説明

回転子コア、回転子および回転電機

【課題】永久磁石の磁束漏れを低減すること。
【解決手段】実施形態にかかる回転子コアは、複数の磁石穴と、空洞部とを備える。磁石穴は、周方向に並んで形成され、永久磁石が挿入される。また、空洞部は、複数の磁石穴のうち、互いに隣接し、かつ、径方向に対する磁極の向きが逆向きの永久磁石がそれぞれ挿入される2つの磁石穴によって挟まれる領域に対して形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、回転子コア、回転子および回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動機や発電機などの回転電機として、永久磁石式の回転電機が知られる。永久磁石式の回転電機は、回転子コアの周方向に並べて配設される複数の永久磁石を備える回転子と、回転子の外周面と空隙を介して対向配置される固定子とを備える回転電機である。
【0003】
この種の回転電機としては、回転子コアの外周面に対して永久磁石が配置されるSPM(Surface Permanent Magnet)型の回転電機のほか、回転子コアの内部に対して永久磁石が埋め込まれるIPM(Interior Permanent Magnet)型の回転電機がある。IPM型の回転電機は、特に、工作機械、電気自動車、ロボット等の分野において広く用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−039963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の回転電機には、永久磁石間の磁束漏れを低減するという点でさらなる改善の余地がある。ここで、永久磁石間の磁束漏れとは、永久磁石から出た磁束が固定子を経ることなく永久磁石へ流れることである。
【0006】
このような磁束漏れが発生すると、回転電機の出力に寄与する有効磁束が漏れ磁束の分だけ減少し、回転電機の出力が低下することとなる。このため、回転電機においては、磁束漏れの発生を低減することが好ましい。
【0007】
実施形態の一態様は、永久磁石の磁束漏れを低減することができる回転子コア、回転子および回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の一態様に係る回転子コアは、複数の磁石穴と、空洞部とを備える。複数の磁石穴は、周方向に並んで形成され、永久磁石が挿入される。また、空洞部は、複数の磁石穴のうち、互いに隣接し、かつ、径方向に対する磁極の向きが逆向きの永久磁石がそれぞれ挿入される2つの磁石穴によって挟まれる領域に対して形成される。
【発明の効果】
【0009】
実施形態の一態様によれば、永久磁石の磁束漏れを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、実施形態に係るモータをシャフトの軸方向から見た模式図である。
【図2】図2は、実施形態に係る回転子コアの構成を示す模式図である。
【図3】図3は、空洞部周辺の拡大模式図である。
【図4】図4は、磁石穴部の構成を示す模式図である。
【図5A】図5Aは、第2の穴部周辺の拡大模式図である。
【図5B】図5Bは、第2の穴部の構成を示す模式図である。
【図6A】図6Aは、空洞部の他の構成を示す模式図である。
【図6B】図6Bは、空洞部の他の構成を示す模式図である。
【図6C】図6Cは、空洞部の他の構成を示す模式図である。
【図6D】図6Dは、空洞部の他の構成を示す模式図である。
【図6E】図6Eは、空洞部の他の構成を示す模式図である。
【図6F】図6Fは、回転子コアの他の構成を示す模式図である。
【図7】図7は、第2の穴部の他の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する回転子コア、回転子および回転電機の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。たとえば、以下では、本願の開示する回転電機がモータである場合の例について説明するが、本願の開示する回転電機は、たとえば発電機であってもよい。
【0012】
