説明

回転印

【課題】無端印字ベルトの印字を切り替える際に、指先が汚れることがない回転印を提供する。
【解決手段】回転印本体10を被套し、回転印本体10に対して上下方向スライド可能に配設された把持筒1を有する回転印において、把持筒1に連通窓穴1bを上下方向に連通形成し、上下方向に延びる接触部7aと、接触部7aの途中部分から突出する操作ボタン7cとが一体形成された操作部材7を、接触部7aを操作円盤12aの外縁位置に対向近接させて、連通窓穴1bにスライド自在に取り付ける。操作ボタン7cを押圧し、接触片7aを操作円盤12aの外縁に接触させた状態で、操作部材7を上下方向スライドさせると、回転子12が回転し、捺印位置にある無端印字ベルト15の印字が切り替わる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印字を切り替えて押印することができる回転印に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、年月日やシリアルナンバー等を印字するための回転印が広く用いられている。このような回転印は、回転自在に配設された複数の回転子とその下端との間に、複数の無端印字ベルトを巻き掛けた構造である。無端印字ベルトは多数の連続気孔を有していて、前記気孔にインキが吸蔵されるようになっているので、ユーザーが捺印の度にスタンプ台を使用してインキを印字面に吸蔵させる必要がなく便利である。無端印字ベルトに形成された印字を切り替えるには、回転子を指で回転させることにより行われる。ところが、無端印字ベルトに吸蔵されているインキが回転子にも付着し、指先が汚れてしまうという問題があった。そこで特許文献1に示されるように、回転子と係合する小歯車及びこの小歯車と係合する歯車を設け、ユーザーが歯車を回転させて間接的に回転子を回転させる構造とすることにより、指先の汚れ対策を施した回転印がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭53−46122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示される回転印であっても、回転子に付着したインキが、順次、小歯車、歯車に付着し、結局指先が汚れてしまうという問題があった。本発明は、上記問題を解決し、捺印位置にある無端印字ベルトの印字を切り替える際に、指先が汚れることがない回転印を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、
互いに対向する側板と、
前記側板の下端に設けられた橋架片と、
操作円盤と係合部が同軸一体に形成され、前記側板間に回転可能に配設された回転子と、
外表面に複数の印字が形成され、前記回転子の係合部と前記橋架片との間に巻き掛けられた無端印字ベルトとから構成された回転印本体と、
前記回転印本体を被套する配設された把持筒と、
を有する回転印において、
前記把持筒の外面の前記操作円盤に臨む位置に、連通窓穴を上下方向に連通形成し、
上下方向に延びる接触部と、この接触部の途中部分から突出する操作ボタンとが一体形成された操作部材を、前記接触部を前記操作円盤の外縁位置に対向近接させるともに、前記操作ボタンを前記連通窓穴から外部に突出させて、前記連通窓穴にスライド自在に設け、
前記操作ボタンを押圧して、前記接触片を前記操作円盤の外縁に接触させた状態で、前記操作部材を上下方向スライドさせることにより、前記回転子を回転させて、捺印位置にある無端印字ベルトの印字位置を切り替えるように構成したことを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
操作部材を弾性材料で構成し、
操作ボタンを押圧すると、接触部が変形し、当該接触部が操作円盤に接触するように構成したことを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、
操作円盤の外縁に第1のギアを形成するとともに、
接触部の前記第1のギアとの対向面に、前記第1のギアと係合する第2のギアを形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明は、把持筒の外面の前記操作円盤に臨む位置に、連通窓穴を上下方向に連通形成し、上下方向に延びる接触部と、この接触部の途中部分から突出する操作ボタンとが一体形成された操作部材を、前記接触部を操作円盤の外縁位置に対向近接させるともに、前記操作ボタンを前記連通窓穴から外部に突出させて、前記連通窓穴にスライド自在に設け、前記操作ボタンを押圧して、前記接触片を操作円盤の外縁に接触させた状態で、前記操作部材を上下方向スライドさせることにより、回転子を回転させて、捺印位置にある無端印字ベルトの印字位置を切り替えるように構成したことを特徴とする。
これにより、ユーザーが前記操作ボタンを押圧して、前記接触片を前記操作円盤の外縁に接触させた状態で、前記操作部材を上下方向スライドさせることにより、回転子を回転させて、捺印位置にある無端印字ベルトの印字位置を切り替えることが可能となる。
このため、ユーザーが、直接、操作円盤を操作することなく、捺印位置にある無端印字ベルトの印字を切り替えることができ、指先が汚れることがない回転印を提供することが可能となる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、操作部材を弾性材料で構成し、操作ボタンを押圧すると、接触部が変形し、当該接触部が操作円盤に接触するように構成したことを特徴とする。
これにより、簡単な構造により、接触部が変形して、当該接触部が操作円盤に接触する構造を実現させることが可能となり、低コストで回転印を製造することが可能となる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、操作円盤の外縁に第1のギアを形成するとともに、接触部の前記第1のギアとの対向面に、前記第1のギアと係合する第2のギアを形成したことを特徴とする。
