説明

噴射器用カバー

【課題】噴射器に容易且つ確実に取り付けることができ、製造時に用紙の無駄が生じることのない噴射器用カバーを提供する。
【解決手段】噴射器用カバーにおいて、噴射器50のヘッド部の両サイドを覆う一対の側面板20、30と、それらを互いに連結する連結板40と、側面板20、30に切り込みを設けることにより形成された前後方向に延伸する一対の舌片23、33と、舌片23、33の先端部の上縁及び下端にそれぞれ設けられた上方突出部24、34及び下方突出部25、35とを設け、各舌片23、33を側面板20、30の裏側に折り込んでその先端部を噴射器50の上側レバー51と下側レバー52の間に位置させ、上方突出部24、34及び下方突出部25、35をそれぞれ上側レバー51の下面と下側レバー52の上面に設けられた凹部に係合させることで噴霧器50のヘッド部に係止可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火器のような上下一対の操作レバーを備えた噴射器のヘッド部に取り付けられるカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に消火器は、消火用の薬剤を収容するための本体容器と、前記薬剤を噴射するためのヘッド部から構成されており、該ヘッド部は、前記本体容器の上端開口に取り付けられたバルブと、該バルブに連結された薬剤噴出用のホースと、前記バルブを開閉するための上下一対の操作レバーと、該操作レバーの誤作動を防止するための安全栓(安全ピン)とを含んでいる。前記一対の操作レバーの内、上側のレバーはヘッド部に設けられた支軸によって回動可能な可動レバーであり、下側のレバーはヘッド部に回動不能に固定された固定レバーである。そして、ユーザがヘッド部から安全栓を抜き取った上で前記二本の操作レバーを握ることにより、上側のレバーが下側レバーに接近するように回動し、これによってバルブが開放されてホースの先端に設けられたノズルから薬剤が噴射される。
【0003】
通常、こうした消火器は、流通時に傷等が付かないよう、段ボール箱などの梱包箱に1個又は複数個ずつ収容した状態で出荷及び搬送される(例えば、特許文献1等を参照)。また、梱包箱への収納時や梱包箱からの取り出し時などに作業者が誤って安全栓を抜き取ったり、操作レバーを握ったりすることがないよう、更に、前記ヘッド部に段ボール紙等から成るカバーが取り付けられる場合がある。
【0004】
従来、こうしたカバーは、図4に示すような帯状の形状を有しており、図5に示すように折り曲げられて消火器70のヘッド部を取り囲むようにして取り付けられる。また、このときカバー60の一端側に設けられた係止片61を他端側に設けられた係止穴62に係合させることによりカバー60の両端が互いに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-238974号公報([0002])
【発明の概要】
【0006】
しかしながら、上記従来のカバーは、消火器のヘッド部に取り付けた状態において図5のように単純な筒型の形状を成すものであるため、上方に引っぱることで容易に外れてしまうという問題があった。なお、粘着テープ等を使ってカバーをヘッド部に貼りつければカバーの不用意な脱落を防止することができるが、カバーの取り外しが困難になるという問題がある。また、図4に示すように係止片61がカバー60の一辺から突出しているため、紙取りが悪く、製造時に用紙の無駄が生じるという問題もあった。
【0007】
本発明はこのような問題に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、消火器等の噴射器のヘッド部に取り付けられるカバーであって、着脱が容易であり、且つ噴射器の流通過程等において不用意に外れてしまうことがなく、更に製造時に用紙の無駄が生じることのないカバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために成された本発明に係る噴射器用カバーは、
本体容器と、該本体容器の上部に設けられ該本体容器の内容物を噴射させるためのヘッド部と、該ヘッド部に設けられた上下一対の操作レバーとを備えた噴射器の前記ヘッド部に取り付けられるカバーであって、
a) 前記ヘッド部の両サイドを覆う一対の側面板と、
b) 前記一対の側面板を互いに連結する連結部と、
