説明

嚥下機能データ測定装置及び嚥下機能データ測定システム及び嚥下機能データ測定方法

【課題】本発明は嚥下の状態を簡易的に測定し、測定したデータの解析結果を提示することを課題とする。
【解決手段】嚥下機能データ測定装置10は、嚥下機能データ測定ユニット20と、制御ユニット50とを有する。嚥下機能データ測定ユニット20は、頸部装着型インターフェースであり、装着用フレーム22に音測定部30と、提示部40とを有する。制御ユニット50は、利得増幅部60と、音データ解析部70と、判定部80と、メモリ90と、LED制御部100と、無線通信部110とを有する。音データ解析部70は、音測定部30により測定された喉頭動作音の測定データ(音響信号)から喉頭蓋閉音、食塊通過音、喉頭蓋開音の各音データを解析する。LED制御部100は、音データ解析部70により解析された各音データに基づく判定結果を提示部40に提示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は嚥下機能測定が低下した患者の診察を補助する嚥下機能データ測定装置及び嚥下機能データ測定システム及び嚥下機能データ測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、高齢者の場合、加齢に伴って食物の飲み込み能力(以下「嚥下機能」という)の低下がみられ、食事の妨げとなっている。また、高齢者以外でも、脳卒中などの障害によって嚥下障害の症状が顕われることがある。このような、嚥下障害の患者においては、誤嚥を引き起こす可能性が高いため、窒息の危険性が高まると共に、口腔内の雑菌が肺に入ることで起こる誤嚥性肺炎の原因となる。
【0003】
また、嚥下障害を防止するためには、嚥下機能を回復させる治療やリハビリテーションを行うことが重要であるが、その前に各患者の嚥下機能がどのようになっているのかを確認する必要がある。
【0004】
従来の嚥下機能の判定方法としては、(A)患者の頸部を触診して喉の動きを判断するRSST(Repetitive Saliva Swallowing Test)法、(B)X線を用いて経時的に口腔内の変化を観察して評価を行うVF(Video Fluorography)法、(C)聴診器を用いて頸部の音響信号に基づいて診断する聴診法がある。さらに、嚥下動作に応じた電気信号を検出する方法として、例えば、(D)患者の頸部の動きに応じた検出信号を加速度センサにより検出し、当該検出信号の波形を時間周波数解析することで喉頭蓋の動きを判定する生体検査装置(例えば、特許文献1参照)を用いた判定法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−213592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記RSST法では、医師が直接的に診断することになり、随意的嚥下運動により嚥下反射の惹起性を確認することが難しく、嚥下運動の詳細な診断には向いていない。
【0007】
また、上記VF法では、造影剤を患者が飲み込む様子を撮影するため、造影剤による誤嚥が起きるおそれがあり、且つ装置が大規模であるため、嚥下機能の診断を手軽に行えない。
【0008】
また、上記聴診法では、嚥下動作音により嚥下機能を診断するため、診断精度が高いものの診断技術を取得するのに熟練を要する。
【0009】
また、患者の頸部の動きを加速度センサにより検出する判定法では、咽喉の動きが分かるものの、検出された信号波形から誤嚥か否かを正確に判定することが難しい。
【0010】
上記4つの方法は、何れも医師が病院で患者を診断する場合に有効な方法であり、例えば、看護士や在宅患者を介護する介護ヘルパや家族などの医師以外の人が手軽に患者の嚥下機能を確認することができないので、嚥下機能が低下した患者の嚥下状態を常時観察することが難しく、利便性が低いという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は上記事情に鑑み、嚥下機能を簡易的に確認できるように構成することで上記課題を解決した嚥下機能データ測定装置及び嚥下機能データ測定システム及び嚥下機能データ測定方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は以下のような手段を有する。
(1)本発明は、測定対象者の首に装着される装着用フレームと、
該装着用フレームの内側に設けられ、前記測定対象者の嚥下動作に伴う喉頭動作音を測定する音測定部と、
前記音測定部により測定された前記喉頭動作音に基づく測定結果を提示する提示部と、
該音測定部により測定された前記喉頭動作音の測定データから喉頭蓋閉音、食塊通過音、喉頭蓋開音の各音データを解析する音データ解析手段と、
該音データ解析手段により解析された前記喉頭蓋閉音、前記食塊通過音、前記喉頭蓋開音により食塊が食道を通過したか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果を前記提示部に提示させる制御手段と、
を備えたことを特徴とする。
(2)本発明は、前記音測定部により測定された測定データ及び前記音データ解析手段により解析された各音データ及び前記判定手段の判定結果を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された各データを外部に出力する出力部と、
をさらに備えたことを特徴とする。
(3)本発明の前記音データ解析手段は、前記測定データの周波数特性に基づいて前記測定データに含まれる前記喉頭蓋閉音、前記食塊通過音、前記喉頭蓋開音、及び嚥下異常音を抽出することを特徴とする。