これにより、操作ボタンを押圧すると、前記第2のギアが前記第1のギアに係合するので、確実に回転子を回転させて、捺印位置にある無端印字ベルトの印字を切り替えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態を示す回転印の全体斜視図である。
【図2】図1の断面図である。
【図3】把持筒及びキャップを外した状態の回転印の斜視図である。
【図4】回転印本体の分解斜視図である。
【図5】把持筒及び操作部材の斜視図である。
【図6】使用状態を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(回転印の構造)
以下に図面を参照しつつ、本発明の好ましい実施の形態を示す。本発明の回転印51は主に、筒状の把持筒1と、把持筒1の内部に被套された回転印本体10と、固定印本体10の外周に配設された固定枠部材13と、固定枠部材13の下端に取り付けられた固定印支持部材21、固定印支持部材21の下端に取り付けられた固定印22と、把持筒1に取り付けられた操作部材7と、回転印本体10の印字部及び固定印22を被覆するキャップ2とから構成されている。
【0013】
回転印本体10は、枠状部材11、回転子12、軸部材14、無端印字ベルト15、スプリング受け部材16、軸部材14、コイルスプリング19とから構成されている。本実施形態では、図4に示されるように、枠状部材11は、枠状部材本体11a、橋架片11b、上部部材11cとから構成されている。枠状部材本体11aは、対向する側板11dの下部が橋架部11eで接続された構造である。対向する側板11dの途中部分には、軸受部11fが形成されている。図に示される実施形態では、軸受部11fは、側板11dの側端を略“U”字状に切り欠いた形状であり、容易に、後述するシャフト14aが取り付けられるようになっている。枠状部材本体11aの下端には、橋架片11bが橋架部11eに係合して取り付けられている。枠状部材本体11aの上端には、上部部材11cが取り付けられている。
【0014】
枠状部材11の側板11d間には、複数の回転子12が、並列して同軸に配設されている。回転子12は、操作円盤12aと、この操作円盤12aよりも外形の小さい係合部12bが同軸に、一体形成されている。操作円盤12aの外縁には、第1のギア12cが形成されている。図に示される実施形態では、回転子12の中心には軸穴12dが連通形成され、回転子12の軸穴12dに軸部材14が挿通し、軸部材14が側板11dの軸受部11fに軸着されて、複数の回転子12が枠状部材11に回転可能に取り付けられている。なお、図に示される実施形態では、軸部材14は、シャフト14a、円筒部材14b、端部材14cとから構成されている。円筒部材14bが、回転子12に形成された軸穴12dに挿通している。端部材14cは、円筒部材14bの一端に取り付けられている。円筒部材14b及び端部材14cにシャフト14aが挿通して両部材を結合している。シャフト14aは、側板11dの軸受部11fに回転可能に取り付けられている。
【0015】
各回転子12の係合部12b及び橋架片11bの下端との間には、複数の無端印字ベルト15が並列して巻き掛けられている。無端印字ベルト15の外表面には、数字や文字等の印字が形成されている。無端印字ベルト15は、多孔質(連続気孔)になっていて、インキが吸蔵されるようになっている。無端印字ベルト15の裏面と、回転子12の係合部12bとは係合している。回転子12が回転すると、係合部12bと係合している無端印字ベルト15も回転し、印字が切り替わるようになっている。
【0016】
固定枠部材13は、筒状であり、中間部分に一対の窓穴13aが形成されている。図3に示されるように、窓穴13aからは回転子12が露出している。固定枠部材13の上端には、スプリング受け16が取り付けられている。固定枠部材13の内部には、回転印本体10がスライド自在に取り付けられている。上部部材11c及びスプリング受け部材16の間には、コイルスプリング19が配設されている。このため、回転印本体10は、固定枠部材13に対して下方に付勢されている。
【0017】
固定枠部材13の下端には、筒状の固定印支持部材21が取り付けられている。固定印支持部材21の下端には、固定印22が取り付けられている。固定印22には、窓穴22aが形成されている。コイルスプリング19により回転印本体10は下方に付勢されているので、無端印字ベルト15が、窓穴22aから出現するようになっている。
【0018】
把持筒1は、下側が開放した有底筒状であり、固定枠部材13(回転印本体10)を被套している。図3に示されるように、把持筒1の内面には、上下方向に係合溝1aが形成されている。図3に示されるように、固定枠部材13の上部の外面には、係合突起13bが形成されている。係合突起13bは、把持筒1の内部に形成された係合溝1aに係合している。これにより、把持筒1は固定枠部材13(回転印本体10)に対して上下方向スライド可能となっている。
【0019】
図5に示されるように、把持筒1の外面には、並列して複数の連通窓穴1bが上下方向に連通形成されている。隣接する連通窓穴1b間は隔壁1eとなっている。この隔壁1eにより回転印51内への異物の侵入が防止されるようになっている。連通窓穴1bは、各回転子12の操作円盤12aに臨んでいて、把持筒1の横方向に関し、回転子12の操作円盤12aと同列位置に形成されている。各連通窓穴1bには、操作部材7が取り付けられている。操作部材7は、図5に示されるように、上下方向に延びる棒状の接触部7aと、接触部7aの途中部分から外側に突出した操作ボタン7cと、接触部7aの両端に形成された取付部7hとが一体に形成されている。操作部材7は、合成樹脂や金属等の弾性を有する強靱な材料で構成されていて、変形可能となっている。なお、前記合成樹脂には、ポリアセタール、ポリアミド、ポリエチレンが含まれる。
