説明

噴流生成装置とその噴流生成方法、及び、該装置を具備するアクチュエータ

【課題】 構造簡易な装置に直流電圧を印加して液体に噴流を生じさせる、小型、軽量な噴流生成装置とその噴流生成方法、及び、該装置を具備するアクチュエータを提供する。
【解決手段】 電極1には、電極の端部から絶縁体5を液体4中に突出させることにより、電圧印加により発生した気泡を電極端部近傍に保持する気泡保持部6を設け、電極1と電極2は、電圧印加により不平等電界を生じさせるように液体4中に配置し、電極1の接液面積は、電極2よりも小さく、発生する気泡により覆われる大きさとなるようにし、電極1、電極2、及び、電源3により液体4に電圧を印加し、電極1の端部近傍に気泡を発生させ、この気泡を気泡保持部6に保持し、保持された気泡を爆発的に気化させることで液体4に噴流を発生させるように噴流生成装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットのインク吐出、液体の霧化装置、噴流の運動エネルギーを利用したアクチュエータ、噴流の反作用を利用した推進装置等に適用される、噴流生成装置とその噴流生成方法、及び、該装置を具備するアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
液体の吐出方法に関する技術は、例えば、インクジェットのインク吐出、液体の霧化装置、噴流の運動エネルギーを利用したアクチュエータ、噴流の反作用を利用した推進装置等に適用される。例えば、この液体に噴流を生じさせる方法として、電気により水を熱して電気分解し、電気分解後の反応により気化させることで、水に流れを生じさせる方法がある。この方法によれば、電気のみを使い大きな水の運動を生じさせることができる。
【0003】
特許文献1では、熱エネルギーによる気泡の生成によって液体を吐出する吐出方法、液体吐出ユニット、及び、該ユニットを用いたインクジェット記録装置に関する技術が開示されている。この液体吐出方法において、発泡の効率化および熱エネルギーの吐出媒体に対する影響の排除を図る技術が開示されている。
【0004】
具体的には、吐出媒体と発泡媒体とをそれぞれの目的に適した異なる性質の媒体で構成し、これらを、液路において界面を介して分離した状態で保持する。そして、吐出動作に伴なって移動する界面の位置を、液路及び流路を流れる媒体流によって制御し、気泡生成時には常に発熱素子より前方にあるようにするというものである。これにより、気泡の生成は、発泡媒体においてのみ行われ、生成された気泡によって生じる圧力が吐出媒体に作用して吐出媒体が吐出する。
【0005】
また、特許文献2では、インクジェット記録装置において、インクを電気分解し、水素と酸素の混合気体を生成し、混合気体を燃焼させたい体積膨張により液滴を飛ばすインクの吐出方法及びこの方法を用いたインクジェット記録装置に関する技術が開示されている。
【0006】
一方、特許文献3では、EHD(Electro Hydro Dynamics)流動効果を有する電気応答流体と、これを用いた流体装置に関する技術が開示されている。ある種の流体に金属電極を浸して直流高電圧を印加すると、液体の流動が起こることは従来よりよく知られており、このような現象はEHD流動効果と呼ばれる。このEHD流動効果を利用した液体の流れを生じさせる流体装置は、流体装置を動力源としてポンプやアクチュエータを構成することができる。
【特許文献1】特開平6−305143号公報
【特許文献2】特開平4−107148号公報
【特許文献3】特開2004−68898号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、熱エネルギーによる気泡の生成によって液体を吐出する吐出装置及び吐出方法に関する技術では、気泡の発泡効率の問題や、特許文献2に示されるように、気泡の成長に合わせた、インクの電気分解と燃焼の段階で供給する電圧の制御が必要となるという問題があった。また、液体吐出により動力を得る、小型軽量なアクチュエータを実現するという課題がある。
【0008】
