説明

四塩化ケイ素を反応させてトリクロロシランを得るための流通管反応器

本発明は、四塩化ケイ素を水素と水素化脱塩素反応器中で反応させてトリクロロシランを得るための方法に関し、その際、水素化脱塩素反応器は、加圧下で運転され、かつ、セラミック材料から成る1つ以上の反応器管を包含する。さらに、本発明は、係る水素化脱塩素反応器を、金属シリコンからトリクロロシランを製造するための装置に一体化された要素として使用することに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、四塩化ケイ素を水素化脱塩素反応器中で水素と反応させてトリクロロシランを形成する方法に関し、その際、水素化脱塩素反応器は、加圧下で運転され、かつ、セラミック材料から成る1つ以上の反応器管を包含する。さらに、本発明は、係る水素化脱塩素反応器を、金属シリコンからトリクロロシランを製造するための装置に一体化された要素として使用することに関する。
【0002】
シリコン化学における多くの技術プロセスにおいては、SiCl4及びHSiCl3が一緒に発生する。それゆえ、これら双方の生成物を互いに移送し、それにより該生成物の1つのそのつどの需要を満たすことが必要不可欠である。
【0003】
そのうえまた、高純度HSiCl3は、ソーラーシリコンの製造に際しての重要な供給原料である。
【0004】
四塩化ケイ素(STC)を水素化脱塩素してトリクロロシラン(TCS)とするのに際して、技術基準に則って、熱的に制御された方法が用いられ、その際、STCが、水素と一緒に、グラファイトで内張りされた反応器、いわゆる"シーメンス炉"内に通される。反応器中に存在するグラファイト棒は、抵抗加熱として、1,100℃以上の温度に達するように運転される。高い温度及び適当な含水量によって、平衡状態は生成物TCSに移動させられる。生成物混合物は、反応後に反応器から導き出され、かつ、煩雑な方法において分離される。反応器は連続的に流過され、その際、反応器の内面は、耐食性材料としてのグラファイトから成っていなければならない。安定化のために、金属から成る外側ジャケットが用いられる。反応器の外壁は、高い温度の場合に高温の反応器壁で生じるシリコンの堆積につながりうる分解反応を可能な限り抑えるために冷却されなければならない。
【0005】
必要不可欠であり、かつ、非経済的である非常に高い温度に基づく欠点である分解に加えて、反応器の定期的な洗浄も欠点である。制限された反応器サイズに基づき、独立した一連の反応器が運転されなければならず、このことも同様に欠点である。現在の技術では、より高い空間/時間収率を達成するために、ひいては、例えば反応器の数を減らすために、加圧下で運転することができない。
【0006】
更なる欠点は、触媒を用いない、純粋に熱的に誘導される反応の実施であり、これは方法全体を非常に非効率的なものにする。
【0007】
そのため、本発明の課題は、より効率的に作用し、かつ、比肩しうる反応器サイズにて、より高い変換率を達成させることができる、つまり、TCSの空間/時間収率を高める、四塩化ケイ素を水素と反応させてトリクロロシランを得るための方法を提供することであった。さらに、本発明による方法は、TCSに関して高い選択率を可能にするべきである。
【0008】
この問題を解決するために、STCと水素より成る混合物が、好ましくは一方では触媒壁コーティングが備わっており、かつ、他方では固定床触媒が備え付けられていてよい加圧運転される管状の反応器に導かれうることが見出された。反応速度論の改善及び選択率の上昇のための触媒の使用並びに圧力により促進される反応を組み合わせることで、経済的及び生態学的に非常に効率的なプロセス操作がもたらされる。反応パラメーター、例えば圧力、滞留時間、STCに対する水素からの比の適した調整によって、TCSの高い空間/時間収率を高い選択率とともに得る方法を提示することができる。
【0009】
圧力と連関させて適した触媒を利用することが方法の特徴であり、それというのも、はっきりと1,000℃を下回る、有利には950℃を下回る、すでに比較的低い温度で、熱分解による著しい損失を被る必要なしに、十分大量のTCSが作製されることができるからである。
【0010】
ここで、反応器の反応管用に特定のセラミック材料が使用されうることが見出され、それというのも、該材料は十分不活性であり、かつ、例えば1,000℃のような高い温度でも反応器の耐圧性を保証するからであり、その際、該セラミック材料は、例えば、構造を傷付け、ひいては機械的耐負荷能力を不利に損ねると考えられる相転移を成さない。この場合、気密管を用いることが必要不可欠である。気密性及び不活性は、下記で詳述する耐高温セラミックによって達成されることができる。
