説明

噴流浴装置

【課題】簡単な構造で、変化に富んだ刺激感が得られる旋回噴流を実現する噴流浴装置を提供する。
【解決手段】噴流ノズルは、流水導入部と、筒体の軸方向に延在して筒体の内部に形成されたチャンバーとを有し、流水導入部は、加圧浴槽水が導入される流水導入口と、流水導入口に対して流路が細くされると共にチャンバーの軸方向の上流側端部に開口してチャンバーに連通する流路断面収縮部とを有し、チャンバーは、軸方向の上流側端部に設けられ流路断面収縮部に対して流路断面が急拡大された流路断面急拡大部と、軸方向の下流側端部に開口され浴槽の内部に臨む噴出口とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽内に噴流を噴出させる噴流ノズルを備えた噴流浴装置に関し、特にノズル中心軸まわりに旋回した噴流が噴出される噴流浴装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浴槽壁に噴流ノズルを設けて、そのノズルから噴流を浴槽内に噴出させるものがあるが、その多くは、まっすぐに噴流を噴出させるものであり、噴流が入浴者の体の一部に局所的にあたり、噴流により受ける刺激が単調で飽きやすく、多様なマッサージ感は得られ難かった。
【特許文献1】特開2001−8998号公報
【特許文献2】特開平2−128765号公報
【特許文献3】特開平4−61859号公報
【特許文献4】特開平4−176461号公報
【特許文献5】特開2006−150049号公報
【特許文献6】特開2005−245987号公報
【特許文献7】特開2004−513号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1には、外形形状が略円形で内部に設けた噴流孔の噴流口が軸芯位置より偏心すると共にユニット噴流口カバー内に回転自在に収容配置されたノズル本体と、バスタブ内の水を所定圧力でノズル本体の噴流孔内に噴射するオリフィスとを備えたノズル装置が開示されている。バスタブ内の水は、オリフィスを介してノズル本体の噴流孔内に所定圧力で噴射され、空気と混合して気泡混合噴流となり、噴流孔の噴流口からバスタブ内にジェット噴流として噴射される。この時、ノズル本体の噴流口が軸芯位置に対して偏心した位置に設けられていることから、オリフィスからの噴流によってノズル本体が回転し、これにより、ジェット噴流の噴射方向が変化する回転噴流が得られる。
【0004】
しかし、特許文献1では、ノズル本体を回転させることで回転噴流を生じさせる構成であるため、そのノズル本体を回転自在に支持するための構造が複雑になり、安価に作製できない。さらには、回転摺動部分の摩耗やゴミ詰まりなどによる回転性能の低下が懸念される。
【0005】
また、特許文献1では、浴槽壁に対して取り付けられる筒状の取付部材と、この取付部材の内部で回転自在に設けられた筒状のノズル本体とが二重筒状になった入れ子構造となっている。したがって、構造が複雑になるとともに、内筒に相当するノズル本体と、外筒に相当する取付部材との間に細い隙間が形成されており、その隙間にゴミ等がつまる目詰まりの心配もある。
【0006】
また、特許文献2では、下流側に向かって流路幅を漸次拡大する案内壁を内面に有する構造体(内筒に相当)と、浴槽壁に取り付けられる構造体(外筒に相当)の内壁面との間に、下流に流れてきた流水の一部を上流側に還流させる流路が細い隙間として形成されており、特許文献2においても二重筒構造となっている。したがって、構造が複雑になると共に、狭い流路(隙間)の目詰まりの心配がある。
【0007】
また、特許文献3においても、二重筒構造のノズルとなっており、やはり同様に、構造が複雑になると共に、狭い流路(隙間)の目詰まりの心配がある。
【0008】
また、特許文献4では、噴流の運動が往復運動であるため、人体への刺激範囲が直線状の軌跡となり、刺激範囲としては不十分であった。また、さらに、特許文献4で開示の噴流ノズルは浴湯を空気中に噴出させるためのもので、腰、背中、脇腹、腕、脹脛、足裏等の、通常の入浴姿勢において浴湯中に存在する身体の一部については、刺激を与えることができない。
【0009】
また、特許文献5では、内部で旋回流を形成する単筒構造のノズルの周壁部にノズル筒体内への流入口が開口しており、ノズル筒体に流入した主流は筒体内で定常的かつ強力な旋回流れを形成する。そのため、ノズル出口面から吐水される噴流は、卓越した遠心力により筒体軸方向(体表面に向かう方向)への直進性は失われ、ノズル出口面全体から径方向に均一に広がった噴流となり、広範囲を単調に刺激する噴流となってしまう。
【0010】
また、特許文献6においても、内部で旋回流を形成する単筒構造のノズルの周壁部にノズル筒体内への流入口が開口しており、広範囲を単調に刺激する噴流となってしまう。
【0011】
また、特許文献7においても、内部で旋回流を形成する単筒構造のノズルの周壁部にノズル筒体内への流入口が開口しており、やはり同様に、広範囲を単調に刺激する噴流となってしまう。
【0012】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされ、簡単な構造で、変化に富んだ刺激感が得られる旋回噴流を実現する噴流浴装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様によれば、浴槽と、前記浴槽の浴槽壁に開口され前記浴槽の内部に貯留された浴槽水が吸い込まれる吸入口と、前記吸入口から浴槽水を吸入し加圧して吐出する加圧装置と、前記浴槽のあふれ縁より下で前記浴槽壁に対して保持される一重構造の筒体を有し、前記筒体の内部に導入された浴槽水を、噴出方向を変化させながら前記浴槽の内部に噴出する噴流ノズルと、を備えた噴流浴装置であって、前記噴流ノズルは、流水導入部と、前記筒体の軸方向に延在して前記筒体の内部に形成されたチャンバーと、を有し、前記流水導入部は、前記加圧装置から送られる加圧浴槽水が導入される流水導入口と、前記流水導入口に対して流路が細くされると共に前記チャンバーの軸方向の上流側端部に開口して前記チャンバーに連通する流路断面収縮部と、を有し、前記チャンバーは、前記軸方向の上流側端部に設けられ前記流路断面収縮部に対して流路断面が急拡大された流路断面急拡大部と、前記軸方向の下流側端部に開口され前記浴槽の内部に臨む噴出口と、を有することを特徴とする噴流浴装置が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡単な構造で、変化に富んだ刺激感が得られる旋回噴流を実現する噴流浴装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図2は、本発明の実施形態に係る噴流浴装置の概略構成を示す模式図である。
図3は、同噴流浴装置において浴槽を側面方向から見た模式図である。
【0016】
本実施形態に係る噴流浴装置は、図2に表すように、浴槽1と、浴槽1の浴槽壁3bに開口された吸入口5と、循環路13、14と、循環路13、14の途中に設けられた加圧装置であるポンプ7と、浴槽壁4aに対して保持された噴流ノズル11とを備える。
【0017】
浴槽1は、略平行に相対向する一対の長辺側浴槽壁3a、3bと、略平行に相対向する一対の短辺側浴槽壁4a、4bとを有する。
【0018】
吸入口5は長辺側浴槽壁3bに形成されている。ポンプ7が駆動されると、浴槽1の内部に貯留された浴槽水(湯も含む)は吸入口5を介して循環路13へと吸い込まれる。
【0019】
一般に、入浴者は、向かい合う一対の短辺側浴槽壁4a、4bのうちの一方の短辺側浴槽壁(図2に示す具体例では短辺側浴槽壁4a)に背をもたれかけて、他方の短辺側浴槽壁(図2に示す具体例では短辺側浴槽壁4b)に足を向けた姿勢で入浴するため、吸入口5を短辺側浴槽壁に形成した場合には、入浴者の背中や足裏で吸入口5がふさがれポンプ7に過剰の負荷がかかることが懸念される。したがって、吸入口5は、入浴者の身体の一部等によってふさがれにくい長辺側浴槽壁に形成するのが望ましい。なお、図2に示す具体例では、吸入口5を、長辺側浴槽壁3bに形成したが長辺側浴槽壁3aに形成してもよい。
【0020】
循環路13の一端は吸入口5に接続され、他端はポンプ7の吸入口に接続されている。循環路14の一端はポンプ7の吐出口に接続され、他端は噴流ノズル11の流水導入口に接続されている。ポンプ7は、吸入口5から循環路13内に浴槽水を吸い込むと共に、その吸い込んだ浴槽水を加圧してポンプ7の下流側の循環路14に吐出する。このポンプ7から吐出された加圧浴槽水は、噴流ノズル11の流水導入口に流入する。使用していないときに、ポンプ7内部の残留水を抜くために、ポンプ7は吸入口5よりも上方に設けることが望ましい。
【0021】