c) 前記一対の側面板のそれぞれに切り込みを設けることにより形成された前後方向に延伸する一対の舌片と、
d) 前記各舌片の先端部の上縁に設けられた上方突出部と、
e) 前記各舌片の先端部の下縁に設けられた下方突出部と、
を備え、前記各舌片を前記一対の側面板で挟まれた空間に折り込んでその先端部を前記噴射器の上側の操作レバーと下側の操作レバーの間に位置させ、前記上方突出部を前記上側の操作レバーの下面に設けられた凹部と係合させると共に、前記下方突出部を前記下側の操作レバーの上面に設けられた凹部と係合させることによって前記噴霧器のヘッド部に係止されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
上記の通り、発明に係る噴射器用カバーは、前記側面板をヘッド部の両サイドに配置すると共に、舌片を折り込んでその先端部に設けられた上方突出片と下方突出片を操作レバーに係合させることにより、容易且つ確実に噴射器に取り付けることができる。また、取り付けに粘着テープ等を使用しないため噴射器からの取り外しも容易である。また更に、前記舌片は側面板に切り込みを設けることによって形成されるため、従来のようにカバーの外周を突出させて係止片を形成する必要がなく、製造時における用紙の無駄を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本件発明の一実施例に係る消火器用カバーの展開図。
【図2】上記消火器用カバーの消火器への取り付け方法を説明する斜視図。
【図3】上記消火器用カバーを消火器に取り付けた状態を示す図であって、(a)が上面図、(b)が側面図である。
【図4】従来の消火器用カバーの展開図。
【図5】従来の消火器用カバーを消火器に取り付けた状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について図1〜3を参照しつつ説明する。図1は本発明の一実施例による消火器用カバーの展開図であり、図2は前記カバーの取り付け方法を説明する斜視図である。図3は前記カバーを消火器に取り付けた状態を示す図であり、(a)は上面図、(b)は側面図である。なお、図3(b)では、説明の便宜上、操作レバーの一部を透視して示している。
【0012】
本実施例に係る消火器用カバー10は、消火器50のヘッド部に取り付けられるものであり、ヘッド部の左右側面を被覆する第1側面板20及び第2側面板30と、ヘッド部の前面を被覆する1枚の連結板40(本発明における連結部に相当)で構成される。なお、以下の説明では、本実施例の消火器用カバー10を消火器50に取り付けた状態を基準とし、該消火器50に設けられた上下一対の操作レバー51、52の間隔が狭い方(即ち図3中の左側)を前方、広い方を後方として、前後、上下、左右を定義する。
【0013】
本実施例に係る消火器用カバーは、図1に示すような一枚のブランクシートを折り曲げることにより形成される。以下、このブランクシートにおいて、消火器50に取り付けた際に該消火器50のヘッド部と対向する面を裏面、逆側の面を主面と呼ぶ。前記ブランクシートは矩形に打ち抜かれた段ボール板から成り、互いに平行な二本の折り線11、12によって縦方向に三分割されている。この三分割の区間の各々が、前記の第1側面板20、第2側面板30、及び連結板40に相当する。
【0014】
第1側面板20及び第2側面板30には、前記折り線11、12に平行な折り線21、31と、略コの字型の切り込み線22、32とで囲まれた舌片23、33がそれぞれ形成されている。これらの舌片23、33は、その先端を連結板40の側に向けて前後方向(図1中の左右方向)に延伸しており、折り線21、31によりブランクシートの裏面側に折り込むことができるようになっている。
【0015】
また、前記各舌片23、33の先端部の上縁には上方向に突出する上方突出部24、34がそれぞれ形成され、前記各舌片23、33の先端部の下縁には下方向に突出する下方突出部25、35がそれぞれ形成されている。なお、これらの上方突出部24、34は切り込み線22、32を舌片23、33の先端部において上方に膨出させることにより形成され、下方突出部25、35は、切り込み線22、32を舌片23、33の先端部において下方に膨出させることにより形成される。
【0016】
