説明

回路遮断器

【課題】交流用の回路遮断器と共通の構成を多く採用しつつ手動による主接点の開放が素早く行える回路遮断器を提供する。
【解決手段】ハンドル6が投入位置からねじりばねの付勢力で急速に回動復帰する位置までの回動距離に対して、スライド操作部材10がスライド移動する距離の方が短くなる。従って、従来例のようにハンドル6の操作部6aを指で持って回動操作する場合に比べて、スライド操作部材10をスライド操作する場合の方が短い時間で主接点を開放させることができる。故に、本実施形態の回路遮断器では、従来の交流用の回路遮断器と共通の構成を多く採用しつつ手動による主接点の開放が素早く行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路遮断器に関し、特に直流配電システムに使用される回路遮断器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の回路遮断器として特許文献1に記載されているようなものがある。この回路遮断器は、図4〜6に示すように絶縁性を有する合成樹脂材料によって扁平な箱状に形成された器体1内に、器体1の短幅方向に並設された2つの固定接点2A,2Bと、これら各固定接点2A,2Bに接離(接触・開離)自在に対向する可動接点3A,3Bを固着した2つの可動接触子4A,4Bと、これらの2つの可動接触子4A,4Bを駆動する開閉機構5とを備え、ハンドル6の回動操作により開閉機構5を介して各可動接点3A,3Bを各固定接点2A,2Bに接触(投入)及び開離(開放)させる構成となっている。
【0003】
可動接触子4A,4Bを開閉駆動する開閉機構5は、ラッチ部材たる作動板43と、クロスバー40と、作動板43の一端を係止する段状の係止部57を備えた第1引き外し板41と、第2引き外し板42と、ハンドル6と、コ字状リンク44等からなる。また、過電流検出時に開閉機構5を釈放する2つのバイメタル(図示せず)からなる熱動型の引き外し装置と、更に短絡電流が流れたときに開閉機構5を釈放する電磁駆動型の引き外し装置(図示せず)とが器体1内に収納されている。
【0004】
ハンドル6は、操作部6aと回動部6bとハンドル軸6cとで構成され、回動部6bの両側面の中央に突出したハンドル軸6cを器体1に設けられた軸孔(図示せず)に回動自在に挿入して器体1に回動自在に保持され、操作部6aは、器体1の前面から外へ突出するようになっている。またハンドル軸6cにはねじりばね(図示せず)が装着され、該ねじりばねにより、ハンドル6は投入位置において、開放位置への操作向き(回動向き)に付勢されている。
【0005】
回動部6bの下端に設けた軸孔52にはリンク44の上側軸44aを回動自在に挿入して、リンク44を介して作動板43と連結されている。
【0006】
作動板43は中央両側に設けた軸受け孔43aにリンク44の下側軸44bを貫挿させることによりリンク44を介してハンドル6と連結され、器体1内に上下移動自在に配置される。
【0007】
クロスバー40は上部の両側面に突出させた軸40aを器体1内に形成した軸孔52、52に挿入して枢支され、軸40aを支点として回動することで可動接触子4A,4Bを駆動するものである。尚、クロスバー40の下端部は、該下端部と、器体1の底部より垂立させた壁63との間で圧縮配置されたコイルばね62により押されて可動接点3A,3Bが固定接点2A,2Bから離れるように可動接触子4A,4Bを駆動する向きの回転力が付勢される。
【0008】
図5は開放状態を示しており、この開放状態ではハンドル6の操作部6aが器体1前面より倒立露出した状態にあり、作動板43の一端と第1引き外し板41との係合状態は外れた状態にある。そしてコイルばね62によりクロスバー40は図において時計回りに回動するように付勢されており、クロスバー40に保持されている可動接触子4A,4Bがそれぞれ自由端を上方に移動させた状態にあり、夫々の自由端に設けてある可動接点3A,3Bが対応する固定接点2A,2Bから開離した状態(開放状態)にある。
【0009】
この状態でハンドル6の操作部6aを時計回りに回動操作すると、リンク44の上側軸44aが下方向に押し動かされてリンク44は下側軸44bにより作動板43を押し下げる。この作動板43の押し下げにより作動板43の一端(図において右端)が第1引き外し板41の係止部57に当たり、その位置を回動中心として作動板43は反時計回りに回動し、作動板43の他端(左端)がクロスバー40の上端に設けてある突出部84に当たり、クロスバー40を反時計回りにばね付勢に抗して回動させる。