図2に示す具体例では、一方の短辺側浴槽壁4aに、2つの噴流ノズル11を取り付けている。2つの噴流ノズル11は、略同じ高さ(例えば、浴槽1の底面から概ね230mm)に所定距離隔てて(例えば、2つの噴流ノズル11間の距離は概ね160mm)で、且つ、2つの噴流ノズル11の設置位置の中心と短辺側浴槽壁4a方向の中央部が一致するように設けられている。噴流ノズル11が取り付けられた一方の短辺側浴槽壁4aの反対側の他方の短辺側浴槽壁4bの上方には浴槽側水栓が設けられる。したがって、通常、入浴者は自然と噴流ノズル11が設けられた側の短辺側浴槽壁4aに背中を向けた姿勢で入浴する。
【0022】
次に、噴流ノズルの具体的構造について説明する。
【0023】
[第1の実施形態]
図1(a)は、第1の実施形態に係る噴流ノズル11a(図2、3を参照して前述した噴流ノズル11に対応する)の模式断面図であり、図1(b)は、図1(a)におけるA−A断面図である。
【0024】
噴流ノズル11aは略円筒状の筒体20を有し、その筒体20の軸方向の一端(上流端)には循環路14と連通される流水導入口21が開口形成され、他端(下流端)には噴出口26が開口形成されている。
【0025】
筒体20は、噴出口26を浴槽1の内部に臨ませて、前述した浴槽1における一方の短辺側浴槽壁4aに保持されている。筒体20は浴槽1のあふれ縁より下で、浴槽壁4aに対して保持されている。ここで、「あふれ縁」とは、浴槽1内に浴槽水をためていったとき、最初に浴槽1内から溢れる部分の浴槽1の縁(またはリム)を意味する。このような構成のため、噴流ノズル11aからの噴流を浴槽水中に噴出させることができる。
【0026】
噴出口26は他方の短辺側浴槽壁4bに向いている。流水導入口21は浴槽1の外部で、循環路14に接続されている。
【0027】
流水導入口21と噴出口26との間の筒体20内部には、上流側(流水導入口21側)から順に、流水導入部22、流路断面収縮部23、チャンバー25が筒体20の軸方向に沿って設けられ、これらを介して流水導入口21と噴出口26との間は連通している。
【0028】
流水導入部22は、流水導入口21と流路断面収縮部23との間に設けられ、その流路断面は流水導入口21から流路断面収縮部23に向かうにしたがって徐々に狭められている。流路断面収縮部23は、筒体20の軸中心に位置し、流水導入口21及び流水導入部22に対して流路断面が縮小されている。
【0029】
流路断面収縮部23と噴出口26との間の筒体20内部にはチャンバー25が設けられている。チャンバー25は筒体20と軸中心を一致させて筒体20の軸方向に延在している。流路断面収縮部23は、チャンバー25の軸方向の上流側端部に開口し、チャンバー25内に臨んでいる。
【0030】
チャンバー25の軸方向の上流側端部には、流路断面収縮部23に対して流路断面が急拡大(例えば径が3倍以上急拡大された)された流路断面急拡大部24が設けられている。流路断面急拡大部24は、流路断面収縮部23より下流側で流路断面収縮部23に連通している。
【0031】
チャンバー25の軸方向の下流側端部には噴出口26が開口している。チャンバー25の内壁面は、流路断面急拡大部24から噴出口26に至るまで、筒体20の軸中心Cに対して略平行に延在し、また、チャンバー25は流路断面急拡大部24の内径寸法のまま噴出口26まで続いている。チャンバー25における軸方向の上流側端部が流路断面急拡大部24として機能し、チャンバー25における軸方向の下流側端部が噴出口26として機能する。
【0032】
流路断面収縮部23から流路断面急拡大部24にかけての筒体20内空間を囲む壁面23a、24aは略垂直に変化している。すなわち、流路断面収縮部23まわりの壁面23aは、筒体20の軸方向に対して略平行であるのに対して、流路断面急拡大部24として機能するチャンバー25の上流側端部の壁面24aは、壁面23aに対して略垂直に続いて径外方に広がって形成されている。この流路壁面の急変化により、後述するように流路断面急拡大部24にて、壁面からの流れの剥離が生じる。
【0033】
なお、壁面24aは、壁面23aに対して略垂直に広がっていることに限らず、流路断面急拡大部24にて、流れの剥離が生じる程度に、下流側に向けて流路断面が拡径する漏斗(またはラッパ)状に形成されていてもよい。ただし、壁面23aに対して略垂直に続くように壁面24aが形成されている方が、流路断面急拡大部24における流れの剥離を促進させやすい。
【0034】
次に、本実施形態に係る噴流浴装置の作用について説明する。
【0035】
図2、3において、浴槽1近傍に設けられた図示しないコントローラのスイッチを入浴者が操作すると、ポンプ7が起動し、浴槽1内に貯留された浴槽水が吸入口5から循環路13内へと吸入される。この吸入された浴槽水は、ポンプ7にて加圧されて、循環路14を介して、噴流ノズル11の流水導入口21に導入される。噴流ノズル11内に導入された加圧浴槽水は、以下に説明するように、噴出方向を不規則に変化させた旋回噴流として浴槽1内に噴出される。
【0036】
図4(a)〜(d)は、第1の実施形態に係る噴流ノズル11aにて旋回噴流が形成される作用を説明するための模式図である。
【0037】
流水導入口21から導入された加圧浴槽水は、流水導入部22、流路断面収縮部23および流路断面急拡大部24を順に経てチャンバー25内に噴流となって流入する。加圧浴槽水が、流路断面収縮部23からチャンバー25内に流入する際、流路断面の急拡大により、筒体20の内壁面に沿って流れることができなくなり、すなわち流路内壁面に対して流れの剥離が生じる。
【0038】
一般的に、噴流は、外部流体との運動量交換により外部流体を加速し、噴流内部に巻き込む。このとき、噴流近傍に壁面が存在すると、外部流体を内部に引き込むように作用する引きつけ力の反作用により、噴流自身が壁面に向かって曲げられ、再び流れが壁面に沿うようになる。つまり、チャンバー25の内壁面の周の一部に流れが再付着する。
【0039】
チャンバー25の内壁面に付着した主流は、そのままチャンバー25の内壁面に沿って噴出口26に向かって流れ、噴出口26の出口断面の一部に偏って浴槽1内に噴出する。
【0040】
以上のようにして、噴流ノズル11内に、主流(図4(a)において太線矢印aで表す)が形成される。
【0041】
流路断面収縮部23に比べて噴出口26の流路断面が大きく、流れは下流に向かって減速、すなわち、チャンバー25内部では下流に向かって静圧が増加する逆圧力勾配が形成されることによって、前述した主流の一部は噴出口26から噴出されず、図4(b)において矢印bで表すように、チャンバー25の上流側に戻される。
【0042】
その上流側に戻された流れが、図4(c)に表すように、流路断面急拡大部24付近にて主流が剥離したよどみ領域に流れ込むことで、図4(d)に表すように、流路断面急拡大部24付近で中心軸Cまわりに旋回流が形成され、これにより、主流の内壁面に対する再付着位置が不規則に変化し、噴出口26からは中心軸Cまわりに不規則に噴出方向が変化する噴流が噴出される。
【0043】
入浴者は、噴流ノズル11aから噴出される旋回噴流を、腰、背、肩、手、足等の身体の一部に受けることにより、マッサージ効果を得ることができる。噴流ノズル11aから噴出される噴流は、一般的に広く知られる気泡浴装置による細く強い直線的な噴流とは異なり、太くやわらかい旋回噴流であるため、腰を包み込む、背中、腰全体を押すようにもみほぐすなど、局所的に強い刺激感ではなく、広範囲をもみほぐすような手もみに近いマッサージ感を得ることができ、長時間入浴していても飽きがなくゆったりとリラックスできる。また、直線的な強い噴流を局所的に受ける場合には、所望の部位にその噴流を受けるべく姿勢を保つために緊張状態になりがちであったが、本実施形態の旋回噴流は広範囲にわたってやわらかい刺激を与えるため、入浴者に緊張を強いることなく、力を抜いたリラックスした状態にさせやすい。
【0044】
また、本実施形態に係る噴流ノズル11aは、噴流ノズル11a内に導入された流体自身が、前述したようにチャンバー25内での還流作用によって、噴出口26から噴出される噴流の旋回を励起する構成となっているため、特許文献1のような回転摺動部分が不要であり、ノズル構造が単純化され、安価に作製することができ、またメンテナンスも容易になる。さらには、回転摺動部分における摩耗やゴミ詰まりなどによる旋回性能低下の心配もない。
【0045】
また、前述したように、特許文献1のノズルは二重筒状になった入れ子構造となっている。したがって、構造が複雑になるとともに、内筒に相当するノズル本体と、外筒に相当する取付部材との間に細い隙間が形成されており、その隙間にゴミ等がつまる目詰まりの心配もある。同様に、特許文献2、3においても、ノズルが二重筒構造となっている。したがって、構造が複雑になると共に、狭い流路(隙間)の目詰まりの心配がある。
【0046】
