説明

噴流浴システム

【課題】非自吸式のポンプよりも低い位置に吸込口とノズルとが取り付けられる場合であっても、ポンプの空回りを抑制できる、および設計の自由度を向上できる噴流浴システムを提供する。
【解決手段】浴槽水を吸入し加圧して吐出する非自吸式ポンプ7と、ポンプの作動可能水位よりも低い位置に浴槽水を吸い込む吸込口5を浴槽1に設け、吸込口5から吸入した浴槽水を非自吸式ポンプ7に導く導水配管部6と、非自吸式ポンプ7から吐出された浴槽水を浴槽1の内部に噴出する。非自吸式ポンプ7から吐出された浴槽水の管路は、作動可能水位よりも高い位置に設けられた第1の配管部8から分岐され、作動可能水位よりも低い位置に設けられたノズル12に浴槽水を導く第2の配管部9と、第1の配管部8から分岐され、下流端が第1の配管部8よりも高い位置に設けられた第3の配管部10と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、浴槽内に噴流を噴出させる構成を有する噴流浴システムに関する。
【背景技術】
【0002】
浴槽水を循環させるなどして浴槽内に噴流を噴出させ、その噴流を使用者の人体表面に当てることによりマッサージ効果を与える浴槽噴出装置がある(特許文献1〜3)。特許文献1に記載された装置は、浴槽水温度に適応するジェット噴流の強さや泡量を自動的に調整できる。また、特許文献2に記載された装置は、ポンプによって吸い込んだ浴湯に気泡を混入させた噴流を浴槽内に噴出させることができる。そして、取り込む気体は容器に予め充填されており、且つその容器が容易に交換可能となっている。また、特許文献3に記載された装置は、流量制御弁よりエアポンプ側の空気圧流路内に浴槽水や湿度の高い空気が流入するのを防止することができる。
【0003】
このような浴槽噴出装置は、一般的に、浴槽水を吸い込む吸込口と、浴槽水を循環させるポンプと、浴槽水を浴槽内に吐出するノズルと、を備えている。そして、使用者が浴槽内に噴流を噴出させる運転(ここでは、「ブロー運転」と称する。)を停止して、浴槽内から浴槽水を排水した後には、ポンプ内の浴槽水を確実に排水し、ポンプ内に水が残らないことが好ましい。そのため、ポンプは吸込口よりも高い位置に配設されることが好ましい。
【0004】
しかしながら、ポンプを吸込口よりも高い位置の配設した状態で、且つポンプをノズルよりも高い位置に配設すると、浴槽水を貯留する際に、ポンプとノズルとの間の配管内の空気が抜けず、ポンプ内に空気が残留した状態で縁切りされてしまうという問題がある。ポンプとノズルとの間の配管内の空気が抜けないと、非自吸式のポンプを用いた場合には、ポンプが空回りを起こすおそれがあり、ブロー運転の性能が大きく低下するおそれがある。通常、浴槽裏側の空間には、噴流浴システム以外の配管や電源ボックス、ポンプなどが設置されることがあるため、ノズルをポンプよりも高い位置に配設できないことは設計自由度を低下させることとなり、好ましくない。
【特許文献1】特開平10−33399号公報
【特許文献2】特開2002−102093号公報
【特許文献3】特開平6−142149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の態様は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、非自吸式のポンプよりも低い位置に吸込口とノズルとが取り付けられる場合であっても、ポンプの空回りを抑制できる、および設計の自由度を向上できる噴流浴システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、浴槽水を吸入し加圧して吐出する非自吸式ポンプと、前記非自吸式ポンプの作動可能水位よりも低い位置に設けられ、貯留した前記浴槽水を吸い込む吸込口を有する浴槽と、前記吸込口から吸入した浴槽水を前記非自吸式ポンプに導く導水配管部と、前記非自吸式ポンプから吐出された浴槽水を前記浴槽の内部に噴出可能であり、前記作動可能水位よりも低い位置に設けられたノズルと、前記非自吸式ポンプから吐出された浴槽水を導水可能であり、管路が前記作動可能水位よりも高い位置に設けられた第1の配管部と、前記第1の配管部から分岐され、前記第1の配管部から導かれた浴槽水を前記ノズルに導く第2の配管部と、前記第1の配管部から分岐され、下流端が前記第1の配管部の管路よりも高い位置に設けられた第3の配管部と、を備えたことを特徴とする噴流浴システムが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の態様によれば、非自吸式のポンプよりも低い位置に吸込口とノズルとが取り付けられる場合であっても、ポンプの空回りを抑制できる、および設計の自由度を向上できる噴流浴システムが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
