噴流浴装置
【課題】簡単な構造で、容易に往復振動噴流を浴槽水中に噴出することのできる噴流浴装置を提供する。
【解決手段】噴流浴装置は、浴槽と、浴槽の浴槽壁に開口され浴槽の内部に貯留された浴槽水が吸い込まれる吸入口と、吸入口から浴槽水を吸入し加圧して吐出する加圧装置と、浴槽のあふれ縁より下で噴出口26を浴槽内に臨ませて浴槽壁に対して保持され、加圧装置から内部に導入された加圧浴槽水を噴出口26から浴槽内に噴出する噴流ノズルとを備え、噴流ノズルは、旋回流を往復振動噴流に変換する変換部25を有する。
【解決手段】噴流浴装置は、浴槽と、浴槽の浴槽壁に開口され浴槽の内部に貯留された浴槽水が吸い込まれる吸入口と、吸入口から浴槽水を吸入し加圧して吐出する加圧装置と、浴槽のあふれ縁より下で噴出口26を浴槽内に臨ませて浴槽壁に対して保持され、加圧装置から内部に導入された加圧浴槽水を噴出口26から浴槽内に噴出する噴流ノズルとを備え、噴流ノズルは、旋回流を往復振動噴流に変換する変換部25を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽内に噴流を噴出させる噴流ノズルを備えた噴流浴装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、外形形状が略円形で内部に設けた噴流孔の噴流口が軸芯位置より偏心すると共にユニット噴流口カバー内に回転自在に収容配置されたノズル本体と、バスタブ内の水を所定圧力でノズル本体の噴流孔内に噴射するオリフィスとを備えたノズル装置が開示されている。バスタブ内の水は、オリフィスを介してノズル本体の噴流孔内に所定圧力で噴射され、空気と混合して気泡混合噴流となり、噴流孔の噴流口からバスタブ内にジェット噴流として噴射される。この時、ノズル本体の噴流口が軸芯位置に対して偏心した位置に設けられていることから、オリフィスからの噴流によってノズル本体が回転し、これにより、ジェット噴流の噴射方向が変化する回転噴流が得られるとの開示がある。
【0003】
また、特許文献2によれば、下流側に向かって流路幅を漸次拡大する案内壁を内面に有する構造体(内筒に相当)と、浴槽壁に取り付けられる構造体(外筒に相当)の内壁面との間に、下流に流れてきた流水の一部を上流側に還流させる流路を細い隙間として形成する構造にて、旋回流を発生させることができるとの開示がある。
【0004】
また、特許文献3〜5には、ノズル自体に可動部を設けない構造にて、振動するように噴出方向を変える噴流が得られるとの開示がある。
【特許文献1】特開2001−008998号公報
【特許文献2】特開平2−128765号公報
【特許文献3】特開平4−176461号公報
【特許文献4】特開2006−325992号公報
【特許文献5】独国特許出願公開第4409656号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2のような旋回噴流では、例えば、足裏における踵とつま先との間の縦方向、足指付け根付近、背骨や腰の筋などに沿って往復移動する噴流マッサージを行う場合には不向きである。
【0006】
また、一般に、旋回流は比較的簡単に得ることができるが、往復振動噴流については、特に特許文献3に開示されたノズルについては、空気中への往復振動噴流であり、さらに浴槽の溢れ面より上に配置されたものであるので、水中での発振現象として示していない。
【0007】
また、特許文献4によれば、配管内の三方弁の開度を調整して流量比率を変化させて、浴槽水面下で2流路からの吐水によって2流体衝突を行い、気液2相流で往復振動噴流させて、リンパの流れに沿って噴流マッサージを行わせるとの開示がある。しかし、2流体を流量比を変化させつつ衝突させて往復振動噴流を得る構成は、配管が多くなることと、三方弁の開度制御が必要となり、システムとしては複雑で高価で大掛かりになる問題がある。
【0008】
また、特許文献5には、吐水流を往復振動させるための制御流の切換流路を設けて、浴槽水面下において気液2相流でゆっくりとした往復振動噴流を実現する構成が開示されている。しかし、この場合も、噴流に往復振動をさせるための制御流が必要で、そのための制御流を流す細い配管が必要となり、システムを複雑にし、また、その細い配管にゴミ等が詰まり、所望の動作が得られないことが懸念される。
【0009】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされ、簡単な構造で、容易に往復振動噴流を浴槽水中に噴出することのできる噴流浴装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、浴槽と、前記浴槽の浴槽壁に開口され前記浴槽の内部に貯留された浴槽水が吸い込まれる吸入口と、前記吸入口から浴槽水を吸入し加圧して吐出する加圧装置と、前記浴槽のあふれ縁より下で噴出口を前記浴槽内に臨ませて前記浴槽壁に対して保持され、前記加圧装置から内部に導入された加圧浴槽水を前記噴出口から前記浴槽内に噴出する噴流ノズルと、を備え、前記噴流ノズルは、旋回流を往復振動噴流に変換する変換部を有することを特徴とする噴流浴装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡単な構造で、容易に往復振動噴流を浴槽水中に噴出することのできる噴流浴装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る噴流浴装置の概略構成を示す模式図である。
【0013】
本実施形態に係る噴流浴装置は、浴槽4と、浴槽4の浴槽壁に開口された吸入口5と、循環路6、8と、循環路6、8の間に接続された加圧装置であるポンプ7と、浴槽壁に設けられた2つの噴流ノズル11とを備える。
【0014】
浴槽4は、略平行に相対向する一対の長辺浴槽壁3a、3bと、略平行に相対向する一対の短辺浴槽壁4a、4bとを有する。
【0015】
吸入口5は一対の長辺浴槽壁3a、3bのうちの一方(図1に示す例では長辺浴槽壁3a)に形成されている。ポンプ7が駆動されると、浴槽4の内部に貯留された浴槽水(湯も含む)は吸入口5を介して循環路6へと吸い込まれる。
【0016】
一般に、入浴者は、向かい合う一対の短辺浴槽壁4a、4bのうちの一方に背をもたれかけて他方の短辺浴槽壁に足を向けた姿勢で入浴するため、吸入口5を短辺浴槽壁に形成した場合には、入浴者の背中や足裏で吸入口5がふさがれポンプ7に過剰の負荷がかかることが懸念される。したがって、吸入口5は、入浴者の身体の一部等によってふさがれにくい長辺浴槽壁に形成するのが望ましい。
【0017】
循環路6の一端は吸入口5に接続され、他端はポンプ7の吸込口に接続されている。循環路8の一端はポンプ7の吐出口に接続され、他端は噴流ノズル11に接続されている。ポンプ7は、吸入口5から循環路6内に浴槽水を吸い込むと共に、その吸い込んだ浴槽水を加圧してポンプ7の下流側の循環路8に吐出する。このポンプ7から吐出された加圧浴槽水は、噴流ノズル11の内部に流入する。なお、使用していないときに、ポンプ7内部の残留水を抜くために、ポンプ7は吸入口5よりも上方に設けることが望ましい。
【0018】
本実施形態では、一対の短辺浴槽壁4a、4bのうちの一方(図1に示す例では短辺浴槽壁4a)に、2つの噴流ノズル11を取り付けている。2つの噴流ノズル11は、略同じ高さに所定距離水平方向に隔てて、短辺浴槽壁4aに保持されている。なお、入浴者が噴流ノズル11が設けられた短辺浴槽壁4aに背中を向けた姿勢で入浴すれば、噴流ノズル11からの噴流を背中や腰などに受けることができるし、その短辺浴槽壁4aに足を向けた姿勢で入浴すれば足裏や脹脛などに噴流ノズル11からの噴流を受けることができる。
【0019】
図2は噴流ノズル11の模式断面図であり、図3は図2における噴流ノズル11を噴出口26側から見た正面図である。図2は、図3におけるA−A断面に対応する。
【0020】
噴流ノズル11は、大きく分けて、略円筒形状でほぼまっすぐに延在する筒体20と、筒体20の軸方向の上流側端部に設けられた湾曲部30とを有する。筒体20は筒状の外側カバー31の内部に設けられ、湾曲部30はエルボカバー32の内部に設けられている。筒体20と湾曲部30とは一体成形構造であってもよいし、別体のものを結合させてもよい。
【0021】
