説明

回転式血栓摘出ワイヤ

【課題】生体血管から血餅または他の閉塞物質を除去するのに使用できる回転式血栓摘出ワイヤを提供することにある。
【解決手段】フレキシブル材料からなる内側コアおよび該内側コアの少なくとも一部を包囲する外側ワイヤを備えた、血栓または他の閉塞物質を破砕する回転式血栓摘出ワイヤ。
外側ワイヤは、遠位領域に波形部分を有している。内側コアは外側ワイヤの圧縮性を制限する。外側ワイヤの遠位端は、該ワイヤを回転させて血栓を浸軟化させるモータに連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2004年11月17日付米国仮特許出願第60/628,623号(該出願の全内容は本願に援用する)の優先権を主張する。
本願は、生体血管から血栓を除去する回転式血栓摘出ワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
血液透析の一方法では、一般にPTFEからなる透析移植片が、患者の皮膚の下例えば患者の前腕に移植され、その一端が流出のための静脈に縫合されかつ他端が流入のための動脈に縫合される。移植片は、動脈から静脈への大血流を生じさせるシャントとして機能しかつ静脈に直接穿刺する必要なくして患者の血液へのアクセスを可能にする(静脈の反復穿刺により、最終的に静脈が損傷されて血餅が生じ、これにより静脈不全が引起こされる)。一方の針が移植片に挿入され、患者から血液を取出して透析機械(腎臓機械)に導き、他方の針が移植片に挿入され、濾過された血液を透析機械から患者に戻す。透析機械では、毒素および他の老廃物が、半透膜を通り、血液の化学的組成に厳格に一致する透析液中に拡散する。濾過された血液すなわち老廃物が除去された血液は、次に、患者の体内に戻される。
一定期間が経過すると、移植片内に血栓または血餅が生じる。血栓または血餅は、血管内にも生じる。移植片および血管内のこれらの血餅および他の閉塞物質を破砕する1つのアプローチは、血栓溶解剤を注入することである。これらの薬剤の欠点は、高価なこと、長期の病院処置を要すること、および血餅の破砕時に、薬剤の毒性の危険および出血の合併症が生じることである。
【0003】
下記特許文献1には、血栓摘出器具を用いて血餅および閉塞物質を破砕する他のアプローチが開示されている。この特許文献1は、血管の内管腔を押付けて、管腔のサイズおよび形状に一致させるべく拡大可能な6つの形状記憶ワイヤを備えたバスケットを開示している。この器具は、血管内で使用する場合には血管を傷付け、内皮を露出させ、血管に痙攣を生じさせ、かつバスケットおよび推進シャフトが破損する虞れがある。
下記特許文献2には、血餅を破砕するための機械的血栓摘出器具が開示されている。また下記特許文献3には、血餅を破砕するための回転式血栓摘出ワイヤの他の例が開示されている。この血栓摘出ワイヤはその遠位端が波形でありかつ実質的に真直な非定置位置でシース内に収容される。シースが引出されると、ワイヤの遠位端が露出されて、ワイヤをその非線形波形形状に戻すことができる。ワイヤはステンレス鋼からなる。モータを作動させると、波形パターンを生じるワイヤの回転運動が引起こされ、血栓を浸軟化(macerate)する。特許文献3の器具は、移植片内の血餅を非外傷的にかつ効果的に破砕するのに有効であり、現在、Pro-Lumen(登録商標)血栓摘出カテーテルとしてDatascope, Inc.社から市販されている。この市販されている器具では、ワイヤは、互いに並べて巻回された2本のステンレス鋼ワイヤからなり、最遠位端に金属チップおよびエラストマーチップ を備えた2本巻きワイヤ(bifilar wire)である。
【0004】
特許文献3に開示の波形ワイヤは透析移植片内の血栓を浸軟化する全くの臨床的使用には有効であるが、生体血管に使用するには適していない。器具は移植片に使用する必要があり、適正に使用されないと、ワイヤが捩れまたはもつれて、破断することもある。ワイヤは曲ることもあるので使用後に引出すのが困難になり、かつその形状を失うこともある。また、ワイヤが血管を擦過することおよび血管がワイヤの隙間内に挟まってしまう虞れがある。また、血管の攣縮(spasms)を引起こすこともあり、この攣縮により、血管がワイヤを圧迫してワイヤを破壊することもある。同様な問題は、特許文献2に開示の器具を生体血管に使用する場合にも生じることがある。