これに対して本実施形態では、特許文献1、2、3のように中心の流路の外側に別の流路が細い隙間として形成されておらず、筒体20は一重構造である。すなわち、ひとつの筒体20によって周囲が囲まれる単一空間(流路)内で、噴出口26へと向かう主流、および主流とは逆方向に流れる還流が形成され、浴槽水中に旋回噴流として噴出される。したがって、構造が単純化され、安価に作製することができ、またメンテナンスも容易になる。さらには、目詰まりによる旋回性能低下の心配もない。
【0047】
また、前述したように、特許文献5、6、7のノズルは、内部で旋回流を形成する単筒構造のノズルの周壁部にノズル筒体内への流入口が開口された構造であり、ノズル筒体内に流入した主流は筒体内で定常的かつ強力な旋回流を形成する。そのため、ノズル出口面から吐水される噴流は、卓越した遠心力により筒体軸方向(体表面に向かう方向)への直進性は失われ、ノズル出口面全体から径方向に均一に広がった噴流となり、広範囲を単調に刺激する噴流となってしまう。
【0048】
これに対して本実施形態では、旋回流を励起するためのチャンバー25への流入口として機能する流路断面収縮部23は、チャンバー25を囲む筒体20の周壁部には形成されてはおらず、チャンバー25の軸方向の上流側端部に開口している。したがって、流路断面収縮部23からチャンバー25内に流入した主流は、流路断面急拡大部24で流路壁面から剥離した後、チャンバー25の内周面に再付着して噴出口26より直進性を保ったまま噴出し、さらに、その主流の流路壁面(チャンバー25の内周面)への再付着位置がチャンバー25内に形成される循環流(戻り流)により変化することで、噴出方向が変化するため、刺激箇所が時間とともに変化するような変化に富んだ噴流刺激が得られる。
また、流路断面収縮部23がチャンバー25の中心軸C上に位置していることから、上記加圧浴槽水がチャンバー25内に流れ込んだとき、チャンバー25の内壁面の周方向における一部分に偏って付着せず、付着位置の変化による旋回を起こしやすい。
【0049】
次に、本実施形態と、比較例(ノズルからまっすぐに噴流を噴出させるもの)とで、噴出される噴流挙動を比較した結果について説明する。
【0050】
ノズルからの噴出噴流を、噴出口から70mmの位置に設けた面状に広がる観測体に衝突させ、その観測体に対する噴流衝突部分を可視化した状態で噴出口に対して正対する方向から2秒間観測し、噴流衝突部分の中心位置の時間変化に伴う衝突面内分布(移動軌跡)を求めた。
【0051】
図5は比較例のノズルから噴出される噴流についての測定結果であり、図6は第1の実施形態の噴流ノズル11aから噴出される噴流についての測定結果である。図5、6の各図において、小さな○印が観測体に対する噴流衝突部分の中心位置を示し、そのサンプリング周波数は100(Hz)である。また、測定時におけるノズルからの噴出流量は、およそ40(リットル/分)となるように設定した。
本測定における第1の実施形態の噴流ノズル11aについて、図1に表す各寸法d、D、Dout、Lは、それぞれ以下のように設計した。流路断面収縮部23の内径d=8.3mm、流路断面急拡大部24及びチャンバー25の内径D=27.8mm、噴出口26の口径Dout=27.8mm、チャンバー25の長さL=76.6mm。
【0052】
まっすぐに噴流を噴出させる比較例のものでは、図5に示すように、噴流が局所に集中して当たり、すなわち、噴流が入浴者の体の一部に局所的にあたり、噴流により刺激を受ける箇所が移動していく感じは受けず、噴流による刺激が単調で飽きやすく多様なマッサージ感は得られ難い。
【0053】
これに対して、第1の実施形態に係る噴流ノズル11aでは、噴流衝突部分の中心が局所に集中せず時間経過に伴って位置が変化し、すなわち、噴流衝突による刺激箇所が時間とともに変化するような変化に富んだ飽きのない刺激感が得られる。
【0054】
また、図7(a)〜(h)の各図は、第1の実施形態に係る噴流ノズル11aについての図6と同様な測定結果を示す図である。また、(a)から始まって、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)を順に経て(h)に至る順序は、時間の経過順序を示す。
【0055】
また、図7(a)〜(h)の各図中において○印で表される噴流衝突部分の中心は、時間経過にともなって太線矢印で示すような軌跡で位置を変えていく。例えば、(a)のときには、噴流衝突部分の中心は時間経過にともなって図7において時計まわりに位置を変えていくように挙動していたのに対し、(a)より時間的に後の、例えば(d)のときには、噴流衝突部分の中心は時間経過にともなって図7において横方向に位置を変えていくように挙動する。(a)〜(h)の各観測時を個々に比較してみても噴流衝突部分の中心の移動軌跡はばらばら(不規則)であり、(a)から(h)に至るの一連の時間経過においても、噴流衝突部分の中心は不規則に位置を変えている。
【0056】
この図7の結果より、第1の実施形態に係る噴流ノズル11aでは、噴出噴流が不規則な軌跡を描いて衝突対象(人体)表面上を移動するため、機械的でない、人の手もみに近い自然なマッサージ感が得られる。
【0057】
[第2の実施形態]
図8は、本発明の第2の実施形態に係る噴流ノズル11b(図2、3を参照して前述した噴流ノズル11に対応する)の模式断面図である。なお、前述した実施形態と同じ構成要素については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0058】
本実施形態では、チャンバー25の軸方向の下流側端部における噴出口26へと続く内壁面を、チャンバー25の軸中心Cに向けて傾斜させている。具体的には、筒体20の下流端における径外方部に、軸中心Cに向けて突出する環状のリップ部20aを設け、そのリップ部20aの内周端に環状の傾斜面28を設けている。傾斜面28は、上流側から下流側に向かうにしたがって徐々に軸中心Cに近づくように傾斜している。
【0059】
前述したように主流がチャンバー25の内周面における周の一部に偏ることから筒体軸方向に対して偏向した噴流が実現されるが、本実施形態のように噴出口26の上流側の手前に傾斜面28を設け、その傾斜面28に主流を沿わせることで、主流の偏向を促進することができ、より広範囲にわたる旋回噴流を形成しやすくなる。
【0060】
図9は第2の実施形態の噴流ノズル11bから噴出される噴流についての、前述した図5、6と同様な測定結果であり、図9において、小さな○印が観測体に対する噴流衝突部分の中心位置を示す。
本測定における第2の実施形態の噴流ノズル11bについて、図8に表す各寸法d、D、Dout、L、LLip、hLipは、それぞれ以下のように設計した。流路断面収縮部23の内径d=8.3mm、流路断面急拡大部24及びチャンバー25の内径D=27.8mm、噴出口26の口径Dout=22.3mm、チャンバー25の長さL=76.6mm、リップ部20aの長さLLip=1.4mm、リップ部20aの高さhLip=1.35mm。
【0061】
本実施形態においても、噴流衝突部分の中心が局所に集中せず時間経過に伴って位置が変化し、すなわち、噴流衝突による刺激箇所が時間とともに変化するような変化に富んだ飽きのない刺激感が得られる。さらに、本実施形態では、傾斜面28を設けることで、図6に示す第1の実施形態の場合に比べて、噴流の噴出偏向角度が大きくなることで、図9に示すように噴流が動く範囲が広くなり、人体表面のより広範囲をマッサージ可能となる。
【0062】
[第3の実施形態]
図10は、本発明の第3の実施形態に係る噴流ノズル11c(図2、3を参照して前述した噴流ノズル11に対応する)の模式断面図である。なお、前述した実施形態と同じ構成要素については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0063】
本実施形態では、噴出口26近傍のチャンバー25内に、噴出口26へと通じるチャンバー25内流路の一部を遮る遮蔽体27を設けている。
【0064】
図11(a)は遮蔽体27が設けられた部分における筒体20及びチャンバー25の断面図であり、図11(b)は図11(a)におけるA−A断面図である。
【0065】
遮蔽体27は例えば円盤状に形成され、その中心を筒体20及びチャンバー25の軸中心Cに一致させて、チャンバー25の内部に設けられている。遮蔽体27は、チャンバー25内流路のすべてを遮蔽しておらず、遮蔽体27とチャンバー25の内壁部25bとの間には、チャンバー25から噴出口26への流水の流れを許容する流路25aが確保されている。
【0066】
図11に示す具体例では、遮蔽体27は、遮蔽体27とチャンバー25の内壁部25bとの間に放射状に設けられた3本の棒状の支持部31を介してチャンバー25の内壁部25bに対して支持されている。支持部31の一端は遮蔽体27の内部に嵌入されて固定され、他端はチャンバー25の内壁部25bに形成された孔に嵌入されて固定されている。3本の支持部31は、遮蔽体27の外周面のまわりに周方向に沿って等間隔で設けられている。
