説明

四角形鋼管の製造方法

【課題】4箇所のコーナ部の内面を、突状部や切り欠き状溝が生じることもなく、すっきりとし得る四角形鋼管の製造方法を提供する。
【解決手段】鋼板1を折り曲げ成形したのち突き合わせ溶接することにより半成形四角形鋼管8を造管し、半成形四角形鋼管を加熱手段35により全体加熱したのち、成形手段41によって、絞りながら正規の寸法に熱間成形する四角形鋼管11の製造方法である。半成形四角形鋼管は、各コーナ部3の内面側に凹入溝部7を形成して造管されており、成形手段による熱間成形時の絞り作用により凹入溝部を埋めて、コーナ部10の内面側を直角状10bに成形した。4箇所のコーナ部は、その内面側を直角状内面として、突状部や切り欠き状溝が生じることもなく、すっきりとでき、以て全体として見た目の良いものにできるとともに、パネルゾーンを形成する厚い板厚の四角形鋼管に好適に採用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば鉄骨構造物の四角形鋼管柱(鋼管柱)においてパネルゾーンとして使用される四角形鋼管の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の四角形鋼管の製造方法としては、次のような構成が提供されている。すなわち、鋼板を折り曲げ成形(折り曲げ加工)したのち突き合わせ溶接することにより半成形四角形鋼管を造管し、この半成形四角形鋼管を加熱手段により全体加熱したのち、加熱された半成形四角形鋼管を成形手段によって、絞りながら正規の寸法に熱間成形している(たとえば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−330222号公報(第4−5頁、図1−図5)
【特許文献2】特開2004−243329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した従来の製造方法によると、半成形四角形鋼管のコーナ部は、その外面と内面とが同一状の芯を中心とした円弧面に形成されており、したがって、熱間成形時の絞り作用によって外面間の寸法や円弧半径が小さくなったとき、その絞り相当分がコーナ部の内面から内方へ突状となって現れることになる。これにより製品である四角形鋼管は、4箇所のコーナ部の内面に不規則な形状の突状部が生じるとともに、突状部の根元部分に切り欠き状溝が生じることもあり、全体として見た目が悪いものとなる。特に、パネルゾーンを形成する厚い板厚の四角形鋼管の場合、突状部はより大きくかつ不規則な形状として現れることになる。
【0005】
そこで本発明の請求項1記載の発明は、4箇所のコーナ部の内面を、突状部や切り欠き状溝が生じることもなく、すっきりとし得る四角形鋼管の製造方法を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明の請求項1記載の四角形鋼管の製造方法は、鋼板を折り曲げ成形したのち突き合わせ溶接することにより半成形四角形鋼管を造管し、この半成形四角形鋼管を加熱手段により全体加熱したのち、加熱された半成形四角形鋼管を成形手段によって、絞りながら正規の寸法に熱間成形する四角形鋼管の製造方法であって、半成形四角形鋼管は、各コーナ部の内面側に凹入溝部を形成して造管されており、成形手段による熱間成形時の絞り作用により凹入溝部を埋めて、コーナ部の内面側を直角状に成形したことを特徴としたものである。
【0007】
したがって請求項1の発明によると、半成形四角形鋼管の全体を加熱していることから、四角形鋼管は、各コーナ部の形状、すなわち外周半径を均等状にかつシャープに形成し得る。さらに4箇所のコーナ部は、その内面側を直角状内面として、突状部や切り欠き状溝が生じることもなく、すっきりとし得る。
【0008】
また本発明の請求項2記載の四角形鋼管の製造方法は、上記した請求項1記載の構成において、鋼板を成形プレス装置に入れて、下金型に対する上金型の昇降動によりコーナ部を折り曲げ成形する際に、上金型の下向き成形面に形成した下向き突条部によって、折り曲げ成形時にコーナ部の内面側に凹入溝部を成形することを特徴としたものである。