【0020】
取付部7hは、接触部7aの両端から操作ボタン7cの突出する方向に(直交する方向に)突出している。取付部7hの両面には、基端側から先端側にそれぞれ、係合突起7jと係止突起7iが形成されている。図5に示されるように、係合突起7jは、取付部7hの基端側から先端側に向かって徐々に突出する傾斜面7kが形成されている。操作部材7を接触部7a側から連通窓穴1bに押し込むと、傾斜面7kより隔壁1eが撓んで、係合突起7jが隔壁1eを乗り越えて、操作部材7が連通窓穴1bに取り付けられる。この状態では、係合突起7j及び係止突起7iで隔壁1eが挟まれているので、操作部材7は連通窓穴1bから脱落することなく、操作部材7は連通窓穴1bにスライド自在に取り付けられている。操作部材7が連通窓穴1bに取り付けられた状態では、操作ボタン7cは、把持筒1の連通窓穴1bから外部に突出している。
図2に示されるように、各操作部材7の接触部7aは、各回転子12の操作円盤12aの外縁と近接して対向している。図2に示されるように、接触部7aの操作円盤12aの外縁と対向する面には、第2のギア7bが形成されている。
【0021】
(回転印の使用方法)
以下に、本発明の回転印51の使用方法について説明する。まず、図6の(A)に示されるように、ユーザーは操作部材7を可動範囲の一番下側に移動させ、操作ボタン7cを押圧する。すると、接触部7aが変形し、操作部材7aに形成された第2のギア7bが操作円盤12aの外縁に形成された第1のギア12cに係合する。この状態で、ユーザーが操作部材7を上方にスライドさせると、第1のギア12cで第2のギア7bと係合している操作円盤12aが回転し、無端印字ベルト15も回転して、捺印位置にある無端印字ベルト15の印字が切り替わる。
【0022】
このように、本発明では、ユーザーが直接、回転子12の操作円盤12aを操作することなく、操作部材7を操作することにより、捺印位置にある無端印字ベルト15の印字を切り替える構造となっているので、回転子12に付着したインキにより、指先が汚れることが無い
【0023】
なお、無端印字ベルト15を、前記説明した方向と反対側に回転させたい場合には、操作部材7を上方にスライドさせてから、操作部材7の操作ボタン7cを押圧し、この状態で操作部材7を下方にスライドさせる。
【0024】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う回転印もまた技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【符号の説明】
【0025】
1 把持筒
1a 係合溝
1b 連通窓穴
1c 係合凹部
1d 係合突起
1e 隔壁
2 キャップ
7 操作部材
7a 接触部
7b 第2のギア
7c 操作ボタン
7h 取付部
7i 係止突起
7j 係合突起
7k 傾斜面
10 回転印本体
11 枠状部材
11a 枠状部材本体
11b 橋架片
11c 上部部材
11d 側板
11e 橋架部
11f 軸受部
12 回転子
12a 操作円盤
12b 係合部
12c 第1のギア
12d 軸穴
13 固定枠部材
13a 窓穴
13b 係合突起
14 軸部材
14a シャフト
14b 円筒部材
14c 端部材
15 無端印字ベルト
16 スプリング受け部材
19 コイルスプリング
21 固定印支持部材
21a 固定印支持部
22 固定印
22a 窓穴
51 回転印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する側板と、
前記側板の下端に設けられた橋架片と、
操作円盤と係合部が同軸一体に形成され、前記側板間に回転可能に配設された回転子と、
外表面に複数の印字が形成され、前記回転子の係合部と前記橋架片との間に巻き掛けられた無端印字ベルトとから構成された回転印本体と、
前記回転印本体を被套する配設された把持筒と、
を有する回転印において、
前記把持筒の外面の前記操作円盤に臨む位置に、連通窓穴を上下方向に連通形成し、
上下方向に延びる接触部と、この接触部の途中部分から突出する操作ボタンとが一体形成された操作部材を、前記接触部を前記操作円盤の外縁位置に対向近接させるともに、前記操作ボタンを前記連通窓穴から外部に突出させて、前記連通窓穴にスライド自在に設け、
前記操作ボタンを押圧して、前記接触片を前記操作円盤の外縁に接触させた状態で、前記操作部材を上下方向スライドさせることにより、前記回転子を回転させて、捺印位置にある無端印字ベルトの印字位置を切り替えるように構成したことを特徴とする回転印。
【請求項2】
操作部材を弾性材料で構成し、
操作ボタンを押圧すると、接触部が変形し、当該接触部が操作円盤に接触するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の回転印。
【請求項3】
操作円盤の外縁に第1のギアを形成するとともに、
接触部の前記第1のギアとの対向面に、前記第1のギアと係合する第2のギアを形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の回転印。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−104849(P2011−104849A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261567(P2009−261567)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(390017891)シヤチハタ株式会社 (162)