説明

回転式電子部品

【課題】回転体の回転によって出力を変化する検出手段の機能を低下することなく小型化が図れる回転式電子部品を提供すること。
【解決手段】ケース10と、ケース10の回転体収納凹部13内に収納される回転体本体部51の上面から軸部53を突出してなる回転体50と、回転体本体部51を収納したケース10の上部を覆うカバー130とを具備する。カバー130は軸部53を回動自在に軸支する軸支部135を設けてなる上面板131と、上面板131の外周辺の部分を下方に折り曲げて形成される一対の側面板133とを具備して構成される。カバー130の一対の側面板133に覆われるケース10の一対の側壁部15に、側壁部15を貫通する側壁貫通部23を設ける。カバー130の一対の側面板133のケース10の側壁貫通部23を覆う位置に、側面板133の一部を外方向に向けて突出変形させてなる回転体本体部逃げ部147を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式可変抵抗器や回転式スイッチ等の回転式電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の回転式電子部品は、例えば図10,図11に示すように、回転体収納凹部561を有する矩形箱型のケース560と、ケース560の回転体収納凹部561内に収納される回転体本体部531の上面から軸部537を突出してなる略円柱状の回転体530と、前記回転体本体部531を収納したケース560の上部を覆うカバー510と、前記ケース560の回転体収納凹部561の内底面と回転体本体部531の間に設置され回転体本体部531の回転によって電気的出力を変化する摺動子550と、前記カバー510の上面板515の下面と前記回転体本体部531の上面間に設置され回転体本体部531の上面に形成したクリック部535に弾接してクリック感触を生ずるクリック板522とを具備して構成されている。クリック板522は図11に示すように、回転体本体部531の周囲を囲むように、略リング形状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−78844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の回転式電子部品には以下のような問題点があった。
〔1〕図10に示すように、カバー510の矩形状の上面板515の対向する一対の外周辺には下方に直角に折り曲げられて垂下する一対の側壁部511,511が設けられ、その下端部からはこの回転式電子部品を主回路基板等の他の部材に取り付けるための舌片状の取付部513,513が突設されている。そして取付部513,513間の幅寸法は、これを取り付ける主回路基板などとの関係から設計上決まっており、これによって前記側壁部511,511に当接する側のケース560の側壁部間の幅寸法(回転体収納凹部561の幅寸法)と、ケース560内に収納される回転体530の回転体本体部531の外径寸法も決定される。そして取付部513,513間の幅寸法が小さいと、回転体収納凹部561の内径寸法も小さくなり、このため摺動子550の外径寸法や、摺動子550が摺接する回路基板565上の摺接パターンの外径寸法も小さくなり、その分摺接パターンからの電気的出力の分解能が低下し、また摺接パターンの本数を多く形成することができなくなる。これらのことを逆に言い換えれば、回転式電子部品の小型化が図りにくくなる。
【0005】
〔2〕回転体530は、カバー510の軸支部512によって軸支される軸部537の部分と、ケース560の穴564によって軸支される軸突起536の部分の2か所において軸支されるので、回転体530を回転する際に、トルクムラが生じる恐れがあった。即ち回転体530はその上下の2か所で軸支され、しかも軸支される部品はそれぞれ別部品(カバー510とケース560)なので、カバー510とケース560間の組立誤差などによって軸支部512の中心軸と穴564の中心軸とがぴったり一致しない。このため上述のように回転体530を回転する際に、トルクムラを生じる恐れがあった。
【0006】
〔3〕回転体530は合成樹脂製であり、またケース560も合成樹脂製である。このため回転体530を回転した際、これ(軸突起536の部分)に当接しているケース560(この例ではケース560内に設置している合成樹脂製の回路基板565)との間に静電気が発生する。この静電気が発生する位置は、回路基板565上に形成した図示しない摺接パターンに接近した回路基板565上(同一面上)の位置なので、これら摺接パターンに前記静電気が入り込み易く、ノイズの原因になっていた。
【0007】
