説明

噴霧器付きバーナー

液体燃料と酸素含有ガスを別々に供給するためのチャネル(2、3)を備えたバーナー(1)。バーナー(1)は、酸素含有ガスの供給チャネル(3)に整列した第1流路(37)と、燃料供給チャネル(2)に整列した第2流路(34)とを含む双流体噴霧器ヘッド(4)を備える。第1流路が穴(38)の同軸リングに通じる前の地点にて、第2流路(34)が第1流路(37)に通じる。冷却ジャケット(11)が供給チャネル壁(9、10)を包む。冷却ジャケット(11)から一定の距離にて穴(38)が噴霧器ヘッド(4)を貫通する。噴霧器ヘッド(4)は例えば銅合金などの第1金属から作ることができ、冷却ジャケット(11)は第1金属より熱伝導率が低い第2金属、例えば鋼から作ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体燃料と酸素含有ガスを供給側から放出端部に別々に供給するための少なくとも2つの同軸チャネルを備えたバーナーに関するものであり、このバーナーは放出端部に突っ込まれた双流体噴霧器ヘッドを備える。
【背景技術】
【0002】
US2,414,459は、可燃性混合物を形成すべく供給される気流により透過性の薄肉の噴霧に燃料を噴霧化する流体燃料バーナーを開示する。この噴霧は中空円錐台の形状をなし、包囲する燃焼空気に対して露出する表面を最大にする。このバーナーは冷却されないので、高温負荷の下では使用できない。
【0003】
WO−A−01/55640は、液体燃料と酸素含有ガスを別々に供給するための少なくとも2つのチャネルを備えたバーナーを記載する。このバーナーは、バーナーの放出端部に固定された双流体噴霧器ヘッドを有する。
【0004】
US−A−3266552は、炉の内部で生じた熱からバーナーを保護するための冷却ジャケットを有するバーナーを記載する。
【0005】
固体の炭素質物質から気体状燃料を得るために、搬送ガスにより搬送される細粒固体燃料(例えば窒素ガス及び/又は二酸化炭素などの搬送ガスにより搬送される微粉炭)を、酸素含有ガスを用いてガス化反応器において部分燃焼させる。不完全な燃焼ゆえに、ガス搬送される炭素質燃料を反応させて更なる燃焼に適した燃料ガスを形成する。このような部分燃焼プロセスは、例えば加圧合成ガス、燃料ガス又は還元ガスを製造するために用いる。
【0006】
反応器内では、火炎が維持され、1300℃を越える温度にて燃料が酸素含有ガス中の酸素と反応して一酸化炭素と水素を形成する。特定の温度では、メタンを生成することもできる。
【0007】
ガス化反応器を始動するためには、温度と圧力を燃料と酸素含有ガスが反応できる十分な高さのレベルまで上昇させなければならない。粉炭などの重質で難点火性の燃料を燃焼させるための一般的な方法は、吹き飛ばされにくく、主燃料流の点火に使用される燃料を用いて相対的に小さな始動火炎を生成することである。温度と圧力の上昇中かつ主燃料流の点火中に始動火炎を点火して安定な火炎を維持するためにいくつかの手段を設ける必要がある。燃焼工程が例えば石炭ガス化プロセスにおいて閉じ込められた閉鎖加圧空間内で実施される場合、通常は点火を2つの段階で実施する。まず、点火用の火炎を生成し、この火炎を気体又は液体の燃料を点火するのに用いて、第2の相対的に大きな火炎を生成し、次にこの大きな火炎を主燃料流の点火に使用する。加圧燃焼室において燃料流を点火する上記プロセスは、通常は点火装置と、気体又は液体燃料に作用する別の始動バーナーとによって実施する。始動バーナーは、主燃料流を点火するためだけでなく、主燃料を導入する前に燃焼室を加圧し加熱するためにも用いる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、超高温及び高圧負荷にて動作する反応器において使用する始動バーナーとして用いることができる噴霧器を備えた液体燃料用バーナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、液体燃料と酸素含有ガスを別々に供給するため、同軸状に離間して配置され供給側から放出端部に延びる少なくとも2つの管状壁により形成される2以上のチャネルを備えたバーナーであって、前記バーナーが、酸素含有ガスの供給チャネルに整列した1以上の第1流路と液体燃料の供給チャネルに整列した第2流路とを含む放出端部に固定された双流体噴霧器ヘッドを備え、第2流路は、前記1以上の第1流路が穴の同軸リングに通じる前の地点にて一定角度にて第1流路に通じ、前記管状供給チャネル壁を包囲するように冷却ジャケットが同軸配置され、前記穴が冷却ジャケットから一定距離にて噴霧器ヘッドを貫通し、噴霧器ヘッドが第1金属から作られ、冷却ジャケットが第1金属より低い熱伝導率の第2金属から作られるバーナーにより達せられる。
