説明

噴流浴装置

【課題】 本発明の課題は、簡単な構造で、変化に富んだ刺激感を安定して得られる噴流浴装置を提供する。
【解決手段】 本発明では、
浴槽と、前記浴槽の内部に噴出する噴流ノズルと、を備えた噴流浴装置であって、前記噴流ノズルは、流水導入部と、前記筒体の軸方向に延在して前記筒体の内部に形成されたチャンバーと、前記チャンバー内に設けられた遮蔽体と、前記チャンバー内で前記遮蔽体より上流側に設けられた主流偏向部と、を有し、前記遮蔽体は、前記噴出口近傍に設けられて前記噴出口へと通じる前記チャンバー内の流路の一部を遮ることを特徴とする噴流浴装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽内に噴流を噴出させる噴流ノズルを備えた噴流浴装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浴槽壁に噴流ノズルを設けて、そのノズルから噴流を浴槽内に噴出させるものがあるが、その多くは、まっすぐに噴流を噴出させるものであり、噴流が入浴者の体の一部に局所的にあたり、噴流により受ける刺激が単調で飽きやすく、多様なマッサージ感は得られ難かった。
【特許文献1】特開2001−8998号公報
【特許文献2】特開平2−128765号公報
【特許文献3】特開平4−61859号公報
【特許文献4】特開平4−176461号公報
【特許文献5】特開2006−150049号公報
【特許文献6】特開2005−245987号公報
【特許文献7】特開2004−513号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1には、外形形状が略円形で内部に設けた噴流孔の噴流口が軸芯位置より偏心すると共にユニット噴流口カバー内に回転自在に収容配置されたノズル本体と、バスタブ内の水を所定圧力でノズル本体の噴流孔内に噴射するオリフィスとを備えたノズル装置が開示されている。バスタブ内の水は、オリフィスを介してノズル本体の噴流孔内に所定圧力で噴射され、空気と混合して気泡混合噴流となり、噴流孔の噴流口からバスタブ内にジェット噴流として噴射される。この時、ノズル本体の噴流口が軸芯位置に対して偏心した位置に設けられていることから、オリフィスからの噴流によってノズル本体が回転し、これにより、ジェット噴流の噴射方向が変化する回転噴流が得られる。
【0004】
しかし、特許文献1では、ノズル本体を回転させることで回転噴流を生じさせる構成であるため、そのノズル本体を回転自在に支持するための構造が複雑になり、安価に作製できない。さらには、回転摺動部分の摩耗やゴミ詰まりなどによる回転性能の低下が懸念される。
【0005】
また、特許文献1では、浴槽壁に対して取り付けられる筒状の取付部材と、この取付部材の内部で回転自在に設けられた筒状のノズル本体とが二重筒状になった入れ子構造となっている。したがって、構造が複雑になるとともに、内筒に相当するノズル本体と、外筒に相当する取付部材との間に細い隙間が形成されており、その隙間にゴミ等がつまる目詰まりの心配もある。
【0006】
また、特許文献2では、下流側に向かって流路幅を漸次拡大する案内壁を内面に有する構造体(内筒に相当)と、浴槽壁に取り付けられる構造体(外筒に相当)の内壁面との間に、下流に流れてきた流水の一部を上流側に還流させる流路が細い隙間として形成されており、特許文献2においても二重筒構造となっている。したがって、構造が複雑になると共に、狭い流路(隙間)の目詰まりの心配がある。
【0007】
また、特許文献3においても、二重筒構造のノズルとなっており、やはり同様に、構造が複雑になると共に、狭い流路(隙間)の目詰まりの心配がある。
【0008】
また、特許文献4では、噴流の運動が往復運動であるため、人体への刺激範囲が直線状の軌跡となり、刺激範囲としては不十分であった。また、さらに、特許文献4で開示の噴流ノズルは浴湯を空気中に噴出させるためのもので、腰、背中、脇腹、腕、脹脛、足裏等の、通常の入浴姿勢において浴湯中に存在する身体の一部については、刺激を与えることができない。
