説明

回転ボビンホルダ

回転ボビンホルダは、ヘッド25aと、長さを変えることができかつ略非円形断面を有する本体25cとを有するスタッド部材25を備え、本体はネジ形状部25dとして更に延び、スタッド部材は、幅広バレル11の小孔を貫通するように配置される。また回転ボビンホルダは、スタッド部材を挿通でき、かつブレーキテンショナ19により可変制動力を与えるためにバレルの外側上面に配置されるブレーキシュー17を備える。テンショナは、その一方側がブレーキシューに接続され、他方側にはテンショナ支持部材20が当接し、スカート部材18は、スタッド部材を挿通するとともに、上側幅広バレル上に配置される。スカート部材を回転不能に支持すべく、スカート部材に設けられた、テンショナ支持部材の外形に対応する形状部がある。テンショナの圧縮・解放のため、スタッド部材の本体にはスペーサ部材26が配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボビンホルダの分野に属する。本発明は、制動力を変えることができる回転ボビンホルダに関する。
【背景および関連技術】
【0002】
ボビンホルダは、紡績工場における粗紡プロセスおよび紡績プロセスにおいて不可欠な重要な機能的コンポーネントである。それは吊り下げタイプの回転ボビンホルダであり、このタイプの回転ボビンホルダにおいては、糸、スライバーまたは粗紡のための標準型ボビンが紡績機械等のクリールレール(糸巻軸架)から自在に回転できるように解放可能に吊り下げられる。
【0003】
紡績機において主に使用される従来のボビンホルダは2つの主な機能を有している。第1の機能は、それが粗紡糸ボビンを無理なく固定して解放できるという機能である。この目的のため、ボビンホルダのバレル本体内には自動固定・自動解放機構が装備されている。バレル本体は、ボビンの上部に設けられたボビン支持穴内に挿入されると、バレル本体の下部から複数の方向に突出する2つ以上のフィンガまたはレバーから成る媒体により、ボビン支持穴とその深さで延びる大径中空部との間に位置する肩部でボビンを支持する。
【0004】
ボビンホルダの第2の主要な機能は、吊り下げられたボビンホルダを滑らかに、かつ均一に回転させるという機能である。この目的のため、ほぼ全てのボビンホルダは、紡績機のクリールレール上に掛けられた転動接触ボールベアリングを使用する。ホルダ紡績フレームにおいては、クリールレールから垂れ下げるために最大で1200個のボビンホルダが必要とされる。したがって、これらのボビンをできる限り軽量にし、かつ安価にすることが必要不可欠である。そのため、ボールベアリング部分のボールに関してのみ金属が使用され、残りの部分は耐磨耗性の良い合成樹脂性材料によって形成される。ボビンホルダの軸方向に配置されたこの転動ベアリング構造は、ベアリング自体と協働して、実質的にゼロの回転抵抗値を有し、それにより滑らかで、かつ均一な回転を確保する。
【0005】
動作中、回転ボビンホルダには、無制限に回転自在なだけではなく、制御かつ制限された回転も与える必要がある。ボビンホルダの回転速度は、粗紡糸を紡績機内へ供給する速度と一致していなければならない。最良の糸品質パラメータを得るためには、均一な粗紡張力(ロービングテンション)を維持する必要がある。
【0006】
制御された回転は、コイルスプリングによりブレーキシューがボビンホルダの回転部分に対して押圧される制動システムを設けることによって達成される。したがって、コイルスプリングによる押圧力が変えられなければ、ベアリング側での制動トルク(T)は実質的に一定である。
【0007】
ボビンホルダが作動しているとき、ベアリング側の制動トルク(T)は、粗紡糸が引き出される際に回転部分に及ぼされる粗紡糸引抜きテンションFによって引き起こされる粗紡糸ボビン側の回転トルク(T)に近い値を維持する。この値が維持されない場合には、粗紡糸が必要以上に繰り出され、自在な回転に起因して粗紡糸が弛んだり、糸が複数個所で切断される可能性があり、あるいは、ぴんと張った状態での回転により粗紡糸が引き伸ばされ、および/またはパチンと切れる。