【0010】
穴と冷却ジャケットの距離を維持することによりバーナー部品に与える熱損傷の危険性が効果的に抑制されることが分かった。特にバーナーの停止準備中の場合に、停止の前又はその間に窒素などの不活性ガスで酸素を徐々に置き換えるなどの可能な安全手段があるにもかかわらず、酸素含有ガスの流速が下がることで、火炎が穴の中に逆流する危険が生じる。冷却ジャケットについて最高の熱伝導率を用いる傾向にあるが、本発明によるバーナーの2金属構造により、一方における高い機械的強度と他方における優れた放熱との間で最適なバランスが実現できることが分かった。
【0011】
適切には、冷却ジャケットは鋼から作ることができ、噴霧器ヘッドは、より高い熱伝導率の金属、例えば250W/m*K以上(例えば300W/m*K以上)の熱伝導率の金属、例えば銅又は好ましくは銅合金から作られる。
【0012】
特に冷却ジャケットから半径方向に所定の距離にある部品を更に効果的に冷却するために、バーナーは中央冷媒供給チャネルと環状冷媒返送チャネルとを備えることができ、この環状冷媒返送チャネルは、噴霧器ヘッドの外面の下で冷媒流路により作動連結された冷媒供給チャネルと共に同軸配置される。
【0013】
随意に、噴霧器ヘッドは、冷却ジャケットの対応するネジと機能的に協同するネジを備えたネジ付きスカートを有してもよい。このスカートは、冷却ジャケットの外面の対応する外側ネジに一致する内側ネジを備えることができる。別法として、スカートは、該スカートを包囲する冷却ジャケットの表面上の対応する内側ネジに一致する外側ネジを備えることができる。
【0014】
バーナーの種々の部品の熱膨張の差に対応するため、スリーブ継手により噴霧器ヘッドを1以上の管状チャネル壁に接続し、噴霧器ヘッドに対して当該部品を軸方向にスライドさせることができる。
【0015】
当該穴が噴霧燃料の流れを音速以上に加速するような大きさを有するならば、大気圧から20バールの圧力までの全圧力範囲にわたって火炎と穴の距離を維持することができる。この流れの加速は、流路を徐々に狭めることによって実現できる。
【0016】
穴は円形の開口とすることができ、あるいはスリット形状、楕円形、多角形又は他の適当な形状としてもよい。穴は任意の適当な深さを有することができる。一般に、穴が深ければ深いほど、例えばバーナーの停止準備中に火炎が逆流して損傷を与える危険性が小さくなる。
【0017】
酸素含有ガスの供給チャネルと穴は、ガス流の流速を調整して燃料の分割と噴霧化を最適化するような大きさにできる。
【0018】
以下、単なる例として添付図面により本発明をさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】本発明によるバーナーの縦断面斜視図である。
【図1B】図1Aのバーナーの側面図である。
【図1C】図1Bの線A−Aでのバーナーの断面図である。
【図1D】図1Cの線B−Bでのバーナーの断面図である。
【図1E】図1Cの線D−Dでのバーナーの断面図である。
【図1F】図1Cの線G−Gでのバーナーの断面図である。
【図2】本発明によるバーナーの別の態様についての縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1A−Fは、上流の供給側Aから下流の放出端部Zに液体燃料と酸素含有ガスを供給するためのチャネル2及び3を備えるバーナー1の端部領域を示す。噴霧器ヘッド4がバーナー1の放出端部に突っ込められる。噴霧器ヘッド4から離れたところでは、バーナー1は縦軸に沿って配置された以下の同軸離間配置の部品から作られる:
− 内部冷却システムの冷却水を供給するための内部冷却水チャネル6を形成する内管5、