本発明は、上記のような問題点に鑑み、複雑な電圧制御をすることなく、構造簡易な装置に直流電圧を印加して液体に噴流を生じさせることを可能とした、小型、軽量な噴流生成装置とその噴流生成方法、及び、該装置を具備するアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、特定の第1の液体中に配置され、所定部分を絶縁体で被覆した導電性材料からなる第1の電極と、前記第1の液体中に配置される導電性材料からなる第2の電極と、該第1、第2の電極がそれぞれ異なる極性に接続される電源とを具備し、前記第1の液体に電圧を印加して気泡を発生させ、前記第1の液体に噴流を生じさせる噴流生成装置であって、前記第1の電極には、該電極の端部から前記絶縁体を前記第1の液体中に突出させることにより、前記電圧印加により発生した気泡を前記第1の電極端部近傍に保持するための気泡保持部を設け、前記第1、第2の電極は、前記電源からの電圧印加により不平等電界を生じさせるように前記第1の液体中に配置し、前記第1の電極における接液面積は、前記第2の電極よりも小さく、電圧印加により発生する前記気泡により覆われる大きさとなるようにし、前記第1、第2の電極及び前記電源により前記第1の液体に電圧を印加し、前記第1の電極の端部近傍に前記気泡を発生させ、該気泡を前記気泡保持部に保持し、該保持された気泡を爆発的に気化させることで前記第1の液体に噴流を発生させる噴流生成装置としたことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記印加電圧は、前記気泡における電界強度が、該気泡の絶縁破壊電界以上となるような電圧である請求項1記載の噴流生成装置としたことを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、前記噴流生成装置の前記第1の液体と、該液体と比重の異なる第2の液体とを界面を有する積層状となるようにし、前記界面近傍の前記第1の液体に流れを生じさせるように前記第1の電極及び第2の電極を配置し、前記界面近傍における前記第1の液体の流れによって、前記第2の液体に流れを生じさせる請求項1又は2に記載の噴流生成装置としたことを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、前記第2の液体の流路を形成するために、前記界面近傍の前記第2の液体中に壁を設けた請求項3に記載の噴流生成装置としたことを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の噴流生成装置を1以上具備し、該噴流生成装置から発生する液体の噴流により回転する羽根車を前記第1又は第2の液体中に設けたアクチュエータとしたことを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の発明は、前記第1又は第2の液体から発生した気泡を溜める気泡溜め部を更に設けた請求項5記載のアクチュエータとしたことを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の発明は、前記気泡溜め部は、前記気泡が発生する前記第1の電極を基準として、重力方向の反対方向に配置する請求項6記載のアクチュエータとしたことを特徴とする。
【0016】
請求項8記載の発明は、前記気泡溜め部に溜まった前記気泡を液化させる液化手段を更に設けた請求項6又は7に記載のアクチュエータとしたことを特徴とする。
【0017】
請求項9記載の発明は、前記気泡溜め部に溜まった気泡量を計測する気泡量計測手段を更に設け、該手段により計測した気泡量が所定値以上となった場合に、前記液化手段により気泡を液化させる請求項8記載のアクチュエータとしたことを特徴とする。
【0018】
請求項10記載の発明は、特定の第1の液体中に配置され、所定部分を絶縁体で被覆した導電性材料からなる第1の電極と、前記第1の液体中に配置される導電性材料からなる第2の電極と、該第1、第2の電極がそれぞれ異なる極性に接続される電源とを具備し、前記第1の液体に電圧を印加して気泡を発生させ、前記第1の液体に噴流を生じさせる噴流装置の噴流生成方法であって、前記第1の電極には、該電極の端部から前記絶縁体を前記第1の液体中に突出させることにより、前記電圧印加により発生した気泡を前記第1の電極端部近傍に保持するための気泡保持部が設けられ、前記第1、第2の電極は、前記電源からの電圧印加により不平等電界を生じさせるように前記第1の液体中に配置され、前記第1の電極における接液面積は、前記第2の電極よりも小さく、電圧印加により発生する前記気泡により覆われる大きさとなるようにされ、前記第1、第2の電極及び前記電源が、前記第1の液体に電圧を印加して、前記第1の電極の端部近傍に前記気泡を発生させる工程と、前記気泡保持部が、前記発生した気泡を保持し、該保持された気泡を爆発的に気化させることで前記第1の液体に噴流を発生させる工程とを有する噴流生成方法としたことを特徴とする。
【0019】
請求項11記載の発明は、前記印加電圧は、前記気泡における電界強度が、該気泡の絶縁破壊電界以上となるような電圧である請求項10記載の噴流生成方法としたことを特徴とする。
【0020】
