説明

回転工具

【課題】局部的な強度の低下を生じることなく、過大なトルクや衝撃を吸収できるようにする。
【解決手段】 ビス等の作業対象物を回転させて所定の作業を行う回転工具1において、作業対象物に係合する係合部2を端部に有する金属製の工具本体3を備え、この工具本体3は、内部が中空にされることにより、所定の肉厚の筒状に構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ドライバ、ドライバビット等の回転工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビス、ボルト等の作業対象物を回転させて固定、連結等の作業を行う場合に、ドライバ、ドライバビット等の回転工具が使用される。この回転工具は、長尺状の工具本体の端部に、ビス等の頭部に形成された溝に嵌ることによって作業対象物を回転操作できるように係合する係合部(例えばプラス、マイナス等の形状)が形成されているものである(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このような回転工具には、工具本体及び係合部が同種の炭素鋼等の金属材料によって一体に形成されているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−167776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、ネジの高負荷トルク締め付け・高回転トルク締め付けが要求されており、回転工具の破壊強度と耐久性の改善が必要となってきている。これに関し、従来の回転工具では、剛性が高いために、過大なトルクや衝撃が作用した場合に破壊してしまうおそれがある。これを改善するには、例えば、回転工具の中途部の外面を削って、弾性変形しやすい部分を形成して、この部分によって過大なトルクや衝撃を吸収することが考えられる。
【0006】
しかしながら、上記の場合には、回転工具の外面を削って弾性変形しやすい部分を形成することから、この部分に応力が集中しやすく、局部的な強度の低下を招くおそれがある。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、局部的な強度の低下を生じることなく、過大なトルクや衝撃を吸収できるようにした回転工具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記の課題を解決するために、以下の技術的手段を講じた。
【0009】
すなわち、本発明は、ビス等の作業対象物を回転させて所定の作業を行う回転工具において、作業対象物に係合する係合部を端部に有する金属製の工具本体を備え、この工具本体は、内部が中空にされることにより、所定の肉厚の筒状に構成されてなることを特徴とする。
【0010】
かかる構成によれば、工具本体は、中空にされて所定の肉厚の筒状に構成されることで、中空でない場合と比較して、弾性変形しやすくなり、これによって、過大なトルクや衝撃が作用したときにこれを吸収できるようになる。
【0011】
また、本発明は、前記工具本体と係合部とが異なる金属材料により構成されることが望ましい。
【0012】
かかる構成によれば、それぞれの金属材料の硬度や弾性係数等の差を利用して、過大なトルクや衝撃を吸収できるようになる。
【0013】
また、本発明は、工具本体が係合部よりも硬度の低い金属材料により構成されることが望ましい。
【0014】
かかる構成によれば、工具本体が係合部よりも硬度が低く設定されているので、係合部に過大なトルクや衝撃が加わったときに、係合部よりも工具本体の方が変形しやすくなり、これによって過大なトルクや衝撃を吸収し易くなる。
【0015】
また、本発明は、前記工具本体がアルミニウム又はアルミニウム合金により構成され、前記係合部が炭素鋼によって構成されることが望ましい。
【0016】
かかる構成によれば、アルミニウム又はアルミニウム合金によって形成された工具本体の方が、炭素鋼によって形成された係合部よりも硬度が低くなるため、係合部に過大なトルクや衝撃が加わった場合であっても、これを吸収するように工具本体が変形することができるようになる。
【0017】
また、本発明は、前記係合部が、金属製の棒状体の一端部に形成され、この棒状体の他端部から中途部までの部分が工具本体に挿入されるとともに、工具本体の端部が圧縮変形されることで、棒状体が工具本体に固定されることが望ましい。
【0018】