第1の発明は、浴槽水を吸入し加圧して吐出する非自吸式ポンプと、前記非自吸式ポンプの作動可能水位よりも低い位置に設けられ、貯留した前記浴槽水を吸い込む吸込口を有する浴槽と、前記吸込口から吸入した浴槽水を前記非自吸式ポンプに導く導水配管部と、前記非自吸式ポンプから吐出された浴槽水を前記浴槽の内部に噴出可能であり、前記作動可能水位よりも低い位置に設けられたノズルと、前記非自吸式ポンプから吐出された浴槽水を導水可能であり、管路が前記作動可能水位よりも高い位置に設けられた第1の配管部と、前記第1の配管部から分岐され、前記第1の配管部から導かれた浴槽水を前記ノズルに導く第2の配管部と、前記第1の配管部から分岐され、下流端が前記第1の配管部の管路よりも高い位置に設けられた第3の配管部と、を備えたことを特徴とする噴流浴システムである。
この噴流浴システムによれば、ポンプの作動可能水位よりも低い位置にノズルおよび吸込口が取り付けられた場合であっても、ポンプとノズルとの間の配管内の空気を排出することができる。そのため、ポンプの空回りを抑制できる。そして、ポンプやノズルの設置位置の制約を受けずに、設計の自由度を向上することができる。
【0009】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記第3の配管部における下流端に接続され、前記浴槽に臨む吐出口を有し、前記第3の配管部から導かれた浴槽水を前記吐出口から前記浴槽の内部に吐出可能な吐出部をさらに備えたことを特徴とする噴流浴システムである。
この噴流浴システムによれば、浴槽水を浴槽内に緩やかに供給することで、浴室のデザイン性を高めたり、演出効果を高めることができる。すなわち、吐出部から供給される浴槽水を観賞用の水として使用することができる。
【0010】
また、第3の発明は、第2の発明において、前記浴槽は、前記吸込口よりも上方に設けられ浴槽水の貯留水位を規制するオーバーフロー口をさらに有し、前記吐出部は、前記オーバーフロー口よりも上方であって、且つ前記ノズルが取り付けられる浴槽壁側に設けられた肩湯であることを特徴とする噴流浴システムである。
この噴流浴システムによれば、使用者は枕に頭をのせた状態で吐出部から供給される水を肩などの身体の一部に受けることができる。すなわち、吐出部から供給される浴槽水を肩湯として使用することができる。
【0011】
また、第4の発明は、第1〜第3のいずれか1つの発明において、前記作動可能水位は、前記ポンプが正常に作動し、浴槽水を循環することができる水位であることを特徴とする噴流浴システムである。
この噴流浴システムによれば、ポンプが正常に作動し、浴槽水を循環することができる水位よりも低い位置にノズルおよび吸込口が取り付けられた場合であっても、ポンプとノズルとの間の配管内の空気を排出することができる。そのため、ポンプの空回りを抑制できる。そして、ポンプやノズルの設置位置の制約を受けずに、設計の自由度を向上することができる。
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる噴流浴システムの構成を表す概略図である。
本実施形態に係る噴流浴システムは、主として、浴槽1と、浴槽1内の浴槽水を吸入しノズル12および吐出部16から再び浴槽内に噴出あるいは供給するための浴槽水供給部と、吸込口5にエアを取り込むことができるエア供給部と、を備える。
【0013】
まず、浴槽水供給部について、図面を参照しつつ説明する。
浴槽1は、浴槽水を貯留可能であると共に、貯留された浴槽水を吸い込むための吸込口5を有する。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。吸込口5は浴槽1における長辺側浴槽壁に形成され、吸込口5は導水配管部6を介してポンプ7の吸入口に接続されている。ポンプ7が駆動されると、浴槽1内に貯留された浴槽水は吸込口5から導水配管部6へと吸い込まれる。