− 冷却水の排出用の環状冷却水返送チャネル8を形成すると共に、内管5を同軸包囲する第2管7、
− ディーゼル又はオイルなどの液体燃料の供給用の環状供給チャネル2を形成すると共に、第2管7を同軸包囲する第3管9、
− 酸素含有ガスを供給する環状供給チャネル3を形成し、冷却ジャケット11の内壁を形成すると共に、第3管9を同軸包囲する第4管10、
− 冷却ジャケット11を、放出端部Zの方向に延びる冷却水供給流路と、その反対方向に延びる冷却水返送路14とに分離する円筒分離壁12、
− 冷却ジャケット11の外壁を形成する外壁15。
【0021】
図1Aにおいて、矢印W’は内部冷却システムにおける冷却水の流路を示し、矢印W”は冷却ジャケット11における冷却水の流路を示す。矢印Oは酸素含有ガスの流路を示し、矢印Fは液体燃料の流路を示す。
【0022】
部品を同軸配置にて固定するために、スペーサー(図示せず)を使用できる。
【0023】
放出端部Zでは、縦軸に垂直に配置された周端壁16により冷却ジャケット11が閉鎖される。端壁16から一定距離のところで、セパレータ12が終わり、冷却水が冷却水ジャケット11の供給側13から放出側14に通ることができる。この地点で、冷却水は最大の熱負荷にてこれらの部品を通過する。
【0024】
噴霧器ヘッド4は、下流の前部17と、バーナー1の縦軸に沿って同軸配置された円筒部18とを備える。その上流側では、円筒部18が、第2管7に緊密に嵌め込まれる上流同軸突出部19を有し、第2管7は、密封リング21により密封されるスリーブ継手を形成するように拡大した内径を有し、熱膨張の差に対応すべく軸方向に移動できる。前部17は円形の前壁24を備える。円筒部18は内穴29を備える。内部冷却システムの内管5は内穴29を通って前部17の内部空間28に通じる。内管5の外面と内穴29の内面との間の空間は、冷媒返送流路を形成する。径方向に延びる返送チャネル30が、前部17の開放された内部空間28と、円筒部18の内穴29を連結する。返送チャネル30は各々が等間隔に配置される。
【0025】
内部冷却水システムにおいて、冷却水は内管5から冷却水チャネル6を通って前部17の開放内部空間28に入り、そこで返送チャネル30を通って半径方向に流れ、中央穴29の内面と内管5の外面により形成される冷却水返送路に入る。
【0026】
燃料供給チャネル2を形成する第3円筒9は、噴霧器ヘッド4の円筒部18の上流端部32と緊密な嵌合を形成する下流端部31を有する。この嵌合は2つの密封リング33により密封されてスリーブ継手を形成し、継手部分の熱膨張の差に対応すべく軸方向に移動できる。円筒部18は、等距離にて配置された縦穴34からなるリングを備え、縦穴34の各々は、バーナーの縦軸に平行に燃料供給チャネル2から噴霧器ポート35に延びる。
【0027】
噴霧器ヘッド4は、噴霧器ヘッド4の円筒部18を同軸包囲する円筒スカート36を備え、環状チャネル37を酸素含有ガスの供給チャネル3と整列させる。環状チャネル37は、噴霧器ポート35を通して縦穴34に連通する。噴霧器ヘッド4の円形前壁24は、環状チャネル37に連通した穴38を備える。
【0028】
円筒スカート36は、冷却ジャケット内壁10の内面上の内側ネジと協同する外側ネジ(図示せず)を備える。
【0029】
圧力をかけて燃料液を供給し、噴霧器ヘッド4の円筒部18における縦穴34に入れ、噴霧器ポート35を通して環状チャネル37に入れ、ここで高速で流れている酸素含有ガスが燃料を噴霧化する。噴霧燃料を穴38を通して音速にて放出し、酸素含有ガスにより覆われた微細燃料液滴からなる円錐噴霧を形成する。噴霧燃料は音速で流れるので、反応器内で大気圧から20バールの圧力までの高圧条件下でさえ噴霧器ヘッドから一定距離のところで火炎が始まる。火炎と噴霧器ヘッド4とのこの距離により、バーナー部品への加熱が抑えられ、火炎が穴38に逆流する危険性が低められる。
【0030】
冷却ジャケット壁10、15、16はステンレス鋼から作られる。これは、冷却の他にも、機械的な負荷、特に圧力負荷からチャネル部品と噴霧器ヘッド4を保護する働きをする。噴霧器ヘッド4は銅合金から作られる。
【0031】
