説明

噛合チェーン

【課題】内歯プレート同士および外歯プレート同士の円滑な噛合動作を阻害することなく、相互に噛み合った一対の噛合チェーンの座屈強度を向上するとともに、内歯プレートおよび外歯プレートのプレート成形にかかる作業負担を低減し、しかも、天井面を設置面として設置される吊り下げ設置形態の駆動装置や垂直壁面を設置面として設置される片持ち支持形態の駆動装置等に用いられる際にも相互に噛み合った一対の噛合チェーンのチェーン姿勢を確実に保持する噛合チェーンを提供すること。
【解決手段】内歯プレート110とブシュ120と外歯プレート150と連結ピン160とを備え、座屈規制平坦面111、151が、駆動用スプロケットSにより噛み合って一体化する内歯プレート110同士および外歯プレート150同士をそれぞれ対向させた状態で相互に面接触している噛合チェーン100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種製造分野の製造設備、運輸分野の移送設備、医療福祉分野の介護設備、芸術分野の舞台設備などに用いて被駆動物を設置面に対して平行に進退動させる駆動装置に組み込まれる噛合チェーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動装置として、相互に噛み合って一体的に昇降する一対の噛合チェーン、所謂、チャックチェーンを用いて重量物などの被駆動物を昇降移動させる駆動装置がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この従来の噛合チェーン500では、各リンクプレート550に形成されるフック面552の形状やピン間ピッチおよびブシュ間ピッチ等に関して様々な工夫が考案されてきたものの、フック面552のプレート長手方向の反対側領域に形成されてチェーン噛合姿勢を保持する座屈規制平坦面551に関してはあまり着目されておらず、図9に示すように、一対の噛合チェーン500を相互に噛み合わせた状態で相互に対向する座屈規制平坦面551の間に若干の間隙が生じるようにプレート外形を形成するのが一般的であった。
【特許文献1】特許第3370928号公報(特許請求の範囲、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の噛合チェーン500では、前述したような座屈規制平坦面551間に生じる間隙に起因して、各リンクプレート550のガタつきや相互に対向するリンクプレート550の相互間における座屈規制平坦面551に沿った相対的なズレなどが発生するため、相互に噛み合った一対の噛合チェーン500の剛性が確保できず、一対の噛合チェーン500の座屈強度が低下するという問題が生じていた。
【0005】
そして、このような座屈規制平坦面551間に生じる間隙に起因した一対の噛合チェーン500における座屈強度の低下に関する問題は、特許第3370928号公報に記載されるような床面を設置面として設置される据え置き設置形態の駆動装置で噛合チェーン500を使用する場合には、一対の噛合チェーン500に作用する荷重支持部材や被駆動物などの重量によって座屈規制平坦面551間に生じる間隙を無くして影響を低減できていたものの、天井面を設置面として設置される吊り下げ設置形態の駆動装置や垂直壁面を設置面として設置される片持ち支持形態の駆動装置で噛合チェーン500を使用する場合には、その問題が顕著になっていた。
【0006】
そこで、本発明は、従来の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、内歯プレート同士および外歯プレート同士の円滑な噛合動作を阻害することなく、相互に噛み合った一対の噛合チェーンの座屈強度を向上するとともに、内歯プレートおよび外歯プレートのプレート成形にかかる作業負担を低減し、しかも、天井面を設置面として設置される吊り下げ設置形態の駆動装置や垂直壁面を設置面として設置される片持ち支持形態の駆動装置等に用いられる際にも相互に噛み合った一対の噛合チェーンのチェーン噛合姿勢を確実に保持する噛合チェーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る本発明は、左右一対で離間配置されるフック状の内歯プレートに前後一対のブシュを圧入嵌合してなる内リンクユニットがチェーン幅方向の最も外側に配