【0011】
反応器管材料には、触媒活性内部コーティングが備えられていてもよい。追加的な措置として、反応器管には、流動ダイナミクスを最適化するために、不活性の塊状材料が備えられることができる。その際、塊状材料は、反応器材料と同じ材料から成っていてよい。塊状材料として、不規則充填物、リング型、ボール型、ロッド型の不規則充填物、又は他の適した不規則充填物が使用することができる。不規則充填物は、特別な実施態様において、追加的に触媒活性コーティングで覆われていてよい。この場合、場合により、触媒活性内部コーティングは省かれることができる。
【0012】
反応器管の寸法及び反応器一式のデザインは、管形状の可用性によって、並びに反応操作のために必要とされる熱の導入に関しての所定の条件によって決められる。その際、個々の反応管と該反応管に付属する周辺装置のみならず、多数の反応器管を組み合わせたものも用いられることができる。後者の場合、加熱されたチャンバー内での多数の反応器管のアセンブリが意味を成しえ、その際、熱量は、例えば天然ガスバーナーによって導入される。反応器管の局所的な温度ピークを回避するために、バーナーは、該管に直接には向けられているべきではない。バーナーは、例えば間接的に上から反応器チャンバー内に向かって取り付けら、かつ、反応器チャンバー全体に、図1で実例を挙げて示すように分配されていてよい。エネルギー効率上昇のために、反応器系は、熱回収系につながれることができる。
【0013】
上述の課題の本発明による解決手段を、以下で、種々の又は有利な実施変形例を含めて詳述する。
【0014】
ここで、本発明の対象は、水素化脱塩素反応器を加圧下で運転し、かつ、該反応器が、セラミック材料から成る1つ以上の反応器管を包含することを特徴とする、四塩化ケイ素を水素化脱塩素反応器中で水素と反応させてトリクロロシランを得る方法である。
【0015】
殊に、本発明による方法は、四塩化ケイ素を含有する出発材料ガスと水素を含有する出発材料ガスを水素化脱塩素反応器中で熱の供給によって反応させ、加圧下にあるトリクロロシラン含有の及びHCl含有の生成物ガスを形成する方法において、四塩化ケイ素を含有する出発材料ガス及び/又は水素を含有する出発材料ガスを、加圧下にある流として、加圧運転される水素化脱塩素反応器に導き、かつ、生成物ガスを、加圧下にある流として、水素化脱塩素反応器から導きすことを特徴とする方法である。生成物流中には、場合により、ジクロロシラン、モノクロロシラン及び/又はシランといった副生成物が含まれていてよい。生成物流中には、一般に、まだ反応しなかった出発材料、つまり、四塩化ケイ素及び水素も含まれている。
【0016】
水素化脱塩素反応器中の平衡反応は、典型的には、700〜1,000℃、有利には850℃〜950℃で、かつ、1〜10barの範囲の圧力、有利には3〜8barの範囲の圧力、特に有利には4〜6barの範囲の圧力で実施される。
【0017】
本発明による方法の記載した全ての変形例において、四塩化ケイ素含有の出発材料ガスと水素含有の出発材料ガスは、一緒になった流として、加圧運転される水素化脱塩素反応器に導くことができる。
【0018】
1つ以上の反応器管のセラミック材料は、好ましくは、Al23、AlN、Si34、SiCN又はSiCから選択され、特に有利にはSi含浸SiC、等方圧プレスしたSiC、熱間等方圧プレスしたSiC又は無圧焼結したSiC(SSiC)から選択される。
【0019】
なかでもSiC含有の反応器管を有する反応器が有利であり、それというのも、該反応器は、均一な熱分布及び反応のための良好な熱導入を可能にする特に良好な熱伝導性を有しているからである。特に有利なのは、1つ以上の反応器管が、無圧焼結したSiC(SSiC)から成る場合である。
【0020】
本発明により定められているのは、四塩化ケイ素を含有する出発材料ガス及び/又は水素を含有する出発材料ガスが、好ましくは、1〜10barの範囲の圧力、有利には3〜8barの範囲の圧力、特に有利には4〜6barの範囲の圧力で、かつ、150℃〜900℃の範囲の温度、有利には300℃〜800℃の範囲の温度、特に有利には500℃〜700℃の範囲の温度で、水素化脱塩素反応器に導かれることである。
【0021】
