説明

回転コネクタ

【課題】一方の部材に対して他方の部材を相対的に回転させたときにおけるケーブルの捻れや屈曲による断線を防止する回転コネクタを提供すること。
【解決手段】一方の部材91に対し他方の部材92が相対的に回転可能に取り付けられた装置90において、一方の部材91に設けられた電気的要素と他方の部材92に設けられた電気的要素とを電気的に接続する回転コネクタ1であって、一方の部材91に取り付けられるオスコネクタ1aと、このオスコネクタ1aに対して回転自在に係合する他方の部材92に取り付けられるメスコネクタ1bと、を備え、オスコネクタ1aおよびメスコネクタ1bのいずれか一方には、リング状の円形導電部材15が設けられ、この円形導電部材15が設けられたコネクタに係合する相手方コネクタには、一方のコネクタを他方のコネクタに対し相対的に回転させたときに円形導電部材15の周面を摺動する摺動導電部材25が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンジなどの回転機構が設けられた装置に好適に用いられる回転コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、表示部(一方の部材)と、駆動部(他方の部材)とがヒンジによって相対的に回転可能に連結された液晶表示装置が記載されている。かかる構成では、ヒンジを構成する凹状部および凸状部の間に配された接続ケーブルにより、表示部と駆動部が電気的に接続されている(特許文献1の図6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−73118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のように、一方の部材と他方の部材が相対的に回転可能に構成された装置において、一方の部材の電気的要素と他方の部材の電気的要素をケーブルを用いて電気的に接続すると、一方の部材に対して他方の部材を相対的に回転させた場合、当該回転によって回転機構部分に設けられたケーブルが捻られたり曲げられてしまうため、ケーブルが断線してしまうおそれがある。また、一方の部材と他方の部材を一体に組付けた後のケーブルの余長分を収納するスペースを設ける必要もある。
【0005】
上記実情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、一方の部材に対して他方の部材が相対的に回転可能に設けられた回転機構を備えた装置において、一方の部材に対して他方の部材を相対的に回転させたときにおけるケーブルの捻れや屈曲による断線を防止する回転コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明にかかる回転コネクタは、一方の部材に対し他方の部材が相対的に回転可能に取り付けられた装置において、前記一方の部材に設けられた電気的要素と前記他方の部材に設けられた電気的要素とを電気的に接続する回転コネクタであって、前記一方の部材に取り付けられるオスコネクタと、このオスコネクタに対して回転自在に係合する前記他方の部材に取り付けられるメスコネクタと、を備え、前記オスコネクタおよびメスコネクタのいずれか一方には、リング状の円形導電部材が設けられ、この円形導電部材が設けられたコネクタに係合する相手方コネクタには、一方のコネクタを他方のコネクタに対し相対的に回転させたときに前記円形導電部材の周面を摺動する摺動導電部材が設けられていることを要旨とする。
【0007】
本発明にかかる回転コネクタは、一方のコネクタにリング状の円形導電部材を設け、他方のコネクタに当該円形導電部材の周面を摺動する摺動導電部材を設けた構成である。つまり、一方のコネクタと他方のコネクタによる電気的接続状態を維持したまま、一方のコネクタに対して他方のコネクタを相対的に回転させることができる。したがって、一方の部材に対して他方の部材を相対的に回転させた場合には、当該回転によって一方のコネクタに対して他方のコネクタが相対的に回転するから、両コネクタに接続されたケーブル(一方の部材に設けられた電気的要素と他方の部材に設けられた電気的要素を接続するためのケーブル)が大きく捻れたり屈曲したりすることない。それゆえ、本発明によれば、ケーブルの捻れや屈曲による断線を防止することができる。また、ケーブルの余長分を収納するスペースを設ける必要もない。
【0008】
また、前記円形導電部材は、前記オスコネクタに設けられる場合には前記メスコネクタと係合する方向に向かって段々と直径が小さくなるように、前記メスコネクタに設けられる場合には前記オスコネクタと係合する方向に向かって段々と直径が小さくなるように異なる直径のものが同軸線上に複数設けられているとよい。
【0009】