まず、実施形態に係るモータの構成について図1を用いて説明する。図1は、実施形態に係るモータをシャフトの軸方向から見た模式図である。図1に示すように、実施形態に係るモータ1は、回転子10と、固定子20と、シャフト30とを備える。
【0013】
回転子10は、回転子コア11と、永久磁石12とを備える。回転子コア11は、電磁鋼板などの薄板材(電磁鋼板形成体)を多数枚積層して形成される筒状の部材(電磁鋼板積層体)であり、内部には複数の永久磁石12が周方向に沿って配設される。回転子10は、シャフト30に取り付けられており、かかるシャフト30を中心軸として回転する。
【0014】
固定子20は、回転子10の外周面と空隙を介して対向配置される部材である。かかる固定子20は、固定子コア21と、固定子巻線22とを備える。
【0015】
固定子コア21は、略円筒状の部材であり、内周側には、径方向内側へ突出するティース211が周方向に沿って多数形成される。ティース211間の空間は、スロット212と呼ばれ、各スロット212内には、絶縁被覆電線を用いて巻装された固定子巻線22が収められる。なお、固定子巻線22は、分布巻線方式で巻装されるものとするが、集中巻線方式で巻装されてもよい。
【0016】
固定子20の固定子巻線22に電流が流れることにより、固定子20の内側には、回転磁界が発生する。この回転磁界と回転子10の永久磁石12が発生する磁界との相互作用によって回転子10が回転し、この回転子10の回転に伴ってシャフト30が回転する。
【0017】
また、図1に示すように、本実施形態に係るモータ1は、1極を構成する永久磁石12が、第1の磁石12aおよび第2の磁石12bの2つで形成される。第1の磁石12aおよび第2の磁石12bは、径方向に対する磁極の向きが同じであり、互いの間隔が回転子コア11の外周側へ向かって拡がるV字状に配置される。
【0018】
たとえば、図1に示すように、第1の磁石12aがN極を外周側へ向けて配置される場合には、この第1の磁石12aのペアとなる第2の磁石12bもN極を外周側へ向けて配置される。
【0019】
また、隣接する永久磁石12同士は、径方向に対する磁極の向きが互いに逆向きとなるように配置される。たとえば、図1に示すように、第1の磁石12aおよび第2の磁石12bのN極が外周側を向く永久磁石12の隣には、第1の磁石12aおよび第2の磁石12bのN極が回転中心側を向く永久磁石12が配置される。
【0020】
ここで、従来の回転電機には、永久磁石間における磁束漏れが発生する可能性がある。かかる磁束漏れが発生した場合、回転電機の出力に寄与する有効磁束が漏れ磁束の分だけ減少するため、回転電機の出力が低下するおそれがある。
【0021】
そこで、本実施形態に係るモータ1は、隣接する永久磁石12同士によって挟まれる領域に対して空洞部111を形成することとした。
【0022】
具体的には、この空洞部111は、第1の磁石12aと、第1の磁石12aに隣接する第2の磁石12bのうち、磁極の向きが逆向きに配置される第2の磁石12bとによって挟まれる領域に形成される。かかる空洞部111を形成することで、透磁率の低い空気層が漏れ磁束の磁路中に介在することとなるため、磁束漏れを低減することができる。
【0023】
また、従来の回転電機には、たとえば、電機子反作用による固定子からの逆磁界によって永久磁石の減磁が生じる可能性がある。かかる永久磁石の減磁も、永久磁束間における磁束漏れと同様に、回転電機の性能を低下させる一因となり得る。
【0024】
そこで、本実施形態に係るモータ1は、永久磁石12における減磁の影響を受け易い箇所の周辺に所定の空隙を設けることとした。具体的には、永久磁石12を挿入するために回転子コア11に形成される磁石穴に対して、永久磁石が挿入されない部分(後述する第2の穴部112b,113b)を形成することとした。これにより、固定子20からの逆磁界が発生した場合であっても、永久磁石12の減磁を生じ難くすることができる。
【0025】
以下では、上記の空洞部111や第2の穴部112b,113bを備える回転子コア11の構成について具体的に説明する。図2は、実施形態に係る回転子コア11の構成を示す模式図である。
【0026】
