説明

噴流浴システム

【課題】圧力損失の大きいノズルに合わせて配管経路の圧力損失を調節することにより、ポンプを小型化できる噴流浴システムを提供する。
【解決手段】 浴槽水を吸い込む吸込口を有する浴槽と、前記吸込口から浴槽水を吸入し加圧して吐出するポンプと、前記吸込口から吸入した浴槽水を前記ポンプに導く導水配管部と、前記浴槽の側壁部に設けられ、前記ポンプから吐出された浴槽水を、前記浴槽内部に噴出可能な第1のノズルと、前記第1のノズルとは異なる前記浴槽の側壁に設けられ、且つ前記第1のノズルより圧力損失の大きい構造で形成される第2のノズルと、前記ポンプから吐出された浴槽水を前記第1のノズルに供給する第1のブロー配管部と、前記第1の配管部の途上で分枝され、前記第2のノズルに供給する第2のブロー配管部と、を備えた噴流浴システムであって、前記ポンプから前記第2のノズルまでの配管経路は、前記ポンプから前記第1のノズルまでの配管経路よりも短く配設されていることを特徴とする噴流浴システムが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、浴槽内に噴流を噴出させる構成を有する噴流浴システムに関する。
【背景技術】
【0002】
浴槽水を循環させるなどして浴槽内に噴流を噴出させ、その噴流を使用者の人体表面に当てることによりマッサージ効果を与える浴槽噴出装置がある。このような装置の中には、使用者の腰部分や足元(足裏)部分やふくらはぎ部分や太もも部分などに向けて噴流を噴出する複数の噴流ノズルを備えた浴槽がある(特許文献1)。また、吐出流を浴槽内で衝突させてランダムな水流を作ることでリラックス効果を生み出したり、直接使用者に向けて噴流を噴出することでマッサージ効果を生み出すなどといった複数の噴流モードを噴出可能な浴槽装置がある(特許文献2)。
【0003】
特許文献1および2に記載されたような複数のノズルを備えた装置は、一般的に、異なる噴出エリア(腰部分や足元部分など)や噴流モードなどに対応するために、異なる構造や構成を有する複数のノズルを備えている。しかしながら、圧力損失が大きいノズルをポンプから離れた位置に配置させる場合には、所定の流量を確保するために、ポンプを大きくしなければならない。一般的に、ノズルからポンプまでの距離が離れるにつれて圧力損失が大きくなるので、ノズルの圧力損失に加え、ノズルとポンプの配管経路の圧力損失も加わるため、全体として圧力損失が大きくなってしまう。従って、ノズルからの所定の流量を確保するために、ポンプを大きくしなければならない。
【特許文献1】特開2007−283039号公報
【特許文献2】特開2008−136591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の態様は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、圧力損失の大きいノズルに合わせて配管経路の圧力損失を調節することにより、ポンプを小型化できる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、浴槽水を貯留すると共に、前記浴槽水を吸い込む吸込口を有する浴槽と、前記吸込口から浴槽水を吸入し加圧して吐出するポンプと、前記吸込口から吸入した浴槽水を前記ポンプに導く導水配管部と、前記浴槽の側壁部に設けられ、前記ポンプから吐出された浴槽水を、前記浴槽内部に噴出可能な第1のノズルと、前記第1のノズルとは異なる前記浴槽の側壁に設けられ、且つ前記第1のノズルより圧力損失の大きい構造で形成される第2のノズルと、前記ポンプから吐出された浴槽水を前記第1のノズルに供給する第1のブロー配管部と、前記第1の配管部の途上で分枝され、前記第2のノズルに供給する第2のブロー配管部と、を備えた噴流浴システムであって、前記ポンプから前記第2のノズルまでの配管経路は、前記ポンプから前記第1のノズルまでの配管経路よりも短く配設されていることを特徴とする噴流浴システムが提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明の態様によれば、圧力損失の大きいノズルに合わせて配管経路の圧力損失を調節することにより、ポンプを小型化できるできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