水素化脱塩素反応器中での反応のための熱供給は、1つ以上の反応器管が配置されている加熱スペースを介して行われる。例えば、加熱スペースは電気抵抗加熱によって加熱されることができる。加熱スペースは、燃焼ガス及び燃焼空気により運転される燃焼室であってもよい。
【0022】
本発明に従って特に有利なのは、水素化脱塩素反応器中での反応が、反応を触媒する1つ以上の反応器管の内部コーティングによって触媒されることである。追加的に、水素化脱塩素反応器中での反応は、反応器中若しくは1つ以上の反応器管中に配置された反応を触媒する固定床のコーティングによって触媒されることができる。触媒活性固定床が使用される場合、場合により、触媒活性内部コーティングは省かれることができる。しかしながら、反応器内壁に取り付けられることが有利であり、それというのも、純粋に担持された触媒系に対する(例えば固定床当たりの)利用可能な触媒表面が増大されるからである。
【0023】
触媒活性コーティング、つまり、反応器内壁のコーティング及び/又は場合により使用される固定床は、有利には、Ti、Zr、Hf、Ni、Pd、Pt、Mo、W、Nb、Ta、Ba、Sr、Ca、Mg、Ru、Rh、Irの金属又はそれらからの組合せ物又はそれらのシリサイド化合物、殊にPt、Pt/Pd、Pt/Rh並びにPt/Irから選択された少なくとも1種の活性成分を含有する組成物から成る。
【0024】
反応器内壁及び/又は場合により使用される固定床には、以下のように触媒活性コーティングが備えられることができる:
a)殊に、懸濁液を安定化するために、懸濁液の貯蔵安定性を改善するために、コーティングされるべき表面への懸濁液の付着を改善するために及び/又はコーティングされるべき表面への懸濁液の塗布を改善するために、Ti、Zr、Hf、Ni、Pd、Pt、Mo、W、Nb、Ta、Ba、Sr、Ca、Mg、Ru、Rh、Irの金属又はそれらからの組合せ物又はそれらのシリサイド化合物から選択された少なくとも1種の活性成分、b)少なくとも1種の懸濁剤、及び任意にc)少なくとも1種の補助成分を含有する懸濁液(以下で塗料若しくはペーストとも呼ぶ)を準備することによって;1つ以上の反応器管の内壁に該懸濁液を塗布することによって、及び任意に、場合により準備された固定床の不規則充填物の表面に該懸濁液を塗布することによって;塗布された該懸濁液を乾燥することによって;及び塗布及び乾燥された該懸濁液を500℃〜1,500℃の範囲の温度で不活性ガス又は水素のもとで調温することによって。そのとき、調温された不規則充填物は、1つ以上の反応器管に充填されることができる。しかし、調温及び任意に事前の乾燥は、すでに充填された不規則充填物の場合にも行われることができる。
【0025】
本発明による懸濁液、すなわち、塗料若しくはペーストの成分b)に従った懸濁剤、殊に結合特性を有する係る懸濁剤(結合剤とも略記される)として、好ましくは、染料工業及び塗料工業で用いられるような熱可塑性ポリマーアクリレート樹脂が使用されることができる。これに属するのは、例えばポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリプロピルメタクリレート又はポリブチルアクリレートである。それは、例えばEvonik Industriesより商品名Degalan(R)で入手される市販の系である。
【0026】
任意に、すなわち、成分c)の意味における更なる成分として、好ましくは、1種以上の助剤若しくは補助成分が用いられることができる。
【0027】
そうして、補助成分c)として、任意に溶剤又は希釈剤を用いることができる。好ましくは、有機溶剤、殊に芳香族溶剤若しくは芳香族希釈剤、例えばトルエン、キシレン、並びにケトン、アルデヒド、エステル、アルコール又は前述の溶剤若しくは希釈剤の少なくとも2つより成る混合物が適している。
【0028】
懸濁液の安定化は−必要とされる場合には−好ましくは無機又は有機のレオロジー添加剤によって達成されることができる。成分c)としての有利な無機レオロジー添加剤に属するのは、例えば、ケイ藻土、ベントナイト、緑粘土及びアタパルジャイト、合成層状ケイ酸塩、熱分解法シリカ又は沈降シリカである。有機レオロジー添加剤若しくは補助成分c)に属するのは、好ましくは、ヒマシ油及びその誘導体、例えばポリアミド変性ヒマシ油、ポリオレフィン又はポリオレフィン変性ポリアミド、並びにポリアミド及びこの誘導体(例えば、商品名Luvotix(R)で販売される)、並びに無機及び有機のレオロジー添加剤より成る混合物系である。
【0029】