かかる構成によれば、係合部が形成された棒状体が筒状の工具本体内にいれられた状態で、工具本体の端部を圧縮変形させて、この棒状体を工具本体に固定することによって、工具本体の中途部は、棒状体と一体とならない状態となり、この中途部が所定の肉厚に構成されることで、工具本体は、過大なトルクや衝撃を吸収できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、局部的な強度の低下を生じることなく、過大なトルクや衝撃を吸収できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態に係る回転工具の断面側面図である。
【図2】第2実施形態に係る回転工具を示しており、(a)は側面図、(b)は断面図を示す。
【図3】第3実施形態に係る回転工具を示しており、(a)は側面図、(b)は断面図を示す。
【図4】第4実施形態に係る回転工具を示しており、(a)は側面図、(b)は断面図を示す。
【図5】第5実施形態に係る回転工具を示しており、(a)は側面図、(b)は断面図である。
【図6】第6実施形態に係る回転工具を示しており、(a)は側面図、(b)は断面図を示す。
【図7】本発明の効果を確認する試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明に係る回転工具の第1実施形態を示す。本実施形態に係る回転工具1は、いわゆるドライバタイプのものであり、工作機械等に取り付けられて作業を行うものである。図1に示すように、回転工具1は、ビス、ボルト等の頭部に形成される凹部(又は凹溝)に係合する係合部2と、この係合部2を回転操作するための工具本体3とを備える。
【0023】
第1実施形態において、係合部2は、いわゆるトルクス(TORX:登録商標)タイプとなっている。係合部2は、このタイプに限定されず、プラスドライバ、マイナスドライバその他の種々のタイプのものを本発明に適用できる。
【0024】
この係合部2は、金属製の棒状体4の一端部に形成されている。係合部2は、例えば、金属製の棒状体4の一端部を切削することによって形成される。
【0025】
工具本体3は、所定の金属によって筒状に形成され、一端部から他端部にかけて軸心方向に沿って貫通する孔3aを有する。本実施形態では、工具本体3は、ほぼ円筒状に構成される。工具本体3の内側には、この工具本体3の一端部側から、前記棒状体4が嵌め込まれており、棒状体4と工具本体3とは相対回転不能に一体に構成される。
【0026】
本実施形態では、工具本体3は、例えば、外径が約4mm、内径が約2mmとされ、その肉厚が約1mmとされている。このように、本実施形態では、工具本体3における外径と肉厚との比は、4:1とされている。すなわち、工具本体3の外径に対する肉厚の割合が25%となっている。この工具本体3の外径に対する肉厚の割合は、20%〜30%とされるのが望ましい。また、肉厚は1mm以上とされることが望ましい。工具本体3の外径、内径、肉厚は、上記の値に限定されるものではなく、回転工具1の用途に応じて適宜変更可能である。
【0027】
この棒状体4は、工具本体3の全長にわたって孔3aに入れられるのではなく、この工具本体3の中途部までの範囲に入れられた状態(棒状体4の他端部から中途部までの部分が、工具本体3内に入れられた状態)となっている。したがって、棒状体4の端部が、工具本体3の孔3aに入れられて固着された状態では、工具本体3内に中空部分3bが残存している。
【0028】
工具本体3は、その中途部の外面に、工作機械等に取り付けられる取付部6を有する。この取付部6は、工具本体3の外面から外方に突出する突起部として構成される。また、工具本体3は、その一端部が、係合部2が形成されている棒状体4を固定する固定部5となっている。この固定部5は、工具本体3の中途部の厚さよりも薄く構成されている。この固定部5が所定の圧力によって圧縮変形される(カシメられる)ことにより、前記棒状体4が工具本体3に固定される。
【0029】
本実施形態では、係合部2が形成される棒状体4と、工具本体3とは、同じ金属材料で形成しても良いし、異なる金属材料によって形成しても良い。棒状体4と工具本体3の材料としては、例えば、炭素鋼、超硬合金、特殊合金鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、真鍮等の金属が用いられる。
【0030】
工具本体3の硬度は、係合部2(棒状体4)の硬度よりも低く設定されていることが望ましい。例えば、回転工具1は、工具本体3をアルミニウム、係合部2を特殊合金鋼によって形成することにより、工具本体3と係合部2との硬度に差を与えることができる。
【0031】