【0014】
対向する一対の長辺側浴槽壁と、対向する一対の短辺側浴槽壁と、を有する通常の浴槽を考えた場合、一般に、入浴者は、一対の短辺側浴槽壁の一方に背をもたれかけて他方の短辺側浴槽壁に足を向けた姿勢で入浴するため、吸込口5を短辺側浴槽壁に形成した場合には、入浴者の背中や足裏で吸込口5がふさがれポンプ7に過剰の負荷がかかることが懸念される。したがって、吸込口5は、入浴者の身体の一部等によってふさがれにくい長辺側浴槽壁に形成するのが望ましい。
【0015】
ポンプ7の吐出口には、第1の配管部8が接続されている。この第1の配管部8は、下流側において、第2の配管部9と第3の配管部10とに分岐されている。そして、第2の配管部9の下流端には、ポンプ7から吐出されて第1の配管部8及び第2の配管部9に導かれた加圧浴槽水を浴槽1の内部に噴出可能なノズル12が設けられている。一方、第3の配管部10の下流端には、ポンプ7から吐出されて第1の配管部8及び第3の配管部10に導かれた加圧浴槽水を浴槽1の内部に供給可能な吐出部16が接続されている。浴槽水供給部が有するノズル12や吐出部16は、図1に表したように1つでもよく、あるいは2つ以上の複数であってもよい。
【0016】
ポンプ7は、使用者による操作部22の操作を受けて、制御部21からの信号に基づいて制御される。使用者の操作による制御信号に基づいてノズル12から噴流を噴出させるときには、ポンプ7は制御部21からの信号に基づいて浴槽水を吸込口5および導水配管部6を介して吸い込み、加圧した加圧浴槽水を第1の配管部8に吐出する。そして、第1の配管部8および第2の配管部9に導かれた浴槽水は、ノズル12から浴槽水中に噴出される。これに伴い、ポンプ7から吐出された加圧浴槽水は、第1の配管部8および第3の配管部10に導かれ、吐出部16からも浴槽1の内部に供給される。
【0017】
ノズル12が設けられた短辺側浴槽壁2a側に背を向けた入浴者は、ノズル12から噴出される噴流を、腰や背などの身体の一部に受けることによりマッサージ効果を得ることができる。そのため、ノズル12は浴槽1の上下方向に対して中間部あるいはそれよりも下側に設けられている。一方、短辺側浴槽壁2a側に背を向けた入浴者は、吐出部16から供給される水を肩などの身体の一部に受けることにより、水の流れでやさしく体を包まれる感じを体感でき、心をリラックスできる。そのため、吐出部16は浴槽1の上縁部近傍に設けられている。なお、後に詳述するように、吐出部16は、観賞用の吐出部として使用されてもよい。この場合であっても、吐出部16は浴槽1の上縁部近傍に設けられる。
【0018】
使用者がノズル12から浴槽1内に噴流を噴出させる運転(以下、説明の便宜上「ブロー運転」と称する。)を停止して、浴槽1内から浴槽水を排水した後には、ポンプ7内の浴槽水はより確実に排水され、ポンプ7内に残らないことが好ましい。そのため、ポンプは、図1に表したように、吸込口5よりも高い位置に設けられることが好ましい。これによれば、ポンプ7の駆動を停止させた後には、そのポンプ7内に残った浴槽水は導水配管部6を介して吸込口5から浴槽1内に排水される。浴槽1には、図示しない排水口が設けられているため、吸込口5から浴槽1内に排水された浴槽水は、その排水口から浴槽1の外部に排水される。
【0019】
ポンプ7はいわゆる非自吸式ポンプであり、ポンプ7自身の力によって呼水作用を自動的に行って揚水を始めることはできない。本実施形態にかかる噴流浴システムは浴槽水を循環させるため、ポンプ7が自吸式ポンプである場合には、ポンプの「ケーシング」と、その内部に設けられた「インペラ」と、の間の隙間に、例えば浴槽水に介在するゴミなどが混入して、ポンプのシール部にダメージを与えるおそれがある。これは、「ケーシング」と「インペラ」との間の隙間は、非自吸式ポンプよりも自吸式ポンプの方が小さく、微小に設定されているためである。そのため、浴槽水を循環させる噴流浴システムでは、非自吸式ポンプを使用することが好ましい。
【0020】
次に、エア排出部について、図面を参照しつつ説明する。
浴槽1の内槽の上縁部の周囲に設けられた浴槽リムにおいて、吸込口5が形成された長辺側浴槽壁と、ノズル12が設けられた短辺側浴槽壁2aと、の角部近傍にエア取り込み口41が形成されている(図2参照)。
【0021】
