説明

回路基板冷却装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、一般に電気構成要素の収納と取付けの分野に関し、より詳しくは、効率的な冷却と相互接続のための密にパックされた集積回路基板の格納に関する。
【0002】
【従来技術】集積回路技術によって、回路の製造者は、ますます多数の電気装置をより小さなシリコン・チップに配置出来るようになっている。同様に、これらのチップは、ますます高密度の回路基板の上にパッケージされて取り付けられる。より小さな面積の回路基板の中により多数の装置を実装することは、回路性能の著しい向上につながる。これはまた、回路がこのような高性能で動作できるように回路を十分に低い温度に維持することに関連する、重要な問題にもつながる。典型的には、回路や回路基板は強制空気によって冷却される。しかしながら、回路基板から熱を効率的に除去するには、回路基板全体において均一な高い熱除去率が必要である。強制空気システムは、回路の密度が高くなると、これらの要件を満足させるには困難がある。はっきりいえば、基板の間に十分な空気の流れができるように、基板の間に比較的大きな空間が必要となる。さらにまた、空気を基板の間に通して基板の表面を冷却できるように、基板の両端は開いたまま(すなわち、相互接続などの障害物がないよう)にしておかなければならない。このことは、前記の両端が電気的接続のためには利用できないので、基板の間の相互接続性を低下させることになる。
【0003】高密度集積回路を冷却するための従来技術による試みは、まず2つの点に絞られた。第1点は、回路の動作中に集積回路を冷却剤の中に浸すことである。この冷却法の長所は、冷却剤の熱伝達係数が空気のそれより数桁高いことである。冷却剤は、大量の熱を除去することができ、したがって回路の温度を適切な範囲に容易に維持することができる。この冷却法に係わる問題点は、冷却剤自体が集積回路の電気的性能と信頼性に影響し得ることである。冷却剤中への浸漬において、回路接続部及び回路が冷却剤中への浸漬のみならず、冷却剤の腐蝕作用への耐性も必要である。さらに、1つの容器での浸漬では、システムを完全に遮断して複数基板システムの単一基板を作用させる必要がある。これは、電気システムを冷却して使用するには高価で複雑な方法である。
【0004】従来技術の第2点では、集積回路を流体の流れが入った熱伝導性金属体の近くに置くことに関する。この流体流れは熱を除去するが、集積回路を冷却剤の中に浸漬するものではない。このシステムの長所は、冷却剤中への集積回路浸漬の信頼性の問題を無くすることである。この冷却法による問題は、回路からの熱除去が浸漬技法ほど効率的でないことである。この冷却効率不足の原因は、前記の金属体が集積回路と、集積回路から急速に熱を奪い取るに十分な面積で接触していないことである。冷却表面積の不足は、基板全体に吸熱器を製造する複雑性に由来する。すなわち、基板の全表面形状に対して流体チャネルを安価に製造することがあまりに困難なため、回路モジュールの頂部のみが冷却される。流体チャネルはまた、所定数の電子モジュールを実装する流体チャネル/基板組立品の数を最少にするために、一般的に大きな平面の回路基板の上で使用されるだけである。この結果、信号が、別の基板との間の短い距離よりずっと長い単一基板上の距離を通じて伝送されるので、信号伝送時間が長くなる。相互接続された複数の基板の三次元配列は、二次元の平面配線と比較して、信号時間を短くする。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、電子装置のパッケージ密度を向上させることである。
【0006】本発明のさらに1つの目的は、密にパックされた回路基板を効率的に冷却することによって、パッケージ密度を向上させることである。
【0007】本発明の別の1つの目的は、密にパックされた回路基板を均一に冷却することである。
【0008】本発明のなお1つの目的は、冷却剤が回路基板構成要素に物理的に接触することなく、密にパックされた回路基板を冷却することである。
【0009】本発明のなお別の目的は、回路基板の間の相互接続性を向上させることである。
【0010】本発明のなおさらに1つの目的は、密にパックされた回路基板の上の回路間の信号遅延時間を短縮することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、回路基板構成要素を冷却流体にさらすことなく、回路基板から熱を除去するための、より大きな表面接触面積を提供する。これは、隣接する回路基板の間の熱伝導可撓薄膜を圧縮することによって達成される。この可撓薄膜は冷却流体を含み、この流体は可撓薄膜をポンプによって送入、送出される。薄膜は、回路基板構成要素を冷却流体から隔離し、個別の回路基板の表面に適合するに十分な可撓性を持つ。薄膜の可撓性によって、構成要素は冷却剤が回路基板と直接接触しているかのように、じゃま板として作用できるので、薄膜を通過する冷却流体は回路構成要素から熱を均一に除去する。薄膜はまた、熱伝導性があるので、回路基板からの熱を流体に効率的に伝える。薄膜材料の熱伝導率が高いほど、回路基板に必要な冷却剤の流量は少ない。詳しくは、薄膜は、熱伝導率が高く、冷却剤の浸透性に対して高い抵抗性を持つ材料で形成されている。
