説明

噴流めっき装置

【目的】 膜圧の均一なめっきを得ることのできる噴流めっき装置を構成する。
【構成】 アノード片を収容する5個のアノードボックス2を設ける。これらアノードボックスに対応して設けられ対応ボックス2内のアノード片に対して電気分解用の電力を供給する5個のめっき電源1,基板9に対してめっき液4を噴出するための5個のノズル、これらノズルに対応して設けられ対応ノズルに対しアノードボックス2を介してめっき液4を供給する5個の循環ポンプを夫々設ける。電源1による供給電力及び循環ポンプ1によるめっき液4の供給量を、基板9の形状、大きさ、配線パターン等に応じて夫々独立に制御することにより、基板表面の電流分布を制御でき、膜圧の均一なめっきが得られる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は噴流めっき装置に関し、特に可溶性アノードを用いた電気めっきにより基板上に電極用バンプ等を形成するための噴流めっき装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の噴流めっき装置は、図4に示されているように、めっき液4を溜めるめっき槽5と、基板9を設置するためのめっきチャンバ7と、チャンバ7内に設けられた陽極16とめっき液4を基板9で噴出させるための循環ポンプ3とを含んで構成されている。なお、8はフレーム、16はノズル、1はめっき電源である。
【0003】かかる構成において、従来の噴流めっき装置では、循環ポンプ3により、めっき液4をめっきチャンバ7上の基板9に噴出させることによりめっきが行われる。 また、他の例としては、陽極をチャンバの内部に設けるのではなく、アノードボール(アノード片)を用いた装置も知られている。これは、チタンケースにアノードボールを数個入れたアノードボックスを用いるものである。例えば、図5に示されているように、循環ポンプ3とチャンバ7との間にアノードボックス2を設けた構成が知られており、このアノードボックス2を介してめっき液4を被めっき面に噴流させてめっきが行われる。
【0004】さらにまた、ノズルを複数個設けると共に、被めっき面を揺動させて均一なめっきを得る装置が特開平2−61089号公報に開示されている。これは、図6に示されているように、めっき液4を噴流させるノズル群21を被めっき面に対向する向きに、かつ被めっき面を覆う面積で配置し、このノズル群21を被めっき面と平行に2次元揺動させるモータ22等の機構を設け、各ノズル内に電解用電極16を設けた構成である。
【0005】なお、図中の19はフレキシブルジョイント、20はフレキシブルチューブ、17はキャップである。
【0006】このめっき装置によれば、ノズル群21と被めっき面とを平行に相対的に2次元揺動させることにより、被めっき面上でのめっき液の流動を均一に多方向化し、めっき電流の限界電流密度を高め、各ノズル内の電解用電極16により、被めっき面上の電流分布の均一性を高めて、めっきを行うことができる。
【0007】なお、以上の各図中において、同等部分は同一符号により示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】図4に示されている噴流めっき装置の場合、めっきをするにつれて陽極16が溶解し、徐々に変形するため、被めっき面での電流分布の変化と、めっき液の流れの方向性により、めっき膜厚の均一化が困難であるという欠点があった。また、陽極16がめっきチャンバ7内にあるため、その交換に手間を要するという欠点があった。
【0009】また、図5に示されている噴流めっき装置では、めっきチャンバ7と循環ポンプ3との間にアノードボックス2を設けているので、被めっき面までの距離が離れ、抵抗が高くなるため、大きなめっき電流が流せなくなり、めっき時間が長くなるという欠点があった。
【0010】さらにまた、図6に示されているめっき装置では、ノズル群21と被めっき面とを平行に、かつ相対的に2次元揺動させることで、液流分布を均一にし、電流分布の均一性を高めることができるが、電流分布の制御をすることは困難である。よって、めっきすべきパターンの配列や形状が異なる場合、ノズル群21の配列の変更や揺動軌跡の変更が必要であり、また、ノズル内に陽極16があるため、その交換に手間を要するという欠点があった。
【0011】本発明は上述した従来の欠点を解決するためになされたものであり、その目的は膜厚の均一なめっきを得ることのできる噴流めっき装置を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明による噴流めっき装置は、アノード片を収容するN個(Nは2以上の整数、以下同じ)のアノードボックスと、このN個のアノードボックスに対応して設けられ対応ボックス内のアノード片に対して電気分解用の電力を供給するN個の電源と、被めっき物に対してめっき液を噴出するためのN個のノズルと、このN個のノズルに対応して設けられ対応ノズルに対し前記アノードボックスを介して前記めっき液を供給するN個のポンプとを有することを特徴とする。
【0013】
【実施例】次に、本発明について図面を参照して説明する。
【0014】図1は本発明による噴流めっき装置の一実施例の構成を示す断面図であり、図4〜6と同等部分は同一符号により示されている。図においては、アノードボールを収容する5個のアノードボックス2と、これ等5個のアノードボックス2に対応して設けられ対応ボックス内のアノード片に対して電気分解用の電力を供給する5個の電源1と、基板9等の被めっき物に対してめっき液4を噴出するための5個の噴出口(ノズル)10と、これら5個のノズル10に対応して設けられ対応ノズルに対しアノードボックス2を介してめっき液4を供給する5個の循環ポンプ3とを含んで構成されている。以下、詳細に説明する。