第1の発明は、浴槽水を貯留すると共に、前記浴槽水を吸い込む吸込口を有する浴槽と、前記吸込口から浴槽水を吸入し加圧して吐出するポンプと、前記吸込口から吸入した浴槽水を前記ポンプに導く導水配管部と、前記浴槽の側壁部に設けられ、前記ポンプから吐出された浴槽水を、前記浴槽内部に噴出可能な第1のノズルと、前記第1のノズルとは異なる前記浴槽の側壁に設けられ、且つ前記第1のノズルより圧力損失の大きい構造で形成される第2のノズルと、前記ポンプから吐出された浴槽水を前記第1のノズルに供給する第1のブロー配管部と、前記第1の配管部の途上で分枝され、前記第2のノズルに供給する第2のブロー配管部と、を備えた噴流浴システムであって、前記ポンプから前記第2のノズルまでの配管経路は、前記ポンプから前記第1のノズルまでの配管経路よりも短く配設されていることを特徴とする噴流浴システムである。
この噴流浴システムによれば、ポンプから圧力損失の大きいノズルまでの配管経路を相対的に短くし、ポンプから圧力損失の小さいノズルまでの配管経路を、相対的に長くするように配設することにより、ポンプを小型化できる。
【0008】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記ポンプから前記第2のノズルまでの配管経路における屈曲部の数は、前記ポンプから前記第1のノズルまでの配管経路における屈曲部の数よりも少なく配設されていることを特徴とする噴流浴システムである。
この噴流浴システムによれば、ポンプから圧力損失の大きいノズルまでの配管経路の屈曲部の数を相対的に少なくし、ポンプから圧力損失の小さいノズルまでの配管経路の屈曲部の数を、相対的に多くするように配設することにより、ポンプを小型化できる。
【0009】
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、前記ポンプから吐出された浴槽水を、前記第1のノズルまたは前記第2のノズルのいずれか一方にのみ供給する切替弁を備える
ことを特徴とする噴流浴システムである。
この噴流浴システムによれば、異なる噴流を発生する第1のノズルおよび第2のノズルからの噴流が衝突しないため、安定した噴流を使用者に提供することができ、且つ、ポンプは一方のノズルを駆動するのに必要な駆動力があれば足りるため、ポンプ自体を小型化することも可能となる。
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる噴流浴システムの構成を表す概略図である。
【0011】
本実施形態に係る噴流浴システムは、主として、浴槽1と、浴槽1内の浴槽水を吸入しノズル12、16から再び浴槽水中に噴出させるための噴流噴出部と、ノズル12、16から噴出される噴流に気泡を混入可能にするエア供給部と、を備える。
【0012】
まず、噴流噴出部について、図面を参照しつつ説明する。
浴槽1は、浴槽水を貯留すると共に、貯留された浴槽水を吸い込むための吸込口5を有する。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。吸込口5は浴槽1における長辺側浴槽壁に形成され、吸込口5は導水配管部6を介してポンプ7の吸入口に接続されている。ポンプ7が駆動されると、浴槽1内に貯留された浴槽水は吸込口5から導水配管部6へと吸い込まれる。
【0013】
対向する一対の長辺側浴槽壁と、対向する一対の短辺側浴槽壁と、を有する通常の浴槽を考えた場合、一般に、入浴者は、一対の短辺側浴槽壁の一方に背をもたれかけて他方の短辺側浴槽壁に足を向けた姿勢で入浴するため、吸込口5を短辺側浴槽壁に形成した場合には、入浴者の背中や足裏で吸込口5がふさがれポンプ7に過剰の負荷がかかることが懸念される。したがって、吸込口5は、入浴者の身体の一部等によってふさがれにくい長辺側浴槽壁に形成するのが望ましい。
【0014】
ポンプ7の吐出口には吐出管路部8が接続され、その吐出管路部8には、本実施形態における切替弁としての三方弁9を介して2系統の噴流供給系統が接続されている。これら2系統の噴流供給系統は吐出管路部8に対して2つに分岐して設けられ、各系統は他の系統とはつながっておらずそれぞれ独立して噴流噴出動作を行うことができる。
【0015】