置されるフック状の外歯プレートの前後一対のピン孔に圧入嵌合する前後一対の連結ピンによりチェーン長手方向に多数連結され、前記ブシュと噛合う一対の駆動用スプロケットにそれぞれ対向配置させて偏向しながら相互に対向する内歯プレート同士および外歯プレート同士をチェーン長手方向に半ピッチずらした状態でそれぞれ噛み合わせて一体化するとともに前記一対の駆動用スプロケットにより偏向しながら内歯プレート同士および外歯プレート同士をそれぞれ噛み外して分岐する噛合チェーンにおいて、前記内歯プレートおよび外歯プレートにそれぞれ形成されてチェーン噛合姿勢を保持する座屈規制平坦面が、前記駆動用スプロケットにより噛み合って一体化する内歯プレート同士および外歯プレート同士をそれぞれ対向させた状態で相互に面接触していることにより、前述した課題を解決したものである。
【0008】
請求項2に係る本発明は、請求項1記載の構成に加えて、前記座屈規制平坦面が相互に干渉して弾性変形しながら面接触するように膨出形成されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0009】
請求項3に係る本発明は、請求項1または請求項2記載の構成に加えて、前記駆動用スプロケットにより相互に凹凸係合するフック状噛合面と湾曲状噛合受面が、前記内歯プレートおよび外歯プレートにそれぞれ形成されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0010】
請求項4に係る本発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の構成に加えて、前記内歯プレート同士および外歯プレート同士の噛合開始時の干渉を回避する干渉回避用間隙を生成する噛合領域が、前記フック状噛合面もしくは湾曲状噛合受面の少なくともいずれか一方に形成されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0011】
そこで、本発明は、左右一対で離間配置されるフック状の内歯プレートに前後一対のブシュを圧入嵌合してなる内リンクユニットがチェーン幅方向の最も外側に配置されるフック状の外歯プレートの前後一対のピン孔に圧入嵌合する前後一対の連結ピンによりチェーン長手方向に多数連結され、ブシュと噛合う一対の駆動用スプロケットにそれぞれ対向配置させて偏向しながら相互に対向する内歯プレート同士および外歯プレート同士をチェーン長手方向に半ピッチずらした状態でそれぞれ噛み合わせて一体化するとともに一対の駆動用スプロケットにより偏向しながら内歯プレート同士および外歯プレート同士をそれぞれ噛み外して分岐することにより、駆動用スプロケットの回転に合わせて被駆動物の進退動作を等速かつ迅速に達成できるばかりでなく、以下のような特有の効果を奏することができる。
【0012】
請求項1に係る本発明の噛合チェーンによれば、内歯プレートおよび外歯プレートにそれぞれ形成される座屈規制平坦面が、駆動用スプロケットにより噛み合って一体化する内歯プレート同士および外歯プレート同士をそれぞれ対向させた状態で相互に面接触していることにより、内歯プレートおよび外歯プレートのガタつきや相互に対向する内歯プレート同士および外歯プレート同士の相互間における座屈規制平坦面に沿った相対的なズレを確実に抑制するため、相互に噛み合った一対の噛合チェーンの剛性を確保して座屈強度を向上できる。
【0013】
特に、天井面を設置面として設置される吊り下げ設置形態の駆動装置や垂直壁面を設置面として設置される片持ち支持形態の駆動装置等に用いる際にも、相互に噛み合った一対の噛合チェーンのチェーン噛合姿勢を一直線状に確実に保持して被駆動物の安定した進退動を実現できる。
【0014】
また、前述したように一対の噛合チェーンの座屈強度が向上することで、噛合チェーンを駆動用スプロケットからより遠い位置にまで安定して進退動させることができるとともに、噛合チェーンが傾斜して噛合チェーンに部分的な過負荷が作用することを回避してチェーン耐久性を向上でき、さらに、チェーンサイズの小型化および軽量化を図ることができる。
【0015】
そして、前述したように内歯プレートおよび外歯プレートのガタつきを抑制することで、チェーン稼動時における駆動騒音の発生を防止でき、また、相互に対向する座屈規制平坦面間の間隙を無くしたことで、チェーン全長を一定に維持して被駆動物の位置決め精度を向上できる。