図2に示すように、回転子コア11には、第1の磁石穴112および第2の磁石穴113を1組とする磁石穴部114が、周方向に並んで形成される。それぞれの磁石穴部114は、45度の極ピッチ角で設けられる極ピッチ線Pに対して第1の磁石穴112と第2の磁石穴113とが線対称となるように配置される。
【0027】
第1の磁石穴112は、第1の磁石12aが挿入される磁石穴である。また、第2の磁石穴113は、第2の磁石12bが挿入される磁石穴である。第1の磁石穴112および第2の磁石穴113は、互いの間隔が外周側へ向かって拡がるV字状に配置される。
【0028】
なお、ここでは、回転子コア11に対して8組の磁石穴部114が形成される場合、すなわち、モータ1が8極モータである場合の例について示すが、回転子コア11に形成される磁石穴部114の数は、8組以外であってもよい。
【0029】
空洞部111は、第1の磁石穴112と、第1の磁石穴112に隣接し、磁極が逆向きである第2の磁石12bが挿入される第2の磁石穴113(すなわち、他の磁石穴部114が備える第2の磁石穴113)とで挟まれる領域Rに対して形成される。
【0030】
具体的には、この領域Rは、上記2つの磁石穴112,113の最も外周側に位置する点a1,a2同士を結ぶ仮想線L1および最も回転中心O側に位置する点a3,a4同士を結ぶ仮想線L2と、上記2つの磁石穴112,113とによって囲まれる領域である。
【0031】
ここで、空洞部111の具体的な配置および形状について図3を用いて説明する。図3は、空洞部111周辺の拡大模式図である。
【0032】
なお、図3の説明においては、図3に示す第2の磁石穴113、すなわち、第1の磁石穴112に隣接する2つの第2の磁石穴113のうち、磁極が逆向きである第2の磁石12bが挿入される第2の磁石穴113を「第2の磁石穴113」と呼ぶ。
【0033】
図3に示すように、空洞部111は、領域R(図2参照)のうち、第1の磁石穴112と第2の磁石穴113とが近接する領域に形成される。これは、仮に、永久磁石12のN極からS極へと回り込む漏れ磁束が発生する場合、上記の領域を通る可能性が高いためである。
【0034】
ここで、たとえば第1の磁石穴112に挿入される第1の磁石12aに漏れ磁束が発生したと仮定すると、第1の磁石12aのS極へ到達する漏れ磁束は、第1の磁石穴112における点a6に近い位置ほど多く、点a6から離れるほど少なくなる。点a6は、第1の磁石12aの角部が位置する点であり、第2の磁石穴113と最も近接する点でもある。一方、第1の磁石穴112における点a8よりも点a4(図2参照)側に到達する漏れ磁束は僅かであり、モータ1の性能に影響を与えることはほとんどない。点a8は、点a6から点a4へ向かって1/3の距離にある点である。
【0035】
そこで、本実施形態では、第2の磁石穴113上の点a7と第1の磁石穴112上の点a8とで結ばれる仮想線L4よりも外周側、かつ、第2の磁石穴113上の点a5と第1の磁石穴112上の点a6とで結ばれる仮想線L3よりも回転中心O(図2参照)側の領域R1に空洞部111を形成することとした。ここで、第2の磁石穴113における点a5は、第2の磁石12bの角が位置する点であり、第1の磁石穴112と最も近接する点でもある。また、点a7は、点a5から点a3(図2参照)へ向かって1/3の距離にある点である。これにより、永久磁石12間の磁束漏れを効果的に低減することができる。
【0036】
また、具体的には図4を用いて説明するが、第1の磁石穴112には第3の穴部112cが形成される。第3の穴部112cは、第1の磁石12aが挿入された場合に第1の磁石12aとの間で空隙を形成する穴部である。
【0037】
第3の穴部112cを設けることで、第1の磁石穴112と回転子コア11の外周との間の間隔が狭くなる。この結果、第3の穴部112cおよび回転子コア11の外周間の領域において磁気飽和が生じ易くなり、この領域を磁束が通り難くなる。漏れ磁束は、この領域を通過してS極へと流れるため、第3の穴部112cを設けることによって磁束漏れを低減することができる。
【0038】
また、空洞部111は、第1の磁石穴112との間の最小間隔が、第1の磁石穴112と回転子コア11の外周との間の最小間隔と同一となるように配置される。空洞部111と第2の磁石穴113との間の最小間隔についても同様である。
【0039】