外側カバー31の下流側端部には、図3に示すようにその中央部分に円形の貫通孔34aが形成された円環状のフランジ部34が設けられている。その貫通孔34aから筒体20の噴出口26を含む下流側端面が露出している。
【0022】
湾曲部30の内部には流水導入部22が形成され、その流水導入部22における上流側端部の最上流端に開口形成された流水導入口21は、前述した循環路8と接続される配管33と接続されている。
【0023】
図1において、噴流ノズル11は、その噴出口26を、浴槽4のあふれ縁より下で浴槽4の内部に臨ませて短辺浴槽壁4aに保持されている。ここで、「あふれ縁」とは、浴槽4内に浴槽水をためていったとき、最初に浴槽4内から溢れる部分の浴槽4の縁(またはリム)を意味する。このような構成のため、浴槽4内に浴槽水を溜めて人が入浴した状態で、噴流ノズル11からの噴流を確実に浴槽水中に噴出させることができる。
【0024】
流水導入部22の下流側端部は、流水導入部22の中で最も流路断面が縮小された流路断面収縮部23として機能する。流路断面収縮部23の最下流端は、筒体20の軸方向の上流側端部に開口している。
【0025】
流水導入部22の流路断面は円形または楕円形であり、その流路断面積は、上流側端部から下流側端部である流路断面収縮部23に向けて漸次減少している。すなわち、流水導入部22の流路は、上流側端部から下流側端部である流路断面収縮部23に向けて漸次細くなっている。
【0026】
流路断面収縮部23の流路断面の中心は、筒体20及びチャンバー25の中心軸C1に一致している。流水導入部22の流路断面の中心を通る流路中心線C2は曲率を有する曲線を描き、流水導入部22は湾曲している。その流路中心線C2の下流端位置は、筒体20及びチャンバー25の中心軸C1に一致している。
【0027】
筒体20の内部には筒体20の軸方向に延在するチャンバー25が形成され、流路断面収縮部23は、そのチャンバー25に連通し、且つチャンバー25に対して流路断面が縮小されている。また、流路断面収縮部23は、その流路断面の中心を、チャンバー25の中心軸C1に一致させて、チャンバー25の軸方向に対して略平行に延在し、径が一定な直管状に形成されている。すなわち、流水導入部22の流路は上流側から下流側に向けて漸次細くなり、その細くなった先には、流路径がほぼ一定な直管部(流路断面収縮部23)が続いている。
【0028】
チャンバー25の軸方向の上流側端部には、流路断面収縮部23に対して流路断面が急拡大(例えば径が3倍以上急拡大)された流路断面急拡大部24が設けられている。チャンバー25の軸方向の下流側端部には、略長方形状の噴出口26が開口している。すなわち、チャンバー25における軸方向の上流側端部が流路断面急拡大部24として機能し、チャンバー25における軸方向の下流側端部が噴出口26として機能する。
【0029】
図4は、筒体20のみを抽出して示す模式斜視図であり、略長方形状の噴出口26の長手方向に対して平行な方向に切断した状態を示す。
図5は、図3におけるB−B断面に対応する筒体20の断面図であり、略長方形状の噴出口26の短手方向に対して平行な方向に切断した筒体20の横断面図である。
【0030】
筒体20の外形形状は円筒状であるが、その内部に中空穴として形成されたチャンバー25の断面形状は、流路断面収縮部23が開口された上流側端部では略円形状であり、噴出口26が開口された下流側端部では噴出口26と同様の略長方形状となっている。なお、ここでの「略長方形状」とは、4つの角が直角に形成された矩形状に限らず、図7に示すように矩形において4つの角が丸まった(アールが付いた)形状や、図8に示すように略平行に対向する一対の直線を長辺として有すると共に短辺部分が曲線で構成されたオーバルもしくはレーストラック形状も含む。
【0031】
チャンバー25の断面形状は、上流側から下流側に向かって略円形状から略長方形状に急に変わるのではなく、上流側端部の略円形状が下流側に向かうにつれて噴出口26の長手方向に縦長となる形状に押し潰されるように徐々に変化しながら略長方形状の噴出口26へと続く。噴出口26の長辺部へと続くチャンバー内壁面25aは、上流側端部側では曲面であるが、下流側に向かうにつれて外側への膨らみが小さくなっていき、噴出口26近傍では平面になっている。
【0032】
図2に示すように、流路断面収縮部23から流路断面急拡大部24にかけての流路壁面は略垂直に変化している。すなわち、流路断面収縮部23の流路壁面は、チャンバー25の軸方向に対して略平行であるのに対して、流路断面急拡大部24として機能するチャンバー25の軸方向の上流側端部の端面は、流路断面収縮部23の流路壁面に対して略垂直に続いて径外方に広がって形成されている。この流路壁面の急変化により、後述するように流路断面急拡大部24にて、壁面からの流れの剥離が生じる。
【0033】
流路断面収縮部23におけるチャンバー25内に臨む下流端開口(チャンバー25への入口)は円形状に形成され、その中心はチャンバー25の軸中心に位置している。その流路断面収縮部23の下流端開口は、噴出口26からチャンバー25内を見た正面視において、噴出口26を形作る輪郭線よりも内側に位置する。
【0034】
外側カバー31は浴槽壁に対して保持固定され、その内部に設けられた筒体20は外側カバー31に対して中心軸C1のまわりに回動自在となっている。図3に示すように、筒体20の下流側端面には噴出口26が開口しているが、その下流側端面において噴出口26の長辺部の外側には、噴出口26を挟んで位置する2つのくぼみ38が形成されている。くぼみ38は、図3において紙面奥側にくぼんでいる。これら2つのくぼみ38を指でつまみながら筒体20を外側カバー31に対して回動させることができ、この筒体20の回動によって、噴出口26の長手方向を任意の向きに設定することができる。図3においては、噴出口26の長手方向は縦向きにされているが、横向きにしたり、縦横に対して傾いた向きにしたりと、自由にその向きを変えることができる。
【0035】
次に、本実施形態に係る噴流浴装置の作用について説明する。
【0036】
浴槽近傍に設けられた図示しないコントローラのスイッチを入浴者が操作すると、前述したポンプ7が起動し、浴槽4内に貯留された浴槽水が吸入口5から循環路6内へと吸入される。この吸入された浴槽水は、ポンプ7にて加圧されて、循環路8を介して、噴流ノズル11の流水導入部22に導入される。
【0037】
ここで、図6(a)〜(d)において左側に表される図は、チャンバー25内での流水の挙動を説明するための模式図であり、その図の右側には噴出口26側から見た正面図を示す。この正面図において、噴出噴流の正面側から見た位置を1点鎖線の円で模式的に表す。(a)において左側の図は、その右側の図におけるA−A断面に対応し、(b)〜(d)の各図においても同様である。
【0038】
流水導入部22に導入された加圧浴槽水は、流路断面収縮部23および流路断面急拡大部24を順に経てチャンバー25内に噴流となって流入する。加圧浴槽水が、流路断面収縮部23からチャンバー25内に流入する際、流路断面の急拡大により、筒体20の内壁面に沿って流れることができなくなり、すなわち流路内壁面に対して流れの剥離が生じる。
【0039】
一般的に、噴流は、外部流体との運動量交換により外部流体を加速し、噴流内部に巻き込む。このとき、噴流近傍に壁面が存在すると、外部流体を内部に引き込むように作用する引きつけ力の反作用により、噴流自身が壁面に向かって曲げられ、再び流れが壁面に沿うようになる。つまり、チャンバー25の内壁面の一部に流れが再付着する。
【0040】
チャンバー25の内壁面に付着した主流は、そのままチャンバー25の内壁面に沿って噴出口26に向かって流れ、噴出口26の出口断面の一部に偏って浴槽4内に噴出する。
【0041】
流路断面収縮部23に比べて噴出口26の流路断面が大きく、流れは下流に向かって減速、すなわち、チャンバー25内部では下流に向かって静圧が増加する逆圧力勾配が形成されることによって、主流aの一部は噴出口26から噴出されず、図6(b)において矢印bで表すように、チャンバー25の上流側に戻される。
【0042】
その上流側に戻された流れが、図6(c)に表すように、流路断面急拡大部24付近にて主流が剥離したよどみ領域に流れ込むことで、図6(d)に表すように、流路断面急拡大部24付近で中心軸C1まわりに旋回流が形成され、これにより、主流の内壁面に対する再付着位置が不規則に変化し、チャンバー25内には中心軸C1まわりに不規則に旋回する流れが形成される。