エア取り込み口41には第1のエア配管部37が接続され、その第1のエア配管部37の一端(下流端)は吸込口5に接続されている。また、第1のエア配管部37は、エア取り込み口41を介して大気に連通している。例えば、吸込口5が入浴者の体の一部や髪の毛などによって閉塞され、吸込口5の内部の負圧が高まると、エジェクター効果によりその内部にエア取り込み口41および第1のエア配管部37を介してエアが取り込まれる。
【0022】
その結果、ポンプ7はそのエアを吸い込むことで能力が低下または停止する。これにより、浴槽水が吸い込まれない状況でのポンプ7の無駄な駆動を回避でき、また、吸込口5における吸引力が弱まり、入浴者の体の一部や髪の毛などをその吸込口5から容易に離すことができる。
【0023】
次に、本実施形態の具体例について、図面を参照しつつ説明する。
図2は、本実施形態の具体例にかかる噴流浴システムを平面方向から見た模式図である。
また、図3は、本具体例にかかる噴流浴システムを短辺側浴槽壁の側面方向から見た模式図である。
また、図4は、本具体例にかかる噴流浴システムを長辺側浴槽壁の側面方向から見た模式図である。
【0024】
本具体例にかかる噴流浴システムは、短辺側浴槽壁2a側に2つのノズル12が設けられている。また、前述したように、長辺側浴槽壁には吸込口5が設けられている。ポンプ7は、図1に関して前述したように、吸込口5よりも高い位置に設けられることが好ましい。そこで、本具体例にかかる噴流浴システムでは、図3および図4に表したように、ポンプ7は吸込口5よりも高い位置に適宜固定されている。
【0025】
しかしながら一方で、ポンプ7がノズル12よりも高い位置に設けられると、浴槽水を貯留する際に、ポンプ7とノズル12との間の配管内の空気が抜けにくいという問題が生ずる。より具体的には、ポンプ7がノズル12よりも高い位置に設けられると、第1の配管部8および第2の配管部9の少なくともいずれかの内部に存在する空気は、より高い位置に設けられたポンプ7の方に移動し、より低い位置に設けられたノズル12から抜けにくい。ブロー運転中に、ポンプ7とノズル12との間の配管内の空気が抜けないと、ポンプ7が空回りを起こすおそれがあるため、ブロー運転の性能が低下するおそれがある。
【0026】
そこで、本実施形態にかかる噴流浴システムは、第1の配管部8から分岐された第3の配管部10と、第3の配管部10の下流端に接続された吐出部16と、を備えている。このとき、ポンプ7は前述したように非自吸式ポンプであるため、ポンプ7が正常に作動し浴槽水を循環することができる水位(以下、説明の便宜上「作動可能水位」と称する。)がこのポンプ7には設定されている。
【0027】
そして、吸込口5はポンプ7の作動可能水位20よりも低い位置に設けられている。また、第1の配管部8の管路は、ポンプ7の作動可能水位20よりも高い位置に設けられている。またさらに、吐出部16(第3の配管部10の下流端)は、第1の配管部8の管路よりも高い位置に設けられている。そのため、本実施形態にかかる噴流浴システムでは、ポンプ7の作動可能水位よりも低い位置にノズル12が設けられた場合であっても、第1の配管部8および第2の配管部9の少なくともいずれかの内部に存在する空気は、第3の配管部10を介して吐出部16から抜けていく。
【0028】
第1の配管部8および第3の配管部10の管路は、下流端としての吐出部16に向かうにつれて高くなる必要はなく、一部の管路が低くとも、ポンプ7の作動可能水位20よりも高い位置に設けられていればよい。この場合であっても、第3の配管部10の下流端としての吐出部16は、ポンプ7の作動可能水位20よりも高く、第1の配管部8の管路よりも高い位置に設けられているため、第1の配管部8および第2の配管部9の少なくともいずれかの内部に存在する空気は、吐出部16から抜けていく。つまり、ポンプ7内には、作動可能水位が溜まることが可能となる。
【0029】
これによれば、ブロー運転中に、ポンプ7とノズル12との間の配管内の空気が抜けずに、ポンプ7が空回りを起こすことを抑制できる。その結果、ブロー運転の性能が低下することを抑制できる。また、吸込口5よりも高い位置、且つノズル12よりも低い位置にポンプ7を配設しなければならないなどの配設位置の制約を緩和することができるため、設計の自由度を向上することができる。そのため、ポンプ7とノズル12との配設位置を比較的自由に設定できる。
【0030】
