説明

回転偏光フィルタの回転角度検出装置及びこれを備えた撮影装置

【課題】低コストで簡単に製造でき、しかも回転偏光フィルタの回転角度(偏光方向)を簡単かつ高精度に検出できる回転偏光フィルタの回転角度(偏光方向)検出装置及びこれを備えた撮影装置を得る。
【解決手段】対向配置された発光素子と受光素子;前記発光素子と受光素子の間の光路上に、その偏光方向を特定の方向に固定して配置された偏光方向固定部材;前記発光素子と受光素子の間の光路上に、その偏光方向を変化させるように回転自在に支持された回転偏光フィルタ;及び前記発光素子から発光され前記偏光方向固定部材と回転偏光フィルタを通過して前記受光素子で受光された光の出力に基づいて、前記回転偏光フィルタの回転角度を検出する検出手段;を有することを特徴とする回転偏光フィルタの回転角度検出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転偏光フィルタの回転角度検出装置及びこれを備えた撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラなどの撮影装置では、撮影光学系の光路上に回転偏光フィルタを位置させて、この回転偏光フィルタの回転角度(偏光方向)を調整することで、撮像素子に入射する光束の偏光状態を変化させて、被写体の反射を除去し、あるいはコントラストを高めるものが知られている。特許文献1−4では、回転偏光フィルタの回転角度(偏光方向)を調整するための工夫が提案されている。
【0003】
特許文献1、2には、回転偏光フィルタを支持する支持枠に目盛りを設け、この目盛りを見ながら回転偏光フィルタの回転角度を調整することが開示されている。
しかし特許文献1、2は、支持枠に目盛りを設ける工程が必須であり、回転偏光フィルタを支持枠に組み付ける際に、回転偏光フィルタの偏光方向と支持枠に設けた目盛りとを高精度に一致させなければならない。このため、高コストで製造が困難であり、量産に向かない。
【0004】
特許文献3には、回転偏光フィルタを180°回転させてこの回転動作によって変化する被写体輝度情報を記憶し、記憶した被写体輝度情報に基づいて、続く180°回転の間で目標とする被写体輝度位置まで回転偏光フィルタを自動回転させることで、回転偏光フィルタの回転角度を調整することが開示されている。
しかし特許文献3は、被写体輝度情報が常に一定ではないので、被写体輝度情報と回転偏光フィルタの回転角度(偏光方向)との関係を示すデータを記憶したとしても、次の撮影時にこれを利用することができない。つまり、撮影をする度に回転偏光フィルタを180°回転させて被写体輝度情報を新たに記憶しなければならないため、回転偏光フィルタの回転角度(偏光方向)を調整するために長時間を要してしまう。また、被写体輝度情報を記憶した後に被写体輝度情報が変化すると、回転偏光フィルタの回転角度(偏光方向)を精度良く調整することができなくなってしまう。
【0005】
特許文献4には、回転偏光フィルタの外周にあるマークを光学的に読み取るフィルタ回転位置センサを設けて、このフィルタ回転位置センサの出力に応じて回転偏光フィルタの回転角度を調整することが開示されている。
しかし特許文献4は、回転偏光フィルタの偏光方向とフィルタ回転位置センサの検出基準とを高精度に一致させなければならない。このため、高コストで製造が困難であり、量産に向かない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3079581号公報
【特許文献2】実用新案登録第3085392号公報
【特許文献3】特開2007−3970号公報
【特許文献4】特開2001−281734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上の問題意識に基づいて完成されたものであり、低コストで簡単に製造でき、しかも回転偏光フィルタの回転角度(偏光方向)を簡単かつ高精度に検出できる回転偏光フィルタの回転角度(偏光方向)検出装置及びこれを備えた撮影装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の回転偏光フィルタの回転角度(偏光方向)検出装置は、対向配置された発光素子と受光素子;前記発光素子と受光素子の間の光路上に、その偏光方向を特定の方向に固定して配置された偏光方向固定部材;前記発光素子と受光素子の間の光路上に、その偏光方向を変化させるように回転自在に支持された回転偏光フィルタ;及び前記発光素子から発光され前記偏光方向固定部材と回転偏光フィルタを通過して前記受光素子で受光された光の出力に基づいて、前記回転偏光フィルタの回転角度(偏光方向)を検出する検出手段;を有することを特徴としている。