【0009】
また、特許文献5では、内部で旋回流を形成する単筒構造のノズルの周壁部にノズル筒体内への流入口が開口しており、ノズル筒体に流入した主流は筒体内で定常的かつ強力な旋回流れを形成する。そのため、ノズル出口面から吐水される噴流は、卓越した遠心力により筒体軸方向(体表面に向かう方向)への直進性は失われ、ノズル出口面全体から径方向に均一に広がった噴流となり、広範囲を単調に刺激する噴流となってしまう。
【0010】
また、特許文献6においても、内部で旋回流を形成する単筒構造のノズルの周壁部にノズル筒体内への流入口が開口しており、広範囲を単調に刺激する噴流となってしまう。
【0011】
また、特許文献7においても、内部で旋回流を形成する単筒構造のノズルの周壁部にノズル筒体内への流入口が開口しており、やはり同様に、広範囲を単調に刺激する噴流となってしまう。
【0012】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされ、簡単な構造で、変化に富んだ刺激感を安定して得られる噴流浴装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明によれば、
浴槽と、前記浴槽の浴槽壁に開口され前記浴槽の内部に貯留された浴槽水が吸い込まれる吸入口と、前記吸入口から浴槽水を吸入し加圧して吐出する加圧装置と、前記浴槽のあふれ縁より下で前記浴槽壁に対して保持される一重構造の筒体を有し、前記筒体の内部に導入された浴槽水を、噴出方向を変化させながら前記浴槽の内部に噴出する噴流ノズルと、を備えた噴流浴装置であって、前記噴流ノズルは、流水導入部と、前記筒体の軸方向に延在して前記筒体の内部に形成されたチャンバーと、前記チャンバー内に設けられた遮蔽体と、前記チャンバー内で前記遮蔽体より上流側に設けられた主流偏向部と、を有し、前記流水導入部は、前記加圧装置から送られる加圧浴槽水が導入される上流側端部と、前記上流側端部に対して流路が細くされると共に前記チャンバーに連通する下流側端部とを有し、前記チャンバーは、前記軸方向の上流側端部に設けられ前記流水導入部の前記下流側端部に対して流路断面が急拡大された流路断面急拡大部と、前記軸方向の下流側端部に開口され前記浴槽の内部に臨む噴出口と、を有し、前記遮蔽体は、前記噴出口近傍に設けられて前記噴出口へと通じる前記チャンバー内の流路の一部を遮ることを特徴とする噴流浴装置が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡単な構造で、変化に富んだ刺激感を安定して得るという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図2は、本発明の実施形態に係る噴流浴装置の概略構成を示す模式図である。
図3は、同噴流浴装置において浴槽を側面方向から見た模式図である。
【0016】
本実施形態に係る噴流浴装置は、図2に表すように、浴槽1と、浴槽1の浴槽壁3bに設けられた吸入口5と、循環路13、14と、循環路13、14の途中に設けられた加圧ポンプ7と、浴槽壁4aに対して保持された前記噴流ノズル11とを備える。
【0017】
浴槽1は、略平行に相対向する一対の長辺側浴槽壁3a、3bと、略平行に相対向する一対の短辺側浴槽壁4a、4bとを有する。
【0018】
吸入口5は長辺側浴槽壁3bに形成されている。ポンプ7が駆動されると、浴槽1の内部に貯留された浴槽水(湯も含む)は吸入口5を介して循環路13へと吸い込まれる。
【0019】