(4)本発明の前記音データ解析手段は、前記測定データに含まれる有意音データと無音データとに分類し、前記無音データが予め設定された所定時間経過した場合に、前記有意音データから前記喉頭蓋閉音、前記食塊通過音、前記喉頭蓋開音、及び嚥下異常音を解析することを特徴とする。
(5)本発明の前記音データ解析手段は、前記有意音データから嚥下動作音を抽出し、嚥下時間を演算する嚥下機能演算手段を有することを特徴とする。
(6)本発明の前記音データ解析手段は、前記有意音データの波形データを周波数解析データに変換し、前記周波数解析データの特定周波数におけるスペクトル強度に基づいて、嚥下動作音、咳き、音声の何れかを判別する音判別手段を有することを特徴とする。
(7)本発明の前記装着用フレームは、前記音測定部を前記測定対象者の喉頭近傍の首外周に密着させるように形成されていることを特徴とする。
(8)本発明の前記提示部は、前記装着用フレームの外側に配された発光部材であり、
前記制御手段は、前記判定手段の判定結果に基づいて前記発光部材を任意の発光色に発光させることを特徴とする。
(9)本発明は、(1)乃至(8)の何れかに記載された複数の嚥下機能データ測定装置と、前記複数の嚥下機能データ測定装置の出力部より出力された各音データ及び判定結果を時系列的に保存する外部制御装置とを有する嚥下機能データ測定システムであって、
前記複数の嚥下機能データ測定装置と前記外部制御装置とによる通信ネットワークを形成し、
前記外部制御装置は、
前記複数の嚥下機能測定装置により測定された各音データ及び判定結果を時系列的に格納するデータベースと、
前記複数の嚥下機能測定装置から送信された判定結果を表示する表示部と、
を有することを特徴とする。
(10)本発明は、測定対象者の嚥下動作に伴う喉頭動作音を測定する音測定部と、
該音測定部により測定された前記喉頭動作音の測定データを解析する音データ解析手段と、
を有する嚥下機能データ測定装置を用いた嚥下機能データ測定方法であって、
前記音測定部により測定された前記喉頭動作音の測定データから喉頭蓋閉音、食塊通過音、喉頭蓋開音、嚥下異常音の各音データを解析し、当該解析された前記喉頭蓋閉音、前記食塊通過音、前記喉頭蓋開音、前記嚥下異常音により食塊が食道を通過したか否かを判定することを特徴とする。
(11)本発明は、前記測定データに含まれる前記喉頭蓋閉音、前記食塊通過音、前記喉頭蓋開音を抽出し、当該測定データの嚥下動作全体の嚥下時間をTとし、前記食道通過音の中間時間までの時間をTとした場合、評価関数T/Tに基づいて嚥下障害の有無を判定することを特徴とする。
(12)本発明は、前記測定データに含まれる有意音データと無音データとに分類し、前記無音データが予め設定された所定時間経過した場合に、前記有意音データから前記喉頭蓋閉音、前記食塊通過音、前記喉頭蓋開音、前記嚥下異常音を解析することを特徴とする。
(13)本発明は、前記有意音データの波形データを周波数解析データに変換し、前記周波数解析データの特定周波数におけるスペクトル強度に基づいて、嚥下機能音、咳き、音声の何れかを判別することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、測定対象者の喉頭動作音を音測定部により測定し、当該喉頭動作音に基づく測定結果を提示部に提示すると共に、音測定部により測定された喉頭動作音の測定データから喉頭蓋閉音、食塊通過音、喉頭蓋開音、嚥下異常音の各音データを解析し、食塊が食道を通過したか否かを判定するため、誤嚥が発生したか否かをリアルタイムで正確に判定できると共に、常時患者の咽喉動作を監視することができ、且つ、医師以外の看護士や介護ヘルパ、家族でも嚥下機能の低下や誤嚥の有無をその場で確認することができる。さらに、比較的軽量化及び小型化が可能になるので、患者の首に装着した状態のままでもあまり負担にならず、長時間にわたる測定も可能になる。
【0014】
また、有意音データの波形データを周波数解析データに変換し、周波数解析データの特定周波数におけるスペクトル強度に基づいて、嚥下機能音、咳き、音声の何れかを判別するため、患者がどのような状態かがその場で分かるので、例えば、誤嚥が発生した場合には、直ちに食事を停止させてそれ以上の誤嚥を防止できると共に、各患者の障害に対応した嚥下機能回復の効果的な治療方法やリハビリテーション方法を検討することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による嚥下機能データ測定装置の一実施例の概略構成を示すブロック図である。
【図2A】嚥下機能データ測定ユニットの外観形状と制御ユニットの処理手順を示す図である。
【図2B】嚥下機能データ測定ユニットの装着状態を示す図である。
【図2C】複数の嚥下機能データ測定装置と管理コンピュータとが嚥下機能データ測定システムを形成していることを模式的に示す図である。
【図3A】口腔の内部及び空気吸込み機能を説明するための縦断面図である。
【図3B】口腔の内部及び嚥下機能を説明するための縦断面図である。
【図4】嚥下動作による音データの一例を示す波形図である。
【図5】制御装置が実行する嚥下機能解析制御処理を説明するためのフローチャートである。
【図6A】嚥下動作の音測定位置a〜fを示す図である。
【図6B】嚥下動作音の発生源となる輪状軟骨気道外側の測定位置Pを示す図である。
【図7A】測定位置aで測定された音データの周波数特性を示す図である。
【図7B】測定位置bで測定された音データの周波数特性を示す図である。
【図7C】測定位置cで測定された音データの周波数特性を示す図である。
【図7D】測定位置dで測定された音データの周波数特性を示す図である。
【図7E】測定位置eで測定された音データの周波数特性を示す図である。