【0009】
したがって請求項2の発明によると、成形プレス装置による折り曲げ成形時に凹入溝部を成形し得る。
そして本発明の請求項3記載の四角形鋼管の製造方法は、上記した請求項1記載の構成において、鋼板を成形プレス装置に入れて、下金型に対する上金型の昇降動によりコーナ部を折り曲げ成形する前に、鋼板のコーナ成形部の内面側に凹入溝部を形成していることを特徴としたものである。
【0010】
したがって請求項3の発明によると、あらかじめ凹入溝部を形成している鋼板を折り曲げ成形することで、コーナ部の内面側に凹入溝部を成形し得る。
さらに本発明の請求項4記載の四角形鋼管の製造方法は、上記した請求項1〜3のいずれか1項に記載の構成において、鋼板は、パネルゾーンを形成する長さでかつ厚い板厚であることを特徴としたものである。
【0011】
したがって請求項4の発明によると、パネルゾーンを形成する長さでかつ厚い板厚の鋼板を用いて得た四角形鋼管は、鉄骨構造物の四角形鋼管柱に好適に採用し得る。
【発明の効果】
【0012】
上記した本発明の請求項1によると、半成形四角形鋼管の全体を加熱していることから、四角形鋼管は、各コーナ部の形状、すなわち外周半径を均等状にかつシャープに形成できる。さらに4箇所のコーナ部は、その内面側を直角状内面として、突状部や切り欠き状溝が生じることもなく、すっきりとでき、以て全体として見た目の良いものにできるとともに、パネルゾーンを形成する厚い板厚の四角形鋼管に好適に採用できる。
【0013】
また上記した本発明の請求項2によると、成形プレス装置による折り曲げ成形時に凹入溝部を成形できる。
そして上記した本発明の請求項3によると、あらかじめ凹入溝部を形成している鋼板を折り曲げ成形することで、コーナ部の内面側に凹入溝部を成形できる。
【0014】
さらに上記した本発明の請求項4によると、パネルゾーンを形成する長さでかつ厚い板厚の鋼板を用いて得た四角形鋼管は、鉄骨構造物の四角形鋼管柱に好適に採用できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1を示し、四角形鋼管の製造方法における鋼板成形工程までの説明図である。
【図2】同四角形鋼管の製造方法における半成形角形鋼管の造管工程までの説明図である。
【図3】同四角形鋼管の製造方法における加熱から熱間成形を含む工程斜視図である。
【図4】同四角形鋼管の製造方法における成形プレス装置の要部の正面図である。
【図5】同四角形鋼管の製造方法における半成形四角形鋼管の一部切り欠き正面図である。
【図6】同四角形鋼管の製造方法における加熱手段部分の正面図である。
【図7】同四角形鋼管の製造方法における成形手段部分の正面図である。
【図8】同四角形鋼管の製造方法における製造された四角形鋼管の一部切り欠き正面図である。
【図9】同四角形鋼管の製造方法における製造された四角形鋼管の使用例を示す一部切り欠き斜視図である。
【図10】本発明の実施の形態2を示し、四角形鋼管の製造方法における鋼板成形工程までの説明図である。
【図11】同四角形鋼管の製造方法における半成形角形鋼管の造管工程までの説明図である。
【図12】同四角形鋼管の製造方法における成形プレス装置の要部の正面図である。
【図13】同四角形鋼管の製造方法における製造された四角形鋼管の一部切り欠き正面図である。
【図14】本発明の実施の形態3を示し、四角形鋼管の製造方法における成形ロール装置部分の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施の形態1]
以下に、本発明の実施の形態1を、大径、厚肉でかつ正方体形状の四角形鋼管を得るのに採用した状態として、図1〜図8に基づいて説明する。
【0017】
まず、半成形四角形鋼管の製造を説明する。すなわち、図1に示すように、厚さ12〜40mm所定長さの鋼板1を長さ方向1Aに搬送し、トリミング開先加工機15に通して幅方向1Bにおける両側縁に開先2を加工する。次いで、鋼板1を成形プレス装置16に入れて、下金型17に対する上金型18の昇降動により、幅方向1Bにおける開先2寄りの二箇所を直角円弧状(90度またはほぼ90度)に折り曲げて、直角円弧状のコーナ部3を折り曲げ成形する。これにより、コーナ部3間が定寸平板部4、この定寸平板部4に連なる部分が一対の半寸平板部5のC型鋼材6を成形する。