【0067】
遮蔽体27は、流水導入口21から導入されチャンバー25を経て噴出口26へと流れる加圧浴槽水の圧力(動圧)を受けるため、支持部31が1本だけであると前記圧力に耐え得る十分な強度が得られず遮蔽体27が外れてしまう可能性があり、支持部31が2本だけであると、遮蔽体27表面に作用する前記圧力が軸中心Cに対して非軸対称分布になることにより生じる支持部周りのモーメントの影響を受け、遮蔽体27が回転してしまう可能性がある。したがって、支持部31は、3本以上設けるのが望ましい。
【0068】
なお、図12(a)及びそのB−B断面図である図12(b)に表すように、遮蔽体27の外周面のまわりに周方向に沿って90°おきに例えば4本の支持部31を設けてもよい。
【0069】
また、図13(a)及びそのC−C断面図である図13(b)に表すように、遮蔽体27及びチャンバー25の内壁部25bに対して一体に支持部32を設けてもよい。これにより、部品数を少なくすることができ、安価に作製することができる。
【0070】
また、図14(a)及びそのD−D断面図である図14(b)に表すように、筒体20及び遮蔽体27を一体に成形した後、支持部33を残すようにして遮蔽体27のまわりをくり抜いて、チャンバー25から噴出口26への流水の流れを許容する流路25aを形成するようにしてもよい。
【0071】
前述したように、遮蔽体27を設けなくても、チャンバー25内静圧は、浴槽1内に貯留された浴槽水の静圧より低く、チャンバー25内部では下流側に向かって静圧が増加する逆圧力勾配が形成されるため、主流の一部をチャンバー25上流側に戻す還流を形成することは可能である。しかし、本実施形態のように遮蔽体27を設けた方が、逆静圧勾配(流れ方向に対して静圧が上昇)だけを利用した還流形成に比べ、噴流噴出方向の切り替わりを生じさせるための循環流の形成が安定するため、噴流の旋回が安定する。すなわち、噴流旋回方向もしくは噴流移動方向が反転しにくくなる。
【0072】
図15は第3の実施形態の噴流ノズル11cから噴出される噴流についての、前述した図6と同様な測定結果であり、図15において、小さな○印が観測体に対する噴流衝突部分の中心位置を示す。
噴流ノズル11dにおいて図10に表す各寸法d、D、DCB、h、Dout、L、Xは、それぞれ以下のように設計した。流路断面収縮部23の内径d=8.3mm、流路断面急拡大部24及びチャンバー25の内径D=27.8mm、遮蔽体27の外径DCB=20.9mm、遮蔽体27の軸方向厚さh=5.8mm、噴出口26の口径Dout=27.8mm、チャンバー25の長さL=76.6mm、遮蔽体27の軸方向の中心から噴出口26までの距離X=10.4mm。
【0073】
本実施形態においても、噴流衝突部分の中心が局所に集中せず時間経過に伴って位置が変化し、すなわち、噴流衝突による刺激箇所が時間とともに変化するような変化に富んだ飽きのない刺激感が得られる。
【0074】
また、本実施形態では、遮蔽体27を設けることで、噴流噴出方向の切り替わりを生じさせるための循環流の形成が安定するため、噴流旋回方向もしくは噴流移動方向の反転が起こりにくくなり、人体表面に対する噴流衝突部分が急に大きく位置を変えるいわゆる「飛び」がなく、より手もみマッサージに近い自然なマッサージ感が得られる。
【0075】
第1の実施形態の噴流ノズル11aから噴出される噴流についての図6の測定時には、噴流旋回方向もしくは噴流移動方向の反転が2秒間の間に12回起こり、第2の実施形態の噴流ノズル11bから噴出される噴流についての図9の測定時には、噴流旋回方向もしくは噴流移動方向の反転が2秒間の間に9回起こり、第3の実施形態の噴流ノズル11cから噴出される噴流についての図15の測定時には、噴流旋回方向もしくは噴流移動方向の反転は2秒間の間に2回だけであった。
【0076】
[第4の実施形態]
図16は、本発明の第4の実施形態に係る噴流ノズル11d(図2、3を参照して前述した噴流ノズル11に対応する)の模式断面図である。なお、前述した実施形態と同じ構成要素については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0077】
本実施形態は、第1の実施形態のノズル構成に対して、第2の実施形態の傾斜面28と第3の実施形態の遮蔽体27とを加えた構成となっている。
【0078】
図17(a)〜(d)は、本実施形態に係る噴流ノズル11dにて旋回噴流が形成される作用を説明するための模式図である。
【0079】
流水導入口21から導入された加圧浴槽水は、流水導入部22、流路断面収縮部23および流路断面急拡大部24を順に経てチャンバー25内に噴流となって流入する。加圧浴槽水が、流路断面収縮部23からチャンバー25内に流入する際、流路断面の急拡大により、筒体11内壁面に沿って流れることができなくなり、すなわち流路内壁面に対して流れの剥離が生じる。
【0080】
一般的に、噴流は、外部流体との運動量交換により外部流体を加速し、噴流内部に巻き込む。このとき、噴流近傍に壁面が存在すると、外部流体を内部に引き込むように作用する引きつけ力の反作用により、噴流自身が壁面に向かって曲げられ、再び流れが壁面に沿うようになる。つまり、チャンバー25の内壁面の周の一部に流れが再付着する。
【0081】
チャンバー25の内壁面に付着した主流は、そのままチャンバー25内壁面に沿い、遮蔽体27の外周面とチャンバー25内壁面との間を噴出口26に向かって流れ、噴出口26の手前(上流側)で筒体20の軸中心に向かうように傾斜して形成された傾斜面28に沿って軸中心Cに対して大きく傾斜した噴流として噴出口26から浴槽1内に噴出する。
【0082】
以上のようにして、噴流ノズル11内に、主流(図17(a)において太線矢印aで表す)が形成される。
【0083】
流路断面収縮部23に比べて噴出口26の流路断面が大きく、流れは下流に向かって減速、すなわち、チャンバー25内部では下流に向かって静圧が増加する逆圧力勾配が形成されること、さらにチャンバー25内に流路の一部を遮るように遮蔽体27が設けられていることによって、前述した主流の一部は、噴出口26から噴出されず、図17(b)において矢印bで表すように、チャンバー25の上流側に戻される。
【0084】
その上流側に戻された流れが、図17(c)に表すように、流路断面急拡大部24付近にて主流が剥離したよどみ領域に流れ込むことで、図17(d)に表すように、流路断面急拡大部24付近で中心軸Cまわりに旋回流が形成され、これにより、主流の内壁面に対する再付着位置が周方向で不規則に変化し、噴出口26からは中心軸Cまわりに不規則に旋回した噴流が噴出される。
【0085】
噴出流に気泡を混入させて噴出流を可視化した状態で、本実施形態に係る噴出ノズル11dから旋回噴流を噴出させた様子を、図18(a)〜(d)の写真図に表す。
【0086】
また、図19は第4の実施形態の噴流ノズル11dから噴出される噴流についての、前述した図6と同様な測定結果であり、図19において、小さな○印が観測体に対する噴流衝突部分の中心位置を示す。
【0087】
本実施形態においても、噴流衝突部分の中心が局所に集中せず時間経過に伴って位置が変化し、すなわち、噴流衝突による刺激箇所が時間とともに変化するような変化に富んだ飽きのない刺激感が得られる。さらに、本実施形態では、傾斜面28を設けることで、傾斜面28を設けない図6に示す第1の実施形態及び図15に示す第3の実施形態に比べて、噴流の噴出偏向角度が大きくなることで、噴流が動く範囲が広くなり、人体表面のより広範囲をマッサージ可能となる。
【0088】
また、本実施形態では、遮蔽体27を設けることで、噴流噴出方向の切り替わりを生じさせるための循環流の形成が安定するため、噴流旋回方向もしくは噴流移動方向の反転が起こりにくくなり、人体表面に対する噴流衝突部分が急に大きく位置を変えるいわゆる「飛び」がなく、より手もみマッサージに近い自然なマッサージ感が得られる。本実施形態では、図19の測定時、噴流旋回方向もしくは噴流移動方向の反転は0回、すなわち反転が起こらなかった。
【0089】
ここで、図20は、機械的にノズルを回転させる構造の比較例のノズルから噴出される噴流についての、前述した図6と同様な測定結果であり、図20において、小さな○印が観測体に対する噴流衝突部分の中心位置を示す。
【0090】
また、図21は、人の手によるもみマッサージにおける荷重作用部位(図21において小さな○印で示す)の移動軌跡を示す参考図である。
【0091】
図20の結果より、この比較例では、噴流はほぼ一定の半径でもって旋回もしくは移動しているため、刺激が単調で飽きやすい。
【0092】
これに対して、前述した各実施形態の噴流ノズルから噴出される噴流についての移動軌跡を示す図6、図9、図15、図19は、図21に示す人の手によるもみマッサージの荷重移動軌跡と似ており、機械的でない、より自然な手もみマッサージ感が得られる。