【0016】
請求項2に係る本発明の噛合チェーンによれば、請求項1記載の噛合チェーンが奏する効果に加えて、座屈規制平坦面が相互に干渉して弾性変形しながら面接触するように膨出形成されていることにより、内歯プレートおよび外歯プレートのプレート外形を高精度に成形することなく相互に対向する座屈規制平坦面が確実に面接触するため、内歯プレートおよび外歯プレートのプレート成形にかかる作業負担を低減できる。
【0017】
請求項3に係る本発明の噛合チェーンによれば、請求項1または請求項2記載の噛合チェーンが奏する効果に加えて、フック状噛合面と湾曲状噛合受面が内歯プレートおよび外歯プレートにそれぞれ形成されていることにより、一対の噛合チェーンを相互に噛み合わせる際にフック状噛合面と湾曲状噛合受面とが相互に凹凸係合するため、内歯プレート同士および外歯プレート同士を確実に噛み合わせて一対の噛合チェーンの剛性を確保することができる。
【0018】
請求項4に係る本発明の噛合チェーンによれば、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の噛合チェーンが奏する効果に加えて、干渉回避用間隙を生成する噛合領域が、フック状噛合面もしくは湾曲状噛合受面の少なくともいずれか一方に形成されていることにより、一対の噛合チェーンの噛合開始時におけるフック状噛合面と湾曲状噛合受面との干渉を回避するため、相互に対向する座屈規制平坦面間の間隙が無くなるように内歯プレートおよび外歯プレートを形成した際にも、内歯プレート同士および外歯プレート同士の円滑かつ確実な噛合動作を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の噛合チェーンは、左右一対で離間配置されるフック状の内歯プレートに前後一対のブシュを圧入嵌合してなる内リンクユニットがチェーン幅方向の最も外側に配置されるフック状の外歯プレートの前後一対のピン孔に圧入嵌合する前後一対の連結ピンによりチェーン長手方向に多数連結され、ブシュと噛合う一対の駆動用スプロケットにそれぞれ対向配置させて偏向しながら相互に対向する内歯プレート同士および外歯プレート同士をチェーン長手方向に半ピッチずらした状態でそれぞれ噛み合わせて一体化するとともに一対の駆動用スプロケットにより偏向しながら内歯プレート同士および外歯プレート同士をそれぞれ噛み外して分岐し、内歯プレートおよび外歯プレートにそれぞれ形成されてチェーン噛合姿勢を保持する座屈規制平坦面が、駆動用スプロケットにより噛み合って一体化する内歯プレート同士および外歯プレート同士をそれぞれ対向させた状態で相互に面接触して、内歯プレート同士および外歯プレート同士の円滑な噛合動作を阻害することなく、相互に噛み合った一対の噛合チェーンの座屈強度を向上するとともに、内歯プレートおよび外歯プレートのプレート成形にかかる作業負担を低減し、しかも、天井面を設置面として設置される吊り下げ設置形態の駆動装置や垂直壁面を設置面として設置される片持ち支持形態の駆動装置等に用いられる際にも相互に噛み合った一対の噛合チェーンのチェーン噛合姿勢を確実に保持するものであれば、その具体的な実施の形態は如何なるものであっても何ら構わない。
【0020】
例えば、本発明の噛合チェーンにおいてチェーン幅方向に並列配置する内リンクユニットの列数は、単列、または、2列や3列などの複列のいずれであっても良く、内リンクユニットがチェーン幅方向に複数配置されている場合には、一対の噛合チェーンの一方を構成する外歯プレートと内歯プレートが、これに対向する他方の噛合チェーンを構成する外歯プレートと内歯プレートに対してチェーン方向の複列に亙ってそれぞれフック状、所謂、チャック状に多重かつ強固に噛み合うので、噛合チェーンのチェーン幅方向に生じがちな座屈を確実に抑制して優れたチェーン耐久性を実現でき、また、チェーン幅方向における駆動用スプロケットとの噛合バランスを向上できる。
【0021】
また、本発明の噛合チェーンで用いる内歯プレート、外歯プレート、および、中間歯プレートの具体的な形状については、相互に対向する同種のプレート同士を相互に噛み合せて一体するとともに相互に噛み外して分岐するものであれば如何なる形状を呈するものであっても良い。
【0022】