【0010】
この回動によりクロスバー40に保持されている可動接触子4A,4Bが反時計回りに回動してその自由端の可動接点3A,3Bをそれぞれ固定接点2A,2Bに接触させる。
【0011】
そしてハンドル6を更に時計回りに回動させると、リンク44の下側軸44bの位置とハンドル6の回転中心を結ぶ線より上側軸44aが左方向に移動し、この状態でハンドル6のねじりばね、クロスバー44を付勢するコイルスばね62、更に可動接触子4Bのばね力等が均衡して作動板43の一端と第1引き外し板41の係止部57とのラッチ状態が保持されて投入状態が維持される(図6参照)。
【0012】
さて投入状態でハンドル6の操作部6aを反時計回りに回動させると、リンク44の上側軸44aの位置が、ハンドル6の回転中心と、下側軸44bを結ぶ線を右向きに越えて上方へ移動するため作動板43の左端と第1引き外し板41の係止部57とのラッチ状態が解かれ、クロスバー40はコイルばね62の付勢力で時計回りに回動するとともに、ハンドル6がねじりばねの付勢力で開放位置側に急速に回動復帰する。クロスバー40の時計回りへの回動により可動接触子4A,4Bが時計回りに回動して自由端を上方へ移動させ可動接点3A,3Bを固定接点2A,2Bより開離(開放)させる。尚、引き外し動作については説明を省略する。
【0013】
上述のように構成される従来の回路遮断器は、一般に交流を遮断する用途に用いられるが、その構成の大部分が直流を遮断するための回路遮断器に転用することが可能であり、交流用の回路遮断器と共通の構成を用いることで直流用の回路遮断器の製造コストを大幅に削減することができる。
【特許文献1】特開2001−307611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、直流を遮断する場合、交流を遮断する場合と違って電圧(直流電圧)にゼロクロス点が存在しないので、直流用の回路遮断器においては主接点の開放動作時に発生するアークを如何に早く消弧するかということが特に重要な課題となる。しかしながら、特許文献1に記載されている回路遮断器において、ハンドル6を回動操作して主接点(固定接点2A,2Bと可動接点3A,3B)を手動で開放する際、開閉機構5が引き外し装置によって釈放されていないためにハンドル6の操作力が大きくなっており、しかも、ハンドル6の操作部6aを指先で摘んで操作しなければならないので、投入位置から開放位置に素早く回動させることが困難であった。
【0015】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、その目的は、交流用の回路遮断器と共通の構成を多く採用しつつ手動による主接点の開放が素早く行える回路遮断器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、直流電圧が印加される一次側端子と、負荷に接続される二次側端子と、一次側端子と二次側端子を繋ぐ電路に設けられた主接点と、主接点を開閉する開閉機構と、電路に過電流が流れたときに開閉機構を釈放して主接点を開放させる引き外し手段と、絶縁材料によって箱状に形成され一端側に一次側端子が設けられるとともに他端側に二次側端子が設けられ、主接点並びに開閉機構、引き外し手段を内部に収納する器体と、開閉機構によって主接点を投入する投入位置と主接点を開放させる開放位置との間で器体に対して回動自在に設けられたハンドルと、器体の平坦な前面から突出するハンドルの回動運動を当該前面と略平行なスライド運動に変換する変換手段とを備え、変換手段は、手動でスライド操作される操作部と、ハンドルに押圧力を加えることで少なくとも主接点を開放する際に操作部のスライド量よりも大きな移動量でハンドルを回動させる押圧部とを有することを特徴とする。
【0017】
請求項1の発明によれば、ハンドルの回動距離に対して押圧部がスライド移動する距離の方が短くなるから、ハンドルを直接回動操作する場合に比べて短い時間で主接点を開放させることができる。その結果、従来の交流用の回路遮断器と共通の構成を多く採用しつつ手動による主接点の開放が素早く行える。