吐出部16は、図3および図4に表したように、浴槽1の上縁部近傍に設けられ、吐出部16の上には枕18が設けられている。一方、吸込口5の上方であって、浴槽1の長辺側浴槽壁の少なくともいずれかには、浴槽水の貯留水位を規制するオーバーフロー口3が設けられている。吐出部16は、このオーバーフロー口3よりも上方であって、短辺側浴槽壁2a側の上縁部に設けられている。但し、吐出部16の設置形態は、これだけに限定されず、オーバーフロー口3よりも上方であって、短辺側浴槽壁2aと同一面に設けられていてもよい。そのため、短辺側浴槽壁2a側に背を向けた入浴者は、枕18に頭をのせ、リラックスした状態で吐出部16から供給される水を肩などの身体の一部に受けることができる。つまり、入浴者は吐出部16を「肩湯」として利用することができる。なお、図2に表した噴流浴システムでは、説明の便宜上、吐出部16および枕18を省略している。
【0031】
第3の配管部10は、図3に表したように、第2の配管部9と第3の配管部10との分岐部よりも下流側において3つに分岐され、吐出部16に接続されている。そして、吐出部16は、短辺側浴槽壁2aと略並行して一定の幅を有している。そのため、短辺側浴槽壁2a側に背を向けた入浴者は、吐出部16から吐出された一定幅を有する水を肩の略全体に受けることができる。なお、第3の配管部10の分岐数は3つに限定されるわけではなく、4つ以上であってもよいし、2つであってもよい。また、第3の配管部10は、下流側において分岐されていなくともよい。
【0032】
図5は、本具体例の吐出部近傍を拡大して眺めた断面模式図である。
また、図6は、吐出部の変形例にかかる吐出部近傍を拡大して眺めた断面模式図である。
本具体例の吐出部16は、図1に関して前述したように、浴槽1の上縁部近傍に設けられている。吐出部16の上には枕18が設けられており、短辺側浴槽壁2a側に背を向けた入浴者は、枕18に頭をのせた状態で吐出部16から供給される水を肩などの身体の一部に受けることができる。枕18は、枕ベース17を介して吐出部16に固定されている。
【0033】
吐出部16の内部には、第3の配管部10に導かれた浴槽水を一時的に貯留可能な貯水部16aが設けられている。貯水部16aは、吐出部16の外形に略沿うように短辺側浴槽壁2aと略並行して一定の幅を有し、偏平状に形成されている。貯水部16aは、第3の配管部10の管路の径に比べて大きな偏平状の空間であるため、第3の配管部10から流れ込んでくる浴槽水の勢いを減少させることができる。すなわち、特別な機構や部品を追加することなく貯水部16aに浴槽水を一時的に貯留することのみで、浴槽水の流速を大きく落とすことができ、また浴槽水の流れの乱れも失わせることができる。このようにして、貯水部16aで整流された浴槽水は、浴槽1の内部に臨む吐出口16bから略面状となって緩やかに吐出される。
【0034】
枕18は、弾力性を有する材料で形成されてもよいし、頭をのせた程度ではほとんど変形しない非弾力性を有する材料で形成されてもよい。枕18が弾力性を有する材料で形成されている場合には、より長時間にわたって枕18に頭をのせた状態で、リラックスして吐出部16から供給される水を肩などに受けることができる。
【0035】
なお、図16に表した変形例のように、吐出部16の上には枕18および枕ベース17が設けられていなくともよい。この場合には、観賞用の吐出部として吐出部16を使用することができる。そして、貯水部16aで整流された浴槽水は、浴槽1の内部に臨む吐出口16bから略面状となって緩やかに吐出されるため、浴室のデザイン性を高めたり、演出効果を高めることができる。
【0036】
次に、本実施形態の変形例について、図面を参照しつつ説明する。
図7は、本実施形態の変形例かかる噴流浴システムを平面方向から見た模式図である。 また、図8は、本変形例にかかる噴流浴システムを短辺側浴槽壁の側面方向から見た模式図である。
また、図9は、本変形例にかかる噴流浴システムを長辺側浴槽壁の側面方向から見た模式図である。
【0037】
本変形例にかかる噴流浴システムでは、浴槽水中に気泡を混入可能にするエアブローポンプ33がポンプ7の下に設けられている。エアブローポンプ33は、第2のエア配管部32を介してエア取り込み口31に接続されている。第2のエア配管部32は、エア取り込み口31を介して大気に連通しているため、エアブローポンプ33はエア取り込み口31および第2のエア配管部32を介して、大気を吸引することができる。
【0038】