また、本発明の噛合チェーンにおいて用いられるブシュは、通常形状のブシュや、内歯プレートに圧入嵌合するプレート側圧入部と該プレート側圧入部より大径のスプロケット噛合部とを一体成形することで得られるブシュなど如何なるものであっても良く、プレート側圧入部とスプロケット噛合部とからなるブシュを採用した場合、スプロケット噛合部の特定された外周面で駆動用スプロケットと安定して接触するため、ローラを用いた場合のように駆動用スプロケットとの噛み合い時に連結ピンもしくはブシュの中心軸に対してローラの中心軸が偏在して駆動用スプロケットとの間で発生しがちな接触振動や接触騒音を防止でき、さらには、ローラを用いた場合と比べて、スプロケット噛合部がブシュと一体に成形されて充分な肉厚を確保できるため、重量物などの被駆動物を駆動する際にかかる負荷に対して高い耐負荷性能を発揮できる。
【0023】
そして、本発明の噛合チェーンが組み込まれる噛合チェーン式駆動装置は、設置面が据え置き設置形態となる床面であっても、吊り下げ設置形態となる天井面であっても昇降動作に何ら支障はなく、さらには、片持ち支持形態となる垂直壁面であっても前述した昇降動作に相当する進退動作に何ら支障はない。
【実施例】
【0024】
以下、本発明の一実施例である噛合チェーン100を図面に基づいて説明する。
ここで、図1は、本発明の一実施例である噛合チェーンを用いた使用態様図であり、図2は、図1から昇降テーブルとパンタアームを除いた状態の斜視図であり、図3は、噛合チェーンを示す一部拡大図であり、図4は、噛合チェーンを示す一部断面図であり、図5は、相互に噛み合った外歯プレートを示す平面図であり、図6は、外歯プレート同士の噛合開始時における状態を示す説明図であり、図7は、外歯プレート同士の噛合途中における状態を示す説明図であり、図8は、外歯プレート同士が噛み合った状態を示す説明図である。
【0025】
まず、本発明の一実施例である噛合チェーン100は、図1に示すように、重量物などの被駆動物(図示しない)を搭載する昇降テーブルTを設置面に対して平行に昇降させるために、作業床面に据え置き状態で設置された噛合チェーン式駆動装置Eに組み込まれて使用されるものである。
【0026】
前述した噛合チェーン式駆動装置Eは、図1および図2に示すように、前述した昇降テーブルTが平行に昇降する設置面に据え付けたベースプレートPと、このベースプレートPに対して平行に併置された一対の回転軸を中心に同一面内で相互に対向して反対方向に正逆回転する一対の駆動用スプロケットSと、これらの一対の駆動用スプロケットSと噛み外れることによって昇降テーブルTを昇降する一対の噛合チェーン100と、この噛合チェーン100の上端に固着されて一体に昇降する前述した昇降テーブルTと、一対の駆動用スプロケットSを駆動する駆動モータMとを基本的な装置構成として備えている。
【0027】
なお、図1および図2に示す符号Dは、駆動モータMの出力軸側に同軸配置した一対の駆動側スプロケットであり、符号Cは、駆動側スプロケットDから一対の駆動用スプロケットS側へ動力伝達するためのローラチェーンからなる一対の動力伝達チェーンであり、符号Gは、一対の動力伝達チェーンCから一方向の回転を変速させるとともに一対の駆動用スプロケットSへ相互に反対方向に正逆回転するように動力伝達するための同期ギア群であり、符号Aは、昇降テーブルTと設置面側のベースプレートPとの間に設置されたX字状のパンタアームと称するインナーアームA1とアウターアームA2とからなる上下2段連結形態の昇降補助ガイド手段であり、符号Rは、インナーアームA1の下端が昇降動作に応じて摺動するスライドレールであり、符号Bは、相互に噛み外して分岐した一対の噛合チェーン100の一方を収納する巻き取り型のチェーン収納ボックスである。
【0028】
また、噛合チェーン式駆動装置Eにおいて一対で用いられる本実施例の噛合チェーン100は、図3および図4に示すように、左右一対で離間配置される内歯プレート110に前後一対のブシュ120を圧入嵌合してなる内リンクユニット130がチェーン幅方向に2枚の中間歯プレート140を介して並列配置されているとともに、内リンクユニット130がチェーン幅方向の最も外側に配置される外歯プレート150の前後一対のピン孔に圧入嵌合する前後一対の連結ピン160によりチェーン長手方向に多数連結されたものである。
そして、ブシュ120の外周には、ローラ170が外嵌されている。
【0029】
