説明

回転体の逆回転防止機構

【課題】 構造が簡易で安価な回転体の逆回転防止機構を提供する。
【解決手段】 シャフト3aに対して正回転方向αへ向かう回転力が回転体12に作用した際に回転体12の内周面に対して摺動して回転を許容し、シャフト3aに対して逆回転方向βへ向かう回転力が回転体12に作用した際に回転体12の内周面に密着して回転を阻止する弾性材からなる回転規制部材13をシャフト3aに取り付ける。さらに、シャフトを樹脂シャフト51,51bとすることにより、逆回転防止機構11と樹脂シャフト51,51bを一体成型で作成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体の逆回転を防止する逆回転防止機構に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複写機、プリンタあるいはファクシミリなどには、用紙を送り出す用紙送り出し機構に、一方向への回転のみを許容し逆方向への回転を阻止する逆回転防止機構を備えたローラを有している。
【0003】
この逆回転防止機構としては、シャフトと回転体との間に、周方向へ間隔をあけて配設された複数のコロをそれぞれバネによって一方向へ付勢したベアリング構造を有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
そして、この逆回転防止機構では、シャフトに対する回転体の一方向への回転は許容するが、他方向への回転力が回転体に作用すると、コロがバネの付勢力に抗して移動し、このコロによって回転体がシャフトに係合し、シャフトに対する他方向への回転が防止される。
【特許文献1】特開平11−63028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような従来技術による逆回転防止機構は、部品点数が多く複雑な構造であるため、コストが高く、また、組み立て分解が困難であるという問題点を有している。
【0006】
本発明が解決しようとする課題としては、上記のような従来の逆回転防止機構が有している問題点を解決することがその一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の回転体の逆回転防止機構は、シャフトと、該シャフトに回転自在に支持された回転体との間に介装されて前記シャフトに対する前記回転体の正回転方向への回転を許容し、逆回転方向への回転を阻止する回転体の逆回転防止機構であって、前記シャフトに取り付けられ、前記シャフトに対して正回転方向へ向かう回転力が前記回転体に作用した際に前記回転体の内周面に摺動し、前記シャフトに対して逆回転方向へ向かう回転力が前記回転体に作用した際に前記回転体の内周面に密着する弾性材からなる回転規制部材を備えたことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に係る回転体の逆回転防止機構の好適な実施の形態は、例えば、印刷機のフィードローラなどの回転体を回転自在に支持するシャフトに回転規制部材が取り付けられ、この回転規制部材が、シャフトに対して正回転方向へ向かう回転力が回転体に作用した際に回転体の内周面に対して摺動して回転を許容し、シャフトに対して逆回転方向へ向かう回転力が回転体に作用した際に回転体の内周面に密着して回転を阻止するようになっているものである。
なお、上記回転体は、以下の実施例において説明するフィードローラ以外でもよく、例えば排紙ローラなどでもよい。
【実施例】
【0009】
以下、本発明に係る実施の形態における実施例を挙げ、図面を参照して説明する。
図1及び図2は、本実施例の逆回転防止機構を備えたローラを有する用紙送り機構の概略構成図である。
【0010】
図1に示すように、用紙送り出し機構は、積層された用紙Pの上面にピックアップローラ1を接触させて引き出し、その後、この用紙Pをリタードローラ2に対峙したフィードローラ3よって一枚ずつ送り出し、さらに、図2に示すように、一対の送り出しローラ4に挟持させて搬送する構造を有している。
【0011】
ここで、フィードローラ3は、送り出しローラ4へ用紙Pが渡されてシャフト3aの回転が停止された後に、送り出しローラ4によって送り出される用紙Pによってつれ回りするように、一方向への回転のみを許容し、逆方向への回転を阻止する逆回転防止機構を備えている。
【0012】
次に、この逆回転防止機構について詳述する。
図3は、この実施例における回転体の逆回転防止機構を示す斜視図、図4は、逆回転防止機構の構成を説明する分解斜視図、図5は、逆回転防止機構の構造を説明する断面図、図6は、逆回転防止機構を備えたフィードローラの一部を断面視した平面図、図7は、逆回転防止機構の作用を説明する断面図である。