〔4〕この回転式電子部品は、ケース560の回転体収納凹部561内に、リング形状のクリック板522を収納する構造なので、前記取付部513,513間の幅寸法が小さいと、回転体収納凹部561の内径寸法も小さくなり、このためクリック板522の外径寸法は回転体収納凹部561の内径に規制されて小さくなる。一方クリック板522の幅寸法はその強度を所定値以上に保つ必要があるので所定寸法以上必要であり、外径が小さくなった分だけ内径も小さくしなければならない。一方クリック板522の中央に通す回転体530の軸部537の外径寸法が設計上決まっていると、結局、回転体本体部531のクリック部535を設けたその上側部分のカバー当接部539の直径(すなわちクリック板522の内径寸法とほぼ同一の寸法)が小さくなり、このカバー当接部539のリング状の上面の半径方向の幅寸法L1が小さくなる。回転体530の上方向への抜け防止は、このカバー当接部539の上面をカバー510の軸支部512周囲の下面に当接することによって行っているが、カバー当接部539の上面の幅寸法L1が小さくなると、回転体530の抜け防止強度が低下してしまう。同様に回転体530下面の軸突起536の直径寸法は、摺動子550の中央を貫通する構造上、小さい。このため軸突起536に設ける段差部541の部分の半径方向の長さ寸法(幅寸法)も小さくなり、回転体530を上から押圧した際の破壊防止強度(押圧破壊防止強度)も低い。
【0008】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、回転体の回転によって出力を変化する検出手段の機能を低下することなく小型化を図ることができる回転式電子部品を提供することにある。
【0009】
さらに本発明の目的は、回転体の回転時にトルクムラが生じず、またその出力にノイズが入りにくく、また回転体の抜け防止強度と押圧破壊防止強度とを強くすることができる回転式電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願請求項1に記載の発明は、回転体収納凹部を有するケースと、前記ケースの回転体収納凹部内に収納される回転体本体部の上面から軸部を突出してなる回転体と、前記回転体本体部を収納したケースの上部を覆うカバーと、前記ケースの回転体収納凹部の内底面と回転体本体部の間に設置され回転体本体部の回転によって出力を変化する検出手段とを具備する回転式電子部品において、前記カバーは、前記回転体の軸部を回動自在に軸支する軸支部を設けてなる上面板と、上面板の外周辺の部分を下方に折り曲げて形成される互いに対向する一対の側面板とを具備して構成されており、一方前記ケースの回転体収納凹部の周囲に設けた側壁部の内、前記カバーの一対の側面板に覆われる一対の側壁部の前記回転体本体部の外周面に対向する位置に、側壁部を貫通する側壁貫通部を設けたことを特徴とする回転式電子部品にある。
【0011】
本願請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の回転式電子部品において、前記カバーの一対の側面板の前記ケースの側壁貫通部を覆う位置に、これら側面板の一部を外方向に向けて突出変形させるか或いは貫通孔を設けることで回転体本体部逃げ部を形成したことを特徴とする回転式電子部品にある。
【0012】
本願請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の回転式電子部品において、前記回転体本体部の外周のケース載置部を、前記ケースの回転体収納凹部の周囲に設けた回転体載置部上に載置することで、前記ケースの回転体収納凹部の内底面に対向する前記回転体本体部の面全体をこの内底面から離間して設置したことを特徴とする回転式電子部品にある。
【0013】
本願請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の回転式電子部品において、前記回転体は成形樹脂製であって、その軸部の少なくとも前記カバーの軸支部によって軸支されている内部の部分を中空とすることで横断面リング形状に形成したことを特徴とする回転式電子部品にある。
【0014】
本願請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の回転式電子部品において、前記カバーは金属製であり、一方前記回転体本体部上面の軸部を突出した周囲に、前記カバーの上面板の下面の軸支部の周囲に当接するカバー当接部を設け、さらに前記カバーの上面板の下面に、前記回転体本体部のケース載置部の上面に形成したクリック部に弾接してクリック感触を生ずる金属製のクリック板を設置し、このクリック板は帯状であって、前記カバーの上面板の前記側面板を設けていない一辺側の下面に電気的に接続した状態で取り付けられることを特徴とする回転式電子部品にある。