エアブローポンプ33は、使用者による操作部22(図1参照)の操作を受けて、制御部21(図1参照)からの信号に基づいて制御される。そして、その制御信号に基づいてエアブローポンプ33を駆動することで、エア取り込み口31および第2のエア配管部32を介して吸引した空気を、第3のエア配管部34を介してエアブローノズル35から浴槽水中にエアを混入させることができる。
【0039】
エアブローノズル35は、浴槽1の底面部2cに設けられている。そのため、短辺側浴槽壁2a側に背を向けた入浴者に対して、気泡量が多いパワフルなエアや、気泡量が少なくてやさしいエアを底面部から噴出することができる。気泡量については、例えば使用者による操作部22の操作によって設定できる。気泡量が多いパワフルなエアを噴出する場合には、入浴者の例えば下肢などを局所的に刺激できる。一方、気泡量が少なくてやさしいエアを噴出する場合には、入浴者は気泡でやさしく体を包まれる感じを体感でき、心をリラックスできる。
【0040】
これに対して、使用者の操作による制御信号に基づいて、エアブローポンプ33の駆動を停止することもできる。その結果、エアブローノズル35から浴槽水中へのエアの供給は遮断される。これによれば、使用者はノズル12から噴出される噴流を集中的に腰や背などに受け、局所的なマッサージ感を得ることができる。そして、使用者の操作による制御信号に基づいて、ポンプ7の駆動も停止させた場合には、使用者はより落ち着いた状態で入浴できる。なお、その他の構造については、図2〜図4に表した噴流浴システムと同様の構造を有する。
【0041】
本変形例にかかる噴流浴システムは、図2〜図4に表した噴流浴システムと同様に、第1の配管部8から分岐された第3の配管部10と、第3の配管部10の下流端に接続された吐出部16と、を備えている。そして、吸込口5はポンプ7の作動可能水位20よりも低い位置に設けられている。また、第1の配管部8の管路は、ポンプ7の作動可能水位20よりも高い位置に設けられている。またさらに、吐出部16(第3の配管部10の下流端)は、第1の配管部8の管路よりも高い位置に設けられている。そのため、本変形例にかかる噴流浴システムでは、ポンプ7の作動可能水位よりも低い位置にノズル12が設けられた場合であっても、第1の配管部8および第2の配管部9の少なくともいずれかの内部に存在する空気は、第3の配管部10を介して吐出部16から抜けていく。つまり、ポンプ7内には、作動可能水位が溜まることが可能となる。
【0042】
したがって、エアブローポンプ33などのポンプ7以外の部品や機構が設けられる場合であっても、ポンプ7を比較的自由に配設できる。そして、図7〜図9に表した変形例のように、エアブローポンプ33の上に配設した結果、ポンプ7がノズル12よりも高い位置に配設されたとしても、第1の配管部8および第2の配管部9の少なくともいずれかの内部に存在する空気は、第3の配管部10を介して吐出部16から抜けていく。そのため、ポンプ7が空回りを起こしたり、ブロー運転の性能が低下することを抑制できる。
【0043】
また、本変形例において、エア取り込み口41とノズル12とを接続する図示しないエア配管部を設け、エア取り込み口41と図示しないエア配管部を介してノズル12内に大気中のエアを混入させ、気泡入り噴流を噴出させてもよい。さらに、図示しないエア配管部の途中に開閉弁を設け、この開閉弁を制御することにより、エアの混入と非混入とを切り替えてもよい。このように、他のエア配管部や開閉弁などがさらに設けられた場合であっても、エア配管部や開閉弁と干渉しない位置であって、ノズル12よりも高い位置にポンプ7を配設することができる。そして、第1の配管部8および第2の配管部9の少なくともいずれかの内部に存在する空気を第3の配管部を介して吐出部16から排出できる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態によれば、吸込口5はポンプ7の作動可能水位20よりも低い位置に設けられている。また、第1の配管部8の管路は、ポンプ7の作動可能水位20よりも高い位置に設けられている。またさらに、吐出部16(第3の配管部10の下流端)は、第1の配管部8の管路よりも高い位置に設けられている。これによれば、ポンプ7の作動可能水位よりも低い位置にノズル12が設けられた場合であっても、第1の配管部8および第2の配管部9の少なくともいずれかの内部に存在する空気は、第3の配管部10を介して吐出部16から抜けていくため、ポンプ7が空回りを起こすことを抑制できる。また、ノズル12よりも低い位置にポンプ7を配設しなければならないなどの配設位置の制約を緩和することができるため、設計の自由度を向上することができる。