第1の噴流供給系統は、三方弁9を介して吐出管路部8に接続された第1のブロー配管部11と、ポンプ7から吐出されて吐出管路部8及び第1のブロー配管部11に導かれた加圧浴槽水を浴槽1の内部に噴出可能な第1のノズル12と、を有する。第1のブロー配管部11は、その下流側が2つに分岐しており、その分岐先にそれぞれ第1のノズル12が接続されている。
【0016】
第2の噴流供給系統は、三方弁9を介して吐出管路部8に接続された第2のブロー配管部15と、ポンプ7から吐出されて吐出管路部8及び第2のブロー配管部15に導かれた加圧浴槽水を浴槽1の内部に噴出可能な第2のノズル(吐出部)16と、を有する。第2のブロー配管部15は、その下流側が2つに分岐しており、その分岐先にそれぞれ第2のノズル16が接続されている。
【0017】
なお、各系統が有するノズルは1つでもよく、その場合各ブロー配管部11、15は先を分岐させる必要はない。あるいは、各系統は3つ以上のノズルをそれぞれ有していてもよい。本実施形態では、例えば2つの第1のノズル12が一方の短辺側浴槽壁2aに取り付けられ、その短辺側浴槽壁2aに対向する他方の短辺側浴槽壁2bには例えば2つの第2のノズル16が取り付けられている。また、第1のブロー配管部11の流路断面積は、第2のブロー配管部15の流路断面積よりも小さい。
【0018】
次に、エア供給部について、図面を参照しつつ説明する。
浴槽1の内槽の上縁部の周囲に設けられた浴槽リム3において、吸込口5が形成された長辺側浴槽壁と、第1のノズル12が設けられた短辺側浴槽壁2aと、の角部近傍にエア取り込み口41が形成されている。
【0019】
エア取り込み口41には第1のエア配管部32が接続され、その第1のエア配管部32にはエア流路を開閉する開閉弁31を介して、第2のエア配管部35が接続されている。さらに、第2のエア配管部35には、逆止弁43を介して第3のエア配管部37が接続されている。第3のエア配管部37は下流側において2つに分岐され、2つの第2のブロー配管部15のそれぞれに接続されている。
【0020】
逆止弁43は、第2のノズル16から第3のエア配管部37を介して、上流側の第2のエア配管部35へ湯水が侵入することを防止する。そのため、逆止弁43よりも上流側の第2のエア配管部35内には、垢などの汚れが付着堆積しにくい。なお、第3のエア配管部37は、2つの第2のノズル16のそれぞれに接続されていてもよい。また、図2および図3に表したように、開閉弁31と逆止弁43とは一体型として設けられてもよい。
【0021】
エア取り込み口41には第4のエア配管部38がさらに接続され、その第4のエア配管部の一端(下流端)は吸込口5に接続されている。また、第4のエア配管部38は、エア取り込み口41を介して大気に連通している。例えば、吸込口5が入浴者の体の一部や髪の毛などによって閉塞され、吸込口5の内部の負圧が高まると、エジェクター効果によりその内部にエア取り込み口41および第4のエア配管部38を介してエアが取り込まれる。その結果、ポンプ7はそのエアを吸い込むことで能力が低下または停止する。これにより、浴槽水が吸い込まれない状況でのポンプ7の無駄な駆動を回避でき、また、吸込口5における吸引力が弱まり、入浴者の体の一部や髪の毛などをその吸込口5から容易に離すことができる。
【0022】
次に、本実施形態にかかる噴流浴システムの動作の概略について説明する。
第1のノズル12と第2のノズル16とは、後に詳述するように、その構造が異なり、異なるモードの噴流噴出を行うことができる。これによれば、第1のノズル12からは旋回した噴流が噴出される。つまり、使用者がもみ湯スイッチ24を押したことによる制御信号に基づいて「もみ湯モード(第1のモード)」が開始され、第1のノズル12からは旋回噴流が噴出される。これにより、入浴者は広範囲をもみほぐすような手もみに近いマッサージ感を得ることができる。
【0023】
一方、第2のノズル16からは、気泡入りの噴流と、気泡無しの噴流と、が噴出される。つまり、使用者がパワーブロースイッチ25を押したことによる制御信号に基づいて「パワーブローモード(第2のモード)」が開始され、開閉弁31は開く。その結果、浴槽リム3に設けたエア取り込み口41と、第1のエア配管部32と、第2のエア配管部35と、第3のエア配管部37と、を介して第2のブロー配管部15または第2のノズル16内に大気中のエアを混入させ、第2のノズル16からは気泡入り噴流が噴出される。これにより、短辺側浴槽壁2bに体の前面側を向けた入浴者は例えば下肢などに局所的に刺激を受ける。