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,766,191号明細書
【特許文献2】米国特許第6,090,118号明細書
【特許文献3】米国特許公報第2002/0173812号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、生体血管から血餅または他の閉塞物質を除去するのに使用できる回転式血栓摘出ワイヤが要望されている。このようなワイヤは、透析移植片に隣接する生体血管だけでなく、奥行きのある静脈血栓症および肺動脈塞栓症にも使用できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、生体血管の管腔内の血栓または他の閉塞物質を破砕する回転式血栓摘出ワイヤを有利に提供する。
本発明は、フレキシブル材料からなる内側コアと、該内側コアの少なくとも一部を包囲する多重巻き(multifilar)外側ワイヤとを有する回転式血栓摘出ワイヤを提供する。外側ワイヤは、互いに並べて巻回された少なくとも第一および第二の金属ワイヤを備えかつ遠位領域に波形部分を備えている。内側コアは外側ワイヤの波形部分内の波形部分を備えている。内側コアは多重巻きワイヤの圧縮性を制限する。多重巻きワイヤの近位端は、多重巻きワイヤを回転させて血栓を浸軟化するモータに連結できる。
【0008】
好ましい実施形態では、内側コアはナイロン材料で形成されている。他の実施形態では、内側コアは形状記憶材料からなり、記憶された形状の波形になる。他の実施形態では、コアは、ステンレス鋼からなる少なくとも2本の撚りワイヤからなる。
血栓摘出ワイヤは、好ましくは、多重巻きワイヤの少なくとも遠位部分を包囲するポリマー材料を有している。好ましい実施形態では、ポリマー材料は、多重巻きワイヤに取付けられたシュリンクラップ材料からなる。他の実施形態では、ポリマー材料は、多重巻きワイヤ上に塗布されるコーティングである。
血栓摘出ワイヤは、好ましくは、遠位端に配置されるフレキシブルで鈍なチップを有している。
【0009】
一実施形態では、内側コアは、連結部分を形成する拡大遠位端を有し、多重巻きワイヤの遠位端に固定された金属チップは、内側コアの前記拡大端部を受入れて内側コアと摩擦的に係合する凹部を有している。
一実施形態では、第一および第二金属ワイヤは、第一ワイヤのコイルが、第二ワイヤの隣接ターン間のスペースを占めるように一緒に巻回され、外側ワイヤのコイルは、内側コアの外径にほぼ等しい内径を有している。
【0010】
本発明はまた、互いに並べて巻回された少なくとも2本の金属ワイヤを含む多重巻き外側ワイヤを有し、血栓を浸軟化すべく外側ワイヤの近位端が該ワイヤを回転させるモータに連結できる構成の血栓または他の閉塞物質を破砕する回転式血栓摘出ワイヤを提供する。多重巻きワイヤは、その遠位領域に波形部分を有している。ポリマー材料が、多重巻き外側ワイヤの波形部分の少なくとも一領域を包囲して、多重巻きワイヤの隙間を閉塞する。
好ましい実施形態では、ポリマー材料はシュリンクラップ材料からなる。他の実施形態では、ポリマー材料は、2本巻きワイヤワイヤ上に塗布されるコーティングである。
【0011】
本発明はまた、ハンドルと、シースと、電池と、該電池により駆動されるモータと、コイルを形成すべく巻回された少なくとも1つのワイヤを備えた波形の血栓摘出ワイヤと、前記コイルの圧縮性を制限する材料で形成された内側コアとを有する血栓または他の閉塞物質を破砕する血栓摘出装置を提供する。コイルは波形部分を有しかつ内側コアの少なくとも遠位領域を包囲する。内側コアは、コイルの波形部分内に波形部分を備えている。内側コアおよび第一および第二ワイヤの波形部分は、シースから露出されると、デリバリのためのシース内の真直形状から波形形状に移動できる。
好ましい実施形態では、コイルの隙間を覆うべく、ポリマー材料はコイルの少なくとも遠位部分を包囲する。一実施形態では、コアは、その記憶位置が波形形状を有する形状記憶材料からなる。他の実施形態では、コアはナイロンからなる。他の実施形態では、コアは、ステンレス鋼からなる少なくとも2本の撚りワイヤで形成される。