かかる構成とすれば、複数極を備える回転コネクタを提供できる。そして、直径が段々と小さく、または、大きくなるなるように段差状に円形導電部材を設けているため、コネクタに外力が加わること等により、一の円形導電部材に対応する摺動導電部材以外の摺動導電部材が接触することを防止することができる。
【0010】
また、前記円形導電部材が前記メスコネクタに設けられた場合において、前記円形導電部材の外周面には、軸線方向と直交する方向に延びる端子部材が接続されているとよい。
【0011】
このように、メスコネクタの端子部材を軸線方向と直交する方向に延びるように設けておけば、メスコネクタに接続されるケーブルを軸線方向と直交する方向に向かって引き出すこと(ケーブルをメスコネクタの外周面に接続すること)ができるから、一方の部材に対し他方の部材が相対的に回転可能に取り付けられた装置の構成(電気的要素の配置)によっては、メスコネクタに接続されたケーブルの捻れや屈曲をさらに抑制することができ、ケーブルの断線防止効果がさらに高まる。
【0012】
また、前記オスコネクタに設けられた前記円形導電部材の外周面に外向きに突出する突起が形成されている、または、前記メスコネクタに設けられた前記円形導電部材の内周面に内向きに突出する突起が形成されているとよい。
【0013】
このように円形導電部材にその周面から突出する突起を設け、コネクタが係合したとき、かかる突起によって円形導電部材と摺動導電部材が弾性をもって接触した状態(円形導電部材および摺動導電部材の少なくともいずれか一方が弾性変形した状態)とすれば、コネクタによる電気的接続状態が良好なものとなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、両コネクタに接続されたケーブル(一方の部材に設けられた電気的要素と他方の部材に設けられた電気的要素を接続するためのケーブル)が大きく捻れたり屈曲したりすることがないから、捻れや屈曲によるケーブル断線が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第一実施形態にかかる回転コネクタの外観斜視図である。
【図2】本発明の第一実施形態にかかる回転コネクタの断面図(図1におけるA−A線断面図)である。
【図3】本発明の第一実施形態にかかる回転コネクタを分解して示した図である。
【図4】本発明の第二実施形態にかかる回転コネクタを分解して示した図である。
【図5】本発明の第三実施形態にかかる回転コネクタを分解して示した図である。
【図6】本発明の第四実施形態にかかる回転コネクタの外観斜視図である。
【図7】本発明の第四実施形態にかかる回転コネクタを分解して示した図である
【図8】本発明の第五実施形態にかかる回転コネクタを分解して示した図である
【図9】第一実施形態の変形例にかかる回転コネクタの断面図である。
【図10】図10(a)は本発明の実施形態にかかるコネクタが回転機構を備える装置に適用された例を示した図であり、図10(b)は本発明の第四実施形態にかかるコネクタが回転機構を備える装置に適用された例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態にかかる回転コネクタについて図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、単に軸線方向とは回転コネクタ(オスコネクタおよびメスコネクタ)の軸線(中心軸)方向をいい、単に径方向とは、回転コネクタ(オスコネクタおよびメスコネクタ)の径方向、すなわち軸線方向に直交する方向をいう。また、単に先端側とはオスコネクタおよびメスコネクタのそれぞれにおいて、相手方コネクタと係合(嵌合)する方向をいい、単に基端側とはその反対方向をいう。
【0017】
本発明の実施形態にかかる回転コネクタは、図10(a)に示すような一方の部材91に対し他方の部材92が、例えばヒンジ(凸状部911および凹状部921とから構成される)によって相対的に回転可能に取り付けられた装置90(以下、回転機構を備える装置90と称することもある)に好適に用いられる。かかる回転機構を備える装置90としては、モニタが本体部に対してヒンジ等の回転機構により回転自在に設けられたモニタ装置等が例示できる。
【0018】
第一実施形態にかかる回転コネクタ1について説明する。図1〜図3に示す回転コネクタ1は、オスコネクタ1aおよびメスコネクタ1bを備える。オスコネクタ1aは、上記回転機構を備える装置90の一方の部材91に設けられた電気的要素912とケーブル913を介して電気的に接続される。メスコネクタ1bは、上記回転機構を備える装置90の他方の部材92に設けられた電気的要素922とケーブル923を介して電気的に接続される。装置90がモニタ装置である場合、一方の部材91に設けられた電気的要素912としては、モニタの駆動回路等が例示でき、他方の部材92に設けられた電気的要素922としては、本体部に設けられたスイッチ(ボタン)の操作によって生ずる信号を送る信号送信回路等が例示できる。