【0024】
また、使用者がリラックススイッチ26を押したことによる制御信号に基づいて「リラックスモード」が開始され、開閉弁31は閉じる。その結果、第2のブロー配管部15または第2のノズル16内へのエアの供給は遮断され、第2のノズル16からは気泡なしの噴流が噴出される。これにより、入浴者は水の流れでやさしく体を包まれる感じを体感でき、心をリラックスできる。
【0025】
このように、本実施形態に係る噴流浴システムによれば、第1のノズル12による「もみ湯モード」、第2のノズル16による「リラックスモード」及び「パワーブローモード」の3つの異なる噴流噴出モードを実行可能である。このとき、後に詳述するように、第1のノズル12は、流路が漸次収縮した収縮部と、その収縮部から急拡大した拡大部と、を有し、噴出口の近傍に遮蔽体を備えている。そのため、第1のノズル12においては、大きな圧力損失が発生する。第2のノズル16は、後に詳述するように、噴出口の近傍に遮蔽体などを備えることなく、その噴出口の近傍では開放された構造を有する。そのため、第2のノズル16において発生する圧力損失は、第1のノズル12において発生する圧力損失よりも小さい。
【0026】
さらに、ポンプ7から第1のノズル12までの配管経路は、ポンプ7から第2のノズル16までの配管経路よりも短くなっている。そのため、ポンプ7から第1のノズル12までの配管経路が短いので、配管経路による圧力損失を低くすることができる。つまり、圧力損失の高い第1のノズル12は、圧力損失の低いように配管経路を調整し、圧力損失の低い第2のノズル16は、圧力損失の高いように配管経路を調整することよって、全体として圧力損失が高くならないため、ノズルからの所定の流量を確保するために、ポンプを大きくする必要がなくなる。従って、圧力損失の大きいノズルに合わせて配管経路による圧力損失を調節することにより、ポンプを小型化できる。
【0027】
また、ポンプ7から第1のノズル12までの配管経路に配設される屈曲部100の数は、ポンプ7から第2のノズル16までの配管経路に配設される屈曲部100の数よりも少なくなっている。屈曲部とは、図に示されるように、配管が90度以上屈曲している場合だけでなく、配管が45度以上屈曲しているものをいう。そのため、ポンプ7から第1のノズル12までの配管経路に配設される屈曲部100の数が少ないので、屈曲部100による圧力損失を低くすることができる。つまり、圧力損失の高い第1のノズル12は、圧力損失の低いように配管経路を調整し、圧力損失の低い第2のノズル16は、圧力損失の高いように配管経路を調整することよって、全体として圧力損失が高くならないため、ノズルからの所定の流量を確保するために、ポンプを大きくする必要がなくなる。従って、圧力損失の大きいノズルに合わせて配管経路に配設される屈曲部100による圧力損失を調節することにより、ポンプを小型化できる。
【0028】
次に、第1のノズル12に生ずる圧力損失について、図面を参照しつつ説明する。
図6は、第1のノズルの内部構造を例示する断面模式図である。
また、図7は、第1のノズルを側面から眺めた側面模式図である。なお、図7は、図6に表した矢視Aの方向から眺めた模式図である。
【0029】
第1のノズル12は、大きく分けて、略円筒形状でほぼまっすぐに延在する筒体50と、筒体50の軸方向の上流側端部に設けられた湾曲部60と、を有する。湾曲部60の内部には流水導入部52が形成され、その流水導入部52における上流側端部の最上流端には、前述した第1のブロー配管部11と浴槽1の外部で接続される流水導入口51が開口形成されている。流水導入口51近傍の流水導入部52の流路壁面には、流水導入部52の下流側へ流れ込む流水を整流する整流板62が設けられている。
【0030】
流水導入部52の下流側端部は、流水導入部52の中で最も流路断面が縮小された流路断面収縮部53として機能する。流水導入部52の流路断面積は、上流側端部から下流側端部である流路断面収縮部53に向けて漸次減少している。すなわち、流水導入部52の流路は、上流側端部から下流側端部である流路断面収縮部53に向けて漸次細くなっている。
【0031】
