説明

回転伝達装置

【課題】マグネチックスターラーを用いた種々の試料の撹拌を低コストで良好に行うことができる回転伝達装置を提供する。
【解決手段】試料52及び磁性撹拌子51を収容する容器50と、マグネチックスターラー60との間に介在され、マグネチックスターラー60の駆動用磁石65の回転によって生じる回転駆動力を、磁性撹拌子51に伝達する回転伝達装置1であって、駆動用磁石65と対向するように配置された第1磁石31を備え、駆動用磁石65と一体的に回転可能に支持された第1回転体11と、容器50に収容された磁性撹拌子51と対向するように配置された第2磁石32を備え、磁性撹拌子51と一体的に回転可能に支持された第2回転体12と、第1回転体11の回転を第2回転体12に伝達する動力伝達部4とを備え、動力伝達部4はプーリ21,23,24,22の径の大小により、2段階で減速させると共に回転動力を増大させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネチックスターラーの駆動用磁石の回転によって生じる回転駆動力を、磁性撹拌子に伝達する回転伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
容器に収容される試料を撹拌するものとして、容器内に配置される磁性撹拌子と、この磁性撹拌子を回転させるマグネチックスターラーとが一般的に知られている(例えば、特許文献1の従来技術参照)。
【0003】
図5に示すように、このような磁性撹拌子151は、棒状の撹拌用磁石153をプラスチックで被覆したものである。また、マグネチックスターラー160は、上面が水平な本体161と、本体161の内部に配置された回転磁界発生部166とを備えている。回転磁界発生部166は、水平回転可能な駆動用回転体163と、駆動用回転体163を回転駆動するモーター162と、駆動用回転体163に取り付けられた駆動用磁石165とを備えている。
【0004】
このような磁性撹拌子151およびマグネチックスターラー160によれば、マグネチックスターラー160の上面に試料152が収容された容器150を載置し、容器150の底部に磁性撹拌子151を配置した状態で、マグネチックスターラー160を作動させる。これにより、駆動用磁石165を回転させ、磁性撹拌子151の下方に回転磁界を発生させる。そして、この回転磁界に撹拌用磁石153が吸引され、マグネチックスターラー160の回転駆動力が磁性撹拌子151に伝達され、磁性撹拌子151が回転することにより、容器150内の試料152が撹拌される。
【特許文献1】特開平3−232524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このようなマグネチックスターラー160では、一般的なマグネチックスターラー160を用いて高粘度の試料を撹拌しようとすると、磁性撹拌子151が駆動用回転体163の回転に追従することができなくなり、試料を撹拌することができなくなるという問題があった。したがって、高粘度の試料をはじめとして、種々の粘度の試料を撹拌したい場合には、その粘度に応じた複数のマグネチックスターラーを用意するか、或いは、高粘度にも対応できるように設計された高価なマグネチックスターラーを用意しなければならず、いずれにしてもコストが高くなっていた。
【0006】
また、試料152がバイオ試料などの場合には、磁性撹拌子151を超低速回転にする必要があるが、そのためにマグネチックスターラー160のモーター162の回転速度を超低速にすると、その回転が不安定になり、試料を良好に撹拌できなくなるという問題があった。このため、超低速でも安定的に回転するモーターを備えるマグネチックスターラー160が必要になるが、この場合もやはりコストが高くなるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、マグネチックスターラーを用いた種々の試料の撹拌を低コストで良好に行うことができる回転伝達装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の前記目的は、試料および磁性撹拌子を収容する容器と、マグネチックスターラーとの間に介在され、前記マグネチックスターラーの駆動用磁石の回転によって生じる回転駆動力を、前記磁性撹拌子に伝達する回転伝達装置であって、前記駆動用磁石と対向するように配置された第1の磁石を備え、前記駆動用磁石と一体的に回転可能に支持された第1の回転体と、前記容器に収容された前記磁性撹拌子と対向するように配置された第2の磁石を備え、前記磁性撹拌子と一体的に回転可能に支持された第2の回転体と、前記第1の回転体の回転を前記第2の回転体に伝達する動力伝達手段とを備える回転伝達装置により達成される。