【0009】
本発明の回転偏光フィルタの回転角度検出装置は、一対の対向壁とこの一対の対向壁を接続する接続壁とからなる凹断面形状を持つケースをさらに有し、このケースの一対の対向壁に前記発光素子と受光素子を設けて、このケースの一対の対向壁の間に、前記偏光方向固定部材と回転偏光フィルタを位置させることができる。
【0010】
本発明の回転偏光フィルタの回転角度検出装置は、前記受光素子で受光された光の出力と、前記回転偏光フィルタの回転角度とを対応付けたデータを記憶する記憶手段;及び前記記憶手段が記憶するデータを参照して、前記受光素子で受光された光の出力に基づいて、前記回転偏光フィルタの回転角度を演算する演算手段;をさらに有することができる。
【0011】
前記記憶手段は、電源の供給の有無にかかわらず自身が記憶したデータを保持する不揮発性メモリで構成することが好ましい。
【0012】
本発明の回転偏光フィルタの回転角度検出装置は、前記記憶手段が記憶したデータを喪失したときに、前記受光素子で受光された光の出力と、前記回転偏光フィルタの回転角度とを対応付けたデータを取得する取得手段をさらに有することが好ましい。
この場合、前記取得手段がデータを取得するために、前記回転偏光フィルタを手動で回転させるように警告する警告手段を設けることができる。あるいは、前記回転偏光フィルタを自動で回転駆動させる駆動手段を設けることもできる。
【0013】
前記発光素子と受光素子は複数セットが設けられており、前記偏光方向固定部材は、前記複数セットに対応させて、各セットの発光素子と受光素子の間の光路上に、互いの偏光方向を異ならせた複数が設けられていて、前記検出手段は、前記複数セットに対応する受光素子で受光された複数の光の出力に基づいて、前記回転偏光フィルタの回転角度を検出することが好ましい。
【0014】
本発明の回転偏光フィルタの回転角度検出装置は、前記発光素子から発光され前記偏光方向固定部材と回転偏光フィルタを通過して前記受光素子で受光された光の出力に基づいて、前記回転偏光フィルタの劣化を判定する劣化判定手段をさらに有することが好ましい。
この劣化判定手段は、前記受光素子で受光された光の出力波形の最大値(最大振幅値)と最小値(最小振幅値)の差分値を求め、この差分値が第1の閾値を下回ったときに、前記回転偏光フィルタが劣化していると判定することができる。
【0015】
本発明の回転偏光フィルタの回転角度検出装置は、前記劣化判定手段が前記回転偏光フィルタの劣化判定を実行する度に、前記受光素子で受光された光の出力と、前記回転偏光フィルタの回転角度とを対応付けたデータを更新する更新手段をさらに有することが好ましい。
【0016】
あるいは、本発明の回転偏光フィルタの回転角度検出装置は、前記劣化判定手段が、前記受光素子で受光された光の出力波形の最大値と最小値の差分値が、前記第1の閾値を上回りかつ前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値を下回っていると判定したときに、前記受光素子で受光された光の出力と、前記回転偏光フィルタの回転角度とを対応付けたデータを更新する更新手段をさらに有していてもよい。
【0017】
本発明の撮影装置(例えばデジタルカメラ)は、上述したいずれかの回転偏光フィルタの回転角度検出装置を備えている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、回転偏光フィルタを回転させると、偏光方向固定部材と回転偏光フィルタの偏光方向がなす角度が変化して両部材の全体としての透過率が変化する結果、受光素子で受光される光の出力が変化する。そして検出手段が、受光素子で受光された光の出力を読み取ることで、回転偏光フィルタの回転角度(偏光方向)を簡単かつ高精度に検出できる。しかも低コストで簡単に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による回転偏光フィルタの回転角度検出装置を搭載したデジタルカメラ(撮影装置)の構成を示すブロック図である。
【図2】図2(A)は、回転偏光フィルタを撮影光軸回りに回転させてその偏光方向(偏光格子の方向)を調整する様子を説明する図であり、図2(B)は、偏光方向固定部材の偏光方向(偏光格子の方向)が固定された様子を説明する図であり、図2(C)は、発光素子から発光され回転偏光フィルタと偏光方向固定部材を通過して受光素子で受光された光の出力波形を示す図である。