【0013】
図3〜図6に示すように、フィードローラ3は、その側部に、逆回転防止機構11が設けられている。
【0014】
この逆回転防止機構11は、フィードローラ3と連結固定された円筒状の回転体12と、この回転体12の中心に挿通されたフィードローラ3のシャフト3aに取り付けられた回転規制部材13と、この回転規制部材13をシャフト3aに支持するブラケット14とを有している。
【0015】
ブラケット14は、シャフト3aに固定される固定部15と、この固定部15の一端にて側方へ延在した保持部16とを有する断面視L字状に形成されている。
【0016】
ブラケット14には、固定部15の端部近傍に係合孔17が形成されている。そして、このブラケット14は、その固定部15を、シャフト3aに形成された取付孔18に挿入し、その端部をシャフト3aの反対側へ突出させた状態にて、係合孔17へ係合ピン19を嵌合させて係止することにより、シャフト3aに取り付けられている。
【0017】
そして、回転規制部材13は、その基端部がブラケット14の保持部16とシャフト3aとの間に挟持されて保持されている。
【0018】
回転規制部材13は、例えば、各種のゴム、エラストマ、スポンジあるいはこれらの複合物などの弾性材から形成されたもので、ブラケット14に保持された基端部から先端部へ向かって、シャフト3aの正回転方向αへ延在して湾曲されている。そして、この回転規制部材13の一部が回転体12の内周面に対して摺動可能に接触されている。
【0019】
そして、上記構造の逆回転防止機構11では、図7(a)に示すように、シャフト3aが正回転方向αへ回転すると、その回転力により、一部が回転体12の内周面に接している回転規制部材13が、弾性変形しながら回転体12の内周面に押圧されて密着する。また、このとき、ブラケット14の保持部16によって回転規制部材13の逆回転方向β側への変形が規制され、回転規制部材13の回転体12への良好な密着状態が維持される。
【0020】
これにより、回転体12は、回転規制部材13によってシャフト3aとともに、正回転方向αへ回転し、この回転体12が連結固定されたフィードローラ3が正回転方向αへ回転される。
【0021】
また、図7(b)に示すように、シャフト3aが停止している状態にて、フィードローラ3に正回転方向αへ向かう回転力が作用されると、回転体12にも正回転方向αへ向かう回転力が伝わる。このように、回転体12に正回転方向αへ向かう回転力が作用すると、停止しているシャフト3aに対して、回転体12が正回転方向αへ向かって回転する。つまり、回転規制部材13は、基端部から先端部へ向かって正回転方向αへ延在して湾曲されているので、回転体12が回転しても回転体12の内周面に押圧されて密着することがなく、回転体12の内周面に僅かに接して摺動することとなる。
【0022】
これにより、シャフト3aが停止した状態にて、フィードローラ3は、回転体12とともに、正回転方向αへ回転する。
【0023】
また、図7(c)に示すように、シャフト3aが停止している状態にて、フィードローラ3に逆回転方向βへ向かう回転力が作用されると、回転体12にも逆回転方向βへ向かう回転力が伝わる。このように、回転体12にも逆回転方向βへ向かう回転力が作用すると、その回転力により、一部が回転体12の内周面に接している回転規制部材13が、弾性変形しながら回転体12の内周面に押圧されて密着する。また、このとき、ブラケット14の保持部16によって回転規制部材13の逆回転方向β側への変形が規制され、回転規制部材13の回転体12への良好な密着状態が維持される。
【0024】
これにより、回転体12は、回転規制部材13によって、停止しているシャフト3aと一体化し、逆回転方向βへの回転が阻止される。
【0025】
このように、上記実施例の逆回転防止機構11によれば、シャフト3aに対する回転体12の逆回転方向βへの回転を阻止する弾性体からなる回転規制部材13をシャフト2aに設けた簡易な構成であるので、低コスト化を図ることができ、しかも、組み立て分解の容易化を図ることができ、これにより、内部の消耗部品を容易に交換することができる。
【0026】
図8から図13は、それぞれ上記実施例における回転規制部材13の変形例を示す回転規制部材の側面図である。
【0027】
図8に示すものは、回転規制部材13の基端側13aに対して先端側13bにおける厚さを薄くし、回転体12の内周面に対する摩擦を低下させたものである。
【0028】
