説明

回転印

【課題】無端印字ベルトの印字を切り替える際に、指先が汚れることがない回転印を提供する。
【解決手段】対向する側板11dと、側板11dの下端に設けられた橋架片11bと、操作円盤12aと係合部12bが同軸一体に形成され、側板11d間に回転可能に配設された回転子12と、係合部12bと橋架片11bとの間に巻き掛けられた無端印字ベルト15を有する回転印において、水平方向に延びる基部17dと、基部17dの両端から下方に延出する接触片17aとが一体形成された弾性部材である操作部材17を一対の接触片17aを操作円盤12aの外縁に対向させて、回転子12の上方に揺動可能に配設する。接触片17aを押圧することにより、接触片17aを操作円盤12aの外縁に接触させ、操作部材17を変形させつつ揺動させることにより回転子12を回転させて無端印字ベルト15の印字を切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印字を切り替えて押印することができる回転印に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、年月日やシリアルナンバー等を印字するための回転印が広く用いられている。このような回転印は、回転自在に配設された複数の回転子とその下端との間に、複数の無端印字ベルトを巻き掛けた構造である。無端印字ベルトは多数の連続気孔を有していて、前記気孔にインキが吸蔵されるようになっているので、ユーザーが捺印の度にスタンプ台を使用してインキを印字面に吸蔵させる必要がなく便利である。無端印字ベルトに形成された印字を切り替えるには、回転子を指で回転させることにより行われる。ところが、無端印字ベルトに吸蔵されているインキが回転子にも付着し、指先が汚れてしまうという問題があった。そこで特許文献1に示されるように、回転子と係合する小歯車及びこの小歯車と係合する歯車を設け、ユーザーが歯車を回転させて間接的に回転子を回転させる構造とすることにより、指先の汚れ対策を施した回転印がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭53−46122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示される回転印であっても、回転子に付着したインキが、順次、小歯車、歯車に付着し、結局指先が汚れてしまうという問題があった。本発明は、上記問題を解決し、捺印位置にある無端印字ベルトの印字を切り替える際に、指先が汚れることがない回転印を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、
互いに対向する側板と、
前記側板の下端に設けられた橋架片と、
操作円盤と係合部が同軸一体に形成され、前記側板間に回転可能に配設された回転子と、
外表面に複数の印字が形成され、前記回転子の係合部と前記橋架片との間に巻き掛けられた無端印字ベルトを有する回転印において、
水平方向に延びる基部と、この基部の両端から下方に延出する接触片とが一体形成された弾性を有する操作部材を、前記一対の接触片を前記操作円盤の外縁に対向させて、前記回転子の上方に、前記した基部の中間部分を支点として揺動可能に配設し、
前記いずれか一方の接触片を押圧することにより、前記接触片を前記操作円盤の外縁に接触させ、操作部材を変形させつつ揺動させることにより前記回転子を回転させて、捺印位置にある無端印字ベルトの印字位置を切り替えるように構成したことを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
操作円盤の外縁にギアを形成するとともに、
操作部材の一対の接触片の対向面に前記ギアと係合する係合溝を形成したことを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、
接触片の外側に操作突起を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明は、水平方向に延びる基部と、この基部の両端から下方に延出する接触片とが一体形成された弾性を有する操作部材を、前記一対の接触片を前記操作円盤の外縁に対向させて、前記回転子の上方に、前記した基部の中間部分を支点として揺動可能に配設したことを特徴とする。
これにより、ユーザーが前記いずれか一方の接触片を押圧することにより、前記接触片を前記操作円盤の外縁に接触させ、操作部材を変形させつつ揺動させることにより前記回転子を回転させて、捺印位置にある無端印字ベルトの印字位置を切り替えることができる。
このため、ユーザーが、直接、操作円盤を操作することなく、捺印位置にある無端印字ベルトの印字位置を切り替えることができ、指先が汚れることがない回転印を提供することが可能となる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、操作円盤の外縁にギアを形成するとともに、操作部材の一対の接触片の対向面に前記ギアと係合する係合溝を形成したことを特徴とする。
これにより、操作部材を押圧すると、前記係合溝が前記ギアに係合するので、確実に回転子を回転させて、捺印位置にある無端印字ベルトの印字位置を切り替えることが可能となる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、接触片の外側に操作突起を形成したことを特徴とする。
これにより、操作部材を押圧する際に、指の掛かりが良く、指が滑ることなく確実に操作部材を押圧することが可能となり、確実に回転子を回転させて、捺印位置にある無端印字ベルトの印字位置を切り替えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態を示す回転印の全体斜視図である。