【図7F】測定位置fで測定された音データの周波数特性を示す図である。
【図8A】嚥下動作音の測定データを示す波形図である。
【図8B】嚥下動作音の周波数解析データを示す波形図である。
【図9A】咳きの測定データを示す波形図である。
【図9B】咳きの周波数解析データを示す波形図である。
【図10A】発声の測定データを示す波形図である。
【図10B】発声の周波数解析データを示す波形図である。
【図11A】高齢者Aの嚥下試行回数と嚥下時間との測定結果を示すグラフである。
【図11B】高齢者Bの嚥下試行回数と嚥下時間との測定結果を示すグラフである。
【図11C】高齢者Cの嚥下試行回数と嚥下時間との測定結果を示すグラフである。
【図11D】高齢者Dの嚥下試行回数と嚥下時間との測定結果を示すグラフである。
【図11E】高齢者Eの嚥下試行回数と嚥下時間との測定結果を示すグラフである。
【図11F】高齢者Fの嚥下試行回数と嚥下時間との測定結果を示すグラフである。
【図11G】高齢者Gの嚥下試行回数と嚥下時間との測定結果を示すグラフである。
【図11H】高齢者Hの嚥下試行回数と嚥下時間との測定結果を示すグラフである。
【図12A】若年者Iの嚥下試行回数と嚥下時間との測定結果を示すグラフである。
【図12B】若年者Jの嚥下試行回数と嚥下時間との測定結果を示すグラフである。
【図12C】若年者Kの嚥下試行回数と嚥下時間との測定結果を示すグラフである。
【図13】嚥下動作音データ上の嚥下時間T1と食道通過音の時間T2とを示す波形図である。
【図14】嚥下動作音測定による情報提示までの時間処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【実施例1】
【0017】
〔嚥下機能データ測定装置の構成〕
図1は本発明による嚥下機能データ測定装置の一実施例の概略構成を示すブロック図である。図1に示されるように、嚥下機能データ測定装置10は、嚥下機能データ測定ユニット20と、制御ユニット50とを有する。
嚥下機能データ測定ユニット20は、頸部装着型インターフェースであり、装着用フレーム22に音測定部30と、提示部40とを有する。装着用フレーム22は、両端が被測定部位に密着するようにほぼ楕円形状に湾曲した形状に成形されており、測定対象者(患者)の首外周に装着される。また、装着用フレーム22は、樹脂成型品であり、測定対象者の首の負担とならないように軽量化及び小型化が図られている。
【0018】
音測定部30は、装着用フレーム22の両端部の内側に設けられ、装着用フレーム22の弾性により測定対象者の首(頸部)の皮膚表面に接触するように保持される。また、音測定部30は、例えば、小型で音測定感度及び音質に優れたエレクトレットコンデンサ型マイクからなり、当該喉頭動作音に基づく音響信号(音データ)を出力する。また、音測定部30は、聴診器のように喉頭動作音以外の周辺の雑音を測定せず、測定対象者の喉頭動作音のみ効果的を測定することができる。
【0019】
提示部40は、装着用フレーム22の両端部の外側に設けられ、音測定部30により測定された喉頭動作音の音データに基づく測定結果を提示する。本実施例の提示部40は、例えば、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)などの発光部材からなり、嚥下動作の状態に応じて青色、緑色、赤色の各色に発光色を切り替えられる。尚、提示部40は、発光ダイオードの代わりに小型の液晶パネルを用いて、嚥下動作に応じた任意のシンボルマーク(例えば、○×△など)を表示して嚥下動作状態を報知する方式としても良い。
【0020】
制御ユニット50は、装着用フレーム22と別体に設けられ、信号線を介して音測定部30及び提示部40と接続されている。また、制御ユニット50は、利得増幅部60と、音データ解析部70と、判定部80と、メモリ90と、LED制御部100と、無線通信部110と、バッテリ120とを有する。
利得増幅部60は、音測定部30により検出された音データを任意の増幅率で増幅する。
【0021】
音データ解析部70は、音測定部30により測定された喉頭動作音の測定データ(音響信号)から喉頭蓋閉音、食塊通過音、喉頭蓋開音、嚥下異常音の各音データを解析する音データ解析手段である。また、音データ解析部70においては、食事以外として、例えば日常生活中、及び就寝中においても、音測定部30が喉頭動作音を測定することよりつばや痰の飲み込み発生回数(例えば1時間毎)などのモニタリングを行うことも可能である。
【0022】
判定部80は、音データ解析部70により解析された喉頭蓋閉音、食塊通過音、喉頭蓋開音、嚥下異常音により食塊が食道を通過したか否かを判定する判定手段である。
【0023】
メモリ90は、音測定部30により測定された測定データ及び音データ解析部70により解析された各音データ及び判定結果を記憶する記憶部である。
【0024】
LED制御部100は、音データ解析部70により解析された各音データに基づく判定結果を提示部40に提示させる制御手段であり、判定部80の判定結果に基づいて装着用フレーム22の両端に設けられた提示部40の発光部材(LED)を任意の発光色(例えば、青色、緑色、赤色)に発光させる。
【0025】
無線通信部110は、音測定部30により測定された測定データ及び音データ解析部70により解析された各音データ及び判定結果を無線信号に変換して外部機器に出力する出力部である。また、無線通信部110の代わりに有線方式の通信部を設けても良い。
【0026】
バッテリ120は、充電式バッテリからなり、各部への電源供給源である。また、音データ解析部70及び判定部80は、CPU(中央演算処理部)からなる制御部130に設けられており、予め入力された各制御プログラムに基づいて各音データの解析処理、判定処理を行う。