【0019】
オスコネクタ1aは、オスコネクタハウジング10と、このオスコネクタハウジング10に設けられる円形導電部材15と、この円形導電部材15に接続された端子部材16とを備える。
【0020】
オスコネクタハウジング10は、合成樹脂等の非導電性部材で一体成形された部材であり、筒状部11および係合部12を有する。筒状部11は、基端側に設けられた筒状の部分である。筒状部11の内周には、上記回転機構を備える装置90における一方の部材91の電気的要素912と電気的に接続されるケーブル913に設けられたコネクタ(図示せず)を、オスコネクタ1aに係合(嵌合)させるための係合溝112が形成されている。係合溝112は、互いに対向するように(周方向に180度回転させた場合に一致するように)二箇所形成され、径方向外向きに窪んでいる。なお、かかる係合溝112の数は特に限定されるものではなく、一箇所以上形成されていればよい。
【0021】
一方、オスコネクタハウジング10の係合部12は、先端方向に向かって先細となるテーパ形状の外周面に段差が形成された形状を有する。具体的には、先端方向に向かって段々と直径が小さくなるように薄い円柱が同軸線上に積み上げられた形状を有する。また、係合部12の先端には、メスコネクタ1bとの係合(嵌合)状態を維持するためのボス部121が形成されている。ボス部121は中央に隙間が形成された半割状(対称形状)に形成されており、隙間を狭める方向に弾性変形可能である。また、ボス部121の先端には引っ掛かりとなる引掛爪122が形成されている。引掛爪122は、ボス部121の先端面よりも径方向外向きに突出した平面視楕円形状の部分である。さらに、オスコネクタハウジング10(筒状部11および係合部12)には、端子部材16が挿通される軸線方向に延びる端子挿通孔111が複数(端子部材16の数分、すなわち極数分)形成されている。
【0022】
円形導電部材15は、銅などの導電性材料で形成されたリング状の部材である。オスコネクタ1aは、複数の円形導電部材15を備える。各円形導電部材15は、オスコネクタハウジング10の係合部12における各円柱部分の外側に嵌め込まれて固定されている。つまり、オスコネクタ1aは、同軸線上に並ぶ(中心軸が同じである)先端側に向かって段々と直径が小さくなる複数の円形導電部材15を備える。したがって、オスコネクタハウジング10の係合部12の外周面は、複数の円形導電部材15で覆われる。各円形導電部材15の内径は、対応する(嵌め込まれる)係合部12の円柱部分の外径と略同じに設定される。なお、各円形導電部材15を係合部12の各円柱部分に圧入により固定するため、各円形導電部材15の内径を対応する円柱部分の外径よりもプラス公差分大きく設定するとよい。なお、かかる円形導電部材15の固定方法は圧入に限られない。例えば、インサート成形によってオスコネクタハウジング10と一体的に形成される構成としてもよい。
【0023】
端子部材16は、銅などの導電性材料で形成された棒状の部材である。端子部材16は、その先端部が各円形導電部材15の内周面に軸線方向に延びるように一つずつ接続されている。すなわち、オスコネクタ1aは、複数の端子部材16を備える。なお、各端子部材16と円形導電部材15の接続方法は、両者の良好な電気的な接続状態を確保できるものであれば、どのような接続方法を用いてもよい。各円形導電部材15の先端側端面と、それに接続された各端子部材16の先端側端面は面一となっている。一方、各端子部材16は、オスコネクタハウジング10に形成された端子挿通孔111に挿通され、各端子部材16の基端側端部が筒状部11の内側に突出している。かかる突出した部分は、上記回転機構を備える装置90における一方の部材91の電気的要素912と電気的に接続されるケーブル913に設けられたコネクタ(図示せず)の端子と接続される部分となるため、突出長さは同じである。すなわち、端子部材16の長さは、基端側に位置する円形導電部材15に接続されるものほど短い。
【0024】
メスコネクタ1bは、上記オスコネクタ1aと同様に、メスコネクタハウジング20と、このメスコネクタハウジング20に設けられる円形導電部材25と、この円形導電部材25に接続された端子部材26とを備える。
【0025】
メスコネクタハウジング20は、合成樹脂等の非導電性部材で一体成形された部材であり、筒状部21および係合部22を有する。筒状部21は、基端側に設けられた筒状の部分であり、オスコネクタハウジング10の筒状部11と同様の構成を備える。すなわち、筒状部21には、上記回転機構を備える装置90における他方の部材92の電気的要素922と電気的に接続されるケーブル923に設けられたコネクタ(図示せず)を、メスコネクタ1bに係合(嵌合)させるための係合溝212が形成されている。なお、かかる係合溝212の数は特に限定されるものではなく、一箇所以上形成されていればよい。