【図2】図1の断面図である。
【図3】把持筒及びキャップを外した状態の回転印の斜視図である。
【図4】回転印本体の分解斜視図である。
【図5】把持筒を上方へスライドさせた状態の回転印の断面図である。
【図6】本発明の回転印の使用方法である。
【図7】別の実施形態の回転印の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(回転印の構造)
以下に図面を参照しつつ、本発明の好ましい実施の形態を示す。本発明の回転印51は主に、筒状の把持筒1と、把持筒1の内部に被套された回転印本体10と、固定印本体10の外周に配設された固定枠部材13と、固定枠部材13の下端に取り付けられた固定印支持部材21、固定印支持部材21の下端に取り付けられた固定印22と、回転印本体10の印字部及び固定印22を被覆するキャップ2とから構成されている。
【0013】
回転印本体10は、枠状部材11、回転子12、軸部材14、無端印字ベルト15、スプリング受け部材16、操作部材17、シャフト18、コイルスプリング19とから構成されている。本実施形態では、図4に示されるように、枠状部材11は、枠状部材本体11a、橋架片11b、操作部支持部材11cとから構成されている。枠状部材本体11aは、対向する側板11dの下部が橋架部11eで接続された構造である。対向する側板11dの途中部分には、軸受部11fが形成されている。図に示される実施形態では、軸受部11fは、側板11dの側端を略“U”字状に切り欠いた形状であり、容易に、後述するシャフト14aが取り付けられるようになっている。枠状部材本体11aの下端には、橋架片11bが橋架部11eに係合して取り付けられている。枠状部材本体11aの上端には、操作部支持部材11cが取り付けられている。図4に示されるように、操作部支持部材11cには、シャフト支持穴11gが連通形成されている。
【0014】
枠状部材11の側板11d間には、複数の回転子12が、並列して同軸に配設されている。回転子12は、操作円盤12aと、この操作円盤12aよりも外形の小さい係合部12bが同軸に、一体形成されている。操作円盤12aの外縁には、ギア12cが形成されている。図に示される実施形態では、回転子12の中心には軸穴12dが連通形成され、回転子12の軸穴12dに軸部材14が挿通し、軸部材14が側板11dの軸受部11fに取り付けられて、複数の回転子12が枠状部材11に回転可能に取り付けられている。なお、図に示される実施形態では、軸部材14は、シャフト14a、円筒部材14b、端部材14cとから構成されている。円筒部材14bが、回転子12に形成された軸穴12dに挿通している。端部材14cは、円筒部材14bの一端に取り付けられている。円筒部材14b及び端部材14cにシャフト14aが挿通して両部材を結合している。シャフト14aは、側板11dの軸受部11fに回転可能に取り付けられている。
【0015】
各回転子2の係合部12b及び橋架片11bの下端との間には、複数の無端印字ベルト15が並列して巻き掛けられている。無端印字ベルト15の外表面には、数字や文字等の印字が形成されている。無端印字ベルト15は、多孔質(連続気孔)になっていて、インキが吸蔵されるようになっている。無端印字ベルト15の裏面と、回転子12の係合部12bとは係合している。回転子12が回転すると、係合部12bと係合している無端印字ベルト15も回転し、印字が切り替わるようになっている。
【0016】
枠状部材11の上端には、複数の操作部材17が揺動自在に取り付けられている。図に示される実施形態では、操作部材17は操作部支持部材11cに揺動自在に取り付けられている。操作部材17は、水平方向に延びる棒状の基部17dと、この基部17dの両端から下方に延出する接触片17aとが一体に形成されている。言い換えると、操作部材17は略“コ”字形状である。操作部材17は、合成樹脂や金属等の弾性を有する強靱な材料で構成されていて、変形可能となっている。なお、前記合成樹脂には、ポリアセタール、ポリアミド、ポリエチレンが含まれる。基部17dの中間部分には、軸受穴17eが連通形成されている。図4に示されるように、軸受穴17eにシャフト18が挿通し、シャフト18の両端は操作部支持部材11cのシャフト支持穴11gで支持されている。図3に示されるように、操作部材17は、回転子12の数と同数、枠状部材11の上端に揺動自在に配設されている。対向する一対の接触片17aの対向面には、係合溝17bが形成されている。接触片17aの上部の外側には、操作突起17cが形成されている。図6に示されるように、各操作部材17は各回転子12の直上に、基部17dの中間部分に形成された軸受穴17eを支点として配設されている。この状態では、一対の接触片17aは、操作円盤12aの外縁と対向している。図2のA−A断面図に示されるように、接触片17aの係合溝17bは、操作円盤12aのギア12cと係合する。
【0017】
固定枠部材13は、筒状であり、中間部分に一対の窓穴13aが形成されている。図3に示されるように、窓穴13aからは回転子12及び操作部材17の接触片17aが露出している。固定枠部材13の上端には、スプリング受け16が取り付けられている。固定枠部材13の内部には、回転印本体10がスライド自在に取り付けられている。操作部支持部材11c及びスプリング受け部材16の間には、コイルスプリング19が配設されている。このため、回転印本体10は、固定枠部材13に対して下方に付勢されている。
【0018】