音データ解析部70は、測定データの周波数と周期との差違に基づいて測定データに含まれる喉頭蓋閉音、食塊通過音、喉頭蓋開音、嚥下異常音を抽出し、測定データに含まれる有意音データと無音データとに分類し、無音データが予め設定された所定時間経過した場合に、有意音データから喉頭蓋閉音、食塊通過音、喉頭蓋開音、嚥下異常音を解析する。
【0027】
また、音データ解析部70は、嚥下機能演算部72と、音判別部74とを有する。嚥下機能演算部72は、有意音データから嚥下動作音を抽出し、嚥下時間を演算する嚥下機能演算手段である。音判別部74は、有意音データの波形データを周波数解析データに変換し、周波数解析データの特定周波数におけるスペクトル強度に基づいて、嚥下機能音、咳き、音声の何れかを判別する音判別手段である。
〔制御ユニット50の処理手順〕
図2Aは嚥下機能データ測定ユニット20の外観形状と制御ユニット50の処理手順を示す図である。図2Bは嚥下機能データ測定ユニット20の装着状態を示す図である。図2A及び図2Bに示されるように、嚥下機能データ測定ユニット20は、測定対象者の首に装着され、装着用フレーム22の端部内側に設けられた音測定部30を頸部の被測定部位に密着させる。
【0028】
音測定部30により検出された咽喉動作に伴う音響信号(音データ)は、制御ユニット50に供給される。ここで、制御ユニット50が実行する嚥下機能データ測定方法の手順について説明する。図2Aの手順1では、音測定部30により10kHzのサンプリングレートで音計測を行う。音測定部30から入力される音響信号は、利得増幅部60により任意の増幅率(例えば200倍)で増幅される。
【0029】
手順2では、増幅された音データを入力された制御ユニット50において、音データの蓄積及び音データに含まれる各音の解析及び特徴抽出を逐次行う。
【0030】
手順3では、音データの解析により抽出されたパラメータ(判定結果)に基づいて提示部40の発光色を切替ながら嚥下動作音に応じて任意の発光色を所定時間間隔で発光させる。
【0031】
図2Cは複数の嚥下機能データ測定装置10〜10と管理コンピュータ220とが嚥下機能データ測定システム200を形成していることを模式的に示す図である。図2Cに示されるように、嚥下機能データ測定システム200は、複数の嚥下機能データ測定装置10〜10と管理コンピュータ220とがネットワーク250を介して通信可能に接続される。複数の嚥下機能データ測定装置10〜10では、測定対象者から測定した音データを逐次無線通信部110より送信しており、送信された音データはネットワーク250に接続された通信装置210で受信される。そして、管理コンピュータ220は、通信装置210から入力された音データ(各嚥下機能データ測定装置10〜10で測定されたデータ)を時系列的データとしてデータベース230に格納する。
【0032】
さらに、管理コンピュータ220は、看護士ステーションあるいは医師の部屋などに設置されたモニタ240に、各患者A〜Fから測定された音データの解析により抽出されたパラメータ(判定結果)に基づく発光色(青色、緑色、赤色)の判定マークを表示する。モニタ240は、患者と異なる部屋に設置されているので、看護士が患者から離れた場所にいても各患者の嚥下機能をリアルタイムで確認することが可能になる。
〔嚥下機能及び嚥下機能データの測定方法について〕
図3Aは口腔の内部及び空気吸込み機能を説明するための縦断面図である。図3Aに示されるように、口腔300と鼻腔310とが連通する咽喉320には、気道330を開閉する喉頭蓋340が設けられている。通常、気道330は、呼吸を行うため、開放されている。
【0033】
図3Bは口腔の内部及び嚥下機能を説明するための縦断面図である。図3Bに示されるように、食物を胃に運ぶ際は、喉頭蓋340が気道330の開口を塞ぐと共に、口腔300からの食塊が食道350に運ばれる。このように、喉頭蓋340は、呼吸するとき(図3A参照)と食塊を胃に運ぶとき(図3B参照)の動作状態が異なり、気道330を開または閉とすることによって音が異なる。
【0034】
従って、嚥下機能データ測定装置10では、喉頭蓋340の開閉動作に伴う動作音(音データ)を嚥下機能データとして測定する。すなわち、音測定部30は、輪状軟骨直下気道外側上付近の測定位置Pにおいて、食塊を嚥下する際の嚥下音や嚥下前後の呼吸音を取得し、嚥下異常音となる気道狭窄音や唾液、痰などの貯留音、嚥下音の長さを測定する。そして、制御ユニット50において当該測定された音データの時間的長さから嚥下障害の程度を推定する。
【0035】
図4は嚥下動作による音データの一例を示す波形図である。図4に示されるように、嚥下音の音データは、上記測定位置に配置された音測定部30により測定され、喉頭蓋340が気道330を閉じる喉頭蓋閉音iと、食塊通過音iiと、喉頭蓋340が気道330を開く喉頭蓋開音iiiとが時系列的に連続する音データとして測定される。
〔音データの解析手法について〕
嚥下機能データ測定装置10では、嚥下動作音とその他の咳きや、患者自身の声とを判別するため、周波数特徴を用いることが有用であるが、実時間応答性(レスポンス)も重要であるので、時間領域の情報も利用する。
【0036】
そこで、音データ解析部70においては、嚥下動作音の判別処理を効率よく行うため、ウェーブレット変換により解析を行う。窓関数には、ガウス窓を用いる。
【0037】
【数1】

ウェーブレット変換式は、上記式(1)(2)のように表せる。ここで、f(t)は元信号データ、C(a,b)は周波数成分である。係数a,bは窓関数のサイズを表わす係数であり、係数aは窓幅スケール係数、係数bは時間方向に波をシフトさせる時間シフト係数である。ここでは、窓幅スケール係数aは、32段階のスケールで解析を行うように設定される。