【図3】回転偏光フィルタの周縁部に対峙するフォトインタラプタの構成を示す斜視図である。実際には偏光方向固定部材の前方に回転偏光フィルタが位置しているが、偏光方向固定部材が回転偏光フィルタに隠れて判りにくくなってしまうため、この斜視図では回転偏光フィルタを実際とは異なる位置(フォトインタラプタの凹状の収容空間の上方)に描いている。
【図4】回転偏光フィルタの周縁部に対峙するフォトインタラプタの構成を示す断面図である。
【図5】回転偏光フィルタの回転角度(偏光方向)を検出するための機構を示すブロック図である。実際には偏光方向固定部材の前方に回転偏光フィルタが位置しているが、偏光方向固定部材が回転偏光フィルタに隠れて判りにくくなってしまうため、このブロック図では回転偏光フィルタを実際とは異なる位置(フォトインタラプタの凹状の収容空間の上方)に描いている。
【図6】LCDモニタの警告表示の一例を示す図である。
【図7】偏光方向固定部材を2セット設けた変形例を示す図3に対応する斜視図である。実際には偏光方向固定部材の前方に回転偏光フィルタが位置しているが、偏光方向固定部材が回転偏光フィルタに隠れて判りにくくなってしまうため、この斜視図では回転偏光フィルタを実際とは異なる位置(フォトインタラプタの凹状の収容空間の上方)に描いている。
【図8】図8(A)は、回転偏光フィルタを撮影光軸回りに回転させてその偏光方向(偏光格子の方向)を調整する様子を説明する図であり、図8(B)と図8(C)は、2セットの偏光方向固定部材の偏光方向(偏光格子の方向)が固定された様子を説明する図であり、図8(D)は、2セットの受光素子で受光された光の出力波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明による回転偏光フィルタの回転角度検出装置を搭載したデジタルカメラ(撮影装置)100のブロック図である。
【0021】
図1に示すように、デジタルカメラ100は、撮影光軸Z上に位置させて、物体側から順に、固定レンズ101と可動のフォーカシングレンズ102からなる撮影光学系、及びCCD(固定撮像素子)103を備えている。固定レンズ101とフォーカシングレンズ102は、入射した被写体光束をCCD103の撮像面103aに結像させる。フォーカシングレンズ102は、フォーカシングレンズ駆動手段102aにより駆動制御されて、フォーカシング時に撮影光軸Z方向に移動する。
【0022】
デジタルカメラ100は、CPU(検出手段、取得手段、劣化判定手段、更新手段)104、A/D変換器105、信号処理回路106、画像記録手段107、及びLCDモニタ(警告手段)108を備えている。CPU104は、デジタルカメラ100の全体の機能を制御する。A/D変換器105は、CCD103の撮像面103aに結像した被写体像をアナログ信号からデジタル信号に変換して信号処理回路106に送る。信号処理回路106は、A/D変換器105から送られたデジタル信号に所定の画像処理を施して画像信号とする。この画像信号は、CPU104を介して、画像記録手段107に記録され、あるいはLCDモニタ108に表示される。またデジタルカメラ100には、例えば電源レバー、シャッターボタン、モードダイヤルなどの撮影操作手段109が備えられている。
【0023】
デジタルカメラ100は、固定レンズ101とフォーカシングレンズ102の間の撮影光軸Z上に位置させて、回転偏光フィルタ110を備えている。この回転偏光フィルタ110は、回転偏光フィルタ駆動手段(駆動手段)111により駆動制御されて、撮影光軸Z回りに回転自在である。回転偏光フィルタ駆動手段111は、回転偏光フィルタ110をステップ駆動するステッピングモータ111aと、CPU104の指示を受けてステッピングモータ111aを回転制御するモータドライバ111bとからなる(図5)。
【0024】
回転偏光フィルタ110は、自身の偏光方向(偏光格子の方向)の光のみを透過させる機能を持っている。従って、図2(A)に示すように、回転偏光フィルタ110を撮影光軸Z回りに回転させてその偏光方向(偏光格子の方向)を調整することで、CCD103に入射する被写体光束の偏光状態を変化させて、被写体の反射を除去し、あるいはコントラストを高める。
【0025】