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、ケースの一対の側壁部に側壁貫通部を設けたので、その分回転体本体部の外径寸法を大きくでき、ケースの回転体収納凹部の内底面と回転体本体部の間の検出手段を配置する空間を広くでき、検出手段の機能をより高度化・複雑化することができる。例えばケースの回転体収納凹部の底面に設ける摺接パターンと、回転体本体部の下面に取り付けて前記摺接パターンに摺接する摺動子とによって検出手段を構成する場合、摺接パターンの形成面を大きくすることができ、同時に外径寸法を大きくした回転体本体部の下面に取り付ける摺動子の外径寸法も大きくでき、その分摺接パターンからの出力の分解能を向上させることができ、また同心円状の複数本の摺接パターンの本数を増加させることも可能になる。逆に言い換えれば、回転式電子部品の小型化が図れる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、ケースの一対の側壁部に側壁貫通部を設けた上に、さらにカバーの側面板に回転体本体部逃げ部を形成したので、回転体本体部の外径寸法をさらに大きくでき、ケースの回転体収納凹部の内底面と回転体本体部の間の検出手段を配置する空間をさらに広くでき、検出手段の機能をさらに高度化・複雑化することができる。逆に言い換えれば、回転式電子部品のさらなる小型化が図れる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、回転体はカバーに設けた軸支部の部分のみで軸支されるので、回転体を2か所で軸支する場合に生じる回転体回転時のトルクムラを防止できる。
また検出手段の近傍部分で合成樹脂同士が摺接することがないので、静電気が検出手段へ侵入せず、ノイズの発生を防止できる。
また回転体本体部のケース載置部を、ケースの回転体載置部上に載置するので、回転体の押圧破壊防止強度を強くすることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、軸部の内部を中空とすることで、軸部の横断面における各部の厚みを全周にわたってほぼ均等に薄くすることができる。このため金型による回転体の成型時に、加熱溶融した合成樹脂が金型内で収縮する際の収縮量を小さくすることができ、同時に各部の収縮量を均等にすることができる。このため軸部の表面が硬化時に縮むことによって生じる凹み(いわゆる「ヒケ」)を防止でき、軸真円度を向上することができる。これによって回転体回転時のトルクムラを防止できる。また回転体回転時のトルクを最適なトルクに維持でき、回転しにくくなったり、逆にがたつきが生じたりすることも防止できる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、帯状のクリック板をカバーの上面板の側面板を設けていない一辺側の下面に(その一辺に沿うように)設置したので、側面板間の幅寸法が小さくなっても、このクリック板を設置することを原因として上記〔4〕で述べたように回転体本体部のカバー当接部の直径を小さくする必要はなくなり、カバー当接部の幅寸法を大きく保てる。これによって回転体の抜け防止強度を強く維持できる。また側面板間の幅寸法が小さくなってもクリック板の幅寸法を小さくする必要がないので、クリック板の強度を強く保てる。
また金属製のクリック板を金属製のカバーに電気的に接続した状態で取り付けるので、クリック板の近傍に位置している、前記回転体のケース載置部と前記ケースの回転体載置部との間の摺動部分によって生じる静電気はクリック板に入り込み易くなる。このため静電気が検出手段へ侵入することをさらに確実に防止でき、ノイズの発生をさらに確実に予防できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】回転式電子部品1の縦断面図(図2のC−C断面図)である。
【図2】回転式電子部品1の斜視図である。
【図3】回転式電子部品1の分解斜視図である。
【図4】回転式電子部品1を下側から見た分解斜視図である。
【図5】ケース10を図3とは異なる方向から見た斜視図である。
【図6】フレキシブル回路基板30とこれに接続する端子板45を示す平面図である。
【図7】摺動子80を回転体50に取り付ける取付方法説明図である。
【図8】カバー130−2の斜視図である。
【図9】カバー130−3の斜視図である。
【図10】従来の回転式電子部品の縦断面図である。
【図11】従来の回転式電子部品の縦断面図(図10とは90°回転した位置での縦断面図)である。