【0009】
また、前記動力伝達手段は、前記第1の回転体の回転を減速して前記第2の回転体に伝達することが好ましい。
【0010】
また、前記動力伝達手段は、機械的伝達機構を備えることが好ましい。
【0011】
また、前記第2の回転体は、複数の前記容器に対応して複数設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の回転伝達装置によれば、マグネチックスターラーを用いた種々の試料の撹拌を低コストで良好に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る回転伝達装置の縦断面図である。この回転伝達装置1は、試料52および磁性撹拌子51を収容する容器50と、マグネチックスターラー60との間に介在される。
【0014】
磁性撹拌子51は、長手方向の両端部に異なる磁性を有する棒状の撹拌用磁石53を、例えばフッ素樹脂やポリプロピレン樹脂などの耐薬品性の樹脂で被覆したものである。
【0015】
マグネチックスターラー60は、上面が水平な本体61と、本体61の内部に配置された回転磁界発生部66とを備えている。回転磁界発生部66は、水平回転可能な駆動用回転体63と、駆動用回転体63を回転駆動するモーター62と、駆動用回転体63に取り付けられた駆動用磁石65とを備えている。モーター62は、鉛直方向に延びる軸部64を備えており、軸部64が駆動用回転体63の回転中心に連結されることにより、駆動用回転体63を回転可能に支持している。
【0016】
回転伝達装置1は、マグネチックスターラー60と容器50との間に配置される本体2と、本体2に収容された第1回転体11、第2回転体12および動力伝達部4とを備えている。
【0017】
本体2は、上面および下面が平坦な筐体であり、底部から上方へ延びる主回転軸10および中継回転軸15を備えている。
【0018】
第1回転体11は、主回転軸10を回転中心として水平回転可能な平板状の部材であり、縁部には、マグネチックスターラー60の駆動用磁石65と対向するように複数の第1磁石31が配置されている。第1回転体11は、図2に示すように、主回転軸10に取り付けられた第1軸受41を中心部に備えることにより回転可能に支持されている。
【0019】
第2回転体12は、主回転軸10を回転中心として水平回転可能な平板状の部材であり、縁部には、容器50に収容された磁性撹拌子51の撹拌用磁石53と対向するように複数の第2磁石32が配置されている。第2回転体12は、図2に示すように、主回転軸10に取り付けられた第2軸受42を中心部に備えることにより回転可能に支持されている。
【0020】
動力伝達部4は、図1に示すように、第1回転体11と共に回転する第1プーリ21と、第2回転体12と共に回転する第2プーリ22と、第1プーリ21の回転を第2プーリ22に伝達する、第1ベルト23および第2ベルト24とを備えている。また、動力伝達部4は、第1ベルト23および第2ベルト24による回転の伝達を中継する中継プーリ20を備えている。
【0021】
第1プーリ21は、第1回転体11に固定された円筒状部材であり、中心部に軸受43を備え、第1回転体11が回転することにより、第1回転体11と同軸で回転する。第2プーリ22は、第2回転体12に固定された円筒状の部材であり、中心部に軸受44を備え、第2プーリ22が回転することにより第2回転体12が同軸で回転する。中継プーリ20は、中継回転軸15を回転中心として回転可能な円筒状部材であり、大径部27および大径部27と一体の小径部28を備えている。
【0022】
第1ベルト23は、第1プーリ21と大径部27との間に張架されており、第1プーリ21の回転を中継プーリ20に伝達可能に構成されている。第2ベルト24は、小径部28と第2プーリ22との間に張架されており、中継プーリ20の回転を第2プーリ22に伝達可能に構成されている。
【0023】
第1プーリ21の回転は、第1プーリ21と大径部27との径の比率、および、第2プーリ22と小径部28との径の比率をそれぞれ調整することにより、回転速度および回転力を調整して、第2プーリ22に伝達可能である。本実施形態では、大径部27が第1プーリ21より径が大きく、また、第2プーリ22が小径部28より径が大きい構成であり、第1プーリ21の回転を、2段階で回転速度を減速させると共に回転力を増大させて、第2プーリ22に伝達するように構成されている。
【0024】
次に、以上のように構成された回転伝達装置1を用いて、マグネチックスターラー60の駆動用磁石65の回転によって生じる回転駆動力を、磁性撹拌子51に伝達する方法を説明する。
【0025】