一般に、消火器50に設けられた一対の操作レバーの内、上側レバー51は、その左右の側縁部が下方へと折り曲げられ、下側レバー52はその左右の側縁部が上方へと折り曲げられている。即ち、上側レバー51の下面、及び下側レバー52の上面はそれぞれ各レバーの長さ方向に延伸する溝状の凹部を有している。前記の上方突出部24、34及び下方突出部25、35は、これらの凹部と係合するものである。
【0017】
また、第1側面板20及び第2側面板30の下辺には、円弧状の切り欠きから成る指掛け部26、36が設けられている。この指掛け部26、36は、図3(b)に示すように、本実施例の消火器用カバー10を消火器50のヘッド部に取り付けた際に下側レバー52の下方に位置するものであり、該指掛け部26、36を介して下側レバー52の下面に手を掛けることができるように構成されている。これにより、消火器50の流通時において作業者が消火器用カバー10を消火器50に取り付けた状態で下側レバー52を下方から支持することが可能となる。なお、上述のように消火器50の下側レバー52は固定レバー(即ち、回動しないレバー)であり、仮に安全栓55を取り外した状態で下側レバー52に手を掛けても消火器50が誤作動するおそれはない。
【0018】
更に、第1側面板20の下辺には、矩形の切り欠きから成るゲージ挿通部27が設けられている。該ゲージ挿通部27は、消火器に設けられた圧力ゲージ53を消火器用カバー10の外部に露出させるためのものである。
【0019】
連結板40には、消火器50のヘッド部から延出する消火剤噴射用のホース54を通すためのホース穴41と、連結板40の下辺からホース穴41へと至る切り込み線42が形成されている。
【0020】
上記の折り線11、12、21、31は、消火器用カバー10の組み立て時には全て山折りされる。なお、ここで山折りとはブランクシートの主面側から見た状態を基準とする。なお、これらの折り線には、予めプレス加工及び/又はミシン目加工が施され、容易に折り曲げることができるようになっている。また、消火器50への取り付け時において舌片23、33の先端を容易に消火器50の上側レバー51と下側レバー52の間に挿入できるよう、舌片23、33にはそれぞれ図1に示すような折り線28、29、38、39を設けることが望ましい。これらの折り線28、29、38、39は組み立て時に谷折りされる。
【0021】
本実施例に係る消火器用カバー10を消火器50のヘッド部に取り付ける際には、まず、圧力ゲージ53の支軸を第1側面板20に設けられたゲージ挿通部27に挿通して第1側面板20をヘッド部の左側方に位置させる。続いて、折り線11でブランクシートを直角に折り曲げて連結板40をヘッド部の前方に配置し、ホース54を連結板40に設けられた切り込み線42を介してホース穴41に挿通させる。次に、第1側面板20に設けられた舌片23を内側に折り込み、該舌片23の先端を前方に向けた状態で、上方突出部24及び下方突出部25をそれぞれ上側レバー51の下面の凹部、及び下側レバー52の上面の凹部に係合させる。
【0022】
続いて、折り線12でブランクシートを直角に折り曲げて第2側面板30をヘッド部の右側方に位置させる。そして、第2側面板30に設けられた舌片33を内側に折り込み、該舌片33の先端を前方に向けた状態で、上方突出部34及び下方突出部35をそれぞれ上側レバー51の下面の凹部、及び下側レバー52の上面の凹部に係合させる。
【0023】
このように、本実施例に係る消火器用カバー10は、舌片23、33を内側に折り曲げて該舌片23、33に設けられた上方突出部24、34と下方突出部25、35を消火器50の上側レバー51及び下側レバー52に係合させることによって消火器50に固定することができる。そのため、消火器との固定のために粘着剤等を使用する必要がなく、容易に着脱することができる。また、本実施例に係る消火器用カバー10を消火器50に取り付けた状態では、前記舌片23、33によって該カバー10の上下方向及び前方への移動が規制され、更に連結板40によって該カバー10の後方への移動が規制される。そのため、消火器用カバー10を引っ張っても不用意に外れることがなく、消火器50の流通段階における誤操作を確実に防止することができる。
【0024】