以上説明した第1実施形態に係る回転工具1によれば、工具本体3を筒状とすることにより、筒状でないものと比較して、その肉厚が薄くなることによって、係合部2からのトルクが筒状体に作用したときに、工具本体3が弾性変形し易くなり、これによって回転工具1の破壊強度を向上して耐久性を高めることが可能になる。
【0032】
また、工具本体3の硬度を係合部2よりも低くすることによっても、係合部2に大きなトルクが瞬間的に作用したとき(衝撃が加わったとき)に、工具本体3が変形することによって、回転工具1の破壊を抑制できるようになる。このための金属材料の組み合わせとしては、工具本体3をアルミニウム又はアルミニウム合金製とし、係合部2(棒状体4)を炭素鋼とすることが望ましい。
【0033】
また、係合部2が形成された棒状体4が筒状の工具本体3内に入れられた状態で、工具本体3の端部の固定部7を圧縮変形させて、この棒状体4を工具本体3に固定することによって、工具本体3の中途部は、棒状体4と一体とならない状態となり、この中途部が所定の肉厚に構成されることで、工具本体3は、過大なトルクや衝撃を弾性変形によって吸収できるようになる。
【0034】
図2(a)(b)は、回転工具1の第2実施形態を示す。本実施形態では、回転工具1として、いわゆるドライバビットを例示する。この回転工具1としてのドライバビットは、例えば電動ドライバ等に用いられ、電動ドライバ本体(図示せず)のチャックに交換可能に取り付けられる。回転工具1は、図2(a)に示すように、外側の形状が略六角筒状の工具本体3と、係合部2とを備える。
【0035】
工具本体3には、その一端部から他端部にかけて貫通した断面視円形の孔3aが形成されている。係合部2は、第1実施形態と同様に金属製の棒状体4の一端部に形成されており、この棒状体4の他端部が、工具本体3の一端部から孔3aに入れられている。
【0036】
工具本体3の中途部の外面には、電動ドライバ本体に固定されるための固定溝11が形成されている。
【0037】
棒状体4の中途部の外面には、周方向に沿って溝部4aが形成されており、この溝部4aは、工具本体3の固定部5と重なるように位置づけられる。この固定部5を圧縮変形させたとき、この固定部5の位置に対応する工具本体3の内面の部分が、その半径方向内方に突出するとともに、棒状体4の溝部4aに入り、これによって、棒状体4は、工具本体3から抜けはずれないように掛止される。
【0038】
この回転工具1の製造方法としては、例えば、金属製の管材を、鍛造又は切削することによって、所定形状の工具本体を形成し、この工具本体の孔3aに、係合部2が形成された棒状体4を入れて結合させる。
【0039】
また、この他に、中実状の金属棒に対して、その長手方向に沿う孔3aをドリルによって形成し、さらに鍛造又は切削によって所定形状の工具本体3を形成するとともに、工具本体3の孔3aに係合部2が形成された棒状体4を入れて結合させたり、又は、金属粉末射出成形法(MIM)によって、その長手方向に沿う孔3aが形成された工具本体3を成形し、この工具本体3の孔3aに係合部2が形成された棒状体4を入れて結合させたりすることで回転工具1を製造できる。
【0040】
また、アルミダイカスト(又はマグネシウムダイカスト)によって所定形状の工具本体3を成形するとともに、係合部2が形成された棒状体4をインサート成型によって工具本体3に固着して回転工具1を製造することも可能である。
【0041】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、工具本体3が、筒状に構成され、中空部分3bを有することから、回転工具1の重量を軽減するとともに、工具本体3が弾性変形しやすくなり、疲労破壊強度を向上させることができる。
【0042】
図3(a)(b)は、回転工具1の第3実施形態を示す。上述した第2実施形態では、工具本体3に、長手方向に貫通する孔3aが形成されていたが、この第3実施形態では、工具本体3の長手方向に貫通しておらず、この点が異なる。
【0043】
工具本体3の孔3aは、工具本体3の一端部から中途部までの範囲に形成されている。係合部2が一端部に形成された棒状体4の他端部が、工具本体の孔3aに、その中途部までの範囲で入れられており、工具本体3には、中空部分3bが残存した状態となっている。
【0044】
本実施形態のその他の点は、第2実施形態と同様であり、第2実施形態と同様の作用効果を奏する。第3実施形態が第2実施形態と共通する要素には、共通符号を付して説明を割愛する。
【0045】
図4(a)(b)は、回転工具1の第4実施形態を示す。上述した第2実施形態では、工具本体3の一端部に係合部2が設けられていたが、この第4実施形態に係る回転工具1は、回転工具1の両端部に係合部2が設けられており、この点が異なる。