まず、マグネチックスターラー60の上面に回転伝達装置1を載置し、この回転伝達装置1の上面に試料52が収容された容器50を載置し、容器50の底部に磁性撹拌子51を配置した状態で、マグネチックスターラー60を作動させる。これにより、駆動用磁石65を回転させ、回転伝達装置1の下方に回転磁界を発生させる。
【0026】
回転磁界が発生すると、この回転磁界に第1磁石31が吸引され、駆動用磁石65と一体的に第1回転体11が回転し、第1回転体11と共に第1プーリ21が回転する。第1プーリ21の回転は、第1ベルト23および第2ベルト24により、中継プーリ20を経て第2プーリ22に伝達される。この時、第1プーリ21の回転は、2段階で回転速度が減速すると共に回転力が増大して、第2プーリ22に伝達される。そして、第2プーリ22と共に第2回転体12が回転することにより、磁性撹拌子51の下方に回転磁界が発生し、この回転磁界に撹拌用磁石53が吸引されて、磁性撹拌子51が第2回転体12と一体的に回転する。こうして、マグネチックスターラー60の回転駆動力が磁性撹拌子51に伝達され、磁性撹拌子51が回転することにより、容器50内の試料52が撹拌される。
【0027】
本実施形態に係る回転伝達装置1によれば、駆動用磁石65と一体的に回転可能に支持された第1回転体11と、磁性撹拌子51と一体的に回転可能に支持された第2回転体12と、第1回転体11の回転を第2回転体12に伝達する動力伝達部4とを備えるので、駆動用磁石65の回転を、動力伝達部4により回転速度および回転力を調整して、磁性撹拌子51に伝達することができる。したがって、低トルクで高速回転の一般的なマグネチックスターラーを用いても、磁性撹拌子51の回転速度を、回転を安定させたまま減速させることができ、バイオ試料などの緩やかな撹拌を必要とする試料を良好に撹拌することができる。また、低トルクで高速回転の一般的なマグネチックスターラーを用いても、磁性撹拌子51の回転力を増大させることができ、高粘度の試料を良好に撹拌することができる。よって、マグネチックスターラーを用いた種々の試料の撹拌を低コストで良好に行うことができる。
【0028】
また、本実施形態において、駆動用磁石65と第1磁石31とが引き合う磁力を調整することにより、モーター62に掛かる負荷を調整することができる。例えば、駆動用磁石65と第1磁石31とが引き合う磁力を弱くすることにより、第1磁石31が駆動用磁石65の回転に対してスリップするので、モーター62に掛かる負荷を小さくすることができる。
【0029】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の具体的な態様は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0030】
例えば、第1プーリ21と大径部27との径の比率、および、第2プーリ22と小径部28との径の比率は、第1プーリ21の回転を第2プーリ22に伝達できるのであれば特に限定されず、適宜変更可能である。例えば、大径部27の径を第1プーリ21の径より小さく、また、第2プーリ22の径を小径部28の径より小さくすることにより、第1プーリ21の回転を、回転速度を加速させると共に回転力を減少させて、第2プーリ22に伝達することができる。
【0031】
また、本実施形態では、動力伝達部4は、プーリおよびベルトから構成されていたが、第1回転体11の回転を第2回転体12に伝達できるのであれば、その構成は特に限定されず、他の機械的伝達機構から構成されていてもよい。例えば、プーリおよびベルトに換えてスプロケットおよびチェーンをそれぞれ用いことや、動力伝達部4として歯車を用いることができる。
【0032】
図3は、他の実施形態に係る回転伝達装置の縦断面図である。図3において、図1と同一の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。動力伝達部4は、図3に示すように、第1回転体11と共に回転する第1歯車81と、第2回転体12と共に回転する第2歯車82と、第1歯車81の回転を第2歯車82に伝達する、下中継歯車83および上中継歯車84とを備えている。
【0033】
第1歯車81は、周縁部に歯を備えており、第1回転体11に固定され、第1回転体11が回転することにより、第1回転体11と同軸で回転する。第2歯車82は、周縁部に歯を備えており、第2回転体12に固定され、第2歯車82が回転することにより第2回転体12が同軸で回転する。下中継歯車83および上中継歯車84は、中継回転軸15を回転中心として回転可能である。また、下中継歯車83および上中継歯車84は、それぞれ、周縁部に歯を備え、第1歯車81および第2歯車82と噛み合っており、第1歯車81が回転することにより、第1歯車81の回転を第2歯車82に伝達可能である。このような構成を備える回転伝達装置1によれば、第1回転体11の回転が、第1歯車81、下中継歯車83、上中継歯車84および第2歯車82を介して、第2回転体12に伝達される。このような回転伝達装置1によれば、上記と同様に、駆動用磁石65の回転を、動力伝達部4により回転速度および回転力を調整して、磁性撹拌子51に伝達することができ、マグネチックスターラーを用いた種々の試料の撹拌を低コストで良好に行うことができる。
