説明

回路基板

【目的】 電子装置における電磁波雑音の遮蔽を、少ない工数および低いコストで実現する。
【構成】 信号配線パターン2が配設される回路基板本体10のハンダ面は、その略全面にわたって銅鍍金フィルム5で覆われている。プリント回路基板10の部品面には、その略全面にわたって電源配線パターン3が配設されている。銅鍍金フィルム5はポリイミド薄膜に銅鍍金層を重ねた構造の薄膜で、銅鍍金層は電源配線パターン3と電気的に接続されている。すなわち、プリント回路基板10は、回路素子4の入出力信号を伝達する信号配線パターン2が、電源電位を保持する銅鍍金フィルム5と電源配線パターン3とで挟まれた構造を有する。
【効果】 信号配線パターンが伝達する電気信号によって発生する電磁波雑音が、これを挟む導電体によって効果的に遮蔽される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は電子装置を構成する回路基板に関し、特に電磁雑音の輻射を抑制するための改良に関する。
【0002】
【従来の技術】電子装置の一例であるゲーム装置において、装置の動作を規定するゲームソフトウェアは、通常マスクROM等に書き込まれ、これがゲームカートリッジに組み込まれた形で供給される。このゲームカートリッジが、需要者によってゲーム装置本体に接続されることにより、ゲームソフトウェアに基づいた所定のゲーム機能が発揮される。最近、ゲーム機能の高度化が進むに伴い、高度なゲーム機能を引き出すための高速演算、特殊なデータ処理等を実行するために、マイクロプロセッサの1種であるコプロセッサ、あるいはDSPが、マスクROM、SRAMなどと共に、ゲームカートリッジ内に設けられるようになってきた。この場合、ゲーム装置本体側に組み込まれたマイクロプロセッサは、専らゲームソフトウェアの入出力制御などを担当する。ゲームカートリッジ内の回路基板にコプロセッサ等が実装されるために、これらの回路において発生し、ゲームカートリッジの外部へ輻射される電磁波雑音が、周辺に位置する他の電子装置に誤動作等を引き起こす、いわゆる電磁波雑音障害が問題となってきた。
【0003】この電磁波障害の原因となる電磁波雑音の輻射は、ゲームカートリッジのみならず、例えばICカード、電子手帳、ノート型パソコンなどのあらゆる電子装置に共通した問題である。従来の電子装置においては、電磁波雑音の輻射を抑えるために、IC等の電子部品が実装された回路基板を内部に保持する匡体の内側表面に、所定の形に加工された1 〜5mm の厚さのアルミ板を取り付けた構成が採用されていた。導電性を有するアルミ板は、回路基板に実装された電子部品および回路基板に配設された配線パターンなどから発生する電磁波雑音を遮蔽し、電磁波雑音が匡体の外部へ漏洩するのを抑制する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の電子装置は上記のように構成されていたので、電磁波雑音の遮蔽を行うためのアルミ板を匡体に取り付ける際の加工に工数を要し、それに伴ってコストが高くなり、商品価格が高価になるという問題点があった。加えて、アルミ板を付加することにより電子装置の重量が増すために、軽量化が要求される電子装置には特に不向きであるという問題点があった。更に、匡体の内側表面の全面をアルミ板で覆い尽くすことは必ずしも容易ではなく、このため電磁波雑音の遮蔽が必ずしも十分に行われないという問題点があった。
【0005】この発明は、従来の電子装置における上記の問題点を解消するためになされたもので、電子装置における電磁波雑音の遮蔽を、少ない工数および低いコストで実現すると共に、電子装置の軽量化への要求を損なわず、かつ十分な遮蔽効果が得られる電子装置用の回路基板を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】この発明に係る回路基板は、(a)実質的に絶縁体から成り、実質的に板形状の回路基板本体と、(b)実質的に導電体から成り、前記回路基板本体に配設された配線パターンと、を備え、当該配線パターンが、(b−1)安定電位を担う安定配線パターンと、(b−2)前記回路基板本体の主面上に配設され、電気信号を伝達する信号配線パターンと、を備え、(c)合成樹脂層と当該合成樹脂層上に形成された銅層とを有する薄膜状のフィルム体であって、前記信号配線パターンを覆うように前記主面上に設置されるとともに、前記銅層が前記安定配線パターンに電気的に接続されたフィルム体、を更に備え、前記回路基板本体の2つの主面が略全面にわたって、前記フィルム体と前記安定配線パターンの少なくとも一方で覆われている回路基板である。