【0012】個々の薄膜は、隣接する回路基板の間に挟まれ格納されており、流体圧と回路基板間隔の組合せが薄膜の回路基板表面への適合を維持している。ハウジング内の個々の回路基板は、エッジ・コネクタ(すなわち辺コネクタ)と4つの側面全てで電気的に接続され、またハウジングから個別に取外し可能である。冷却薄膜への流体流は、薄膜の縁部分を通じて、また回路基板の4隅で回路基板の間に維持されている。回路基板間のこの冷却薄膜積層物は、各々がそれぞれ電気的接続と冷却連結を有し、高い熱除去能力があるために、回路基板上の回路構成要素の効率的なパッケージを可能にする。さらに、流体流が冷却薄膜の隅に固定されるので、回路基板の4つのエッジ(すなわち辺)全ては、他の回路基板との相互接続に利用できる。この追加の相互接続適応性は、本発明によるパッケージ密度をさらに高める。
【0013】
【実施例】図1は、本発明による好ましい実施例の断面図を示す。頂部母板10はエッジ・コネクタ27、29、31を含み、これらはそれぞれカード15、20、25の頂部エッジに結合している。板15、20、25は、片側または両側に取り付けられた集積回路を有する。冷却薄膜35は、基板15、20の間で圧縮される。冷却薄膜40は、基板20、25の間で圧縮される。基板15、20、25は側エッジと底エッジを有し、これらのエッジはそれぞれ側母板8と6(図示せず)に結合し、そして底母板4(図示せず)に結合している。母板4、6、8は、母板10と同じ方法で、板15、20、25と結合している。
【0014】図2は、本発明による好ましい実施例の1部分の側面図を示す。母板4、6、8、10は、複数のエッジ・コネクタ27を通じて集積回路15を保持する。エッジ・コネクタ27、29、31は、一般的には(しかし必ずではない)板15、20、25の両側を母板4、6、8、10に結合させる。これらの母板は、サイド・レール部材45を通じて母板のエッジで互いに機械的に結合されている。冷却薄膜35は、回路基板15に対抗して設けられている。冷却薄膜35には、4つの流体管50、52、54、56がある。各管はサイド・レール部材45の中の開口47にかん合している。いったんハウジングの外側が母板4、6、8、10によって形成されると、前記の管は従来の冷却剤供給ポンプ・システム(図示せず)に連結される。ポンプ・システムは一般的には、必要ではないが、再循環を行っている。流体管50、52は冷却流体を冷却薄膜35の中にポンプ給送する。流体管54、56は冷却流体を冷却薄膜35からポンプ送出する。冷却流体は、空気、水、または油やクロロフルオロカーボンなどの誘電液を含めて、種々の流体とすることができる。流体は冷却薄膜35を通じてポンプ給送され、薄膜は回路板15上の電気的構成要素と接触し、こうして、構成要素から生じる熱は流体に伝達されて、回路基板から除去される。
【0015】図1及び図2に示す電子回路板パッキングの形式は、回路基板から熱を除去するには極めて効率的である。このパッキング形式によって、基板の間の空間は非常に小さくすることができる。したがって、電子回路の容積的パッキング密度は、空冷システムと比較して高い。この高効率の理由は、回路基板間に直接的に閉じ込められた強制流体流にある。回路基板が互いに接近していても、入口ノズル50、52、及び出口ノズル54、56により、回路基板間の活動的な流体流は維持される。従来型のシステムでは、回路板どうしの密な接近は、冷却流体(水、空気などのいずれか)の直接の流れを阻害し、従ってシステムの熱除去能力の大きな制限となる。
【0016】本発明のパッケージ構造は、ハウジングの隅を通過する冷却流体流によって、回路基板が回路相互接続用の4つのエッジをすべて利用することができるので、高い容量密度を有する。したがって、電子回路を高度に相互接続された三次元構成でパッケージすることができる。この三次元相互接続構造は、回路用の適切な温度範囲を維持するために使用される平面パッケージによって起こる信号伝送遅延を減少させる。信号伝送遅延の減少は、これらの信号遅延の駆動に要する動力を減少させ、したがって回路冷却能力をさらに向上させる。