〔嚥下機能解析制御処理のアルゴリズムについて〕
図5は制御装置が実行する嚥下機能解析制御処理を説明するためのフローチャートである。図5に示されるように、制御ユニット50では、音測定部30により測定された音データをAD変換した後、当該変換された測定データの蓄積を行う。すなわち、一定数の音データをメモリ70に格納すると、測定された音データの読み込みを行うと共に、音データの解析を行う。
【0038】
本実施例では、まずS11で音測定部30により測定された音データを取得する。S12において、音測定部30からの入力電圧が一定値aを超えた場合(YESの場合)、S13に進み、有意音データeとして測定値をメモリ70に格納し、S11の処理に戻る。また、上記S12において、音測定部30からの入力電圧が一定値aを超えない場合(NOの場合)、S14に進み、無音データとして測定値をメモリ70に格納する。
【0039】
続いて、S15では、有意音データ数eが0以下、あるいは無音データ数nが有意音データ決定無音時間t以下の場合(NOの場合)、S16に進む。S16では、有意音データ数eが0、及び無音データ数nが無音データ決定無音時間t以下の場合(YESの場合)、S17に進み、無音データ数nをクリアしてS11の処理に戻る。また、S16において、有意音データ数eが0でない、又は無音データ数nが無音データ決定無音時間t以下でない場合(NOの場合)、無音データ数nをクリアせずにS11の処理に戻る。
【0040】
また、S15において、有意音データ数eが0以上、及び無音データ数nが有意音データ決定無音時間t以上の場合(YESの場合)、S18に進む。
【0041】
すなわち、S13では、メモリ70に格納された音データから嚥下、咳き、発声の何れかの可能性のある音を有意音データeとして記録し、S14ではノイズまたは入力音声のない信号を無音データとしてラベリングし、それぞれのデータ群の数を記録する。
【0042】
また、S15で有意音データの後にt秒間分の無音データが確認された場合、嚥下または咳き、発声が終了したとみなし、S18で有意音データ全体に対し、ウェーブレット変換を行い、周波数特徴を算出し、測定された音データの波形情報から嚥下、咳き、発声などの時間区間を同定する。
【0043】
ここで、t秒間の無音区間を使用するのは、嚥下音の前後では、嚥下時無呼吸時間が続くため、嚥下動作音データの後には、無音データが続くことが分かっている。そのため、その時間t=0.2秒とし、嚥下終了の判断基準とする。
【0044】
S18では、有意音データから嚥下動作音データ、咳き音データ、発声データ、嚥下異常音データを解析、抽出し、S19では上記解析結果に基づいて嚥下、咳き、発声、異常の何れかを判断する。
【0045】
尚、嚥下異常音データとしては、嚥下時間が通常より長く測定された場合の音データ、誤嚥(嚥下障害)の動作音が測定された場合の音データであり、気道に食塊が流入してむせた場合の音データ、あるいは誤嚥に気付かない場合、すなわち、喉頭蓋340が気道330を開いた状態で食塊の通過音が検出された場合の音データなどを含む。
【0046】
続いて、S20に進み、提示部40の発光部材(LED)を上記S19の判断結果に応じた発光色で発光させる。例えば、測定開始時は青色、正常な嚥下時は緑色、異常時(誤嚥)は赤色に発光させる。また、嚥下異常音データが所定時間以上続く場合には、誤嚥になる可能性が高いので、赤色の発光と消灯とを繰り返す点滅状態に切り替えて報知しても良い。このように、当該測定対象者の周囲の人(医師、介護士、介護ヘルパ、家族)が提示部40の発光色をみることで、容易に嚥下動作が正常に行われているか、あるいは誤嚥が起きているのかをその場で確認できる。
【0047】
次のS21では、S19の判断結果を管理コンピュータ220に送信し、別室のモニタ240にも各測定対象者の判断結果を表示させる。この後は、S11の処理に戻る。また、S19の後、S22に進み、有意音データ数eをクリアしてS11の処理に戻る。
〔音測定部の測定位置の評価〕
頸部での嚥下音測定位置は、嚥下運動に伴う生理的活動上、輪状軟骨の近くの気道外側に設置するのが望ましいが、測定対象者の体格や日常の体の動作により毎回同じ位置での測定が難しい。そこで、音測定部30の測定位置の差違による信号強度や周波数特性に与える影響を検証する。
【0048】
図6Aは嚥下動作の音測定位置a〜fを示す図である。図6Aに示されるように、例えば、頸部の6箇所(a〜f点)に音測定部30を位置させた状態で音データを測定する。
【0049】
図6Bは嚥下動作音の発生源となる輪状軟骨気道外側の測定位置Pを示す図である。図6bに示す測定位置Pは、喉頭蓋340が動作する位置に対応している。音測定部30は、望ましくは測定位置Pの位置となるように嚥下機能データ測定ユニット20の装着位置を調整することで喉頭蓋340による嚥下動作音をより音質良く測定可能となる。しかしながら、実際には、測定対象者が体の向きを変えたり、運動をした場合には、音測定部30の位置がずれることがある。その場合、上記各測定位置a〜fでの測定が可能か否かを検証したところ次のような実験結果が得られた。
【0050】
図7A〜図7Fはそれぞれ各測定位置a〜fで測定された音データの周波数特性を示す図である。図7A〜図7Fに示す周波数特性を比較すると、各測定位置a〜fでの周波数特性の波形特徴はほぼ同じである。また、後側の測定位置e、fでは、気道330及び食道350から距離があり、且つ筋活動により音データの測定が阻害される。また、測定位置a、dでの測定結果が鮮明であるので、上記6箇所の中では上側の測定位置a、dが望ましいことが分かる。しかしながら、前側の測定位置b、cでも良好な測定結果が得られることから、測定位置に対して大きな制約を設けずとも嚥下動作音を正確に測定することは可能であることが分かる。