【0007】
【作用】この発明の回路基板では、回路基板本体の主面上に配設された信号配線パターンがフィルム体で覆われており、かつフィルム体を構成する銅層は、同じく回路基板本体に配設された安定配線パターンに電気的に接続されている。回路基板本体の主面は略全面にわたって、少なくともこのフィルム体と安定配線パターンのいずれかによって覆われている。すなわち、回路基板本体は、その主面の略全領域が安定電位を保持する導電体で覆われている。そして、電気信号を伝達する信号配線パターンは、両主面にわたるそれらの導電体の間に挟まれて位置する。このため、信号配線パターンが伝達する電気信号によって発生する電磁波雑音が、これらの導電体によって効果的に遮蔽される。
【0008】
【実施例】<第1の実施例>図1は第1の実施例におけるプリント回路基板10の構造を示す部分正面断面図である。ガラスエポキシ、ベークライト等の絶縁体で構成される板状の回路基板本体1には、通常複数種類の回路素子4が実装されている。回路基板本体1の主面には、回路素子4が入力および出力する電気信号を伝達する信号配線パターン2と、回路素子4へ電源電位を供給する電源配線パターン3とが配設されている。回路素子4の端子は、これらの配線パターンにハンダ付け等によって電気的に接続されている。回路素子4は、マイクロプロセッサなどのデジタル回路素子を含んでいる。デジタル回路素子は急峻なパルス状の電気信号であるデジタル信号を入力および出力するものであるために、このデジタル信号を伝達する信号配線パターン2は、素子の動作にともなって一種のアンテナの役割を演じ、強力な電磁波雑音を放出する。
【0009】図1に示す例のように、回路素子4がいわゆるDIP形の端子を有する場合には、信号配線パターン2は、主として回路素子4が取り付けられる主面(いわゆる部品面)とは反対側の主面(いわゆるハンダ面)に配設される。この信号配線パターン2を覆うように、銅鍍金フィルム(フィルム体)5がハンダ面の略全面にわたって貼着されている。銅鍍金フィルム5は、ポリイミドなどの合成樹脂層とこの合成樹脂層上に形成された鍍金銅を含む銅層とを有する薄膜であって、好ましくは特開昭63−107088号公報に開示される銅鍍金フィルムを使用する。この公報に開示される銅鍍金フィルムは、銅層と合成樹脂層とが互いに剥離し難い他、銅層の表面が平坦で厚みが均一であるために電磁波を遮蔽する効果が高いという利点を有する。銅鍍金フィルム5の銅層は、後述するように信号配線パターン2に混じってハンダ面の一部において配設されている電源配線パターン3に電気的に接続される。すなわち、銅鍍金フィルム5の銅層は電源配線パターン3の電位、例えば接地電位を保持する。
【0010】他方の部品面には、電源配線パターン3が、略全面にわたって配設されている。電源配線パターン3は、例えば接地電位を保持する。すなわち、銅鍍金フィルム5と電源配線パターン3との協同により、回路基板本体1の2つの主面は、その略全域にわたって接地電位等の電源電位を保持する導電体によって覆われている。信号配線パターン2は、両主面を覆うこれらの導電体に挟まれた形で配設されている。その結果、信号配線パターン2から放出される電磁波雑音は、これらの導電体によって効果的に遮蔽され、外部への漏洩が抑制される。このため、このプリント回路基板10を用いることによって、他の電磁波遮蔽手段を設けることなく、電子装置における電磁波の漏洩を抑制することができる。プリント回路基板10では、電磁波雑音の発生源である信号配線パターン2がほぼ完全に導電体で包囲されているので、プリント回路基板10を用いた電子装置では、アルミ板を用いた従来の電子装置に比べて、より効果的に電磁波雑音の漏洩を低減することができる。
【0011】図2は、プリント回路基板10のハンダ面近傍における部分拡大正面断面図であって、特に銅鍍金フィルム5の回路基板本体1への貼着の構造を詳細に示している。前述のように銅鍍金フィルム5は、銅層6と合成樹脂層7とが積層した構造を有する。合成樹脂層7は、好ましくは耐熱性、機械的強度に優れるポリイミドで構成される。回路基板本体1のハンダ面およびその上に配設された信号配線パターン2の上には、これらを覆うように電気絶縁性のレジスト膜8が形成されている。銅鍍金フィルム5は、接着剤9を介してレジスト膜8の上面に貼着されている。接着剤9には、好ましくは熱硬化性の接着用樹脂、例えばエポキシ樹脂が用いられる。銅鍍金フィルム5の貼着は、硬化前の接着剤9を介してレジスト膜8の上の所定の位置に銅鍍金フィルム5を配置した後、プリント回路基板10全体を所定の温度に昇温して接着剤9を硬化させることにより行われる。