【0043】
前述したように、チャンバー25の断面形状は、上流側端部の略円形状が下流側に向かうにつれて噴出口26の長手方向に縦長となる形状に押し潰されるように徐々に変化しながら略長方形状の噴出口26へと続いているため、噴出口26の短手方向への旋回流の広がり(膨らみ)は規制され、噴出口26からはその長手方向に不規則に往復移動する噴流が噴出される。図6(d)の右側の正面図において、正面側から見た噴出噴流の位置の移動軌跡を1点鎖線の矢印で模式的に表す。すなわち、チャンバー25は、旋回流を往復振動噴流に変換する変換部として機能する。
【0044】
流路断面収縮部の流路径(図2におけるd)を8.3mm、チャンバー25の軸方向長さ(図2におけるL)を76.6mm、噴出口26の長手方向寸法(図3におけるD)を34mm、噴出口26の短手方向寸法(図3におけるW)を14mm、流路断面収縮部23におけるチャンバー25内に臨む下流端開口の開口縁部と、噴出口26の長辺部との間の距離(図3におけるX)を2.85mmにそれぞれ設計し、ノズル内への供給流量を25〜45リットル/分とした場合に、噴出口26の長手方向に往復して振れるような噴流の噴出を確認できた。
【0045】
本実施形態では、水流として簡単に形成しやすい旋回流をまず発生させた上で、その旋回流から往復振動噴流に変換することにより、容易に往復振動噴流を実現できる。また、チャンバー25の断面形状が、旋回流の形成に有利な略円形状から、噴出口26の略長方形状へと急に変化するのではなく徐々に変化しているため、旋回流から往復振動噴流への変換をスムーズに行うことができ、圧損等の流体エネルギー損失を抑制できる。
【0046】
入浴者は、噴流ノズル11から噴出される往復振動噴流を、腰、背、肩、手、足等の身体の一部に受けることにより、マッサージ効果を得ることができる。前述したように筒体20を回動させることで噴出口26の長手方向を縦向きにしたり、横向きにしたり、斜め向きにしたりと任意にその向きを設定できるため、例えば噴出口26を縦向きにした場合に、入浴者がノズル11が取り付けられた短辺浴槽壁4aに背中を向けた姿勢で入浴すれば、背骨に沿って往復移動する噴流マッサージを受けることができる。
【0047】
同じく噴出口26を縦向きにした場合において、入浴者が足裏をノズル11側に向けた姿勢で入浴すれば、足裏における足先と踵との間の足裏縦方向に沿って往復移動する噴流マッサージを受けることができる。また、噴出口26を横向きにした場合において、入浴者が足裏をノズル11側に向けた姿勢で入浴すれば、足の指の付け根部分に沿って往復移動する噴流マッサージを受けることができる。
【0048】
このような往復移動する噴流によるマッサージは、一般に広く知られる気泡浴装置による細くて強く、まっすぐに噴出する直線的な噴流では得られないものである。しかも、そのような直線噴流に比べて、本実施形態によって実現される噴流は、噴出口26の略長方形状に合わせて比較的太く、且つ気泡を含まずやわらかいため、局所的に強い刺激感ではなく、もみほぐすような手もみに近いマッサージ感を得ることができ、長時間入浴していても飽きがなくゆったりとリラックスできる。
【0049】
また、本実施形態に係る噴流ノズル11は、内部に導入された流体自身が、前述したようにチャンバー25内での還流作用によって、噴出口26から噴出される噴流の往復移動を励起する構成となっているため、回転摺動部分が不要であり、ノズル構造が単純化され、安価に作製することができ、またメンテナンスも容易になる。さらには、回転摺動部分における摩耗やゴミ詰まりなどの心配もない。
【0050】
また、本実施形態では、チャンバー25を囲む筒体20は一重構造である。すなわち、ひとつの筒体20によって周囲が囲まれる単一空間(流路)内で、噴出口26へと向かう主流、および主流とは逆方向に流れる還流が形成され、浴槽水中に往復噴流として噴出される。したがって、構造が単純化され、安価に作製することができ、またメンテナンスも容易になる。さらには、ゴミ詰まりの心配もない。
【0051】
また、本実施形態では、チャンバー25への流入口として機能する流路断面収縮部23は、チャンバー25を囲む筒体20の周壁部には形成されてはおらず、チャンバー25の軸方向の上流側端部に開口している。したがって、流路断面収縮部23からチャンバー25内に流入した主流は、流路断面急拡大部24で流路壁面から剥離した後、チャンバー25の内周面に再付着して、ある程度の直進性を保ったまま噴出口26から噴出し、さらに、その主流の流路壁面(チャンバー25の内周面)への再付着位置がチャンバー25内に形成される循環流(戻り流)により変化することで、噴出方向が変化するため、刺激箇所が時間とともに変化するような変化に富んだ噴流刺激が得られる。
【0052】
なお、流水導入部における流水導入口から流路断面収縮部へと続く部分は流路径がほぼ一定のまま湾曲させた構造としてもよい。ただし、図2に示す前述した実施形態のように、流水導入部22の流路径を上流側端部から下流側端部である流路断面収縮部23に向けて漸次細くなるようにし、且つその流水導入部22の流路断面中心線C2の下流端位置をチャンバー25の中心軸C1に一致させることで、流路径一定のまま湾曲させた場合に比べて、湾曲部の突出長を抑えて、限られた浴室内スペースでの設置に有利となる小型化が図れる。
【0053】
また、本実施形態では、一つのノズルに対する流水の入力系統は1系統であり、特許文献4、5のように2系統の入力流路や、三方弁、制御流の制御手段等を必要とせず、システムを簡単にしてゴミ詰まりも無く、コストやメンテナンス性に優れる。すなわち、本実施形態によれば、簡単な構造で、往復自励振動する噴流を浴槽水中に噴出可能とし、変化に富んだマッサージ感を実現する。
【0054】
チャンバー形状は前述したものに限らず、図9に示すチャンバー125のように、流路断面収縮部123が開口し、その流路断面収縮部123に対して流路断面が急拡大された流路断面急拡大部124が設けられた上流側端部から、噴出口126が開口された下流側端部にかけての断面が、噴出口126と同じ略長方形状に形成されたものでもよい。
【0055】
このチャンバー125も、旋回流を往復振動噴流に変換する変換部として機能する。すなわち、加圧浴槽水が、流路断面収縮部123からチャンバー125内に流入する際、流路断面の急拡大により、流路壁面に対して流れの剥離が生じると共に、外部流体を内部に引き込むように作用する引きつけ力の反作用により、噴流自身が壁面に向かって曲げられ、再び流れが流路壁面に沿うようになり、流路壁面の一部に流れが再付着する。
【0056】
流路断面収縮部123に比べて噴出口126の流路断面が大きく、流れは下流に向かって減速、すなわち、チャンバー125内部では下流に向かって静圧が増加する逆圧力勾配が形成されることによって、主流の一部が上流側に戻される。その戻り流が流路断面急拡大部124付近にて主流が剥離したよどみ領域に流れ込むことで、流路断面急拡大部124付近で旋回流が形成され、これにより、主流の内壁面に対する再付着位置が不規則に変化し、チャンバー125内には不規則に旋回する流れが形成される。
【0057】
そして、チャンバー125の断面形状は噴出口126と同じ略長方形状に形成されているため、噴出口126の短手方向への旋回流の広がり(膨らみ)は規制され、噴出口126からはその長手方向に不規則に往復移動する噴流が噴出される。
【0058】
また、図10に示すように、円形筒体220の内部に円柱状の空間としてチャンバー225を形成した構成としてもよい。筒体220における軸方向の上流側端面の中心には流路断面収縮部223が開口し、筒体220における軸方向の下流側端面には、略長方形状の噴出口226が開口している。
【0059】
チャンバー225の断面形状は、流路断面収縮部223に対して流路断面が急拡大された流路断面急拡大部として機能する上流側端部から、噴出口226が形成された下流側端部にかけて、径がほぼ一定の円形状となっている。
【0060】
このチャンバー225も、旋回流を往復振動噴流に変換する変換部として機能する。すなわち、加圧浴槽水が、流路断面収縮部223からチャンバー225内に流入する際、流路断面の急拡大により、流路壁面に対して流れの剥離が生じると共に、外部流体を内部に引き込むように作用する引きつけ力の反作用により、噴流自身が壁面に向かって曲げられ、再び流れが流路壁面に沿うようになり、流路壁面の一部に流れが再付着する。