【0026】
一方、メスコネクタハウジング20の係合部22は、外周面が円筒形状であり、内側に先端方向に向かって拡径するテーパ形状の内周面に段差が形成された形状を有する。具体的には、先端方向に向かって段々と直径が大きくなるように薄い円柱形状の空間が同軸線上に積み上げられた形状を有する。また、係合部22の基端には、オスコネクタ1aとの係合(嵌合)状態を維持するための嵌合孔221が形成されている。嵌合孔221は、オスコネクタハウジング10に形成されたボス部121の外周よりも大きく、引掛爪122の外縁よりも小さい(引掛爪122の少なくとも一部が嵌合孔221よりも外側に張り出す)直径に形成されている。さらに、メスコネクタハウジング20(筒状部21および係合部22)には、端子部材26が挿通される軸線方向に延びる端子挿通孔211が複数(端子部材26の数分、すなわち極数分)形成されている。
【0027】
円形導電部材25は、オスコネクタ1aの円形導電部材15と同様に、銅などの導電性材料で形成されたリング状の部材である。メスコネクタ1bは、複数の円形導電部材25を備える。各円形導電部材25は、メスコネクタハウジング20の係合部22の各円柱形状の空間に面する内周面に嵌め込まれて固定されている。つまり、メスコネクタ1bは、同軸線上に並ぶ(中心軸が同じである)先端側に向かって段々と直径が大きくなる複数の円形導電部材25を備える。したがって、メスコネクタハウジング20の係合部22の内周面は、複数の円形導電部材25で覆われる。各円形導電部材25の外径は、対応する(嵌め込まれる)係合部22の円柱形状の空間の径と略同じに設定される。なお、各円形導電部材25を係合部22の各円柱部分に圧入により固定するため、各円形導電部材25の外径を対応する円柱形状の空間の径よりもプラス公差分大きく設定するとよい。なお、かかる円形導電部材25の固定方法も圧入に限られない。例えば、インサート成形によってメスコネクタハウジング20と一体的に形成される構成としてもよい。
【0028】
また、メスコネクタ1bの各円形導電部材25の内径は、対応するオスコネクタ1aの円形導電部材15の外径と同じに設定される。すなわち、オスコネクタ1aとメスコネクタ1bが係合(嵌合)すると、メスコネクタ1bの各円形導電部材25の内周面と、対応するオスコネクタ1aの円形導電部材15の外周面とが接触する(電気的に接続される)。
【0029】
端子部材26は、銅などの導電性材料で形成された棒状の部材である。端子部材26は、その先端部が各円形導電部材25の外周面に軸線方向に延びるように一つずつ接続されている。すなわち、メスコネクタ1bは、複数の端子部材26を備える。なお、各端子部材26と円形導電部材25の接続方法は、両者の良好な電気的な接続状態を確保できるものであれば、どのような接続方法を用いてもよい。各円形導電部材25の先端側端面と、それに接続された各端子部材26の先端側端面は面一となっている。一方、各端子部材26は、メスコネクタハウジング20に形成された端子挿通孔211に挿通され、各端子部材26の基端側端部が筒状部21の内側に突出している。かかる突出した部分は、上記回転機構を備える装置90における他方の部材92の電気的要素922と電気的に接続されるケーブル923に設けられたコネクタ(図示せず)の端子と接続される部分となるため、突出長さは同じである。すなわち、端子部材26の長さは、基端側に位置する円形導電部材25に接続されるものほど短い。
【0030】
以下、上記構成を備える回転コネクタ1の作用(機能)について説明する。オスコネクタ1aとメスコネクタ1bを係合(嵌合)させる際には、オスコネクタ1aをメスコネクタ1b(メスコネクタハウジング20の係合部22)の内側の空間に挿入する。オスコネクタ1aを奥まで挿入すると、オスコネクタハウジング10のボス部121が、メスコネクタハウジング20の嵌合孔221に嵌り込む。具体的には、ボス部121を嵌合孔221の先端側開口に押しつけると、引掛爪122が嵌合孔221を通ることができるような大きさにボス部121が隙間を狭める方向に弾性変形する。そのままボス部121が嵌合孔221を通過し、引掛爪122が嵌合孔221の基端側開口より外に出ると、ボス部121の弾性変形が解消され、引掛爪122が嵌合孔221の基端側開口周縁に引っ掛かった状態となる。これにより、両コネクタが係合する。
【0031】
この状態となると、オスコネクタ1aの各円形導電部材15の外周面と、それに対応するメスコネクタ1bの円形導電部材25の内周面とが接触する。すなわち、両コネクタに設けられた円形導電部材15、25同士が電気的に接続される。
【0032】