好ましい付着力を得るために、補助成分c)として、シラン又はシロキサンの群からの適した接着促進剤も用いられることができる。これに関して、例えば−しかし、それらに限定されるという訳ではなく−ジメチルシロキサン、ジエチルシロキサン、ジプロピルシロキサン、ジブチルシロキサン、ジフェニルポリシロキサン又はそれらより混合系、例えばフェニルエチルシロキサン又はフェニルブチルシロキサン又は他の混合系、並びにこれらのミクスチャーが挙げられる。
【0030】
本発明による塗料若しくはペーストは、例えば、供給原料(成分a)、b)及び任意にc)を参照されたい)を、当業者に自体公知の慣用の装置において混合、攪拌若しくは混練することによって、比較的より簡単で、経済的に得られることができる。そのうえまた、本発明による例が示される。
【0031】
本発明の対象は、水素化脱塩素反応器を加圧下で運転し、かつ、セラミック材料から成る1つ以上の反応器管を包含することを特徴とする、金属シリコンからトリクロロシランを製造するための装置の必須要素としての水素化脱塩素反応器の使用である。その際、本発明により使用される水素化脱塩素反応器は、上記のような性質を持っていてよい。
【0032】
水素化脱塩素反応器が好ましくは使用されることができる、トリクロロシランを製造するための装置は:
a)四塩化ケイ素と水素を反応させてトリクロロシランを形成する部分装置であって、以下:
− 加熱スペース又は燃焼室内に配置された水素化脱塩素反応器、その際、該アセンブリは、有利には燃焼室内で1つ以上の反応器管を包含する;
− 水素化脱塩素反応器若しくは1つ以上の反応器管のアセンブリに通じている四塩化ケイ素含有ガス用の少なくとも1つの管路及び水素含有ガス用の少なくとも1つの管路、その際、任意に、別個の管路の代わりに、四塩化ケイ素含有ガス及び水素含有ガス用の共通の管路が準備されている;
− 水素化脱塩素反応器から外に通じた、トリクロロシラン含有の及びHCl含有の生成物ガス用の管路;
− 生成物ガス管路から少なくとも1つの四塩化ケイ素管路及び/又は少なくとも1つの水素管路への熱伝達が可能となるように、生成物ガス管路並びに少なくとも1つの四塩化ケイ素管路及び/又は少なくとも1つの水素管路が導かれている熱交換器、これは有利には多管式熱交換器であり、その際、任意に、熱交換器は、セラミック材料より成る熱交換器エレメントを包含する;
− 任意に、四塩化ケイ素、トリクロロシラン、水素及びHClを包含する1つ以上の生成物をそれぞれ分離するための1つの部分装置又は複数の部分装置を包含するアセンブリ;
− 任意に、分離された四塩化ケイ素を四塩化ケイ素管路に、好ましくは熱交換器の上流に導く管路;
− 任意に、分離されたトリクロロシランを最終生成物取り出し口に供給する管路;
− 任意に、分離された水素を水素管路に、好ましくは熱交換器の上流に導く管路;及び
− 任意に、分離されたHClをシリコンの塩化水素化のための装置に供給する管路;を包含する部分装置及び
b)金属シリコンをHClと反応させて四塩化ケイ素を形成する部分装置であって、以下:
− 四塩化ケイ素を水素と反応させるための部分装置に前接続された塩化水素化装置、その際、任意に、使用されたHClの少なくとも一部が、HCl流により塩化水素化装置に導かれる;
− 塩化水素化装置中での反応に由来する副産物の水素の少なくとも一部を分離するための凝縮器、その際、この水素は、水素管路により水素化脱塩素反応器若しくは1つ以上の反応器管のアセンブリに導かれる;
− 塩化水素化装置中での反応に由来する残りの生成物混合物から少なくとも四塩化ケイ素とトリクロロシランを分離するための蒸留装置、その際、四塩化ケイ素は、四塩化ケイ素管路により水素化脱塩素反応器若しくは1つ以上の反応器管のアセンブリに導かれる;及び
− 任意に、燃焼室用に準備された燃焼空気を、燃焼室から流出する煙道ガスを用いて予熱するための復熱装置;及び
− 任意に、復熱装置から流出する煙道ガスから蒸気を発生させるための装置
を包含する部分装置を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】例示的及び概略的に、本発明により四塩化ケイ素と水素を反応させてトリクロロシランを得るための方法においてか、又は金属シリコンからトリクロロシランを製造するための装置の必須の要素として用いられることができる水素化脱塩素反応器を示す図
【図2】例示的及び概略的に、本発明による水素化脱塩素反応器中で用いられることができる、金属シリコンからトリクロロシランを製造するための装置を示す図
【0034】