デジタルカメラ100は、回転偏光フィルタ110の周縁部に対峙するフォトインタラプタ120を備えている。図3及び図4に示すように、フォトインタラプタ120は、撮影光軸Zと平行な軸方向に沿って対向する一対の対向壁121と、この一対の対向壁121を接続する接続壁122とからなる凹断面形状を持つケース123を備えている。一対の対向壁121と接続壁122によって画成される凹状の収容空間123aには、回転偏光フィルタ110の周縁部が収容されている。
【0026】
物体側の対向壁(図4中の左側の対向壁)121の内部には、発光素子124と、この発光素子124に通電するリード端子124aが設けられている。像側の対向壁(図4中の右側の対向壁)121の内部には、受光素子125と、この受光素子125に通電するリード端子125aが設けられている。発光素子124(リード端子124a)と受光素子125(リード端子125a)は、ケース123内に設けられた基板126上に実装されている。
【0027】
像側の対向壁(図4中の右側の対向壁)121の物体側(図4中の左側)に臨む面には、自身の偏光方向(偏光格子の方向)の光のみを透過させる機能を持つ偏光方向固定部材130が設けられている。図2(B)に示すように、偏光方向固定部材130は、その偏光方向(偏光格子の方向)を特定の方向に固定した状態で設けられている。
【0028】
図4の断面図に示すように、フォトインタラプタ120では、対向配置された発光素子124と受光素子125の間の光路上に、その偏光方向を変化させるように回転自在に支持された回転偏光フィルタ110と、その偏光方向が特定の方向に固定された偏光方向固定部材130とが位置している。このため、受光素子125は、発光素子124から発光され回転偏光フィルタ110と偏光方向固定部材130の双方を通過した光を受光する。尚、実際には偏光方向固定部材130の前方に回転偏光フィルタ110が位置しているが、偏光方向固定部材130が回転偏光フィルタ110に隠れて判りにくくなってしまうため、図3及び図5では、偏光フィルタ110を実際とは異なる位置(フォトインタラプタ120の凹状の収容空間123aの上方)に描いている。
【0029】
CPU(検出手段)104は、発光素子124から発光され回転偏光フィルタ110と偏光方向固定部材130の双方を通過して受光素子125で受光された光の出力に基づいて、回転偏光フィルタ110の回転角度(偏光方向)を検出する。以下ではその具体的な検出方法について説明する。
【0030】
図2(C)は、発光素子124から発光され回転偏光フィルタ110と偏光方向固定部材130の双方を通過して受光素子125で受光された光の出力波形を示している。上述したように、回転偏光フィルタ110と偏光方向固定部材130はともに、光の波長を自身の偏光方向のみに限定する機能を持つ。このため、回転偏光フィルタ110を回転させると、回転偏光フィルタ110と偏光方向固定部材130の偏光方向がなす角度が変化して両部材の全体としての透過率が変化する結果、受光素子125で受光される光の出力が変化する。
【0031】
例えば、図2(C)中の点X1、X2で示すように、回転偏光フィルタ110と偏光方向固定部材130の偏光方向が一致しているときは、光の透過率が最大となるので、受光素子125で受光される光の出力が最大値(最大振幅値)を示す。
図2(C)中の点Y1、Y2、Y3、Y4で示すように、回転偏光フィルタ110と偏光方向固定部材130の偏光方向が45°をなしているときは、光の透過率が中間となるので、受光素子125で受光される光の出力が中間値(中間振幅値)を示す。
図2(C)中の点Z1、Z2で示すように、回転偏光フィルタ110と偏光方向固定部材130の偏光方向が直交しているときは、透過可能な光が理論上存在せず透過率が最小となるので、受光素子125で受光される光の出力が最小値(最小振幅値)を示す。
【0032】
図1及び図5に示すように、CPU(検出手段)104には、メモリ(記憶手段)104aと演算部104bが接続されている。
【0033】
メモリ104aは、受光素子125で受光された光の出力と回転偏光フィルタ110の回転角度とを対応付けたデータ(つまり図2(A)と図2(C)のデータ)を記憶している。メモリ104aは、電源の供給の有無にかかわらず自身が記憶したデータを保持する不揮発性メモリとすることが好ましい。
【0034】
演算部104bは、メモリ104aが記憶するデータを参照して、受光素子125で受光された光の出力に基づいて、回転偏光フィルタ110の回転角度(偏光方向)を演算(検出)する。
例えば、演算部104bは、受光素子125が受光した光の出力が最大値を示していれば、回転偏光フィルタ110の回転角度を0°または180°(回転偏光フィルタ110の偏光特性は同じである)と演算する。
