説明

回転切削装置

【課題】
切削装置を任意の向きに取付けた場合であっても、切削油が切削油タンクから切削刃へと供給されるようにすること。
【解決手段】モータと、前記モータを収容する本体と、前記本体に設けられ、前記モータにより回転される切削刃と、前記本体に設けられる切削油タンクと、を有し、前記切削油を重力によって前記切削刃へと供給する回転切削装置であって、前記切削油タンクに複数の通気口を設けたことを特徴とする回転切削装置により、上記の課題は解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ドリル等の回転切削装置の回転切削刃に対する切削液の供給装置を備えた回転切削装置に関するものである。に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術を図10を用いて説明する。図10の構造は、日立工機株式会社より販売されている製品で採用している構造である。
【0003】
従来の回転切削装置は、図示していないモーターを備えた本体1とモーターの出力軸に対してかさ歯車2を含む図示していない歯車列を介して駆動接続された軸部3と該軸部にスプライン接続された回転軸4を備え、該回転軸4の下端に取付けられた切削刃5(図示の例では環状切削刃)を被切削材6に対して前進後退させる送り機構7と被切削材6に本体1を固定するため該本体1の下端に取付けられた電磁ベース8とを備え、本体1上部には切削油タンク9が固着されている。本体1の適所に前記モーターの起動・停止を行うモータースイッチ10と前記電磁ベース8の電磁石の起動・停止を行う電磁石スイッチ11が配置されている。本体1上部位置にはハンドル12が配置されている。
【0004】
前記回転軸4は回転軸心の周りで回転可能に装置本体1に取付けられており、図10のような軸部3と軸方向で重なりが大きい引き込み位置と軸方向で重なりが小さい図示していない伸張位置との間で可動とされている。回転軸4の先端には切削刃5を保持するために止めねじ13(施錠部材)が設けられている。
【0005】
送り機構7はケース14に取付けられており、回転軸線に平行に延びる直線上に配置されたラック7aと該ラック7aに係合されている図示していないピニオンと、前記ラック7aと回転軸4を締結しているクイルベース7bを有している。前記回転軸4はクイルベース7bに対して回転可能なようにボールベアリング17を介してクイルベース7bと締結されている。
【0006】
前記回転軸4には、その回転中心軸線に沿って貫通した切削液通路18が形成されており、該切削液通路18には弁棒19が軸線方向で移動可能に設けられている。また、前記回転軸4下端には、オイルシール20が配置されている。
【0007】
切削油タンク9は通気口9aと切削液注入用穴9cと該切削液注入用穴用蓋9dと本体1の切削液通路18の上端の切削液受入口24に連通される排出口9bを有している。
【0008】
切削液受入口24下部には図示されていない回動バルブが設けられており、該回動バルブは図示されていない回動レバーによって、回動調節されるようになっている。
【0009】
回転切削装置を工事現場等において使用する場合、回転切削装置は被切削材6に合わせて傾けて作業を行う必要となる場合がある。切削油タンク9はその通気口9aが切削油タンク9内部の切削液上部に生じる空気の部分16に位置するようにして本体1は被切削材6に固定される。また、この時の切削油タンク9内の切削液23の液面は当該回転切削装置における切削液供給位置よりも高い位置になるよう設定される。
【0010】
前記構成において、切削作業を行わない時は、回転軸4は引き込み位置にある。切削作業を行う時は、被切削材6上に本体1を配置し、電磁石スイッチ11をONする。電磁石により本体1は被切削材6に固定される。回動バルブを回動レバーにより回動調節し、切削油タンク9内の切削液23を排出口9b、切削液受入口24を介して切削液通路18に流入させる。モータースイッチ10をONすると、モーターが起動し、これにより、歯車列を介して軸部3が回転し、回転軸4が回転し、切削刃5が回転する。切削刃5を回転させながら、本体1の外側でピニオンの中心回転軸の一端に取付けられている送りハンドル21を回転することによってピニオンが回転する。これにより、ラック7aが下方に動き、クイルベース7b、回転軸4、切削刃5も下方に移動する。切削刃5が被切削材6に当接するまでは、弁棒19の下端にある弁部材19aが回転軸4の下端に配置されたオイルシール20と係合し切削液通路18を閉じているが、切削刃5が下げられて被切削材6に当接すると、切削刃5の下降に従って、センターピン22により、弁棒19が持ち上げられて、弁棒19の下端の弁部材19aをオイルシール20から上方へ離して、切削液通路18を開放し、切削液23を切削刃5に供給するようになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記したように従来技術では、切削液の液面位置が切削液供給位置よりも低くなり、切削液の供給が行えなくなったり、切削液の液面レベルが通気口より高くなって該通気口から切削液が漏れ出してしまう問題が有った。