【0061】
流路断面収縮部223に比べて噴出口226の流路断面が大きく、流れは下流に向かって減速、すなわち、チャンバー225内部では下流に向かって静圧が増加する逆圧力勾配が形成されることによって、主流の一部が上流側に戻される。その戻り流が上流側の流路断面急拡大部付近にて主流が剥離したよどみ領域に流れ込むことで、その部分で旋回流が形成され、これにより、主流の内壁面に対する再付着位置が不規則に変化し、チャンバー225内には不規則に旋回する流れが形成される。
【0062】
そして、噴出口226は略長方形状に形成されているため、噴出口226の通過時に旋回性は失われ(旋回流の広がりが規制され)、噴出口226からは不規則に往復移動する噴流が噴出される。
【0063】
図11は、図10に示す筒体220を用いたノズルを作製し、噴流の噴出実験を行った様子を示す写真図である。図11において紙面を貫く方向が噴出口の長手方向に沿った方向であり、横方向が噴出口の短手方向に沿った方向である。図中の矢印は噴流噴出方向を示す。図11(a)は、筒体軸方向に対して右方に傾いた方向に噴流が噴出されている状態を示し、図11(b)は筒体軸方向に対して、(a)の場合とは逆に左方に傾いた方向に噴流が噴出されている状態を示す。すなわち、この図10の筒体220及びチャンバー225を用いた構成では、略長方形状の噴出口226の短手方向に振れる往復振動噴流が得られた。
【0064】
また、噴出口226から噴出された噴流は、比較的広範囲にわたって噴出口226の短手方向に散っており、これは、チャンバー225内から噴出口226に至る流路壁面が略直角に急変化していることが要因と考えられる。
【0065】
前述した実施形態では、可動部のない一重構造の筒体内に形成したチャンバーが、旋回流を生じさせる旋回流形成部としても、旋回流を往復振動噴流へ変換する変換部としても機能する構造について説明したが、旋回流形成部と、往復振動噴流への変換部とを別の構成で実現してもよい。
【0066】
図12に、旋回流形成部として機能するノズル本体60を示す。図12(a)はノズル本体60の模式断面図であり、図12(b)はノズル本体60の下流側端部を正面側から見た図である。なお、図12(a)の断面は、図12(b)におけるC−C断面である。
【0067】
ノズル本体60は、旋回流を形成するために機械的に可動する部分を有する。その機械的に可動する部分として円柱状の回転体62が筒体61の内部に収容されている。筒体61の下流側端部は開口され、その開口端には直径方向に延在する軸受保持部材64が設けられている。軸受保持部材64の中心には軸受68が設けられ、この軸受68に回転軸63の一端が支持されている。回転軸63の他端は、筒体61の上流端の中心に設けられた軸受67に支持されている。回転軸63は、筒体61及び回転体62の軸方向に平行に延在してそれらの軸中心位置に設けられ、回転体62は筒体61の内部で回転軸63のまわりに回転自在となっている。
【0068】
回転体62には、上流側端面から下流側端面にかけて貫通した噴流孔65が形成されている。噴流孔65は回転軸63から偏心した位置に設けられ、且つ、図12(b)に示すように噴流孔65の入口65bの中心と出口65aの中心とが回転体62の回転面の周方向にずれるように、噴流孔65の軸方向が回転軸63に対して傾いている。また、噴流孔65の軸方向は、上流側から下流側に向かうにつれ、回転軸63に対して径外方に離れるようにも傾斜している。
【0069】
筒体61における回転体62よりも上流側の内部に、ポンプからの加圧浴槽水が導入されると、その浴槽水が噴流孔65を通過して出口65aから噴出する。ここで、噴流孔65の軸方向の両端開口である入口65bと出口65aとが回転体62の回転面の周方向にずれるように、噴流孔65の軸方向が回転軸63に対して傾いているため、噴流孔65内を流れる水流は回転体62の回転面の接線方向成分を持ち、その水流の反力により回転体62が回転される。この回転体62の回転により、出口65aも回転軸63を中心に周方向に移動し、これにより出口65aから旋回した噴流が噴出される。
【0070】
上記旋回流を噴出するノズル本体60の下流側には、図13に示すように、変換部70が設けられている。
【0071】
変換部70は、四角錐の頂部を切り取った形状をし、その底部をノズル本体60の下流側端面に向けた状態で、台形状の4つの側面でノズル本体60の下流側前方の空間を囲んでいる。噴流孔65の出口65aは変換部70によって囲まれた空間内に臨み、その空間内に噴流孔65の出口65aから旋回流が噴出される。
【0072】
変換部70における下流側端部には略長方形状の噴出口71が開口形成され、変換部70内に噴出された旋回流は、噴出口71の通過時に旋回性が失われ(旋回流の広がりが規制され)、噴出口71からはその長手方向に振れる往復振動噴流が浴槽内に向けて噴出される。
【0073】
図14は、上記ノズル本体60と組み合わされる変換部の他の具体例を示す。この変換部80は旋回に合わせて上流側端部を略円形状に形成し、下流端部は略長方形状の噴出口81が開口形成され、図13の変換部70よりも徐々に断面積が狭められているため、旋回流から往復振動流への変換がスムーズに移行しやすい。
【0074】
この変換部80においても、下流側端部には略長方形状の噴出口81が開口形成され、変換部80内に噴出された旋回流は、断面略長方形状の流路及び噴出口81の通過時に旋回性が失われ(旋回流の広がりが規制され)、噴出口81からはその長手方向に振れる往復振動噴流が浴槽内に向けて噴出される。
【0075】
これら具体例においても、水流として簡単に形成しやすい旋回流をまず発生させた上で、その旋回流から往復振動噴流に変換することにより、容易に往復振動噴流を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施形態に係る噴流浴装置の概略構成を示す模式図。
【図2】同噴流浴装置における噴流ノズルの模式断面図。
【図3】同噴流ノズルを噴出口側から見た正面図。
【図4】同噴流ノズルの筒体の縦断面を示す模式斜視図。
【図5】同噴流ノズルの筒体の、図3におけるB−B断面に対応する横断面図。
【図6】同噴流ノズル内における流水の挙動を説明するための模式図。
【図7】同噴流ノズルにおけるチャンバー及び噴出口の断面形状の他の具体例を示す模式図。
【図8】同噴流ノズルにおけるチャンバー及び噴出口の断面形状のさらに他の具体例を示す模式図。
【図9】本発明の実施形態に係る噴流ノズルにおけるチャンバー形状の他の具体例を示す模式図。
【図10】本発明の実施形態に係る噴流ノズルにおけるチャンバー形状のさらに他の具体例を示す模式図。
【図11】図10のチャンバー構造を有するノズルから噴流が噴出されている様子を示す写真図。
【図12】旋回流形成部と、旋回流を往復振動噴流に変換する変換部とを別構成として本発明の他の実施形態に係る噴流ノズルにおいて、旋回流形成部として機能するノズル本体を示す模式図。
【図13】図12のノズル本体に対して変換部を組み合わせた状態を示す模式図。
【図14】図12のノズル本体に対して、図13とは別形態の変換部を組み合わせた状態を示す模式図。
【符号の説明】
【0077】
4…浴槽、5…吸入口、11…噴流ノズル、20…筒体、22…流水導入部、23…流路断面収縮部、24…流路断面急拡大部、25…チャンバー、26…噴出口
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽内に噴流を噴出させる噴流ノズルを備えた噴流浴装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、外形形状が略円形で内部に設けた噴流孔の噴流口が軸芯位置より偏心すると共にユニット噴流口カバー内に回転自在に収容配置されたノズル本体と、バスタブ内の水を所定圧力でノズル本体の噴流孔内に噴射するオリフィスとを備えたノズル装置が開示されている。バスタブ内の水は、オリフィスを介してノズル本体の噴流孔内に所定圧力で噴射され、空気と混合して気泡混合噴流となり、噴流孔の噴流口からバスタブ内にジェット噴流として噴射される。この時、ノズル本体の噴流口が軸芯位置に対して偏心した位置に設けられていることから、オリフィスからの噴流によってノズル本体が回転し、これにより、ジェット噴流の噴射方向が変化する回転噴流が得られるとの開示がある。