演算部104bは、受光素子125が受光した光の出力が中間値を示していれば、回転偏光フィルタ110の回転角度を45°、135°、225°または315°と演算する。さらに演算部104bは、受光素子125が受光した光の出力が減少しながら中間値に達したときは、回転偏光フィルタ110の回転角度を45°または225°(回転偏光フィルタ110の偏光特性は同じである)と演算し、受光素子125が受光した光の出力が増加しながら中間値に達したときは、回転偏光フィルタ110の回転角度を135°または315°(回転偏光フィルタ110の偏光特性は同じである)と演算する。
演算部104bは、受光素子125が受光した光の出力が最小値を示していれば、回転偏光フィルタ110の回転角度を90°または270°(回転偏光フィルタ110の偏光特性は同じである)と演算する。
【0035】
CPU(検出手段)104は、メモリ104aを参照して実行した演算部104bの演算結果を受け取ることにより、回転偏光フィルタ110の回転角度(偏光方向)を検出する。
【0036】
CPU(取得手段)104は、メモリ104aが記憶したデータを喪失したときは、受光素子125で受光された光の出力と回転偏光フィルタ110の回転角度とを対応付けたデータを新たに取得する。より具体的にCPU104は、回転偏光フィルタ110を初期位置(例えば偏光方向固定部材130と偏光方向を一致させた位置)から360°回転させ、この回転中に受光素子125で受光された光の出力をモニタリングすることで新たなデータを取得する。これにより、メモリ104aが記憶したデータを喪失したときであっても、取得した新たなデータを使用して、回転偏光フィルタ110の回転角度(偏光方向)を正確に検出することができる。
CPU104は、メモリ104aが記憶したデータを喪失した場合において回転偏光フィルタ110が手動回転モードであるときは、操作者に回転偏光フィルタ110を手動回転させることを促すために、LCDモニタ108に警告表示をさせる(図6)。
CPU104は、メモリ104aが記憶したデータを喪失した場合において回転偏光フィルタ110が自動回転モードであるときは、回転偏光フィルタ駆動手段111(ステッピングモータ111aとモータドライバ111b)によって回転偏光フィルタ110をステップ駆動させ、各ステップにおいて受光素子125で受光された光の出力をモニタリングする。
【0037】
CPU(劣化判定手段)104は、図2(C)に示す受光素子125で定期的に発光素子124からの光を受光し、受光された光の出力に基づいて、回転偏光フィルタ110の劣化を判定する。より具体的にCPU104は、受光素子125で受光された光の出力波形の最大値(X1、X2)と最小値(Z1、Z2)の差分値を求め、この差分値が第1の閾値を下回ったときに、回転偏光フィルタ110が劣化していると判定する。CPU104は、回転偏光フィルタ110が劣化していると判定したときは、LCDモニタ108に警告表示をさせ、あるいはアラーム音を発生させる。これにより、操作者は、紫外線や経年変化に起因する回転偏光フィルタ110の劣化を察知して、交換あるいはメンテナンスなどの対策をいち早く講じることができる。
【0038】
本実施形態では、メモリ104aが、受光素子125で受光された光の出力と回転偏光フィルタ110の回転角度とを対応付けたデータを記憶しており、演算部104bが、メモリ104aが記憶するデータを参照して、受光素子125で受光された光の出力に基づいて、回転偏光フィルタ110の回転角度(偏光方向)を演算している。
しかし、回転偏光フィルタ110は、上述の第1の閾値を下回らなくても、程度の差こそあれ徐々に劣化するものであり、回転偏光フィルタ110の回転角度位置が変わらない場合であっても回転偏光フィルタ110が劣化すると受光素子125で受光される光の出力自体が変わってしまうため、回転偏光フィルタ110の回転角度(偏光方向)を正確に演算することができなくなってしまう。
そこでCPU(劣化判定手段、更新手段)104は、回転偏光フィルタ110の劣化判定を定期的に実行することが好ましい。またCPU(劣化判定手段、更新手段)104は、劣化判定を実行する度に、受光素子125で受光された光の出力と回転偏光フィルタ110の回転角度とを対応付けたデータを新たに取得(更新)することが好ましい。