本実施形態にかかる回転コネクタ1は、回転機構を備える装置90のヒンジ部分に搭載される。例えば、オスコネクタ1aは回転機構を備える装置90における一方の部材91に設けられた凸状部911に固定され、メスコネクタ1bは回転機構を備える装置90における他方の部材92に設けられた凹状部921に固定される。回転機構を備える装置90における一方の部材91を、他方の部材92に対して相対的に回転させた場合、一方のコネクタ1a(1b)に対して他方のコネクタ1b(1a)が相対的に回転する。
【0033】
このような場合においても、次のような理由から、回転コネクタ1による電気的接続状態は維持される。一方のコネクタ1a(1b)に対して他方のコネクタ1b(1a)が相対的に回転した場合、一方のコネクタ1a(1b)に設けられた円形導電部材15(25)に対して他方のコネクタ1b(1a)に設けられた円形導電部材25(15)が相対的に回転する。オスコネクタ1aに設けられた円形導電部材15の外径は、メスコネクタ1bに設けられた円形導電部材25の内径と同じに設定されているため、両者は接触した状態を維持したまま相対的に回転する。すなわち、一方のコネクタ1a(1b)に設けられた円形導電部材15(25)の周面を、他方のコネクタ1b(1a)に設けられた円形導電部材25(15)が摺動する。したがって、回転コネクタ1による電気的接続状態は維持されることとなる。換言すれば、回転機構を備える装置90における一方の部材91の電気的要素912と他方の部材92の電気的要素922の電気的接続状態が維持されることとなる。
【0034】
なお、以上説明した回転コネクタ1は、オスコネクタ1aおよびメスコネクタ1bの両方にリング状の円形導電部材15、25が設けらた構成である。一方のリング状の円形導電部材15(25)は、本発明における「摺動導電部材」に相当する。すなわち、オスコネクタ1aに本発明における「円形導電部材」が設けられているとすれば、メスコネクタ1bにリング状の「摺動導電部材」が設けられていることになるし、メスコネクタ1bに本発明における「円形導電部材」が設けられているとすれば、オスコネクタ1aにリング状の「摺動導電部材」が設けられていることになる。
【0035】
以上の構成を備える本実施形態にかかる回転コネクタ1によれば、回転機構を備える装置90における一方の部材91に対して他方の部材92を相対的に回転させた場合、当該回転によって一方のコネクタ1a(1b)が他方のコネクタ1b(1a)に対して相対的に回転するから、両コネクタの端子部材16、26に接続されるケーブル(一方の部材91に設けられた電気的要素912とオスコネクタ1aを接続するためのケーブル913や、他方の部材92に設けられた電気的要素922とメスコネクタ1bを接続するためのケーブル923)が大きく捻れたり屈曲したりすることはない。したがって、ケーブル913、923の捻れや屈曲による断線が防止される。また、ケーブル913、923の余長分を収納するスペースを設ける必要もない。
【0036】
また、両コネクタには、直径が段々と小さく、または、大きくなるなるように段差状に円形導電部材15、25が設けられているため、コネクタに外力が加わること等により、一の円形導電部材15(25)に対応する円形導電部材(摺動導電部材)25(15)以外の円形導電部材25(15)が接触することを防止することができる。
【0037】
次に、本発明の第二実施形態にかかる回転コネクタ2について説明する。なお、以下の説明は、第一実施形態と異なる点を中心に説明し、第一実施形態と同一の構成については説明を省略する。
【0038】
図4に示す第二実施形態にかかる回転コネクタ2は、オスコネクタ2aの構成が第一実施形態と異なる。つまり、メスコネクタ1bの構成は第一実施形態と同一である。オスコネクタ2aは、オスコネクタハウジング10と、摺動導電部材35とを備える。
【0039】
オスコネクタハウジング10の構成は、第一実施形態と同様である。すなわち、筒状部11および係合部12を備え、端子挿通孔111、係合溝112、ボス部121、および引掛爪122が形成されている。
【0040】
一方、本実施形態におけるオスコネクタ2aには、円形導電部材が設けられておらず、複数の棒状の摺動導電部材35が設けられている。摺動導電部材35は、銅などの導電性材料で形成された棒状の部材であり、オスコネクタハウジング10に形成された端子挿通孔111に挿通されて固定されている。各摺動導電部材35の先端側端部は、オスコネクタハウジング10の円柱部分の外周面に接触している。各摺動導電部材35の先端側端面と、それに接触する円柱部分の先端側端面は面一となっている。また、各摺動導電部材35は、オスコネクタハウジング10に形成された端子挿通孔111に挿通され、各摺動導電部材35の基端側端部が筒状部11の内側に突出している。かかる突出した部分は、上記回転機構を備える装置90における一方の部材91の電気的要素912と電気的に接続されるケーブル913に設けられたコネクタ(図示せず)の端子と接続される部分となる。つまり、摺動導電部材35は、後述する機能に加え、端子としても機能する。