【0015】めっき液4を溜めるめっき槽5上部に、めっきチャンバ7を吊手6で設置する。めっきチャンバ7は噴出口10を5個持ち、5本の配管11によって、めっき槽5と噴出口10とが接続されている。それぞれの配管11の途中には、循環ポンプ3とアノードボックス2とが設置されている。5個のアノードボックス2は、5個のめっき電源1と1対1対応で接続されている。めっきチャンバ7の上部には、基板9を設置するためのフレーム8が取付けられている。
【0016】図2はアノードボックス2の内部構成を示す断面図である。アノードボックス2の内部は中空であり、その中には可溶性の陽極であるアノードボール14を入れるためのメッシュ状のチタンケース13を有する。めっき電源1の正極はチタンケース13に接続されている。なお、アノードボール14には純銅、ニッケル等が用いられる。
【0017】チタンケース13の外側には陽極スライムがめっき液4中に混入するのを防ぐため、アノードバック12が取付けられている。アノードボックス2の上部はアノードボール14の補充、交換ができるように開閉可能であり、また、エア抜き用のバルブ15が取付けられている。
【0018】また、図3はめっきチャンバ7にフレーム8を付けた様子を示す平面図である。5個設けられている噴出口10の大きさ、形状、位置等は基板の形状、大きさ、配線パターン等に応じて任意に決めることができる。
【0019】次に、かかる構成とされためっき装置の動作について説明する。まず、基板9をフレーム8上に設置し、めっき電源1の負極と接続させる。5個の循環ポンプ3によって、めっき液4を5個のアノードボックス2を通して、めっきチャンバ7の噴出口10より噴出させて、基板9に当てる。
【0020】アノードボックス2内では、アノードボール14がめっき液中に沈むように、バルブ15でエア抜きを行い、液面を調整する。めっき液4はフレーム8の外側から落下し、下のめっき槽5へ戻る。このとき、めっきチャンバ7内の液流分布が均一になるように5個の循環ポンプ3の流量(めっき液の供給量)をそれぞれ調整する。
【0021】基板9上のパターンの形状や配列等を考慮に入れ、基板9上の電流分布が均一になるように5個のめっき電源1における電流条件をそれぞれ決定する。必要電気量を給電後、循環ポンプ3を止め、めっき作業を終了する。
【0022】以上説明したように本実施例の装置は、5個の循環ポンプの流量を夫々調整できるようにしたので基板にめっき液を均一に当てることができる。また、複数の電源をもつため、基板表面の電流分布の制御が可能となる。よって、基板上のパターンの配列や形状が異なる場合でも、めっき条件出しが容易となり、かつ膜厚の均一なめっきが得られる。また、アノードをめっきチャンバ外側の配管に設置するようにしているが、5カ所に分散させたため、アノードボールの補充、交換が容易であるまま、めっきの高速化も図れる。
【0023】なお、以上は循環ポンプ、めっき電源、アノードボックス等が5個の場合について説明したが、これに限らず、各ポンプボックス、電源等を対応させて夫々独立に制御できる構成にすれば、同様の効果が得られることは明らかである。
【0024】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、アノードボックス、めっき電源、ノズル及び循環ポンプを各々対応させて設け、めっき電源による供給電力、循環ポンプによるめっき液の供給量を夫々独立に制御することにより、膜圧の均一なめっきを得ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例による噴流めっき装置の構成を示す断面図である。
【図2】図1におけるアノードボックスの内部構成を示す断面図である。
【図3】図1におけるめっきチャンバにフレームを付けた様子を示す平面図である。
【図4】従来の噴流めっき装置の構成を示す断面図である。
【図5】従来の噴流めっき装置の他の構成を示す断面図である。
【図6】従来の噴流めっき装置の他の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
1 めっき電源
2 アノードボックス
3 循環ポンプ
4 めっき液
5 めっき槽
7 めっきチャンバ
9 基板
10 噴出口
11 配管
14 アノードボール

【特許請求の範囲】
【請求項1】 アノード片を収容するN個(Nは2以上の整数、以下同じ)のアノードボックスと、このN個のアノードボックスに対応して設けられ対応ボックス内のアノード片に対して電気分解用の電力を供給するN個の電源と、被めっき物に対してめっき液を噴出するためのN個のノズルと、このN個のノズルに対応して設けられ対応ノズルに対し前記アノードボックスを介して前記めっき液を供給するN個のポンプとを有することを特徴とする噴流めっき装置。
【請求項2】 前記N個の電源による供給電力を夫々独立に制御自在としたことを特徴とする請求項1記載の噴流めっき装置。
【請求項3】 前記N個のポンプによるめっき液の供給量を夫々独立に制御自在としたことを特徴とする請求項1又は2記載の噴流めっき装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開平7−109599
【公開日】平成7年(1995)4月25日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−276105
【出願日】平成5年(1993)10月6日
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)