固定枠部材13の下端には、筒状の固定印支持部材21が取り付けられている。固定印支持部材21の下端には、固定印22が取り付けられている。固定印22には、窓穴22aが形成されている。固定印22には、窓穴22aが形成されている。コイルスプリング19により回転印本体10は下方に付勢されているので、無端印字ベルト15が、窓穴22aから出現するようになっている。
【0019】
把持筒1は、下側が開放した有底筒状であり、上下スライド可能に、固定枠部材13に被套されている。図3に示されるように、把持筒1の内面には、上下方向に係合溝1aが形成されている。図3に示されるように、固定枠部材13の上部の外面には、係合突起13bが形成されている。係合突起13bは、把持筒1の内部に形成された係合溝1aに係合している。図5に示されるように、把持筒1を上方にスライドさせると、回転子12及び操作部材17の接触片17aが露出する。
【0020】
(回転印の使用方法)
以下に、本発明の回転印51の使用方法について説明する。まず、図5に示されるように、把持筒1を上方にスライドさせて、回転子12及び操作部材17の接触片17aを露出させる。次に、図6の(A)に示されるように、ユーザーがいずれか一方の操作突起17cを押圧して、操作部材17を回動させることにより、接触片17aを操作円盤12aに接触させる。この状態では、接触片17aの係合溝17bと操作円盤12aのギア12cは係合している。更に、ユーザーが操作突起17cを押圧すると、操作部材17が変形しながら、更に、操作部材17が軸受穴17eを中心に揺動し、ギア12cで係合溝17bと係合している操作円盤12aが回転し、無端印字ベルト15も回転して、捺印位置にある無端印字ベルト15の印字位置が切り替わる。操作部材17に操作突起17cを形成したので、指の掛かりが良く、指が滑ることなく確実に操作部材17を押圧することが可能となる。
【0021】
このように、本発明では、ユーザーが直接、回転子12の操作円盤12aを操作することなく、操作部材17を操作することにより、捺印位置にある無端印字ベルト15の印字を切り替える構造となっているので、回転子12に付着したインキにより、指先が汚れることが無い。
なお、無端印字ベルト15を、図6に示される方向と反対側に回転させたい場合には、図6に示される例と反対側の操作突起17cを押圧する。
【0022】
なお、図7に示されるように、把持筒1に操作穴1bを形成し、この操作穴1bから操作部材17の操作突起17cを外部に突出させた構造であっても差し支えない。この構造の場合には、把持筒1を上方にスライドさせなくても、操作穴1bから突出する操作突起17cを押圧することにより、捺印位置にある無端印字ベルト15の印字位置を切り替えることができる。
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う回転印もまた技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【符号の説明】
【0023】
1 把持筒
1a 係合溝
1b 操作穴(別例)
2 キャップ
10 回転印本体
11 枠状部材
11a 枠状部材本体
11b 橋架片
11c 操作部支持部材
11d 側板
11e 橋架部
11f 軸受部
11g シャフト支持穴
12 回転子
12a 操作円盤
12b 係合部
12c ギア
12d 軸穴
13 固定枠部材
13a 窓穴
13b 係合突起
14 軸部材
14a シャフト
14b 円筒部材
14c 端部材
15 無端印字ベルト
16 スプリング受け部材
17 操作部材
17a 接触片
17b 係合溝
17c 操作突起
17d 基部
17e 軸受穴
18 シャフト
19 コイルスプリング
21 固定印支持部材
21a 固定印支持部
22 固定印
22a 窓穴
51 回転印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する側板と、
前記側板の下端に設けられた橋架片と、
操作円盤と係合部が同軸一体に形成され、前記側板間に回転可能に配設された回転子と、
外表面に複数の印字が形成され、前記回転子の係合部と前記橋架片との間に巻き掛けられた無端印字ベルトを有する回転印において、
水平方向に延びる基部と、この基部の両端から下方に延出する接触片とが一体形成された弾性を有する操作部材を、前記一対の接触片を前記操作円盤の外縁に対向させて、前記回転子の上方に、前記した基部の中間部分を支点として揺動可能に配設し、
前記いずれか一方の接触片を押圧することにより、前記接触片を前記操作円盤の外縁に接触させ、操作部材を変形させつつ揺動させることにより前記回転子を回転させて、捺印位置にある無端印字ベルトの印字位置を切り替えるように構成したことを特徴とする回転印。
【請求項2】
操作円盤の外縁に第1のギアを形成するとともに、
操作部材の一対の接触片の対向面に前記第1のギアと係合する第2のギアを形成したことを特徴とする請求項1に記載の回転印。
【請求項3】
接触片の外側に操作突起を形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の回転印。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−104847(P2011−104847A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261565(P2009−261565)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(390017891)シヤチハタ株式会社 (162)