【0018】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、押圧部は、投入位置から開放位置に向かって回動するハンドルの先端に摺接する摺接面を有し、当該摺接面が複数の面よりなることを特徴とする。
【0019】
請求項2の発明によれば、ハンドルに対して押圧部からほぼ一定の押圧力を加えることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、交流用の回路遮断器と共通の構成を多く採用しつつ手動による主接点の開放が素早く行える回路遮断器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。但し、本実施形態の基本構成は図4〜図6に示した従来例(交流用の回路遮断器)と共通であるから、共通の構成要素には同一の符号を付して適宜図示並びに説明を省略する。
【0022】
図2に示すように、器体1は合成樹脂のような絶縁材料によって扁平な箱状に形成され、長手方向の一端部(図2における右端部)には分電盤110内に配設されている導電バー(図示せず)が差込接続される一対の一次側端子が収納され、長手方向の他端部(図2における左端部)には負荷に直流電力を給電するための直流給電線路Wdcが接続される一対の二次側端子が収納されている。尚、従来例と同様に、一次側端子は厚み方向で導電バーを狭持する刃受からなり、二次側端子は速結端子からなる。
【0023】
本実施形態の回路遮断器が従来例と相違する点は、従来例における器体1の平坦な前面(図4における上面)から突出するハンドル6の回動運動を当該前面と略平行なスライド運動に変換する変換手段を備えていることである。この変換手段は、図1に示すように手動でスライド操作される操作部11と、ハンドル6に押圧力を加えることで少なくとも主接点(固定接点2A,2B及び可動接点3A,3B)を開放する際に操作部11のスライド量よりも大きな移動量でハンドル6を回動させる押圧部とが合成樹脂成形品として一体に形成されたスライド操作部材10からなる。
【0024】
スライド操作部材10は、長手方向両端から各々脚片14a,14bが垂設された短冊形の主片13を有し、矩形平板状の操作部11が主片13の前面(図1,2における上面)より前方(図1,2における上方)へ突設されるとともに、長い方の脚片14aの先端部分に押圧突部12が設けられている。押圧突部12は、図1に示すように器体1前面から離れるに従ってハンドル6との距離が拡がる向き(図1における右上向き)に傾斜する摺接面12aを有している。本実施形態においては、長い方の脚片14aと押圧突部12とで押圧部を構成しており、後述するように投入位置(図1(a)の位置)から開放位置(図1(b)の位置)に向かって回動するハンドル6の先端(操作部6a)に押圧突部12の摺接面12aと脚片14aの内側の面からなる摺接面14cとが順番に摺接するようになっている。
【0025】
器体1にはハンドル6を囲む形で前方(図2における上方)へ突出する矩形箱形の収納部20が設けられている。収納部20の前壁には矩形の窓孔21が開口しており、この窓孔21に操作部11を挿通した状態でスライド操作部材10が収納部20内に収納される。収納部20内には、器体1の長手方向に沿ってスライド操作部材10をスライド移動自在とする空間が形成されている。また、スライド操作部材10の主片13における操作部11を挟んだ両側に各々係止突起15a,15bが前方へ突設されるとともに、収納部20の前壁内側には各係止突起15a,15bと選択的に係合する係止凹部22a,22bが設けられており、係止突起15a,15bを係止凹部22a,22bに係止することでスライド操作部材10が収納部20に対して投入位置と開放位置でそれぞれ保持される。さらに、スライド操作部材10の主片13前面には、投入位置において窓孔21に臨む部位に「ON」の文字が形成され、開放位置に置いて窓孔21に臨む部位に「OFF」の文字が形成されており、主接点のオン・オフ状態が視認可能となっている(図2参照)。尚、収納部20は器体1と別体の合成樹脂成形品として構成して器体1に取り付けてもよいし、あるいは合成樹脂成形品として器体1と収納部20を一体に構成してもよい。
【0026】
次に、本実施形態の回路遮断器を手動で投入・開放する際の動作について説明する。
【0027】