【0012】図3は、銅鍍金フィルム5と電源配線パターン3との接続部分を詳細に示すプリント回路基板10の部分拡大正面断面図である。回路基板本体1のハンダ面には、信号配線パターン2に混じって、電源電位を保持する電源配線パターン3が一部に配設されている。レジスト膜8は電源配線パターン3の部分を除いて形成されている。銅鍍金フィルム5には、あらかじめ所定の位置に開口部11が設けられており、この開口部11が電源配線パターン3の直下に位置するように銅鍍金フィルム5の貼着が行われる。銅鍍金フィルム5にあらかじめ塗布される接着剤9は、開口部11の周辺部では除かれている。銅鍍金フィルム5が貼着された後に、回路素子4の端子の配線パターンへのハンダ付けが行われるが、この工程の中で銅層6と電源配線パターン3とがハンダ12によって電気的に接続される。
【0013】例えばウェーブ・ソルダー法などを用いてハンダ付けを実行する場合には、プリント回路基板10のハンダ面は溶融ハンダに一旦浸される。このとき、開口部11を介して溶融ハンダが電源配線パターン3の表面にまで侵入し、開口部11の周辺の銅層6と電源配線パターン3との間にハンダの架橋が形成される。溶融ハンダが冷却されて固化すると、図3に示すようにハンダ12によって銅層6と電源配線パターン3とが電気的に接続される。すなわち、回路素子4のハンダ付けを実行するときに、銅層6と電源配線パターン3との間のハンダ付けも同時に行われる。このため、銅層6と電源配線パターン3との電気的な接続を行うための特別な工程を別途必要としない。
【0014】図4は、製造中途におけるプリント回路基板10の部分拡大正面断面図であって、銅層6と電源配線パターン3との間のハンダ付けを行うためのもう1つの方法を示すものである。銅層6と電源配線パターン3との間のハンダ付けを行うには、図4に示すように、開口部11における電源配線パターン3上にハンダペーストをあらかじめスクリーン印刷等により塗布しておく方法を採用することもできる。ハンダペーストを塗布した後に、一旦加熱することによって、図3に示したようなハンダ12による接続が実現する。
【0015】以上のように、銅鍍金フィルム5を回路基板本体1の主面に貼着し、しかも銅層6と電源配線パターン3とを電気的に接続する工程は、至って容易に実行され得る。したがって、このプリント回路基板10を用いることによって、少ない工数および低いコストで電子装置における電磁波雑音の遮蔽を実現することができる。また、銅鍍金フィルム5は軽量であるので、軽量化が要求される電子装置への利用は特に有益である。
【0016】なお、上記の実施例ではプリント回路基板10に回路素子4が実装され、信号配線パターン2および電源配線パターン3は、それぞれ回路素子4の入出力信号および電源電位を伝達するものであった。しかしながら、この発明はプリント回路基板に回路素子が搭載されず、信号、電源等を伝達する配線パターンのみが形成されたプリント回路基板にも適用可能である。
【0017】<第2の実施例>図5は、第2の実施例におけるプリント回路基板20の部分拡大正面断面図である。この第2の実施例のプリント回路基板20は、レジスト膜8が回路基板本体1に塗布されていない点において、前述の実施例におけるプリント回路基板10と構造上の差異を有している。その他の構造上の特徴は、プリント回路基板10と同様である。すなわちこの実施例では、接着剤9は回路基板本体1のハンダ面および信号配線パターン2の表面に直接塗布されている。このように構成しても、接着剤9は電気絶縁性であるために、銅鍍金フィルム5と信号配線パターン2とが電気的に接続される恐れはない。なお、銅層6と電源配線パターン3との間のハンダ付けは、第1の実施例のプリント回路基板10と同様の工程で実現することができる。