【0093】
また、前述した各実施形態の噴流ノズルから噴出される噴流についての移動軌跡を示す図6、図9、図15、図19における軌跡半径の時間平均は、第1の実施形態(図6)では0.5cm、第2の実施形態(図9)では2.3cm、第3の実施形態(図15)では0.8cm、第4の実施形態(図19)では1.7cmであった。すなわち、傾斜面28を設けた構造(第2、第4の実施形態)の方が、傾斜面28を設けていない構造(第1、第3の実施形態)よりも、より広範囲を噴流が移動する。
【0094】
前述した各実施形態において、チャンバー25内は、噴出口26面に比べ圧力が低く、各ノズル11a〜11d(図2、3においては符号11で代表して表す)が図3中に示すような高さ位置に取り付けられるのであれば、チャンバー25内は概ね負圧を生じており、チャンバー壁の任意の位置に空気流入口を設けることで空気を自給させることができる。
【0095】
噴流ノズル11から噴出される噴流は旋回しているので、気泡が混入されなくても、マッサージ感を受けるのに十分な刺激感が得られる。むしろ気泡混入では得られない水で押されるような手もみに近いマッサージ感が得られる。また、気泡を混入しない分、噴流の噴出音及び気泡混入時の音を低減して、静かな環境でよりリラックスできる。もちろん、上記したように、容易に気泡を混入することが可能であるので、本実施形態に係る旋回噴流に気泡を混入してもよく、その場合、気泡を混入しない場合よりも噴流の旋回力が弱まる。
【0096】
本発明者等は、第4の実施形態に係るノズル11dを用いて、9人の被験者に対して、気泡混入有りと無しの場合それぞれについて感応試験を行った。その結果を表1、2に示す。
【0097】
【表1】

【0098】
【表2】

【0099】
表1の結果より、気泡混入噴流の方が刺激を強く感じる傾向にあり、また、表2の結果より、気泡混入なしの方が噴流の旋回を感じやすいとの結果が得られた。したがって、使用者の好みに応じて、気泡混入有無の切り替えもしくは気泡混入量の調整により、多彩な刺激感を実現することが可能である。
【0100】
例えば、気泡混入量が多いと噴流全体の流量が大きくなり強い刺激を実現することが可能であるし、気泡混入量が少ないと数mm程度の径の小さな気泡を多数発生させることができ、小さな気泡につつまれる柔らかい刺激感を実現することが可能である。さらには、数十μmの微細気泡を混入させると、気泡により白濁した噴流が実現されるため視覚的に楽しめる。
【0101】
次に、本発明者等は、図22に表すように、第4の実施形態に係るノズル11dにおける噴出口26の近傍に圧力計45を設け、噴出口26から噴出される旋回噴流の圧力を測定した。圧力計45は、噴出口26から30(mm)離れ、且つ軸中心Cから10(mm)上方の位置に設けた。
【0102】
噴流ノズル11dにおいて図16に表す各寸法d、D、DCB、h、Dout、L、Xは、それぞれ以下のように設計した。流路断面収縮部23の内径d=8.3(mm)、流路断面拡大部24及びチャンバー25の内径D=27.8(mm)、遮蔽体27の外径DCB=20.9(mm)、遮蔽体27の軸方向厚さh=5.8(mm)、噴出口26の口径Dout=22.3(mm)、チャンバー25の長さL=76.6(mm)、遮蔽体27の軸方向の中心から噴出口26までの距離X=10.4(mm)。
【0103】
噴流が計測点を通過する際には、噴流の動圧が加味されるため、計測される圧力は大きな値をとる。すなわち、横軸に時間を、縦軸に圧力計45の測定値をとったグラフにおいて、図22に表すような噴流の通過に同期した波形が得られる。この波形の時間変動周波数は、噴流の通過する周波数と一致することから、この圧力計45で測定された旋回噴流圧力の時間変化データを高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)して、旋回噴流圧力の旋回周波数スペクトルを算出した。
そのグラフ図を、図23に表す。図23において、a、b、c、d、eは、それぞれ、噴出流の流量を15、20、25、30、35(リットル/分)に設定した場合のグラフを表す。
【0104】
図23の結果より、噴出流の旋回周波数は概ね1〜6Hz程度であり、これは、人の手によるもみマッサージに近い刺激を入浴者に与える。また、旋回周波数が一定ではなく不規則に変化するので自然なマッサージ感が得られ、入浴者に緊張感を与えにくい。
【0105】
図24は、圧力計45によって測定された圧力の時間変化から、一連のデータを規定時間ごとに分けて高速フーリエ変換を行うことにより得られた噴流の旋回周波数の時間変化を求めた結果を示す。図24において、縦軸に周波数、横軸に時間をとり、色の濃淡が周波数スペクトルのパワーの大きさを示し、色が薄いほどパワーが大きい。
【0106】
本実施形態では、作動流体自身の乱れにより噴流の旋回運動が形成されるため、図24に示すように、不規則に旋回周波数が変化してゆらいでいる時間帯と、ほぼ一定周波数で旋回している時間帯と、旋回していない時間帯とが不規則に存在する。結果として特別な制御をしなくても自然なゆらぎを持った旋回噴流を実現することができる。これにより、人による手もみ感覚に近づけることができ、変化に富んだ旋回噴流刺激が得られ、飽きがこない。
【0107】
特許文献1の構成では、一定の旋回周波数となっており、飽きやすく、変化に富んだ多彩なマッサージ感が得られない。
【0108】
一方、人が刺激を皮膚等を介して感じるときに、刺激を感じる受容器は人や刺激を受ける場所によっても異なるが、十数Hz〜数百Hzの範囲に刺激を連続してもしくは連続と同様な刺激を受けているような錯覚を生じる。したがって、旋回刺激を感じるには、旋回周波数は1〜6Hz程度が望ましい。
【0109】
次に、図25は、流量と旋回周波数との関係を示すグラフ図である。横軸は、ポンプ7の下流側に接続された循環路14に設けた流量計にて測定された流量(リットル/分)を表し、縦軸は、噴流の時間平均旋回周波数(Hz)を表す。グラフ中、丸は、第4の実施形態の構成においてチャンバー25の内径D=27.8(mm)とした場合を、四角はD=33.2(mm)とした場合を、三角は特許文献1の構成を表す。
【0110】
特許文献1の構成では、流量と旋回周波数とは比例関係にあり、旋回周波数を遅くさせたい場合、流量を小さくする必要があり、刺激感が減少し、逆に、流量を大きくして刺激感を強くしたい場合、旋回周波数が速くなってしまう。
【0111】
第4の実施形態では、特許文献1に比べて、流量の変化に対する旋回周波数の変化が小さく、また流量40(リットル/分)以上では旋回周波数はほぼ一定になり、旋回周波数はノズルの形状(チャンバー径D)によりほぼ決定され、旋回周波数が流量に大きく依存しない。したがって、手もみ感を得るべく所望の旋回周波数を維持したまま、流量の変更すなわち刺激感の調整が可能となる。
【0112】
次に、流路断面収縮部の内径(チャンバー25への流入口径)dを様々に変えて、流量(リットル/分)と、圧力(MPa)とを測定した。この測定結果を図26に表す。流量は、ポンプ7の下流側に接続された循環路14に設けた流量計にて測定し、圧力は、その循環路14において流量計より下流側であって噴流ノズル11の手前(上流側)に設けた圧力計にて測定した。
【0113】
図26において、a、b、c、d、e、f、g、hは、それぞれ、流路断面収縮部の内径dを6.0、7.0、8.0、8.3、8.5、9.0、10.0、12.0(mm)に設定した場合のグラフを表す。他の部分の寸法D、DCB、h、Dout、L、Xは、前述と同様である。
【0114】
図26中の各曲線上に記した記号は旋回感(噴流の旋回を感じる程度)と刺激感(噴流の刺激強さの程度)の官能評価を行った結果を示す記号である。ここで、バツ印(×)、白抜き三角(△)、黒塗り三角(▲)、白抜き丸(○)は、それぞれ、旋回感及び刺激感共に不十分の場合、旋回感は十分だが刺激感が不十分の場合、旋回感は不十分だが刺激感が十分の場合、旋回感及び刺激感共に十分の場合、を示している。
【0115】
図26の結果より、流路断面収縮部の内径dが大きい方が、噴流ノズル11手前の循環路14内における圧力が小さい、すなわちノズル部での圧損が小さい。ただし、流路断面収縮部の内径dをあまり大きくすると、噴出流の旋回性能が低下してしまう(図26中領域Z)ので、圧損を小さくしつつ所望の旋回性能を得るには、流路断面収縮部の内径dは概ね9.0(mm)以下が望ましい。
流路断面収縮部の内径dが概ね9.0(mm)以下であっても、流量が20(リットル/分)より小さいと噴流が弱すぎ、噴流の旋回もわずかしか感じとれない。さらに、流量が25(リットル/分)以上であれば旋回感を感じるが、流路断面収縮部の内径dが小さすぎると、噴流の太さが細く感じられ、噴流浴装置としての刺激感としては物足りなさを感じる(図26中領域X)。以上の点から、旋回感と刺激感を両立する、すなわち、手もみマッサージに近い感覚を得るには、流路断面収縮部の内径dが8.0〜9.0(mm)、且つ、流量は30(リットル/分)以上であることが望ましい(図26中領域Y)。