請求項12記載の発明は、前記噴流生成装置の前記第1の液体と、該液体と比重の異なる第2の液体とを界面を有する積層状となるようにし、前記界面近傍の前記第1の液体に流れを生じさせるように前記第1の電極及び第2の電極を配置し、前記界面近傍における前記第1の液体の流れによって、前記第2の液体に流れを生じさせる工程を有する請求項10又は11に記載の噴流生成方法としたことを特徴とする。
【0021】
請求項13記載の発明は、前記界面近傍の前記第2の液体中に壁が設けられ、前記第2の液体の流路が形成されている請求項12に記載の噴流生成方法としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、複雑な電圧制御をすることなく、構造簡易な装置に直流電圧を印加して液体に噴流を生じさせることを可能とした、小型、軽量な噴流生成装置とその噴流生成方法を提供することが可能となる、また、該装置を利用して、小型、軽量ながら大きな動力を得ることができるアクチュエータを実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明を実施するための最良の形態は、特定の液体中に配置され、所定部分を絶縁体で被覆した導電性材料からなる第1の電極と、液体中に配置される導電性材料からなる第2の電極と、第1、第2の電極がそれぞれ異なる極性に接続される電源とを備え、液体に電圧を印加して気泡を発生させ、液体に噴流を生じさせる噴流生成装置において、第1の電極には、電極の端部から絶縁体を液体中に突出させることにより、電圧印加により発生した気泡を第1の電極端部近傍に保持するための気泡保持部を設け、第1、第2の電極は、電源からの電圧印加により不平等電界を生じさせるように液体中に配置し、第1の電極における接液面積は、第2の電極よりも小さく、電圧印加により発生する気泡により覆われる大きさとなるようにし、第1、第2の電極及び電源により液体に電圧を印加し、第1の電極の端部近傍に気泡を発生させ、この気泡を気泡保持部に保持し、保持された気泡を爆発的に気化させることで液体に噴流を発生させるように噴流生成装置を構成する。
【0024】
以下に、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下に述べる実施形態は本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの実施形態に限られるものではない。
【0025】
(実施形態1)
本実施形態の噴流生成装置について、添付図面を用いて以下に説明する。図1は、本実施形態の噴流生成装置の概略構成断面図である。図1に示すように、本実施形態の噴流生成装置は、絶縁体5に囲まれた導電性材料からなる電極1、導電性材料からなる電極2、電極1と電極2に接続される電源3、及び、電圧が印加される液体4を備えている。図1に示すように、電極1と電極2は、液体4中に配置される。本実施形態では、電極1の形状は針状であり、絶縁体5がこの針上の電極1を被覆しているが、電極1の端部では、絶縁体5による被覆が施されていない。また、電極2の形状は、円盤状のものが用いられる。
【0026】
また、液体4中に配置される電極2と液体4との接液面積は、電極1と液体4との接触面積に比べ大きくなるように構成される。図1に示すように、電極1を被覆している絶縁体5は、電極1の端部より突出するように構成される。この絶縁体5の突出により、絶縁体5の端部は液体4に対して開いた円筒形状となり、円筒形状内部が液体4で満たされた小さな空間(電極1の端部及び絶縁体5の突出部とが液体4と接触する接触面により形成される空間)が形成され、以下に詳述する気泡保持部6を形成する。
【0027】
また、電極1と電極2との間で放電が起きないようにするために、電極1から気泡保持部6の最も遠い部分までの距離よりも十分に離れた場所に、電極2が設置される。このように設置することで電極1と液体4との間で放電を生じさせることが可能となる。そして、電極1と電極2は、電源3の互いに異なる極性端子に接続される。
【0028】
次に、本実施形態の噴流生成装置の動作について主に図2(a)〜(c)を用いて以下に説明する。図2(a)〜(c)は、本実施形態の噴流生成装置の動作について説明するための図である。まず、図1に示す電源3に電圧を加えると、上述したように電極1と液体4との接液面積が電極2と液体4との接液面積に比べて小さいので、電極1と電極2との間で不平等電界が形成される。よって、電界密度は、電極1の接液部のほうが電極2の接液部よりも大きくなる。従って、単位面積当りの電界エネルギーは、電極1の接液面のほうが大きくなる。図2(a)に示す電極1の接液面では電流によるジュール熱により液体4の気化、又は、電気分解により気泡(気体)7が生じる。例えば、液体4が水であれば電気分解により水素及び酸素が生成する。
【0029】