図9に示すものは、回転規制部材13を、その基端側13aと先端側13bとで、異なる材質として2色成型したものである。そして、このように、基端側13aと先端側13bとで異なる材質とすることにより、基端側13aに対して先端側13bの硬度あるいは摩擦を高くあるいは低くして、回転体12に対する回転規制部材13の押圧力あるいは摩擦力を調整することができる。
【0029】
図10に示すものは、回転規制部材13の先端側における回転体12の内周面との接触面に、回転体12との摩擦を下げるコーティング材、布あるいは不織布などの低摩擦材21を塗布あるいは貼り付けたものである。
【0030】
図11に示すものは、回転規制部材13内に繊維を配合しておき、先端側13bにおける回転体12との接触部分を研磨して表面に繊維部分からなる低摩擦材21を露出させたものである。
【0031】
図12及び図13に示すものは、回転規制部材13の先端部あるいは先端部近傍に、断面視円形の突起部23を成型することにより、回転体12の内周面との接触部分を丸くしたものである。
【0032】
そして、回転規制部材13を上記のようにすることにより、回転体12の内周面への回転規制部材13の押圧力及び摩擦力を容易に調整することができる。
【0033】
なお、回転規制部材13は、回転体12内に配設された状態にて正回転方向αへ向かう円弧状に湾曲した形状とされるが、回転体12内への配設前の形状としては、正回転方向αへ向かう円弧状である必要はない。
【0034】
図14から図17は、回転体12内へ配設する前の回転規制部材13の形状を示す回転規制部材13の側面図である。
【0035】
図14に示す回転規制部材13は、回転体12内への配設前における形状が直線状とされており、図15に示す回転規制部材13は、配設前における形状が、逆回転方向βへ湾曲する円弧状に形成されている。
【0036】
また、図16に示す回転規制部材13は、回転体12内への配設前における形状が、正回転方向αへの湾曲後に外周側へ屈曲された断面視S字状に形成されており、図17に示す回転規制部材13は、配設前における形状が、外周側へ突出する円弧状に湾曲した断面視U字状に形成されている。
【0037】
そして、上記のように、回転規制部材13を形成することにより、回転体12の内周面への回転規制部材13の押圧力及び摩擦力を容易に調整することができる。
【0038】
次に、回転規制部材13の取り付け構造の変形例について説明する。
【0039】
図18から図24は、それぞれ回転規制部材13の取り付け構造を示す斜視図である。
【0040】
図18に示すものは、ブラケット14の固定部15に、一対の係止部31を設けたもので、それぞれの係止部31の先端に、外側へ突出した爪部32が形成されている。そして、このブラケット14は、その固定部15をシャフト3aの取付孔18へ挿入することにより、係止部31の爪部32が取付孔18の縁部に係止して取り付けられる。
【0041】
図19に示すものは、ブラケット14の固定部15に取付円筒部33が設けられたものである。そして、このブラケット14は、取付円筒部33をシャフト3aに圧入することによりシャフト3aに取り付けられ、また、回転規制部材13は、保持部16と取付円筒部33との隙間へ押し込むことにより保持される。なお、図20に示すように、シャフト3aの周面にローレット加工を施した取付部34を形成しておくことにより、シャフト3aに圧入したブラケット14の取付円筒部33を、取付部34にて空回りを生じさせることなく確実に固定することができる。
【0042】
図21に示すものは、シャフト3aの外周面及び取付円筒部33の一部に、それぞれ平面部35、36を形成して断面視D形状としたものである。そして、このような断面形状とすることにより、シャフト3aに対して空回りを生じさせることなくブラケット14を確実に固定することができる。
【0043】
図22(a)に示すものは、取付円筒部33の両側部を肉厚に形成するとともに、この肉厚にした両側部に溝部37を形成したブラケット14である。そして、図22(b)に示すように、シャフト3aに係合ピン38を取り付けておき、シャフト3aに圧入したブラケット14の溝部37に係合ピン38を係合させることにより、ブラケット14を、空回りを生じさせることなく確実にシャフト3aへ固定することができる。
【0044】
図23に示すものは、固定部15の側面に保持部16を形成したもので、この固定部15をシャフト3aへ装着することにより、保持部16とシャフト3aとの間に回転規制部材13の基端部を保持させる構造とされている。なお、シャフト3a及び固定部15は、前述と同様の平面部35、36が形成された断面視D形状とされ、シャフト3aに対するブラケット14の空回りが防止されている。
