対方向に正逆回転する一対の昇降用スプロケットと、該一対の昇降用スプロケットにより水平方向から垂直方向への偏向駆動直後に相互に噛み合わせて一体に自立状態で上昇するとともに前記一対の昇降用スプロケットにより垂直方向から水平方向へ偏向駆動時に相互に噛み外れて分岐する一対の昇降駆動用噛合チェーンと、該昇降駆動用噛合チェーンの上端に固着されて一体に昇降する昇降テーブルと、前記一対の昇降用スプロケットを駆動制御する駆動モータとを備えている噛合チェーン式昇降装置において、
前記昇降駆動用噛合チェーンの噛み外れて分岐した少なくとも一方を引き込む収納レールが前記一対の昇降用スプロケットから昇降テーブルの最下降位置周辺域に向けて敷設されているとともに、
前記昇降駆動用噛合チェーンの引き込み位置を検知して駆動モータ側に送信するチェーン先端検知センサーが前記収納レールに沿って配置されていることを特徴とする噛合チェーン式昇降装置。
【請求項2】
前記駆動モータが、前記昇降テーブルの最下降位置周辺域に離間配置されていることを特徴とする請求項1記載の噛合チェーン式昇降装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−1398(P2009−1398A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−165278(P2007−165278)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)