まず、投入動作について説明する。図1(b)に示す開放状態において、収納部20の窓孔21より突出している操作部11に右向きの力が加えられると、係止突起15bが撓んで係止凹部22bとの係止が外れてスライド操作部材10が右向きにスライド移動する。このとき、器体1前面より倒立露出した状態にあるハンドル6の操作部6aをスライド操作部材10の脚片14bが押圧し、この押圧力によってハンドル6が図中時計回りに回動する。そして、スライド操作部材10が投入位置に移動する過程において、従来技術で説明したようにハンドル6と連動した開閉機構5によって主接点(固定接点2A,2Bと可動接点3A,3B)が接触して投入状態となる(図1(a)参照)。尚、投入位置に置いては係止突起15aが係止凹部22aと係止することでスライド操作部材10が収納部20に対して投入位置で保持される。
【0028】
一方、図1(a)に示す投入状態において、収納部20の窓孔21より突出している操作部11に左向きの力が加えられると、係止突起15aが撓んで係止凹部22aとの係止が外れてスライド操作部材10が左向きにスライド移動する。このとき、スライド操作部材10のスライド移動に伴って、最初に押圧突部12の摺接面12aとハンドル6の操作部6aとが摺接し、押圧突部12に操作部6aが押圧されることでハンドル6が図中反時計回りに回動し始める。ハンドル6が回動するにつれて操作部6aが押圧突部12から離れ、引き続いて脚片14aの摺接面14cと摺接することでハンドル6がさらに反時計回りに回動し続ける。そして、スライド操作部材10が開放位置に移動する過程において、従来技術で説明したように、ハンドル6がねじりばねの付勢力で開放位置側に急速に回動復帰して主接点(固定接点2A,2Bと可動接点3A,3B)が開放される。
【0029】
ここで、ハンドル6が投入位置からねじりばねの付勢力で急速に回動復帰する位置までの回動距離に対して、スライド操作部材10がスライド移動する距離の方が短くなる。従って、従来例のようにハンドル6の操作部6aを指で持って回動操作する場合に比べて、スライド操作部材10をスライド操作する場合の方が短い時間で主接点を開放させることができる。故に、本実施形態の回路遮断器では、従来の交流用の回路遮断器と共通の構成を多く採用しつつ手動による主接点の開放が素早く行えるものである。しかも、押圧部(脚片14aと押圧突部12)にはハンドル6の操作部6aと摺接する摺接面12a,14cが形成され、しかも、これらの摺接面12a,14cが互いに異なる面で形成されているので、操作部6aに対してほぼ一定の押圧力を加えることができる。
【0030】
ところで、本実施形態の回路遮断器は、図3に示す直流配電システムに用いられる。当該システムは、戸建て住宅や集合住宅などの種々の住宅Hに適用されるものである。この住宅Hには、直流電力を出力する直流電力供給部101と、直流電力により駆動される負荷としての直流機器102とが設けられ、直流電力供給部101の出力端部に接続した直流供給線路Wdcを通して直流機器102に直流電力が供給される。そして、直流電力供給部101と直流機器102との間に、本実施形態の回路遮断器(以下では「直流ブレーカ」と呼ぶ。)114が設けられる。
【0031】
直流供給線路Wdcは、直流電力の給電路であるとともに通信路としても兼用されており、高周波の搬送波を用いてデータを伝送する通信信号を直流電圧に重畳することにより直流供給線路Wdcに接続された機器間での通信を可能にしている。この技術は、交流電力を供給する電力線において交流電圧に通信信号を重畳させる電力線搬送技術と類似した技術である。
【0032】
直流供給線路Wdcは、直流電力供給部101を介して宅内サーバ116に接続される。宅内サーバ116は、宅内の通信網(以下、「宅内網」という)を構築する主装置であり、宅内網において直流機器102が構築するサブシステムなどと通信を行う。
【0033】
図示例では、サブシステムとして、パーソナルコンピュータ、無線アクセスポイント、ルータ、IP電話機のような情報系の直流機器102からなる情報機器システムK101、照明器具のような照明系の直流機器102からなる照明システムK102,K105、来客対応や侵入者の監視などを行う直流機器102からなるインターホンシステムK103、火災感知器のような警報系の直流機器102からなる住警器システムK104などがある。各サブシステムは、自立分散システムを構成しており、サブシステム単独でも動作が可能になっている。