【0008】
スプリングは、それが所定距離(d)まで圧縮される際にその剛性(k)が所要の圧縮力(C)を及ぼすように選択され、上記圧縮力は、摩擦係数(μ)と共に、回転トルク(T)との平衡を維持するような制動トルク(T)を生成する。
【0009】
実際には、繊維の様々な用途で使用される糸には、幾つかの品質が存在する。これらのタイプの糸は各々、様々な大きさの粗紡張力を引き起こす。
【0010】
粗紡張力の設定は、使用される原材料の品質、スピンドル速度、粗紡および紡績における捻れ係数、紡がれる番手、経年数、紡績フレームの型といった多くのファクタに基づいている。粗紡張力は、用途に応じて2グラムから8グラムまで変化し、したがって、ボビンホルダには多くの異なる制動力/制動トルクを与える必要がある。そのため、現在では、様々な用途に適するように異なる制動スプリングを有するボビンホルダの異なる組が使用されている。一般的には、3つの異なるブレーキシステムが使用される。すなわち、1つ目は粗番手の糸のためのものであり、2つ目は中間番手用であり、3つ目は細番手の糸のためのものである。しかしながら、多くの場合、糸の番手だけが、特定のボビンホルダの確定した変化決定のパラメータではない。速度、捻れ係数、原材料品質、多くの他の条件の変化などの他パラメータによっても、ユーザは、可変制動力を達成するために異なるボビンホルダを使用する。また、様々な用途においてブレーキシステムをカスタマイズするために、異なるスプリングシステムを使用することも一般的である。通常、これらは、スカート部材に対して指定されたカラーコードによって区別される。例えば、市場における需要から、ユーザが番手の変更を望む場合には、ボビンホルダ全体を変えなければならない。あるいは、ボビンホルダを開放することによってブレーキスプリングを変更する必要があり、これにより、ボビンホルダの製造メーカの当初の設定が著しく変更され場合もある。また、これらの変更が織物工場における製造に影響を及ぼす場合がある。回転トルクが大幅に変更される様々な紡績条件下で制動トルク(T)を調整できる普遍的なボビンホルダが存在しなければならないということは、紡績産業において長年にわたって感じられてきた必要性である。
【0011】
周知のボビンホルダにおいて、制動トルクを与えるスプリングの圧縮長さは一定である。これは、スプリングの両端が固定されているからである。すなわち、スプリングの一端がブレーキシュー上に載置され、スプリングの他端がスカートまたはキャップの内面上に載置されている。
【0012】
調整可能な制動ボビンホルダを開発する試みがなされた。これは、特許EP0547712号において説明されている。このバージョンは2つのスライド可能な円筒部材を使用している。この場合、一方の円筒部材内に他方の円筒部材が設けられ、これらの両方の円筒部材は、周知のボビンロックフィンガシステムのうちの1つを回転可能に支持するスタッド部材上に取り付けられている。外側円筒部材は、その内周面に螺旋状の突起を備えているとともに、均一に離間する切り欠きが設けられた螺旋形状部または段差形状部の下端を備えている。内側円筒部材は、その上端周面に螺旋溝を備えるとともに、下端に円形リムを備えており、その上端は、上記切り欠きに適合する歯が設けられた螺旋形状部または段差形状部を有している。円筒部材を互いに対して回転させることにより、螺旋形状部同士の間の接触に起因して、内側円筒部材は、外側円筒部材に対して軸方向に沿って下方または上方へ移動される。内側円筒部材の下側への移動により螺旋スプリングが圧縮され、それにより性動力が増大する。内側円筒部材を下側から支持するとともに、それを常に外側円筒部材の上側内面と接触した状態に維持するため、制動スプリングの内側には同軸に他のスプリングが設けられる。
【0013】
しかしながら、調整可能な制動力システムのこの実施形態では、設定を明確に視認できない。無論、一方の円筒部材の表面にエンボス加工された文字により位置がマーキングされるが、遠くから見ることができない。このことは、異なるボビンホルダにおいて異なる設定が存在しても、それが即座に検出されて修正されないことを意味する。