【0017】本発明では、冷却薄膜は、回路基板表面に対して圧力を与える。この圧力は、薄膜表面を回路基板表面に適合させるのみならず、回路基板の間の流体の流速を促進するものである。出口ノズル流に対して入口ノズル流を増加させると、圧力と流体流速が増加し、したがって熱除去率が増加する。制御された流体流速は、従来技術に較べて、本発明の熱除去効率を著しく向上させる。さらに冷却剤と適合薄膜は、個々の電気的構成要素と隣接する、または対面する構成要素から発する磁界から隔離するためのシールドを提供する。
【0018】図2は本発明の1つの実施例を示す。流体流は頂部から底部に向かい、2つの頂部入口ノズルと2つの底部出口ノズルの計4つのノズルから生ずる。これらのノズルの数、配置、及び大きさを、流速つまり循環速度を増加させるために変えることができる。たとえば、1つの入口ノズルと出口ノズルを冷却薄膜の頂部エッジの上に置き、1つの入口ノズルと出口ノズルを薄膜の底部エッジの上に置くことができる。ノズル配置の他の変形としては、入口を薄膜の側部に置き、出口を薄膜の頂部エッジと底部エッジに置くことである。さらに、ノズルの大きさは流体流を増減するために変化させることもできる。しかしながらノズルの形状は、ノズルが基板の間の空間を最小にするように、加圧状態の薄膜の幅よりも広くなく、回路基板間の空間幅より小さく、流体流を維持するように最大の断面積を有する、というものでなければならない。図2に示すノズルは、この基準を満たすように長円形であり、図1に示すように 5.08 mmの基板間ピッチを容易にする。
【0019】冷却薄膜35は、厚さ 0.0508 mm のポリエステルを基材とするポリウレタン膜で形成されている。薄膜材料の選定は、材料関連の要素を考慮したシステムに対する相対的重要性に依存する。ポリウレタン膜は高価ではなく、容易に加熱封止でき、非常に順応性があり、また強度が高い。ポリウレタン材料より高い熱伝達を要求するシステムでさえも、金属とプラスチックの積層物を薄膜材料として容易に採用できる。積層物は、一連のポリウレタン膜の間に一連の金属膜をはさみ込んだものである。この積層物は比較的高い熱伝導率を有するが、順応性は低い。薄膜材料として有用な他の材料は、パリレン膜、フルオロハロカーボン、及びプラスチック強化腐食金属フォイルである。薄膜材料の選択はまた、冷却剤材料の選択によっても影響される。水はポリエステルを基材とするポリウレタンとは反応しないので、薄膜材料と共存できる。空気を用いることもできる。これとは逆に、フルオロカーボン、シリコン油、または液体窒素などの他の利用可能な冷却流体は、薄膜材料と反応することがあり、冷却流体と薄膜材料のいずれもが劣化し、したがってシステムの冷却効率を減ずる。冷却薄膜35はまた、アルミニウム、銅、またはステンレス鋼などの熱伝導率の高い材料のメタル・ウール・タイプの充填物を有することもある。この材料の薄膜内壁に対する自然のばね力が、薄膜壁の熱伝導率を高めることになる。このような熱伝導率の向上は、ポリマー・タイプまたは金属タイプの薄膜材料のいずれにも有用である。
【0020】集積回路基板15、20、25は、それぞれエッジ・コネクタ27、29、31を介して、母板10の頂部エッジに連結されている。エッジ・コネクタは、当技術分野では一般であるエラストマ・タイプの高密度エッジ・コネクタである。これらのコネクタは物理的に、回路基板の間の空間をせまくすることができる。コネクタ27は母板10に取り付けられており、母板10の上に形成された回路パターンをコネクタ29または31などの他のコネクタに相互接続する。同様に、母板4、6、8も、エッジ・コネクタ27、29、31を互いに他のエッジ・コネクタ及び回路基板と接続する。比較的低効率の空冷には基板の間の空間は必要としないので、パッケージの物理的寸法は小さくなる。基板の間の空間への、及びその空間からの空気流を供給するためには基板のエッジは使用されないので、相互接続性は増加する。したがって、基板は2つではなく4つのエッジ全てに接続部を有する。相互接続性の増加は、パッケージの寸法もさらに小さくする。典型的には、離間距離は図1R>1に示すように、5.08 mm の回路基板ピッチまで減少することができ、各基板は高さ 1.524 mm の電気的構成要素を有する。
