説明

回転ロータと、掃除機用床吸込具と電気掃除機

【課題】必要な強度、塵埃掻き上げ性能を有しながら径小の回転ロータを提供する。
【解決手段】長手方向に少なくとも1条の溝31を有するロータ30と、清掃体32とを備え、清掃体32は、被掃除面の塵埃を掻き上げるブラシ部32aと、ブラシ部32aの下端が固着されると共に溝31に装着される基部32bからなり、前記基部32bを前記溝31に装着した時、前記ブラシ部32aの根元部32cが、前記ロータ30の回転中心Cを通ると共に前記ブラシ部32aの長手方向に垂直な中心線CLを超えて、前記開口31aと反対側に位置するようにしたもので、ブラシ部32aの開口部31aからの必要な突出代を確保して塵埃掻き上げ性能を維持しながら回転ロータ16の回転直径を小さくでき、それが搭載される掃除機用吸込具などの高さを低くして、使用勝手を向上させることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転して被掃除面の塵埃を掻き上げる回転ロータと、その回転ロータを組み込んだ掃除機用床吸込具と、その掃除機用床吸込具と連結される電気掃除機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の回転ロータとして、図8に示されるようなものがあった(例えば、特許文献1参照)。図8は、従来の回転ロータの側面図である。
図8において、従来の回転ロータ1は、掃除機用床吸込具(図示せず)などに回転自在に取着されると共に長手方向に、かつ軸対称に一対の螺旋状の溝2が設けられたロータ3と、清掃体4から構成され、前記清掃体4は、被掃除面の塵埃を掻き上げるブラシ部4aと、前記ブラシ部4aの下端を固定すると共に前記溝2に装着される基部4bから構成されていた。ブラシ部4aは、極細繊維を束ねたものや、不織布或いは塩化ビニール等からなるブレードで構成されている。
【0003】
回転ロータ1の組み立ては、ロータ3に設けた螺旋状の溝2に、清掃体4のブラシ部4aを溝2の開口2aから突出させながら、清掃体4の基部4bを溝2に挿入するだけで簡単に行うことができるようになっている。このように組み立てられた回転ロータ1を掃除機用吸込具に組み込んで図示しない電動機で回転駆動することにより、清掃体4のブラシ部4aで被掃除面の塵埃を掻き上げて、効率的な清掃を行うことができる。
【特許文献1】特開平6−105771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転ロータやそれを回転駆動する電動機を搭載した掃除機用床吸込具は、家具やソファなどの下を掃除する場合を考慮すると、できるだけその背を低くしたほうが好ましい。掃除機用床吸込具の高さは、回転ロータ1に設けた清掃体4のブラシ部4aの最大の回転直径L1でほぼ決定されるので、掃除機用床吸込具の背を低くするには、回転ロータ1の回転直径L1をできるだけ小さくする必要がある。しかしながら、上記従来の回転ロータ1の構成では、ロータ3の必要強度を確保する観点から、1方の溝2の底面と他方の溝2の底面との間の距離Gを所定の寸法、すなわち所定の肉厚を確保しなければならず、回転ロータ1の径小化に限界があった。
【0005】
なお、回転ロータ1の回転直径L1を小さくするために、清掃体4のブラシ部4aを短くする方法も考えられるが、そうすると、例えばブラシ部4aを極細の繊維で形成した場合、その繊維のこしが強くなり、被掃除面に傷をつけたり、被掃除面上の塵埃を掻き上げる性能が低下する。又、ブラシ部4aを、塩化ビニール等からなるブレードで形成した場合、撓み性能が低下して、早期に消耗するという問題があるので、清掃体4のブラシ部4aを単に短くすることは、好ましくない。
【0006】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、被掃除面上の塵埃の掻き上げ性能を低下させることなく、しかも回転ロータとしての必要な強度を確保しながら、より回転直径が小さい回転ロータと、使用性に優れた掃除機用吸込具と、電気掃除機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の回転ロータは、長手方向に少なくとも1条の溝を有するロータと、清掃体とを備え、前記清掃体は、被掃除面の塵埃を掻き上げるブラシ部と、前記ブラシ部の下端が固着されると共に前記溝に装着される基部からなり、前記ブラシ部を前記溝の開口より突出させながら前記基部を前記溝に装着した時、前記ブラシ部の根元部が、前記ロータの回転中心を通ると共に前記ブラシ部の長手方向に垂直な中心線を超えて、前記開口と反対側に位置するようにしたもので、ブラシ部の根元部が、ロータの回転中心より前記開口と反対側に位置することにより、ブラシ部の溝の開口部からの必要な突出代を確保して塵埃掻き上げ性能を維持しながら回転ロータの回転直径を小さくすることができ、ひいては、その回転ロータが搭載される掃除機用吸込具の高さを低くして、使用勝手を向上させることが出来る。