【発明の目的】
【0014】
本発明の主な目的は、制動力を変えることができ、かつその設定を明確に視認できる回転ボビンホルダを提供することである。
【0015】
本発明の目的は、単一のトルクスプリングを使用することにより制動力を変えることができる回転ボビンホルダを提供することである。
【0016】
本発明の他の目的は、取り外し可能なスペーサおよび除去不能なスペーサを使用して所望の制動力を生成することにより制動力を変えることができる回転ボビンホルダを提供することである。
【発明の概要】
【0017】
したがって、本発明は、上側幅広バレルと下側幅狭トランクとを有するボビン吊り下げチューブを備えるとともに、ボビンを保持して解放するための一対のボビン保持フィンガを上記トランクが有し、リング紡績機に対して接続される回転ボビンホルダであって、ベアリングアセンブリを受けるための曲面形状を成すヘッドと、上記ヘッドから延びるとともに略樽形状の膨出部で終端する滑らかな首部とを有するスタッド部材を備え、長さを変えることができ、首部から延びるとともに、略非円形断面を有する上記スタッド部材の本体部を備え、上記本体部はネジ形状部として更に延び、上記スタッド部材は、幅広バレルの上面の小孔を貫通するように配置され、ベアリングアセンブリを有するヘッドは、ボビン吊り下げチューブに対して回転動作を与えるために、バレルの上側内面に回転可能に当接し、上記スタッド部材を挿通させることができる中心開口を有するブレーキシューを備え、上記ブレーキシューは、ブレーキテンショナにより可変制動力を与えるためにバレルの外側上面に配置され、上記テンショナは、その一方側をブレーキシューの上面に対して機能的に接続させ、テンショナの他方側には、スタッド部材の本体に対応する形状を有するテンショナ支持部材が当接し、スタッド部材の本体の対応する形状を有する小孔をその上面に有するとともに、開口した下端部を有する拡径スカート部材を備え、上記スカート部材は、スタッド部材を挿通できるようになっているとともに、上側幅広バレルを包囲するように配置され、スカート部材を回転不能に機能的に支持するために、スカート部材の上端内面に設けられた、テンショナ支持部材の外形に対応する相対表面形状部を備え、上記テンショナを圧縮させ、かつ圧縮を解除するため、また、上記ボビン吊り下げチューブによって所望の可変制動力を生成するため、所望の厚さを有し、かつロック手段を伴う少なくとも1つのスペーサ部材がスタッド部材の本体上に配置されるとともにスカート部材の上面に設けられる、回転ボビンホルダを提供する。
【発明の詳細説明】
【0018】
したがって、本発明は、番手などの紡績状態に対応する可変制動力を及ぼすために制動力を変えることができるボビンホルダを提供する。以下、添付図面を参照しながら、本発明の代表的な実施形態について説明する。
【0019】
図1を参照すると、断面図における本発明のボビンホルダは、上側幅広バレル11と、回転可能な幅狭トランク8とを有している。幅狭トランク8は、リベット手段13により既知の方法で上側幅広バレル11に対して接続されて吊り下げられており、幅広バレル11と共に単一の回転可能ユニットを形成している。トランク上にはウェイトカラー3が浮いている。トランク8はアクチュエータ9を収容しており、アクチュエータの下端には、弓形の2つのフィンガ1が、アクチュエータピン4によりアクチュエータに対して回動可能に接続されている。アクチュエータ9の上側部分にはラチェット6が収容されている。また、ラチェットは、ラチェットピン7によりアクチュエータ9に接続したその本体上に2つの翼を有している。‘Z’型のフラットバネ5は、一方の脚部がアクチュエータ9の溝内に位置されるとともに、他方の端部がラチェット6上に載置されており、ラチェット6のための動作ラグとしての機能を果たす。アクチュエータ9の上端にはアクチュエータスプリング10が位置されている。アクチュエータスプリング10の上端は上端キャップ12に当接しており、上端キャップ12はリベット13を介してトランクの上端に固定されている。