一般に、入浴者は、向かい合う一対の短辺側浴槽壁4a、4bのうちの一方の短辺側浴槽壁(図2に示す具体例では短辺側浴槽壁4a)に背をもたれかけて、他方の短辺側浴槽壁(図2に示す具体例では短辺側浴槽壁4b)に足を向けた姿勢で入浴するため、吸入口5を短辺側浴槽壁に形成した場合には、入浴者の背中や足裏で吸入口5がふさがれポンプ7に過剰の負荷がかかることが懸念される。したがって、吸入口5は、入浴者の身体の一部等によってふさがれにくい長辺側浴槽壁に形成するのが望ましい。なお、図2に示す具体例では、吸入口5を、長辺側浴槽壁3bに形成したが長辺側浴槽壁3aに形成してもよい。
【0020】
循環路13の一端は吸入口5に接続され、他端はポンプ7の吸入口に接続されている。循環路14の一端はポンプ7の吐出口に接続され、他端は噴流ノズル11の流水導入口に接続されている。ポンプ7は、吸入口5から循環路13内に浴槽水を吸い込むと共に、その吸い込んだ浴槽水を加圧してポンプ7の下流側の循環路14に吐出する。このポンプ7から吐出された加圧浴槽水は、噴流ノズル11の流水導入口に流入する。使用していないときに、ポンプ7内部の残留水を抜くために、ポンプ7は吸入口5よりも上方に設けることが望ましい。
【0021】
図2に示す具体例では、一方の短辺側浴槽壁4aに、2つの噴流ノズル11を取り付けている。2つの噴流ノズル11は、略同じ高さ(例えば、浴槽1の底面から概ね230mm)に所定距離隔てて(例えば、2つの噴流ノズル11間の距離は概ね160mm)で、且つ、2つの噴流ノズル11の設置位置の中心と短辺側浴槽壁4a方向の中央部が一致するように設けられている。噴流ノズル11が取り付けられた一方の短辺側浴槽壁4aの反対側の他方の短辺側浴槽壁4bの上方には浴槽側水栓が設けられる。したがって、通常、入浴者は自然と噴流ノズル11が設けられた側の短辺側浴槽壁4aに背中を向けた姿勢で入浴する。
【0022】
図1,図4は、噴流ノズル11の模式断面図である。
【0023】
噴流ノズル11は、大きく分けて、略円筒形状でほぼまっすぐに延在する筒体20と、筒体20の軸方向の上流側端部に設けられた湾曲部30とを有する。筒体20と湾曲部30とは一体成形構造であってもよいし、別体のものを結合させてもよい。また、筒体20は、略円筒形状に限らず、略楕円筒形状であってもよい。
【0024】
湾曲部30の内部には流水導入部22が形成され、その流水導入部22における上流側端部の最上流端には、前述した循環路14と浴槽1の外部で接続される流水導入口21が開口形成されている。筒体20の軸方向の下流側端部には噴出口26が開口形成されている。
【0025】
噴流ノズル11は、噴出口26を浴槽1の内部に臨ませて、前述した浴槽1における一方の短辺側浴槽壁4aに保持されている。噴流ノズル11は浴槽1のあふれ縁より下で、浴槽壁4aに対して保持されている。ここで、「あふれ縁」とは、浴槽1内に浴槽水をためていったとき、最初に浴槽1内から溢れる部分の浴槽1の縁(またはリム)を意味する。このような構成のため、噴流ノズル11からの噴流を浴槽水中に噴出させることができる。
【0026】
流水導入部22の下流側端部は、流水導入部22の中で最も流路断面が縮小された流路断面収縮部23として機能する。流路断面収縮部23の最下流端は、筒体20の軸方向の上流側端部に開口している。
【0027】
流水導入部22の流路断面は円形または楕円形であり、その流路断面積は、上流側端部から下流側端部である流路断面収縮部23に向けて漸次減少している。すなわち、流水導入部22の流路は、上流側端部から下流側端部である流路断面収縮部23に向けて漸次細くなっている。
【0028】
流路断面収縮部23の流路断面の中心は、筒体20の軸中心C1に一致している。流水導入部22の流路断面の中心を通る流路中心線C2は曲率を有する曲線を描き、すなわち、流水導入部22は湾曲している。その流路中心線C2の下流端位置は、チャンバー25の軸中心C1に一致している。
【0029】
