説明

噴霧装置

【課題】安定したミスト量を確保できるとともに簡単な構成でコストを削減できる噴霧装置を提供する。
【解決手段】ハウジング2内に配されて液体を貯溜するタンク3と、タンク4内の液体に下端を浸漬して吸液する吸液部6と、吸液部6の上端に吸い上げられた液体と接触してミストを発生するミスト発生部24と、ハウジング2の上面を覆うとともにミスト発生部24を駆動してミストの通路を開放するオン位置とミスト発生部24を停止してミストの通路を遮蔽するオフ位置との間を回動する蓋部10と、蓋部10に連動してオフ位置で吸液部6とミスト発生部24とを離隔させる離隔部材33とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミスト状の液体を放出する噴霧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ミスト状の液体を放出する従来の噴霧装置は特許文献1に開示される。この噴霧装置はハウジング内に市水等の液体を貯溜するタンクを有している。タンクには吸水材の下端が浸漬される。吸水材はスリーブ内に配され、スリーブにはラックが設けられる。ハウジング内には駆動モータにより駆動されるピニオンが設けられ、ピニオンとラックの噛合によって吸水材が上下移動可能になっている。吸水材の上方には超音波振動子が設けられる。ハウジングの上面にはミスト発生部に対向する放出口が設けられる。
【0003】
噴霧装置を駆動すると駆動モータが駆動され、ピニオンによりスリーブを上昇して吸水材がミスト発生部に当接あるいは近接される。これにより、吸水材の上端に吸い上げられた液体が超音波振動子に接する。超音波振動子の駆動によって該液体がミスト化され、放出口から室内にミストが放出される。
【0004】
超音波振動子を停止した際にはピニオンによりスリーブを降下させて吸水材が超音波振動子から離される。これにより、超音波振動子への液体の供給を停止し、超音波振動子に残留するスケールを低減して安定したミスト量を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−6258号公報(第3頁−第5頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の噴霧装置によると、吸水材の上下移動を行うためにラック、ピニオン及び駆動モータを有するため、構造が複雑になる。このため、噴霧装置のコストが大きくなる問題があった。
【0007】
本発明は、安定したミスト量を確保できるとともに簡単な構成でコストを削減できる噴霧装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、液体を貯溜するタンクと、前記タンク内の液体に下端を浸漬して吸液する吸液部と、前記吸液部の上端に吸い上げられた液体と接触してミストを発生するミスト発生部と、前記ミスト発生部を駆動してミストの通路を開放するオン位置と前記ミスト発生部を停止してミストの通路を遮蔽するオフ位置との間を回動する蓋部と、前記蓋部と連動して前記オフ位置で前記吸液部と前記ミスト発生部とを離隔させる離隔部材とを備えたことを特徴としている。
【0009】
この構成によると、タンクに貯溜された市水等の液体が吸液部によって上端まで吸い上げられる。蓋部をオン位置に配置すると吸液部とミスト発生部とは当接または近接し、吸液部により吸い上げられた液体がミスト発生部に接する。ミスト発生部は超音波振動子等によって液体からミストを発生し、開放された通路を介して室内にミストが放出される。蓋部をオフ位置に配置するとミスト発生部の駆動が停止され、蓋部に連動する離隔部材によってミスト発生部と吸液部とが離隔される。これにより、吸液部により吸い上げられた液体とミスト発生部との接触状態が解除される。
【0010】
また本発明は、上記構成の噴霧装置において、前記吸液部を前記ミスト発生部の方向に付勢する付勢部を有し、前記離隔部材が前記蓋部と一体的に設けられて前記オフ位置で前記吸液部と前記ミスト発生部との間に挿入されるとともに前記オン位置で前記吸液部と前記ミスト発生部との間から退避することを特徴としている。
【0011】
この構成によると、蓋部をオフ位置に配置すると、離隔部材が付勢部の付勢力に抗して吸液部とミスト発生部と間に挿入されて両者を離隔させる。蓋部をオン位置に配置すると離隔部材が退避し、付勢部の付勢力によって吸液部とミスト発生部とが当接または近接する。
【0012】
また本発明は、上記構成の噴霧装置において、前記蓋部の回動時に前記ミスト発生部に摺動して前記ミスト発生部を清掃する清掃部材を前記離隔部材に設けたことを特徴としている。この構成によると、蓋部をオフ位置に回動すると離隔部材に設けた清掃部材がミスト発生部と摺動し、ミスト発生部の清掃が行われる。