このように生成された気泡7は、図2(b)に示すように、気泡保持部6に留まり、すぐには電極1の端部から離れずにいる。そして、やがて気泡7が成長し、電極1と液体4との接液面積がより小さくなっていき零となると、電極1と液体4は、気泡7を介したコンデンサーを形成することとなる。そして、図2(c)に示すように、電極1と液体4との間で絶縁破壊を起こし放電が生じると、この放電による瞬間的な電流により液体4が爆発的に気化する。
【0030】
また、電気分解した気泡7は、放電をきっかけに瞬間的に燃焼する。気化により生じる体積膨張は、気泡保持部6から液体4に向かい圧力を逃がす。これにより気泡保持部6近傍の液体4は、図2(c)に示すように、電極1の端部と反対方向に噴出する。続いて、爆発が終わると、気泡保持部6は低圧状態となっているために液体4が吸い寄せられ、液体4で再び満たされる。そして、電極1と液体4とは再び接触し、ジュール熱による気化又は電気分解が生じる。以上説明したような工程を繰り返して、液体4が噴出する。
【0031】
ここで、例えば、液体4には水を、電極1は被覆された直径0.8mm程度の単芯電線を、電源3には電力容量30W、出力電圧20kVの電源を用いると、電圧の制御を行うことなしに噴流を連続的に発生させることができる。よって、ローレンツ力で動作させる噴流生成装置では電界と磁界が必要であるが、本実施形態によれば、電界のみによって液体に流れを生じさせることができる。また、電極1と気泡保持部6が小さくとも爆発による大きな噴流を生じさせることができる。また、印加電圧が一定であっても、気泡7の生成、爆発、液体の充填の工程が持続的に発生するため、気泡7の成長に合わせた電源電圧の制御が不要である点でメリットを有する。
【0032】
(実施形態2)
本実施形態は、第1の実施形態の応用例である。本実施形態の噴流生成装置の特徴的な点についてのみ、図3を用いて以下に説明する。図3は、本実施形態の噴流生成装置について説明するための概略断面図である。本実施形態では、第1の実施形態における液体4に関して、比重の異なる液体8と液体9を用いる。液体8の方が比重が大きい。液体8と液体9は層を成し、液体8と液体9との間には界面が形成される。液体8中には、第1の実施形態で示したような噴流生成装置の電極1及び電極2が、界面近くに設置される。
【0033】
次に、本実施形態の噴流生成装置の動作について説明する。図3に示すように、噴流生成装置の電極1及び電極2を設置すると、噴流生成装置の電極1が液体8に流れを生じさせ、その流れは界面近傍の液体8にも流れを生じさせる。この界面近傍における液体8の流れに応じて、界面近傍の液体9にも流れが生じる。つまり、液体8を駆動用液体として間接的に被駆動用液体9に流れを生じさせることが可能となる。
【0034】
本実施形態によれば、液体9が電気を流すことで変質してしまうようなものである場合に、液体9と異なる液体8に間接的に流れを生じさせることで、液体9の流れを作ることができるという効果を得ることができる。本実施形態によれば、強い電界をかけることができない被駆動用液体とは別に準備された駆動用液体に強い電界をかけることで、被駆動用液体の液送を行うことが可能となる。
【0035】
(実施形態3)
本実施形態は、第2の実施形態の変形例である。本実施形態の特徴的な点についてのみ、図4を用いて以下に説明する。図4は、本実施形態の噴流生成装置について説明するための概略断面図である。本実施形態の噴流生成装置は、第2の実施形態で用いられる液体8よりもより比重の大きな液体10に流れを生じさせるものである。本実施形態の噴流生成装置の動作は第2の実施形態の場合と同様であり、液体8に流れを生じさせ、間接的に液体10に流れを発生させる。
【0036】
(実施形態4)
本実施形態は、第2の実施形態の変形例である。本実施形態の特徴的な点についてのみ、図5を用いて以下に説明する。図5は、本実施形態の噴流生成装置について説明するための概略断面図である。図5に示すように、駆動源となる液体8の流れを効率よく液体9に伝えるために、壁11を設けて液体8の流路を狭めても良い。こうすることにより、噴流により界面が波立ち、その波と壁に挟まれた液体9は壁伝いに波と一緒に運ばれる。本実施形態によれば、流路を細めることでより駆動用液体と被駆動用液体の流れの伝わりを上げることができ、液送の効率を上げることが可能となる。
【0037】
(実施形態5)
本実施形態は、第1の実施形態の応用例である。本実施形態の特徴的な点についてのみ、図6を用いて以下に説明する。本実施形態の噴流生成装置は、発生させた噴流から回転運動を取り出すことを可能とした点に特徴を有するものである。図6は、本実施形態の噴流生成装置の概略断面図である。図6に示すように、本実施形態の噴流生成装置には、回転軸と噴流を受ける羽を持つ羽根車14が設けられる。この羽根車14に噴流が当たる位置に、噴流生成装置における絶縁体5により被覆された電極1が1以上(図6では2個)設置される。