【0045】
図24に示すものは、ブラケット14は固定部15に保持部16を取り付けて形成される。保持部16の先端には、突出した爪部16aが形成されている。そして、固定部15の孔15aへ挿入することにより、爪部16aが孔15aの縁部に係止して保持部16が固定部15に取り付けられる。また、固定部15の先端に突出した爪部15bが形成されており、ブラケット14をシャフト3aへ装着し、固定部15の爪部15bがシャフト3aに形成された溝部35aに係止して取り付けられる。そして、保持部16とシャフト3aとの間に回転規制部材13の基端部を保持させることにより、シャフト3aに対するブラケット14の空回りが防止されている。
【0046】
また、ブラケット14による回転規制部材13の保持構造は、上記実施例に限定されない。
図25から図27はブラケット14による回転規制部材13の保持構造の変形例を示すものである。
【0047】
図25に示すものは、回転規制部材13の基端部に、ブラケット14の保持部16に係止する係止凸部41を形成したものである。
【0048】
図26に示すものは、断面視T字状に形成したブラケット14を用い、このブラケット14の保持部16とシャフト3aとの間に、回転規制部材13の基端側13aを挟持して固定したものである。
【0049】
さらに、図27に示すものは、固定部15と同一方向へ延在する保持部16を有する断面視I字状に形成したブラケット14を用い、このブラケット14の保持部16に形成した保持孔42に、回転規制部材13の基端部を嵌合させて保持させたものである。
【0050】
図28から図30は、回転規制部材と固定部とが一体とされた逆回転防止機構の断面図である。
【0051】
図28に示すものは、シャフト3aに固定される円筒状の固定部15と、この固定部15から正回転方向へ向かって円弧状に湾曲された回転規制部材13とを、弾性材によって一体成型したものである。
【0052】
図29に示すものは、回転規制部材13、保持部16及び固定部15を一体成型したものである。
【0053】
また、図30に示すものは、回転体12の内面近傍まで延在した固定部15と、この固定部15の先端部から正回転方向αへ向かって湾曲した回転規制部材13とを、弾性材によって一体成型したものである。
【0054】
そして、上記のように一体成型品とすることにより、部品点数のさらなる削減及び構造の簡略化を図ることができ、さらに安価なものとすることができる。
【0055】
なお、上記実施例では、いずれも、一つの回転規制部材13を設けたものを例にとって説明したが、回転規制部材13は一つに限らず、複数設けても良い。
【0056】
図31に示すものは、二つの回転規制部材13を設けた逆回転防止機構11を示すもので、このように、二つの回転規制部材13を設けることにより、シャフト3aに対する回転体12の逆回転方向βへの回転を、より強固に阻止することができる。
【0057】
また、上記実施例では、逆回転防止機構11の回転体12をフィードローラ3に連結固定したが、逆回転防止機構11の組み込み構造としては、上記の例に限定されない。
【0058】
図32に示すものは、フィードローラ3の回転体3bに一体成型された回転体12内に、回転規制部材13を配置して逆回転防止機構11を組み込んだものである。
【0059】
また、図33に示すものは、フィードローラの回転体3b内に回転規制部材13を配置して逆回転防止機構11を組み込んだものである。
【0060】
次に、樹脂シャフトを用いた実施例について説明する。
図34〜図46は、樹脂シャフトを用いた実施例の斜視図である。
図34に示すものは、樹脂シャフトを用いた実施例の回転規制部材の取り付け構造を示す斜視図である。円盤状の固定部15の側面に保持部16を備えた逆回転防止機構11は、樹脂シャフト51と一体構造として形成され、この保持部16と樹脂シャフト51との間に回転規制部材13の基端部を保持させる構造である。逆回転防止機構11は、前述のシャフト3aを使用した各実施例と同様に、樹脂シャフト51に回転自在に支持された回転体12との間に介装され樹脂シャフト51に対する回転体12の正回転方向への回転を許容し、逆回転方向への回転を阻止する。
【0061】
図35に示すものは、樹脂シャフトを用いた実施例の変形例を示す斜視図である。逆回転防止機構11は樹脂シャフト51と一体構造として形成される。この逆回転防止機構11は、図36に示すように、回転体12が連結固定されたフィードローラ52の内に回転規制部材13を配置して逆回転防止機構11を組み込むことができる。
【0062】