流路断面収縮部23は、筒体20の内部に形成されたチャンバー25に連通し、且つチャンバー25に対して流路断面が縮小されている。また、流路断面収縮部23は、その流路断面の中心を、チャンバー25の軸中心C1に一致させて、チャンバー25の軸方向に対して略平行に延在し、径が一定な直管状に形成されている。すなわち、流水導入部22の流路は上流側から下流側に向けて漸次細くなり、その細くなった先には、流路径が一定な直管部(流路断面収縮部23)が続いている。
【0030】
流路断面収縮部23と噴出口26との間の筒体20の内部には、筒体20の軸方向に延在するチャンバー25が設けられている。
【0031】
チャンバー25の軸方向の上流側端部には、流路断面収縮部23に対して流路断面が急拡大(例えば径が3倍以上急拡大された)された流路断面急拡大部24が設けられている。流路断面急拡大部24は、流路断面収縮部23より下流側で流路断面収縮部23に連通している。
【0032】
チャンバー25の軸方向の下流側端部には噴出口26が開口している。チャンバー25の内壁面は、流路断面急拡大部24から噴出口26の近傍に至るまで、チャンバー25の軸中心C1に対して略平行に延在し、また、チャンバー25は流路断面急拡大部24の内径寸法のまま噴出口26近傍まで続いている。チャンバー25における軸方向の上流側端部が流路断面急拡大部24として機能し、チャンバー25における軸方向の下流側端部が噴出口26として機能する。
【0033】
流路断面収縮部23から流路断面急拡大部24にかけての流路壁面は略垂直に変化している。すなわち、流路断面収縮部23の流路壁面は、チャンバー25の軸方向に対して略平行であるのに対して、流路断面急拡大部24として機能するチャンバー25の軸方向の上流側端部の壁面は、流路断面収縮部23の流路壁面に対して略垂直に続いて径外方に広がって形成されている。この流路壁面の急変化により、後述するように流路断面急拡大部24にて、壁面からの流れの剥離が生じる。
【0034】
なお、流路断面急拡大部24の流路壁面は流路断面収縮部23の流路壁面に対して略垂直に広がっていることに限らず、流路断面急拡大部24にて、流れの剥離が生じる程度に、下流側に向けて流路断面が拡径する漏斗(またはラッパ)状に形成されていてもよい。ただし、流路断面収縮部23の流路壁面に対して略垂直に続くように流路断面急拡大部24の流路壁面が形成されている方が、流路断面急拡大部24における流れの剥離を促進させやすい。
【0035】
また、噴出口26近傍のチャンバー25内に、噴出口26へと通じるチャンバー25内流路の一部を遮る遮蔽体50を設けている。遮蔽体50は例えば円盤状に形成され、その中心をチャンバー25の軸中心C1に一致させて、チャンバー25の内部に設けられている。
【0036】
遮蔽体50は、例えば、遮蔽体50とチャンバー25の内壁部との間に放射状に設けられた図示しない複数本の保持部材を介してチャンバー25の内壁部に対して保持されている。それら保持部材は、円盤状の遮蔽体50の外周面のまわりに周方向に沿って等間隔で設けられ、よって、遮蔽体50によってチャンバー25内流路のすべてが遮蔽されず、遮蔽体50とチャンバー25の内壁部との間には、チャンバー25から噴出口26への流水の流れを許容する流路が確保されている。
【0037】
チャンバー25の内部には、主流偏向部60が、チャンバー25の軸中心C1上で、流路断面急拡大部24より下流側で、尚且つ遮蔽体50より上流側に設けられている。本実施例では、主流偏向部60は円盤状に形成され、遮蔽体50の上流側に遮蔽体50と一体に形成されている。一体に形成すると製作及び取り付けが別体に作成した場合に比べ容易である。主流偏向部60の中心軸は遮蔽体50の中心軸と一致しており、主流偏向部60の外径は遮蔽体50の外径よりも小さい。遮蔽体50の上流側端部は平面であり、遮蔽体50と一体に形成された主流偏向部60の上流側端部も平面になっている。
【0038】
また、チャンバー25の軸方向の下流側端部における噴出口26へと続く内壁面に、チャンバー25の軸中心C1に向けて傾斜した環状の傾斜面28を形成している。傾斜面28は、上流側から下流側に向かうにしたがって徐々に軸中心C1に近づくように傾斜している。