【0012】
本発明はまた、
フレキシブル材料からなる内側コアと該内側コアの少なくとも一部を包囲する少なくとも1つの外側ワイヤとを血栓摘出ワイヤを用意する段階を有し、外側ワイヤは遠位領域に波形部分を備え、内側コアは外側ワイヤの波形部分内の波形部分を備え、ポリマー材料は少なくとも1つの外側ワイヤの少なくとも遠位部分を包囲して、少なくとも1つの外側ワイヤの隙間を塞ぎ、
内側コアおよび2本巻き外側ワイヤの波形部分がシース内でより線形形状になるようにして、生体血管の管腔内にワイヤを配給(デリバリング)する段階と、
内側コアおよび少なくとも一方の外側ワイヤの波形部分を露出させる段階と、
少なくとも1つの外側ワイヤの波形部分が生体血管の内壁に接触して血管内の血栓を浸軟化するように、血栓摘出ワイヤに連結されたモータを作動させる段階とを有する、生体血管内の血栓または他の閉塞物質を破砕する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の血栓摘出ワイヤの第一実施形態の一部を破断した側断面図であり、デリバリ用カテーテルスリーブの内部を示すものである。
【図2】ワイヤのモータ回転駆動および流体デリバリ用ポートを示す概略図である。
【図3】血栓摘出ワイヤの波形部分の概略側面図であり、血栓摘出ワイヤ内に配置された内側コアの第一実施形態を示すものである。
【図4】図3の回転式血栓摘出ワイヤの最遠位領域を示す拡大断面図である。
【図5】血栓摘出ワイヤの波形部分の概略側面図であり、血栓摘出ワイヤ内に配置された内側コアの第二実施形態を示すものである。
【図6】図5の回転式ワイヤの最遠位領域を示す拡大側面図である。
【図7】血栓摘出ワイヤの波形部分の概略側面図であり、血栓摘出ワイヤ内に配置された内側コアの第三実施形態を示すものである。
【図8】図7の8−8線に沿う横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態を、添付図面を参照して説明する。
ここで図面を参照すると、幾つかの図面を通して同類のコンポーネンツには同じ参照番号が使用されている。図3および図4には、本発明の血栓摘出ワイヤの第一実施形態が示されている。参照番号10で全体を示す血栓摘出ワイヤは、コア20と、2本巻きワイヤ(コイル)30と、シュリンクラップ50とを有している。2本巻きワイヤ30は、一体に巻かれた2本のステンレス鋼ワイヤ32、34で形成されている。図示のように、2本のワイヤは、該ワイヤの横断面積すなわち直径「a」が、他のワイヤの隣接ターン(巻き部)間のスペースを充満するように互いに並んで巻かれている。例えば、図示のように、ターン32a、32bは、それぞれのターン34a、34bにより充満されている。好ましくは2本巻きワイヤ30は約30インチの長さと、約0.030−0.040インチ、より好ましくは約0.035インチの直径とを有している。奥行きが大きい生体血管、例えば奥行きのある脚の静脈または肺動脈系の血管に使用する場合には、ワイヤ30の長さは約52インチにすることができる。他の寸法を考えることもできる。
【0015】
2本巻きワイヤ30の遠位領域16は、ワイヤが回転するときに血管壁と接触できる波形すなわちS形に形成されている。
本願に図示しかつ説明する実施形態では、外側ワイヤは2本巻きワイヤ(2本のワイヤ)の形態をなす多重巻きワイヤであるが、異なる本数のワイヤを巻回して本発明の血栓摘出ワイヤの外側ワイヤコンポーネントを形成することもできる。更に別の実施形態では、外側ワイヤは、1本巻きワイヤで形成できる。
2本巻きワイヤ30は、好ましくは、過形成S形(over-formed s-shape)に形成することもできる。2本巻きワイヤは、残留応力を除去しかつ「S」の形状が歪んでその所望形状に戻るように「S」の形状を変化させる、例えば約670°Fに加熱される。この応力緩和加工は、ワイヤの寸法安定性を高めることができる。
【0016】