【0051】
従って、嚥下機能データ測定ユニット20においては、装着用フレーム22の両端内側に配された音測定部30が測定対象者の上記測定位置a〜fのうちできるだけ測定位置a,dで嚥下動作音を測定できるように装着用フレーム22の寸法及び形状を決めることが望ましい。
〔嚥下動作音の抽出方法〕
嚥下機能データ測定装置10は、使用環境を病院等の治療施設や介護施設に限るものではなく、自宅での在宅治療や在宅介護を受ける日常生活空間で測定対象者に装着して音データの測定することも想定されている。そのため、測定される音データには、食事中であっても嚥下動作音のみならず、会話などの生活雑音も含まれる。
【0052】
また、咳きなどの生理現象は、嚥下動作音と区別する際の余分な因子となるが、嚥下障害者における食事中の咳きの発生は、嚥下障害の状態を判断するうえで重要である。そこで、音測定部30により嚥下、咳き、会話(音声)を含む音データを測定し、それぞれの周波数特性の差違と、信号強度を離散化する指標であるパルス数を用いて比較する。
【0053】
音データのパルス数は、入力信号s[k]の値が設定した閾値θを越えた回数であり、例えば、本実施例ではθ=0.5に設定する。
【0054】
図8A、図8B、図9A、図9B、図10A、図10Bに、嚥下動作音、咳き、発声の音データの波形とウェーブレット変換により解析した結果を示す。図8Aに示されるように、嚥下動作音は、喉頭蓋340が気道330を閉じる喉頭蓋閉音A1、食塊が喉を通過する食塊通過音A2、喉頭蓋340が気道330を開く喉頭蓋開音A3の3つの音A1〜A3が時系列的に連続する音データとして測定される。そのため、上記嚥下動作音A1〜A3は、咳きA4や発声A5の音響波形に比べて時間的に不連続になるという特徴を有する。これは、各測定対象者によって個人差があるが、喉頭蓋340を開閉させる筋力の低下や脳からの指令に対する反応神経系統の低下による喉頭蓋340の動作遅れが伴うためである。
【0055】
そこで、一定時間τにおけるパルス数P[τ]とし、元信号をs(t)、サンプリング周期をTsとすると、時刻tにおける一定時間τ間のパルス数P[τ]は、以下の式(3)のように表せる。
【0056】
【数2】

例えば、上記一定時間をτ=100(msec)としてパルス数を計測したところ、嚥下動作音では、P[τ]=100程度、咳きではP[τ]=190程度、発声ではおおむねP[τ]=250以上(発声の言葉によって異なる)となる実験結果が得られた。
【0057】
一方、ウェーブレット変換により解析結果をみると、嚥下動作音の周波数解析データ(図8B参照)は、4000Hz付近の周波数領域B1でスペクトル強度が強く、咳きの周波数解析データ(図9B参照)は、4000Hz付近の周波数領域B2と、2000Hz付近の周波数領域B3と、咳きの開始、終点の周波数領域B4、B5でのスペクトル強度が強いことが分かる。
【0058】
また、発声時のデータ(図10B参照)は、発声内容や各人の個人差があるものの嚥下動作音のデータ(図8B参照)、咳きのデータ(図9B参照)と比べて4000Hz付近の高周波帯のスペクトル強度が弱く、スペクトル強度のピークは500Hz以下の周波数領域B6に集中することが分かる。
【0059】
また、嚥下動作音のデータ(図8B参照)と咳きのデータ(図9B参照)とを比較すると、咳き区間では、初期段階で500Hz付近のスペクトルのピークが現れることが多い。さらに、発声区間(図10B参照)では、嚥下動作音よりも1500Hz付近の周波数領域B7におけるスペクトル強度が大きいことが分かる。
【0060】
これらの実験結果より、嚥下、咳き、発声区間では、波形や周波数にそれぞれ特有の特徴があることから、各データの周波数領域B1〜B7を指標化することで信号処理による事象の判別が可能になる。また、これと同様に、周波数特性に基づいて嚥下異常音の有無を判別することも可能である。
〔高齢者と若年者との嚥下時間の比較〕
嚥下障害の無い正常な若年健常者と嚥下障害の可能性のある高齢者との嚥下動作音の比較を行った結果を図11A〜図11H及び図12A〜図12Cに示す。
【0061】
図11A〜図11Hに示されるように、高齢者A〜Hの場合、各人の嚥下時間が0.4〜0.8秒にばらつくものの、図12A〜図12Cに示されるように、若年者I〜Kの嚥下時間0.3秒よりも比較的長いことが分かる。さらに、各個人の嚥下時間の測定結果をみても試行回数によって若年者のばらつきが少なくほぼ同じ時間であるのに対して、高齢者の嚥下時間のばらつきが試行回数によって大きいことも分かる。これらのことから嚥下障害があると、嚥下時間が0.4秒以上に長くなるとと共に、回数によって嚥下時間に差が生じることも明らかである。
【0062】
また、高齢者の中には、非常に長い嚥下の後にむせる場合があり、あるいは短い嚥下を繰り返す場合もあった。これは、嚥下の際に飲み込みが上手くいかず、図3Bに示すように食塊が口腔300内に残留し、残留物を食道350に押し込むため、反射的に嚥下運動が行われた現象と推測される。このような口腔300内への食塊の残留や嚥下のタイミングのずれは誤嚥(嚥下障害)の原因となるので、検知されることが望まれている。
【0063】
そこで、嚥下時間だけでなく嚥下時間中の第2段階、つまり食塊が食道を通過するまでの時間も評価指標として使用することにする。嚥下のタイミングの判定方法としては、図13に示されるように、嚥下動作音を構成する嚥下動作音i〜iiiのうち、中間の第2段階の食塊通過音iiを判定基準に用いる。
【0064】