また、図37に示すものも、樹脂シャフトを用いた実施例の別の変形例を示す斜視図である。図37の逆回転防止機構11は、図24と同様の構造であり、樹脂シャフト51に保持部16が一体構造として形成されたものである。
【0063】
図38に示すものは、樹脂シャフトを用いた実施例のさらに別の変形例を示す斜視図である。図38の例では、樹脂シャフト51に溝部51aが形成されている。この溝部51aのように、比較的深くて長い溝加工は、金属シャフトを用いた場合には加工コストが高くなってしまうため、樹脂成形で形成される樹脂シャフトに向いている。
【0064】
以上の図34〜図38に示す例では、シャフトを樹脂シャフト51とすることにより、逆回転防止機構11とともに1つの金型で一体成形により作成することができる。すなわち、樹脂シャフト51と逆回転防止機構11とが一体構造であるので部品点数が減り、製造コストを下げることができる。
【0065】
図39〜図42は、樹脂シャフトの形状の異なる実施例の斜視図である。
図39に示すものは、断面が略十字形状の樹脂シャフト51bであり、固定部15の上面に保持部16を備えたブラケット14を樹脂シャフト51bに嵌合させることにより、保持部16とブラケット14の外周部14aとの間に回転規制部材13の基端部を保持させる構造である。なお、回転規制部材13は、図40に示すように、固定部15に設けられた保持孔55に回転規制部材13の基端部を嵌合させることにより固定される。
【0066】
図41に示すものも、断面が略十字形状の樹脂シャフト51bであり、樹脂シャフト51bとブラケット14を一体構造の逆回転防止機構11として形成されたものである。この逆回転防止機構11は図39と同様の構造である。そして、回転体12が連結固定されたフィードローラ52の内に回転規制部材13を配置して逆回転防止機構11を組み込むことができる。または、図42に示すように、逆回転防止機構11を用紙送り出し機構を駆動するギア53内に組み込むことによって、ギア53に対して、一方向への回転のみを許容し、逆方向への回転を阻止する逆回転防止の機能を付与することができる。
上記の図39〜図42で示した断面が略十字形状の樹脂シャフト51bは、断面が略十字形状以外の任意の形状のものでも良い。樹脂製のシャフトは金型で一体成形することができるので、金型の形状を変えれば任意の形状のものを容易に作成することができる。
【0067】
図43は、図34で示した逆回転防止機構11を一体構造化した樹脂シャフト51の断面図であり、図44は、図43の樹脂シャフト51の逆回転防止機構11をギア53内に組み込んだ場合の断面図である。このように、図34で示した樹脂シャフト51の逆回転防止機構11もギア53内に組み込み、逆回転防止の機能を付与することができる。
【0068】
また、図45は逆回転防止機構11を左右両端部に取り付けて一体構造化した樹脂シャフト51の断面図である。両端部にそれぞれ逆回転防止機構11を備えることにより、例えばその一端にフィードローラ52、その他端にギア53を設ければ、フィードローラ52及びギア53に対する逆回転防止機能を同時に付与することができる。このような両端部にそれぞれ逆回転防止機構11を備える構造であっても、1つの金型で成形することができる。すなわち、樹脂製のシャフトは、両端部にそれぞれ逆回転防止機構11を備えると云う複雑な構造であっても、1つの部品で構成することができる。
【0069】
なお、以上に説明した樹脂シャフトを使用した各実施例において、樹脂シャフトに金属シャフトを組み合わせたシャフトとしてもよい。
【0070】
また、図24に示した回転規制部材13の取り付け構造において、回転規制部材13を固定する部分(保持部16)から回転規制部材13が抜けにくい構造とした変形例1を図46に、変形例2を図47に示す。
図46及び図47は、図24における保持部16を示す図であり、(a)はその側面図、(b)は保持部16に回転規制部材13を嵌合してA方向から見た図である。
【0071】
図46に示すものは、回転規制部材13が保持部16の下嵌合面16cに嵌合する面の両端部に凸部13aを設けたものである。回転規制部材13が抜ける方向に加わった力に対し、この凸部13aが保持部16の下嵌合面16cに引っ掛かるように作用するので、回転規制部材13の抜け防止に効果を奏する。
【0072】
図47に示すものは、回転規制部材13が嵌合する保持部16の上下の嵌合面16b,16cに凹凸を設けたものである。回転規制部材13は弾性材で形成されているため、嵌合面16b,16cの凹凸によって弾性変形し、より強く保持されるので、回転規制部材13の抜け防止に効果を奏する。