【0034】
上述した直流ブレーカ114は、サブシステムに関連付けて設けられており、図示例では、情報機器システムK101、照明システムK102およびインターホンシステムK103、住警器システムK104、照明システムK105に関連付けて4つの直流ブレーカ114を設けている。1台の直流ブレーカ114に複数個のサブシステムを関連付ける場合には、サブシステムごとに直流供給線路Wdcの系統を分割する接続ボックス121が設けられる。図示例においては、照明システムK102とインターホンシステムK103との間に接続ボックス121が設けられている。
【0035】
情報機器システムK101としては、壁コンセントあるいは床コンセントの形態で住宅Hに先行配置(住宅Hの建築時に施工)される直流コンセント131に接続される直流機器102からなる情報機器システムK101が設けられる。
【0036】
照明システムK102、K105としては、住宅Hに先行配置される照明器具(直流機器102)からなる照明システムK102と、天井に先行配置される引掛シーリング132に接続する照明器具(直流機器102)からなる照明システムK105とが設けられる。引掛シーリング132には、住宅Hの内装施工時に施工業者が照明器具を取り付けるか、または家人自身が照明器具を取り付ける。
【0037】
照明システムK102を構成する直流機器102である照明器具に対する制御の指示は、赤外線リモコン装置を用いて与えるほか、直流供給線路Wdcに接続されたスイッチ141から通信信号を用いて与えることができる。すなわち、スイッチ141は直流機器102とともに通信の機能を有している。また、スイッチ141の操作によらず、宅内網の別の直流機器102あるいは宅内サーバ116から通信信号により制御の指示がなされることもある。照明器具への指示には、点灯、消灯、調光、点滅点灯などがある。
【0038】
上述した直流コンセント131、引掛シーリング132には、任意の直流機器102を接続することができ、接続された直流機器102に直流電力を出力するから、以下では直流コンセント131、引掛シーリング132を区別する必要がない場合には「直流アウトレット」と呼ぶ。
【0039】
これらの直流アウトレットは、直流機器102に直接設けた接触子(図示せず)または接続線を介して設けた接触子(図示せず)が差し込まれる差込式の接続口が器体に開口し、接続口に差し込まれた接触子に直接接触する接触子受けが器体に保持された構造を有している。すなわち、直流アウトレットは接触式で給電を行う。直流アウトレットに接続された直流機器102が通信機能を有する場合には、直流供給線路Wdcを通して通信信号を伝送することが可能になる。直流機器102だけではなく直流アウトレットにも通信機能が設けられている。
【0040】
宅内サーバ116は、宅内網に接続されるだけではなく、インターネットを構築する広域網NTに接続される接続口を有している。宅内サーバ116が広域網NTに接続されている場合には、広域網NTに接続されたコンピュータサーバであるセンタサーバ200によるサービスを享受することができる。
【0041】
センタサーバ200が提供するサービスには、広域網NTを通して宅内網に接続された機器(主として直流機器102であるが通信機能を有した他の機器も含む)の監視や制御を可能にするサービスがある。このサービスにより、パーソナルコンピュータ、インターネットTV、移動体電話機などのブラウザ機能を備える通信端末(図示せず)を用いて宅内網に接続された機器の監視や制御が可能になる。
【0042】
宅内サーバ116は、広域網NTに接続されたセンタサーバ200との間の通信と、宅内網に接続された機器との間の通信との両方の機能を備え、宅内網の機器に関する識別情報(ここでは、IPアドレスを用いるものとする)の取得の機能を備える。
【0043】
宅内サーバ116は、センタサーバ200との通信機能を用いることにより、広域網NTに接続された通信端末からセンタサーバ200を通して宅内の機器の監視や制御を可能にする。センタサーバ200は、宅内の機器と広域網NT上の通信端末とを仲介する。
【0044】
通信端末から宅内の機器の監視や制御を行う場合は、監視や制御の要求をセンタサーバ200に記憶させ、宅内の機器は定期的に片方向のポーリング通信を行うことにより、通信端末からの監視や制御の要求を受信する。この動作により、通信端末から宅内の機器の監視や制御が可能になる。