【図12】図12(a)は軸部53の中空部67を設けた部分での横断面図、図12(b)〜(d)はその他の実施形態の同一部分での横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1〜図4は本発明の1実施形態に係る回転式電子部品1を示す図であり、図1は縦断面図(図2のC−C断面図)、図2は斜視図、図3は分解斜視図、図4は下側から見た分解斜視図である。また図5はケース10を図3とは異なる方向から見た斜視図、図6はフレキシブル回路基板30とこれに接続する端子板45を示す平面図である。これらの図に示すように回転式電子部品1は、ケース10の回転体収納凹部13内に、摺動子80を取り付けた回転体50の回転体本体部51を収納し、且つその上にクリック板100を設置し、さらにその上にカバー130を被せて構成されている。以下各構成部品について説明する。なお以下の説明において、「上」とはケース10からカバー130を見る方向をいい、「下」とはその反対方向をいうものとする。
【0022】
ケース10は、合成樹脂製のケース本体11の内部に回路基板(以下「フレキシブル回路基板」という)30と複数本(6本)の端子板45とをインサート成形して構成されている。ケース本体11は略矩形箱型に形成され、その上面中央に略円形の回転体収納凹部13を設けている。ケース10の回転体収納凹部13を囲む4辺からなる側壁部15の上面の所定の位置(下記する側壁貫通部23を形成していない対向する一対の側壁部15の上面)には上方向に突出する突起状の係止部17が設けられ、係止部17を設けた1つの側壁部15の両角部の近傍には略矩形状に薄く凹むクリック板挿入部19が設けられている。各クリック板挿入部19の底面には略矩形状の薄い凹部21が形成されている。ケース10の回転体収納凹部13を囲む4辺の側壁部15の内の端子板45を突出していない対向する一対の側壁部15の中央部分にはその上面から略矩形で凹状に凹む側壁貫通部23が形成されている。回転体収納凹部13の内周面の底辺部分は階段状に突出しておりその上面は回転体載置部25となっている。なお側壁貫通部23の底面は回転体載置部25の面よりも低くしている。回転体載置部25は、ケース10の端子板45を突出した辺に対向する反対側の辺と、その両側の辺の内の前記側壁貫通部23を除く部分に形成されている。
【0023】
ケース10の回転体収納凹部13の底面には、フレキシブル回路基板30がその上面を露出して設置されている。フレキシブル回路基板30の上面には同心円状に4本の摺接パターン31が形成されており、それらからフレキシブル回路基板30の1辺の外周近傍まで引き出された端子接続パターン33(図6参照)上に各端子板45の一端部が当接・接続され、この当接接続部の上下にケース10を成形することで各端子板45をケース10に取り付けている。各端子板45はケース10の外部に突出した部分で下方向に略直角に折り曲げられている。
【0024】
回転体50は合成樹脂の一体成形品であり、略円板状の回転体本体部51の上面中央から、回転体本体部51の外径寸法よりもその外径寸法の小さい略円柱状の軸部53を突出して構成されている。回転体本体部51は、上から下に向かって階段状に3段、その径を大きくして構成されており、最も上の段がカバー当接部57、その下の2つの段が合わせてケース載置部55となっている。すなわちケース載置部55は、回転体本体部51の外周にリング状に張り出すように設けられている。ケース載置部55の下側の段の上面には突起からなりその上面が1つ上の段の上面に至る厚みのストッパ部58が設けられている。ケース載置部55の上側の段の上面からストッパ部58の上面にわたって凹状のクリック部59が形成されている。回転体本体部51の下面には薄板状に突出する摺動子取付部61が形成されており、この摺動子取付部61には摺動子取付用の小突起63が4本形成されている。また摺動子取付部61の所定位置には矩形状の小突起からなる保護突起64が1つ形成されている。保護突起64は回転体50にその上側から強い衝撃が印加されたときに摺動子80がフレキシブル回路基板30側に移動して摺動子80が潰されないように保護する念のためのものである。回転体50の内部の中央には中空部67が形成されている。中空部67は回転体本体部51の下面中央から軸部53内に至るまで形成されている。中空部67は略円柱形状(正確には上方向に向かってその内径を小さくしていく円錐台形状)であり、軸部53の中空部67が形成された部分の横断面はリング形状であって、その半径方向の厚み寸法が各部で略均一になるように形成されている。
【0025】
摺動子80は2枚であり、何れも弾性金属板製で、矩形状の基部87の1辺から2本と3本の摺接部81を突出し、また基部87の所定位置に小孔からなる取付部85を2つずつ形成して構成されている。
【0026】
クリック板100は弾性金属板を略帯状の直線状に形成して構成されており、その中央には下方向に突出するように湾曲する弾接部101が設けられ、その両端近傍には小孔からなる一対のカバー取付部103が設けられている。
【0027】
カバー130は金属板製であり、略矩形状の上面板131の対向する一対の外周辺に接続されている側面板133,133を略垂直下方に屈曲して構成されている。上面板131の中央には上方向に突出する円筒形状の軸支部135が形成されている。また上面板131の前記ケース10の一対の係止部17に対向する位置にはそれぞれこれら係止部17を嵌合する小孔からなる挿入係止部137が形成されている。また上面板131の前記クリック板100の一対のカバー取付部103に対向する位置にはそれぞれこれらカバー取付部103に挿入される下方向に突出する取付部139が形成されている。取付部139は下方向に凸状に突出するために上面板131の上面側では凹部となっている。上面板131の所定位置には周囲をコ字状に切り欠いて舌片状となった部分を根元から下方向に90°折り曲げてなるストッパ当接部138が設けられている。
【0028】
側面板133は略矩形状であって、その下辺の中央には下方向に向かって舌片状に突出する他部材取付部141が設けられ、またその下辺の左右両側には下方向に向かって舌片状に突出するケース取付部143が設けられている。上面板131から一対の側面板133を折り曲げたそれぞれの折り曲げ辺の略中央にはスリット状の開口部145が設けられ、これら開口部145の下部には側面板133の一部を略矩形状に外方向に向けて平行移動するように突出変形してなる回転体本体部逃げ部147が形成されている。従って側面板133をその内側面側から見た場合、回転体本体部逃げ部147を設けた部分は、図4に示すように、凹部になる。
【0029】
次に回転式電子部品1の組み立て方法を説明する。まず予め回転体本体部51の下面に一対の摺動子80を取り付ける。図7は摺動子80を回転体50に取り付ける取付方法説明図である。同図に示すように帯状金属板150を打ち抜くことで、一対の摺動子80を夫々対向する一対の送り板部151に接続部153にて連結した状態に形成する。この状態で両摺動子80の面上に回転体50の回転体本体部51の下面を配置し、回転体50の各小突起63を摺動子80の取付部85に挿入する。このとき更に、各摺動子80の対向している辺の端部(対向する位置)から突出している突出部89の間に、回転体50の保護突起64(図7に点線で示す)が位置する。そして各小突起63の先端を熱カシメした後、一対の接続部153を切断する。これによって摺動子80の回転体50への取り付けが完了する。一方カバー130の上面板131の下面にクリック板100を配置し、その際カバー130の一対の取付部139をクリック板100の一対のカバー取付部103に挿入し、各取付部139の先端をかしめることによって、カバー130の上面板131の下面にクリック板100を電気的に接続した状態で取り付ける。
【0030】
そして摺動子80を取り付けた回転体50の回転体本体部51をケース10の回転体収納凹部13内に収納し、その際ケース載置部55の下面をケース10の回転体載置部25の上面に当接・載置する。
【0031】
次に前記ケース10の上にカバー130を被せ、その際回転体50の軸部53をカバー130の軸支部135に挿入する。カバー130の上面板131をケース10の上面に当接し、その際クリック板100の両端部分はケース10のクリック板挿入部19内に収納され、またケース10の係止部17はカバー130の挿入係止部137に挿入され位置決めされる。またこのときカバー130の両側面板133,133はケース10の対向する両外周側面にぴったり当接してこれらを覆う。そしてカバー130の各ケース取付部143の先端部分をケース10の下面に折り曲げてカバー130とケース10とを一体化すれば、回転式電子部品1が完成する。なお上記組立手順はその一例であり、他の各種異なる組立手順を用いて組み立てても良いことはいうまでもない。
【0032】
そして回転体50を回転すれば、摺動子80がフレキシブル回路基板30の摺接パターン31上を摺動し、各端子板45間の電気的出力が変化する。回転体50の回転は、回転体50のストッパ部58がカバー130のストッパ当接部138に当接することで制限される。
【0033】
以上説明したようにこの回転式電子部品1は、回転体収納凹部13を有するケース10と、ケース10の回転体収納凹部13内に収納される回転体本体部51の上面から軸部53を突出してなる回転体50と、回転体本体部51を収納したケース10の上部を覆うカバー130と、ケース10の回転体収納凹部13の内底面(この例ではケース10にインサート成形したフレキシブル回路基板30の表面)と回転体本体部51の間に設置され回転体本体部51の回転によって出力(電気的出力)を変化する検出手段(摺動子80と摺接パターン31)とを具備し、カバー130を、回転体50の軸部53を回動自在に軸支する軸支部135を設けてなる上面板131と、上面板131の外周辺の部分を下方に折り曲げて形成される互いに対向する一対の側面板133とを具備して構成し、一方ケース10の回転体収納凹部13の周囲に設けた側壁部15の内、カバー130の一対の側面板133に覆われる一対の側壁部15の回転体本体部51の外周面に対向する位置に、側壁部15を貫通する側壁貫通部23を設けている。