【0013】
また本発明は、上記構成の噴霧装置において、前記ミスト発生部が超音波振動子を有し、前記超音波振動子の振幅を通常運転時よりも駆動開始から所定時間だけ大きくしたことを特徴としている。この構成によると、噴霧を行う通常運転時には超音波振動子が所定の振幅で駆動されてミストを発生する。ミスト発生部の駆動開始時には該振幅よりも大きい振幅で超音波振動子が駆動される。これにより、ミスト発生部に残留するスケールを脱落させる。
【0014】
また本発明は、上記構成の噴霧装置において、前記ミスト発生部が超音波振動子を有し、前記蓋部を前記オフ位置に配した後に前記超音波振動子の振幅を大きくして所定時間だけ駆動を継続したことを特徴としている。この構成によると、噴霧を行う通常運転時には超音波振動子が所定の振幅で駆動されてミストを発生する。蓋部をオフ位置に配置されると、超音波振動子の振幅を大きくして所定時間だけ駆動が継続される。これにより、ミスト発生部に残留する液体を飛散させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、蓋部がミスト発生部を駆動してミストの通路を開放するオン位置とミスト発生部を停止してミストの通路を遮蔽するオフ位置との間を回動し、蓋部に連動する離隔部材によりオフ位置で吸液部とミスト発生部とを離隔したので、簡単な構成で吸液部をミスト発生部から離隔させることができる。これにより、ミスト発生部に付着するスケールを低減して安定したミスト量を確保できるとともに、噴霧装置のコストを削減することができる。また、オフ位置でミストの通路を遮蔽するため、ミスト発生部への塵埃の付着を防止してより安定したミスト量を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態の加湿器のオン状態を示す正面図
【図2】本発明の一実施形態の加湿器のオン状態を示す上面図
【図3】本発明の一実施形態の加湿器のオン状態を示す正面断面図
【図4】本発明の一実施形態の加湿器のオン状態のミスト発生部を示す正面断面図
【図5】本発明の一実施形態の加湿器のオフ状態を示す正面図
【図6】本発明の一実施形態の加湿器のオフ状態を示す上面図
【図7】本発明の一実施形態の加湿器のオン状態の下面板を示す上面図
【図8】本発明の一実施形態の加湿器のオン状態の下面板を示す斜視図
【図9】本発明の一実施形態の加湿器のオフ状態の下面板を示す上面図
【図10】本発明の一実施形態の加湿器のオフ状態の下面板を示す斜視図
【図11】本発明の一実施形態の加湿器のオフ状態に移行時のミスト発生部を示す正面断面図
【図12】本発明の一実施形態の加湿器のオフ状態のミスト発生部を示す正面断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1、図2は噴霧装置の一実施形態である加湿器の正面図及び上面図を示している。加湿器1は筒状のハウジング2を有し、ハウジング2の上面は蓋部10に覆われて下面が下カバー3により塞がれる。蓋部10はハウジング2に対して回動自在に取り付けられ、上面にツマミ12が設けられる。蓋部10の回動によって加湿器1の電源がオンオフされるようになっており、蓋部10の上面にはオン状態及びオフ状態をそれぞれ表わす印字10b、10cが設けられている。
【0018】
ハウジング2の正面にはスイッチ15及び複数のLED16が設けられる。スイッチ15の操作によって加湿能力の強弱が切り替えられ、LED16により駆動状態を視認することができる。蓋部10は図1、図2に示すようにLED16が配される正面に印字10bを配置したオン位置と、正面に印字10cを配置したオフ位置(図5、図6参照)との間を回動して電源のオンオフを行う。
【0019】
図3は加湿器1の内部を示す正面断面図である。ハウジング2の下部には市水等の液体を貯溜するタンク4が配される。タンク4の周面には環状の突起部4aが設けられ、突起部4aの上方には螺旋状の突起部4bが設けられる。下カバー3の内面には可撓性部材(不図示)が配され、可撓性部材に形成される溝部(不図示)に下方の突起部4aが嵌合してタンク4と下カバー3とが一体化される。
【0020】
突起部4bはハウジング2の内面に設けた螺旋状の溝部(不図示)に螺合し、タンク4と下カバー3とが一体にハウジング2に対して着脱可能になっている。これにより、タンク4をハウジング2から脱着してタンク4内に加湿用の液体を入れることができる。
【0021】
ハウジング2の上部には円板状の固定板20が設けられる。固定板20には鉛直に延びるフレーム5が取り付けられる。フレーム5は上下に延びる中空のスリーブ9を有し、スリーブ9内には吸水材等の吸液性を有する棒状の吸液部6が配される。これにより、吸液部6の下端がタンク4内の液体に浸漬される。
