説明

回動具

【課題】 工具の軸芯位置と工具保持孔の軸芯位置とを可及的に近接せしめつつ工具と工具保持孔とのクリアランスに起因するガタつきを防止できる極めて実用性に秀れた回動具を提供することである。
【解決手段】 回転主軸4を有し、この回転主軸4には、ドライバービットやドリルビット等の工具1が挿入され該工具1の断面視多角形状の基部2と略合致する断面形状の工具保持孔3が設けられ、この工具保持孔3に挿入される前記工具1を前記回転主軸4を回転させることで回転させて作業を行う回動具であって、前記工具1を所定方向に回動せしめて該工具1を前記工具保持孔3の内面にねじり押圧せしめる押圧機構が設けられているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回動具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図1に図示したようなドライバービットやドリルビット等の工具41が挿入される工具保持孔42を有する回転主軸43を備えたインパクトドライバーや電動ドライバー,電動ドリル等の回動具においては、様々な工具41を挿入するために、前記工具保持孔42と工具41との間にはクリアランスが設けられる。尚、図中符号44は、工具抜け止め用のスチールボール、45はスチールボール44が係止する係止溝、46はスチールボール44を工具41に対して突没させるためのスライド操作筒,47はバネである。
【0003】
しかしながら、このクリアランスが存在すれば当然ながらこの工具41にガタつきが生じることになる。この工具41のガタつきは、作業精度や作業効率を悪化させるだけでなく、工具41の破損等にも繋がることになり、好ましくない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、このガタつきをなくすために、断面視多角形状の工具41の基端部の外周面を、この工具41の基端部の断面形状と略合致する工具保持孔42の内周面に、該工具41の軸芯方向に対して直交方向に押し付けて、所定部分のクリアランスを無くすことも考えられるが、この方法では、図2に図示したように工具41の軸芯位置Aが工具保持孔42の軸芯位置Bからズレてしまい、工具41に振れが生じ良好な工作作業を行えない。
【0005】
本発明は、上述のような問題点を解決したもので、工具に振れを生じさせることなくガタつきを防止できる極めて実用性に秀れた回動具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0007】
回転主軸4を有し、この回転主軸4には、ドライバービットやドリルビット等の工具1が挿入され該工具1の断面視多角形状の基部2と略合致する断面形状の工具保持孔3が設けられ、この工具保持孔3に挿入される前記工具1を前記回転主軸4を回転させることで回転させて作業を行う回動具であって、前記工具1を前記工具保持孔3に挿入した状態において該工具1を所定方向に回動せしめ該工具1を前記工具保持孔3の内面にねじり押圧せしめる押圧機構が設けられていることを特徴とする回動具に係るものである。
【0008】
また、請求項1記載の回動具において、前記工具保持孔3にはスライド操作筒8が設けられ、このスライド操作筒8は、該スライド操作筒8をスライド操作させることで前記工具保持孔3への前記工具1の装着と該工具保持孔3の内面へ該工具1をねじり押圧せしめる押圧機構の作動の双方を行わしめるものであることを特徴とする回動具に係るものである。
【0009】
また、請求項2記載の回動具において、前記スライド操作筒8のスライド操作は、該スライド操作筒8の一回のスライド動であることを特徴とする回動具に係るものである。
【0010】
また、請求項1記載の回動具において、前記工具保持孔3にはスライド操作筒8が設けられ、このスライド操作筒8は、該スライド操作筒8をスライド操作し、前記工具1を前記工具保持孔3に挿入し、該スライド操作筒8を復帰動せしめると、該工具1は該工具保持孔3に保持されると共に、前記押圧機構が作動して該工具1は所定方向に回動せしめられ、該工具1の保持と該工具1の該工具保持孔3の内面へのねじり押圧が達成せしめられるように構成されていることを特徴とする回動具に係るものである。
【0011】
また、請求項1〜4いずれか1項に記載の回動具において、前記工具1の基部2には、係止溝5が設けられ、前記工具保持孔3には前記係止溝5に係止する係止体6が設けられていることを特徴とする回動具に係るものである。
【0012】
また、請求項5記載の回動具において、前記係止体6が係止溝5に配設されると共に、前記押圧機構により前記工具1が所定方向に回動せしめられるように構成されていることを特徴とする回動具に係るものである。
【0013】
また、請求項1〜6いずれか1項に記載の回動具において、前記押圧機構は、前記工具1の着脱操作を行う際、前記工具1を前記工具保持孔3の内面にねじり押圧せしめるか若しくは該ねじり押圧を解除するように構成されていることを特徴とする回動具に係るものである。
【0014】
また、請求項1〜7いずれか1項に記載の回動具において、前記工具保持孔3の先端部には、基端側若しくは先端側に付勢されるスライド操作筒8が被嵌され、前記押圧機構は、該スライド操作筒8を先端側若しくは基端側に、付勢力に抗して引動することで前記工具1の前記工具保持孔3の内面へのねじり押圧が解除され、前記スライド操作筒8を反対側へ付勢力により復帰動させることで前記工具1を前記工具保持孔3の内面にねじり押圧せしめるように構成されていることを特徴とする回動具に係るものである。
【0015】
また、請求項8記載の回動具において、前記工具1が前記工具保持孔3の内面へねじり押圧せしめられた際、前記係止体6の前記係止溝5への配設が行われるように構成されていることを特徴とする回動具に係るものである。
【0016】
また、請求項9記載の回動具において、前記工具保持孔3の周壁には、該周壁から突没する突没体7が設けられ、前記スライド操作筒8を先端側若しくは基端側に、付勢力に抗して引動した状態では、前記突没体7が、前記工具保持孔3に挿入される工具1の基部2により押圧され、工具保持孔3の周壁に没入し得るように構成され、且つ、前記スライド操作筒8が反対側へ付勢力により復帰動した状態では、前記突没体7が、前記工具保持孔3の周壁から突出して前記工具1の基部2を前記工具保持孔3の内面にねじり押圧するように構成されていることを特徴とする回動具に係るものである。
【0017】
また、請求項10記載の回動具において、前記突没体7は前記工具保持孔3の周壁対向位置に設けられているものであることを特徴とする回動具に係るものである。
【0018】
また、請求項10,11いずれか1項に記載の回動具において、前記突没体7は球状体であることを特徴とする回動具に係るものである。
【0019】
また、請求項1記載の回動具において、前記工具保持孔3の先端部には、前記工具保持孔3と連通する挿通孔9を形成した回動体10が設けられ、この回動体10には、この挿通孔9及び前記工具保持孔3に挿入された工具1を所定方向に回動せしめて該工具1を前記工具保持孔3の内面にねじり押圧せしめる回動付勢機構が設けられていることを特徴とする回動具に係るものである。
【0020】
また、請求項13記載の回動具において、前記挿通孔9は、前記工具保持孔3に対して正面視において所定角度ズレた状態で設けられており、この挿通孔9を工具保持孔3に合致させるべく回動させた場合、該挿通孔9は回動付勢力により復帰動するように構成されていることを特徴とする回動具に係るものである。
【0021】
また、請求項13記載の回動具において、前記工具保持孔3の先端部には、基端側若しくは先端側に付勢されるスライド操作筒8が被嵌され、前記回動付勢機構は、前記スライド操作筒8を先端側若しくは基端側に、付勢力に抗して引動した状態では前記工具1を所定方向に回動付勢せず、且つ、前記スライド操作筒8が反対側へ付勢力により復帰動した状態では前記工具1を所定方向に回動せしめて該工具1を前記工具保持孔3の内面にねじり押圧せしめるように構成されていることを特徴とする回動具に係るものである。
【0022】
また、請求項13〜15いずれか1項に記載の回動具において、前記工具1の基部2には、係止溝5が設けられ、前記工具保持孔3には前記係止溝5に係止する係止体6が設けられていることを特徴とする回動具に係るものである。
【0023】
また、請求項16記載の回動具において、前記係止体6が係止溝5に配設されると共に、前記回動付勢機構により前記工具1が所定方向に回動せしめられるように構成されていることを特徴とする回動具に係るものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、上述のように構成したから、工具の軸芯位置と工具保持孔の軸芯位置とを可及的に近接せしめつつ工具と工具保持孔とのクリアランスに起因するガタつきを防止できる極めて実用性に秀れた回動具となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0026】
ドライバービット等の工具1を回転主軸4の工具保持孔3に挿入し、該工具1により作業を行う。
【0027】
この際、押圧機構により工具1を所定方向に回動せしめて工具保持孔3の内面に該工具1をねじり押圧せしめることができる。
【0028】
従って、この工具保持孔3の内面へのねじり押圧により、工具1のガタつきが阻止されるのは勿論、工具1の軸芯位置と工具保持孔3の軸芯位置とが可及的に近接し、工具1の振れも阻止される。
【0029】
よって、工具1により良好に作業を行えることになる。
【実施例1】
【0030】
本発明の具体的な実施例1について図3〜7に基づいて説明する。
【0031】
実施例1は、回転主軸4を有し、この回転主軸4には、ドライバービットやドリルビット等の工具1が挿入され該工具1の断面視多角形状の基部2と略合致する断面形状の工具保持孔3が設けられ、この工具保持孔3に挿入される前記工具1を前記回転主軸4を回転させることで回転させて作業を行う回動具であって、前記工具1を前記工具保持孔3に挿入した状態において該工具1を所定方向に回動せしめ該工具1を前記工具保持孔3の内面にねじり押圧せしめる押圧機構が設けられているものである。
【0032】
実施例1は、図3に図示したように、回転主軸4の基端に該回転主軸4の軸芯方向と直交する方向に突設される一対のアンビル11が設けられ、更に、この一対のアンビル11に回転力を付与しつつ前方に打ち出すテーパ打撃面が形成されたハンマー12が設けられ、このハンマー12によって前記アンビル11を打撃することで、工具1(回転主軸4)を回動せしめながら前方へ衝撃を付与せしめて作業を行う所謂インパクトドライバー13に本発明を適用した例である。図中符号14は、ハンマーを駆動する駆動機構である。尚、インパクトドライバーに限らず、他の電動ドライバーや電動ドリル等に適用しても良い。
【0033】
各部を具体的に説明する。
【0034】
工具1の基部2には、係止溝5が設けられ、前記工具保持孔3には前記係止溝5に係止する係止体6が設けられている。
【0035】
具体的には、工具1の基部2には、係止体6としてのスチールボールが係止する断面視半円弧状の係止溝5が周設されており、前記工具保持孔3の周壁の先端部には、前記スチールボールが遊嵌され外方に拡径する第一テーパ孔15が穿設されている。この第一テーパ孔15の内方開口部は、スチールボールが離脱せず且つ該スチールボールが突出して係止溝5に嵌入される径である。尚、第一テーパ孔15は工具保持孔3の周壁対向位置に設けられている。
【0036】
この係止体6としてのスチールボールは後記のスライド操作筒8に設けた第一押圧部17で押圧される。
【0037】
押圧機構は、前記工具保持孔3の周壁に設けられ、該周壁からに突没する突没体7(スチールボール)と、後記のスライド操作筒8に設けられた第二押圧部18とで構成される。
【0038】
具体的には、図7に図示したように、前記突没体7はスチールボールであり、前記工具保持孔3の周壁の前記係止体6が遊嵌される第一テーパ孔15より基端側位置に、この突没体7としてのスチールボールが遊嵌される第二テーパ孔16が対向位置に穿設されている。
【0039】
この第二テーパ孔16は、工具保持孔3に挿入された工具1の角部が位置する径小部に径大部が連設された構成で、径大部に位置したスチールボールがスライド操作筒8の第二押圧部18で押圧された際、スチールボールの反対側が工具1の角部近傍を押圧して該工具1がねじられる(回転せしめられる)ように構成されている。
【0040】
尚、実施例1においては、前記突没体7を工具保持孔3の周壁対向位置に設けた構成としているが、一対の突没体7を対向しない位置に設けたり、三つの突没体7を等間隔で設けたり、(望ましくはないが)一つの突没体7を設けたりする等、工具1を所定の方向に回動して工具保持孔3の内面にねじり押圧し得る構成であれば他の構成を採用しても良い。また、押圧機構を工具1の長さ方向(工具保持孔3の長さ方向)に複数設ける構成としても良い。
【0041】
実施例1は、前記工具1が前記工具保持孔3の内面へねじり押圧せしめられた際、前記係止体6の前記係止溝5への配設が行われるように構成されている。即ち、前記工具1を前記工具保持孔3に挿入し、前記係止体6を係止溝5に配設することと、前記押圧機構により前記工具1を所定方向に回動せしめることが同時に行えるように構成されている。
【0042】
具体的には、図5,6に図示したように前記工具保持孔3の先端部には基端側に付勢されるスライド操作筒8が被嵌されている。このスライド操作筒8は、該スライド操作筒8の内周面と工具保持孔3の周壁との間に、ワッシャ20と後記の第一押圧部17とで挟持配設されるスプリング19により基端側に付勢される。図中符号21はワッシャ20を支承してスプリング19の脱落を阻止するリングである。尚、スライド操作筒8は、先端側に付勢される構成としても良い。
【0043】
スライド操作筒8は、該スライド操作筒8を前記スプリング19の付勢力に抗して先端側に引動した状態では、前記係止体6及び突没体7が、前記工具保持孔3に挿入される工具1の基部2により押圧された際、工具保持孔3の周壁に没入し、係止体6は第一押圧部17と第二押圧部18との間に、突没体7は第二押圧部18の基端側へ位置するように構成され、且つ、該スライド操作筒8が基端側に付勢された状態では、前記係止体6及び突没体7が、前記工具保持孔3の周壁から突出するように構成されている。
【0044】
具体的には、図4に図示したようにスライド操作筒8の内周面には、前記係止体6の没入を阻止して該係止体6を前記第一テーパ孔15から工具1側に突出せしめる第一押圧部17と、前記突没体7の没入を阻止して該突没体7を前記第二テーパ孔16から工具1側に突出せしめる第二押圧部18とが夫々突設されている。
【0045】
尚、第一押圧部17の先端側面は、前記スプリング19の一側を支承する支承面に設定されている。
【0046】
第一押圧部17及び第二押圧部18は、スライド操作筒8を回転主軸4の基端側に付勢した状態では、前記係止体6及び突没体7が遊嵌される第一テーパ孔15及び第二テーパ孔16の係止体6及び突没体7を工具保持孔3の内方に押圧突出せしめるもので、スライド操作筒8を回転主軸4の先端側に付勢力に抗して引動した状態では前記係止体6及び突没体7は第一テーパ孔15及び第二テーパ孔16内への没入が許容される。
【0047】
従って、工具保持孔3に工具1の基部2を挿入する際、スライド操作筒8を回転主軸4の先端側に、付勢力に抗して引動して工具1の挿入に伴い前記スチールボールを没入させて工具1の基部2を工具保持孔3内に配設した後、スライド操作筒8の引動をやめて基端側に付勢させることで(反対側へ付勢力により復帰動させることで)、スチールボールを内方に突出させて工具1の基部2を前記係止体6に係止せしめ、また、突没体7により工具1の基部2を所定方向に回動せしめることができる。よって、スライド操作筒8の極めて簡単なスライド操作、即ち、一回のスライド動(一回の引動及び該引動に伴う復帰動)により工具保持孔3への工具1の保持(装着)と該工具保持孔3の内面への工具1のねじり押圧の双方を行わしめることができる。
【0048】
前記係止体6としてのスチールボールは、前記工具1の基部2に形成された係止溝5に係止してこの工具1を抜け止めし、前記突没体7としてのスチールボールは、前記工具1を工具保持孔3の内面にねじり押圧する。
【0049】
よって、実施例1においては、従来のように工具1を工具保持孔3に保持せしめる作業を行うと同時に、前記突没体7により工具1の基部2を工具保持孔3の内面にねじり押圧せしめて突没体7と工具保持孔3の内面とで工具1を挟持してこの工具1のガタつきを阻止できることになる。
【0050】
また、工具1を所定方向に回動せしめることで工具1のガタつきを阻止するから、従来のように工具41の軸芯位置Aが工具保持孔42の軸芯位置Bからズレることは可及的に阻止されることになる。
【0051】
特に、実施例1においては、等量突出する一対の突没体7により上述のように断面視六角形状の工具1の基部2を、該基部と略同断面形状の工具保持孔3の内面にねじり押圧せしめるから、断面視六角形状の工具1は、工具保持孔3の対向内面に沿って滑り回動し、この工具保持孔3内において工具1の軸芯位置Oが可及的に工具保持孔3の軸芯位置O’に位置せしめられることになり、工具1と工具保持孔3との軸芯位置は可及的に近接し、従って、作業時に工具1に振れが生じにくくなる。
【0052】
また、実施例1においては、図7に図示したように前記第二テーパ孔16は、該第二テーパ孔16に遊嵌される突没体7が工具1の角部の右側近傍に位置するように設けられている。
【0053】
従って、回転主軸4を右回転(ネジ締め方向に回転)させた際には、突没体7と工具保持孔3の内面とで挟持される工具1の角部が工具保持孔3の内面に強く押圧され、回転主軸4を左回転(ネジ緩め方向に回転)させた際には、前記突没体7と当接する工具1の外周面が突没体7に強く押圧されることになる。
【0054】
尚、実施例1においては、係止体6及び突没体7としてスチールボール(球状体)を採用しているが、ピン体等、他の形状のものを採用しても良い。
【0055】
実施例1は上述のように構成したから、ドライバービット等の工具1を回転主軸4の工具保持孔3に挿入し、該工具1により作業を行う際、押圧機構により工具1を所定方向に回動せしめて工具保持孔3の内面に該工具1をねじり押圧せしめることができる。従って、この工具保持孔3の内面へのねじり押圧により、工具1のガタつきが阻止されるのは勿論、工具1の軸芯位置と工具保持孔3の軸芯位置とが可及的に近接し、工具1の振れも阻止される。よって、工具1により良好に作業を行えることになる。
【0056】
また、スライド操作筒8を先端側に引動して工具1を工具保持孔3に挿入するだけで、工具1の抜け止めとガタつき防止を同時に行うことができ、作業性を損なわない。
【0057】
更に、突没体7として係止体6と同じスチールボールを採用したから、それだけコスト安に製造できることになる。
【0058】
従って、実施例1は、工具の軸芯位置と工具保持孔の軸芯位置とを可及的に近接せしめつつ工具と工具保持孔とのクリアランスに起因するガタつきを防止できる極めて実用性に秀れた回動具となる。
【実施例2】
【0059】
本発明の具体的な実施例2について図8〜16に基づいて説明する。
【0060】
実施例2は、実施例1の押圧機構に替えて、図8,9に図示したような前記工具保持孔3の先端部に、前記工具保持孔3と連通する挿通孔9を形成した回動体10を設け、この回動体10に、前記挿通孔9及び前記工具保持孔3に挿入された工具1を所定方向に回動付勢する回動付勢機構を設けたものである。
【0061】
工具保持孔3の先端部には、基端側に付勢されるスライド操作筒8が被嵌され、前記回動付勢機構は、この工具保持孔3とスライド操作筒8との間に設けられている。
【0062】
具体的には、図16に図示したように、回動体10には回転主軸4に形成された凹溝29と係止する一対の係止爪27,28が設けられており、更に、この回動体10は、一端22aが回転主軸4に設けられた溝部25に係止され、他端22bが回動体10の前記一の係止爪28に設けられた溝部26に係止される略C字状の弾性体22により、所定角度ねじられた(回動付勢された)状態で前記工具保持孔3の先端に設けられている。
【0063】
この回動体10の挿通孔9と回転主軸4の工具保持孔3とは前記六角形の工具1の基部2と嵌合する断面視六角形状に設定されている。
【0064】
回動体10は、前記の通り工具保持孔3に対して所定角度ねじれているため、工具1の基部2を挿通孔9を挿通せしめて工具保持孔3に挿入する際、前記弾性体22が伸長せしめる方向(即ち弾性体22の戻り付勢に逆らう方向)に回動体10を回動させ、挿通孔9を前記工具保持孔3と合致せしめなければならず、従って、工具1の基部2が工具保持孔3に挿入された状態では挿通孔9の内縁により工具1の基部2は回動付勢され、基部2はねじり押圧されることになる。
【0065】
尚、本実施例においては、回動体10の挿通孔9は工具保持孔3に対して10.5°ズレるように設定され(図12参照)、この回動体10により回動付勢される工具1の基部2を工具保持孔3に対して5.3°ズレるように設定されている(図15参照)。
【0066】
従って、実施例1と同様に、工具保持孔3に工具1の基部2を挿入する際、図10に図示したようにスライド操作筒8を回転主軸4の先端側に引動して工具1の挿入に伴い係止体6を没入させて工具1の基部2を工具保持孔3内に配設した後、スライド操作筒8の引動をやめて基端側に付勢させることで、図11に図示したように係止体6を内方に突出せしめて工具1の基部2を前記係止体6に係止せしめ、工具1を工具保持孔3に保持することができる。
【0067】
更に、前記工具1の基部2を図12に図示したような回動体10の挿通孔9に挿通せしめて工具保持孔3に挿入する際、上述したように回動体10は工具1の基部2により、弾性体を伸長せしめる方向に回動せしめられるが(図13参照)、前記工具1の基部2の挿入が完了して工具1から手を離すと、伸長せしめられた弾性体22の戻り付勢により、工具1の基部2は工具保持孔3の内面にねじり押圧されることになる(図14参照)。
【0068】
よって、実施例2は、既存の回動具に簡易な改良を施すだけで、工具1を工具保持孔3に保持せしめる作業を行うと同時に、前記回動体10により工具1を工具保持孔3の内面にねじり押圧せしめて回動体10と工具保持孔3の内面とで工具1を挟持してこの工具1のガタつきを阻止できるものとなる。
【0069】
その余は実施例1と同様である。
【実施例3】
【0070】
本発明の具体的な実施例3について図17〜23に基づいて説明する。
【0071】
実施例3の回動付勢機構は、実施例2の回動付勢機構と異なるもので、工具1の挿入により挿通孔9を回動させるものではない。
【0072】
具体的には、工具保持孔3の先端部には、基端側に付勢されるスライド操作筒8が被嵌され、このスライド操作筒8を付勢力に抗して先端側に引動した状態では回動体10に付勢力は作用せず、よって、前記工具1は所定方向に回動付勢されない。また、前記スライド操作筒8を基端側へ付勢力により復帰動させた状態では前記工具1を所定方向に回動せしめて該工具1を前記工具保持孔3の内面にねじり押圧せしめる。
【0073】
回動体10には、実施例2と同様、図23に図示したように回転主軸4に形成された凹溝29と係止する一対の係止爪27,28が設けられており、更に、この回動体10は、一端22aが回転主軸4に設けられた溝部25に係止され、他端22bが回動体10の前記一の係止爪28に設けられた溝部26に係止される略C字状の弾性体22により、所定角度ねじられた(回動付勢された)状態で前記工具保持孔3の先端に設けられている。
【0074】
実施例3においては、図17〜19に図示したように、前記スライド操作筒8の先端部内面に、先端側程拡径するテーパ開口部23と、該テーパ開口部23に連設する径小ストレート部24とが設けられ、スライド操作筒8が基端側に付勢された状態では、前記弾性体22は外圧を受けないテーパ開口部23に位置し、前記スライド操作筒8を先端側に引動した状態では、弾性体22がスライド操作筒8のテーパ開口部23に沿って基端側の径小ストレート部24に配設されるように構成されている。
【0075】
この径小ストレート部24に配設された弾性体22は、径小ストレート部24の内面に沿って内方に押圧されることで、その湾曲度が減少して回動体10をその分だけ弾性体22の伸長方向に回動付勢し、回動体10の挿通孔9の工具保持孔3に対するズレ角度が小さくなるように構成されている。具体的には実施例3においては、弾性体22を径小ストレート部24に位置せしめた際、工具保持孔3と挿通孔9とが丁度一致するように回動体10を回動付勢するように設定されている。
【0076】
従って、工具1の基部2を工具保持孔3に挿入すべく、図18に図示したようにスライド操作筒8を付勢力に抗して回転主軸4の先端側に引動すると、図20に図示したように前記スライド操作筒8の先端部内面のテーパ開口部23に位置する前記弾性体22が、このテーパ開口部23に沿って基端側の径小ストレート部24に配設され(図21参照)、該径小ストレート部24により内方に押圧せしめられた結果、この弾性体22が回動体10を該弾性体22の伸長方向に回動付勢し、工具保持孔3と挿通孔9とが一致することになる。
【0077】
この一致した挿通孔9と工具保持孔3とに工具1を挿入し、前記スライド操作筒8を復帰動させると、前記弾性体22は径小ストレート部24からテーパ開口部23に移動し、工具保持孔3に対して所定角度ズレた状態に保持されることになり、回動体10が工具1の基部2を回動付勢し前記工具1の基部2は工具保持孔3の内面にねじり押圧せしめられることになる。
【0078】
即ち、実施例2においては、前記工具1を挿入する際に回動体10の挿通孔9と工具保持孔3とが一致せず、前記工具1の基部2を挿通孔9に挿通せしめる際、回動体10を少しねじって押し込み、該工具1の基部2を工具保持孔3に挿通せしめる必要があるが、実施例3においては、スライド操作筒8を引動して工具保持孔3と挿通孔9とを一致せしめた状態でスムーズに工具保持孔3まで工具1を挿入し(回動体10には付勢力は作用していない)、スライド操作筒8を復帰動させると、工具1の基部2が付勢力によりねじり押圧されることになり、それだけ作業性に秀れたものとなる。
【0079】
その余は実施例2と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】従来例の概略説明断面図である。
【図2】従来例の説明断面図である。
【図3】実施例1の概略説明断面図である。
【図4】実施例1の概略説明断面図である。
【図5】実施例1の要部の概略説明斜視図である。
【図6】実施例1の要部の概略説明分解斜視図である。
【図7】実施例1の概略説明断面図である。
【図8】実施例2の要部の概略説明斜視図である。
【図9】実施例2の要部の概略説明分解斜視図である。
【図10】実施例2の概略説明断面図(図13のA−A断面図)である。
【図11】実施例2の概略説明断面図(図14のB−B断面図)である。
【図12】実施例2の概略説明正面図である。
【図13】実施例2の概略説明正面図である。
【図14】実施例2の概略説明正面図である。
【図15】実施例2の概略説明断面図(図11のC−C断面図)である。
【図16】実施例2の要部の拡大概略説明断面図(図13のD−D断面図)である。
【図17】実施例3の要部の概略説明分解斜視図である。
【図18】実施例3の概略説明断面図(図21のA’−A’断面図)である。
【図19】実施例3の概略説明断面図(図22のB’−B’断面図)である。
【図20】実施例3の概略説明正面図である。
【図21】実施例3の概略説明正面図である。
【図22】実施例3の概略説明正面図である。
【図23】実施例3の要部の拡大概略説明断面図(図21のD’−D’断面図)である。
【符号の説明】
【0081】
1 工具
2 基部
3 工具保持孔
4 回転主軸
5 係止溝
6 係止体
7 突没体
8 スライド操作筒
9 挿通孔
10 回動体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転主軸を有し、この回転主軸には、ドライバービットやドリルビット等の工具が挿入され該工具の断面視多角形状の基部と略合致する断面形状の工具保持孔が設けられ、この工具保持孔に挿入される前記工具を前記回転主軸を回転させることで回転させて作業を行う回動具であって、前記工具を前記工具保持孔に挿入した状態において該工具を所定方向に回動せしめ該工具を前記工具保持孔の内面にねじり押圧せしめる押圧機構が設けられていることを特徴とする回動具。
【請求項2】
請求項1記載の回動具において、前記工具保持孔にはスライド操作筒が設けられ、このスライド操作筒は、該スライド操作筒をスライド操作させることで前記工具保持孔への前記工具の装着と該工具保持孔の内面へ該工具をねじり押圧せしめる押圧機構の作動の双方を行わしめるものであることを特徴とする回動具。
【請求項3】
請求項2記載の回動具において、前記スライド操作筒のスライド操作は、該スライド操作筒の一回のスライド動であることを特徴とする回動具。
【請求項4】
請求項1記載の回動具において、前記工具保持孔にはスライド操作筒が設けられ、このスライド操作筒は、該スライド操作筒をスライド操作し、前記工具を前記工具保持孔に挿入し、該スライド操作筒を復帰動せしめると、該工具は該工具保持孔に保持されると共に、前記押圧機構が作動して該工具は所定方向に回動せしめられ、該工具の保持と該工具の該工具保持孔の内面へのねじり押圧が達成せしめられるように構成されていることを特徴とする回動具。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1項に記載の回動具において、前記工具の基部には、係止溝が設けられ、前記工具保持孔には前記係止溝に係止する係止体が設けられていることを特徴とする回動具。
【請求項6】
請求項5記載の回動具において、前記係止体が係止溝に配設されると共に、前記押圧機構により前記工具が所定方向に回動せしめられるように構成されていることを特徴とする回動具。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか1項に記載の回動具において、前記押圧機構は、前記工具の着脱操作を行う際、前記工具を前記工具保持孔の内面にねじり押圧せしめるか若しくは該ねじり押圧を解除するように構成されていることを特徴とする回動具。
【請求項8】
請求項1〜7いずれか1項に記載の回動具において、前記工具保持孔の先端部には、基端側若しくは先端側に付勢されるスライド操作筒が被嵌され、前記押圧機構は、該スライド操作筒を先端側若しくは基端側に、付勢力に抗して引動することで前記工具の前記工具保持孔の内面へのねじり押圧が解除され、前記スライド操作筒を反対側へ付勢力により復帰動させることで前記工具を前記工具保持孔の内面にねじり押圧せしめるように構成されていることを特徴とする回動具。
【請求項9】
請求項8記載の回動具において、前記工具が前記工具保持孔の内面へねじり押圧せしめられた際、前記係止体の前記係止溝への配設が行われるように構成されていることを特徴とする回動具。
【請求項10】
請求項9記載の回動具において、前記工具保持孔の周壁には、該周壁から突没する突没体が設けられ、前記スライド操作筒を先端側若しくは基端側に、付勢力に抗して引動した状態では、前記突没体が、前記工具保持孔に挿入される工具の基部により押圧され、工具保持孔の周壁に没入し得るように構成され、且つ、前記スライド操作筒が反対側へ付勢力により復帰動した状態では、前記突没体が、前記工具保持孔の周壁から突出して前記工具の基部を前記工具保持孔の内面にねじり押圧するように構成されていることを特徴とする回動具。
【請求項11】
請求項10記載の回動具において、前記突没体は前記工具保持孔の周壁対向位置に設けられているものであることを特徴とする回動具。
【請求項12】
請求項10,11いずれか1項に記載の回動具において、前記突没体は球状体であることを特徴とする回動具。
【請求項13】
請求項1記載の回動具において、前記工具保持孔の先端部には、前記工具保持孔と連通する挿通孔を形成した回動体が設けられ、この回動体には、この挿通孔及び前記工具保持孔に挿入された工具を所定方向に回動せしめて該工具を前記工具保持孔の内面にねじり押圧せしめる回動付勢機構が設けられていることを特徴とする回動具。
【請求項14】
請求項13記載の回動具において、前記挿通孔は、前記工具保持孔に対して正面視において所定角度ズレた状態で設けられており、この挿通孔を工具保持孔に合致させるべく回動させた場合、該挿通孔は回動付勢力により復帰動するように構成されていることを特徴とする回動具。
【請求項15】
請求項13記載の回動具において、前記工具保持孔の先端部には、基端側若しくは先端側に付勢されるスライド操作筒が被嵌され、前記回動付勢機構は、前記スライド操作筒を先端側若しくは基端側に、付勢力に抗して引動した状態では前記工具を所定方向に回動付勢せず、且つ、前記スライド操作筒が反対側へ付勢力により復帰動した状態では前記工具を所定方向に回動せしめて該工具を前記工具保持孔の内面にねじり押圧せしめるように構成されていることを特徴とする回動具。
【請求項16】
請求項13〜15いずれか1項に記載の回動具において、前記工具の基部には、係止溝が設けられ、前記工具保持孔には前記係止溝に係止する係止体が設けられていることを特徴とする回動具。
【請求項17】
請求項16記載の回動具において、前記係止体が係止溝に配設されると共に、前記回動付勢機構により前記工具が所定方向に回動せしめられるように構成されていることを特徴とする回動具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2007−7843(P2007−7843A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−110095(P2006−110095)
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【出願人】(000145334)ユキワ精工株式会社 (11)
【Fターム(参考)】