図1に示した水素化脱塩素反応器は、燃焼室15内に配置された複数の反応器管3a、3b、3c、複数の反応器管3a、3b、3cへ導かれる一緒になった出発材料流1、2、並びに複数の反応器管3a、3b、3cから外に通じた生成物流用管路4を示す。この図示した反応器は、そのうえまた、燃焼室15、並びに燃焼ガス18用管路及び燃焼空気19用管路を包含し、これらの管路は、4つの図示した燃焼室15のバーナーに通じる。最後に、燃焼室15から出るもう一つの煙道ガス20用管路も示している。
【0035】
図2に示した装置は、本発明による1つ以上の反応器管3a、3b、3c(非図示)を包含していてよい、燃焼室15内に配置された水素化脱塩素反応器3を包含する。この図示した装置は、四塩化ケイ素を含有するガス用の管路1及び水素を含有するガス用の管路2(双方とも、水素化脱塩素反応器3に通じる)、水素化脱塩素反応器3から外に通じた、トリクロロシランを含有する及びHClを含有する生成物ガス用の管路4、生成物ガス管路4並びに四塩化ケイ素管路1及び水素管路2がその中に導かれており、その結果、生成物ガス管路4から四塩化ケイ素管路1及び水素管路2への熱伝達を可能にする熱交換器5を包含する。該装置は、そのうえまた、四塩化ケイ素8、トリクロロシラン9、水素10及びHCl11を分離するための部分装置7を包含する。その際、分離された四塩化ケイ素は、管路8によって四塩化ケイ素管路1に導かれ、分離されたトリクロロシランは、管路9によって最終生成物取り出し口に供給され、分離された水素は、管路10によって水素管路2に導かれ、かつ、分離されたHClは、管路11によってシリコンを塩化水素化するための装置12に供給される。該装置は、そのうえまた、塩化水素化装置12中での反応に由来する副産物の水素を分離するための凝縮器13を包含し、その際、この水素は、水素管路2により熱交換器5を経由して塩化水素化反応器3に導かれる。四塩化ケイ素1及びトリクロロシラン(TCS)並びに低沸点物(LS)及び高沸点物(HS)を、凝縮器13を経由して塩化水素装置12から生ずる生成物混合物から分離するための蒸留装置14も示している。最後に、該装置はなお、燃焼室15用に準備された燃焼空気19を、燃焼室15から流出する煙道ガス20を予熱する復熱装置16、並びに復熱装置16から流出する煙道ガス20を用いて蒸気を発生させるための装置17を包含する。
【0036】

本発明による反応器中での反応:反応管として、1,100mmの長さ及び5mmの内径を有するSSiCより成る管を使用した。反応器管を、電気的に加熱可能な管状炉内に設置した。まず、それぞれの管を有する管状炉を900℃にもたらし、その際、窒素を、3bar(絶対)で反応管に通した。2時間後、窒素の代わりに水素を用いた。同様に3bar(絶対)のもと、水素流中でさらに1時間後、四塩化ケイ素36.3ml/hを反応管にポンプ供給した。水素流を、4.2:1のモル過剰に調整した。反応器搬出物を、オンラインガスクロマトグラフィーにより分析し、そこから四塩化ケイ素の変換率とトリクロロシランに対するモル選択率を算出した。
【0037】
副成分として、ジクロロシランのみが見つかった。発生する塩化水素は計算せず、評価しなかった。結果は、第1表中に示している。
【0038】
【表1】

【符号の説明】
【0039】
(1)四塩化ケイ素を含有する出発材料流
(2)水素を含有する出発材料流
(1,2)一緒になった出発材料流
(3)水素化脱塩素反応器
(3a、3b、3c)反応器管
(4)生成物流
(5)熱交換器
(4)冷却された生成物流
(7)後接続された部分装置
(7a、7b、7c)複数の部分装置のアセンブリ
(8)(7)又は(7a、7b、7c)において分離された四塩化ケイ素流
(9)(7)又は(7a、7b、7c)において分離された四塩化ケイ素流
(10)(7)又は(7a、7b、7c)において分離された水素流
(11)(7)又は(7a、7b、7c)において分離されたHCl流
(12)前接続された塩化水素化法若しくは塩化水素化装置
(13)凝縮器
(14)蒸留装置
(15)加熱スペース又は燃焼室
(16)復熱装置
(17)蒸気発生装置
(18)燃焼ガス
(19)燃焼空気
(20)煙道ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