このように、空洞部111および磁石穴112,113間の間隔を、磁石穴112,113および回転子コア11の外周間の間隔と同程度とすることにより、空洞部111および磁石穴112,113間においても磁気飽和が生じ易くなる。このため、磁束漏れをさらに低減することができる。
【0040】
また、空洞部111は、第1の磁石穴112と対向する側面50aが、空洞部111と対向する第1の磁石穴112の側面60aに対して平行に形成される。同様に、空洞部111は、第2の磁石穴113と対向する側面50bが、空洞部111と対向する第2の磁石穴113の側面60bに対して平行に形成される。なお、側面50aと側面60aとが平行、側面50bと側面60bとが平行としたが、平行に限定されるものではない。
【0041】
すなわち、空洞部111における側面50a,50bと磁石穴112,113における側面60a,60bとは、常に上述した最小間隔で接した状態で配置される。これにより、空洞部111および磁石穴112,113間における磁気抵抗が大きくなるため、磁気飽和がさらに起こり易くなる。したがって、磁束漏れをさらに低減することができる。なお、空洞部は、磁石穴と対向する側面の全てが平行であってもよいし、一部だけが平行であってもよい。
【0042】
次に、磁石穴部114の構成について説明する。図4は、磁石穴部114の構成を示す模式図である。
【0043】
図4に示すように、磁石穴部114は、第1の磁石穴112と第2の磁石穴113とで構成される。また、第1の磁石穴112は、第1の穴部112aと、第2の穴部112bと、第3の穴部112cとが連結した形状を有する。同様に、第2の磁石穴113も、第1の穴部113aと、第2の穴部113bと、第3の穴部113cとが連結した形状を有する。第2の磁石穴113は、第1の磁石穴112と線対称の形状であるため、以下では、第1の磁石穴112の形状についてのみ説明する。
【0044】
第1の穴部112aは、第1の磁石12aの形状に沿って形成される穴部である。具体的には、第1の磁石12aが矩形状であるため、第1の穴部112aも矩形状に形成される。第1の磁石12aは、この第1の穴部112aに対して挿入される。
【0045】
第2の穴部112bおよび第3の穴部112cは、第1の穴部112aに対して第1の磁石12aが挿入された場合に、第1の磁石12aとの間で空隙を形成する穴部である。
【0046】
第3の穴部112cは、第1の穴部112aの端部を外周側へ向けて拡張させた穴部である。この第3の穴部112cは、上述したように、回転子コア11の外周との間で磁気飽和を生じさせて漏れ磁束を低減するために形成される。
【0047】
第2の穴部112bは、第1の磁石穴112における第1の穴部112aと第2の磁石穴113における第1の穴部113aとが最も近接する位置の近傍に形成される。第2の穴部112bは、第1の磁石12aが減磁の影響を受け易い箇所に形成される。
【0048】
以下では、この第2の穴部112bの具体的な形状および配置について図5Aおよび図5Bを用いて説明する。図5Aは、第2の穴部112b周辺の拡大模式図である。また、図5Bは、第2の穴部112bの構成を示す模式図である。
【0049】
図5Aに示すように、第2の穴部112bは、第1の穴部112aの外周側に位置する側面60eの一部を外周側へ向けて拡張した形状を有する。
【0050】
ここで、第1の磁石12aは、外周側の側面のうち第2の磁石12bと最も近接する位置(第1の磁石穴112の点a10に相当する位置)に近いほど減磁の影響を受け易い。
【0051】
また、第2の穴部112bの形状を大きくするほど、減磁の発生を防ぎ易くなるが、第1の磁石12aから固定子20へ流れる有効磁束が第2の穴部112bによって阻害される可能性も高くなる。このため、第2の穴部112bは、第2の磁石穴113に最も遠い点a9から第2の磁石穴113に最も近い点a10へ向けて徐々に厚みが大きくなるように形成される。
【0052】
具体的には、図5Bに示すように、第2の穴部112bは、第1の穴部112aの側面60eを基準とする厚み分布が、第2の磁石穴113側へ寄った形状を有する。すなわち、第2の穴部112bは、点a9および点a10間の中点a11よりも点a10側に頂点が位置する略三角形形状を有する。