流路断面収縮部53は、筒体50の内部に形成されたチャンバー55に連通し、且つチャンバー55に対して流路断面が縮小されている。また、流路断面収縮部53は、その流路断面の中心を、チャンバー55の軸中心C1に一致させて、チャンバー55の軸方向に対して略平行に延在し、径が一定な直管状に形成されている。すなわち、流水導入部52の流路は上流側から下流側に向けて漸次細くなり、その細くなった先には、流路径が一定な直管部として流路断面収縮部53が続いている。
【0032】
チャンバー55の軸方向の上流側端部には、流路断面収縮部53に対して流路断面が急拡大された流路断面急拡大部54が設けられている。一方、チャンバー55の軸方向の下流側端部には噴出口56が開口している。チャンバー55の内壁面は、流路断面急拡大部54から噴出口56の近傍に至るまで、チャンバー55の軸中心C1に対して略平行に延在し、また、チャンバー55は流路断面急拡大部54の内径寸法のまま噴出口56近傍まで続いている。チャンバー55における軸方向の上流側端部が流路断面急拡大部54として機能し、チャンバー55における軸方向の下流側端部が噴出口56として機能する。
【0033】
流路断面収縮部53から流路断面急拡大部54にかけての流路壁面は略垂直に変化している。すなわち、流路断面収縮部53の流路壁面は、チャンバー55の軸方向に対して略平行であるのに対して、流路断面急拡大部54として機能するチャンバー55の軸方向の上流側端部の壁面は、流路断面収縮部53の流路壁面に対して略垂直に続いて径外方に広がって形成されている。この流路壁面の急変化により、後述するように流路断面急拡大部54にて、壁面からの流れの剥離が生じる。
【0034】
また、噴出口56近傍のチャンバー55内に、噴出口56へと通じるチャンバー55内流路の一部を遮る遮蔽体57を設けている。遮蔽体57は例えば円盤状に形成され、その中心をチャンバー55の軸中心C1に一致させて、チャンバー55の内部に設けられている。
【0035】
遮蔽体57は、例えば、遮蔽体57とチャンバー55の内壁部との間に放射状に設けられた複数の保持部材59を介してチャンバー55の内壁部に対して保持されている。それら保持部材59は、円盤状の遮蔽体57の外周面のまわりに周方向に沿って等間隔で設けられ、よって、遮蔽体57によってチャンバー55内流路のすべてが遮蔽されず、遮蔽体57とチャンバー55の内壁部との間には、チャンバー55から噴出口56への流水の流れを許容する流路が確保されている。
【0036】
また、チャンバー55の軸方向の下流側端部における噴出口56へと続く内壁面に、チャンバー55の軸中心C1に向けて傾斜した環状の傾斜面58を形成している。傾斜面58は、上流側から下流側に向かうにしたがって徐々に軸中心C1に近づくように傾斜している。
【0037】
図8(a)〜(d)は、第1のノズル12にて圧力損失が生じ、旋回噴流が形成される作用を説明するための模式図である。
流水導入口51から導入され、整流板62により整流化された加圧浴槽水は、流水導入部52、流路断面収縮部53および流路断面急拡大部54を順に経てチャンバー55内に噴流となって流入する。加圧浴槽水が、流路断面収縮部53からチャンバー55内に流入する際、流路断面の急拡大により、内壁面に沿って流れることができなくなり、すなわち流路内壁面に対して流れの剥離が生じる。
【0038】
一般的に、噴流は、外部流体との運動量交換により外部流体を加速し、噴流内部に巻き込む。このとき、噴流近傍に壁面が存在すると、外部流体を内部に引き込むように作用する引きつけ力の反作用により、噴流自身が壁面に向かって曲げられ、再び流れが壁面に沿うようになる。つまり、チャンバー55の内壁面の周の一部に流れが再付着する。
【0039】
チャンバー55の内壁面に付着した主流は、そのままチャンバー55の内壁面に沿い、遮蔽体57の外周面とチャンバー55の内壁面との間を噴出口56に向かって流れ、噴出口56の手前(上流側)で軸中心C1に向かうように傾斜して形成された傾斜面58に沿って軸中心C1に対して傾斜した噴流として噴出口56から浴槽1内に噴出する。このようにして、第1のノズル12の内部に、図8(a)において太線矢印aで表す主流が形成される。
【0040】
流路断面収縮部53に比べて噴出口56の流路断面が大きく、流れは下流に向かって減速、すなわち、チャンバー55内部では下流に向かって静圧が増加する逆圧力勾配が形成されること、さらにチャンバー55内に流路の一部を遮るように遮蔽体57が設けられていることによって、前述した主流の一部は、噴出口56から噴出されず、図8(b)において矢印bで表すように、チャンバー55の上流側に戻される。