【0041】
以下、上記構成を備える回転コネクタ2の作用(機能)について説明する。オスコネクタ2aとメスコネクタ1bを係合(嵌合)させる際には、上記第一実施形態と同様に、オスコネクタハウジング10のボス部121とメスコネクタハウジング20の嵌合孔221とを係合させる。
【0042】
この状態となると、オスコネクタ2aの摺動導電部材35の先端部、それに対応するメスコネクタ1bの円形導電部材25の内周面とが接触する。すなわち、摺動導電部材35と、それに対応する円形導電部材25が電気的に接続される。回転機構を備える装置90における一方の部材91を、他方の部材92に対して相対的に回転させた場合、一方のコネクタ2a(1b)に対して他方のコネクタ1b(2a)が相対的に回転する。このとき、メスコネクタ1bに設けられた円形導電部材25の内周面を、オスコネクタ2aに設けられた摺動導電部材35の先端部分が摺動する。したがって、回転コネクタ2による電気的接続状態は維持されることとなる。換言すれば、回転機構を備える装置90における一方の部材91の電気的要素912と他方の部材92の電気的要素922の電気的接続状態が維持されることとなる。
【0043】
このように、メスコネクタ1bにのみ円形導電部材25を設け、オスコネクタ2aに円形導電部材の周面を摺動する摺動導電部材35を設けた構成としても、回転コネクタ2による電気的接続状態は維持される。
【0044】
なお、図5に示すように、オスコネクタ1aにのみ円形導電部材15を設け、メスコネクタ3bに円形導電部材15の周面を摺動する摺動導電部材45を設けた構成としてもよい(第三実施形態にかかる回転コネクタ3)。すなわち、オスコネクタ1aは第一実施形態と同一の構成としておき、メスコネクタ3bのメスコネクタハウジング20の段差状の内周面(円柱形状の空間)のそれぞれに接触する摺動導電部材45を設けた構成としてもよい。かかる構成とすれば、一方のコネクタ1a(3b)に対して他方のコネクタ3b(1a)が相対的に回転したときであっても、オスコネクタ1aに設けられた円形導電部材15の外周面を、メスコネクタ3bに設けられた摺動導電部材45の先端部分が摺動するから、回転コネクタ3による電気的接続状態は維持される。
【0045】
以上説明した第二実施形態にかかる回転コネクタ2および第三実施形態にかかる回転コネクタ3のように、リング状の円形導電部材25、15を一方のコネクタにのみ設け、他方のコネクタにはその周面を摺動する摺動導電部材35、45を設けた構成としてもよい。かかる構成を採用した場合であっても、上記実施形態と同様の効果が奏される。
【0046】
なお、円形導電部材を削減できる(どちらか一方のコネクタには円形導電部材が不要となる)という点、すなわちコスト面では、第一実施形態よりも第二実施形態および第三実施形態の方が有利である。一方、第一実施形態では、オスコネクタ1aに設けられた円形導電部材15とメスコネクタ1bに設けられた円形導電部材25の周面同士が接触(摺動)する構成であるため、電気的接続の信頼性という点では、第二実施形態および第三実施形態よりも第一実施形態の方が有利である。したがって、電力線を接続するためのコネクタとして用いる場合には第一実施形態を採用し、信号線を接続するためのコネクタとして用いる場合には第二実施形態や第三実施形態を採用するといった基準を設定することが、好ましいコネクタの選択手法として例示できる。
【0047】
次に、本発明の第四実施形態にかかる回転コネクタ4について説明する。なお、以下の説明は、第一実施形態と異なる点を中心に説明し、第一実施形態と同一の構成については説明を省略する。
【0048】
図6および図7に示す第四実施形態にかかる回転コネクタ4は、メスコネクタ4bの構成が第一実施形態と異なる。つまり、オスコネクタ1aの構成は第一実施形態と同一である。メスコネクタ4bは、メスコネクタハウジング50と、円形導電部材25と、端子部材56とを備える。
【0049】
メスコネクタハウジング50は、外周面が円筒形状であり、内側に先端方向に向かって拡径するテーパ形状の内周面に段差が形成された形状を有する。すなわち、第一実施形態と同様に、先端方向に向かって段々と直径が大きくなるように薄い円柱形状の空間が積み上げられた形状を有する。かかる各円柱形状の空間に面する内周面には、径方向に延びる端子挿通孔511が形成されている。つまり、第一実施形態では、軸線方向に延びる端子挿通孔211が形成されているのに対し、本実施形態では径方向に延びる端子挿通孔511が形成されている。また、本実施形態における端子挿通孔511は、一つの大きな孔である(各端子部材56を固定するために一つずつ形成されたものではない)。さらに、端子挿通孔511は、メスコネクタハウジング50の先端側が開口した形状である。
【0050】