四塩化ケイ素を水素化脱塩素反応器(3)中で水素と反応させてトリクロロシランを得る方法において、該水素化脱塩素反応器(3)を加圧下で運転し、かつ、該反応器(3)が、セラミック材料から成る1つ以上の反応器管(3a、3b、3c)を包含することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記反応に際して、四塩化ケイ素を含有する出発材料ガス(1)と、水素を含有する出発材料ガス(2)を水素化脱塩素反応器(3)中で熱の供給によって反応させ、トリクロロシラン含有の及びHCl含有の生成物ガスを形成する、請求項1記載の方法において、該四塩化ケイ素を含有する出発材料ガス(1)及び/又は該水素を含有する出発材料ガス(2)を、加圧下にある流として、加圧運転される前記水素化脱塩素反応器(3)に導き、かつ、該生成物ガスを、加圧下にある流(4)として、前記水素化脱塩素反応器(3)から導き出すことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記四塩化ケイ素を含有する出発材料ガス(1)と、前記水素を含有する出発材料ガス(2)を、一緒になった流(1、2)の形で、加圧運転される前記水素化脱塩素反応器(3)に導くことを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記セラミック材料を、Al23、AlN、Si34、SiCN又はSiCから選択していることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記セラミック材料を、Si含浸SiC、等方圧プレスしたSiC、熱間等方圧プレスしたSiC又は無圧焼結したSiC(SSiC)から選択していることを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記1つ以上の反応器管(3a、3b、3c)が、無圧焼結したSiC(SSiC)から成ることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記四塩化ケイ素を含有する出発材料ガス(1)及び/又は前記水素を含有する出発材料ガス(2)を、1〜10barの範囲の圧力、有利には3〜8barの範囲の圧力、特に有利には4〜6barの範囲の圧力で、かつ、150℃〜900℃の範囲の温度、有利には300℃〜800℃の範囲の温度、特に有利には500℃〜700℃の範囲の温度で、前記水素化脱塩素反応器(3)に導くことを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記水素化脱塩素反応器(3)中での前記反応のための熱供給を、前記1つ以上の反応器管(3a、3b、3c)が配置されている加熱スペース(15)を介して行うことを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記加熱スペース(15)を、電気抵抗加熱によって加熱するか、又は前記加熱スペース(15)が、燃焼ガス(18)及び燃焼空気(19)により運転される燃焼室(15)であることを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記水素化脱塩素反応器(3)中での前記反応を、前記反応を触媒する前記1つ以上の反応器管(3a、3b、3c)の内部コーティングによって触媒することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記水素化脱塩素反応器(3)中での前記反応を、前記反応を触媒する前記反応器(3)中若しくは前記1つ以上の反応器管(3a、3b、3c)中に配置された固定床のコーティングによって触媒することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
金属シリコンからトリクロロシランを製造するための装置の必須の要素としての水素化脱塩素反応器(3)の使用において、該水素化脱塩素反応器(3)を加圧下で運転し、かつ、該反応器(3)が、セラミック材料から成る1つ以上の反応器管(3a、3b、3c)を包含することを特徴とする使用。
【請求項13】
金属シリコンからトリクロロシランを製造するための前記装置が、
a)以下:
− 加熱スペース(15)又は燃焼室(15)内に配置された水素化脱塩素反応器(3)、その際、該アセンブリは、有利には燃焼室(15)内で1つ以上の反応器管(3a、3b、3c)を包含する;
− 水素化脱塩素反応器(3)若しくは1つ以上の反応器管(3a、3b、3c)のアセンブリに通じている四塩化ケイ素含有ガス用の少なくとも1つの管路(1)及び水素含有ガス用の少なくとも1つの管路(2)、その際、任意に、別個の管路(1)及び(2)の代わりに、四塩化ケイ素含有ガス及び水素含有ガス用の共通の管路(1、2)が準備されている;