嚥下動作全体の嚥下時間をTとし、食道通過音iiの中間時間までの時間をTとすると、嚥下−食道通過時間比T/Tを評価関数として設定する。ここで、図11A〜図11Hに示す高齢者A〜Hの実験結果(嚥下時間)と、図12A〜図12Cに示す若年者I〜Kの実験結果(嚥下時間)に対し、上記評価関数T/Tで評価を行った例を表1、表2に示す。
【0065】
【表1】

表1に示すように若年者の場合、嚥下時間Tが0.29秒〜0.32秒の範囲で変動するものの評価関数値T/Tは0.47〜0.52となる。
【0066】
【表2】

表2に示されるように、高齢者の場合、嚥下時間Tが0.39秒〜0.82秒と変動幅が大きいので、評価関数T/Tは、0.32〜0.66となる。このように、高齢者と若年者との評価関数T/Tを比較しても差違があることが分かる。このように、前述した図1の音データ解析部130及び図5のS18のデータ解析処理において、嚥下時間Tと嚥下−食道通過時間比からなる評価関数T/Tに基づいて嚥下障害の有無を判定することが可能になる。
【0067】
また、本実施例では、前述したように各区間と区間との間には、無音データが0.2秒以上あることを想定して嚥下、咳き、発声を区別するシステムであるため、例えば、咳きと発声のタイミングが重なったときは、各区間の境目を認識することが難しい。
【0068】
しかしながら、嚥下と咳きまたは発声が重なったときは、嚥下時の呼吸が止まり、無呼吸となる時間帯(例えば、0.2秒)が嚥下の前後にあることから嚥下動作音と咳き及び発声とを区別することは可能である。従って、前述したように、各周波数特性データの周波数領域B1〜B7を指標化して音測定部30により測定した音データから嚥下動作音、咳き、発声を解析して認識することが可能であるので、前述した図1の判定部80及び図5のS19の判断処理における解析結果に基づいて、判定された状態に対応する発光色を提示部40に発光させて周囲の人(医師、看護士、介護ヘルパ、家族など)に当該測定対象者の状態を報知できる。
図14は嚥下動作音測定による情報提示までの時間処理を示す図である。図14に示されるように、嚥下機能データ測定装置10では、測定開始時は提示部40が青色に発光される。そして、正常な嚥下時は、解析後に提示部40が緑色に発光され、異常時は赤色に発光させて周囲の人に報知する。
【0069】
嚥下動作音が測定されて無音データが0.2秒間測定された後に音データの解析が行われ、その後、嚥下が正常の場合、提示部40に緑色の発光色が提示され、嚥下異常の場合には、提示部40に赤色の発光色が提示される。
【0070】
このように、嚥下動作後、0.2秒が経過してから提示部40に嚥下検出結果が提示されることになるが、この時間遅れがあっても、看護士または介護ヘルパなどが当該測定対象者の食事を停止させるまでに要する時間を考慮すると、実際の介護の現場では、殆ど影響がないものと考えられる。
【0071】
従って、本発明の嚥下機能データ測定システムでは、各測定対象者(患者)毎の嚥下動作の音データをデータベース230に蓄積することで、各測定対象者の嚥下機能の低下に応じた治療方法やリハビリテーションを検討することが可能になり、より効果的な治療が可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
上記実施例では、高齢者の嚥下機能の低下を検知することを目的とする嚥下機能データ測定装置及び嚥下機能データ測定システムについて説明したが、これに限らず、高齢者以外でも脳卒中の後遺症により嚥下機能が低下した患者が日常生活を送る際に、上記嚥下機能データ測定装置10を装着することで誤嚥の発生を報知すること可能になる。
【0073】
また、嚥下機能の低下(嚥下障害)がいつから始まるかが分からない患者の場合、予め嚥下機能データ測定装置10を装着しておけば、それまで嚥下が正常に行われていても、何時の時点から誤嚥が発生したかを時間の経過と共に嚥下機能の低下具合を時系列的に検証することも可能になる。
【0074】
上記実施例では、食事に伴う嚥下障害を判定する場合を例に挙げて説明したが、食事以外として、例えば日常生活中、及び就寝中においても、音測定部30が喉頭動作音を測定することよりつばや痰の飲み込み発生回数(例えば1時間毎)などのモニタリングを行うことも可能である。
【符号の説明】
【0075】
10、10〜10 嚥下機能データ測定装置
20 嚥下機能データ測定ユニット
22 装着用フレーム
30 音測定部
40 提示部
50 制御ユニット
60 利得増幅部
70 音データ解析部
72 嚥下機能演算部
74 音判別部
80 判定部
90 メモリ
100 LED制御部
110 無線通信部
120 バッテリ
130 制御部
200 嚥下機能データ測定システム
210 通信装置
220 管理コンピュータ
230 データベース
240 モニタ
250 ネットワーク
300 口腔
310 鼻腔
320 咽喉
330 気道
340 喉頭蓋
350 食道

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象者の首に装着される装着用フレームと、
該装着用フレームの内側に設けられ、前記測定対象者の嚥下動作に伴う喉頭動作音を測定する音測定部と、
前記音測定部により測定された前記喉頭動作音に基づく測定結果を提示する提示部と、
該音測定部により測定された前記喉頭動作音の測定データから喉頭蓋閉音、食塊通過音、喉頭蓋開音の各音データを解析する音データ解析手段と、
該音データ解析手段により解析された前記喉頭蓋閉音、前記食塊通過音、前記喉頭蓋開音により食塊が食道を通過したか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果を前記提示部に提示させる制御手段と、