ワイヤ10に非外傷性遠位チップを設けるべく、好ましくはゴム、Pebax(登録商標)または他のエラストマー材料からなるチップ80をワイヤ10の最遠位チップに取付けて、ワイヤの操作および回転中に血管壁が損傷を受けることを防止する。2本巻きワイヤ30の遠位端には、レーザ溶着または他の方法により金属チップ60が取付けられる。金属チップ60は、チップ80への取付けを容易にするための拡大ダンベル形ヘッド62を有している。フレキシブルチップ80は、機械加工されたチップ上に、射出成形により取付けられる。他の取付け方法を考えることもできる。
【0017】
引続き図4を参照すると、2本巻きワイヤ30内にはコア20が配置されており、該コア20は、コイルの内径Dに実質的に等しい外径Eを有している。コア20の遠位部分は、外側ワイヤ30の波形形状に一致しかつ該波形形状により形成される、外側ワイヤ30の波形部分内の波形部分を有する。一実施形態では、コア20は2本巻きワイヤ30の全長に亘って延びており、これは図3の概略図に示されている。或いは、コア20は、ワイヤ30の遠位線形部分および波形部分を通って延びるように、約4−5インチの長さにすることができる。すなわち、このような実施形態では、コアは、シースから露出されて血栓の浸軟化に使用されるワイヤの部分を通って延びる。また、コアを、2本巻きワイヤより短い長さまたは2本巻きワイヤより長い長さ内に配置することも考えられる。
【0018】
コア20は、使用中にワイヤ30の圧縮性を制限するフレキシブル材料で形成される。
図3の実施形態におけるコア20は、ナイロン、好ましくは延伸ナイロンモノフィラメントで形成される。他の可能性ある材料として、例えば、テフロン(Teflon)(登録商標)、ポリプロピレン、PETおよびフルオロカーボンがある。ナイロンは、使用中のワイヤ30の圧縮性を制限する非圧縮性材料を形成する。すなわち、前述のように、ナイロンコアは、好ましくはコイル30の内部を充満する直径E、例えば約0.008−0.013インチ、好ましくは約0.012インチの直径を有する(他の寸法を考えることもできる)。これは、コイル(2本巻きワイヤ)30を前記直径のみに圧縮することを可能にする。圧縮性を制限することにより、ワイヤがトルクを受ける場合にその伸びの度合いが低減されるので、ワイヤを強化できる。また、さもなくば生体血管内で生じるであろうワイヤの曲りまたはもつれも防止される。圧縮性を制限することにより、ワイヤの捩り強度が増大されかつ血管に生じる攣縮に適合するようにワイヤを強化する。コア20には、機械加工されたチップ60の凹部内に嵌合するボールチップ(図示せず)のような拡大遠位ヘッドを設けることができる。他の態様として、コア20は、接着、溶接、クリンプ、ロウ付によりチップに取付けることができ、或いはフリーフローティングの形態に構成できる。
【0019】
コイルの隙間を塞ぎかつ擦過性の小さい表面を形成するため、シュリンクラップ材料50が、フレキシブルチップ80の近位側の2本巻きワイヤ30の一部を覆っている。図4に示すように、シュリンクラップ50の遠位端は、チップ60の近位端に当接している。
シュリンクラップは、PET、テフロン(登録商標)、Pebax、ポリウレタンまたは他のポリマー材料で作ることができる。材料はワイヤ30の露出部分上に配置され(好ましくは、約3−4インチ)、生体血管がコイルにより捕捉されることを防止しかつ血管の攣縮を低減させる。或いは、シュリンクラップの代わりに、2本巻きワイヤにより形成されるコイルにコーティングを塗布して、コイルの隙間を覆うこともできる。
【0020】
図5および図6には、本発明による血栓摘出ワイヤの他の実施形態(その全体を参照番号100で示す)が示されている。ワイヤ100は、内側コア120を除き図1のワイヤ10と同じである。ワイヤ100が2本巻きワイヤ130、シュリンクラップ170、エラストマーチップ180および金属例えばステンレス鋼のチップ160を有していることは図1のワイヤ10と同じである。
この実施形態では、コア120は、2本巻きワイヤ130のS形と実質的に同じ波形すなわちS形の記憶形状を有する形状記憶材料、好ましくはニチノール(Nitinol、ニッケルチタン合金)からなる。シース内のより軟らかいマルテンサイト状態では、コア120は実質的に線形形状をなしている。この状態は、ワイヤを手術部位に配給するのに使用される。ワイヤが暖かい体温に露出されると、コア120はそのオーステナイト状態に変態して、S形の記憶形状になる。ワイヤの配給中に、コア120をこのマルテンサイト状態に維持するため、冷たい食塩水がカテーテルを通して供給され、体温に露出されることによりコア120が暖められ、記憶状態に変態する。このような記憶S形形状は、使用中にワイヤ130のS形形状を維持することを助ける。冷たい食塩水は、コア120に、ワイヤの引出しを容易にするため、手術が終了したときにも供給される。