【0073】
なお、図46及び図47に示す回転規制部材13の抜け防止の構造は、図24に示した回転規制部材13の取り付け構造以外の構造であっても、回転規制部材13を挟み付けて保持する構造のものに適用可能である。
【0074】
また、ブラケット14による回転規制部材13の保持構造の変形例として、逆回転阻止時に回転体12の内壁に接触する回転規制部材13の点P(図48参照)が、正回転時の状態における位置に近くなるようにした例を図49から図51に示す。なお、図48は図7(c)に示した逆回転阻止時の作用を示す図に上記点Pを付加した図である。
【0075】
図49に示すものは、回転規制部材13の形状を工夫し、図のQ付近が厚くなる形状としたものである。
【0076】
図50に示すものは、上下に保持部16を付けて、回転規制部材13が回転体12の内壁に接触する曲面のRを小さくしたものである。
【0077】
図51に示すものは、回転規制部材13の先端部に、断面視円形の突起部を成型したものである。これにより、回転規制部材13の点Pが、正回転時の状態における位置に近くなる。
【0078】
以上、実施例及びその変形例を具体的に挙げて詳述したように、本発明の本実施の形態に係る回転体の逆回転防止機構は、シャフト3aと、該シャフト3aに回転自在に支持された回転体12との間に介装されてシャフト3aに対する回転体12の正回転方向への回転を許容し、逆回転方向への回転を阻止する回転体12の逆回転防止機構11であって、シャフト3aに取り付けられ、シャフト3aに対して正回転方向へ向かう回転力が回転体12に作用した際に回転体12の内周面に対して摺動して回転を許容し、シャフト3aに対して逆回転方向へ向かう回転力が回転体12に作用した際に回転体12の内周面に密着して回転を阻止する弾性材からなる回転規制部材13を備えたものである。
このように、シャフト3aに対する回転体12の逆回転方向への回転を阻止する弾性体からなる回転規制部材13をシャフトに設けた簡易な構成であるので、低コスト化を図ることができ、しかも、組み立て分解の容易化を図ることができ、これにより、内部の消耗部品を容易に交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】逆回転防止機構を備えたローラを有する用紙送り機構の概略構成図である。
【図2】逆回転防止機構を備えたローラを有する用紙送り機構の概略構成図である。
【図3】本発明の実施例に係る回転体の逆回転防止機構を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施例に係る逆回転防止機構の構成を説明する分解斜視図である。
【図5】本発明の実施例に係る逆回転防止機構の構造を説明する断面図である。
【図6】本発明の実施例に係る逆回転防止機構を備えたフィードローラの一部を断面視した平面図である。
【図7】本発明の実施例に係る逆回転防止機構の作用を説明する断面図である。
【図8】回転規制部材の変形例を示す回転規制部材の側面図である。
【図9】回転規制部材の変形例を示す回転規制部材の側面図である。
【図10】回転規制部材の変形例を示す回転規制部材の側面図である。
【図11】回転規制部材の変形例を示す回転規制部材の側面図である。
【図12】回転規制部材の変形例を示す回転規制部材の側面図である。
【図13】回転規制部材の変形例を示す回転規制部材の側面図である。
【図14】回転体への配設前の回転規制部材を示す側面図である。
【図15】回転体への配設前の回転規制部材を示す側面図である。
【図16】回転体への配設前の回転規制部材を示す側面図である。
【図17】回転体への配設前の回転規制部材を示す側面図である。
【図18】回転規制部材の取り付け構造を示す斜視図である。
【図19】回転規制部材の取り付け構造を示す斜視図である。
【図20】回転規制部材の取り付け構造を示す斜視図である。
【図21】回転規制部材の取り付け構造を示す斜視図である。
【図22】回転規制部材の取り付け構造を示す斜視図である。
【図23】回転規制部材の取り付け構造を示す斜視図である。
【図24】回転規制部材の取り付け構造を示す斜視図である。
【図25】回転規制部材の保持構造の変形例を示す逆回転防止機構の断面図である。
【図26】回転規制部材の保持構造の変形例を示す逆回転防止機構の断面図である。
【図27】回転規制部材の保持構造の変形例を示す逆回転防止機構の断面図である。
【図28】一体構造の回転規制部材を備えた逆回転防止機構の断面図である。
【図29】一体構造の回転規制部材を備えた逆回転防止機構の断面図である。
【図30】一体構造の回転規制部材を備えた逆回転防止機構の断面図である。