【0018】
その際にコーナ部3は、図4に示すように、下金型17の上向き凹入状成形面(上向き成形面)17aと上金型18の下向き凸出状成形面(下向き成形面)18aとによって、その外面3aと内面3bとが同心半円状に、すなわち、大きい外周半径LRaの外面3aと小さい内周半径LRbの内面3bとが形成される。また上金型18の下向き凸出状成形面18aには下向き突条部19が形成されており、この下向き突条部19によって、折り曲げ成形時に内面3b側の中央部(最奥部)に厚さ内に入り込む凹入溝部7が成形される。
【0019】
次いで、その開先2の部分を上下から突き合わせることで、一対のC型鋼材6を重ね合わせたのち、図2に示すように、各平板部(四辺)4,5に対して、ロール装置21のロール22,23群を外側から当接させて、突き合わせ部Aを位置合わせすることにより、半成形四角形鋼管8とする。そして仮付け溶接機25の部分で、この突き合わせ部Aに対して、図5の実線に示すように、仮付け溶接9aを施工する。次いで、半成形四角形鋼管8を内面溶接機26に移して内面溶接9bを施工する。さらに、半成形四角形鋼管8を外面溶接機27に移して外面溶接9cを施工し、以て図5の仮想線に示すように、平板部(二辺)に突き合わせ溶接部(シーム溶接部)9を有し、かつ各コーナ部3の内面3bに凹入溝部7が成形されている大径で厚肉の半成形四角形鋼管8を造管し得る。
【0020】
ここで半成形四角形鋼管8は、後述する四角形鋼管(最終製品)よりも寸法や形状を大きくして造管している。すなわち半成形四角形鋼管8は、対向された辺の外面間の寸法WWや各コーナ部3の外周半径LRaを大きくして造管されている。
【0021】
この半成形四角形鋼管8は、図3、図6に示すように、搬入床31に渡されて搬送される。この搬入床31の終端部に搬送された半成形四角形鋼管8は、ローラコンベヤ(搬送手段の一例。)32に渡され、このローラコンベヤ32により形成される搬送経路33上で搬送される。この搬送経路33中には、前記半成形四角形鋼管8をA変態点の近辺(前後)(たとえば850〜1050℃)にまで全体加熱する加熱手段35と、加熱された半成形四角形鋼管8を正規の寸法かつ形状に熱間成形する成形手段41とが配設されている。
【0022】
すなわち加熱手段35は、半成形四角形鋼管8を加熱炉36に入れての燃焼加熱方式であって、その加熱炉36における前後方向の両端には、貫通孔により搬入口や搬出口が形成され、そして搬入口や搬出口には、それぞれ開閉扉37が設けられている。前記加熱炉36の一側下部でかつローラコンベヤ32のローラ間の中間位置に下部加熱バーナー38が配設され、そして、加熱炉36の他側上部でかつ前記下部加熱バーナー38に対して千鳥状に対峙する位置には、上部加熱バーナー39が配設されている。以上の36〜39などにより、前記半成形四角形鋼管8をA変態点の近辺にまで全体加熱する加熱手段35の一例が構成される。
【0023】
前述したように、搬入床31の終端部に搬送された半成形四角形鋼管8は、ローラコンベヤ32に渡され、このローラコンベヤ32により加熱炉36に搬入される。この半成形四角形鋼管8は、加熱炉36内にて搬送経路33上で搬送されながら、各バーナー38,39の燃焼熱によって徐々に均一的に加熱Hされ(図6参照)、そして850〜1050℃(A変態点の近辺)の高温を維持しながら、かつ周方向ならびに長さ方向において均一温度でかつ曲げなど生じることなく加熱Hされることになる。このようにしてA変態点の近辺の温度に加熱された半成形四角形鋼管8を、開閉扉37を開動させることで、搬出口を通して加熱炉36から成形手段41へと搬出し得る。そして半成形四角形鋼管8の終端が完全に搬出されたときに、搬出口の開閉扉37が閉動される。
【0024】