【0116】
流路断面収縮部の形状の違いによる圧損の大きさの違いを図27に示す。
圧損の計測は、上記の方法と同様に行った。グラフ中の白抜き丸(○)は、上記で説明した流路断面収縮部23とした場合の結果であり、白抜き三角(△)は、後述する図30に示す流路断面収縮部43aとした場合の結果である。
【0117】
流路断面収縮部の内径dは5.5(mm)とし、他の部分の寸法D、DCB、h、Dout、L、Xは、前述と同様である。本条件においては、同流量時で比較すると、流路断面が流れ方向に向かってなだらかに縮小する流路断面収縮部23とした場合のノズル部圧損の大きさは、流量が10〜50(リットル/分)の範囲内においては、急激に断面が縮小する図30に示す流路断面収縮部43aの場合の概ね60%程度となり、低圧損化のためには流路断面収縮部23のようななだらかに断面が収縮する形状がよい。
【0118】
次に、図28は、第4の実施形態に係る噴流ノズル11dにおいて、旋回噴流の噴出角度の時間変化を示すグラフ図である。
【0119】
噴流角度は、旋回噴流を横方向から見た場合において、噴流ノズル11dの中心軸Cに対するある瞬間の角度を表す。中心軸C(角度0°)に対して上方に傾いている場合を正の値、下方に傾いている場合を負の値とし、例えば、図29(a)は噴流角度が13°の場合を、図29(b)は噴流角度が−23°の場合の写真図である。
【0120】
実際に人がマッサージをする場合において、人体表面に対して荷重を加えながら、その荷重位置を移動させるため、人体表面に対する荷重の方向は概ね人体表面に対して斜め方向となる。本実施の形態の旋回噴流は、人の手によるマッサージと同様に、中心軸Cから偏向して噴出し、且つ、噴流衝突点が移動し、人体表面に対して斜め方向から衝突するので、人の手に近い手もみマッサージ感覚を得やすい。
【0121】
また、図28に示したように、第4の実施形態の旋回噴流は、噴流ノズル11dの中心軸Cから0°〜30°傾いて噴出するため、噴出口26からの距離により刺激感が異なる。噴出口26からの距離が概ね20(mm)以下の場合には、狭い範囲を強く押されるような刺激感が得られる。噴出口26からの距離が概ね20〜100(mm)の位置では、噴流の旋回が顕著に感じられ、噴流によるもみ感が得られる。噴出口26からの距離が概ね100(mm)以上の位置では、旋回により大きく拡散した噴流によって、広範囲を押されるような刺激感が得られる。
【0122】
図28の結果より、噴出角度が時間的に不規則に揺らいでいるのがわかる。これにより、特別な制御をしなくても変化に富んだ旋回噴流を実現することができる。旋回噴流の噴出角度が不規則に変化することで、旋回噴流のあたる範囲が不規則に変化し、飽きをまねかない。
【0123】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、それらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0124】
図30に表すように、流水導入部42の内径は、流水導入口21から流路断面収縮部43aにかけて略同じとしてもよい。この場合、流水導入部42とチャンバー25との境界に、軸中心Cに対して略垂直な隔壁43を設け、その隔壁43の中央に孔を設け、流路断面収縮部43aをオリフィス形状にて構成している。
【0125】
ただし、前述した各実施形態のように、流水導入部22の流路断面を、流水導入口21から流路断面収縮部23に向けて徐々に狭めることで、噴流ノズル11内での圧力損失が小さくなり、噴出に際して大きな圧力を与えなくて済む。すなわち、ポンプ7を大きなものにしなくて済み、設置スペース及びコスト低減が図れる。
【0126】
図31は、噴流ノズルの他の具体例を表す。この噴流ノズルにおける遮蔽体47は、噴出口26に向き合う面の反対側(上流側)の面が曲面状に形成されている。チャンバー25内を流れてきた浴槽水が当たる面を曲面状にすることで、浴槽水中に含まれる砂等の異物の、遮蔽体47に対する衝突を緩和でき、遮蔽体47が外れたり破損するのを防止できる。
【0127】
また、遮蔽体27は、図32に表すように、チャンバー25より外側の噴出口26に臨む位置に設けてもよく、この場合でも、主流の一部をチャンバー25の上流側に戻して前述したような作用にて旋回噴流を形成することができる。
【0128】
図33は、本発明の第5の実施形態に係る噴流ノズル11e(図2、3を参照して前述した噴流ノズル11に対応する)の模式断面図である。
【0129】
この噴流ノズル11eは、大きく分けて、略円筒形状でほぼまっすぐに延在する筒体20と、筒体20の軸方向の上流側端部に設けられた湾曲部30とを有する。筒体20と湾曲部30とは一体成形構造であってもよいし、別体のものを結合させてもよい。
【0130】
湾曲部30の内部には流水導入部22が形成され、その流水導入部22における上流側端部の最上流端には、前述した循環路14と浴槽1の外部で接続される流水導入口21が開口形成されている。筒体20の軸方向の下流側端部には噴出口26が開口形成されている。
【0131】
流水導入部22の下流側端部は、流水導入部22の中で最も流路断面が縮小された流路断面収縮部23として機能する。流路断面収縮部23の最下流端は、筒体20の軸方向の上流側端部に開口している。
【0132】
流水導入部22の流路断面は円形または楕円形であり、その流路断面積は、上流側端部から下流側端部である流路断面収縮部23に向けて漸次減少している。すなわち、流水導入部22の流路は、上流側端部から下流側端部である流路断面収縮部23に向けて漸次細くなっている。
【0133】
流路断面収縮部23の流路断面の中心は、筒体20の軸中心C1に一致している。流水導入部22の流路断面の中心を通る流路中心線C2は曲率を有する曲線を描き、すなわち、流水導入部22は湾曲している。その流路中心線C2の下流端位置は、チャンバー25の軸中心C1に一致している。
【0134】
流路断面収縮部23は、筒体20の内部に形成されたチャンバー25に連通し、且つチャンバー25に対して流路断面が縮小されている。また、流路断面収縮部23は、その流路断面の中心を、チャンバー25の軸中心C1に一致させて、チャンバー25の軸方向に対して略平行に延在し、径が一定な直管状に形成されている。すなわち、流水導入部22の流路は上流側から下流側に向けて漸次細くなり、その細くなった先には、流路径が一定な直管部(流路断面収縮部23)が続いている。
【0135】
流路断面収縮部23と噴出口26との間の筒体20の内部には、前述した実施形態と同様に、筒体20の軸方向に延在するチャンバー25が設けられ、そのチャンバー25の軸方向の上流側端部には、流路断面収縮部23に対して流路断面が急拡大された流路断面急拡大部24が設けられている。チャンバー25における軸方向の上流側端部が流路断面急拡大部24として機能し、チャンバー25における軸方向の下流側端部が噴出口26として機能する。
【0136】
噴出口26近傍のチャンバー25内には、上記第3、第4の実施形態と同様、噴出口26へと通じるチャンバー25内流路の一部を遮る遮蔽体27が設けられている。遮蔽体27は例えば円盤状に形成され、その中心をチャンバー25の軸中心C1に一致させて、チャンバー25の内部に設けられている。
【0137】
また、チャンバー25の軸方向の下流側端部における噴出口26へと続く内壁面に、チャンバー25の軸中心C1に向けて傾斜した環状の傾斜面28を形成している。傾斜面28は、上流側から下流側に向かうにしたがって徐々に軸中心C1に近づくように傾斜している。
【0138】
本実施形態における噴流ノズル11eにおいても、前述した第3、第4の実施形態の噴流ノズルと同じ作用にて旋回噴流が浴槽水中に噴出される。
【0139】
ここで、浴槽1が建物内の設置場所に設置された状態で、ノズルが取り付けられる浴槽壁4aの側方に確保できるスペースには制限があり、ノズルと配管との接続部分は「L」字状に曲がったエルボ形状とされるのが一般的である。
【0140】
例えば、内部に形成される流路(流水導入部)の径がほぼ一定な湾曲部を用いた場合には、そのノズルにおいてチャンバーよりも上流側に突出する部分が長くなってしまい、限られたスペースに設置するための小型化要求に応えられない。
【0141】
これに対して本実施形態では、流水導入部22の流路は上流側端部から下流側端部である流路断面収縮部23に向けて漸次細くなり、その流路の流路中心線C2の下流端位置がチャンバー25の軸中心C1に一致するようにチャンバー25につながる構造であるため、流水導入部の流路径が一定のまま湾曲した構造に比べて、湾曲部の筒体軸方向への突出長さを短くでき、省スペース設置に適した構造となっている。