【0020】
ボビンホルダの動作中、ウェイトカラーが1回押し上げられると、フラットバネ5がラチェット6を90度だけ回転させる。このとき、ラチェット6の本体の2つの翼は、水平位置をとり、これによりトランク8の肩部に載置する。この位置で、ボビン保持フィンガが縮小してボビンを解放する。
【0021】
ボビンによる二度目にボビンによってウェイトカラー3が押し上げられると、フラットバネ5の動作ラグがラチェット6を再び90度だけ回転させて、ラチェット6の翼が垂直配置をとり、それにより、アクチュエータ9はトランク8の肩部から離脱して更に下方へ落下することができる。このとき、フィンガ1がドエルピン2の助けにより揺動して離れ、それにより、ボビンを所定の位置に保持する。
【0022】
ここで、特に図1、2、4を参照することにより、本発明の一実施形態では、その両側が曲面形状を成すヘッド25aを有するスタッド部材25が、回転可能な上側幅広バレル11を装着するための回転不能な回動軸として使用される。上側幅広バレルの回転は、その上にボール15が回転可能に配置されて成るベアリングレース14によって行われる。上記スタッド部材25の首部25bは、全体に滑らかな外周を有しており、ヘッド25aから延びるとともに、略樽形状の膨出部25eで終端している。樽形状の膨出部25eは、テンショナ(引張部材)19の動作における下死点として作用する。引張部材19については後述する。膨出部25eからは上記スタッド部材25の本体部(25c,25fから形成される)が延びており、上記本体部は、長さを変えることができるとともに、略非円形断面を有している。本体部の長さは、ブレーキテンショナ19の長さおよび引張強度に対応して変化させることができる。スタッド部材25の本体部の変化できる長さは、テンショナ19の制限されない長さに比例する。本発明では、例示的な実施形態として、スタッド部材25の本体部25cの断面形状は、添付図面の図4に示されるように、例えば楕円、正方形、星形、十字形、六角形、ダイヤモンド形状、多角形、または、周囲に翼形状部を有する略円形体などの形状から選択される。これらの断面形状により、動作中にスカート部材をテンショナ支持部材20と共に直線的に動作させることができるとともに、上記スカート部材18の回転動作が防止される。しかしながら、本発明において、上記本体部25cに関しては、スカート部材18の回転動作を阻止できる他の任意の適切な断面形状を適合させることができることは言うまでもない。本発明において、使用される断面形状は、図4に示されるように、周囲に翼形状部25cを有する略円形体25fである。前述したようなスタッド部材25の断面形状は、ネジ形状部25dによって更に垂直に延ばされる。スタッド部材のネジ形状部領域25dは、中間取り付け装置22〜24により上記ボビンホルダをリング紡績機または同様の繊維機械のレール(図示せず)に対して吊り下げるために使用される。ベアリングレース14がそのヘッドに装着されて成るスタッド部材25は、幅広バレルの小孔を通過するように機能的に配置される。この場合、ベアリングレース14、ベアリングボール15、ケージ16は、バレル11およびトランク8に対して僅かな揺動動作および回転を与えるように既知の方法で幅広バレルの上側内面形状部に当接する。
【0023】
本発明の他の実施形態において、中心開口を有する上側幅広バレル11の上面に対応する正反対の形状を有するブレーキシュー17は、回転可能に配置され、スタッド部材25を中心開口に通過させることができるようになっており、それにより、ボビンホルダの動作中にブレーキシュー17に動作可能に接続したブレーキテンショナ19を用いて可変制動力を与えることができる。
【0024】