【0003】
また、特許文献2によれば、下流側に向かって流路幅を漸次拡大する案内壁を内面に有する構造体(内筒に相当)と、浴槽壁に取り付けられる構造体(外筒に相当)の内壁面との間に、下流に流れてきた流水の一部を上流側に還流させる流路を細い隙間として形成する構造にて、旋回流を発生させることができるとの開示がある。
【0004】
また、特許文献3〜5には、ノズル自体に可動部を設けない構造にて、振動するように噴出方向を変える噴流が得られるとの開示がある。
【特許文献1】特開2001−008998号公報
【特許文献2】特開平2−128765号公報
【特許文献3】特開平4−176461号公報
【特許文献4】特開2006−325992号公報
【特許文献5】独国特許出願公開第4409656号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2のような旋回噴流では、例えば、足裏における踵とつま先との間の縦方向、足指付け根付近、背骨や腰の筋などに沿って往復移動する噴流マッサージを行う場合には不向きである。
【0006】
また、一般に、旋回流は比較的簡単に得ることができるが、往復振動噴流については、特に特許文献3に開示されたノズルについては、空気中への往復振動噴流であり、さらに浴槽の溢れ面より上に配置されたものであるので、水中での発振現象として示していない。
【0007】
また、特許文献4によれば、配管内の三方弁の開度を調整して流量比率を変化させて、浴槽水面下で2流路からの吐水によって2流体衝突を行い、気液2相流で往復振動噴流させて、リンパの流れに沿って噴流マッサージを行わせるとの開示がある。しかし、2流体を流量比を変化させつつ衝突させて往復振動噴流を得る構成は、配管が多くなることと、三方弁の開度制御が必要となり、システムとしては複雑で高価で大掛かりになる問題がある。
【0008】
また、特許文献5には、吐水流を往復振動させるための制御流の切換流路を設けて、浴槽水面下において気液2相流でゆっくりとした往復振動噴流を実現する構成が開示されている。しかし、この場合も、噴流に往復振動をさせるための制御流が必要で、そのための制御流を流す細い配管が必要となり、システムを複雑にし、また、その細い配管にゴミ等が詰まり、所望の動作が得られないことが懸念される。
【0009】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされ、簡単な構造で、容易に往復振動噴流を浴槽水中に噴出することのできる噴流浴装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、浴槽と、前記浴槽の浴槽壁に開口され前記浴槽の内部に貯留された浴槽水が吸い込まれる吸入口と、前記吸入口から浴槽水を吸入し加圧して吐出する加圧装置と、前記浴槽のあふれ縁より下で噴出口を前記浴槽内に臨ませて前記浴槽壁に対して保持され、前記加圧装置から内部に導入された加圧浴槽水を前記噴出口から前記浴槽内に噴出する噴流ノズルと、を備え、前記噴流ノズルは、旋回流を往復振動噴流に変換する変換部を有することを特徴とする噴流浴装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡単な構造で、容易に往復振動噴流を浴槽水中に噴出することのできる噴流浴装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る噴流浴装置の概略構成を示す模式図である。
【0013】
本実施形態に係る噴流浴装置は、浴槽4と、浴槽4の浴槽壁に開口された吸入口5と、循環路6、8と、循環路6、8の間に接続された加圧装置であるポンプ7と、浴槽壁に設けられた2つの噴流ノズル11とを備える。
【0014】
浴槽4は、略平行に相対向する一対の長辺浴槽壁3a、3bと、略平行に相対向する一対の短辺浴槽壁4a、4bとを有する。
【0015】
吸入口5は一対の長辺浴槽壁3a、3bのうちの一方(図1に示す例では長辺浴槽壁3a)に形成されている。ポンプ7が駆動されると、浴槽4の内部に貯留された浴槽水(湯も含む)は吸入口5を介して循環路6へと吸い込まれる。
【0016】
一般に、入浴者は、向かい合う一対の短辺浴槽壁4a、4bのうちの一方に背をもたれかけて他方の短辺浴槽壁に足を向けた姿勢で入浴するため、吸入口5を短辺浴槽壁に形成した場合には、入浴者の背中や足裏で吸入口5がふさがれポンプ7に過剰の負荷がかかることが懸念される。したがって、吸入口5は、入浴者の身体の一部等によってふさがれにくい長辺浴槽壁に形成するのが望ましい。
【0017】
循環路6の一端は吸入口5に接続され、他端はポンプ7の吸込口に接続されている。循環路8の一端はポンプ7の吐出口に接続され、他端は噴流ノズル11に接続されている。ポンプ7は、吸入口5から循環路6内に浴槽水を吸い込むと共に、その吸い込んだ浴槽水を加圧してポンプ7の下流側の循環路8に吐出する。このポンプ7から吐出された加圧浴槽水は、噴流ノズル11の内部に流入する。なお、使用していないときに、ポンプ7内部の残留水を抜くために、ポンプ7は吸入口5よりも上方に設けることが望ましい。
【0018】
本実施形態では、一対の短辺浴槽壁4a、4bのうちの一方(図1に示す例では短辺浴槽壁4a)に、2つの噴流ノズル11を取り付けている。2つの噴流ノズル11は、略同じ高さに所定距離水平方向に隔てて、短辺浴槽壁4aに保持されている。なお、入浴者が噴流ノズル11が設けられた短辺浴槽壁4aに背中を向けた姿勢で入浴すれば、噴流ノズル11からの噴流を背中や腰などに受けることができるし、その短辺浴槽壁4aに足を向けた姿勢で入浴すれば足裏や脹脛などに噴流ノズル11からの噴流を受けることができる。
【0019】
図2は噴流ノズル11の模式断面図であり、図3は図2における噴流ノズル11を噴出口26側から見た正面図である。図2は、図3におけるA−A断面に対応する。
【0020】
噴流ノズル11は、大きく分けて、略円筒形状でほぼまっすぐに延在する筒体20と、筒体20の軸方向の上流側端部に設けられた湾曲部30とを有する。筒体20は筒状の外側カバー31の内部に設けられ、湾曲部30はエルボカバー32の内部に設けられている。筒体20と湾曲部30とは一体成形構造であってもよいし、別体のものを結合させてもよい。
【0021】
外側カバー31の下流側端部には、図3に示すようにその中央部分に円形の貫通孔34aが形成された円環状のフランジ部34が設けられている。その貫通孔34aから筒体20の噴出口26を含む下流側端面が露出している。
【0022】
湾曲部30の内部には流水導入部22が形成され、その流水導入部22における上流側端部の最上流端に開口形成された流水導入口21は、前述した循環路8と接続される配管33と接続されている。
【0023】
図1において、噴流ノズル11は、その噴出口26を、浴槽4のあふれ縁より下で浴槽4の内部に臨ませて短辺浴槽壁4aに保持されている。ここで、「あふれ縁」とは、浴槽4内に浴槽水をためていったとき、最初に浴槽4内から溢れる部分の浴槽4の縁(またはリム)を意味する。このような構成のため、浴槽4内に浴槽水を溜めて人が入浴した状態で、噴流ノズル11からの噴流を確実に浴槽水中に噴出させることができる。
【0024】
流水導入部22の下流側端部は、流水導入部22の中で最も流路断面が縮小された流路断面収縮部23として機能する。流路断面収縮部23の最下流端は、筒体20の軸方向の上流側端部に開口している。
【0025】
流水導入部22の流路断面は円形または楕円形であり、その流路断面積は、上流側端部から下流側端部である流路断面収縮部23に向けて漸次減少している。すなわち、流水導入部22の流路は、上流側端部から下流側端部である流路断面収縮部23に向けて漸次細くなっている。
【0026】
流路断面収縮部23の流路断面の中心は、筒体20及びチャンバー25の中心軸C1に一致している。流水導入部22の流路断面の中心を通る流路中心線C2は曲率を有する曲線を描き、流水導入部22は湾曲している。その流路中心線C2の下流端位置は、筒体20及びチャンバー25の中心軸C1に一致している。
【0027】
