説明

嚥下用食材・食事提供システム

【課題】 嚥下障害者等に対して、その人に適切な嚥下食を作ることは難しく、また嚥下障害レベルに応じた嚥下食を宅配注文サービスのメニューの中から選定することも難しい。患者の嚥下障害レベルを定量的かつ客観的に捕えるためには、対応者の経験によらざるを得ず、高齢者や嚥下障害者にとって、どの食事が自分に適したものかを知ることは難しかった。
【解決手段】 本発明は、高齢者宅、嚥下障害者宅または老人福祉介護施設に設置された嚥下音解析システムと、その解析結果を受信する食材・食事製造元に設置されたコンピュータと、前記嚥下音解析システムからの注文を受ける物流サービスセンター内に設置されたコンピュータから成り、これら全てがネットワークを介して接続され、物流サービスセンターから前記老人福祉介護施設に注文された食材・食事を配達して、患者レベルに応じた最適な食材・食事を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、痴呆症、長期臥床、歯の噛み合わせ障害、口腔内乾燥、加齢に伴う嚥下反射の衰退などにより、「うまく飲みこめない」、「むせる」など嚥下機能の障害、低下をきたす患者に対して、嚥下音の特徴から、飲食物が食道でなく気管に入ってしまう誤嚥のスクリーニングを可能とするシステムの応用に関するものであり、既存の食材・食事注文販売サービスの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食材・食事の販売システムとしては、既にインターネットを利用したネット販売やオークション、さらには電話注文による宅配が公知である。
電話やインターネットによる相談や、宅配時に健康状態の相談から、利用者一人一人の嗜好や健康状態を把握し、オーダメイド食事サービスが提供されている。
食材・食事販売システムとしては、パーソナルコンピュータを使用しない専用端末により、専門知識のない高齢者や体の不自由な方でも容易に食材・食事の宅配注文を行えるようにしたものがある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−189894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来、高齢者、嚥下障害者、嚥下困難者に対して、その人に適切な嚥下食を作るのは困難である。また嚥下障害レベルに応じた嚥下食を作ること、もしくは宅配注文サービスのメニューの中から選定することも困難である。
利用者一人一人の嗜好や健康状態を把握したオーダメイド食事サービスがあるが、この健康状態の把握には、問診によるところがあり、患者の嚥下障害レベルを定量的かつ客観的に捕えることは難しく、対応者の経験に依存してしまう問題がある。
従来の技術でも、患者に嚥下障害レベルを考慮することはできず、高齢者や嚥下困難者、嚥下障害者にとって、どの食事が自分に適したものかを知ることは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、高齢者宅、嚥下障害者宅または老人福祉介護施設に設置された嚥下音解析システムと、その解析結果を受信する食材・食事製造元に設置されたコンピュータと、前記嚥下音解析システムからの注文を受ける物流サービスセンター内に設置されたコンピュータから成り、これら全てがネットワークを介して接続され、物流サービスセンターから高齢者宅、嚥下障害者宅または老人福祉介護施設に注文された食材・食事を配達する嚥下用食材・食事注文販売システムであり、患者の嚥下障害レベルに応じた最適な食材・食事を提供することができる。
【発明の効果】
【0005】
摂食・嚥下機能に応じた食物形態を摂取でき、選択できるようになることから患者のQOLの向上につながる。
嚥下困難食を作る手間を省け、介護者の負担が減る。
嚥下障害の状態を解析するだけでなく、嚥下障害に応じた食材・食事の選定、食材・食事の注文、宅配サービスの提供が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
食材・食事の密度、粘度、変形度、付着度などの物性と温度をパラメータとして、食材・食事の嚥下困難度を分類しておき、食材・食事と嚥下困難度の情報を、予め嚥下音解析システムの記憶部もしくは食材・食事製造元に設置されたコンピュータの記憶部に格納しておき、嚥下音解析システムの解析に応じて、嚥下困難度を決定し、選択可能な食材・食事リストを表示、選択し、物流サービスセンター内に設置されたコンピュータに注文を可能とする嚥下用食材・食事注文販売システムへ応用できる。
これらの食材・食事製造元に設置されたコンピュータと、物流サービスセンター内に設置されたコンピュータは同一のコンピュータでも良く、同等の機能を実現できれば、その形態に制限されない。
【0007】
図1は、第1の実施例であって、<病院または老人福祉介護施設内>10に設置してある嚥下音解析システム3と施設内コンピュータ4を利用して、患者1に適切な食事を提供できるように構成した同一施設内における嚥下用食材・食事提供システムの構成を示すブロック図である。
センサ2を装着した患者1からの嚥下音は嚥下音解析システム3に入力して、その解析結果は施設内コンピュータ4において数値情報に変換される。この数値情報は、医師15、医療スタッフ16、栄養士17、調理師18の協力を得て、患者1に適切な嚥下用食事を提供するように構成した一連のフローを示している。
【0008】
図2は第2の実施例であって、<患者宅または老人福祉介護施設>11と<食材・食事製造元センター>12、および<物流センター>13とによって構成した規模の大きい嚥下用食材・食事提供システムの構成と一連の流れを示すブロック図である。
【0009】
図3は、患者から空嚥下音を収集してから、最適な食材・食事を提供するまでの実施形態のフローを示すフローチャートである。
まず、患者データを入力し(ステップS0)、空嚥下音データを収集(ステップS1)する。
次に、患者データ、収集データを食材・食事製造元センターへ送信し(ステップS2)、食材・食事製造元センターにて食材・食事を選定する(ステップS3)。
次に、食材・食事製造元センターから端末へ食材・食事メニューを送信する(ステップS4)。
端末では、表示されたメニューから選択し、物流センターへ注文する(ステップS5)。
物流センターへ注文データを送信(ステップS6)する。
物流センターから注文の食材・食事を配達(ステップS7)する。
次に、食材・食事の嚥下音、空嚥下音データを収集(ステップS8)する。
前記収集データを食材・食事製造元センターへ送信(ステップS9)する。
研究開発部内へフィードバックし、改良、新製品の開発を行う(ステップS10)。
食材・食事製造元センターにて食材・食事メニューの更新を行う(ステップS11)。
更新された食材・食事メニューは、(ステップS4)へ戻る(ステップS12)と共に、
食材・食事製造元センターからの連絡、アドバイスを定期的に送信(ステップS13)する。
【産業上の利用可能性】
【0010】
宅配サービスから提供を受けた食材・食事が適切であるかも評価することができ、より最適なメニューの更新、嚥下食の研究開発へのフィードバックを行い、改良、新製品の開発へとつながるものであり、総合的に患者のQOLを向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】嚥下用食材・食事提供システムの同一施設内での実施形態の構成を示すブロック図(第1の実施例)である。
【図2】嚥下用食材・食事提供システムの食材・食事注文販売までの実施形態の構成を示すブロック図(第2の実施例)である。
【図3】フローチャート。
【符号の説明】
【0012】
1 患者
2 センサ
3 嚥下音解析システム
4 施設内コンピュータ
5,6 コンピュータ
10 病院または老人福祉介護施設内
11 患者宅または老人福祉介護施設
12 食材・食事製造元センター
13 物流センター
15 医師
16 医療スタッフ
17 栄養士
18 調理師