【0038】
更に、重力方向と反対の位置に噴流装置の電極1から発生した気泡7を溜める気泡溜め部13が設けられる。また、気泡溜め部13には、液化装置である放熱フィン12が設置される。この放熱フィン12は、例えば、気泡溜め部13の壁面に設けることで構成することができる。また、放熱フィン12の代わりに、能動的な冷却器を設置しても勿論かまわない。また、気泡7が電気分解した気体の場合は、冷却ではなく燃焼させることで液体4に戻す燃焼装置を設置してもよく、冷却装置と燃焼装置を併用してもよい。更に、モータの動作コストを抑制するため、気泡溜め部13の気泡7の量を計測し、気泡7が一定量に達した場合にのみ液化装置を動作させるようにすることもできる。気泡7の量は、例えば、液面高さ計や電気抵抗計を設置して測定することができる。
【0039】
次に、本実施形態の噴流生成装置の動作について説明する。噴流生成装置の電極1から生じた噴流は、羽根車14の羽に当たり、羽根車14を回転させる。よって、羽根車14の回転軸から回転運動を得ることができる。また、噴流生成装置の電極1から生じた気泡7のうち、液化しないまま残った気泡7は、浮力を受け重力方向と反対方向に移動し、図6に示す気泡溜め部13に溜まる。気泡溜め部13の気泡7が液体が気化したものである場合は、液化装置として機能する放熱フィン12により冷やされ液体4に戻される。
【0040】
本実施形態によれば、液体4中に気泡7が散乱すると、気泡7が緩衝材となり爆発力の伝達が弱められ噴流が弱くなる。そこで、噴流の発生場所から離れた場所に気泡溜め部13を設けて、そこに気泡7を集め、これを液化することで、気泡7が液体4中に留まらないようにする。これにより、噴流を持続的に発生させることが可能となる。また、発生した気泡7は浮力により重力方向と反対向きに力を受け移動するため、その移動方向側に気泡溜め部13を配置することで気泡7を効率よく集めることが可能となる。また、気泡溜め部13に液化装置である放熱フィン12を設置しているので、気泡溜め部13は小さい容量のものにすることができる。
【0041】
更に、本実施形態によれば、噴流を回転運動に変えることで、汎用性のあるモータを構成することが可能となる。磁界を必要としないため電磁モータに比べ小型のモータを構成することができる。本実施形態の噴流生成装置を用いて構成したモータは、爆発による噴流を利用するために小型であっても強いトルクを得ることができる。また、印加電圧が一定であっても、気泡7の生成、爆発、液体の充填の工程が持続的に発生するため、気泡7の成長に合わせた電源電圧の制御が不要である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】第1の実施形態における噴流生成装置の概略構成断面図である。
【図2】(a)は、第1の実施形態における噴流生成装置の動作について説明するための図である。(b)は、第1の実施形態における噴流生成装置の動作について説明するための図である。(c)は、第1の実施形態における噴流生成装置の動作について説明するための図である。
【図3】第2の実施形態における噴流生成装置について説明するための概略断面図である。
【図4】第3の実施形態における噴流生成装置について説明するための概略断面図である。
【図5】第4の実施形態における噴流生成装置について説明するための概略断面図で ある。
【図6】第5の実施形態における噴流生成装置の概略断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 電極
2 電極
3 電源
4 液体
5 絶縁体
6 気泡保持部
7 気泡
8 液体
9 液体
10 液体
11 壁
12 放熱フィン
13 気泡溜め部
14 羽根車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の第1の液体中に配置され、所定部分を絶縁体で被覆した導電性材料からなる第1の電極と、前記第1の液体中に配置される導電性材料からなる第2の電極と、該第1、第2の電極がそれぞれ異なる極性に接続される電源とを具備し、前記第1の液体に電圧を印加して気泡を発生させ、前記第1の液体に噴流を生じさせる噴流生成装置であって、