そして、本発明の噛合チェーン100は、内リンクユニット130をチェーン幅方向に並列配置したことにより、一対の噛合チェーン100の一方を構成する内歯プレート110と中間歯プレート140と外歯プレート150とが、これに対向する他方の噛合チェーン100を構成する内歯プレート110と中間歯プレート140と外歯プレート150とに対してチェーン方向の複列に亙ってそれぞれフック状、所謂、チャック状に多重かつ強固に噛み合って、噛合チェーン100のチェーン幅方向に生じがちな座屈を確実に抑制し、また、チェーン幅方向における駆動用スプロケットSとの噛合バランスを向上するようになっている。
【0030】
また、一対の噛合チェーン100は、図2および図3に示すように、前述した一対の駆動用スプロケットSにそれぞれ対向配置させて水平方向から垂直方向へ偏向しながら相互に対向する内歯プレート110同士および外歯プレート150同士および中間歯プレート140同士をそれぞれ噛み合せて一体に自立状態で上昇するようになっており、また、前述した一対の駆動用スプロケットSにより垂直方向から水平方向へ偏向しながら内歯プレート110同士および外歯プレート150同士および中間歯プレート140同士をそれぞれ噛み外して分岐するようになっている。
【0031】
そこで、本実施例の噛合チェーン100が最も特徴とする内歯プレート110と中間歯プレート140と外歯プレート150の具体的な形態について図5乃至図8により詳しく説明する。
まず、外歯プレート150は、図5に示すように、対向する他方の外歯プレート150側に向けてプレート基端部から延出する座屈規制平坦面151と、この座屈規制平坦面151のプレート長手方向の反対側領域に形成されるフック状噛合面152と、このフック状噛合面152とプレート基端部との股間領域に形成される湾曲状噛合受面153とを有している。
【0032】
前述した座屈規制平坦面151は、図5に示すように、相互に対向する一対の噛合チェーン100同士を噛み合わせる際に、外歯プレート150aに形成された座屈規制平坦面151aが前記外歯プレート150aに対向して先行する外歯プレート150bに形成された座屈規制平坦面151bに面接触してチェーン噛合姿勢を保持するようになっている。
【0033】
また、この座屈規制平坦面151は、図5に示すように、座屈規制平坦面151aと座屈規制平坦面151bとが面接触する際に、これら座屈規制平坦面151a、151bが相互に干渉して弾性変形するように膨出形成されている。
なお、図9に示す仮想線は、従来の噛合チェーン500の外歯プレート550に形成された座屈規制平坦面551の外形を示している。
【0034】
前述したフック状噛合面152と湾曲状噛合受面153は、図5に示すように、相互に対向する一対の噛合チェーン100同士を噛み合わせる際に、外歯プレート150aに形成されたフック状噛合面152aおよび湾曲状噛合受面153aが、前記外歯プレート150aに対向して後続する外歯プレート150cに形成されたフック状噛合面152cおよび湾曲状噛合受面153cに凹凸係合してチェーン噛合姿勢を保持するように設計されている。
【0035】
また、このフック状噛合面152の噛合領域は、図5に示すように、外歯プレート150aと外歯プレート150cとが相互に噛み合う際に、外歯プレート150aに形成されたフック状噛合面152aと外歯プレート150cに形成された湾曲状噛合受面153cのプレート基端部側領域との接触を回避するとともに、外歯プレート150cに形成されたフック状噛合面152cと外歯プレート150aに形成された湾曲状噛合受面153aのプレート基端部側領域との接触を回避するように形成されており、その結果、噛合開始時の外歯プレート150aと外歯プレート150cとの間における干渉を回避する干渉回避用間隙Oが生成されて円滑かつ確実な噛合動作を実現するように設定されている。
【0036】
そして、内歯プレート110と中間歯プレート140は、前述した外歯プレート150と同様に形成されており、座屈規制平坦面111、141とフック状噛合面112、142と湾曲状噛合受面113、143とをそれぞれ備えている。
【0037】
次に、一対の噛合チェーン100の噛合時における外歯プレート150の動作について図6乃至図8に基づいて説明する。