筒体20の内部には筒体20の軸方向に延在するチャンバー25が形成され、流路断面収縮部23は、そのチャンバー25に連通し、且つチャンバー25に対して流路断面が縮小されている。また、流路断面収縮部23は、その流路断面の中心を、チャンバー25の中心軸C1に一致させて、チャンバー25の軸方向に対して略平行に延在し、径が一定な直管状に形成されている。すなわち、流水導入部22の流路は上流側から下流側に向けて漸次細くなり、その細くなった先には、流路径がほぼ一定な直管部(流路断面収縮部23)が続いている。
【0028】
チャンバー25の軸方向の上流側端部には、流路断面収縮部23に対して流路断面が急拡大(例えば径が3倍以上急拡大)された流路断面急拡大部24が設けられている。チャンバー25の軸方向の下流側端部には、略長方形状の噴出口26が開口している。すなわち、チャンバー25における軸方向の上流側端部が流路断面急拡大部24として機能し、チャンバー25における軸方向の下流側端部が噴出口26として機能する。
【0029】
図4は、筒体20のみを抽出して示す模式斜視図であり、略長方形状の噴出口26の長手方向に対して平行な方向に切断した状態を示す。
図5は、図3におけるB−B断面に対応する筒体20の断面図であり、略長方形状の噴出口26の短手方向に対して平行な方向に切断した筒体20の横断面図である。
【0030】
筒体20の外形形状は円筒状であるが、その内部に中空穴として形成されたチャンバー25の断面形状は、流路断面収縮部23が開口された上流側端部では略円形状であり、噴出口26が開口された下流側端部では噴出口26と同様の略長方形状となっている。なお、ここでの「略長方形状」とは、4つの角が直角に形成された矩形状に限らず、図7に示すように矩形において4つの角が丸まった(アールが付いた)形状や、図8に示すように略平行に対向する一対の直線を長辺として有すると共に短辺部分が曲線で構成されたオーバルもしくはレーストラック形状も含む。
【0031】
チャンバー25の断面形状は、上流側から下流側に向かって略円形状から略長方形状に急に変わるのではなく、上流側端部の略円形状が下流側に向かうにつれて噴出口26の長手方向に縦長となる形状に押し潰されるように徐々に変化しながら略長方形状の噴出口26へと続く。噴出口26の長辺部へと続くチャンバー内壁面25aは、上流側端部側では曲面であるが、下流側に向かうにつれて外側への膨らみが小さくなっていき、噴出口26近傍では平面になっている。
【0032】
図2に示すように、流路断面収縮部23から流路断面急拡大部24にかけての流路壁面は略垂直に変化している。すなわち、流路断面収縮部23の流路壁面は、チャンバー25の軸方向に対して略平行であるのに対して、流路断面急拡大部24として機能するチャンバー25の軸方向の上流側端部の端面は、流路断面収縮部23の流路壁面に対して略垂直に続いて径外方に広がって形成されている。この流路壁面の急変化により、後述するように流路断面急拡大部24にて、壁面からの流れの剥離が生じる。
【0033】
流路断面収縮部23におけるチャンバー25内に臨む下流端開口(チャンバー25への入口)は円形状に形成され、その中心はチャンバー25の軸中心に位置している。その流路断面収縮部23の下流端開口は、噴出口26からチャンバー25内を見た正面視において、噴出口26を形作る輪郭線よりも内側に位置する。
【0034】
外側カバー31は浴槽壁に対して保持固定され、その内部に設けられた筒体20は外側カバー31に対して中心軸C1のまわりに回動自在となっている。図3に示すように、筒体20の下流側端面には噴出口26が開口しているが、その下流側端面において噴出口26の長辺部の外側には、噴出口26を挟んで位置する2つのくぼみ38が形成されている。くぼみ38は、図3において紙面奥側にくぼんでいる。これら2つのくぼみ38を指でつまみながら筒体20を外側カバー31に対して回動させることができ、この筒体20の回動によって、噴出口26の長手方向を任意の向きに設定することができる。図3においては、噴出口26の長手方向は縦向きにされているが、横向きにしたり、縦横に対して傾いた向きにしたりと、自由にその向きを変えることができる。
【0035】
次に、本実施形態に係る噴流浴装置の作用について説明する。
【0036】
浴槽近傍に設けられた図示しないコントローラのスイッチを入浴者が操作すると、前述したポンプ7が起動し、浴槽4内に貯留された浴槽水が吸入口5から循環路6内へと吸入される。この吸入された浴槽水は、ポンプ7にて加圧されて、循環路8を介して、噴流ノズル11の流水導入部22に導入される。
【0037】
ここで、図6(a)〜(d)において左側に表される図は、チャンバー25内での流水の挙動を説明するための模式図であり、その図の右側には噴出口26側から見た正面図を示す。この正面図において、噴出噴流の正面側から見た位置を1点鎖線の円で模式的に表す。(a)において左側の図は、その右側の図におけるA−A断面に対応し、(b)〜(d)の各図においても同様である。
【0038】
流水導入部22に導入された加圧浴槽水は、流路断面収縮部23および流路断面急拡大部24を順に経てチャンバー25内に噴流となって流入する。加圧浴槽水が、流路断面収縮部23からチャンバー25内に流入する際、流路断面の急拡大により、筒体20の内壁面に沿って流れることができなくなり、すなわち流路内壁面に対して流れの剥離が生じる。
【0039】
一般的に、噴流は、外部流体との運動量交換により外部流体を加速し、噴流内部に巻き込む。このとき、噴流近傍に壁面が存在すると、外部流体を内部に引き込むように作用する引きつけ力の反作用により、噴流自身が壁面に向かって曲げられ、再び流れが壁面に沿うようになる。つまり、チャンバー25の内壁面の一部に流れが再付着する。
【0040】
チャンバー25の内壁面に付着した主流は、そのままチャンバー25の内壁面に沿って噴出口26に向かって流れ、噴出口26の出口断面の一部に偏って浴槽4内に噴出する。
【0041】
流路断面収縮部23に比べて噴出口26の流路断面が大きく、流れは下流に向かって減速、すなわち、チャンバー25内部では下流に向かって静圧が増加する逆圧力勾配が形成されることによって、主流aの一部は噴出口26から噴出されず、図6(b)において矢印bで表すように、チャンバー25の上流側に戻される。
【0042】
その上流側に戻された流れが、図6(c)に表すように、流路断面急拡大部24付近にて主流が剥離したよどみ領域に流れ込むことで、図6(d)に表すように、流路断面急拡大部24付近で中心軸C1まわりに旋回流が形成され、これにより、主流の内壁面に対する再付着位置が不規則に変化し、チャンバー25内には中心軸C1まわりに不規則に旋回する流れが形成される。
【0043】
前述したように、チャンバー25の断面形状は、上流側端部の略円形状が下流側に向かうにつれて噴出口26の長手方向に縦長となる形状に押し潰されるように徐々に変化しながら略長方形状の噴出口26へと続いているため、噴出口26の短手方向への旋回流の広がり(膨らみ)は規制され、噴出口26からはその長手方向に不規則に往復移動する噴流が噴出される。図6(d)の右側の正面図において、正面側から見た噴出噴流の位置の移動軌跡を1点鎖線の矢印で模式的に表す。すなわち、チャンバー25は、旋回流を往復振動噴流に変換する変換部として機能する。
【0044】
流路断面収縮部の流路径(図2におけるd)を8.3mm、チャンバー25の軸方向長さ(図2におけるL)を76.6mm、噴出口26の長手方向寸法(図3におけるD)を34mm、噴出口26の短手方向寸法(図3におけるW)を14mm、流路断面収縮部23におけるチャンバー25内に臨む下流端開口の開口縁部と、噴出口26の長辺部との間の距離(図3におけるX)を2.85mmにそれぞれ設計し、ノズル内への供給流量を25〜45リットル/分とした場合に、噴出口26の長手方向に往復して振れるような噴流の噴出を確認できた。
【0045】
本実施形態では、水流として簡単に形成しやすい旋回流をまず発生させた上で、その旋回流から往復振動噴流に変換することにより、容易に往復振動噴流を実現できる。また、チャンバー25の断面形状が、旋回流の形成に有利な略円形状から、噴出口26の略長方形状へと急に変化するのではなく徐々に変化しているため、旋回流から往復振動噴流への変換をスムーズに行うことができ、圧損等の流体エネルギー損失を抑制できる。
【0046】