【0034】
また、本実施形態では、第2回転体12が1つであったが、第2回転体12の数は特に限定されるものではない。図4は、更に他の実施形態に係る回転伝達装置の縦断面図である。図4において、図1と同一の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0035】
回転伝達装置1は、複数の容器50に対応して複数設けられた第2回転体12を本体2内に備えている。本体2は、底部から上方へ延びる従回転軸16を備えている。複数の第2回転体12は、それぞれ、主回転軸10または従回転軸16を回転中心として回転可能である。動力伝達部4は、第1プーリ21の回転を第2プーリ22に伝達する伝達ベルト28を備えている。主回転軸10を回転中心とする第2回転体12は、第1プーリ21に固定されており、第1プーリ21が回転することにより回転する。
【0036】
このような構成を備える回転伝達装置1によれば、第1回転体11が回転すると、その回転が第1プーリ21、伝達ベルト28および第2プーリ22を介して、複数の第2回転体12に伝達される。そして、複数の第2回転体の回転により、複数の磁性撹拌子51の下方にそれぞれ回転磁界が発生し、この回転磁界に撹拌用磁石53が吸引されて磁性撹拌子51が回転する。このような回転伝達装置1によれば、複数の第2回転体12を備えるので、1つのマグネチックスターラー60の回転駆動力を、複数の磁性撹拌子51に伝達することができ、低コストで複数の試料を同時に撹拌することができる。また、第2プーリ22の径を調整することにより、第1回転体11の回転を、回転速度および回転力をそれぞれ調整して、第2回転体12に伝達することができる。これにより、複数の磁性撹拌子51の回転速度および回転力をそれぞれ調整して、種々の試料を低コストで良好に撹拌することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係る回転伝達装置の縦断面図である。
【図2】図1に示す回転伝達装置の部分拡大図である。
【図3】他の実施形態に係る回転伝達装置の縦断面図である。
【図4】更に他の実施形態に係る回転伝達装置の縦断面図である。
【図5】従来の磁性撹拌子およびマグネチックスターラーの縦断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 回転伝達装置
2 本体
4 動力伝達部
11 第1回転体
12 第2回転体
21 第1プーリ
22 第2プーリ
23 第1ベルト
24 第2ベルト
51 磁性撹拌子
60 マグネチックスターラー
81 第1歯車
82 第2歯車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料および磁性撹拌子を収容する容器と、マグネチックスターラーとの間に介在され、前記マグネチックスターラーの駆動用磁石の回転によって生じる回転駆動力を、前記磁性撹拌子に伝達する回転伝達装置であって、
前記駆動用磁石と対向するように配置された第1の磁石を備え、前記駆動用磁石と一体的に回転可能に支持された第1の回転体と、
前記容器に収容された前記磁性撹拌子と対向するように配置された第2の磁石を備え、前記磁性撹拌子と一体的に回転可能に支持された第2の回転体と、
前記第1の回転体の回転を前記第2の回転体に伝達する動力伝達手段とを備える回転伝達装置。
【請求項2】
前記動力伝達手段は、前記第1の回転体の回転を減速して前記第2の回転体に伝達する請求項1に記載の回転伝達装置。
【請求項3】
前記動力伝達手段は、機械的伝達機構を備える請求項1又は2に記載の回転伝達装置。
【請求項4】
前記第2の回転体は、複数の前記容器に対応して複数設けられている請求項1から3のいずれかに記載の回転伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−62209(P2008−62209A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−245072(P2006−245072)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(397069868)アズワン株式会社 (23)
【Fターム(参考)】