【0039】
次に、本実施形態に係る噴流浴装置の作用について説明する。
【0040】
図2、3において、浴槽1近傍に設けられた図示しないコントローラのスイッチを入浴者が操作すると、ポンプ7が起動し、浴槽1内に貯留された浴槽水が吸入口5から循環路13内へと吸入される。この吸入された浴槽水は、ポンプ7にて加圧されて、循環路14を介して、噴流ノズル11の流水導入口21に導入される。
【0041】
流水導入口21から導入された加圧浴槽水は、流水導入部22を流れ、この下流側端部である流路断面収縮部23から流路断面急拡大部24を経てチャンバー25内に噴流となって流入する。加圧浴槽水が、流路断面収縮部23からチャンバー25内に流入する際、流路断面の急拡大により、流路内壁面に沿って流れることができなくなり、流路内壁面に対して流れの剥離が生じる。
【0042】
主流偏向部60上流側に流れの一部が衝突することで圧力上昇部位が形成され、圧力差により噴流自身が図4の矢印Cに示すように壁面に向かって曲げられる。さらに、噴流は、外部流体との運動量交換により外部流体を加速し、噴流内部に巻き込む。このとき、噴流近傍に壁面が存在すると、外部流体を内部に引き込むように作用する引きつけ力の反作用により、噴流自身が壁面に向かって曲げられる。これらの作用によって、噴流自身が壁面に沿うようになる。つまり、チャンバー25の内壁面の周の一部に流れが再付着する。
【0043】
チャンバー25の内壁面に付着した主流は、そのままチャンバー25内壁面に沿い、遮蔽体50の外周面とチャンバー25内壁面との間を噴出口26に向かって流れ、噴出口26の上流側手前でチャンバー25の軸中心C1に向かうように傾斜して形成された傾斜面28に沿って軸中心C1に対して傾斜した噴流として噴出口26から浴槽1内に噴出する。
【0044】
以上のようにして、チャンバー25内に、主流(図1において太線矢印aで表す)が形成される。
【0045】
流路断面収縮部23に比べて噴出口26の流路断面が大きく、流れは下流に向かって減速、すなわち、チャンバー25内部では下流に向かって静圧が増加する逆圧力勾配が形成されること、さらにチャンバー25内に流路の一部を遮るように遮蔽体50が設けられていることによって、前述した主流の一部は、噴出口26から噴出されず、図1において矢印bで表すように、チャンバー25の上流側に戻される。
【0046】
その上流側に戻された流れが、流路断面急拡大部24付近にて主流が剥離したよどみ領域に流れ込むことで、流路断面急拡大部24付近で中心軸C1まわりに旋回流が形成され、これにより、主流の流路壁面に対する再付着位置が周方向で不規則に変化し、噴出口26からは中心軸C1まわりに不規則に旋回した噴流が噴出される。主流偏向部60を設けることで、主流が流路壁面に再付着しやすくなり、不規則に旋回した噴流の噴出が安定して起きるようになる。主流偏向部60の中心軸がチャンバー25の中心軸と一致することで、流路断面収縮部23の中心軸下流側延長上にあることになり、流路断面収縮部23を通過した流れが多く当たる。流れが多く当たることにより、流れに及ぼす影響が大きくなるので安定性がさらに高まる。
【0047】
入浴者は、噴流ノズル11から噴出される旋回噴流を、腰、背、肩、手、足等の身体の一部に受けることにより、マッサージ効果を得ることができる。噴流ノズル11から噴出される噴流は、一般的に広く知られる気泡浴装置による細く強い直線的な噴流とは異なり、太くやわらかい旋回噴流であるため、腰を包み込む、背中、腰全体を押すようにもみほぐすなど、局所的に強い刺激感ではなく、広範囲をもみほぐすような手もみに近いマッサージ感を得ることができ、長時間入浴していても飽きがなくゆったりとリラックスできる。また、直線的な強い噴流を局所的に受ける場合には、所望の部位にその噴流を受けるべく姿勢を保つために緊張状態になりがちであったが、本実施形態の旋回噴流は広範囲にわたってやわらかい刺激を与えるため、入浴者に緊張を強いることなく、力を抜いたリラックスした状態にさせやすい。