ブレーキテンショナ19は、その一方側がブレーキシュー17の上面に対して動作可能に接続されており、テンショナの他方側には、スタッド部材25の本体に対応する形状を有するテンショナ支持部材20が当接している。ここで分かるように、テンショナ19と当接するテンショナ支持部材20は、テンショナ19の上面に載置されている。本発明において、テンショナ支持部材20は六角形ワッシャの形態を成している。しかしながら、任意の他の適当な形状を上記テンショナ支持部材20に対して適用できる。本発明のテンショナ19は、動作中にブレーキシュー17に対して圧縮力および圧縮を解除する力を与えるためのテンション装置である。本発明では、金属スプリング、ゴム引きスプリングまたはゴムスリーブの形態を成すテンション装置がテンショナ19としての機能を果たすようになっている。しかしながら、テンション装置として開示されている金属物は、例示であり、そのような装置の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。また、液圧制御された金属装置、空気圧制御された金属装置、または、熱的に制御された金属装置を含むがこれらに限定されないそのような装置の変形例を使用することは、本発明の範囲内である。本発明では、例示的な実施形態として、可変制動力を生成するために金属スプリングがテンショナ19として使用される。
【0025】
ここで、具体的に図2または図3を参照すると、テンショナ19の配置が示されている。金属スプリングの形態を成すテンショナ19は、ブレーキシュー17およびテンショナ支持部材20の形態を成す端部支持体を用いて、スタッド部材25の本体部の周囲に配置される。テンショナ19は、ブレーキシュー17の上面とスタッド部材25のネジ形状部25dの開始部分との間の領域を覆うように配置される。
【0026】
拡径スカート部材18は、スタッド部材25の本体の対応する形状を有する小孔をその上面に有するとともに、開口した下端部を有している。また、上記スカート部材18は、スタッド部材25を挿通できるようになっているとともに、上側幅広バレル11を包囲するように配置される。スタッド部材25の本体部25cの可変可能な長さに対応する拡径スカート部材18を設けつつ、綿毛がベアリングアセンブリ内に入ることを防止するというスカート部材18の基本的な機能が確実に保たれる。
【0027】
本発明では、図6に与えられるような例示的な実施形態として、スカート部材18、スタッド部材25の本体部25cに対して回転動作しないように、対向する両端部に2つの溝18aが配置された小孔を有している。六角形ネジ付きワッシャ21は、スタッド部材25のネジ部に螺合されており、スカート部材18の直線動作のための上死点を規定している。
【0028】
スカート部材18の上側内面には、スタッド部材とスカート部材との間の相対的な回転が不可能な接続を得るため、テンショナ支持部材20の形状に対応する適切な形状部18bが設けられている。
【0029】
本発明の他の実施形態では、所望の制動力を生成するため、スタッド部材25の本体部の領域に少なくとも1つのスペーサ部材(26,27,28,29)が配置されている。スペーサ部材(26,27,28,29)のサイズ、タイプ、形状、数は、番手と糸の紡績中に必要とされる所望量の制動力とを考慮して決定される。選択されたスペーサ部材(26,27,28,29)は、上記テンショナ19を圧縮させ、かつ圧縮を解除するため、また、動作中にボビン吊り下げチューブのブレーキシュー17によって所望の可変制動力を生成するため、スタッド部材25の本体上に配置されるとともに、スカート部材18の上面上に設けられる。本発明の更なる他の実施形態において、スペーサ部材は、紡績糸の対応する番手の制動・回転トルクに対応する可変サイズの取り外し可能なスペーサである。
【0030】
本発明の更なる実施形態において、取り外し可能なスペーサ部材をスタッド部材の本体に対して固定するためのロック手段は、ロック手段としてのスナップ嵌合または圧入を用いる。
【0031】
本発明の他の実施形態では、制動・回転トルクに対応する可変サイズのソリッドスペーサ(途切れていないスペーサ)の形態を成す取り外し不可能なスペーサ部材も使用される。なお、ここでは、取り外し不能なスペーサ部材の内面形状は、本発明で適合されるようなスタッド部材の表面形状に従ったネジ付き形状でありあるいはネジ無し形状である。