【図31】二つの回転規制部材を設けた逆回転防止機構の断面図である。
【図32】逆回転防止機構を備えたフィードローラの一部を断面視した平面図である。
【図33】逆回転防止機構を備えたフィードローラの一部を断面視した平面図である。
【図34】樹脂シャフトを用いた実施例の回転規制部材の取り付け構造を示す斜視図である。
【図35】樹脂シャフトを用いた実施例の変形例を示す斜視図である。
【図36】図35の逆回転防止機構をフィードローラ内に組み込んだ図である。
【図37】樹脂シャフトを用いた実施例の別の変形例を示す斜視図である。
【図38】樹脂シャフトを用いた実施例のさらに別の変形例を示す斜視図である。
【図39】断面が略十字形状の樹脂シャフトを用いた実施例の斜視図である。
【図40】図39のブラケットと回転規制部材の嵌合を説明する要部の拡大斜視図である。
【図41】断面が略十字形状の樹脂シャフトを用いた実施例の樹脂シャフトとブラケットを一体構造とした変形例の斜視図である。
【図42】逆回転防止機構をギア内に組み込む変形例の斜視図である。
【図43】図34で示した逆回転防止機構を一体構造化した樹脂シャフトの断面図である。
【図44】図43の樹脂シャフトの逆回転防止機構をギア内に組み込んだ場合の断面図である。
【図45】逆回転防止機構を左右両端部に取り付けて一体構造化した樹脂シャフトの断面図である。
【図46】図24における保持部の変形例1であり、(a)はその側面図、(b)は保持部に回転規制部材を嵌合してA方向から見た図である。
【図47】図24における保持部の変形例2であり、(a)はその側面図、(b)は保持部に回転規制部材を嵌合してA方向から見た図である。
【図48】図7(c)に示した逆回転阻止時の作用を示す図に点Pを付加した平面図である。
【図49】回転規制部材の形状を工夫し、図のQ付近が厚くなる形状とした回転規制部材の保持構造の変形例を示す逆回転防止機構の断面図である。
【図50】上下に保持部を付けて、回転規制部材が回転体の内壁に接触する曲面のRを小さくした回転規制部材の保持構造の変形例を示す逆回転防止機構の断面図である。
【図51】回転規制部材の先端部に、断面視円形の突起部を成型した回転規制部材の保持構造の変形例を示す逆回転防止機構の断面図である。
【符号の説明】
【0080】
3a シャフト
11 逆回転防止機構
12 回転体
13 回転規制部材
13a 基端側
13b 先端側
15 固定部
16 保持部
18 取付孔
21 低摩擦材
23 突起部
33 取付円筒部
51,51b 樹脂シャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、該シャフトに回転自在に支持された回転体との間に介装されて前記シャフトに対する前記回転体の正回転方向への回転を許容し、逆回転方向への回転を阻止する回転体の逆回転防止機構であって、
前記シャフトに取り付けられ、前記シャフトに対して正回転方向へ向かう回転力が前記回転体に作用した際に前記回転体の内周面に対して摺動して回転を許容し、前記シャフトに対して逆回転方向へ向かう回転力が前記回転体に作用した際に前記回転体の内周面に密着して回転を阻止する弾性材からなる回転規制部材を備えたことを特徴とする回転体の逆回転防止機構。
【請求項2】
前記回転規制部材は、前記シャフトから正回転方向へ向かって延在されていることを特徴とする請求項1に記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項3】
前記回転規制部材の逆回転方向側には、この回転規制部材よりも高い剛性を有する保持部が配設され、該保持部によって前記回転規制部材の逆回転方向側への変形が規制されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項4】
前記保持部は、前記シャフトに固定される固定部に設けられ、前記回転規制部材は、前記保持部によって前記シャフトに保持されていることを特徴とする請求項3に記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項5】
前記回転規制部材は、ゴム、エラストマ、スポンジあるいはこれらの複合物からなる弾性材から形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項6】
前記回転規制部材は、前記回転体の内周面に接触する先端側の厚さが薄くされていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項7】