【0008】
また、本発明の掃除機用床吸込具は、請求項1に記載の回転ロータを回転自在に設けたもので、回転ロータの回転直径が小さいので、家具やソファなどの下の狭い場所の清掃が容易な、背の低い掃除機用床吸込具を提供することができる。
【0009】
また、本発明の電気掃除機は、電動送風機と、請求項2又は3に記載の掃除機用床吸込具とを備えたもので、掃除機用床吸込具の背が低いので、家具やソファなどの下の清掃がきわめて容易で使用勝手の良い電気掃除機を提供することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の回転ロータは、被掃除面上の塵埃の掻き上げ性能を低下させることなく、しかも回転ロータとしての必要な強度を確保しながら、回転直径が小さい。また、その回転ロータを使用することにより、使用性に優れた掃除機用吸込具と、電気掃除機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
第1の発明は、長手方向に少なくとも1条の溝を有するロータと、清掃体とを備え、前記清掃体は、被掃除面の塵埃を掻き上げるブラシ部と、前記ブラシ部の下端が固着されると共に前記溝に装着される基部からなり、前記ブラシ部を前記溝の開口より突出させながら前記基部を前記溝に装着した時、前記ブラシ部の根元部が、前記ロータの回転中心を通ると共に前記ブラシ部の長手方向に垂直な中心線を超えて、前記開口と反対側に位置するようにしたもので、ブラシ部の根元部が、ロータの回転中心より前記開口と反対側に位置することにより、ブラシ部の溝の開口部からの必要な突出代を確保して塵埃掻き上げ性能を維持しながら回転ロータの回転直径を小さくすることができ、ひいては、その回転ロータが搭載される掃除機用吸込具の高さを低くして、使用勝手を向上させることが出来る。
【0012】
第2の発明は、掃除機用床吸込具に、請求項1に記載の回転ロータを回転自在に設けたもので、回転ロータの回転直径が小さいので、家具やソファなどの下の狭い場所の清掃が容易な、背の低い掃除機用床吸込具を提供することができる。
【0013】
第3の発明は、特に、第2の発明の回転ロータを回転駆動する駆動手段を備えたもので、被掃除面にこびりついた塵埃も確実に清掃体で掻き上げることができ、又、被掃除面が絨毯であっても掃除性能が劣化することが無い。また、回転ロータの回転直径が小さいので、必要な回転トルクが小さくなり、駆動手段を小型化することができるので、掃除機用床吸込具の軽量化も図ることができる。
【0014】
第4の発明は、電気掃除機に、電動送風機と、請求項2又は3に記載の掃除機用床吸込具とを備えたもので、掃除機用床吸込具の背が低いので、家具やソファなどの下の清掃がきわめて容易で使用勝手の良い電気掃除機を提供することができる。
【0015】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しながら説明する。なお、下記実施例で本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0016】
以下に、本発明の第1の実施例における回転ロータについて、図1〜4を用いて説明する。
図1は、本実施例における回転ロータを組み込んだ掃除機用床吸込具の一部破断斜視図である。
【0017】
図1において、10は、図示しない電気掃除機に連通接続される掃除機用床吸込具(以下「床吸込具10」という)で、その外郭11は、上ケース12と、下面に吸い込み口13を有する下ケース14から構成されている。床吸込具10の外周には、掃除の際に家具などへの傷付を防止するためのバンパー15が設けられ、前部には、本実施例における回転ロータ16を回転自在に収納すると共に吸い込み口13と連通する回転ロータ室17が配されている。
【0018】
又、床吸込具10の後部には、延長管(図示せず)などを介して、電気掃除機(図示せず)に連通接続される接続管18が傾動自在に取着されている。
20は、下ケース14の底面の前部、後部にそれぞれ一対ずつ設けられた走行用ローラーで、床吸込具10を、木床などの被掃除面に置いたとき、その被掃除面と下ケース14の底面との間に所定の隙間を確保して、電気掃除機による吸引力で、床吸込具10の底部が被掃除面に密着して操作性が悪くなることの無いようにするものである。
【0019】