【0032】
本発明の他の実施形態において、図5を参照すると、それぞれが穴を有する2つの延在部を備えたC型のスペーサ部材は、スカート部材18の上側にあるスタッド部材25上におけるその位置を固定するため、指定された穴に挿入されるドエルピンによってスタッド部材25上に配置されて固定される。ドエルピンは、ボビンホルダの動作中、スペーサ部材の更なるあるいは選択的なロック手段としての機能を果たす。
【0033】
適切なスペーサ部材の選択は以下の実施例の形態で例示される。しかしながら、この実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0034】
[実施例1]
可変紡績状態下での調整可能な制動力は、様々な紡績状態下で粗紡張力(ロービングテンション)等の要素を考慮することによって決定される。従来のボビンホルダにおいては、少なくとも3つの異なるブレーキテンショナ(通常は、金属スプリング)が使用される。すなわち、1つ目は細番手の糸用のテンショナであり、2つ目は中番手用のテンショナであり、3つ目は粗番手用のテンショナである。各番手にそれぞれのスプリングの制動力を測定すると、以下の平均値が求められた。
番手 制動力グラム
細番手 10
中番手 20
粗番手 40
【0035】
上記制動力をシミュレートするためにどの程度の距離まで新しいスプリングを押し下げなければならないのかを決定するために幾つかの実験を行った。表1は、平均値に達するために50個のスプリングに関して行われた実験の詳細を示している。
【表1】

【0036】
新しいスプリングは、4mm、8mm、16mm押し下げられるときに、前述した細番手、中番手、粗番手において必要な制動力に適合する制動力を与えることが観察された。スペーサを全く用いることなくテンショナが組み付けられると、テンショナが4mm圧縮され、これは細番手に適している。3mmの更なるスペーサが導入されると、テンショナが7mm圧縮される。スカート部材の上面の厚さが残りの1mmに寄与する。そのため、全体の圧縮は8mmとなる。この設定は中番手において使用される。8mmの他のスペーサは、全体の圧縮長さが16mmとなる粗番手のための設定を与える。その結果は図7に図示している。グラフは剛性特性を示しており、この剛性特性により、細番手、中番手、粗番手のための設定が明確に推測される。
【0037】
3mmや7mmなどのように厚さを変えることができるスペーサは、テンショナにおいて可変制動力を得るために選択される。スペーサの厚さは、スプリングが圧縮される距離、言い換えるとスプリングによって及ぼされる制動力の増加を決定づける。工場における紡績条件に応じて他の厚さのスペーサも使用できる。
【0038】
テンショナによって及ぼされる制動力の柔軟性は、テンショナの一端を解放し、かつ圧縮長さを様々なレベルに設定するための手段を設けることによってのみもたらすことができる。テンショナの下端は必ずブレーキシュー17上に載置しなければならないため、上端を解放しなければならない。可変制動力を与えるようにテンショナを徐々に圧縮できなければならない。
【0039】
このような構成により、紡績工場内の作業者は、ボビンホルダ制動システムを微調整して機械の所要条件に設定することができる。また、ワッシャの付加および除去は、ボビンホルダを開放することなく外部から行われるため、出荷時設定が改変されずに済む。
【0040】
スペーサを遠くから見ることができるように、また、全てのスピンドルが同じ設定で確実に動作するように、スペーサには明るい色が与えられる。どのような変更をも即座に検出することができ、したがって、不正な改変(異物混入)を防止する要素が組み込まれる。
【0041】
しかしながら、工場が更に高いレベルで不正な改変を防止する策を必要とする場合には、特定のスナップ式スペーサ26または28の代わりにソリッドスペーサ27または29を使用することができる。この場合、スペーサの付加および除去は、クリールからボビンホルダを取り外すことによってのみ行うことができ、それにより、更なる不正改変防止策が得られる。