【0021】
ニチノールコア120は、ナイロンコア20のように非圧縮性であり、従ってニチノールも2本巻きワイヤ130の圧縮性を制限する。ニチノールコア120はワイヤ100のスチフネスを増大させ、これによりワイヤのもつれおよび捩れの機会を低下させかつワイヤの強度を増大させて、血管のあらゆる攣縮に適応させる。ニチノールの形状記憶が使用中の2本巻きワイヤ130の大きさの保持を助け、回転時の浸軟化を行うべく血餅に作用する力を維持する。ニチノールコアは約4−5インチの長さで延び、これにより、ニチノールコアがワイヤ130の遠位側線形部分および波形部分を通って延び、端部122に終端している。或いは、コア120はワイヤ130内でより短く(またはより長く)配置でき、または図5の概略図に示すように全長に亘って配置できる。コア120は、コイルの内径に対応して、約0.008−0.013インチが好ましく、より好ましくは約0.012インチである。他の直径を考えることもできる。
他の実施形態では、一体に撚られたステンレス鋼編組、ケーブルまたはストランドが、コイル(2本巻きワイヤ)の圧縮性を制限する内側コア部材を形成し、かつ前に列挙した大きいスチフネス、強度および他の長所をもたらす。これは図7および図8の実施形態に示されており、この実施形態では、ワイヤ200が、7本の撚られたステンレス鋼ワイヤからなる内側コア220を有する。異なる本数の撚りワイヤを考えることもできる。ワイヤ200の他の要素、例えば外側2本巻きワイヤ230、金属チップ260、チップ280、シュリンクラップ250等は、前述のワイヤ10、100におけるこれらと同じである。
【0022】
本発明の回転式血栓摘出ワイヤ10、100、200は、種々の血栓摘出カテーテルに使用して、血管内の血栓を浸軟化することができる。回転式血栓摘出ワイヤ10(または100または200)は、図1に示すように、カテーテルのフレキシブルシースまたはスリーブC内に収容される。ワイヤとシースCとの相対移動により、ワイヤ10を露出させて、後述のような湾曲形状(波形形状)にすることにより、血管の管腔から血餅等の閉塞物質を除去できる。
ハウジング内には、血栓を血管腔内で小さい粒子に浸軟化および液状化するための、電池により駆動されるモータが収容されている。これは図2に概略的に示されている。ワイヤ10(または100または200)は、モータに連結される。この連結には、直接的連結またはモータが作動されると回転できるようにする介在コンポーネンツを介しての連結が含まれる。ワイヤ10(または100または200)の湾曲領域は、シースC内にあるときは、ワイヤ(それぞれ遠位側領域16、116または216を含む)が実質的に真直すなわち線形の非定置形状をなすように圧縮されている。シースCによるワイヤ10(または100または200)のこの被覆により、導入器シースを介しての挿入および血管内での操作が容易になる。フレキシブルシースCが引出されると、ワイヤが露出されて、ワイヤをその非線形の実質的に波形形状に戻し、血管の管腔内でその長手方向軸線の回りで回転させることができる。
【0023】
イメージング染料のような流体を、ポートDを通して、ワイヤ10(または100または200)とシースCの内壁との間のスペース内のシースCのルーメン内に注入し、遠位側開口から排出して血管内に流出させることができる。このイメージング染料は、血管内での流体の流れを表示する。また、シースのルーメンは、前述のようにニチノールコア120を冷却する冷たい食塩水を受入れる。
本発明の回転式血栓摘出ワイヤ10、100、200は、特許文献3に開示されたバルーンのような1つ以上のバルーンを備えた血栓摘出カテーテルに使用できる。ワイヤ10、100、200はまた、他の血栓摘出カテーテルにも使用できる。
上記説明は多くの特定構成を含んでいるが、これらの特定構成は本発明の開示範囲を限定するものと解釈すべきではなく、本発明の好ましい実施形態の単なる例示であると解釈すべきである。当業者ならば、特許請求の範囲で定められた開示の範囲および精神内での他の多くの可能な変更を考えることができるであろう。