21は、床吸込具10の略中央でかつ回転ロータ16の後方に位置し、回転ロータ室17と接続管18とを連通する吸引口である。22は、ベルト23を介して回転ロータ16を回転駆動する駆動手段となる電動機である。
【0020】
次に、本実施例における回転ロータ16の詳細な構成について、図2を用いて説明する。図2は、回転ロータの斜視図、図3は、回転ロータの清掃体の斜視図、図4は、同回転ロータの側面図である。
【0021】
図2〜4において、回転ロータ16は、アルミニウムなどの金属材料から形成され、その長手方向に、螺旋状の溝31を一対設けたロータ30と、ロータ30に着脱自在に装着されると共に被掃除面の塵埃を掻き上げる清掃体32と、ロータ30の一端に圧入されると共にベルト23の一端が張架されるプーリー付軸受けホルダー33と、ロータ30の他端に圧入される軸受けホルダー34から構成されている。35は、プーリー付軸受けホルダー33及び軸受けホルダー34のそれぞれを回転自在に支持すると共に、吸込具10の内壁36で保持される軸受けである。
【0022】
清掃体32は、図3に示すように、多数の極細繊維などからなるブラシ部32aと、ブラシ部32aの下端を固定すると共に、ロータ30に設けた溝31に着脱自在に装着される基部32bから構成されている。尚、ブラシ部32aは、繊維などに限らず、塩化ビニールなどの軟質材からなるブレード状のもの、或いは不織布で形成しても良い。またブラシ部32aと基部32bとの固定は、ブラシ部32aを基部32bに植設したり、両者を接着したり、或いは、一方を他方で挟むようにするなどその方法は特に限定しない。
【0023】
本実施例では、ブラシ部32aを前記溝31の開口31aより突出させながら基部32bを溝31に装着した時、図4に示すように、ブラシ部32aの根元部32cが、前記ロータ30の回転中心Cを通ると共に前記ブラシ部32aの長手方向に垂直な中心線CLを超えて、開口31aと反対側に位置するようにしている。
なお、床吸込具10の動作については、後述の第2の実施例で説明する。
【0024】
以上のように、本実施例によれば、ブラシ部32aの根元部32cが、ロータ30の回転中心Cより溝31の開口31aと反対側に位置しているので、ブラシ部32aの溝31の開口31aからの必要な突出代を確保して塵埃掻き上げ性能を維持しながら、回転ロータ16の回転直径L2を、従来の回転直径L1に比べ大幅に小さくすることができ、ひいては、その回転ロータ16が搭載される床吸込具10の高さを低くして、掃除の際の使用勝手を大幅に向上させることが出来る。
【0025】
又、ロータ30に、溝31を軸対称に一対設けたことにより、回転ロータ16の回転バランスが取れやすくなり、それにより、回転ロータ16の回転時の振動や騒音が小さく、又、回転時にロータ30に加わるストレスが小さいので、回転ロータ16の耐久性が向上する。
【0026】
又、ロータ30の製造、加工方法として、捩り押出し金型にて、ロータ30の材料を捩りながら押出す方法、ロータ30の材料を金型で捩りながら押出して、一旦目的の捩り角度より小さな角度のロータ30を作り、このロータ30を後加工にて、目的の捩り角度まで捩って仕上げる方法、ロータ30の材料をまっすぐに押出して、後加工で、目的の捩り角度まで捩って仕上げる方法、同一ライン上に捩り方向に回転する可動盤等の設備を設けて、金型で、ロータ30の材料を押出しながら、同時に捩り加工も行い、目的の捩り角度に仕上げる方法など各種方法があるが、ロータ30の断面形状、材質、厚み、強度、捩り角度、必要な精度等を勘案し、製造方法、加工方法を適宜決定するようにすると良い。
【0027】
上記実施例では、ロータ30に溝31を一対設けたが、図5に示すように、1個だけでも良い。従来の回転ロータの場合は、バランスの関係で一個のみの清掃体を設けることは困難であったが、本実施例では、ブラシ部32aの根元部32cが、ロータ30の回転中心Cより開口31aと反対側に位置するようにしているので、すなわち、重い基部32bが、ロータ30の回転中心Cより開口31aと反対側に位置するようにしているので、比較的バランスが取りやすいものである。
【0028】
また、図6(a)に示すように、ロータ30に4条の溝31を設け、それらの溝31に清掃体32を設けるようにしても良い。この場合も、同一寸法の清掃体32を使用する場合、図6(b)に示すように、従来の回転ロータに比べ、回転直径L2を確実に小さくすることができるものである。
【0029】
又、回転直径が小さい上記回転ロータ16を、床吸込具10に回転自在に設けることにより、床吸込具10の背を低くすることができ、家具やソファの下など狭い場所の清掃が容易な掃除機用床吸込具を提供することができるものである。
【0030】