【0042】
図3に図示される本発明の可変制動力ボビンホルダの他の実施形態において、ピン31は、スペーサの代わりに、所望の制動力を生成するようになっている。スタッド部材25上には、ピンを挿通できる2つの小さい穴32,33の組が設けられている。ピン31は、図3に示されるようにスカート部材18を押し下げた後に上記穴32,33内に挿入され、それにより、高い制動力が得られる。本発明において、そのような2つの穴は、2つの異なる設定を与えるために設けられる。しかしながら、穴の数は、番手に対応する所望の制動力を得るために適当に変えることができる。
【0043】
動作中、ボビンは、それでウェイトカラーを押し上げることによりボビンホルダに取り付けられる。取り付けストローク中、ボビンの内側の穴の肩部がフィンガを通過すると、フィンガを揺動させて離間させるように機構が作動し、ボビンが保持される。ボビンからの粗紡糸は、紡績機械内のローラを介して紡績機械中へと供給される。糸がボビンから機械によって引き出され、それにより、ボビンが回転されてボビンから糸が繰り出される。糸にかかるこの引張力は、一般に、粗紡張力(ロービングテンション)と呼ばれている。番手がこの引張力を変えると、すなわち、粗紡張力が変わると、それにより、制動力の変更が必要になる。これは、スカート部材を下側に押し下げて、スカート部材の上端に適切なスペーサを挿入することにより達成される。
【0044】
スペーサが無いと、スカート部材がその上死点位置をとり、テンショナが約4mmだけ圧縮される。この設定は細番手に適している。中番手を紡ぐ必要がある場合には、例えば図5に物品28または29として与えられているような更に小さなスペーサがスカート部材の上側のスタッド部材上に挿入される。粗番手が紡がれる場合、この設定は、他のスペーサをこのスペーサの上端に挿入することによってあるいはこのスペーサを完全に取り外して図5に物品26または27として示される更に厚いスペーサを付加することによって変更される。この方法により、所望の制動力が得られる。
【0045】
(利点)
1.本発明の回転ボビンホルダは、スペーサまたはピンと併せて使用される単一のテンショナ部材により、軽い制動力から強い制動力まで制動力を選択できる。
2.紡績作業中における1つの番手から他の番手への変更は、ボビンホルダを開放することなく、あるいは、テンショナを変えることなく、あるいは、ボビンホルダを交換することなく行われる。
3.本発明では、一組の明るい色がスペーサに対して与えられることにより、異なるスピンドルが作動している設定に関して長い距離からでも高い視認性が得られ、ごまかしを防止あるいは不正な改変を防止する要素が組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】例示的な可変制動力要素を示す本発明のボビンホルダの断面図である。
【図2】可変制動力要素の配置を示す図1の分解図である。
【図3】スタッド部材の本体上に配置され、かつ所望の制動力を与えるためにスペーサとして機能するピンの形態を成す他の実施形態に関する本発明のボビンホルダの分解図である。
【図4】他の適切な幾何学的形状を伴う本発明のスタッド部材の斜視図を示している。
【図5】本発明のボビンホルダで使用されるスペーサ部材の例示的な形状を示している。
【図6】スタッド部材の本体が取り付けられた状態を示す本発明のボビンホルダのスカート部材の部分切断図および六角形凹部を示す倒立図である。
【図7】新しいスプリングの剛性特性、および、様々な番手において所望の結果を得るための例示的な設定を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側幅広バレルと下側幅狭トランクとを有するボビン吊り下げチューブを備えるとともに、ボビンを保持して解放するための一対のボビン保持フィンガを前記トランクが有し、テキスタイルリング紡績機に対して接続される回転ボビンホルダであって、