【0018】この実施例のプリント回路基板20では、レジスト膜8を形成する工程を必要としないので、製造工数、コストを更に低減し得る利点がある。更に、レジスト膜8が無い分だけ、信号配線パターン2と銅層6との間の間隔が狭いので、信号配線パターン2と銅層6の間に寄生的に発生する静電容量が大きいという特徴がある。その結果、信号配線パターン2によって伝達されるパルス状の電気信号の立ち上がり及び立ち下がりが幾分鈍化するために、発生する電磁波雑音の強度が弱まるという利点がある。
【0019】<第3の実施例>図6は、第3の実施例におけるプリント回路基板30の部分正面断面図である。この第3の実施例のプリント回路基板30には、面実装型の回路素子14が実装される。このため、信号配線パターン2は回路基板本体1の部品面に配設されており、その反対側の主面(裏面)の略全面にわたって電源配線パターン3が配設されている。この信号配線パターン2を覆うように、銅鍍金フィルム5が部品面の略全面にわたって貼着されている。銅鍍金フィルム5を構成する銅層6は、部品面の一部に配設された電源配線パターン3とハンダ付けによって電気的に接続されている。このハンダ付けは、回路基板本体1の部品面を図3に示した構造と同様の構造とすることによって容易に実現される。この実施例においても、信号配線パターン2は、両主面を覆う銅層6と電源配線パターン3とに挟まれた形で配設されているので、実施例1のプリント回路基板10と同様の効果を奏する。
【0020】<第4の実施例>図7は、第4の実施例におけるプリント回路基板40の部分拡大正面断面図である。この実施例では、銅鍍金フィルム5を貼着するために使用する接着剤9として、紫外線硬化型の接着剤が選択される。銅鍍金フィルム5には、その全面にわたって孔15が設けられている。銅鍍金フィルム5の貼着は、硬化前の接着剤9を介してレジスト膜8の上の所定の位置に銅鍍金フィルム5を配置した後に、紫外線を照射して接着剤9を硬化させることにより行われる。
【0021】図8は、接着剤9を硬化させる工程を示す部分拡大正面断面図である。紫外線UVは銅鍍金フィルム5の上面から、銅鍍金フィルム5の全面にわたって照射される。照射された紫外線UVの一部は、孔15を通過して接着剤9とレジスト膜8の境界面、あるいは信号配線パターン2または回路基板本体1の表面で反射される。この反射紫外線UVは、更に銅層6の底面で反射される。これらの反射が繰り返されることによって、紫外線UVは強度を減衰しつつも、接着剤9の孔15から離れた部分へ侵入する。このようにして、接着剤9の全体が紫外線UVに曝される結果、接着剤9が硬化する。
【0022】なお、この第4の実施例において、銅鍍金フィルム5が貼着される回路基板本体1の主面は部品面、裏面のいずれであってもよい。また、この実施例において、レジスト膜8を設けることなく、紫外線硬化型の接着剤9を回路基板本体1の主面および信号配線パターン2の表面に直接塗布してもよい。この場合にも、照射された紫外線UVは孔15を貫通し、散乱を反復しつつ接着剤9の内部に侵入するので、紫外線UVの照射によって接着剤9を硬化させることができる。
【0023】<第5の実施例>図9は、第5の実施例におけるプリント回路基板50の部分拡大正面断面図である。この実施例では、接着剤9は接着用樹脂21に粒径の揃った絶縁物粒22が混入されて成る。接着用樹脂21には、好ましくはエポキシ樹脂等の熱硬化性の接着用樹脂、あるいは紫外線硬化型の接着剤などを使用する。絶縁物粒22には、例えばAl2 O3 (アルミナ)、SiO2 、またはセラミックの粉末が使用される。絶縁物粒22の直径は、好ましくは50μm程度である。
【0024】この実施例のプリント回路基板50では、接着剤9が絶縁物粒22を含んでいるので、銅鍍金フィルム5が接着剤9を介してレジスト膜8の上に貼着されたときに、絶縁物粒22がレジスト膜8と銅鍍金フィルム5との間に介在するスペーサの役割を果たす。すなわち、レジスト膜8と銅鍍金フィルム5との間に絶縁物粒22が介在することによって、レジスト膜8と銅鍍金フィルム5との間の間隔が、絶縁物粒22の直径に相当する値(例えば50μm)に規定される。これによって、信号配線パターン2と銅層6との間の距離が、プリント回路基板50の全面にわたって一定の大きさに保証される。その結果、信号配線パターン2と銅層6との間に寄生的に発生する静電容量の単位面積当りの大きさが、プリント回路基板50の全面にわたって一定に保たれる。このことによって、プリント回路基板50のすべての信号配線パターン2に対して、寄生的な静電容量による電磁波雑音を弱める効果を期待することができる。