上述したように、加熱手段35によって加熱された半成形四角形鋼管8は成形手段41に搬送され、この成形手段41によって正規の寸法かつ形状に熱間成形される。すなわち成形手段41は、図3、図7、図8に示すように、前後4段(単数段または複数段)に設けられている。そして各成形手段41は、機枠42側に対して位置調整自在に、または交換自在に設けられた上下一対ならびに左右一対の成形ロール43などを介して、半成形四角形鋼管8を絞り状に熱間成形させるものである。なお、成形手段41の周辺で、必要とする箇所(成形手段41の前後、前のみ、後ろのみ、スタンド間など)には、必要とする数のデスケーラー装置45が設けられている。このデスケーラー装置45は、半成形四角形鋼管8に対して水圧をかけた水を噴射するもので、この水噴射によりミルスケールなどを除去し、表面肌を良くし得る。
【0025】
したがって、加熱されて成形手段41に搬入された半成形四角形鋼管8は、成形ロール43群によって絞り状に熱間成形され、このとき熱間成形は、複数段の成形手段41によって徐々(段階的)に絞り状に行われる。これにより半成形四角形鋼管8は、成形手段41による熱間成形時の絞り作用により、正規の外面間の寸法Wでかつコーナ部10の外面側を正規の外周半径Rの円弧状外面10aとし、そしてコーナ部10の内面側を、凹入溝部7を埋めて直角状内面10bとした四角形鋼管(最終製品)11に仕上がるように熱間成形される。
【0026】
このようにして熱間成形された四角形鋼管11は、冷却床48に受け取られる。この冷却床48はコンベヤ形式であって複数本の四角形鋼管11を平行させて支持し、そして長さ方向に対して横方向へと搬送させる。この冷却床48での搬送中に、四角形鋼管11は空冷形式で徐冷される。冷却床48での四角形鋼管11群の搬送は、隣接した四角形鋼管11の間を離した状態で、または隣接した四角形鋼管11どうしを接触させ両側よりクランプした状態で搬送される。これにより四角形鋼管11は、同じ雰囲気温度下で徐冷されることになり、以て冷却時の曲がりを少なくし得る。冷却床48の終端に達した四角形鋼管11は、図示していない矯正装置、先端切断装置、後端切断装置、洗浄装置、防錆装置へと搬送され、それぞれで処理されたのち、製品としてストレージされる。
【0027】
このようにして得られる四角形鋼管(最終製品)11は、加熱した半成形四角形鋼管8を成形手段41によって、正規の寸法かつ形状に仕上がるように熱間成形している。その際に、半成形四角形鋼管8の全体を850〜1050℃(A変態点の近辺)に加熱していることから、四角形鋼管11は、各コーナ部10の形状、すなわち外周半径Rを均等状にかつシャープに形成し得る。さらに4箇所のコーナ部10は、その内面側を直角状内面10bとして、突状部や切り欠き状溝が生じることもなく、すっきりとし得、以て全体として見た目の良いものし得、パネルゾーンを形成する厚い板厚の四角形鋼管に好適に採用し得る。そして熱間成形によって四角形鋼管11は、残留応力が殆どなくて高い座屈強度が得られるとともに、二次溶接性に優れたものとなる。
【0028】
次に上記四角形鋼管11を、鉄骨構造物の四角形鋼管柱(鋼管柱)においてパネルゾーンとして使用した例を、図9に基づいて説明する。
四角形鋼管柱51は、薄い板厚tの上部長尺四角形鋼管52の下端部と、この上部長尺四角形鋼管52の板厚tよりも厚い所定の板厚Tでかつパネルゾーンを形成する長さ(高さ)Lの四角形鋼管(短尺四角形鋼管)11の上端部とを、相対向させた状態で外側からの溶接結合53し、そして四角形鋼管11の下端部と、この四角形鋼管11の板厚Tよりも薄くかつ前記上部長尺四角形鋼管52の板厚tよりも厚い板厚Ttの下部長尺四角形鋼管54の上端部とを、相対向させた状態で外側からの溶接結合55することで構成されている。すなわち板厚は、[T>Tt>t]に設定されているが、上部長尺四角形鋼管52と下部長尺四角形鋼管54とは同じ板厚であってもよい。
【0029】
ここで所定の板厚Tとは、鉄骨構造物の規模に応じて採用される四角形鋼管11の正規の外面間の寸法Wなどにより決定されるもので、たとえば寸法Wが300mmのときに所定の板厚Tは30mm前後となる。また、上部長尺四角形鋼管52の板厚tと四角形鋼管11の板厚Tとは、たとえば、[2t≒T]とされている。なお、前記上部長尺四角形鋼管51と下部長尺四角形鋼管54とは、熱間成形または冷間成形により寸法Wとコーナ部とが成形されている。