前記回転規制部材は、前記シャフトに保持される基端側と前記回転体の内周面に接触する先端側とが異なる硬度とされていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項8】
前記回転規制部材は、前記回転体の内周面への接触面に、低摩擦材が露出されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項9】
前記低摩擦材は、前記回転規制部材の表面にコーティングすることにより設けられていることを特徴とする請求項8に記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項10】
前記回転規制部材は、前記回転体の内周面との接触箇所に、断面視円形の突起部を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項11】
前記回転規制部材は、前記回転体内への配設前の形状が、直線状であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項12】
前記回転規制部材は、前記回転体内への配設前の形状が、逆回転方向へ湾曲する円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項13】
前記回転規制部材は、前記回転体内への配設前の形状が、正回転方向への湾曲後に外周側へ屈曲された断面視S字状に形成されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項14】
前記回転規制部材は、前記回転体内への配設前の形状が、外周側へ突出する円弧状に湾曲した断面視U字状に形成されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項15】
前記保持部は、前記シャフトに形成された径方向の取付孔へ前記固定部を挿入して係合することにより前記シャフトに取り付けられていることを特徴とする請求項4〜14のいずれか1項に記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項16】
前記保持部は、前記固定部に形成された取付円筒部を前記シャフトに圧入することにより前記シャフトに取り付けられていることを特徴とする請求項4〜14のいずれか1項に記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項17】
前記回転規制部材と前記固定部とが一体成型されていることを特徴とする請求項4〜14のいずれか1項に記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項18】
前記固定部が前記回転体の内周面近傍まで延在され、この固定部の先端部に前記回転規制部材が連結されていることを特徴とする請求項17に記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項19】
前記回転規制部材、前記保持部及び前記固定部が一体成型されていることを特徴とする請求項4〜14のいずれか1項に記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項20】
前記回転規制部材が周方向へ間隔をあけて複数設けられていることを特徴とする請求項1〜19のいずれか1項に記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項21】
前記シャフトは、樹脂シャフトであることを特徴とする請求項1〜20のいずれか1項に記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項22】
前記シャフトの断面が略十字形状であることを特徴とする請求項21に記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項23】
前記シャフトと前記固定部が一体成型されていることを特徴とする請求項21または請求項22に記載の回転体の逆回転防止機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【公開番号】特開2006−189142(P2006−189142A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−41845(P2005−41845)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(591043569)パイオニア精密株式会社 (16)