円形導電部材25は、第一実施形態と同一の構成である。すなわち、各円形導電部材25は、メスコネクタハウジング50の各円柱形状の空間に面する内周面に嵌め込まれて固定されている。
【0051】
端子部材56は、各円形導電部材25の外周面に軸線方向と直交する方向に延びるように接続されている。つまり、第一実施形態では、軸線方向に延びるように端子部材26が円形導電部材25に接続されているのに対し、本実施形態では軸線方向と直交する方向に延びるように端子部材56が円形導電部材25に接続されている。
【0052】
このように端子部材56が接続された各円形導電部材25がメスコネクタハウジング50に嵌め込まれると、端子部材56は端子挿通孔511を通じてメスコネクタハウジング50(回転コネクタ4)の外周側で露出する。なお、端子挿通孔511がメスコネクタハウジング50の先端側で開口した形状としたことにより、端子部材56が接続された円形導電部材25(端子部材56と円形導電部材25が一体化された部材)をメスコネクタハウジング50の先端側から挿入することが可能となっている。かかるメスコネクタハウジング50の外周側で露出した端子部材56には、回転機構を備える装置90における他方の部材92の電気的要素922と電気的に接続されるケーブル923に設けられたコネクタが接続されることになる。
【0053】
このように、メスコネクタ4bの端子部材56を軸線方向と直交する方向に延びるように設ければ、メスコネクタ4bに接続されるケーブル923を軸線方向と直交する方向に向かって引き出すこと(ケーブル923をメスコネクタ4bの外周面に接続すること)ができる。つまり、回転機構を備える装置90における他方の部材92の電気的要素922の配置によっては、メスコネクタ4bに接続されたケーブル923の捻れや屈曲をさらに抑制することができる。例えば、図10(b)に示すように、他方の部材92の電気的要素922(の端子部)が、ヒンジ部分から真っ直ぐ軸線方向と直交する方向に延びるような位置に位置している場合には、本実施形態が有効となる。
【0054】
なお、上記第四実施形態を用いて説明した技術的思想(端子部材56が軸線方向に直交する方向に延びるように円形導電部材25の外周面に接続されている構成)は、メスコネクタ4bに円形導電部材25が設けられている場合に適用可能である。したがって、第一実施形態のようにオスコネクタ1aおよびメスコネクタ1bの両方に円形導電部材15、25が設けられている場合や、第二実施形態のようにメスコネクタ1bにのみ円形導電部材25が設けられている場合に適用可能である。
【0055】
次に、本発明の第五実施形態にかかる回転コネクタ5について説明する。なお、以下の説明は、第一実施形態と異なる点を中心に説明し、第一実施形態と同一の構成については説明を省略する。
【0056】
図8に示す第五実施形態にかかる回転コネクタ5は、オスコネクタ5aおよびメスコネクタ5bが備える円形導電部材65、75の構成が第一実施形態と異なる。具体的には、図8に示すように、オスコネクタ5aに設けられた円形導電部材65の外周面に外向きに突出する突起651(以下、外向き突起651と称することもある)が形成されており、メスコネクタ5bに設けられた円形導電部材75の内周面に内向きに突出する突起751(以下、内向き突起751と称することもある)が形成された構成である。外向き突起651および内向き突起751は、円形導電部材65、75の周方向全体に亘って形成されている(周方向に途切れる部分がない連続した形状である)。
【0057】
かかる構成とすれば、オスコネクタ5aとメスコネクタ5bが係合(嵌合)すると、オスコネクタ5aの円形導電部材65に設けられた外向き突起651と、メスコネクタ5bの円形導電部材75に設けられた内向き突起751が係合する(凹凸が係合する)ため、オスコネクタ5aの円形導電部材65とそれに接触するメスコネクタ5bの円形導電部材75の電気的接続の信頼性が向上する。仮に摺動によって両円形導電部材65、75が激しく摩耗した場合であっても、凹凸による係合状態であるため、両円形導電部材65、75の電気的接続状態を維持できる(換言すれば、回転コネクタ5の寿命が延びる)。
【0058】
なお、上記構成は、オスコネクタ5aの円形導電部材65およびメスコネクタ5bの円形導電部材75の両方に突起651、751が形成された構成であるが、いずれか一方の円形導電部材65(75)にのみ突起651(751)が形成された構成としてもよい。かかる構成とすれば、一方の円形導電部材65(75)に形成された突起651(751)の存在によって両円形導電部材が弾性変形するから、当該弾性力をもって互いに押し合うように両円形導電部材が接触した状態となる。したがって、電気的接続の信頼性が向上する。
【0059】