【0012】
本発明の目的は、上記した従来技術の欠点をなくし、回転切削装置の傾きを比較的大きくしても切削液の供給を行うことができ、また、切削液の漏れを生じないようにした回転切削装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
モータと、前記モータを収容する本体と、前記本体に設けられ、前記モータにより回転される切削刃と、前記本体に設けられる切削油タンクと、を有し、前記切削油を重力によって前記切削刃へと供給する回転切削装置であって、前記切削油タンクに複数の通気口を設けたことを特徴とする回転切削装置により、上記の課題は解決することができる。
【発明の効果】
【0014】
複数の通気口より、空気が切削油タンクへと流入することができる。このため、効率的に切削油が切削刃へと供給されるようになる。
また、一つの部材により、複数の通気口を同時に開閉できるようにしたので、簡単な動作によって、効率的に切削油が切削刃に供給できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明になる回転切削装置の第1の実施形態(回転切削装置を垂直状態にして穿孔作業をする状態を示す)を示す一部断面を含む側面図である。
【図2】図1の一部断面を含むA矢視図である。
【図3】本発明になる回転切削装置の第1の実施形態(回転切削装置を垂直状態にして穿孔作業をする状態を示す)を示す一部断面を含む側面図である。
【図4】本発明になる回転切削装置の第2の実施形態(回転切削装置を垂直状態にして穿孔作業をする状態を示す)を示す一部断面を含む側面図である。
【図5】図4の一部断面を含むB矢視図である。
【図6】通気口を開放した状態の図4のC−C断面図である。
【図7】通気口を閉めた状態の図4のC−C断面図である。
【図8】本発明になる回転切削装置の第3の実施形態(回転切削装置を垂直状態にして穿孔作業をする状態を示す)を示す一部断面を含む側面図である。
【図9】通気口を開放した状態の図8のD−D断面図である。
【図10】従来技術になる回転切削装置(回転切削装置を垂直状態にして穿孔作業をする状態を示す)の一部断面を含む側面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0016】
本発明の第1の実施形態を図1〜3により説明する。
【0017】
本発明の回転切削装置は、一般に磁気ボール盤と呼ばれる製品である。
【0018】
図1において、矢印で示すように、切削油タンク方向、切削刃方向、モータ方向、反モータ方向を定義する。
【0019】
この回転切削装置は、内部に電動のモーターを備えた本体1を有する。また、本体1に接続されるケース14を有する。ケース14の内部には、モーターの出力軸に対してかさ歯車2を含む図示していない歯車列を介して駆動接続された軸部3と、その軸部3にスプライン接続された回転軸4が収容されている。
【0020】
回転軸4の切削刃方向には、環状の切削刃を有する切削刃5が取付けられている。切削刃を、タンク方向又は切削刃方向へと移動させるための送り機構7が設けられている。
【0021】
本体の切削刃方向には、電磁ベース8が設けられている。ケース14の切削油タンク方向には、切削油タンク9が設けられている。本体1の適所には、モーターの起動・停止を行うモータースイッチ10と前記電磁ベース8の電磁石の起動・停止を行う電磁石スイッチ11が配置されている。本体1の切削油タンク方向には、ハンドル12が設けられている。電磁石スイッチ11を操作すると、電磁ベース8が金属により構成される被切削材6へと磁力により固定可能となる。
【0022】
前記回転軸4は回転軸心の周りで回転可能に本体1に取付けられており、軸部3と軸方向で重なりが大きい引き込み位置と軸方向で重なりが小さい図示していない伸張位置との間で可動とされている。回転軸4の先端には切削刃5を保持するために止めねじ13(施錠部材)が設けられている。
【0023】
送り機構7はケース14に取付けられており、回転軸線に平行に延びる直線上に配置されたラック7aと該ラック7aに係合されている図示していないピニオンと、前記ラック7aと回転軸4を締結しているクイルベース7bを有している。前記回転軸4はクイルベース7bに対して回転可能なようにボールベアリング17を介してクイルベース7bと締結されている。
【0024】
前記回転軸4には、その回転中心軸線に沿って貫通した切削液通路18が形成されており、該切削液通路18には弁棒19が軸線方向で移動可能に設けられている。また、前記回転軸4下端には、オイルシール20が配置されている。
【0025】