【符号の説明】
【0024】
10 血栓摘出ワイヤ
20 コア(内側コア)
30 2本巻きワイヤ(外側ワイヤ)
50 シュリンクラップ
60 金属チップ
80 フレキシブルチップ
C フレキシブルシース(スリーブ)
D ポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブル材料からなる内側コアと、
該内側コアの少なくとも一部を包囲する多重巻き外側ワイヤとを有し、該多重巻き外側ワイヤは、互いに並べて巻回された少なくとも第一および第二の金属ワイヤを備えかつ遠位領域に波形部分を備え、内側コアは多重巻き外側ワイヤの波形部分内の波形部分を備え、内側コアは多重巻き外側ワイヤの圧縮性を制限し、多重巻き外側ワイヤの近位端は、多重巻き外側ワイヤを回転させて血栓を浸軟化するモータに連結でき、
前記多重巻き外側ワイヤの隙間を封鎖するために前記多重巻き外側ワイヤの少なくとも遠位部分を包囲するポリマー材料と、
前記多重巻き外側ワイヤの一部のまわりに位置決めされた金属チップと、
前記ポリマー材料とは独立しており、前記ポリマー材料の遠位側に間隔を隔てては位置されており、前記金属チップ上に位置決めされた鋭利でないポリマーチップとを更に有することを特徴とする血栓または他の閉塞物質を破砕する回転式血栓摘出ワイヤ。
【請求項2】
前記内側コアはナイロン材料からなることを特徴とする請求項1記載の血栓摘出ワイヤ。
【請求項3】
前記内側コアは形状記憶材料からなり、内側コアは記憶された形状を有し、内側コアは記憶形状の波形になることを特徴とする請求項1記載の血栓摘出ワイヤ。
【請求項4】
前記内側コアは、ステンレス鋼の少なくとも2本の撚りワイヤからなることを特徴とする請求項1記載の血栓摘出ワイヤ。
【請求項5】
前記ポリマー材料は、多重巻き外側ワイヤ上に塗布されるコーティングであることを特徴とする請求項1記載の血栓摘出ワイヤ。
【請求項6】
前記ポリマー材料は、多重巻き外側ワイヤに取付けられるシュリンクラップ材料であることを特徴とする請求項1記載の血栓摘出ワイヤ。
【請求項7】
前記内側コアはナイロン材料からなることを特徴とする請求項1記載の血栓摘出ワイヤ。
【請求項8】
前記内側コアは、ステンレス鋼の少なくとも2本の撚りワイヤからなることを特徴とする請求項1記載の血栓摘出ワイヤ。
【請求項9】
前記第一および第二金属ワイヤは、第一ワイヤのコイルが、第二ワイヤの隣接ターン間のスペースを占めるように一緒に巻回されることを特徴とする請求項1記載の血栓摘出ワイヤ。
【請求項10】
前記第一および第二金属ワイヤは、第一ワイヤのコイルが、第二ワイヤの隣接ターン間のスペースを占めるように一緒に巻回され、ワイヤの遠位端に配置される、フレキシブルで鈍なチップを更に有することを特徴とする請求項1記載の血栓摘出ワイヤ。
【請求項11】
前記多重巻き外側ワイヤは、隣接コイル間に本質的に全くスペースをもたないコイルを形成し、外側ワイヤのコイルは、内側コアの外径にほぼ等しい内径を有していることを特徴とする請求項1記載の血栓摘出ワイヤ。
【請求項12】
前記内側コアおよび前記多重巻き外側ワイヤの波形部分は、デリバリのためのシースから露出されると、デリバリのためのシース内の真直形状から波形形状に移動できることを特徴とする請求項1記載の血栓摘出ワイヤ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−17834(P2013−17834A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−230533(P2012−230533)
【出願日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【分割の表示】特願2007−543096(P2007−543096)の分割
【原出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【出願人】(505301837)レックス メディカル リミテッド パートナーシップ (22)
【Fターム(参考)】