【0045】
また、宅内の機器において火災検知など通信端末に通知すべきイベントが生じたときには、宅内の機器からセンタサーバ200に通知し、センタサーバ200から通信端末に対して電子メールによる通知を行う。
【0046】
宅内サーバ116における宅内網との通信機能のうち重要な機能は、宅内網を構成する機器の検出と管理である。宅内サーバ116では、UPnP(Universal Plug and Play)を応用して宅内網に接続された機器を自動的に検出する。宅内サーバ116はブラウザ機能を有する表示器117を備え、検出した機器の一覧を表示器117に表示する。この表示器117はタッチパネル式もしくは操作部が付設された構成を有し、表示器117の画面に表示された選択肢から所望の内容を選択する操作が可能になっている。したがって、宅内サーバ116の利用者(施工業者あるいは家人)は、表示器117の画面上で機器の監視ないし制御が可能になる。表示器117は宅内サーバ116とは分離して設けてもよい。
【0047】
宅内サーバ116では、機器の接続に関する情報を管理しており、宅内網に接続された機器の種類や機能とアドレスとを把握する。したがって、宅内網の機器を連動動作させることができる。機器の接続に関する情報は上述のように自動的に検出されるが、機器を連動動作させるには、機器自身が保有する属性により自動的に関係付けを行うほか、宅内サーバ116にパーソナルコンピュータのような情報端末を接続し、情報端末のブラウザ機能を利用して機器の関係付けを行うこともできる。
【0048】
機器の連動動作の関係は各機器がそれぞれ保持する。したがって、機器は宅内サーバ116を通すことなく連動動作することができる。各機器について、連動動作の関係付けを行うことにより、たとえば、機器であるスイッチの操作により、機器である照明器具の点灯あるいは消灯の動作を行うことが可能になる。また、連動動作の関係付けはサブシステム内で行うことが多いが、サブシステムを超える関係付けも可能である。
【0049】
ところで、直流電力供給部101は、基本的には、商用電源のように宅外から供給される交流電源(商用電力系統)ACの電力変換により直流電力を生成する。図示する構成では、交流電源ACは、分電盤110に内器として取り付けられた主幹ブレーカ(主開閉器)111を通して、スイッチング電源を含むAC/DCコンバータ112に入力される。AC/DCコンバータ112から出力される直流電力は、協調制御部113を通して各直流ブレーカ114に接続される。
【0050】
直流電力供給部101には、交流電源ACから電力が供給されない期間(たとえば、商用電源ACの停電期間)に備えて二次電池162が設けられている。また、直流電力を生成する太陽電池161や燃料電池163を併用することも可能になっている。交流電源ACから直流電力を生成するAC/DCコンバータ112を備える主電源に対して、太陽電池161や二次電池162や燃料電池163は分散電源になる。なお、図示例において、太陽電池161、二次電池162、燃料電池163は出力電圧を制御する回路部を含み、二次電池162は放電だけではなく充電を制御する回路部も含んでいる。
【0051】
分散電源のうち太陽電池161や燃料電池163は必ずしも設けなくてもよいが、二次電池162は設けるのが望ましい。二次電池162は主電源や他の分散電源により適時充電され、二次電池162の放電は、交流電源ACから電力が供給されない期間だけではなく必要に応じて適時に行われる。二次電池162の充放電や主電源と分散電源との協調は、協調制御部113により行われる。すなわち、協調制御部113は、直流電力供給部101を構成する主電源および分散電源から直流機器102への電力の配分を制御する直流電力制御部として機能する。なお、太陽電池161、二次電池162、燃料電池163の出力を交流電力に変換し、AC/DCコンバータ112の入力電力として用いる構成を採用してもよい。
【0052】