【0041】
その上流側に戻された流れが、図8(c)に表すように、流路断面急拡大部54付近にて主流が剥離したよどみ領域に流れ込むことで、図8(d)に表すように、流路断面急拡大部54付近で中心軸C1まわりに旋回流が形成され、これにより、主流の内壁面に対する再付着位置が周方向で不規則に変化し、噴出口56からは中心軸C1まわりに不規則に旋回した噴流が噴出される。
【0042】
以上説明したように、第1のノズル12は、流路の途中に流路断面収縮部53および遮蔽体57を有する。また、チャンバー55の軸方向の上流側端部には、流路断面収縮部53に対して流路断面が急拡大された流路断面急拡大部54が設けられ、この流路断面急拡大部54付近にて主流が剥離したよどみ領域が生じる。そして、遮蔽体57により上流側に戻された流れが、このよどみ領域に流れ込むことで旋回流が形成される。そのため、第1のノズル12においては大きな圧力損失が発生し易い。
【0043】
次に、第2のノズル16に生ずる圧力損失について、図面を参照しつつ説明する。
図9は、第2のノズルを内部構造を例示する断面模式図である。
また、図10は、第2のノズルを側面から眺めた側面模式図である。なお、図10は、図9に表した矢視Bの方向から眺めた模式図である。
【0044】
第2のノズル16は、第2のブロー配管部15と連通される流路91が内部に形成された第1の可動部90と、一端側が流路91に連通する固定部84と、一端側が流路85に連通し、他端側が浴槽1内に臨む噴出口82が内部に形成された第2の可動部81と、を有する。
【0045】
第1の可動部90は、固定部84の上流側端部の近傍にOリング93を介して回動または摺動自在に保持され、第2のブロー配管部15との接続調整が可能となっている。
固定部84は、第1のノズル12が設けられた短辺側浴槽壁2aに対向する他方の短辺側浴槽壁2bに保持されている。固定部84の内部には、流水導入部87が形成され、その流水導入部87における上流側端部は流路91に連通している。
【0046】
流水導入部87の下流側端部は、流水導入部87の中で最も流路断面が縮小された流路断面収縮部86として機能する。流水導入部87の流路断面積は、上流側端部から下流側端部である流路断面収縮部86に向けて漸次減少している。すなわち、流水導入部87の流路は、上流側端部から下流側端部である流路断面収縮部86に向けて漸次細くなっている。流路断面収縮部86は、固定部84の内部に形成された流路85に連通し、且つ流路85に対して流路断面が縮小されている。
【0047】
図1に関して前述したように、第3のエア配管部37は、第2のノズル16に接続されていてもよい。つまり、固定部84には、第3のエア配管部37に接続され、且つ流路85に通じるエア吸入路88が設けられていてもよい。これによれば、開閉弁31を「開」にすることで、浴槽リム3に設けたエア取り込み口41(図2参照)と、第1のエア配管部32と、第2のエア配管部35と、第3のエア配管部37と、エア吸入路88と、を介して、第2のノズル16内に大気中のエアを混入させ、気泡入り噴流を噴出させることができる。
【0048】
流路85内は、噴出口付近に比べ圧力が低く負圧になり、エジェクター効果によって、エア吸入路88から流路85内にエアを自給させることができる。開閉弁31を閉じれば、第2のノズル16内へのエアの供給は遮断され、第2のノズル16からは気泡なしの噴流が噴出される。
【0049】
可動部81は、固定部84の流路85の出口付近に、Oリング83を介して回動または揺動自在に保持され、噴流噴出方向の調整が可能となっている。噴出口82近傍には、第1のノズル12が有する遮蔽体57などは設けられておらず、噴出口82へと通じる流路85の一部を遮る部材は設けられていない。すなわち、噴出口82近傍の流路は広く開放されている。
【0050】
そのため、第2のノズル16においては、内部に形成される主流が剥離してよどみ領域が生じたり、主流の一部が上流側に戻されてよどみ領域に流れ込むことは少ない。これにより、第2のノズル16においては、圧力損失は発生し難い。
【0051】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