まず、図6に示すように、外歯プレート150aと外歯プレート150cとは、チェーン進行方向前方に圧入嵌合された連結ピン160を中心として相互に噛み外れた状態から接近する方向にそれぞれ回動する。
つぎに、図7に示すように、外歯プレート150aと外歯プレート150cとは、それぞれのフック状噛合面152a、152cおよび湾曲状噛合受面153a、153cを摺接させて相互に噛み合いながら接近する。
つぎに、図8に示すように、外歯プレート150aは、座屈規制平坦面151aを外歯プレート150bに形成された座屈規制平坦面151bに面接触させることで位置決めされ、また、外歯プレート150aと外歯プレート150cとは、それぞれのフック状噛合面152a、152cおよび湾曲状噛合受面153a、153cを凹凸係合させることで相互に噛み合う。
【0038】
そして、内歯プレート110と中間歯プレート140は、前述した外歯プレート150と同様に作動するようになっている。
【0039】
このようにして得られた本実施例の噛合チェーン100は、内歯プレート110および中間歯プレート140および外歯プレート150にそれぞれ形成される座屈規制平坦面111、141、151が、駆動用スプロケットSにより相互に噛み合って一体化する内歯プレート110同士および中間歯プレート140同士および外歯プレート150同士をそれぞれ対向させた状態で相互に面接触している。
したがって、内歯プレート110および中間歯プレート140および外歯プレート150のガタつきや相互に対向する内歯プレート110同士および中間歯プレート140同士および外歯プレート150同士の相互間における座屈規制平坦面111、141、151に沿った相対的なズレを確実に抑制するため、相互に噛み合った一対の噛合チェーン100の剛性を確保して座屈強度を向上できる。
【0040】
特に、天井面を設置面として設置される吊り下げ設置形態の駆動装置や垂直壁面を設置面として設置される片持ち支持形態の駆動装置等に用いる際にも、相互に噛み合った一対の噛合チェーン100のチェーン噛合姿勢を一直線状に確実に保持して被駆動物の安定した進退動を実現できる。
【0041】
また、前述したように一対の噛合チェーン100の座屈強度が向上することで、噛合チェーン100を駆動用スプロケットSからより遠い位置にまで安定して進退動させることができるとともに、噛合チェーン100が傾斜して噛合チェーン100に部分的な過負荷が作用することを回避してチェーン耐久性を向上でき、さらに、チェーンサイズの小型化および軽量化を図ることができる。
【0042】
そして、前述したように内歯プレート110および中間歯プレート140および外歯プレート150のガタつきを抑制することで、チェーン稼動時における駆動騒音の発生を防止でき、また、相互に対向する座屈規制平坦面111、141、151間の間隙を無くしたことで、チェーン全長を一定に維持して被駆動物の位置決め精度を向上できる。
【0043】
また、相互に対向する座屈規制平坦面111、141、151同士が、相互に干渉して弾性変形しながら面接触するように膨出形成されている。
したがって、内歯プレート110および中間歯プレート140および外歯プレート150のプレート外形を高精度に成形することなく相互に対向する座屈規制平坦面111、141、151同士が確実に面接触するため、内歯プレート110および中間歯プレート140および外歯プレート150のプレート成形にかかる作業負担を低減できる。
【0044】
また、フック状噛合面112、142、152と湾曲状噛合受面113、143、153が、内歯プレート110および中間歯プレート140および外歯プレート150にそれぞれ形成されている。
したがって、一対の噛合チェーン100を相互に噛み合わせる際にフック状噛合面112、142、152と湾曲状噛合受面113、143、153とが相互に凹凸係合するため、内歯プレート110同士および中間歯プレート140同士および外歯プレート150同士を確実に噛み合わせて一対の噛合チェーン100の剛性を確保できる。
【0045】
そして、干渉回避用間隙Oを生成する噛合領域が、フック状噛合面112、142、152に形成されている。