図2は図1A−Dのバーナーに類似の構造のバーナーを断面にて示す。構造上同様の細部は、図1と同じ参照番号にて示す。図2のバーナーは、噴霧器ヘッド4と冷却ジャケット11の内壁10との間でネジ連結を行うためのネジ付き内側スカートを備えない。代りに、噴霧器ヘッドは、冷却ジャケット外壁15の外面に設けられた外側ネジと協同する内側ネジを有するスカート36”を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】US2,414,459
【特許文献2】WO−A−01/55640
【特許文献3】US−A−3266552
【符号の説明】
【0033】
1…バーナー
2…燃料供給チャネル
3…酸素含有ガス供給チャネル
4…噴霧器ヘッド
5…内管
6…内部冷却水チャネル
7…第2管
9…第3管
10…第4管
11…冷却ジャケット
17…前部
18…円筒部
34…第2流路
37…第1流路
38…穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体燃料と酸素含有ガスを別々に供給するため、同軸状に離間して配置され供給側から放出端部に延びる少なくとも2つの管状壁(9、10)により形成される2以上のチャネル(2、3)を備えたバーナー(1)であって、前記バーナー(1)が、酸素含有ガスの供給チャネル(3)に整列した1以上の第1流路(37)と液体燃料の供給チャネル(2)に整列した第2流路(34)とを含む放出端部に固定された双流体噴霧器ヘッド(4)を備え、第2流路(34)は、前記1以上の第1流路(37)が穴(38)の同軸リングに通じる前の地点にて一定角度にて第1流路(37)に通じ、前記管状供給チャネル壁(9、10)を包囲するように冷却ジャケット(11)が同軸配置され、前記穴(38)が冷却ジャケット(11)から一定距離にて噴霧器ヘッド(4)を貫通し、噴霧器ヘッド(4)が第1金属から作られ、冷却ジャケット(11)が第1金属より低い熱伝導率の第2金属から作られるバーナー(1)。
【請求項2】
冷却ジャケット(11)が鋼から作られ、噴霧器ヘッド(4)が銅合金から作られる請求項1に記載のバーナー。
【請求項3】
噴霧器ヘッド(4)が、バーナー(1)の縦軸に沿って配置された中央冷媒チャネル(6)を、中央冷媒チャネル(6)に対して同軸配置された環状冷媒チャネル(8)に連結する内部空間(28)を備える請求項1又は2に記載のバーナー。
【請求項4】
噴霧器ヘッド(4)が、冷却ジャケット(11)の対応するネジと機能的に協同するネジを備えるネジ付きスカート(36、36”)を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載のバーナー。
【請求項5】
噴霧器ヘッド(4)が管状チャネル壁(9)の少なくとも1つとスリーブ継手により連結される請求項4に記載のバーナー。
【請求項6】
前記穴(38)が噴霧燃料の流れを音速以上に加速する大きさを有する請求項1〜5のいずれか一項に記載のバーナー。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図1D】
image rotate

【図1E】
image rotate

【図1F】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2011−504997(P2011−504997A)
【公表日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535372(P2010−535372)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際出願番号】PCT/EP2008/066293
【国際公開番号】WO2009/068593
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(390023685)シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ (411)
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
【Fターム(参考)】