また、回転ロータ16を回転駆動する駆動手段として、電動機22を用いることにより絨毯面や多少の凹凸がある被掃除面であっても、回転ロータ16の回転が著しく低下することなく確実に、掃除を行うことができる。特に、本実施例における回転ロータ16は、回転直径が小さいので、回転ロータ16を回転させるトルクが小さくなり、電動機22を小型化すること出来、掃除機用床吸込具の更なる軽量化を図ることができる。
【0031】
なお、上記実施例では、回転ロータ16を利用する機器として、床吸込具10を例にして説明したが、空気調和機に搭載して、そのエアフイルターの清掃用に利用しても良い。
【実施例2】
【0032】
図7は、本発明の第2の実施例における電気掃除機の全体構成を示す図である。尚、上記第1の実施例と同一部分について、同一符号を付してその説明を省略する。
図7において、本実施例における電気掃除機40は、前部に塵埃を捕集する集塵室41と、後部に電動送風機42を内蔵した電動送風機室43をそれぞれ備えた掃除機本体44と、前記集塵室41に連通するように一端が掃除機本体44に接続されるホース45と、ホース45の他端に設けられたハンドルパイプ46に一端が着脱自在に接続される延長管47とを備え、前記延長管47の他端に、上記第1の実施例で述べた床吸込具10が接続されている。ハンドルパイプ46には、掃除機本体44の運転を操作する本体スイッチ46aと、床吸込具10に内蔵された電動機22の運転を操作する吸込具スイッチ46bが設けられている。
【0033】
上記のように構成された電気掃除機の動作、作用は、以下の通りである。
掃除機本体44内に収納された電源コード(図示せず)を引き出し、そのプラグ(図示せず)を室内のコンセント(図示せず)に差し込んで、ハンドルパイプ46に設けた本体スイッチ46a、吸込具スイッチ46bを操作すると、電動送風機42及び床吸込具10内の電動機22の運転が開始し、それに伴い、吸込具10の底部に設けた吸い込み口13から、回転する回転ロータ16の清掃体32で掻き上げられた被掃除面上の塵埃が、外気と共に吸引され、延長管47、ハンドルパイプ46、ホース45を経て集塵室41に至り、そこで吸引風に含まれた塵埃が捕集され、きれいになった空気は、掃除機本体44の後部に設けた排気口(図示せず)から排気される。
【0034】
以上のように、本実施例によれば、掃除機用吸込具が薄型なので、家具やソファなどの下の清掃がきわめて容易で使用勝手の良い電気掃除機を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上のように、本発明にかかる回転ロータは、従来の必要強度、塵埃掻き上げ性能を有しながら小径なので、掃除機用床吸込具、電気掃除機に限らず空気調和機などにも使うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施例の回転ロータを組み込んだ掃除機用床吸込具の一部破断斜視図
【図2】同回転ロータの斜視図
【図3】同回転ロータの清掃体の斜視図
【図4】同回転ロータの側面図
【図5】回転ロータの他の例を示す側面図
【図6】(a)回転ロータの他の例を示す側面図、(b)従来の回転ロータの側面図
【図7】本発明の第2の実施例の電気掃除機の全体構成を示す図
【図8】従来の回転ロータの側面図
【符号の説明】
【0037】
10 掃除機用床吸込具(床吸込具)
13 吸い込み口
16 回転ロータ
22 電動機(駆動手段)
30 ロータ
31 溝
31a 開口
32 清掃体
32a ブラシ部
32b 基部
32c 根元部
40 電気掃除機
41 集塵室
42 電動送風機
44 掃除機本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に少なくとも1条の溝を有するロータと、清掃体とを備え、前記清掃体は、被掃除面の塵埃を掻き上げるブラシ部と、前記ブラシ部の下端が固着されると共に前記溝に装着される基部からなり、前記ブラシ部を前記溝の開口より突出させながら前記基部を前記溝に装着した時、前記ブラシ部の根元部が、前記ロータの回転中心を通ると共に前記ブラシ部の長手方向に垂直な中心線を超えて、前記開口と反対側に位置するようにした回転ロータ。
【請求項2】
請求項1に記載の回転ロータを回転自在に設けた掃除機用床吸込具。
【請求項3】
回転ロータを回転駆動する駆動手段を備えた請求項2に記載の掃除機用床吸込具。
【請求項4】
電動送風機と、請求項2又は3に記載の掃除機用床吸込具とを備えた電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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