切削油タンク9は5個の通気口9aと切削液注入用穴9cと該切削液注入用穴用蓋9dと本体1の切削液通路18の上端の切削液受入口24に連通される排出口9bを有している。切削油タンク9本体は回転切削装置に固着される側の固着壁側部9eと固着壁側部9eの周縁部分から回転切削装置本体側とは反対の側に立ち上がる周壁部9fと、固着壁部9eから一定の間隔をあけて周壁部9fに取付けられた頂壁部9gとを有し、前記通気口9aは頂壁部9gに1個、周壁部9fに4個設けられている。周壁部9fの4個の通気口9aは切削油タンク9本体の前後左右面それぞれの中央部に配置されている。各通気口9aにはそれぞれ蓋9hが設けられている。
【0026】
切削液受入口24下部には図示されていない回動バルブが設けられており、該回動バルブは回動レバー15によって、回動調節されるようになっている。
【0027】
前記構成において、切削作業を行わない時は、回転軸4は引き込み位置にある。切削作業を行う時は、被切削材6上に本体1を配置し、電磁石スイッチ11をONする。電磁石により本体1は被切削材6に固定される。切削油タンク9内部の切削液23上部に生じる空気の部分16に位置する前記通気口の蓋9hを開け、切削油タンク9内部の空気を外気と連通させ、回動バルブを回動レバー15により回動調節し、切削油タンク9内の切削液23を排出口9b、切削液受入口24を介して切削液通路18に流入させる。モータースイッチ10をONすると、モーターが起動し、これにより、歯車列を介して軸部3が回転し、回転軸4が回転し、切削刃5が回転する。切削刃5を回転させながら、本体1の外側でピニオンの中心回転軸の一端に取付けられている送りハンドル21を回転することによってピニオンが回転する。これにより、ラック7aが下方に動き、クイルベース7b、回転軸4、切削刃5も下方に移動する。切削刃5が被切削材6に当接するまでは、弁棒19の下端にある弁部材19aが回転軸4の下端に配置されたオイルシール20と係合し切削液通路18を閉じているが、切削刃5が下げられて被切削材6に当接すると、切削刃5の下降に従って、センターピン22により、弁棒19が持ち上げられて、弁棒19の下端の弁部材19aをオイルシール20から上方へ離して、切削液通路18を開放し、切削液23を切削刃5に供給するようになる。
【0028】
切削油タンク9に複数個の通気口9aを任意の位置に設け、各通気口9aに蓋、若しくは栓9hを設けたため、回転切削装置をどのような角度にしても切削液23が通気口9aから漏れることが無い。また、開閉する通気口9aを選択できるようにしたため、切削油タンク9内での切削液23の液面位置を比較的高くすることができ、回転切削装置の傾きを比較的大きくしても切削液23の供給を行うことができる。
【0029】
また、第2の実施形態である図4のようにすれば、切削油タンク9に複数個の通気口9aを任意の位置に設け、前記通気口9aを少なくとも1個以上の開口部25aを備えたリング状蓋25を前記切削油タンク9中心軸の周りを回動させることによって開閉できるようにしたため、回転切削装置をどのような角度にしても切削液23が通気口9aから漏れることが無い。また、開閉する通気口9aを選択できるようにしたため、切削油タンク9内での切削液23の液面位置を比較的高くすることができ、回転切削装置の傾きを比較的大きくしても切削液23の供給を行うことができる。また、蓋9hの開閉が一度にでき、また、開閉の必要箇所以外の蓋9hを閉め忘れることが無い。
【0030】
また、第3の実施形態である図8のようにすれば、タンク9に複数個の通気口9aを任意の位置に設け、前記通気口9aを棒状部材26に栓26aを複数個配設した開閉装置にて開閉できるようにしたため、回転切削装置をどのような角度にしても切削液23が通気口9aから漏れることが無い。また、開閉する通気口9aを選択できるようにしたため、タンク9内での切削液23の液面位置を比較的高くすることができ、回転切削装置の傾きを比較的大きくしても切削液23の供給を行うことができる。また、蓋9hの開閉が一度にでき、また、開閉の必要箇所以外の蓋9hを閉め忘れることが無い。
【符号の説明】
【0031】
1は本体、2はかさ歯車、3は軸部、4は回転軸、5は切削刃、6は被切削材、7は送り機構、8は電磁ベース、9は切削油タンク、10はモータースイッチ、11は電磁石スイッチ、12はハンドル、13は止めねじ、14はケース、15は回動レバー、18切削液通路、21は送りハンドル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータを収容する本体と、
前記本体に設けられ、前記モータにより回転される切削刃と、
前記本体に設けられる切削油タンクと、を有し、
前記切削油を重力によって前記切削刃へと供給する回転切削装置であって、
前記切削油タンクに複数の通気口を設けたことを特徴とする回転切削装置。
【請求項2】
前記複数の通気口は、第1の通気口及び第2の通気口を有し、
前記第1の通気口を開いた状態と前記第2の通気口を閉じた状態とにより構成される第1の状態と、前記第1の通気口を閉じた状態と前記第2の通気口を開いた状態とにより構成される第2の状態と、取りえる開閉部材を有することを特徴とする請求項1記載の回転切削装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate