説明

回路基板における余剰半田の除去装置

【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は、トランジスタやIC等の電子部品を取付けた回路基板において、当該回路基板における端子部に付着した余剰半田を除去するための装置に関するものである。
〔従来の技術〕
一般に、ハイブリッド集積回路Aは、第4図に示すように、一枚の回路基板bの表面又は表裏両面に、集積回路c、トランジスタd、抵抗器e及びコンデンサーf等の複数個の電子部品を取付ける一方、前記回路基板bの一端縁又は両端縁に、前記各電子部品に導通する複数の端子gを設けたものに構成している。
そして、このハイブリッド集積回路Aは、大まかに云って、第5図に示すように、一つのハイブリッド集積回路Aにおける回路基板bの複数枚を一体的に連ねた素材回路基板Bを用意し、この素材回路基板Bにおける各回路基板bの箇所に、各種の電子部品を半田付けにて取付けたのち、素材回路基板Bを、各ハイブリッド集積回路Aごとに切断することにより製作されるのであるが、素材回路基板Bに対する各種の電子部品の半田付けに際しては、前記素材回路基板Bの表面に予め形成されている各端子gに、半田が盛り上がった状態に余剰に付着することになる。
そこで、従来は、素材回路基板Bに対する各種の電子部品の半田付けに際して、各端子gに半田が余剰に付着することを回避するために、第6図に示すように、半田付け工程の前において、各端子gの箇所に、剥離自在なマスキングテープhを貼着するようにしている。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかし、このようにマスキングテープhを貼着する方法は、当該マスキングテープhの貼着に多大の手数と、時間とが掛かるので、生産性が低くてコストが可成りアップするのであり、しかも、マスキングテープhの貼着に際してずれが発生し易く、また、半田付け工程中においてマスキングテープhが剥離する場合があるから、不良品の発生率が高いのであった。
本発明は、各種の電子部品の半田付け工程に際して、各端子に余剰に付着した半田を、各端子から除去するための装置を提供することにより、コスト及び不良品発生率の低減を図るものである。
〔課題を解決するための手段〕
この目的を達成するため本発明は、回路基板の表面に形成された端子列の左右両側に、前記端子列の列方向に延びる左右一対のカバー体を、当該両カバー体の先端が前記回路基板の表面に密接するように配設し、該両カバー体の間に、前記端子列に向って熱風を噴出する熱風ノズルを、端子列の列方向に沿って移動するように設ける構成にした。
〔発明の作用・効果〕
このように、端子列に対して、熱風ノズルから熱風を吹き付けると、各端子に盛り上がり状に付着している余剰の半田は、熱風によって溶融し吹き飛ばされるのであり、この場合、前記端子列の左右両側に、カバー体を、当該カバー体の先端が回路基板の表面に密接するように配設したことにより、熱風ノズルから噴出する熱風を、端子に対して集中できるから、余剰半田の吹き飛ばし除去が瞬間的に極く短い時間にてできると共に、吹き飛ばしたあとの半田が、両カバー体の間より外側の部位に飛散することを防止できるのである。
このように本発明によると、各端子に付着した余剰の半田を、各端子より除去することができ、前記従来のように各種電子部品の半田付け工程の前において各端子にマスキングテープを貼着することを省略できるから、ハイブリッド集積回路の製造工程が簡単になり、コストを低減できるのである。
しかも、本発明によると、各端子から吹き飛ばした半田が、回路基板における各種の電子部品とか、回路基板におけるプリント回路等に付着することを防止できるから、不良品の発生率が低いのである。
その上、各端子に付着する余剰の半田を、各端子より吹き飛ばして除去したことにより、各端子の表面は、半田によって薄くメッキされた状態になるから、各端子の表面における酸化を防止できると共に、各端子に対する電気的な接続性能を向上できるのである。
〔実施例〕
以下、本発明の実施例を図面(第1図〜第3図)について説明すると、図において符号1,2は、素材回路基板Bの上方に、当該素材回路基板Bの上面における端子gの列方向に延びるように配設した上下昇降式のカバー体を示し、該両カバー体1,2は、これを下降動したとき、当該両カバー体1,2の先端が素材回路基板Bの上面に密接するように構成されている。
前記素材回路基板Bの下方には、前記両カバー体1,2と平行に延びるように配設した上下昇降式の受け体3を配設し、前記両カバー体1,2を下降したとき同時に、この受け体3を上昇することにより、受け体3と両カバー体1,2との間に、前記素材回路基板Bを挟持するように構成する。
また、符号4は、約800℃程度に加熱した熱風を噴出するための熱風ノズルを示し、該熱風ノズル4を、前記両カバー体1,2の間に部位に、当該熱風ノズル4から噴出する熱風を前記素材回路基板Bに対して適宜角度θに傾斜して吹き付けるように配設し、且つ、この熱風ノズル4を、図示しない移動機構により、両カバー体1,2の長手方向に沿って、第2図に矢印Xでしめすように後退動したのち、矢印Yで示すように前進動するように構成する。
前記素材回路基板Bを、その端子gの列が前記両カバー体1,2の間に位置するように移動すると、両カバー体1,2を下降して、その先端を素材回路基板Bの上面に密接する(このとき、受け体3は上昇して、該受け体3と両カバー体1,2との間で素材回路基板Bを挟持する)。
次いで、熱風ノズル4が、熱風を素材回路基板Bに向って噴出した状態で、両カバー体1,2の間を矢印Xの方向に後退移動することにより、各端子gを余熱し、次いで矢印Yの方向に前進移動するとき、両カバー体1,2の間における各端子gに付着している余剰の半田kを、熱風により溶かしたのち、各端子gから吹き飛ばし除去するのであり、ここに吹き飛ばされた半田は、両カバー体1,2の間をその長手方向に沿って飛散・排出される。
なお、素材回路基板Bの下面に対する受け体3を、図示のように溝型に構成することにより、素材回路基板Bから当該受け体3への放熱を少なくすることができるから、端子gに対する余剰半田kの吹き飛ばし除去を、より迅速化することができると共に、受け体3を溝形にすることによって、素材回路基板Bの裏面における端子列を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の実施例を示す斜視図、第2図は第1図のII−II視断面図、第3図は第2図のIII−III視断面図、第4図はハイブリッド集積回路の斜視図、第5図は複数のハイブリッド集積回路を製造する場合の斜視図、第6図は従来の方法を示す斜視図である。
A……ハイブリッド集積回路、b……回路基板、c,d,e,f……電子部品、g……端子、B……素材回路基板、1,2……カバー体、3……受け体、4……熱風ノズル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】回路基板の表面に形成された端子列の左右両側に、前記端子列の列方向に延びる左右一対のカバー体を、当該両カバー体の先端が前記回路基板の表面に密接するように配設し、該両カバー体の間に、前記端子列に向って熱風を噴出する熱風ノズルを、端子列の列方向に沿って移動するように設けたことを特徴とする回路基板における余剰半田の除去装置。

【第1図】
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【第2図】
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【第3図】
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【第4図】
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【第5図】
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【第6図】
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【特許番号】第2608111号
【登録日】平成9年(1997)2月13日
【発行日】平成9年(1997)5月7日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭63−192477
【出願日】昭和63年(1988)8月1日
【公開番号】特開平2−42795
【公開日】平成2年(1990)2月13日
【出願人】(999999999)ローム株式会社
【参考文献】
【文献】特開 昭62−502111(JP,A)
【文献】特開 昭61−255762(JP,A)
【文献】特開 昭61−111764(JP,A)
【文献】特開 昭59−23590(JP,A)
【文献】特開 昭61−232650(JP,A)
【文献】実開 昭62−77886(JP,U)