あるいはCPU(劣化判定手段、更新手段)104は、上述の第1の閾値よりも大きい第2の閾値を設定しておき、受光素子125で受光された光の出力波形の最大値(X1、X2)と最小値(Z1、Z2)の差分値が第1の閾値を上回りかつ第2の閾値を下回ったときに、受光素子125で受光された光の出力と回転偏光フィルタ110の回転角度とを対応付けたデータを新たに取得(更新)するようにしてもよい。
【0039】
以上のように、本実施形態による回転偏光フィルタの回転角度検出装置は、対向配置された発光素子124と受光素子125、この発光素子124と受光素子125の間の光路上に、その偏光方向を特定の方向に固定して配置された偏光方向固定部材130、この発光素子124と受光素子125の間の光路上に、その偏光方向を変化させるように回転自在に支持された回転偏光フィルタ110、及び発光素子124から発光され偏光方向固定部材130と回転偏光フィルタ110を通過して受光素子125で受光された光の出力に基づいて、回転偏光フィルタ110の回転角度(偏光方向)を検出するCPU(検出手段)104を有している。
【0040】
この構成によれば、回転偏光フィルタ110を回転させると、偏光方向固定部材130と回転偏光フィルタ110の偏光方向がなす角度が変化して両部材の全体としての透過率が変化する結果、受光素子125で受光される光の出力が変化する。そしてCPU(検出手段)104が、受光素子125で受光された光の出力を読み取ることで、回転偏光フィルタ110の回転角度(偏光方向)を簡単かつ高精度に検出できる。しかも低コストで簡単に製造できる。
【0041】
以上の実施形態では、発光素子124と受光素子125と偏光方向固定部材130を1つずつ設けていたため、受光素子125で受光された光の出力は1つだけである。しかし、発光素子124と受光素子125を複数セット設けて、この複数セットに対応させて、互いの偏光方向を異ならせた複数の偏光方向固定部材130を設けることもできる。
【0042】
図7及び図8は、同一仕様の2セットの発光素子と受光素子、及び偏光方向を45°異ならせた2セットの偏光方向固定部材131、132を設けた変形性を示している。この変形例によれば、2セットの受光素子で受光された光の出力の組み合わせだけに基づいて、回転偏光フィルタ110の回転角度(偏光方向)を検出することができる。
【0043】
例えば、図8に示すように、偏光方向固定部材131側の受光素子が受光した光の出力が最大値を示しており(点X1またはX2)、偏光方向固定部材132側の受光素子が受光した光の出力が中間値を示していれば(点Y1’またはY3’)、回転偏光フィルタ110の回転角度を0°または180°(回転偏光フィルタ110の偏光特性は同じである)と検出できる。
偏光方向固定部材131側の受光素子が受光した光の出力が中間値を示しており(点Y1またはY3)、偏光方向固定部材132側の受光素子が受光した光の出力が最大値を示していれば(点X1’またはX2’)、回転偏光フィルタ110の回転角度を45°または225°(回転偏光フィルタ110の偏光特性は同じである)と検出できる。
偏光方向固定部材131側の受光素子が受光した光の出力が最小値を示しており(点Z1またはZ2)、偏光方向固定部材132側の受光素子が受光した光の出力が中間値を示していれば(点Y2’またはY4’)、回転偏光フィルタ110の回転角度を90°または270°(回転偏光フィルタ110の偏光特性は同じである)と検出できる。
偏光方向固定部材131側の受光素子が受光した光の出力が中間値を示しており(点Y2またはY4)、偏光方向固定部材132側の受光素子が受光した光の出力が最小値を示していれば(点Z1’またはZ2’)、回転偏光フィルタ110の回転角度を135°または315°(回転偏光フィルタ110の偏光特性は同じである)と検出できる。
【0044】
上記の説明では、偏光方向固定部材131側の受光素子が受光した光の出力と偏光方向固定部材132側の受光素子が受光した光の出力が最大値、中間値、最小値のいずれかとなる場合のサンプル角度を例示している。しかし、偏光方向固定部材131側の受光素子が受光した光の出力と偏光方向固定部材132側の受光素子が受光した光の出力が最大値、中間値、最小値のいずれでもない場合(例えば、偏光方向固定部材131側の受光素子が受光した光の出力が点X1とY1の間で、偏光方向固定部材132側の受光素子が受光した光の出力が点Y1’とX1’の間である場合)であっても、2セットの受光素子で受光された光の出力の組み合わせだけに基づいて、回転偏光フィルタ110の回転角度(偏光方向)を検出することができる。
【0045】