直流機器102の駆動電圧は機器に応じた複数種類の電圧から選択されるから、協調制御部113にDC/DCコンバータを設け、主電源および分散電源から得られる直流電圧を必要な電圧に変換するのが望ましい。通常は、1系統のサブシステム(もしくは1台の直流ブレーカ114に接続された直流機器102)に対して1種類の電圧が供給されるが、1系統のサブシステムに対して3線以上を用いて複数種類の電圧を供給するように構成してもよい。あるいはまた、直流供給線路Wdcを2線式とし、線間に印加する電圧を時間経過に伴って変化させる構成を採用することも可能である。DC/DCコンバータは、直流ブレーカと同様に複数に分散して設けてもよい。
【0053】
上述の構成例では、AC/DCコンバータ112を1個だけ図示しているが、複数個のAC/DCコンバータ112を並設することが可能であり、複数個のAC/DCコンバータ112を設けるときには、負荷の大きさに応じて運転するAC/DCコンバータ112の台数を増減させるのが望ましい。
【0054】
上述したAC/DCコンバータ112、協調制御部113、直流ブレーカ114、太陽電池161、二次電池162、燃料電池163には通信機能が設けられており、主電源および分散電源や直流機器102を含む負荷の状態に対処する連携動作を行うことを可能にしている。この通信に用いる通信信号は、直流機器2に用いる通信信号と同様に直流電圧に重畳する形式で伝送する。
【0055】
上述の例では主幹ブレーカ111から出力された交流電力をAC/DCコンバータ112により直流電力に変換するために、AC/DCコンバータ112を分電盤110内に配置しているが、主幹ブレーカ111の出力側において分電盤110内に設けた分岐ブレーカ(図示せず)で交流供給線路を複数系統に分岐し、各系統の交流供給線路にAC/DCコンバータを設けて系統ごとに直流電力に変換する構成を採用してもよい。
【0056】
この場合、住宅Hの各階や各部屋を単位として直流供給部1を設けることができるから、直流供給部1を系統別に管理することができ、しかも、直流電力を利用する直流機器102との間の直流供給線路Wdcの距離が小さくなるから、直流供給線路Wdcでの電圧降下による電力損失を低減させることができる。また、主幹ブレーカ111および分岐ブレーカを分電盤110に収納し、AC/DCコンバータ112と協調制御部113と直流ブレーカ114と宅内サーバ116とを分電盤110とは別の盤に収納してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施形態を示し、(a)は投入状態の要部断面図、(b)は開放状態の要部断面図である。
【図2】同上の投入状態の斜視図である。
【図3】同上を用いた直流配電システムのシステム構成図である。
【図4】従来の交流用の回路遮断器を示し、(a)は投入状態の斜視図、(b)は開放状態の斜視図である。
【図5】同上を示す開放状態の要部断面図である。
【図6】同上を示す投入状態の要部断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 器体
6 ハンドル
10 スライド操作部材
11 操作部
12 押圧突部(押圧部)
14a 脚片(押圧部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧が印加される一次側端子と、負荷に接続される二次側端子と、一次側端子と二次側端子を繋ぐ電路に設けられた主接点と、主接点を開閉する開閉機構と、電路に過電流が流れたときに開閉機構を釈放して主接点を開放させる引き外し手段と、絶縁材料によって箱状に形成され一端側に一次側端子が設けられるとともに他端側に二次側端子が設けられ、主接点並びに開閉機構、引き外し手段を内部に収納する器体と、開閉機構によって主接点を投入する投入位置と主接点を開放させる開放位置との間で器体に対して回動自在に設けられたハンドルと、器体の平坦な前面から突出するハンドルの回動運動を当該前面と略平行なスライド運動に変換する変換手段とを備え、
変換手段は、手動でスライド操作される操作部と、ハンドルに押圧力を加えることで少なくとも主接点を開放する際に操作部のスライド量よりも大きな移動量でハンドルを回動させる押圧部とを有することを特徴とする回路遮断器。
【請求項2】
押圧部は、投入位置から開放位置に向かって回動するハンドルの先端に摺接する摺接面を有し、当該摺接面が複数の面よりなることを特徴とする請求項1記載の回路遮断器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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