− 水素化脱塩素反応器(3)から外に通じた、トリクロロシラン含有の及びHCl含有の生成物ガス用の管路(4);
− 生成物ガス管路(4)から少なくとも1つの四塩化ケイ素管路(1)及び/又は少なくとも1つの水素管路(2)への熱伝達が可能となるように、生成物ガス管路(4)並びに少なくとも1つの四塩化ケイ素管路(1)及び/又は少なくとも1つの水素管路(2)が導かれている熱交換器(5)、これは有利には多管式熱交換器であり、その際、任意に、該熱交換器(5)は、セラミック材料より成る熱交換器エレメントを包含する;
− 任意に、四塩化ケイ素、トリクロロシラン、水素及びHClを包含する1つ以上の生成物をそれぞれ分離するための1つの部分装置(7)又は複数の部分装置(7a、7b、7c)を包含するアセンブリ;
− 任意に、分離された四塩化ケイ素を四塩化ケイ素管路(1)に、好ましくは熱交換器(5)の上流に導く管路(8);
− 任意に、分離されたトリクロロシランを最終生成物取り出し口に供給する管路(9);
− 任意に、分離された水素を水素管路(2)に、好ましくは熱交換器(5)の上流に導く管路(10);及び
− 任意に、分離されたHClをシリコンの塩化水素化のための装置に供給する管路(11);
を包含する、四塩化ケイ素と水素を反応させてトリクロロシランを形成する部分装置及び
b)以下:
− 四塩化ケイ素を水素と反応させるための部分装置に前接続された塩化水素化装置(12)、その際、任意に、使用されたHClの少なくとも一部が、HCl流(11)により塩化水素化装置(12)に導かれる;
− 塩化水素化装置(12)中での反応に由来する副産物の水素の少なくとも一部を分離するための凝縮器(13)、その際、この水素を、水素管路(2)により水素化脱塩素反応器(3)若しくは1つ以上の反応器管(3a、3b、3c)のアセンブリに導く;
− 塩化水素化装置(12)中での反応に由来する残りの生成物混合物から少なくとも四塩化ケイ素とトリクロロシランを分離するための蒸留装置(14)、その際、四塩化ケイ素を、四塩化ケイ素管路(1)により水素化脱塩素反応器(3)若しくは1つ以上の反応器管(3a、3b、3c)のアセンブリに導く;及び
− 任意に、燃焼室(15)用に準備された燃焼空気(19)を、燃焼室(15)から流出する煙道ガス(20)を用いて予熱するための復熱装置(16);及び
− 任意に、復熱装置(16)から流出する煙道ガス(20)から蒸気を発生させるための装置(17)
を包含する、金属シリコンをHClと反応させて四塩化ケイ素を形成する部分装置
を包含することを特徴とする、請求項12記載の使用。
【請求項14】
前記セラミック材料を、Si含浸SiC、等方圧プレスしたSiC、熱間等方圧プレスしたSiC又は無圧焼結したSiC(SSiC)から選択していることを特徴とする、請求項12又は13記載の使用。
【請求項15】
前記水素化脱塩素反応器(3)、前記反応器管(3a、3b、3c)、前記加熱スペース(15)又は前記水素化脱塩素反応器(3)の運転様式を、請求項1から11までのいずれか1項の記載の方法に従って特定していることを特徴とする、請求項12から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
反応器管(3a、3b、3c)の素材としてAl23、AlN、Si34、SiCN又はSiCから選択されたセラミック材料の使用であって、その際、好ましくは、前記セラミック材料を、Si含浸SiC、等方圧プレスしたSiC、熱間等方圧プレスしたSiC又は無圧焼結したSiC(SSiC)から選択している使用。
【請求項17】
前記反応器管(3a、3b、3c)が、四塩化ケイ素と水素を反応させてトリクロロシランを得るための水素化脱塩素反応器の反応器管であることを特徴とする、請求項16記載の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2013−517207(P2013−517207A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549270(P2012−549270)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069799
【国際公開番号】WO2011/085896
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】