このように、2セットのフォトセンサ(発光素子と受光素子と偏光方向固定部材の組み合わせ)を設ければ、1セットのフォトセンサを設けたときと比べて、検出可能な最大輝度と最小輝度の数が倍に増える。このため、それぞれの検出輝度を利用して、回転偏光フィルタ110の回転角度(偏光方向)を簡単に検出することができる。
例えば、1セットのフォトセンサを設けたときは、図2に示すように、検出輝度が中間値を示していれば、回転偏光フィルタ110の回転角度の候補は45°、135°、225°または315°の4つとなる。このため、前後の輝度情報(例えば、輝度が増大しながら中間輝度に達したか、あるいは輝度が減少しながら中間輝度に達したか)から判断して、回転偏光フィルタ110の回転角度が45°または225°であるのか、あるいは135°または315°であるのかを判断しなければならない。
これに対し、2セットのフォトセンサを設けたときは、前後の輝度情報を判断することなく、2セットのフォトセンサで検出した輝度情報だけに基づいて、回転偏光フィルタ110の回転角度(偏光方向)を検出することができる。
【0046】
尚、フォトセンサ(発光素子と受光素子と偏光方向固定部材の組み合わせ)は2セットに限定されず、3セット以上のフォトセンサを設けることも勿論可能である。
【0047】
尚、図7及び図8の変形例では、偏光方向固定部材を2つ使用しているが、偏光方向固定部材を1つにする代わりに回転偏光フィルタを2つ使用してもよい。この場合、まず一方の回転偏光フィルタを所定角度だけ回転させて偏光方向を所定の方向に向かせた状態で固定し、その後は偏光方向固定部材を2つ使用しているときと同様に回転偏光フィルタの回転角度(偏光方向)を検出する。この構成によれば、偏光方向固定部材の取り付け誤差を1つのみで済ますことができるので、回転偏光フィルタの回転角度(偏光方向)をより高精度に検出することができる。
【0048】
以上の実施形態では、本発明による回転偏光フィルタの回転角度検出装置をデジタルカメラ100に搭載した場合を例示して説明した。しかし、本発明による回転偏光フィルタの回転角度検出装置は、デジタルカメラのみならず、各種の工業分野で用いる撮影装置全般に適用することができる。例えば、工場の製造ラインで生産されて順次搬送されてくる生産品を自動外観検査用に撮影する撮影装置がこれに該当する。
【0049】
以上の実施形態では、偏光方向固定部材130を像側の対向壁(図4中の右側の対向壁)121の物体側(図4中の左側)に臨む面に設けている。しかし、偏光方向固定部材130は発光素子124と受光素子125の光路上に位置してさえいればよく、偏光方向固定部材130を物体側の対向壁(図4中の左側の対向壁)121の像側(図4中の右側)に臨む面に設けても同様の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0050】
100 デジタルカメラ(撮影装置)
101 固定レンズ
102 フォーカシングレンズ
102a フォーカシングレンズ駆動手段
103 CCD(固定撮像素子)
103a 撮像面
104 CPU(検出手段、取得手段、劣化判定手段、更新手段)
104a メモリ(記憶手段)
104b 演算部
105 A/D変換器
106 信号処理回路
107 画像記録手段
108 LCDモニタ(警告手段)
109 撮影操作手段
110 回転偏光フィルタ
111 回転偏光フィルタ駆動手段(駆動手段)
111a ステッピングモータ
111b モータドライバ
120 フォトインタラプタ
121 一対の対向壁
122 接続壁
123 ケース
123a 収容空間
124 発光素子
124a リード端子
125 受光素子
125a リード端子
126 基板
130 131 132 偏光方向固定部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置された発光素子と受光素子;
前記発光素子と受光素子の間の光路上に、その偏光方向を特定の方向に固定して配置された偏光方向固定部材;
前記発光素子と受光素子の間の光路上に、その偏光方向を変化させるように回転自在に支持された回転偏光フィルタ;及び
前記発光素子から発光され前記偏光方向固定部材と回転偏光フィルタを通過して前記受光素子で受光された光の出力に基づいて、前記回転偏光フィルタの回転角度を検出する検出手段;
を有することを特徴とする回転偏光フィルタの回転角度検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の回転偏光フィルタの回転角度検出装置において、