【0053】
このように、第2の穴部112bの形状を、第1の穴部112aの側面60eを基準とする厚み分布が他方の磁石穴113側へ寄った形状とすることで、有効磁束の減少を抑えつつ、第1の磁石12aの減磁を生じ難くすることができる。
【0054】
また、図5Aの例では、第2の穴部112bは、第1の穴部112aの側面60eを基準とする最大厚みT1が、第1の穴部112aにおける最大厚みT2に対して約1/2となるように形成される。これにより、第1の磁石12aにおける減磁の発生および有効磁束の減少の双方を適切に防止することができる。なお、最大厚みT1が最大厚みT2に対して約1/4〜約1/2の範囲内であると、より望ましい。
【0055】
また、第1の磁石穴112の第2の穴部112bおよび第2の磁石穴113の第2の穴部113bは、互いに対向する側面60c,60d同士が平行に形成される。
【0056】
すなわち、第1の磁石穴112と第2の磁石穴113とが最も近接する領域は、回転子コア11の中で相対的に強度の低い領域である。このため、第2の穴部112b,113bの対向する側面60c,60d同士を平行に形成することで、第1の磁石穴112と第2の磁石穴113とが最も近接する領域の強度の低下を可及的に抑えることができる。また、第2の穴部112b,113bの対向する側面60c,60d同士を平行に形成することで、これら側面60c,60d間の領域を通ってS極へと流れる漏れ磁束を低減することができる。
【0057】
上述してきたように、本実施形態に係る回転子コアは、複数の磁石穴と、空洞部とを備える。複数の磁石穴は、周方向に並んで形成され、永久磁石が挿入される。そして、空洞部は、複数の磁石穴のうち、互いに隣接し、かつ、磁極の向きが逆向きの永久磁石がそれぞれ挿入される2つの磁石穴によって挟まれる領域に対して形成される。したがって、永久磁石の磁束漏れを低減することができる。
【0058】
また、本実施形態に係る回転子コアは、磁石穴が、永久磁石の形状に沿って形成される第1の穴部と、第1の穴部に対して永久磁石が挿入された場合に永久磁石との間で空隙を形成する第2の穴部とが連結した形状を有する。そして、本実施形態に係る回転子コアは、第2の穴部が、第1の穴部同士が最も近接する位置の近傍に形成される。したがって、永久磁石の減磁を生じ難くすることができる。
【0059】
ところで、空洞部の配置や形状は、上述した空洞部111の配置や形状に限ったものではない。そこで、以下では、空洞部の配置や形状の他の例について説明する。図6A〜図6Eは、空洞部の他の構成を示す模式図であり、図6Fは、回転子コアの他の構成を示す模式図である。なお、以下の説明では、既に説明した部分と同様の部分については、既に説明した部分と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0060】
たとえば、上述してきた実施形態では、空洞部111と第1の磁石穴112との間の最小間隔が、第1の磁石穴112と回転子コア11の外周との間の最小間隔と同じである場合の例について説明した。しかし、空洞部と第1の磁石穴との間の最小間隔は、第1の磁石穴と回転子コアの外周との間の最小間隔より小さくてもよい。
【0061】
たとえば、図6Aに示すように、回転子コア11aが備える空洞部111aは、第1の磁石穴112との間の最小間隔T3が、第1の磁石穴112と回転子コア11aの外周との間の最小間隔T4の約1/2に形成される。このように、空洞部111aと第1の磁石穴112との間の最小間隔をさらに小さくすることで、漏れ磁束が空洞部111aおよび第1の磁石穴112間の領域をさらに通り難くなるため、磁束漏れをさらに低減することができる。
【0062】
また、図3に示す領域R1から点a1,a2,a5,a6によって囲まれる領域へ向けて空洞部を延在させてもよい。たとえば、図6Bに示すように、回転子コア11bは、図6Aに示す空洞部111aの先端部を外周側へ向けて延在させた空洞部111bを備える。このように、点a1,a2,a5,a6によって囲まれる領域にも空洞部を形成することで、磁束漏れをさらに低減することができる。
【0063】