【0021】回路基板と母板は、構造的に4つのサイド・レール45及び2つのエンド・プレート60によって接続され、図3に示すパッケージ・フレーム100を形成する。サイド・レール45は、2つのエンド・プレート60への取付けによって三次元構造を形成する。反対側に面するエンド・プレート60は、サイド・レール45によって接合されたそれぞれの隅を有する。各サイド・レール45は2つの母板10のエッジと結合するので、4つのサイド・レール45によってエッジに接合された4つの母板10は1つの容積を囲む。サイド・レール45は90度の角度の断面を有し、押出し成形されたアルミニウムなどで作られることがある。各サイド・レールは複数の長さ方向のセクションで形成され、各セクションは、その2つの隣接セクションにねじまたは他の方法で着脱可能に接合されている。これは図4に示されており、ここではセクションi−1、i、i+1が端どうしで接合され、サイド・レール45を形成する。この実施例はセクション当り1つの基板を有するが、セクション当りもっと多くの基板を有することもできる。各セクション間の各接続はまた、1つのスロットを形成して、基板の隅で単一基板を構造的に保持する。スロットは適切に個々の基板を離間させ、エッジ・コネクタの構造サポートの先に、基板のための追加の構造サポートを提供する。サイド・レール45の各セクションは、薄膜からの冷却剤管のための開口47を有する。セクション当り2つ以上の基板を使用する場合には、各基板の間に冷却薄膜を維持するために、冷却剤管のためにより多くのスロットを準備しなければならない。基板を外すには、サイド・レール45を基板用のセクションで取り外す。各基板に対する冷却は個々の薄膜によって維持されるので、冷却システムの全体が前記の動作によって影響されることはない。
【0022】
【発明の効果】本発明は、密にパックされた回路基板を効率的に冷却し、パッケージ密度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による好ましい実施例の断面図である。
【図2】本発明による好ましい実施例の側面図である。
【図3】本発明のパッケージ・フレーム100を示す図である。
【図4】本発明のサイド・レール45を示す図である。
【符号の説明】
4 母板
6 母板
8 母板
10 母板
15 回路基板
20 回路基板
25 回路基板
27 エッジ・コネクタ
29 エッジ・コネクタ
31 エッジ・コネクタ
35 冷却薄膜
45 サイド・レール
50 流体管の入口ノズル
52 流体管の入口ノズル
54 流体管の出口ノズル
56 流体管の出口ノズル
60 エンド・プレート
100 パッケージ・フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】各々が少なくとも3つの辺および3つの隅を持ち、隣接する相互間に一定の空間を形成するように1つのフレームに取り付けられた複数の回路基板と、前記回路基板の間の前記空間に挿入された、前記複数の回路基板の表面形状と前記回路基板間空間とに整合できる単一表面、および冷却剤流体を循環させるための少なくとも1つの入口ノズルおよび1つの出口ノズルを有する複数の冷却薄膜と、前記複数の回路基板の各々の少なくとも1つの辺を接続するための接続部を有する複数の母板と、前記複数の回路基板に対し直角の位置関係をなすように前記複数の母板および前記複数回路基板を支える、前記フレームに備えられた複数のサイド・レールと、 を備え、前記の冷却剤流体は、前記複数の冷却薄膜内を循環する際、前記複数の冷却薄膜の各々を加圧して、この加圧が前記回路基板と冷却薄膜の前記表面との接触面積を増加するようにした回路基板冷却装置。
【請求項2】前記冷却薄膜の表面が、ポリウレタン、フルオロハロカーボン、および金属およびプラスチックの積層物からなる群から選択される請求項1記載の回路基板冷却装置。
【請求項3】前記冷却剤流体が、空気、水、フルオロカーボン、シリコン油、液体窒素からなる群から選択される請求項1記載の回路基板冷却装置。
【請求項4】前記複数の冷却薄膜の少なくとも1つが、前記冷却薄膜の熱伝導率を向上させるためのメタル・ウール充填物を含む請求項1記載の回路基板冷却装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【特許番号】第2514281号
【登録日】平成8年(1996)4月30日
【発行日】平成8年(1996)7月10日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−189606
【出願日】平成3年(1991)7月4日
【公開番号】特開平4−233798
【公開日】平成4年(1992)8月21日
【前置審査】 前置審査
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレイション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MASCHINES CORPORATION
【参考文献】
【文献】特開昭57−178348(JP,A)
【文献】特開昭57−211257(JP,A)
【文献】実開昭57−17198(JP,U)
【文献】実開昭61−53990(JP,U)
【文献】実開昭53−164654(JP,U)