【0030】
このような四角形鋼管柱51は、たとえば鉄骨構造物の鋼管柱として使用される。すなわち四角形鋼管柱51は、所定本数が建築現場などに運搬され、そしてパネルゾーンを形成する四角形鋼管11の外面に、梁材56が溶接によって結合される。さらに四角形鋼管柱51は、梁材56が所定のレベルに位置するように積上げ状に配置されたのち、その上下間が溶接により結合されることで所定長さ(高さ)とされ、以て鉄骨構造物が構成される。したがって、パネルゾーンを形成する長さLでかつ厚い板厚Tの鋼板1を用いて得た四角形鋼管11は、鉄骨構造物の四角形鋼管柱51に好適に採用し得る。
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2を、図10〜図13に基づいて説明する。
【0031】
まず、半成形四角形鋼管の製造を説明する。すなわち図10に示すように、所定長さの鋼板101を長さ方向101Aに搬送し、トリミング開先加工機115に通して幅方向101Bにおける両側縁に開先102を加工する。次いで、鋼板101を前段成形プレス116に入れて、下金型117に対する上金型118の昇降動により、側縁寄りの二箇所に直角円弧状(90度またはほぼ90度)のコーナ部103,103を折り曲げ成形する。その後、後段成形プレス121に入れて、下金型122に対する上金型123の昇降動により、中間の二箇所に鈍角円弧状(約105度)のコーナ部104,104を折り曲げ成形する。
【0032】
その際にコーナ部103,103は、図12(a)に示すように、下金型117の上向き凹入状成形面(上向き成形面)117aと上金型118の下向き凸出状成形面(下向き成形面)118aとによって、その外面103aと内面103bとが同心半円状に、すなわち、大きい外周半径LRaの外面103aと小さい内周半径LRbの内面103bとが形成される。そして上金型118の下向き凸出状成形面118aには下向き突条部119が形成されており、この下向き突条部119によって、折り曲げ成形時に内面103b側の中央部(最奥部)に厚さ内に入り込む凹入溝部107が成形される。
【0033】
またコーナ部104,104は、図12(b)に示すように、下金型122の上向き凹入状成形面122aと上金型123の下向き凸出状成形面123aとによって、その外面104aと内面104bとが同心半円状に、すなわち、大きい外周半径LRaの外面104aと小さい内周半径LRbの内面104bとが形成される。そして上金型123の下向き凸出状成形面123aには下向き突条部124が形成されており、この下向き突条部124によって、折り曲げ成形時に内面104b側の中央部(最奥部)に厚さ内に入り込む凹入溝部107が成形される。
【0034】
そして図11に示すように、仮付け溶接機125の部分で、四辺をロール126群(またはシリンダー)により外側から加圧することで、鈍角のコーナ部104,104を直角状のコーナ部103に成形しながら開先102どうしを突き合わせして、半成形四角形鋼管108としながら、突き合わせ部に対して仮付け溶接109aを施工する。次いで、半成形四角形鋼管108を内面溶接機127に移して内面溶接109bを施工する。さらに、半成形四角形鋼管108を外面溶接機128に移して外面溶接109cを施工し、以て一辺に突き合わせ溶接部(シーム溶接部)109を有し、かつ各コーナ部103の内面103bに凹入溝部107が成形されている大径で厚肉の半成形四角形鋼管108を造管し得る。
【0035】
この半成形四角形鋼管108は、上述した実施の形態1と同様にして熱間成形され、図13に示すように、正規の寸法かつ形状に仕上がった四角形鋼管(最終製品)111となる。その際に、半成形四角形鋼管108の全体を850〜1050℃(A変態点の近辺)に加熱していることから、四角形鋼管111は、各コーナ部110の形状、すなわち円弧状外面110aの外周半径Rを均等状にかつシャープに形成し得る。さらに4箇所のコーナ部110は、その内面側を直角状内面110bとして、突状部や切り欠き状溝が生じることもなく、すっきりとし得、以て全体として見た目の良いものにし得、パネルゾーンを形成する厚い板厚の四角形鋼管に好適に採用し得る。そして熱間成形によって四角形鋼管111は、残留応力が殆どなくて高い座屈強度が得られるとともに、二次溶接性に優れたものとなる。