【0048】
本実施形態に係る噴流ノズル11から噴出される噴流は旋回しているので、気泡が混入されなくても、マッサージ感を受けるのに十分な刺激感が得られる。むしろ気泡混入では得られない水で押されるような手もみに近いマッサージ感が得られる。また、気泡を混入しない分、噴流の噴出音及び気泡混入時の音を低減して、静かな環境でよりリラックスできる。なお、チャンバー25内は噴出口26面に比べ圧力が低く、ノズル11が図3中に示すような高さ位置に取り付けられるのであれば、チャンバー25内は概ね負圧を生じており、チャンバー壁の任意の位置に空気流入口を設けることで、容易に気泡を自給混入させることが可能であるので、本実施形態に係る旋回噴流に気泡を混入してもよく、その場合、気泡を混入しない場合よりも噴流の旋回力が弱まる。
【0049】
また、本実施形態に係る噴流ノズル11は、内部に導入された流体自身が、前述したようにチャンバー25内での還流作用によって、噴出口26から噴出される噴流の旋回を励起する構成となっているため、特許文献1のような回転摺動部分が不要であり、ノズル構造が単純化され、安価に作製することができ、またメンテナンスも容易になる。さらには、回転摺動部分における摩耗やゴミ詰まりなどによる旋回性能低下の心配もない。
【0050】
また、前述したように、特許文献1のノズルは二重筒状になった入れ子構造となっている。したがって、構造が複雑になるとともに、内筒に相当するノズル本体と、外筒に相当する取付部材との間に細い隙間が形成されており、その隙間にゴミ等がつまる目詰まりの心配もある。同様に、特許文献2、3においても、ノズルが二重筒構造となっている。したがって、構造が複雑になると共に、狭い流路(隙間)の目詰まりの心配がある。
【0051】
これに対して本実施形態では、特許文献1、2、3のように中心の流路の外側に別の流路が細い隙間として形成されておらず、チャンバー25を形成した筒体20は一重構造である。すなわち、ひとつの筒体20によって周囲が囲まれる単一空間(流路)内で、噴出口26へと向かう主流、および主流とは逆方向に流れる還流が形成され、浴槽水中に旋回噴流として噴出される。したがって、構造が単純化され、安価に作製することができ、またメンテナンスも容易になる。さらには、目詰まりによる旋回性能低下の心配もない。
【0052】
また、前述したように、特許文献5、6、7のノズルは、内部で旋回流を形成する単筒構造のノズルの周壁部にノズル筒体内への流入口が開口された構造であり、ノズル筒体内に流入した主流は筒体内で定常的かつ強力な旋回流を形成する。そのため、ノズル出口面から吐水される噴流は、卓越した遠心力により筒体軸方向(体表面に向かう方向)への直進性は失われ、ノズル出口面全体から径方向に均一に広がった噴流となり、広範囲を単調に刺激する噴流となってしまう。
【0053】
これに対して本実施形態では、旋回流を励起するためのチャンバー25への流入口として機能する流路断面収縮部23は、チャンバー25を囲む筒体20の周壁部には形成されてはおらず、チャンバー25の軸方向の上流側端部に開口している。したがって、流路断面収縮部23からチャンバー25内に流入した主流は、流路断面急拡大部24で流路壁面から剥離した後、チャンバー25の内周面に再付着して噴出口26より直進性を保ったまま噴出し、さらに、その主流の流路壁面(チャンバー25の内周面)への再付着位置がチャンバー25内に形成される循環流(戻り流)により変化することで、噴出方向が変化するため、刺激箇所が時間とともに変化するような変化に富んだ噴流刺激が得られる。
【0054】