【特許請求の範囲】
【請求項1】
病院、老人福祉介護施設などの施設に設置された嚥下音解析システムと、その解析結果を受信する施設内に設置されたコンピュータから成り、これらがネットワークを介して接続され、解析結果と患者の要求から、嚥下障害等をもつ患者に対して、一人一人の個人にあった食事の物性と温度を解析した最適な食事を提供するようにしたことを特徴とする嚥下用食材・食事提供システム。
【請求項2】
請求項1に加え、嚥下音解析システムからの解析結果を受信する食材・食事製造元に設置されたコンピュータと、前記嚥下音解析システムからの注文を受ける物流サービスセンター内に設置されたコンピュータから成り、これら全てがネットワークを介して接続され、物流サービスセンターから高齢者宅、嚥下障害者宅または老人福祉介護施設に注文された食材・食事を配達するようにしたことを特徴とする嚥下用食材・食事提供システム。
【請求項3】
病院、老人福祉介護施設、高齢者宅または嚥下障害者宅に設置された嚥下音解析システムを利用して、前記嚥下音解析システムからの嚥下状態の解析結果または病院での嚥下機能検査結果内容を食材・食事製造元に設置されたコンピュータに送信し、解析結果または検査結果内容から、予め食材・食事製造元が用意している食材・食事の情報から、適切な食材・食事リストを選定もしくは個別にオーダメイド可能な食事サービスメニューを選定し、前記嚥下音解析システムにそのメニューを送信し、前記嚥下音解析システムにそのメニューが表示され、そのメニューから注文をし、物流センターに注文データを送信し、高齢者宅、嚥下障害者宅または老人福祉介護施設に配達サービスを行うことが可能なようにしたことを特徴とする請求項1に記載の嚥下用食材・食事提供システム。
【請求項4】
配送された嚥下食を食事するときに嚥下音解析システムを使用し、その結果を食材・食事製造元に送信し、適切な食材・食事の情報を更新する機能をもつようにしたことを特徴とする請求項1に記載の嚥下用食材・食事提供システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−268642(P2006−268642A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−88234(P2005−88234)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000210964)中央電子株式会社 (81)
【出願人】(593232206)学校法人桐蔭学園 (33)