【0022】
スリーブ6の下端には係合爪(不図示)で係止されるキャップ7が設けられる。キャップ7内にはコイルバネ8(付勢部)が配され、コイルバネ8の上端には吸液部6の下端に当接する当接部材8aが設けられる。これにより、吸液部6が上方に付勢された状態で支持される。
【0023】
固定板20にはミスト発生部24が取り付けられたパッキン21が設けられる。図4はミスト発生部24近傍の正面断面図を示している。パッキン21には上面に開口部21aが設けられ、開口部21aの下方にミスト発生部24が取り付けられる。ミスト発生部24は振動板23及び超音波振動子22を有している。振動板23は開口部21aに対向してオン位置で吸液部6の上端に当接し、振動板23の上面に超音波振動子22が取り付けられている。
【0024】
超音波振動子22の駆動によって振動板23が振動し、吸液部6の上端に吸い上げられた液体がミスト化される。振動板23には吸液部6の上端に吸い上げられた液体が接触すればよいため、吸液部6の上端を振動板23に近接させてもよい。
【0025】
図3において、蓋部10はハウジング2の上面に回動自在に設けられ、ツマミ12を有する上カバー11の下方に中間板13及び下面板14を一体的に備える。上カバー10には蓋部10をオン位置に配した際に開口部21aに対向する放出口10aが設けられる。放出口10aの周縁は開口部21aの周縁のパッキン21に接してミスト発生部24で発生したミストが通る通路を形成する。
【0026】
蓋部10をオン位置に配置することにより、ミストの通路が開放される。また、図5、図6に示すように蓋部10をオフ位置に配置すると、上カバー10によって開口部21aが覆われてミストの通路が遮蔽される。
【0027】
図7、図8はオン位置の下面板14の平面図及び下方から見た斜視図を示している。下面板14の後部には位置決め部30が設けられる。位置決め部30は矩形の開口部内を摺動する摺動子32が設けられ、摺動子32はコイルバネ31により外周方向に付勢されている。摺動子32の先端が固定板20(図3参照)に設けた溝(不図示)に係合し、蓋部10をオン位置とオフ位置で位置決めすることができる。
【0028】
下面板14の前部にはパッキン21が嵌合するアーチ状の長孔14aが設けられる。長孔14aによって蓋部10を回動した際の下面板14とパッキン21との干渉が回避される。オン位置でパッキン21は正面から見て長孔14aの左端に配され、長孔14の右方の縁部には下方に延びて水平に屈曲するL字型の離隔部材33が取り付けられる。また、離隔部材33の上面にはスポンジ等の清掃部材34が取り付けられている。
【0029】
上記構成の加湿器1において、市水等の液体を入れたタンク4をハウジング2に装着すると該液体が吸液部6によって上端まで吸い上げられる。蓋部10をオン位置に配置すると開口部21aと放出口10aが対向してミストの通路が開放され、ミスト発生部24の超音波振動子22が駆動される。
【0030】
また、コイルバネ8の付勢によって吸液部6とミスト発生部24とが接触し、吸液部6により吸い上げられた液体がミスト発生部24に接する。これにより、ミスト発生部24
で発生したミストが放出口10aを介して室内に放出され、室内の加湿が行われる。
【0031】
蓋部10をオフ位置に配置するとミスト発生部24の超音波振動子22が停止される。また、蓋部10の上カバー11によって開口部21aが遮蔽される。
【0032】
図9、図10はオフ位置の下面板14の平面図及び下方から見た斜視図を示している。オフ位置でパッキン21は正面から見て長孔14aの右端に配される。この時、離隔部材33は蓋部10とともに回動してコイルバネ8の付勢力に抗して吸液部6と振動板23との間に挿入される。これにより、吸液部6とミスト発生部24とが離隔される。また、蓋部10をオン位置に配置すると隔離部材33が吸液部6とミスト発生部24との間から退避する。
【0033】
図11、図12は蓋部10をオン位置からオフ位置に回動した際のミスト発生部24近傍を示す正面断面図である。蓋部10の回動により離隔部材33が吸液部6の上面と摺動し、清掃部材34が振動板23の下面と摺動する。これにより、振動板23に残留する液体や凝結したスケールの清掃を行うことができる。吸液部6の上端及び離隔部材33の下面にはそれぞれ傾斜面6a、33aが設けられる。これにより、円滑に隔離部材33を吸液部6と振動板23との間に挿入することができる。
【0034】
尚、加湿器1の駆動開始時には超音波振動子22の振幅を通常運転時よりも所定時間だけ大きくするとよい。これにより、ミスト発生部24に残留するスケールを剥離させて脱落させることができる。