【0142】
なお、流水導入部の流路中心線C2は、直線と単一円弧の組み合わせのみに限定されるものではなく、図34に示すように直線と複数曲率を有する曲線との組み合わせでもよい。
【0143】
筒体20は、前述した各実施形態で示したような略円筒形状のみに限定されるものではなく、略楕円筒形状、角筒形状であってもよい。すなわち、チャンバー25の断面形状は、円形に限らず、正方形であってもよい。
【0144】
ここで、図3に表されるように、入浴者が短辺側浴槽壁4aに背をもたれて、くつろいで入浴する場合、臀部を短辺側浴槽壁4aからやや離れた位置に置き、図示しない浴槽用枕等に頭部をのせたり、首、肩あるいは背の一部を短辺側浴槽壁4aに接触させた入浴姿勢をとることから、入浴者の上半身は自然と短辺側浴槽壁4aに対して傾斜し、噴流ノズル11が設置されている高さ(本実施の形態では底面より230mm)では、短辺側浴槽壁4aと入浴者との間には概ね30〜100(mm)程度の隙間が生じる。また、一方で、噴流ノズル11は互いに着脱自在な少なくとも2つ以上の複数のノズル構成部品からなり、これら複数のノズル構成部品によって、短辺側浴槽壁4aに開口する穴部に、例えばフランジ等の接続手段を用いて、短辺側浴槽壁4aを挟み込むようにして保持されるから、噴流ノズル11の先端つまり、噴出口26は、短辺側浴槽壁4aに対して、概ね5〜10(mm)浴槽内部に位置する。
【0145】
すなわち、噴流ノズル11を短辺側浴槽壁4aに配置することで、噴出口26から人体までの距離は概ね20〜95(mm)程度となり、短辺側浴槽壁4aに背をもたれた入浴者の身体の一部に的確に噴流を当てることができ、十分な手もみ感を与えることができる。
【0146】
噴流ノズル11から噴出される噴流は、特に気泡を混入しない場合には、前述したように、やわらかい刺激の旋回噴流であるため、直線的な強い刺激を与える噴流の場合に比べて、入浴者は噴出口26に近づきやすく、場合によっては噴出口26を背中で塞いでしまうことが起こり得る。
【0147】
そこで、噴流ノズル11の先端部を、この噴流ノズル11が取り付けられた短辺側浴槽壁4aの内面より浴槽内方に例えば10mm出っ張らせれば、入浴者がその背をぴったり短辺側浴槽壁4aの内面に沿わせた場合には、噴流ノズル11の出張部が背に当たり不快に感じるため、入浴者は自然と背を短辺側浴槽壁4aから離す姿勢をとることになり、噴出口26が入浴者の背で塞がれてしまうのを防ぐことができる。
【0148】
噴流ノズル11先端部の、浴槽壁内面からの出っ張り長さが5mm以下では入浴者が感触として噴流ノズル11の出っ張りを感じにくく、また、出っ張り長さが30mm以上ではその出っ張った部分が入浴中に邪魔となり、またデザイン性も損ねる。したがって、噴流ノズル11先端部の、浴槽壁内面からの出っ張り長さは5〜30mmの間に設定するのが望ましい。
【0149】
浴槽底面よりリム面までの高さが525mmの浴槽の短辺側浴槽壁に、先端部を10mm浴槽内方に出っ張らせて噴流ノズル11を設けた構成において、身長が155〜175cmの入浴者が、リムに頭から首の部分をもたれかけるように、背中の上部を浴槽壁面に接触させて浴槽内に入った(浴槽底面に座った)場合、噴流ノズル11先端から、入浴者の背中または腰までの距離は30〜80mmとなり、前述した噴流ノズル11からの旋回噴流を、入浴者の背または腰の一部に的確に当てて、十分な手もみ感または指圧感を与えることができる。
【0150】
噴流ノズル11から噴出される旋回噴流は、直線的に噴出される噴流に比べて、噴出口と人体との間の距離の変動によって、噴流が人体に当たる範囲(衝突範囲)が変わりやすく、入浴者と噴出口との間の距離によっては手もみ感または指圧感を得られない場合がある。しかし、前述したように、噴出ノズル11先端部の出っ張り長さを適切に設定することで、噴出口と人体との間の距離を例えば30〜80mmに自然とさせることができ、十分な手もみ感または指圧感を与えることが可能となる。
【0151】
また、図35に示すように、噴流ノズル11が取り付けられた短辺側浴槽壁4aの上部(噴流ノズル11取付位置よりも上方の部分)に、浴槽内方に向けて出っ張った枕101や背当て102を設けることで、入浴者を所望の姿勢に規制して、噴出口26と、入浴者の背または腰との間に所望の間隔(30〜80mm)が自然と形成されるようにすることもできる。
【0152】
枕101や背当て102の厚みを、(噴流ノズル11の出っ張り長さ)+(30〜80mm)とすれば、入浴者が頭から首さらに背にかけての部分を枕101と背当て102にもたれかけた姿勢で浴槽底面に座った場合、入浴者の背または腰が噴流ノズル11先端から自然と30〜80mm程度離れ、手もみ感または指圧感を得るのに最適な姿勢とすることができる。なお、枕101と背当て102は、いずれか一方のみを設けてもよい。
【0153】
遮蔽体27とチャンバー25内壁面との隙間は、子供の指が入らないように5mm以内であることが望ましい。また、噴出口26の内周縁部は、指がかかっても安全なように、エッジ状ではなく曲面状に形成するのが望ましい。
【0154】
また、噴流ノズル11の、浴槽底面からの高さは、噴流ノズル11から噴出される噴流が浴槽1内に貯留された浴槽水の水面から飛び出さない範囲内で適宜設定できる。
【0155】
吸入口5の数は1つに限らず複数設けてもよい。
【0156】
また、浴槽内に砂等が混入する可能性もあり、循環路13、14内の流速が速すぎると砂等が管内壁面に衝突し損傷させるおそれがあるので、循環路13、14内の流速が概ね2(m/秒)以下になるように循環路内径が設計されることが望ましい。
【0157】
噴流ノズル11は2つに限らず、図36に表すように、1つの噴流ノズル11を短辺側浴槽壁4aに設けてもよい。もちろん、3つ以上の噴流ノズル11を設けてもよい。
【0158】
また、図37、図38に表すように、一対の長辺側浴槽壁3a、3bにおいて短辺側浴槽壁4aに近い位置(短辺側浴槽壁4aに背を向けた姿勢で入浴する入浴者の胴部の横に位置する位置)にそれぞれ噴流ノズル11を設けてもよい。図37の場合には、各噴流ノズル11の噴出口26から、入浴者の胴部側面から脚に向けて旋回噴流が噴出される。図38の場合には、各噴出口26は自身が設けられた長辺側浴槽壁3a、3bに対向する長辺側浴槽壁3a、3bに向けられ、各噴出口26からは浴槽1の長辺方向に対して略垂直に、入浴者の側部に向けて旋回噴流が噴出される。
【0159】
また、図39に表すように、入浴者の足が向けられる短辺側浴槽壁4bに、例えば浴槽短辺方向に離間して2つの噴流ノズル51を設けてもよい。この噴流ノズル51は、前述した噴流ノズル11と同様な旋回噴流を噴出するノズルであってもよいし、まっすぐに噴流を噴出するノズルであってもよい。また、噴流ノズル51は気泡が混入された噴流を噴出する気泡噴流ノズルであってもよい。各噴流ノズル51の噴出口51aは、反対側の短辺側浴槽壁4aに対向し、各噴出口51aからは入浴者の足裏、下肢、体部前面などに向けて噴流が噴出される。
【0160】
ポンプ7の吸込口は、循環路13を介して、例えば長辺側浴槽壁3bに開口された吸入口5に接続されている。ポンプ7の吐出口は、切替手段(例えば三方弁)53を介して、循環路14と循環路52に接続されている。循環路14は、一方の短辺側浴槽壁4aに設けられた噴流ノズル11に接続され、循環路52は、他方の短辺側浴槽壁4bに設けられた噴流ノズル51に接続されている。
【0161】
切替手段53は、ポンプ7から吐出される加圧浴槽水の供給先を循環路14または循環路52に選択的に切り替える。この切り替え制御は、循環路14、52のうち一方だけをポンプ7に接続させる開閉制御であってもよいし、両循環路14、52をポンプ7と接続させ、両循環路14、52に対する流量比可変制御であってもよい。
【0162】
また、複数の噴流ノズル11、51を設けた場合には、図40に表すように、各噴流ノズル11、51への浴槽水の供給経路(循環経路)を複数系統設けてもよい。
【0163】
例えば、長辺側浴槽壁3bに2つの吸入口5、55が形成され、一方の吸入口5は、循環路13、ポンプ7、循環路14を介して一方の短辺側浴槽壁4aに設けられた噴流ノズル11に接続され、他方の吸入口55は、循環路56、ポンプ57、循環路54を介して他方の短辺側浴槽壁4bに設けられた噴流ノズル51に接続されている。
【0164】
また、循環系統及びポンプを2つ設けた場合であっても、図41に表すように、各系統で1つの吸入口5を共用してもよい。
【0165】
また、図42に表すように、噴流ノズル11が取り付けられた浴槽壁4aの外壁面にポンプ60を設けてもよい。
【0166】