入浴者は、噴流ノズル11から噴出される往復振動噴流を、腰、背、肩、手、足等の身体の一部に受けることにより、マッサージ効果を得ることができる。前述したように筒体20を回動させることで噴出口26の長手方向を縦向きにしたり、横向きにしたり、斜め向きにしたりと任意にその向きを設定できるため、例えば噴出口26を縦向きにした場合に、入浴者がノズル11が取り付けられた短辺浴槽壁4aに背中を向けた姿勢で入浴すれば、背骨に沿って往復移動する噴流マッサージを受けることができる。
【0047】
同じく噴出口26を縦向きにした場合において、入浴者が足裏をノズル11側に向けた姿勢で入浴すれば、足裏における足先と踵との間の足裏縦方向に沿って往復移動する噴流マッサージを受けることができる。また、噴出口26を横向きにした場合において、入浴者が足裏をノズル11側に向けた姿勢で入浴すれば、足の指の付け根部分に沿って往復移動する噴流マッサージを受けることができる。
【0048】
このような往復移動する噴流によるマッサージは、一般に広く知られる気泡浴装置による細くて強く、まっすぐに噴出する直線的な噴流では得られないものである。しかも、そのような直線噴流に比べて、本実施形態によって実現される噴流は、噴出口26の略長方形状に合わせて比較的太く、且つ気泡を含まずやわらかいため、局所的に強い刺激感ではなく、もみほぐすような手もみに近いマッサージ感を得ることができ、長時間入浴していても飽きがなくゆったりとリラックスできる。
【0049】
また、本実施形態に係る噴流ノズル11は、内部に導入された流体自身が、前述したようにチャンバー25内での還流作用によって、噴出口26から噴出される噴流の往復移動を励起する構成となっているため、回転摺動部分が不要であり、ノズル構造が単純化され、安価に作製することができ、またメンテナンスも容易になる。さらには、回転摺動部分における摩耗やゴミ詰まりなどの心配もない。
【0050】
また、本実施形態では、チャンバー25を囲む筒体20は一重構造である。すなわち、ひとつの筒体20によって周囲が囲まれる単一空間(流路)内で、噴出口26へと向かう主流、および主流とは逆方向に流れる還流が形成され、浴槽水中に往復噴流として噴出される。したがって、構造が単純化され、安価に作製することができ、またメンテナンスも容易になる。さらには、ゴミ詰まりの心配もない。
【0051】
また、本実施形態では、チャンバー25への流入口として機能する流路断面収縮部23は、チャンバー25を囲む筒体20の周壁部には形成されてはおらず、チャンバー25の軸方向の上流側端部に開口している。したがって、流路断面収縮部23からチャンバー25内に流入した主流は、流路断面急拡大部24で流路壁面から剥離した後、チャンバー25の内周面に再付着して、ある程度の直進性を保ったまま噴出口26から噴出し、さらに、その主流の流路壁面(チャンバー25の内周面)への再付着位置がチャンバー25内に形成される循環流(戻り流)により変化することで、噴出方向が変化するため、刺激箇所が時間とともに変化するような変化に富んだ噴流刺激が得られる。
【0052】
なお、流水導入部における流水導入口から流路断面収縮部へと続く部分は流路径がほぼ一定のまま湾曲させた構造としてもよい。ただし、図2に示す前述した実施形態のように、流水導入部22の流路径を上流側端部から下流側端部である流路断面収縮部23に向けて漸次細くなるようにし、且つその流水導入部22の流路断面中心線C2の下流端位置をチャンバー25の中心軸C1に一致させることで、流路径一定のまま湾曲させた場合に比べて、湾曲部の突出長を抑えて、限られた浴室内スペースでの設置に有利となる小型化が図れる。
【0053】
また、本実施形態では、一つのノズルに対する流水の入力系統は1系統であり、特許文献4、5のように2系統の入力流路や、三方弁、制御流の制御手段等を必要とせず、システムを簡単にしてゴミ詰まりも無く、コストやメンテナンス性に優れる。すなわち、本実施形態によれば、簡単な構造で、往復自励振動する噴流を浴槽水中に噴出可能とし、変化に富んだマッサージ感を実現する。
【0054】
チャンバー形状は前述したものに限らず、図9に示すチャンバー125のように、流路断面収縮部123が開口し、その流路断面収縮部123に対して流路断面が急拡大された流路断面急拡大部124が設けられた上流側端部から、噴出口126が開口された下流側端部にかけての断面が、噴出口126と同じ略長方形状に形成されたものでもよい。
【0055】
このチャンバー125も、旋回流を往復振動噴流に変換する変換部として機能する。すなわち、加圧浴槽水が、流路断面収縮部123からチャンバー125内に流入する際、流路断面の急拡大により、流路壁面に対して流れの剥離が生じると共に、外部流体を内部に引き込むように作用する引きつけ力の反作用により、噴流自身が壁面に向かって曲げられ、再び流れが流路壁面に沿うようになり、流路壁面の一部に流れが再付着する。
【0056】
流路断面収縮部123に比べて噴出口126の流路断面が大きく、流れは下流に向かって減速、すなわち、チャンバー125内部では下流に向かって静圧が増加する逆圧力勾配が形成されることによって、主流の一部が上流側に戻される。その戻り流が流路断面急拡大部124付近にて主流が剥離したよどみ領域に流れ込むことで、流路断面急拡大部124付近で旋回流が形成され、これにより、主流の内壁面に対する再付着位置が不規則に変化し、チャンバー125内には不規則に旋回する流れが形成される。
【0057】
そして、チャンバー125の断面形状は噴出口126と同じ略長方形状に形成されているため、噴出口126の短手方向への旋回流の広がり(膨らみ)は規制され、噴出口126からはその長手方向に不規則に往復移動する噴流が噴出される。
【0058】
また、図10に示すように、円形筒体220の内部に円柱状の空間としてチャンバー225を形成した構成としてもよい。筒体220における軸方向の上流側端面の中心には流路断面収縮部223が開口し、筒体220における軸方向の下流側端面には、略長方形状の噴出口226が開口している。
【0059】
チャンバー225の断面形状は、流路断面収縮部223に対して流路断面が急拡大された流路断面急拡大部として機能する上流側端部から、噴出口226が形成された下流側端部にかけて、径がほぼ一定の円形状となっている。
【0060】
このチャンバー225も、旋回流を往復振動噴流に変換する変換部として機能する。すなわち、加圧浴槽水が、流路断面収縮部223からチャンバー225内に流入する際、流路断面の急拡大により、流路壁面に対して流れの剥離が生じると共に、外部流体を内部に引き込むように作用する引きつけ力の反作用により、噴流自身が壁面に向かって曲げられ、再び流れが流路壁面に沿うようになり、流路壁面の一部に流れが再付着する。
【0061】
流路断面収縮部223に比べて噴出口226の流路断面が大きく、流れは下流に向かって減速、すなわち、チャンバー225内部では下流に向かって静圧が増加する逆圧力勾配が形成されることによって、主流の一部が上流側に戻される。その戻り流が上流側の流路断面急拡大部付近にて主流が剥離したよどみ領域に流れ込むことで、その部分で旋回流が形成され、これにより、主流の内壁面に対する再付着位置が不規則に変化し、チャンバー225内には不規則に旋回する流れが形成される。
【0062】
そして、噴出口226は略長方形状に形成されているため、噴出口226の通過時に旋回性は失われ(旋回流の広がりが規制され)、噴出口226からは不規則に往復移動する噴流が噴出される。
【0063】
図11は、図10に示す筒体220を用いたノズルを作製し、噴流の噴出実験を行った様子を示す写真図である。図11において紙面を貫く方向が噴出口の長手方向に沿った方向であり、横方向が噴出口の短手方向に沿った方向である。図中の矢印は噴流噴出方向を示す。図11(a)は、筒体軸方向に対して右方に傾いた方向に噴流が噴出されている状態を示し、図11(b)は筒体軸方向に対して、(a)の場合とは逆に左方に傾いた方向に噴流が噴出されている状態を示す。すなわち、この図10の筒体220及びチャンバー225を用いた構成では、略長方形状の噴出口226の短手方向に振れる往復振動噴流が得られた。
【0064】
また、噴出口226から噴出された噴流は、比較的広範囲にわたって噴出口226の短手方向に散っており、これは、チャンバー225内から噴出口226に至る流路壁面が略直角に急変化していることが要因と考えられる。
【0065】
前述した実施形態では、可動部のない一重構造の筒体内に形成したチャンバーが、旋回流を生じさせる旋回流形成部としても、旋回流を往復振動噴流へ変換する変換部としても機能する構造について説明したが、旋回流形成部と、往復振動噴流への変換部とを別の構成で実現してもよい。