【0025】なお、上述したように絶縁物粒22によってレジスト膜8と銅鍍金フィルム5との間の距離を一定に規定するためには、銅鍍金フィルム5をレジスト膜8の上に貼着する際に、適度な押圧力をもって銅鍍金フィルム5の全面をレジスト膜8に対して押し付けることが必要である。また、第2の実施例におけるプリント回路基板20のように、レジスト膜8を用いないプリント回路基板に対しても、この実施例における絶縁物粒22を含んだ接着剤9を用いて銅鍍金フィルム5を貼着することができる。この場合においても、この実施例と同様に、プリント回路基板のすべての信号配線パターン2に対して、寄生的な静電容量による電磁波雑音を弱める効果が期待できる。
【0026】<第6の実施例>図10は、第6の実施例におけるプリント回路基板60の正面断面図である。図1010において、基板部23は、回路基板本体1に信号配線パターン2、電源配線パターン3等が配設されて成る(図示を略する)。基板部23は、その先端にコネクタ部24を有している。コネクタ部24は、プリント回路基板60の外部に設置されるコネクタ31に嵌合する。コネクタ部24には、図示しないコネクタピンが配設されており、このコネクタ端子はコネクタ31に設けられている図示しないコネクタピンと電気的に接続される。これによって、基板部23が有する信号配線パターン2および電源配線パターン3は、外部の装置と電気的に接続される。基板部23の主面上には回路素子14が実装されている。
【0027】この実施例では、銅鍍金フィルム5は基板部23の双方の主面の、コネクタ部24を除く全面を覆うように、基板部23に貼着されている。1枚の銅鍍金フィルム5を折り曲げて使用することによって、基板部23の双方の主面の略全面が銅鍍金フィルム5で覆われる。銅鍍金フィルム5に含まれる銅層6(図示を略する)は、第1の実施例等と同様に、電源配線パターン3に電気的に接続されている。銅鍍金フィルム5は、好ましくは基板部23における凸部を成す回路素子14に対応して、突出部25を有するようにあらかじめ成型されている。このことによって、銅鍍金フィルム5の基板部23への貼着が容易に行われ得る。
【0028】この実施例では、銅鍍金フィルム5によって、基板部23の両主面の略全面が覆われているので、電磁波雑音の漏洩が効果的に低減される。しかも、信号配線パターン2、電源配線パターン3だけではなく、回路素子14も、銅鍍金フィルム5で覆われているので、電磁波雑音の漏洩を低減する効果が特に高い。
【0029】図11は、この実施例において、回路素子14が存在しない場合のプリント回路基板60正面断面図である。銅鍍金フィルム5はコネクタ部24を除く基板部23の全面を覆っている。このため、基板部23に配設される信号配線パターン2から放出される電磁波雑音を低減する効果が高い。
【0030】<第7の実施例>図12は、第7の実施例におけるプリント回路基板70の正面断面図である。この実施例では銅鍍金フィルム5は、回路素子14に対応して開口部26を有する。このため、基板部23の凸部を成す回路素子14との当接を開口部26によって回避することができるので、銅鍍金フィルム5の基板部23への貼着が容易に行われ得る。この実施例においても、銅鍍金フィルム5によって、基板部23の両主面の略全面が覆われているので、電磁波雑音の漏洩が効果的に低減される。
【0031】<第8の実施例>図13は、第8の実施例におけるプリント回路基板80の正面断面図である。この実施例では、双方の主面には別個の銅鍍金フィルム5が、それぞれ貼着されている。それぞれの銅鍍金フィルム5の銅層6(図示を略する)は、電源配線パターン3(図示を略する)に電気的に接続されている。この実施例においても、第7の実施例と同様に、銅鍍金フィルム5によって、基板部23の両主面の略全面が覆われているので、電磁波雑音の漏洩が効果的に低減される。
【0032】図13には、回路素子14が実装されないプリント回路基板80の例を示したが、回路素子14が実装されたプリント回路基板80に対しても、第7の実施例と同様に、銅鍍金フィルム5に突出部25または開口部26を設ける態様が有り得る。
【0033】<その他の実施例>(1)回路基板本体1における1つの主面の略全体を覆う電源配線パターン3は、一般に、電源電位に限らずなんらかの安定電位を保持する配線パターンであってもよい。