【0035】
また、蓋部10をオフ位置に配した後に超音波振動子22の振幅を大きくして所定時間だけ駆動を継続してもよい。これにより、ミスト発生部24に残留する液体を飛散させることができる。
【0036】
本実施形態によると、蓋部10がミスト発生部24を駆動してミストの通路を開放するオン位置とミスト発生部24を停止してミストの通路を遮蔽するオフ位置との間を回動し、蓋部10に連動する離隔部材33によりオフ位置で吸液部6とミスト発生部24とを離隔したので、簡単な構成で吸液部6をミスト発生部24から離隔させることができる。これにより、オフ位置で振動板23から吸液部6が離れて振動板23に液体が供給されないので、液体の凝結によってミスト発生部24に付着するスケールを低減できる。従って、簡単な構成で安定したミスト量を確保して加湿器1のコストを削減することができる。また、オフ位置でミストの通路を遮蔽するため、ミスト発生部24への塵埃の付着を防止してより安定したミスト量を確保することができる。
【0037】
また、吸液部6をミスト発生部24の方向に付勢するコイルバネ8(付勢部)を設け、蓋部10と一体の離隔部材33がオフ位置で吸液部6とミスト発生部24との間に挿入されてオン位置で吸液部6とミスト発生部24との間から退避するので、蓋部10に連動して吸液部6とミスト発生部24との接離させる隔離部材33を容易に実現することができる。
【0038】
また、蓋部10の回動時にミスト発生部24に摺動してミスト発生部24を清掃する清掃部材34を離隔部材33に設けたので、ミスト発生部24に残留した液体を除去してより安定したミスト量を確保することができる。
【0039】
本実施形態において、加湿器1について説明しているが、ミストを放出する他の噴霧装置でもよい。例えば、電界生成物を含む電解液を噴霧するものや、芳香剤を噴霧するものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によると、ミスト状の液体を放出する噴霧装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 加湿器
2 ハウジング
3 下カバー
4 タンク
5 フレーム
6 吸液部
7 キャップ
8 コイルバネ
8a 当接部材
9 スリーブ
10 蓋部
10a 放出口
11 上カバー
12 ツマミ
13 中間板
14 下面板
15 スイッチ
20 固定板
21 パッキン
21a 開口部
22 超音波振動子
23 振動板
24 ミスト発生部
30 位置決め部
31 ボール
31 コイルバネ
33 離隔部材
34 清掃部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯溜するタンクと、前記タンク内の液体に下端を浸漬して吸液する吸液部と、前記吸液部の上端に吸い上げられた液体と接触してミストを発生するミスト発生部と、前記ミスト発生部を駆動してミストの通路を開放するオン位置と前記ミスト発生部を停止してミストの通路を遮蔽するオフ位置との間を回動する蓋部と、前記蓋部と連動して前記オフ位置で前記吸液部と前記ミスト発生部とを離隔させる離隔部材とを備えたことを特徴とする噴霧装置。
【請求項2】
前記吸液部を前記ミスト発生部の方向に付勢する付勢部を有し、前記離隔部材が前記蓋部と一体的に設けられて前記オフ位置で前記吸液部と前記ミスト発生部との間に挿入されるとともに前記オン位置で前記吸液部と前記ミスト発生部との間から退避することを特徴とする請求項1に記載の噴霧装置。
【請求項3】
前記蓋部の回動時に前記ミスト発生部に摺動して前記ミスト発生部を清掃する清掃部材を前記離隔部材に設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の噴霧装置。
【請求項4】
前記ミスト発生部が超音波振動子を有し、前記超音波振動子の振幅を通常運転時よりも駆動開始から所定時間だけ大きくしたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の噴霧装置。
【請求項5】
前記ミスト発生部が超音波振動子を有し、前記蓋部を前記オフ位置に配した後に前記超音波振動子の振幅を大きくして所定時間だけ駆動を継続したことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の噴霧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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