(a)ベアリングアセンブリを受けるための曲面形状を成すヘッドと、前記ヘッドから延びるとともに略樽形状の膨出部で終端する滑らかな首部とを有するスタッド部材を備え、
(b)長さを変えることができ、首部から延びるとともに、略非円形断面を有する前記スタッド部材の本体部を備え、前記本体部がネジ形状部として更に延び、
(c)前記スタッド部材が、幅広バレルの上面の小孔を貫通するように配置され、ベアリングアセンブリを有するヘッドが、ボビン吊り下げチューブに対して回転動作を与えるために、バレルの上側内面に回転可能に当接し、
(d)前記スタッド部材を挿通させることができる中心開口を有するブレーキシューを備え、前記ブレーキシューが、ブレーキテンショナにより可変制動力を与えるためにバレルの外側上面に配置され、前記テンショナが、その一方側がブレーキシューの上面に対して機能的に接続されており、テンショナの他方側には、スタッド部材の本体に対応する形状を有するテンショナ支持部材が当接し、
(e)スタッド部材の本体の対応する形状を有する小孔をその上面に有するとともに、開口した下端部を有する拡径スカート部材を備え、前記スカート部材が、スタッド部材を挿通できるようになっているとともに、上側幅広バレルを包囲するように配置され、
(f)スカート部材を回転不能に機能的に支持するために、スカート部材の上端内面に設けられた、テンショナ支持部材の外形に対応する相対表面形状部を備え、
(g)前記テンショナを圧縮させ、かつ圧縮を解除するため、また、前記ボビン吊り下げチューブによって所望の可変制動力を生成するため、所望の厚さを有し、かつロック手段を伴う少なくとも1つのスペーサ部材がスタッド部材の本体上に配置されるとともにスカート部材の上面に設けられる、
回転ボビンホルダ。
【請求項2】
スタッド部材の本体の可変可能な長さが、ブレーキテンショナの長さおよび引張強度に対応している、請求項1に記載のボビンホルダ。
【請求項3】
スタッド部材の本体の断面形状が、楕円、正方形、星形、周囲に翼形状部を有する略円形体であり、好ましくは周囲に翼形状部を有する略円形体である、請求項1に記載のボビンホルダ。
【請求項4】
ブレーキテンショナが、金属スプリング、ゴム引きスプリングまたはゴムスリーブである、請求項1に記載のボビンホルダ。
【請求項5】
テンショナが、ブレーキシューの上面とスタッド部材のネジ形状部の開始部分との間の領域を覆うように配置される、請求項1に記載のボビンホルダ。
【請求項6】
スペーサ部材が、紡績糸の対応する番手の制動・回転トルクに対応する可変サイズの取り外し可能なスペーサである、請求項1に記載のボビンホルダ。
【請求項7】
取り外し可能なスペーサ部材のロック手段が、更なるロックピンを伴うまたは伴わないスナップ嵌合または圧入である、請求項6に記載のボビンホルダ。
【請求項8】
スペーサ部材が、制動・回転トルクに対応する可変サイズの取り外し不能なソリッドスペーサである、請求項1に記載のボビンホルダ。
【請求項9】
取り外し不能なスペーサ部材の内面形状が、ネジ付き形状かあるいはネジ無し形状である、請求項8に記載のボビンホルダ。
【請求項10】
スタッド部材上にはスペーサの代わりにストッパピンが配置されている、請求項1に記載のボビンホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−534852(P2007−534852A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509063(P2007−509063)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【国際出願番号】PCT/IN2005/000295
【国際公開番号】WO2006/025073
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(506288162)タイタン ペインツ アンド ケミカルズ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】