なお、本実施形態において、前述したように、チャンバー25内静圧は、浴槽1内に貯留された浴槽水の静圧より低く、チャンバー25内部では下流側に向かって静圧が増加する逆圧力勾配が形成されるため、遮蔽体50を設けなくても、主流の一部をチャンバー25上流側に戻す還流を形成することは可能である。ただし、遮蔽体50を設けた方が、逆静圧勾配(流れ方向に対して静圧が上昇)だけを利用した還流形成に比べ、噴流噴出方向の切り替わりを生じさせるための循環流の形成が安定するため、噴流の旋回が安定する。すなわち、噴流旋回方向もしくは噴流移動方向が反転しにくくなる。
【0055】
また、傾斜面28を設けなくても、前述したように主流がチャンバー25の内周面における周の一部に偏ることから筒体軸方向に対して偏向した噴流が実現されるが、本実施形態のように噴出口26の上流側の手前に傾斜面28を設け、その傾斜面28に主流を沿わせることで、主流の偏向を促進することができ、より広範囲にわたるやわらかな旋回噴流を形成しやすくなる。
【0056】
前述した噴流ノズル11において、図1に表す本実施例1の各寸法L、D、φs、φ、h、φCBは、それぞれ以下のように設計した。チャンバー25の長さL=76.6mm、流路断面急拡大部24およびチャンバー25の内径D=27.8mm、主流偏向部60の上流側端部の外径φs=11.3mm、遮蔽体50の上流側端部と連通する主流偏向部60下流側端部の外径φ=12.5mm、チャンバーの軸方向と一致する主流偏向部60の軸方向厚さh=3.4mm、遮蔽体50の外径φCB=20.9mm。
【0057】
ノズル材質(筒体20及び湾曲部30の材質)はABS樹脂製とした。噴流の噴出流量はノズル1つ当たり40リットル/分に設定した。なお、実際に製造する上では、直管部における周方向のすべての壁面が完全に平行となるように作るのは困難であり、このような実情を鑑み、現状、直管部は周方向に変化する0〜1°程度の勾配を有する。
【0058】
図5は、本実施例1の実験結果と、主流偏向部を設けていない場合の実験結果とを、旋回指標Kを縦軸にして比較した結果である。
【0059】
ここで、旋回指標Kの評価方法としては、ノズル11の(噴出口26側の)先端に厚み0.05mmの筒状のゴム膜を取り付け、噴出される噴流の旋回に伴う、水中におけるゴム膜の旋回を高速度ビデオカメラにて1秒100コマの条件で撮影した。そして、ノズル先端より50mmの位置における、チャンバー25の中心軸に対して直交する鉛直方向断面のゴム膜の両端位置を1コマずつ把握し、そのゴム膜の両端位置の算術平均値をノズル先端より50mm位置における噴出噴流中心位置とし、20秒間における噴出噴流中心位置の経時変化値の標準偏差値を「旋回指標K」と定義し、旋回性能評価値とした。この結果を図7に示す。旋回性能評価値(旋回指標K)が大きいほど、噴出噴流中心位置が常に移動しており、噴出噴流の触れ幅も大きいということなので、旋回の安定性が増しているということになる。
【0060】
図5の結果より、主流偏向部60を設けた方が、旋回指標Kが大きくなることがわかる。主流偏向部60上流側に流れの一部が衝突することで圧力上昇部位が形成され、圧力差により噴流自身が壁面に向かって曲げられるため、主流偏向部60を設けた方がより再付着しやすくなっている。つまり、主流偏向部60を設けた方が、旋回指標Kの値を大きくすることができる。
【0061】
主流偏向部の他の実施例の形状を図6、7に示す。
【0062】
図6は、本実施例2における主流偏向部61と遮蔽体50のみを示した正面図である。
図7は、本実施例3における主流偏向部62と遮蔽体50のみを示した平面図である。
【0063】
図6に表す本実施例2の主流偏向部61は、上流側端部が平面ではなく凹形状となっている。図8に表す本実施例2の主流偏向部61の各寸法φ1、h1、hf、は、それぞれ以下のように設計した。主流偏向部61の代表径φ1=12.7mm、チャンバーの軸方向と一致する主流偏向部61の軸方向長さh1=3.5mm、主流偏向部61の上流側端部からの凹み深さhf=1.6mm。本実施例2の遮蔽体50の各寸法は、本実施例1の遮蔽体50の各寸法と同じである。
【0064】