【0034】(2)接着剤9は、銅鍍金フィルム5にあらかじめ塗布する代わりに、接着剤9が貼着される対象面、すなわちレジスト膜8の表面、または回路基板本体1と信号配線パターン2の表面に塗布しておいてもよい。ただし、この場合においても図3に示したように、接着剤9は電源配線パターン3の表面の一部領域を除いて塗布されなければならない。
【0035】(3)以上の実施例は、電磁波雑音の外部への輻射を抑制することを目的とするものであったが、外部からの電磁波雑音の侵入によって配線パターンに接続される回路素子の誤動作の防止をも同時に達成することができる。したがって、これらの実施例は電磁波雑音の侵入防止を目的として実施することも可能である。
【0036】
【発明の効果】この発明の回路基板では、その主面の略全領域が安定電位を保持する導電体で覆われており、電気信号を伝達する信号配線パターンは、両主面にわたるそれらの導電体の間に挟まれている。このため、信号配線パターンが伝達する電気信号によって発生する電磁波雑音が、これらの導電体によって効果的に遮蔽され、電子装置の外部への電磁波雑音の漏洩が十分に抑制される。また、フィルム体を回路基板本体の主面に設置し、かつ銅層を安定配線パターンに接続するのに、複雑な工程を要しない。このため、この発明の回路基板を用いることにより、少ない工数および低いコストで電子装置における電磁波雑音の遮蔽を実現することができる。また、フィルム体は薄膜であって軽量であるので、電子装置における軽量化の要求にも応えることができる。また、この発明の回路基板は、外部からの電磁波雑音の信号配線パターンへの侵入を防止する効果も有するので、電磁波雑音の侵入防止を目的として使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施例のプリント回路基板の部分正面断面図である。
【図2】第1の実施例のプリント回路基板の部分拡大正面断面図である。
【図3】第1の実施例のプリント回路基板の部分拡大正面断面図である。
【図4】第1の実施例のプリント回路基板の部分拡大正面断面図である。
【図5】第2の実施例のプリント回路基板の部分拡大正面断面図である。
【図6】第3の実施例のプリント回路基板の部分正面断面図である。
【図7】第4の実施例のプリント回路基板の部分拡大正面断面図である。
【図8】第4の実施例のプリント回路基板の部分拡大正面断面図である。
【図9】第5の実施例のプリント回路基板の正面断面図である。
【図10】第6の実施例のプリント回路基板の正面断面図である。
【図11】第6の実施例のプリント回路基板の正面断面図である。
【図12】第7の実施例のプリント回路基板の正面断面図である。
【図13】第8の実施例のプリント回路基板の正面断面図である。
【符号の説明】
1 回路基板本体
2 信号配線パターン
3 電源配線パターン(安定配線パターン)
5 銅鍍金フィルム(フィルム体)
10、20、30、40、50、60、70 プリント回路基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】(a)実質的に絶縁体から成り、実質的に板形状の回路基板本体と、(b)実質的に導電体から成り、前記回路基板本体に配設された配線パターンと、を備え、当該配線パターンが、(b−1)安定電位を担う安定配線パターンと、(b−2)前記回路基板本体の主面上に配設され、電気信号を伝達する信号配線パターンと、を備え、(c)合成樹脂層と当該合成樹脂層上に形成された銅層とを有する薄膜状のフィルム体であって、前記信号配線パターンを覆うように前記主面上に設置されるとともに、前記銅層が前記安定配線パターンに電気的に接続されたフィルム体、を更に備え、前記回路基板本体の2つの主面が略全面にわたって、前記フィルム体と前記安定配線パターンの少なくとも一方で覆われている回路基板。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate


【図8】
image rotate


【図9】
image rotate


【図10】
image rotate


【図11】
image rotate


【図12】
image rotate


【図13】
image rotate


【公開番号】特開平7−66511
【公開日】平成7年(1995)3月10日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−190788
【出願日】平成5年(1993)7月1日
【出願人】(591128453)株式会社メガチップス (322)