【0046】
工具本体3の長手方向に貫通して形成された孔3aは、工具本体3の各端部に入れられた棒状体4,4によって閉塞されているが、各棒状体4,4の端部(係合部2が形成されていない端部)が工具本体3の中途部の範囲まで入れられていることから、工具本体3の内部には、中空部分3bが残存した状態となっている。
【0047】
図4(b)に示すように、各棒状体4,4の中途部には、第2実施形態と同様に溝部4aが形成されているが、この溝部4aは、工具本体3に形成された固定溝11に重なるように、位置づけられており、この点が第2実施形態と異なる。
【0048】
固定溝11は、例えば、圧縮変形(カシメ)等により形成されるが、前記溝部4aを固定溝11の位置に対応するように配置することによって、固定溝11を形成したときに、この固定溝11に対応する工具本体3の内面の部分が、その半径方向内方に突出して溝部4aに入り、これによって棒状体4は、工具本体3から抜けはずれないように固定される。すなわち、本実施形態では、この固定溝11が、棒状体4を工具本体3に固定するための固定部5を兼ねている。
【0049】
このように、本実施形態では、工具本体3に固定溝11を形成する工程と、棒状体4を工具本体3に固定する工程を同時に行うことができ、これによって回転工具1の製造工程を簡略化して製造コストを低減することができ、この点において特に有用なものとなっている。
【0050】
本実施形態のその他の点は、第2実施形態と同様であり、第2実施形態と同様の作用効果を奏する。第4実施形態が第2実施形態と共通する要素には、共通符号を付して説明を割愛する。
【0051】
図5(a)(b)は、回転工具1の第5実施形態を示す。上述した第4実施形態では、係合部2が2本の棒状体4をそれぞれ工具本体3の各端部に入れて回転工具1を構成していたが、本実施形態では、1本の棒状体4の両端部に係合部2,2が形成されており、この点が異なる。
【0052】
棒状体4は、工具本体3よりも長く構成され、その両端部の係合部2が工具本体3の各端部から突出するように、その中途部が工具本体3内に入れられている。棒状体4は、工具本体3の各端部に設けられる固定部5を介して、工具本体3に固定されている。
【0053】
本実施形態では、工具本体3の内部には、その全長にわたって棒状体4が入っているが、この棒状体4の工具本体3への固定は、工具本体3の端部の固定部5のみよって行われるため、工具本体3の中途部は、棒状体4から分離した状態になっている。したがって、本実施形態においても、係合部2に過大なトルクや衝撃が作用したときに、この薄肉状とされた工具本体3が弾性変形し易くなり、これによって回転工具1の破壊強度を向上させることが可能になる。
【0054】
本実施形態のその他の点は、第4施形態と同様であり、第4実施形態と同様の作用効果を奏する。第5実施形態が第4実施形態と共通する要素には、共通符号を付して説明を割愛する。
【0055】
図6(a)(b)は、回転工具1の第6実施形態を示す。上述した第1乃至第5実施形態では、工具本体3は別体の棒状体4に係合部2を形成し、この棒状体4を工具本体3に固定することで回転工具1を形成していたが、この第6実施形態では、係合部2と、工具本体3を1つの部材(材料)によって一体形成しており、この点が異なる。本実施形態に係る回転工具1では、工具本体3の一端部側に形成された係合部3の突端部が閉塞され、工具本体3の他端部が開放状に構成されているが、工具本体3の他端部を閉塞したり、又は、係合部3の突端部を内外貫通するように構成することも可能である。
【0056】
この第6実施形態のように、係合部2と工具本体3を1つの部材(材料)によって一体に形成することによっても、工具本体3を筒状として薄肉状に構成することで、過大なトルクや衝撃が作用したときに、工具本体3が弾性変形することでこれを吸収することで、破壊強度を改善できる。
【0057】
図7は、本発明に係る回転工具1の効果を確認するための試験結果を示す。本発明に係る作用効果は、複数の実施例と従来例とを用意し、破壊試験を行うことにより実証される。この試験は、トルク試験機によって、複数の実施例と従来例を所定のトルク、所定の角度で捩ったときの破壊強度を測定するものである。
【0058】
実施例としては、第3実施形態で示した回転工具1であって、係合部2と工具本体3をともに特殊合金鋼で形成した実施例1、第2実施形態で示した回転工具1であって、係合部2と工具本体3をともに特殊合金鋼で形成した実施例2、及び第2実施形態で示した回転工具1であって、係合部2を特殊合金鋼で形成し、工具本体3をアルミニウムで形成した実施例3を用いた。また、工具本体3が中空状とされずに中実状とされているとともに、係合部2と工具本体3をともに特殊合金鋼で形成したドライバビットを従来例とした。