[実施の形態3]
次に、本発明の実施の形態3を、図14に基づいて説明する。
【0036】
所定長さの鋼板201を長さ方向201Aに搬送して、開先を加工する前、または加工した後に、成形ロール装置211の上下一対のローラ212,213間に通す。その際に、上部ローラ213の外周面213aで所定の箇所には、突条部214が軸心方向に沿って形成されており、この突条部214による回転プレス作用によって、上下一対のローラ212,213間に通される鋼板201の上面側に凹入溝部202を形成し得る。すなわち、鋼板201を成形プレス装置に入れて、下金型に対する上金型の昇降動によりコーナ部を折り曲げ成形する前に、鋼板201のコーナ成形部の内面側に凹入溝部202を形成し得る。
【0037】
したがって、あらかじめ凹入溝部202を形成している鋼板201を成形プレス装置(上金型が下向き突条部を有さない従来形式など)に入れて、下金型に対する上金型の昇降動によりコーナ成形部を折り曲げ成形することで、各コーナ部の内面側に凹入溝部202を形成した半成形四角形鋼管を造管し得る。なお、鋼板201に対して突条部214を作用させるタイミングは、距離制御や、直径の異なる上部ローラ213の使用などによって調整し得、これにより、実施の形態1や実施の形態2で造管される半成形四角形鋼管に対応し得る。
【0038】
上記した実施の形態3では、成形ロール装置211の上部ローラ213に形成された突条部214による回転プレス作用によって凹入溝部202を形成しているが、これは、鋼板の上面側で所定箇所に、刃体による削り取り作用などにより凹入溝部を形成することで、鋼板を成形プレス装置に入れて、下金型に対する上金型の昇降動によりコーナ部を折り曲げ成形する前に、鋼板のコーナ成形部の内面側に凹入溝部を形成してもよい。
【0039】
上記した実施の形態1〜3では、逆向き台形状の凹入溝部7、107、202が成形される形式が示されているが、この凹入溝部7、107、202の形状や大きさなどは、鋼板1、101、201の厚さ、熱間成形時の絞り量などによって、たとえばV字形状など、任意に好適に設定されるものである。
【0040】
上記した実施の形態1、2では、断面正方形状の四角形鋼管11、111を製造する方法が示されているが、これは断面長方形状の四角形鋼管を製造する方法も同様である。
上記した実施の形態1では、鋼板1として、パネルゾーンを形成する長さLでかつ厚い板厚Tを使用して、たとえば鉄骨構造物の四角形鋼管柱(鋼管柱)51においてパネルゾーンとして使用される四角形鋼管11の製造方法が示されているが、これはパネルゾーンを形成する長さでかつ薄い板厚とした四角形鋼管の製造方法、四角形鋼管柱(鋼管柱)においてパネルゾーン以外に使用される厚い板厚、または薄い板厚の四角形鋼管の製造方法であってもよい。
【0041】
上記した実施の形態1では、加熱手段35として、半成形四角形鋼管8を加熱炉36に入れての燃焼加熱方式が採用されているが、この加熱手段としては、高周波誘導加熱方式などであってもよい。
【0042】
上記した実施の形態1で示すように、成形手段41での熱間成形は、複数段で徐々に絞り成形するのが好ましいが、その段数は任意であり、場合によっては単数段でもよい。特に半成形四角形鋼管8が薄肉の場合には、単数段、少数段での熱間成形が可能となる。
【0043】
上記した実施の形態1、2では、一辺にまたは二辺に突き合わせ溶接部(シーム溶接部)9、109を有する大径で厚肉の四角形鋼管(製品)11,111を製造しているが、これは大径で薄肉の四角形鋼管、小径で厚肉の四角形鋼管、小径で薄肉の四角形鋼管などの製造であってもよい。たとえば、正規の外面間の寸法Wが300〜700mm、厚さTが9〜70mmの四角形鋼管11,111を得るものであり、その際に半成形角形鋼管8,108におけるコーナ部3,103の大きい外周半径LRaは厚さTの3.5〜7.0倍であり、これが四角形鋼管11,111におけるコーナ部10,110の正規の外周半径Rが厚さTの1.0〜3.0倍となるようにシャープに形成される。