また、上記のように前記舌片23、33によって消火器50の操作レバー51、52に固定可能な構成としたことにより、上述した従来の消火器カバーのようにヘッド部の四方を囲む形状とする必要がないため、用紙の使用量を抑えることができる。更に、前記舌片23、33は第1側面板20及び第2側面板30に切り込み線を設けることにより形成することができるため、上記従来の消火器用カバーのように、カバーの両端部を互いに固定するための係止部をカバーの一辺から突出させる場合に比べて紙取りが良く、用紙の無駄を抑えることができる。また更に、本実施例に係る消火器用カバー10によれば、舌片23、33を内側に折り込んだ際に第1側面板20及び第2側面板30の中央部に形成される開口部を介して、ユーザが消火器50の上側レバー51の下部に手を掛けることも可能である。そのため、該カバーを消火器50に取り付けた状態で消火器50を段ボール箱などの梱包箱に収納したり、該梱包箱から消火器50を取り出したりする際の取り扱いが容易になるという効果も得られる。なお、消火器50の上側レバー51は可動レバーであるが、上述のように、該レバー51が下側レバー52に接近するように回動した場合(即ち、上側レバー51が押し下げられた場合)に消火器50から薬剤が噴射される構成となっている。従って、仮に安全栓55が外れた状態で、ユーザが上側レバー51を下方から支持したとしても消火器50が誤作動するおそれはない。
【0025】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明を行ったが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲で種々の変更が許容されるものである。
【0026】
例えば、本発明に係る噴射器用カバーを形成する素材は、弾性を有するシート状の素材であればよく、上記の段ボール紙の他、例えば、厚紙、厚手のプラスチックシート、又はプラスチック段ボール等を用いることもできる。
【0027】
また、前記実施例では本発明における連結部を平板状の部材(即ち、連結板40)としたが、これに限らず、例えば、連結部の一部又は全体を湾曲形状とすることもできる。
【0028】
また更に、上記では消火器用カバーを例に挙げて説明を行ったが、本発明に係る噴射器用カバーは、上下一対の操作レバーを有し、上側レバーの下面と下側レバーの上面に凹部を有する噴射器であれば、消火器以外のものにも適用することができる。
【符号の説明】
【0029】
10、60…消火器用カバー
20…第1側面板
30…第2側面板
23、33…舌片
24、34…上方突出部
25、35…下方突出部
26、36…手掛け部
27…ゲージ挿通部
40…連結板
41…ホース穴
50、70…消火器
51…上側レバー
52…下側レバー
53…圧力ゲージ
54…ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体容器と、該本体容器の上部に設けられ該本体容器の内容物を噴射させるためのヘッド部と、該ヘッド部に設けられた上下一対の操作レバーとを備えた噴射器の前記ヘッド部に取り付けられるカバーであって、
a) 前記ヘッド部の両サイドを覆う一対の側面板と、
b) 前記一対の側面板を互いに連結する連結部と、
c) 前記一対の側面板のそれぞれに切り込みを設けることにより形成された前後方向に延伸する一対の舌片と、
d) 前記各舌片の先端部の上縁に設けられた上方突出部と、
e) 前記各舌片の先端部の下縁に設けられた下方突出部と、
を備え、前記各舌片を前記一対の側面板で挟まれた空間に折り込んでその先端部を前記噴射器の上側の操作レバーと下側の操作レバーの間に位置させ、前記上方突出部を前記上側の操作レバーの下面に設けられた凹部と係合させると共に、前記下方突出部を前記下側の操作レバーの上面に設けられた凹部と係合させることによって前記噴霧器のヘッド部に係止されることを特徴とする噴射器用カバー。
【請求項2】
前記各側面板がその下辺に切り欠きを有しており、該切り欠きを介して前記下側の操作レバーの下面に手を掛けることができるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の噴射器用カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−17533(P2013−17533A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151242(P2011−151242)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000133157)株式会社TANAーX (28)