なお、空洞部111bは、第3の穴部112cと対向する側面50cおよびこの側面50cと対向する第3の穴部112cの側面60g間の最小間隔が、第1の穴部112aと対向する側面50aおよびこの側面50aと対向する第1の穴部112aの側面60a間の最小間隔と等しく形成される。これにより、空洞部111bおよび第1の磁石穴112間における磁気抵抗をさらに大きくすることができ、磁束漏れをさらに低減することができる。
【0064】
また、上述してきた実施形態では、空洞部111が、第2の磁石穴113上の点a7と第1の磁石穴112上の点a8とで結ばれる仮想線L4よりも回転子コア11の外周側に形成される場合の例について説明した。しかし、空洞部111は、かかる仮想線L4よりも回転中心O側に形成されてもよい。
【0065】
たとえば、図6Cに示すように、空洞部111cは、領域Rのうち、仮想線L5よりも外周側であり、かつ、仮想線L3よりも回転中心O側の領域R2に形成される。ここで、仮想線L5は、領域Rを径方向に二分する仮想線である。すなわち、仮想線L1から仮想線L5までの距離T5は、仮想線L1から仮想線L2までの距離T6の半分である。
【0066】
このように、空洞部は、領域Rを径方向に二分する仮想線L5よりも外周側の領域R2に形成されてもよい。
【0067】
また、上述してきた実施形態では、空洞部を略三角形形状としたが、空洞部の形状は、これに限ったものではない。具体的には、空洞部は、磁石穴112,113と対向する側面の少なくとも一部が、磁石穴112,113の側面に対して平行であれば、その他の部分はどのような形状であってもよい。
【0068】
たとえば、図6Dに示すように、空洞部111dは、回転中心O側の側面を外周側へ向けて凹ませた略ブーメラン形状であってもよい。また、図6Eに示すように、空洞部111eは、第1の磁石穴112の側面および第2の磁石穴113の側面に対してそれぞれ平行に形成される2つの空洞部111e_1,111e_2に分割されてもよい。
【0069】
また、上述してきた実施形態では、1極を構成する永久磁石12が、第1の磁石12aおよび第2の磁石12bの2つで構成される場合の例について説明したが、空洞部は、1つの永久磁石が1極を構成する回転子に対して形成されてもよい。
【0070】
たとえば、図6Fに示すように、回転子コア11cは、周方向に並んで形成され、永久磁石が挿入される6つの磁石穴115を備える。これら磁石穴115のうち、互いに隣接する2つの磁石穴115には、径方向に対する磁極の向きが逆向きの永久磁石がそれぞれ挿入される。
【0071】
そして、空洞部111cは、各磁石穴115によって挟まれる領域R3に形成される。具体的には、領域R3は、隣接する2つの磁石穴115,115の最も外周側に位置する点a12,a13同士を結ぶ仮想線L6および最も回転中心O側に位置する点a14,a15同士を結ぶ仮想線L7と、上記2つの磁石穴115,115とによって形成される領域である。
【0072】
このように、1つの永久磁石が1極を構成する回転子の回転子コア11cに対して空洞部111fを形成した場合にも、上述した実施形態に係る空洞部111と同様、永久磁石間の磁束漏れを低減することができる。
【0073】
また、上述してきた実施形態では、空洞部111内の空気によって漏れ磁束を通し難くする場合の例について説明した。しかし、これに限ったものではなく、本願の開示する回転子また回転電機は、空洞部内に、たとえば樹脂やアルミニウム等の非磁性部材を充填してもよい。同様に、第2の穴部112b,113b内や、第3の穴部112c,113c内に、たとえば樹脂やアルミニウム等の非磁性部材を充填してもよい。
【0074】
また、第1の磁石穴および第2の磁石穴が備える第2の穴部の形状も、上述した実施形態にかかる第2の穴部112b,113bの形状に限ったものではない。そこで、第2の穴部の他の構成例について図7を用いて説明する。図7は、第2の穴部の他の構成を示す模式図である。
【0075】
たとえば、上述した実施形態では、回転子コア11の強度を確保するために、第2の穴部112b,113bの互いに対向する側面60c,60d同士を平行に形成する場合の例について説明した(図5A参照)。しかし、第2の穴部の対向する側面同士は、必ずしも平行である必要はない。
【0076】