【0044】
上記した実施の形態1、2では、突き合わせ部Aに対して外側から仮付け溶接9a、109aを行う仮付け溶接機25、125が設けられた形式が示されているが、これは仮付け溶接を行わずに、溶接手段により本溶接を行う形式などであってもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 鋼板
2 開先
3 コーナ部
6 C型鋼材
7 凹入溝部
8 半成形四角形鋼管
9 突き合わせ溶接部(シーム溶接部)
10 コーナ部
10a 円弧状外面
10b 直角状内面
11 四角形鋼管(最終製品)
15 トリミング開先加工機
16 成形プレス装置
17 下金型
17a 上向き凹入状成形面(上向き成形面)
18 上金型
18a 下向き凸出状成形面(下向き成形面)
19 下向き突条部
32 ローラコンベヤ(搬送手段)
35 加熱手段
36 加熱炉
41 成形手段
43 成形ロール
48 冷却床
51 四角形鋼管柱
52 上部長尺四角形鋼管
54 下部長尺四角形鋼管
56 梁材
101 鋼板
102 開先
103 コーナ部
104 コーナ部
107 凹入溝部
108 半成形四角形鋼管
109 突き合わせ溶接部(シーム溶接部)
110 コーナ部
110a 円弧状外面
110b 直角状内面
111 四角形鋼管
115 トリミング開先加工機
116 前段成形プレス
117 下金型
117a 上向き凹入状成形面(上向き成形面)
118 上金型
118a 下向き凸出状成形面(下向き成形面)
119 下向き突条部
121 後段成形プレス
122 下金型
122a 上向き凹入状成形面(上向き成形面)
123 上金型
123a 下向き凸出状成形面(下向き成形面)
124 下向き突条部
201 鋼板
202 凹入溝部
211 成形ロール装置
213 上部ローラ
214 突条部
WW 半成形四角形鋼管8の外面間の寸法
W 四角形鋼管11の正規の外面間の寸法
R コーナ部10の正規の外周半径
T 四角形鋼管11の板厚
L パネルゾーンを形成する長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板を折り曲げ成形したのち突き合わせ溶接することにより半成形四角形鋼管を造管し、この半成形四角形鋼管を加熱手段により全体加熱したのち、加熱された半成形四角形鋼管を成形手段によって、絞りながら正規の寸法に熱間成形する四角形鋼管の製造方法であって、半成形四角形鋼管は、各コーナ部の内面側に凹入溝部を形成して造管されており、成形手段による熱間成形時の絞り作用により凹入溝部を埋めて、コーナ部の内面側を直角状に成形したことを特徴とする四角形鋼管の製造方法。
【請求項2】
鋼板を成形プレス装置に入れて、下金型に対する上金型の昇降動によりコーナ部を折り曲げ成形する際に、上金型の下向き成形面に形成した下向き突条部によって、折り曲げ成形時にコーナ部の内面側に凹入溝部を成形することを特徴とする請求項1記載の四角形鋼管の製造方法。
【請求項3】
鋼板を成形プレス装置に入れて、下金型に対する上金型の昇降動によりコーナ部を折り曲げ成形する前に、鋼板のコーナ成形部の内面側に凹入溝部を形成していることを特徴とする請求項1記載の四角形鋼管の製造方法。
【請求項4】
鋼板は、パネルゾーンを形成する長さでかつ厚い板厚であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の四角形鋼管の製造方法。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2012−130930(P2012−130930A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283906(P2010−283906)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000110446)ナカジマ鋼管株式会社 (37)
【Fターム(参考)】