浴槽壁4aに吸入口5が形成されている。ポンプ60内には、吸入通路、吐出通路を介して、吸入口5と、噴流ノズル11の流水導入部に通じるポンプ室62が形成されている。ポンプ室62内にはポンプモータ61によって回転駆動されるインペラ63が配置されている。ポンプモータ61の駆動によりインペラ63が回転すると、吸入口5及び吸入通路を介して浴槽内の浴湯が吸い込まれてポンプ室62に入り、さらに吐出通路を介して噴流ノズル11内に導入され、浴槽内に噴出される。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】(a)は本発明の第1の実施形態に係る噴流ノズルの模式断面図であり、(b)は(a)におけるA−A断面図。
【図2】本発明の実施形態に係る噴流浴装置の概略構成を示す模式図。
【図3】同噴流浴装置において浴槽を側面方向から見た模式図。
【図4】第1の本実施形態に係る噴流ノズルにて旋回噴流が形成される様子を説明するための模式図。
【図5】噴流をノズルからまっすぐ噴出させる比較例のノズルからの噴出噴流の観測体に対する衝突部分の中心位置の時間変化に伴う衝突面内分布(移動軌跡)を示す図。
【図6】第1の実施形態のノズルからの噴出噴流の観測体に対する衝突部分の中心位置の時間変化に伴う衝突面内分布(移動軌跡)を示す図。
【図7】第1の実施形態に係る噴流ノズルについての図6と同様な測定結果を示す図であり、(a)から始まって、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)を順に経て(h)に至る順序は、時間の経過順序を示す。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る噴流ノズルの模式断面図。
【図9】第2の実施形態のノズルからの噴出噴流の観測体に対する衝突部分の中心位置の時間変化に伴う衝突面内分布(移動軌跡)を示す図。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る噴流ノズルの模式断面図。
【図11】(a)は第3、4の実施形態に係る噴流ノズルにおける遮蔽体が設けられた部分の断面図であり、(b)は図11(a)におけるA−A断面図。
【図12】(a)は第3、4の実施形態に係る噴流ノズルにおける遮蔽体が設けられた部分の他の具体例を示す断面図であり、(b)は図12(a)におけるB−B断面図。
【図13】(a)は第3、4の実施形態に係る噴流ノズルにおける遮蔽体が設けられた部分のさらに他の具体例を示す断面図であり、(b)は図13(a)におけるC−C断面図。
【図14】(a)は第3、4の実施形態に係る噴流ノズルにおける遮蔽体が設けられた部分のさらに他の具体例を示す断面図であり、(b)は図14(a)におけるD−D断面図。
【図15】第3の実施形態のノズルからの噴出噴流の観測体に対する衝突部分の中心位置の時間変化に伴う衝突面内分布(移動軌跡)を示す図。
【図16】本発明の第4の実施形態に係る噴流ノズルの模式断面図。
【図17】第4の実施形態に係る噴流ノズルにて旋回噴流が形成される様子を説明するための模式図。
【図18】噴出流に気泡を混入させて噴出流を可視化した状態で、第4の実施形態に係る噴流ノズルから旋回噴流を噴出させた様子を表す写真図。
【図19】第4の実施形態のノズルからの噴出噴流の観測体に対する衝突部分の中心位置の時間変化に伴う衝突面内分布(移動軌跡)を示す図。
【図20】ノズルを機械的に回転させる構造の比較例のノズルからの噴出噴流の観測体に対する衝突部分の中心位置の時間変化に伴う衝突面内分布(移動軌跡)を示す図。
【図21】人の手によるもみマッサージにおける荷重作用部位の移動軌跡を示す図。
【図22】第4の実施形態に係る噴流ノズルの噴出口近傍に圧力計を設け、噴出口から噴出される旋回噴流の圧力の測定実験を説明するための模式図。
【図23】図22に示す圧力計で測定された旋回噴流圧力の時間変化データを高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)して、旋回噴流圧力の旋回周波数スペクトルを算出したグラフ図。
【図24】図22に示す圧力計によって測定された圧力の時間変化から、噴流の旋回周波数の時間変化を求めた結果を示す図。
【図25】流量と、噴出流の旋回周波数との関係を示すグラフ図。
【図26】第4の実施形態に係る噴流ノズルにおける流路断面収縮部の内径(チャンバーへの流入口径)dを様々に変えて、流量(リットル/分)と、圧力(MPa)とを測定した結果を表すグラフ図。
【図27】流路断面収縮部の形状の違いによる圧損の大きさの違いを示すグラフ図。
【図28】第4の実施形態に係る噴流ノズルにおいて、旋回噴流の噴出角度の時間変化を示すグラフ図。
【図29】第4の実施形態に係る噴流ノズルにおいて、(a)は噴流角度が13°の場合を、(b)は噴流角度が−23°の場合の写真図。
【図30】本発明の実施形態に係る噴流ノズルにおける流水導入部及び流路断面収縮部の他の具体例を示す模式図。
【図31】本発明の実施形態に係る噴流ノズルにおける遮蔽体の他の具体例を示す模式図。
【図32】本発明の実施形態に係る噴流ノズルにおいて遮蔽体をチャンバーの外部に設けた具体例を示す模式図。
【図33】本発明の第5の実施形態に係る噴流ノズルの模式断面図。
【図34】流水導入部が湾曲した構造を有する本発明実施形態に係る噴流ノズルにおいて湾曲部の他の具体例を示す模式図。
【図35】本発明の実施形態に係る噴流浴装置において入浴者の姿勢規制手段を設けた具体例を示す模式図。
【図36】本発明の実施形態に係る噴流浴装置の他の構成例を示す模式図。
【図37】本発明の実施形態に係る噴流浴装置のさらに他の構成例を示す模式図。
【図38】本発明の実施形態に係る噴流浴装置のさらに他の構成例を示す模式図。
【図39】本発明の実施形態に係る噴流浴装置のさらに他の構成例を示す模式図。
【図40】本発明の実施形態に係る噴流浴装置のさらに他の構成例を示す模式図。
【図41】本発明の実施形態に係る噴流浴装置のさらに他の構成例を示す模式図。
【図42】本発明の実施形態に係る噴流浴装置においてポンプの取付形態の他の具体例を示す模式図。
【符号の説明】
【0168】
1…浴槽、5…吸入口、11,11a〜11d…噴流ノズル、20…筒体、22…流水導入部、23…流路断面収縮部、24…流路断面急拡大部、25…チャンバー、26…噴出口、27…遮蔽体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽と、
前記浴槽の浴槽壁に開口され前記浴槽の内部に貯留された浴槽水が吸い込まれる吸入口と、
前記吸入口から浴槽水を吸入し加圧して吐出する加圧装置と、
前記浴槽のあふれ縁より下で前記浴槽壁に対して保持される一重構造の筒体を有し、前記筒体の内部に導入された浴槽水を、噴出方向を変化させながら前記浴槽の内部に噴出する噴流ノズルと、を備えた噴流浴装置であって、
前記噴流ノズルは、流水導入部と、前記筒体の軸方向に延在して前記筒体の内部に形成されたチャンバーと、を有し、
前記流水導入部は、前記加圧装置から送られる加圧浴槽水が導入される流水導入口と、前記流水導入口に対して流路が細くされると共に前記チャンバーの軸方向の上流側端部に開口して前記チャンバーに連通する流路断面収縮部と、を有し、
前記チャンバーは、前記軸方向の上流側端部に設けられ前記流路断面収縮部に対して流路断面が急拡大された流路断面急拡大部と、前記軸方向の下流側端部に開口され前記浴槽の内部に臨む噴出口と、を有することを特徴とする噴流浴装置。
【請求項2】
前記チャンバーの軸方向の下流側端部における前記噴出口へと続く内壁面を、前記チャンバーの軸中心に向けて傾斜させたことを特徴とする請求項1記載の噴流浴装置。
【請求項3】
前記噴流ノズルは、前記噴出口の近傍に設けられて流路の一部を遮る遮蔽体をさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載の噴流浴装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図18】
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【図23】
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【図24】
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【図29】
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【公開番号】特開2009−136455(P2009−136455A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−315073(P2007−315073)
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】