以上の第五実施形態を用いて説明した技術的思想(円形導電部材に突起が形成されている構成)は、メスコネクタ1bにのみ円形導電部材25が設けられた上記第二実施形態、および、オスコネクタ1aにのみ円形導電部材15が設けられた上記第三実施形態にも適用可能である。また、第二実施形態および第三実施形態において、摺動導電部材35、45における円形導電部材25、15と接触する部分に突起を設けたとしても、上記と同様の効果が期待できる。さらに、第四実施形態にも適用可能である。
【0060】
さらに、回転コネクタの電気的接続の信頼性を高める変形例として、図9に示す構成が考えられる(第一実施形態の変形例にかかる回転コネクタ1′)。図9に示すように、オスコネクタ1a′に設けられる各円形導電部材15′を先端に向かって先細となるようなテーパ形状とし、メスコネクタ1b′に設けられる各円形導電部材25′を先端に向かって拡径するようなテーパ形状とすれば、オスコネクタ1a′とメスコネクタ1b′の係合(嵌合)により、両円形導電部材15′、25′のテーパ面同士が密着して接触するから、電気的接続の信頼性が向上する。かかる技術的思想は、第二実施形態や第三実施形態のように、いずれか一方のコネクタにのみ円形導電部材25、15が設けられた構成であっても適用可能である。また、第四実施形態にも適用可能である。
【0061】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0062】
例えば、上記全ての実施形態にかかる回転コネクタは、回転機構を備える装置90のヒンジを構成する部材としても適用可能である。すなわち、ヒンジには、回転軸となる軸状の部分と、その軸状の部分を支持する軸受部分が必要になるところ、かかる軸状の部分をオスコネクタで、軸受部分をメスコネクタで代替することもできる。
【符号の説明】
【0063】
1 回転コネクタ(第一実施形態)
1a オスコネクタ
15 円形導電部材(摺動導電部材)
16 端子部材
1b メスコネクタ
25 摺動導電部材(円形導電部材)
26 端子部材
2 回転コネクタ(第二実施形態)
2a オスコネクタ
35 摺動導電部材
3 回転コネクタ(第三実施形態)
3b メスコネクタ
45 摺動導電部材
4 回転コネクタ(第四実施形態)
4b メスコネクタ
56 端子部材
5 回転コネクタ(第五実施形態)
5a オスコネクタ
75 円形導電部材
751 突起
5b メスコネクタ
85 円形導電部材
851 突起
90 回転機構を備える装置
91 一方の部材
92 他方の部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の部材に対し他方の部材が相対的に回転可能に取り付けられた装置において、前記一方の部材に設けられた電気的要素と前記他方の部材に設けられた電気的要素とを電気的に接続する回転コネクタであって、
前記一方の部材に取り付けられるオスコネクタと、このオスコネクタに対して回転自在に係合する前記他方の部材に取り付けられるメスコネクタと、を備え、
前記オスコネクタおよびメスコネクタのいずれか一方には、リング状の円形導電部材が設けられ、
この円形導電部材が設けられたコネクタに係合する相手方コネクタには、一方のコネクタを他方のコネクタに対し相対的に回転させたときに前記円形導電部材の周面を摺動する摺動導電部材が設けられていることを特徴とする回転コネクタ。
【請求項2】
前記円形導電部材は、前記オスコネクタに設けられる場合には前記メスコネクタと係合する方向に向かって段々と直径が小さくなるように、前記メスコネクタに設けられる場合には前記オスコネクタと係合する方向に向かって段々と直径が小さくなるように異なる直径のものが同軸線上に複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載の回転コネクタ。
【請求項3】
前記円形導電部材が前記メスコネクタに設けられた場合において、
前記円形導電部材の外周面には、軸線方向と直交する方向に延びる端子部材が接続されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回転コネクタ。
【請求項4】
前記オスコネクタに設けられた前記円形導電部材の外周面に外向きに突出する突起が形成されている、または、前記メスコネクタに設けられた前記円形導電部材の内周面に内向きに突出する突起が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の回転コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−164474(P2012−164474A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22800(P2011−22800)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)