を備えたことを特徴とする嚥下機能データ測定装置。
【請求項2】
前記音測定部により測定された測定データ及び前記音データ解析手段により解析された各音データ及び前記判定手段の判定結果を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された各データを外部に出力する出力部と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の嚥下機能データ測定装置。
【請求項3】
前記音データ解析手段は、前記測定データの周波数特性に基づいて前記測定データに含まれる前記喉頭蓋閉音、前記食塊通過音、前記喉頭蓋開音、及び嚥下異常音を抽出することを特徴とする請求項1又は2に記載の嚥下機能データ測定装置。
【請求項4】
前記音データ解析手段は、前記測定データに含まれる有意音データと無音データとに分類し、前記無音データが予め設定された所定時間経過した場合に、前記有意音データから前記喉頭蓋閉音、前記食塊通過音、前記喉頭蓋開音、及び嚥下異常音を解析することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の嚥下機能データ測定装置。
【請求項5】
前記音データ解析手段は、前記有意音データから嚥下動作音を抽出し、嚥下時間を演算する嚥下機能演算手段を有することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の嚥下機能データ測定装置。
【請求項6】
前記音データ解析手段は、前記有意音データの波形データを周波数解析データに変換し、前記周波数解析データの特定周波数におけるスペクトル強度に基づいて、嚥下動作音、咳き、音声の何れかを判別する音判別手段を有することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の嚥下機能データ測定装置。
【請求項7】
前記装着用フレームは、前記音測定部を前記測定対象者の喉頭近傍の首外周に密着させるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の嚥下機能データ測定装置。
【請求項8】
前記提示部は、前記装着用フレームの外側に配された発光部材であり、
前記制御手段は、前記判定手段の判定結果に基づいて前記発光部材を任意の発光色に発光させることを特徴とする請求項1に記載の嚥下機能データ測定装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れかに記載された複数の嚥下機能データ測定装置と、前記複数の嚥下機能データ測定装置の出力部より出力された各音データ及び判定結果を時系列的に保存する外部制御装置とを有する嚥下機能データ測定システムであって、
前記複数の嚥下機能データ測定装置と前記外部制御装置とによる通信ネットワークを形成し、
前記外部制御装置は、
前記複数の嚥下機能測定装置により測定された各音データ及び判定結果を時系列的に格納するデータベースと、
前記複数の嚥下機能測定装置から送信された判定結果を表示する表示部と、
を有することを特徴とする嚥下機能データ測定システム。
【請求項10】
測定対象者の嚥下動作に伴う喉頭動作音を測定する音測定部と、
該音測定部により測定された前記喉頭動作音の測定データを解析する音データ解析手段と、
を有する嚥下機能データ測定装置を用いた嚥下機能データ測定方法であって、
前記音測定部により測定された前記喉頭動作音の測定データから喉頭蓋閉音、食塊通過音、喉頭蓋開音、嚥下異常音の各音データを解析し、当該解析された前記喉頭蓋閉音、前記食塊通過音、前記喉頭蓋開音、前記嚥下異常音により食塊が食道を通過したか否かを判定することを特徴とする嚥下機能データ測定方法。
【請求項11】
前記測定データに含まれる前記喉頭蓋閉音、前記食塊通過音、前記喉頭蓋開音を抽出し、当該測定データの嚥下動作全体の嚥下時間をTとし、前記食道通過音の中間時間までの時間をTとした場合、評価関数T/Tに基づいて嚥下障害の有無を判定することを特徴とする請求項10に記載の嚥下機能データ測定方法。
【請求項12】
前記測定データに含まれる有意音データと無音データとに分類し、前記無音データが予め設定された所定時間経過した場合に、前記有意音データから前記喉頭蓋閉音、前記食塊通過音、前記喉頭蓋開音、前記嚥下異常音を解析することを特徴とする請求項10又は11に記載の嚥下機能データ測定方法。
【請求項13】
前記有意音データの波形データを周波数解析データに変換し、前記周波数解析データの特定周波数におけるスペクトル強度に基づいて、嚥下機能音、咳き、音声の何れかを判別することを特徴とする請求項12に記載の嚥下機能データ測定方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図11E】
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【図11F】
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【図11G】
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【図11H】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−17694(P2013−17694A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154216(P2011−154216)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)