【0066】
図12に、旋回流形成部として機能するノズル本体60を示す。図12(a)はノズル本体60の模式断面図であり、図12(b)はノズル本体60の下流側端部を正面側から見た図である。なお、図12(a)の断面は、図12(b)におけるC−C断面である。
【0067】
ノズル本体60は、旋回流を形成するために機械的に可動する部分を有する。その機械的に可動する部分として円柱状の回転体62が筒体61の内部に収容されている。筒体61の下流側端部は開口され、その開口端には直径方向に延在する軸受保持部材64が設けられている。軸受保持部材64の中心には軸受68が設けられ、この軸受68に回転軸63の一端が支持されている。回転軸63の他端は、筒体61の上流端の中心に設けられた軸受67に支持されている。回転軸63は、筒体61及び回転体62の軸方向に平行に延在してそれらの軸中心位置に設けられ、回転体62は筒体61の内部で回転軸63のまわりに回転自在となっている。
【0068】
回転体62には、上流側端面から下流側端面にかけて貫通した噴流孔65が形成されている。噴流孔65は回転軸63から偏心した位置に設けられ、且つ、図12(b)に示すように噴流孔65の入口65bの中心と出口65aの中心とが回転体62の回転面の周方向にずれるように、噴流孔65の軸方向が回転軸63に対して傾いている。また、噴流孔65の軸方向は、上流側から下流側に向かうにつれ、回転軸63に対して径外方に離れるようにも傾斜している。
【0069】
筒体61における回転体62よりも上流側の内部に、ポンプからの加圧浴槽水が導入されると、その浴槽水が噴流孔65を通過して出口65aから噴出する。ここで、噴流孔65の軸方向の両端開口である入口65bと出口65aとが回転体62の回転面の周方向にずれるように、噴流孔65の軸方向が回転軸63に対して傾いているため、噴流孔65内を流れる水流は回転体62の回転面の接線方向成分を持ち、その水流の反力により回転体62が回転される。この回転体62の回転により、出口65aも回転軸63を中心に周方向に移動し、これにより出口65aから旋回した噴流が噴出される。
【0070】
上記旋回流を噴出するノズル本体60の下流側には、図13に示すように、変換部70が設けられている。
【0071】
変換部70は、四角錐の頂部を切り取った形状をし、その底部をノズル本体60の下流側端面に向けた状態で、台形状の4つの側面でノズル本体60の下流側前方の空間を囲んでいる。噴流孔65の出口65aは変換部70によって囲まれた空間内に臨み、その空間内に噴流孔65の出口65aから旋回流が噴出される。
【0072】
変換部70における下流側端部には略長方形状の噴出口71が開口形成され、変換部70内に噴出された旋回流は、噴出口71の通過時に旋回性が失われ(旋回流の広がりが規制され)、噴出口71からはその長手方向に振れる往復振動噴流が浴槽内に向けて噴出される。
【0073】
図14は、上記ノズル本体60と組み合わされる変換部の他の具体例を示す。この変換部80は旋回に合わせて上流側端部を略円形状に形成し、下流端部は略長方形状の噴出口81が開口形成され、図13の変換部70よりも徐々に断面積が狭められているため、旋回流から往復振動流への変換がスムーズに移行しやすい。
【0074】
この変換部80においても、下流側端部には略長方形状の噴出口81が開口形成され、変換部80内に噴出された旋回流は、断面略長方形状の流路及び噴出口81の通過時に旋回性が失われ(旋回流の広がりが規制され)、噴出口81からはその長手方向に振れる往復振動噴流が浴槽内に向けて噴出される。
【0075】
これら具体例においても、水流として簡単に形成しやすい旋回流をまず発生させた上で、その旋回流から往復振動噴流に変換することにより、容易に往復振動噴流を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施形態に係る噴流浴装置の概略構成を示す模式図。
【図2】同噴流浴装置における噴流ノズルの模式断面図。
【図3】同噴流ノズルを噴出口側から見た正面図。
【図4】同噴流ノズルの筒体の縦断面を示す模式斜視図。
【図5】同噴流ノズルの筒体の、図3におけるB−B断面に対応する横断面図。
【図6】同噴流ノズル内における流水の挙動を説明するための模式図。
【図7】同噴流ノズルにおけるチャンバー及び噴出口の断面形状の他の具体例を示す模式図。
【図8】同噴流ノズルにおけるチャンバー及び噴出口の断面形状のさらに他の具体例を示す模式図。
【図9】本発明の実施形態に係る噴流ノズルにおけるチャンバー形状の他の具体例を示す模式図。
【図10】本発明の実施形態に係る噴流ノズルにおけるチャンバー形状のさらに他の具体例を示す模式図。
【図11】図10のチャンバー構造を有するノズルから噴流が噴出されている様子を示す写真図。
【図12】旋回流形成部と、旋回流を往復振動噴流に変換する変換部とを別構成として本発明の他の実施形態に係る噴流ノズルにおいて、旋回流形成部として機能するノズル本体を示す模式図。
【図13】図12のノズル本体に対して変換部を組み合わせた状態を示す模式図。
【図14】図12のノズル本体に対して、図13とは別形態の変換部を組み合わせた状態を示す模式図。
【符号の説明】
【0077】
4…浴槽、5…吸入口、11…噴流ノズル、20…筒体、22…流水導入部、23…流路断面収縮部、24…流路断面急拡大部、25…チャンバー、26…噴出口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽と、
前記浴槽の浴槽壁に開口され前記浴槽の内部に貯留された浴槽水が吸い込まれる吸入口と、
前記吸入口から浴槽水を吸入し加圧して吐出する加圧装置と、
前記浴槽のあふれ縁より下で噴出口を前記浴槽内に臨ませて前記浴槽壁に対して保持され、前記加圧装置から内部に導入された加圧浴槽水を前記噴出口から前記浴槽内に噴出する噴流ノズルと、を備え、
前記噴流ノズルは、旋回流を往復振動噴流に変換する変換部を有することを特徴とする噴流浴装置。
【請求項2】
前記噴流ノズルは一重構造の筒体を有し、
前記変換部は、前記筒体の軸方向に延在して前記筒体の内部に形成されたチャンバーであり、
前記チャンバーにおける、軸方向の上流側端部に流水の入口が開口されると共に前記入口に対して流路断面が急拡大された流路断面急拡大部が設けられ、軸方向の下流側端部に略長方形状の前記噴出口が開口されたことを特徴とする請求項1記載の噴流浴装置。
【請求項3】
前記チャンバーの断面積は、前記入口から前記噴出口に向かって徐々に減少していることを特徴とする請求項2記載の噴流浴装置。
【請求項1】
浴槽と、
前記浴槽の浴槽壁に開口され前記浴槽の内部に貯留された浴槽水が吸い込まれる吸入口と、
前記吸入口から浴槽水を吸入し加圧して吐出する加圧装置と、
前記浴槽のあふれ縁より下で噴出口を前記浴槽内に臨ませて前記浴槽壁に対して保持され、前記加圧装置から内部に導入された加圧浴槽水を前記噴出口から前記浴槽内に噴出する噴流ノズルと、を備え、
前記噴流ノズルは、旋回流を往復振動噴流に変換する変換部を有することを特徴とする噴流浴装置。
【請求項2】
前記噴流ノズルは一重構造の筒体を有し、
前記変換部は、前記筒体の軸方向に延在して前記筒体の内部に形成されたチャンバーであり、
前記チャンバーにおける、軸方向の上流側端部に流水の入口が開口されると共に前記入口に対して流路断面が急拡大された流路断面急拡大部が設けられ、軸方向の下流側端部に略長方形状の前記噴出口が開口されたことを特徴とする請求項1記載の噴流浴装置。
【請求項3】
前記チャンバーの断面積は、前記入口から前記噴出口に向かって徐々に減少していることを特徴とする請求項2記載の噴流浴装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図11】
【公開番号】特開2009−153908(P2009−153908A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338143(P2007−338143)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
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