したがって、一対の噛合チェーン100の噛合開始時におけるフック状噛合面112、142、152と湾曲状噛合受面113、143、153との干渉を回避するため、相互に対向する座屈規制平坦面111、141、151間の間隙が無くなるように内歯プレート110および中間歯プレート140および外歯プレート150を形成した際にも、内歯プレート110同士および中間歯プレート140同士および外歯プレート150同士の円滑かつ確実な噛合動作を確保できるなど、その効果は甚大である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施例である噛合チェーンを用いた使用態様図。
【図2】図1から昇降テーブルとパンタアームを除いた状態の斜視図。
【図3】噛合チェーンを示す一部拡大図。
【図4】噛合チェーンを示す一部断面図。
【図5】相互に噛み合った外歯プレートを示す平面図。
【図6】外歯プレート同士の噛合開始時における状態を示す説明図。
【図7】外歯プレート同士の噛合途中における状態を示す説明図。
【図8】外歯プレート同士が噛み合った状態を示す説明図。
【図9】従来の噛合チェーンを構成する外歯プレートの噛合状態を示す平面図。
【符号の説明】
【0047】
100 ・・・ 噛合チェーン
110 ・・・ 内歯プレート
111 ・・・ 座屈規制平坦面
112 ・・・ フック状噛合面
113 ・・・ 湾曲状噛合受面
120 ・・・ ブシュ
130 ・・・ 内リンクユニット
140 ・・・ 中間歯プレート
141 ・・・ 座屈規制平坦面
142 ・・・ フック状噛合面
143 ・・・ 湾曲状噛合受面
150 ・・・ 外歯プレート
151 ・・・ 座屈規制平坦面
152 ・・・ フック状噛合面
153 ・・・ 湾曲状噛合受面
160 ・・・ 連結ピン
170 ・・・ ローラ
O ・・・ 干渉回避用間隙
E ・・・ 噛合チェーン式駆動装置
S ・・・ 駆動用スプロケット
T ・・・ 昇降テーブル
P ・・・ ベースプレート
M ・・・ 駆動モータ
D ・・・ 駆動側スプロケット
C ・・・ 動力伝達チェーン
G ・・・ 同期ギア群
A ・・・ 昇降補助ガイド手段
A1 ・・・ インナーアーム
A2 ・・・ アウターアーム
R ・・・ スライドレール
B ・・・ チェーン収納ボックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対で離間配置されるフック状の内歯プレートに前後一対のブシュを圧入嵌合してなる内リンクユニットがチェーン幅方向の最も外側に配置されるフック状の外歯プレートの前後一対のピン孔に圧入嵌合する前後一対の連結ピンによりチェーン長手方向に多数連結され、前記ブシュと噛合う一対の駆動用スプロケットにそれぞれ対向配置させて偏向しながら相互に対向する内歯プレート同士および外歯プレート同士をチェーン長手方向に半ピッチずらした状態でそれぞれ噛み合わせて一体化するとともに前記一対の駆動用スプロケットにより偏向しながら内歯プレート同士および外歯プレート同士をそれぞれ噛み外して分岐する噛合チェーンにおいて、
前記内歯プレートおよび外歯プレートにそれぞれ形成されてチェーン噛合姿勢を保持する座屈規制平坦面が、前記駆動用スプロケットにより噛み合って一体化する内歯プレート同士および外歯プレート同士をそれぞれ対向させた状態で相互に面接触していることを特徴とする噛合チェーン。
【請求項2】
前記座屈規制平坦面が、相互に干渉して弾性変形しながら面接触するように膨出形成されていることを特徴とする請求項1記載の噛合チェーン。
【請求項3】
前記駆動用スプロケットにより相互に凹凸係合するフック状噛合面と湾曲状噛合受面が、前記内歯プレートおよび外歯プレートにそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の噛合チェーン。
【請求項4】
前記内歯プレート同士および外歯プレート同士の噛合開始時の干渉を回避する干渉回避用間隙を生成する噛合領域が、前記フック状噛合面もしくは湾曲状噛合受面の少なくともいずれか一方に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の噛合チェーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−54005(P2010−54005A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221677(P2008−221677)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)