図7、に表す主流偏向部62は、主流偏向部62の軸中心を遮蔽体50の軸中心からわずかにずらしている。主流偏向部62の各寸法は、本実施例1の主流偏向部60の各寸法と同じである。本実施例3の遮蔽体50の各寸法は、本実施例1の遮蔽体50の各寸法と同じである。
【0065】
本実施例2を用いて同様の実験を行った結果、主流偏向部は上流側端部が平面ではなく凹面であっても、主流偏向部を設けていない場合より旋回指標Kの値が大きくなることがわかった。この結果より、主流偏向部の上流側端面の形状が平面でなくても良いことがわかる。
【0066】
本実施例3を用いて同様の実験を行った結果、主流偏向部の中心軸が遮蔽体50の中心軸と一致していなくても、主流偏向部が遮蔽体50の中心軸上にあれば、主流偏向部を設けていない場合より旋回指標Kの値が大きくなることがわかった。この結果より、主流偏向部の中心軸は遮蔽体50の中心軸と完全に一致していなくても良いことがわかる。







【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施形態に係る噴流ノズルの模式断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る噴流浴装置の概略構成を示す模式図。
【図3】同噴流浴装置において浴槽を側面方向から見た模式図。
【図4】本発明の実施形態に係る噴流ノズルの模式断面図である。
【図5】本実施例1の実験結果と、主流偏向部を設けていない場合の実験結果とを、旋回指標Kを縦軸にして比較した結果である。
【図6】本実施例2における主流偏向部61と遮蔽体50のみを示した正面図である。
【図7】本実施例3における主流偏向部62と遮蔽体50のみを示した平面図である。
【符号の説明】
【0068】
1…浴槽、5…吸入口、11…噴流ノズル、20…筒体、21…流水導入口、22…流水導入部、23…流路断面収縮部、24…流路断面急拡大部、25…チャンバー、26…噴出口、28…傾斜面、30…湾曲部、50…遮蔽体、60,61,62,…主流偏向部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽と、
前記浴槽の浴槽壁に開口され前記浴槽の内部に貯留された浴槽水が吸い込まれる吸入口と、
前記吸入口から浴槽水を吸入し加圧して吐出する加圧装置と、
前記浴槽のあふれ縁より下で前記浴槽壁に対して保持される一重構造の筒体を有し、前記筒体の内部に導入された浴槽水を、噴出方向を変化させながら前記浴槽の内部に噴出する噴流ノズルと、を備えた噴流浴装置であって、
前記噴流ノズルは、流水導入部と、前記筒体の軸方向に延在して前記筒体の内部に形成されたチャンバーと、前記チャンバー内に設けられた遮蔽体と、前記チャンバー内で前記遮蔽体より上流側に設けられた主流偏向部と、を有し、
前記流水導入部は、前記加圧装置から送られる加圧浴槽水が導入される上流側端部と、前記上流側端部に対して流路が細くされると共に前記チャンバーに連通する下流側端部とを有し、
前記チャンバーは、前記軸方向の上流側端部に設けられ前記流水導入部の前記下流側端部に対して流路断面が急拡大された流路断面急拡大部と、前記軸方向の下流側端部に開口され前記浴槽の内部に臨む噴出口と、を有し、
前記遮蔽体は、前記噴出口近傍に設けられて前記噴出口へと通じる前記チャンバー内の流路の一部を遮ることを特徴とする噴流浴装置。
【請求項2】
前記主流偏向部は、前記遮蔽体と一体に形成されていることを特徴とする請求項1記載の噴流浴装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−153827(P2009−153827A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−336999(P2007−336999)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】