【0045】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、浴槽水供給部やエア供給部などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などや各配管部の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態にかかる噴流浴システムの構成を表す概略図である。
【図2】本実施形態の具体例にかかる噴流浴システムを平面方向から見た模式図である。
【図3】本具体例にかかる噴流浴システムを短辺側浴槽壁の側面方向から見た模式図である。
【図4】本具体例にかかる噴流浴システムを長辺側浴槽壁の側面方向から見た模式図である。
【図5】本具体例の吐出部近傍を拡大して眺めた断面模式図である。
【図6】吐出部の変形例にかかる吐出部近傍を拡大して眺めた断面模式図である。
【図7】本実施形態の変形例かかる噴流浴システムを平面方向から見た模式図である。
【図8】本変形例にかかる噴流浴システムを短辺側浴槽壁の側面方向から見た模式図である。
【図9】本変形例にかかる噴流浴システムを長辺側浴槽壁の側面方向から見た模式図である。
【符号の説明】
【0047】
1 浴槽、 2a 短辺側浴槽壁、 2c 底面部、 3 オーバーフロー口、 5 吸込口、 6 導水配管部、 7 ポンプ、 8 第1の配管部、 9 第2の配管部、 10 第3の配管部、 12 ノズル、 16 吐出部、 16a 貯水部、 16b 吐出口、 17 枕ベース、 18 枕、 20 作動可能水位、 21 制御部、 22 操作部、 31 エア取り込み口、 32 第2のエア配管部、 33 エアブローポンプ、 34 第3のエア配管部、 35 エアブローノズル、 37 第1のエア配管部、 41 エア取り込み口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽水を吸入し加圧して吐出する非自吸式ポンプと、
前記非自吸式ポンプの作動可能水位よりも低い位置に設けられ、貯留した前記浴槽水を吸い込む吸込口を有する浴槽と、
前記吸込口から吸入した浴槽水を前記非自吸式ポンプに導く導水配管部と、
前記非自吸式ポンプから吐出された浴槽水を前記浴槽の内部に噴出可能であり、前記作動可能水位よりも低い位置に設けられたノズルと、
前記非自吸式ポンプから吐出された浴槽水を導水可能であり、管路が前記作動可能水位よりも高い位置に設けられた第1の配管部と、
前記第1の配管部から分岐され、前記第1の配管部から導かれた浴槽水を前記ノズルに導く第2の配管部と、
前記第1の配管部から分岐され、下流端が前記第1の配管部の管路よりも高い位置に設けられた第3の配管部と、
を備えたことを特徴とする噴流浴システム。
【請求項2】
前記第3の配管部における下流端に接続され、前記浴槽に臨む吐出口を有し、前記第3の配管部から導かれた浴槽水を前記吐出口から前記浴槽の内部に吐出可能な吐出部をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の噴流浴システム。
【請求項3】
前記浴槽は、前記吸込口よりも上方に設けられ浴槽水の貯留水位を規制するオーバーフロー口をさらに有し、
前記吐出部は、前記オーバーフロー口よりも上方であって、且つ前記ノズルが取り付けられる浴槽壁側に設けられた肩湯であることを特徴とする請求項2記載の噴流浴システム。
【請求項4】
前記作動可能水位は、前記ポンプが正常に作動し、浴槽水を循環することができる水位であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の噴流浴システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−75473(P2010−75473A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−247671(P2008−247671)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】