例えば、吐出管路部8とは独立した他の吐出管路部がポンプの吐出口に接続され、第1のノズル12から噴出させる浴槽水よりも少量の浴槽水を吐出させる吐出部がその吐出管路部に接続されていてもよい。すなわち、少量の浴槽水を吐出させる吐出部は、第2のノズル16に限定されない。この場合には、本実施形態にかかる噴流浴システムは、三方弁9を備えていなくともよい。さらに、その吐出部は、浴槽1の内部に臨むように設けられ、少量の浴槽水を再び浴槽1の内部に供給してもよいし、浴槽1の外部に臨むように設けられ、少量の浴槽水を浴槽1の外部に排出してもよい。
また、噴流噴出部やエア供給部などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などやポンプやおよび各配管部の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態にかかる噴流浴システムの構成を表す概略図である。
【図2】第1のノズルの内部構造を例示する断面模式図である。
【図3】第1のノズルを側面から眺めた側面模式図である。
【図4】第1のノズル12にて圧力損失が生じ、旋回噴流が形成される作用を説明するための模式図である。
【図5】第2のノズルを内部構造を例示する断面模式図である。
【図6】第2のノズルを側面から眺めた側面模式図である。
【符号の説明】
【0053】
1 浴槽、 2a 短辺側浴槽壁、 2b 短辺側浴槽壁、 3 浴槽リム、 5 吸込口、 6 導水配管部、 7 ポンプ、 8 吐出管路部、 9 三方弁、 11 第1のブロー配管部、 12 第1のノズル、 15 第2のブロー配管部、 16 第2のノズル、 21 制御部、 22 操作部、 23 メインスイッチ、 24 もみ湯スイッチ、 25 パワーブロースイッチ、 26 リラックススイッチ、 31 開閉弁、 32 第1のエア配管部、 35 第2のエア配管部、 37 第3のエア配管部、 38 第4のエア配管部、 41 エア取り込み口、 43 逆止弁、 50 筒体、 51 流水導入口、 52 流水導入部、 53 流路断面収縮部、 54 流路断面急拡大部、 55 チャンバー、 56 噴出口、 57 遮蔽体、 58 傾斜面、 59 保持部材、 60 湾曲部、 62 整流板、 81 可動部、 82 噴出口、 83 Oリング、 84 固定部、 85 流路、 86 流路断面収縮部、 87 流水導入部、 88 エア吸入路、 90 可動部、 91 流路、 93 Oリング、 100 屈曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽水を貯留すると共に、前記浴槽水を吸い込む吸込口を有する浴槽と、
前記吸込口から浴槽水を吸入し加圧して吐出するポンプと、
前記吸込口から吸入した浴槽水を前記ポンプに導く導水配管部と、
前記浴槽の側壁部に設けられ、前記ポンプから吐出された浴槽水を、前記浴槽内部に噴出可能な第1のノズルと、
前記第1のノズルとは異なる前記浴槽の側壁に設けられ、且つ前記第1のノズルより圧力損失の大きい構造で形成される第2のノズルと、
前記ポンプから吐出された浴槽水を前記第1のノズルに供給する第1のブロー配管部と、
前記第1の配管部の途上で分枝され、前記第2のノズルに供給する第2のブロー配管部と、
を備えた噴流浴システムであって、
前記ポンプから前記第2のノズルまでの配管経路は、前記ポンプから前記第1のノズルまでの配管経路よりも短く配設されている
ことを特徴とする噴流浴システム。
【請求項2】
前記ポンプから前記第2のノズルまでの配管経路における屈曲部の数は、前記ポンプから前記第1のノズルまでの配管経路における屈曲部の数よりも少なく配設されている
ことを特徴とする請求項1に記載の噴流浴システム。
【請求項3】
前記ポンプから吐出された浴槽水を、前記第1のノズルまたは前記第2のノズルのいずれか一方にのみ供給する切替弁を備える
ことを特徴とする請求項1または2に記載の噴流浴システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−88708(P2010−88708A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−262588(P2008−262588)
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】