【0059】
図7は、横軸に捩り角度、縦軸にトルクをとり、各実施例及び従来例のトルク曲線を示したものである。この図7において、実施例1のトルク曲線を破線(点線)で示し、実施例2のトルク曲線を一点鎖線で示し、実施例3を二点鎖線で示している。
【0060】
図7から明らかなように、この試験では、実施例1は、捩り角度が約42°、トルクが約1.07N・mで破壊する結果となった。また、図7において、実施例2は、捩り角度が約34°、トルクが約0.97N・mで破壊し、実施例3は、捩り角度が約43°、トルクが約0.98N・mで破壊する結果となった。また、従来例は、捩り角度が約2°、トルクが約0.79N・mで破壊する結果となった。
【0061】
このように、各実施例ともに、従来例と比較して破壊強度が向上していることが判る。また、各実施例を比較すると、実施例1の破壊強度が最も高くなることが判る。
【0062】
また、トルク試験機を用い、各実施例について疲労破壊試験を行った。この試験は、上記の実施例1〜3、従来例について、約0.75N・mのトルク(負荷)を複数回にわたり加え、各例が破壊したときの負荷の回数を測定したものである。この試験は、トルク試験機によって、正回転で各例を捩った後に1秒間静止させ、これを一回の負荷とし、その後、逆回転で各例を捩った後に1秒間静止させ、これをまた一回の負荷とし、この動作を交互に繰り返すとともに、各例が破壊した回数を測定することによって行った。
【0063】
また、この疲労破壊試験は、各例について複数のサンプル(試料)を用意し、各例について、破壊に至った負荷の回数の平均値を求めた。その結果、実施例1は、33.7回、実施例2は、83.3回、実施例3は、90回、従来例は、13回で、それぞれ破壊することとなった。これにより、各実施例1〜3は、従来例と比較して、その疲労破壊強度が向上し、実施例2の疲労破壊強度が最も向上することが判った。
【0064】
なお、本発明は、上記の実施形態に限らず、種々の変更・変形が可能である。
【0065】
例えば、上記の第1実施形態では、固定部5の圧縮によるカシメによって、係合部2が形成された棒状体4を工具本体3に固着した例を示したが、これに限らず、例えば、焼きバメ等の熱処理、工具本体3に対する棒状体4の圧入、接着剤等の種々の固着手段を用いて回転工具1を製造できる。
【0066】
また、例えば、係合部2が形成されている棒状体4に磁性体を用いるとともに、工具本体3の中空部分3bに磁石を嵌め込み、係合部2を磁化させて、磁性体からなるビス等の作業対象物を係合部2に磁着させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1…回転工具、2…係合部、3…工具本体、3a…工具本体の孔、3b…中空部分、4…棒状体、4a…溝部、5…固定部、6…取付部、11…固定溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビス等の作業対象物を回転させて所定の作業を行う回転工具において、
作業対象物に係合する係合部を端部に有する金属製の工具本体を備え、この工具本体は、内部が中空にされることにより、所定の肉厚の筒状に構成されてなることを特徴とする回転工具。
【請求項2】
前記工具本体と係合部とが異なる金属材料により構成される請求項1に記載の回転工具。
【請求項3】
前記工具本体は、係合部よりも硬度の低い金属材料により構成される請求項1または2に記載の回転工具。
【請求項4】
前記工具本体は、アルミニウム又はアルミニウム合金により構成され、前記係合部は炭素鋼によって構成されてなる請求項3に記載の回転工具。
【請求項5】
前記係合部は、金属製の棒状体の一端部に形成され、この棒状体の他端部から中途部までの部分が工具本体に挿入されるとともに、工具本体の端部が圧縮変形されることで、棒状体が工具本体に固定される請求項1から4のいずれか1項に記載の回転工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−188491(P2010−188491A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37551(P2009−37551)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000232597)株式会社ベッセル工業 (27)