一対の対向壁とこの一対の対向壁を接続する接続壁とからなる凹断面形状を持つケースをさらに有し、このケースの一対の対向壁に前記発光素子と受光素子が設けられており、このケースの一対の対向壁の間に、前記偏光方向固定部材と回転偏光フィルタが位置している回転偏光フィルタの回転角度検出装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の回転偏光フィルタの回転角度検出装置において、
前記受光素子で受光された光の出力と、前記回転偏光フィルタの回転角度とを対応付けたデータを記憶する記憶手段;及び
前記記憶手段が記憶するデータを参照して、前記受光素子で受光された光の出力に基づいて、前記回転偏光フィルタの回転角度を演算する演算手段;
をさらに有する回転偏光フィルタの回転角度検出装置。
【請求項4】
請求項3記載の回転偏光フィルタの回転角度検出装置において、
前記記憶手段は、電源の供給の有無にかかわらず自身が記憶したデータを保持する不揮発性メモリからなる回転偏光フィルタの回転角度検出装置。
【請求項5】
請求項3記載の回転偏光フィルタの回転角度検出装置において、
前記記憶手段が記憶したデータを喪失したときに、前記受光素子で受光された光の出力と、前記回転偏光フィルタの回転角度とを対応付けたデータを取得する取得手段をさらに有する回転偏光フィルタの回転角度検出装置。
【請求項6】
請求項5記載の回転偏光フィルタの回転角度検出装置において、
前記取得手段がデータを取得するために、前記回転偏光フィルタを手動で回転させるように警告する警告手段をさらに有する回転偏光フィルタの回転角度検出装置。
【請求項7】
請求項5記載の回転偏光フィルタの回転角度検出装置において、
前記取得手段がデータを取得するために、前記回転偏光フィルタを自動で回転駆動させる駆動手段をさらに有する回転偏光フィルタの回転角度検出装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項記載の回転偏光フィルタの回転角度検出装置において、
前記発光素子と受光素子は複数セットが設けられており、
前記偏光方向固定部材は、前記複数セットに対応させて、各セットの発光素子と受光素子の間の光路上に、互いの偏光方向を異ならせた複数が設けられていて、
前記検出手段は、前記複数セットに対応する受光素子で受光された複数の光の出力に基づいて、前記回転偏光フィルタの回転角度を検出する回転偏光フィルタの回転角度検出装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項記載の回転偏光フィルタの回転角度検出装置において、
前記発光素子から発光され前記偏光方向固定部材と回転偏光フィルタを通過して前記受光素子で受光された光の出力に基づいて、前記回転偏光フィルタの劣化を判定する劣化判定手段をさらに有する回転偏光フィルタの回転角度検出装置。
【請求項10】
請求項9記載の回転偏光フィルタの回転角度検出装置において、
前記劣化判定手段は、前記受光素子で受光された光の出力波形の最大値と最小値の差分値を求め、この差分値が第1の閾値を下回ったときに、前記回転偏光フィルタが劣化していると判定する回転偏光フィルタの回転角度検出装置。
【請求項11】
請求項9または10記載の回転偏光フィルタの回転角度検出装置において、
前記劣化判定手段が前記回転偏光フィルタの劣化判定を実行する度に、前記受光素子で受光された光の出力と、前記回転偏光フィルタの回転角度とを対応付けたデータを更新する更新手段をさらに有する回転偏光フィルタの回転角度検出装置。
【請求項12】
請求項10記載の回転偏光フィルタの回転角度検出装置において、
前記劣化判定手段が、前記受光素子で受光された光の出力波形の最大値と最小値の差分値が、前記第1の閾値を上回りかつ前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値を下回っていると判定したときに、前記受光素子で受光された光の出力と、前記回転偏光フィルタの回転角度とを対応付けたデータを更新する更新手段をさらに有する回転偏光フィルタの回転角度検出装置。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか1項記載の回転偏光フィルタの回転角度検出装置を備えた撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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