たとえば、図7に示すように、第2の穴部112b_1および第2の穴部113b_1は、互いに対向する側面60h,60iが、回転子コアの外周側へ向かうに従って遠ざかるように形成されてもよい。
【0077】
このように、第2の穴部間の最小間隔が、第1の磁石穴および第2の磁石穴間の最小間隔を下回らないようにすることとすれば、第1の磁石穴と第2の磁石穴とが最も近接する領域の強度の低下を可及的に抑えることができる。
【0078】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 モータ
10 回転子
11,11a〜11c 回転子コア
111,111a〜111f 空洞部
112 第1の磁石穴
112a 第1の穴部
112b 第2の穴部
112c 第3の穴部
113 第2の磁石穴
113a 第1の穴部
113b 第2の穴部
113c 第3の穴部
114 磁石穴部
12 永久磁石
12a 第1の磁石
12b 第2の磁石
20 固定子
21 固定子コア
211 ティース
212 スロット
22 固定子巻線
30 シャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に並んで形成され、永久磁石が挿入される複数の磁石穴と、
前記複数の磁石穴のうち、互いに隣接し、かつ、径方向に対する磁極の向きが逆向きの永久磁石がそれぞれ挿入される2つの磁石穴によって挟まれる領域に対して形成される空洞部と
を備えることを特徴とする回転子コア。
【請求項2】
前記領域は、
前記2つの磁石穴の最も外周側に位置する点同士を結ぶ仮想線および最も回転中心側に位置する点同士を結ぶ仮想線と、前記2つの磁石穴とによって形成される領域であることを特徴とする請求項1に記載の回転子コア。
【請求項3】
前記空洞部は、
前記領域のうち、前記2つの磁石穴が最も近接する点同士を結んだ仮想線よりも前記回転中心側の領域に形成されることを特徴とする請求項2に記載の回転子コア。
【請求項4】
前記空洞部は、
前記領域を径方向に二分する仮想線よりも前記外周側に形成されることを特徴とする請求項3に記載の回転子コア。
【請求項5】
前記磁石穴は、
略矩形状に形成され、
前記空洞部は、
前記磁石穴と対向する側面の少なくとも一部が、該磁石穴の側面に対して平行に形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の回転子コア。
【請求項6】
前記空洞部と前記磁石穴との間の最小間隔は、
前記磁石穴と前記外周との間の最小間隔以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の回転子コア。
【請求項7】
前記磁石穴は、
前記外周側へ向かって互いの間隔が広がるように配置され、径方向に対する磁極の向きが同じである2つの永久磁石がそれぞれ挿入される第1の磁石穴および第2の磁石穴を備え、
前記領域は、
前記第1の磁石穴と、該第1の磁石穴に隣接する他の前記磁石穴が備える前記第2の磁石穴とによって挟まれる領域であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の回転子コア。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一つに記載の回転子コアと、
前記回転子コアが備える前記磁石穴に対して挿入される永久磁石と
を備えることを特徴とする回転子。
【請求項9】
請求項8に記載の回転子と、
前記回転子の外周面と空隙を介して対向配置される固定子と
を備えることを特徴とする回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−102605(P2013−102605A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244621(P2011−244621)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【特許番号】特許第4995983号(P4995983)
【特許公報発行日】平成24年8月8日(2012.8.8)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】