前記第1の電極には、該電極の端部から前記絶縁体を前記第1の液体中に突出させることにより、前記電圧印加により発生した気泡を前記第1の電極端部近傍に保持するための気泡保持部を設け、前記第1、第2の電極は、前記電源からの電圧印加により不平等電界を生じさせるように前記第1の液体中に配置し、前記第1の電極における接液面積は、前記第2の電極よりも小さく、電圧印加により発生する前記気泡により覆われる大きさとなるようにし、前記第1、第2の電極及び前記電源により前記第1の液体に電圧を印加し、前記第1の電極の端部近傍に前記気泡を発生させ、該気泡を前記気泡保持部に保持し、該保持された気泡を爆発的に気化させることで前記第1の液体に噴流を発生させることを特徴とする噴流生成装置。
【請求項2】
前記印加電圧は、前記気泡における電界強度が、該気泡の絶縁破壊電界以上となるような電圧であることを特徴とする請求項1記載の噴流生成装置。
【請求項3】
前記噴流生成装置の前記第1の液体と、該液体と比重の異なる第2の液体とを界面を有する積層状となるようにし、前記界面近傍の前記第1の液体に流れを生じさせるように前記第1の電極及び第2の電極を配置し、前記界面近傍における前記第1の液体の流れによって、前記第2の液体に流れを生じさせることを特徴とする請求項1又は2に記載の噴流生成装置。
【請求項4】
前記第2の液体の流路を形成するために、前記界面近傍の前記第2の液体中に壁を設けたこと特徴とする請求項3に記載の噴流生成装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の噴流生成装置を1以上具備し、該噴流生成装置から発生する液体の噴流により回転する羽根車を前記第1又は第2の液体中に設けたことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項6】
前記第1又は第2の液体から発生した気泡を溜める気泡溜め部を更に設けたことを特徴とする請求項5記載のアクチュエータ。
【請求項7】
前記気泡溜め部は、前記気泡が発生する前記第1の電極を基準として、重力方向の反対方向に配置することを特徴とする請求項6記載のアクチュエータ。
【請求項8】
前記気泡溜め部に溜まった前記気泡を液化させる液化手段を更に設けたことを特徴とする請求項6又は7に記載のアクチュエータ。
【請求項9】
前記気泡溜め部に溜まった気泡量を計測する気泡量計測手段を更に設け、該手段により計測した気泡量が所定値以上となった場合に、前記液化手段により気泡を液化させることを特徴とする請求項8記載のアクチュエータ。
【請求項10】
特定の第1の液体中に配置され、所定部分を絶縁体で被覆した導電性材料からなる第1の電極と、前記第1の液体中に配置される導電性材料からなる第2の電極と、該第1、第2の電極がそれぞれ異なる極性に接続される電源とを具備し、前記第1の液体に電圧を印加して気泡を発生させ、前記第1の液体に噴流を生じさせる噴流生成装置の噴流生成方法であって、
前記第1の電極には、該電極の端部から前記絶縁体を前記第1の液体中に突出させることにより、前記電圧印加により発生した気泡を前記第1の電極端部近傍に保持するための気泡保持部が設けられ、前記第1、第2の電極は、前記電源からの電圧印加により不平等電界を生じさせるように前記第1の液体中に配置され、前記第1の電極における接液面積は、前記第2の電極よりも小さく、電圧印加により発生する前記気泡により覆われる大きさとなるようにされ、
前記第1、第2の電極及び前記電源が、前記第1の液体に電圧を印加して、前記第1の電極の端部近傍に前記気泡を発生させる工程と、
前記気泡保持部が、前記発生した気泡を保持し、該保持された気泡を爆発的に気化させることで前記第1の液体に噴流を発生させる工程と、を有することを特徴とする噴流生成方法。
【請求項11】
前記印加電圧は、前記気泡における電界強度が、該気泡の絶縁破壊電界以上となるような電圧であることを特徴とする請求項10記載の噴流生成方法。
【請求項12】
前記噴流生成装置の前記第1の液体と、該液体と比重の異なる第2の液体とを界面を有する積層状となるようにし、前記界面近傍の前記第1の液体に流れを生じさせるように前記第1の電極及び第2の電極を配置し、前記界面近傍における前記第1の液体の流れによって、前記第2の液体に流れを生じさせる工程を有することを特徴とする請求項10又は11に記載の噴流生成方法。
【請求項13】
前記界面近傍の前記第2の液体中に壁が設けられ、前記第2の液体の流路が形成されていること特徴とする請求項12に記載の噴流生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−292073(P2006−292073A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−113765(P2005−113765)
【出願日】平成17年4月11日(2005.4.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】