【0034】
そしてこの回転式電子部品1は上記構成、即ちケース10の一対の側壁部15に側壁貫通部23を設けたので、これに対向している回転体本体部51の外径寸法をその分大きくでき、ケース10の回転体収納凹部13の内底面と回転体本体部51の間の検出手段(摺接パターン31と摺動子80)を配置する空間を広くでき、検出手段の機能をより高度化・複雑化することができる。即ちケース10の回転体収納凹部13の底面に設ける摺接パターン31と、回転体本体部51の下面に取り付けて摺接パターン31に摺接する摺動子80とによって検出手段を構成した場合、摺接パターン31の形成面を大きくすることができ、同時に外径寸法を大きくした回転体本体部51の下面に取り付ける摺動子80の外径寸法も大きくでき、その分摺接パターン31からの出力(電気的出力)の分解能を向上させることができ、また同心円状の複数本の摺接パターン31の本数をこの例のように増加させる(4本にする)ことも可能になる。逆に言い換えれば、回転式電子部品1の小型化が図れる。
【0035】
またこの回転式電子部品1によれば、カバー130の一対の側面板133のケース10の側壁貫通部23を覆う位置に、これら側面板133の一部を外方向に向けて突出変形させることで回転体本体部逃げ部147を形成している。このようにケース10の一対の側壁部15に側壁貫通部23を設けた上に、さらにカバー130の側面板133に回転体本体部逃げ部147を形成したので、回転体本体部51の外径寸法をさらに大きくでき、ケース10の回転体収納凹部13の内底面と回転体本体部51の間の検出手段を配置する空間をさらに広くでき、検出手段の機能をさらに高度化・複雑化することができる。逆に言い換えれば、回転式電子部品1のさらなる小型化が図れる。さらにこの回転体本体部逃げ部147は側面板133を覆っているので(貫通孔ではないので)、端子板45を図示しない回路基板に半田付けする場合に半田のフラックスがこの回転体本体部逃げ部147からカバー130の内部に入り込まないばかりか、側面板133自体の強度を強く維持できてカバー130に設けた他部材取付部141のバネ性を強く維持できる。
【0036】
またこの回転式電子部品1は、回転体本体部51の外周のケース載置部55を、ケース10の回転体収納凹部13の周囲に設けた回転体載置部25上に載置することで、ケース10の回転体収納凹部13の内底面に対向する回転体本体部51の面全体をこの内底面から離間して設置している。これによって回転体50はカバー130に設けた軸支部135の部分のみで軸支されるので、回転体50を2か所で軸支する場合に生じる回転体回転時のトルクムラを防止できる。また検出手段の近傍部分で合成樹脂同士が摺接することがないので、静電気が検出手段へ侵入せず、ノイズの発生を防止できる。また回転体本体部51のケース載置部55を、ケース10の回転体載置部25上に載置するので、回転体50をその上側から押圧した時の押圧破壊防止強度を容易に強く維持することができる。
【0037】
またこの回転式電子部品1は、成形樹脂製の回転体50の軸部53の少なくともカバー130の軸支部135によって軸支されている内部の部分を中空(横断面リング形状)としたので、軸部53の横断面における各部の厚みを全周にわたってほぼ均等に薄くすることができる。このため金型による回転体50の成型時に、加熱溶融した合成樹脂が金型内で収縮する際の収縮量を小さくすることができ、同時に各部の収縮量を均等にすることができる。このため軸部53の表面が硬化時に縮むことによって生じる凹み(いわゆる「ヒケ」)を防止でき、軸真円度を向上することができる。これによって回転体50の回転時のトルクムラを防止できる。また回転体50の回転時のトルクを最適なトルクに維持でき、回転しにくくなったり、逆にがたつきが生じたりすることも防止できる。
【0038】
またこの回転式電子部品1は、帯状(直線状)のクリック板100をカバー130の上面板131の側面板133,133を設けていない一辺に沿うようにこの一辺側の下面に設置し、従来のようにクリック板をリング状に形成して軸部53を囲むように設置していないので、側面板133,133間の幅寸法が小さくなっても、クリック板100を設置することを原因として回転体本体部51のカバー当接部57の直径を小さくする必要はなくなり、カバー当接部57の幅寸法L2を大きく保てる。カバー当接部57はカバー130の上面板131の下面に当接して回転体50の上方向への抜けを防止する部分なので、上記構成によって回転体50の抜け防止強度を強く維持できる。また側面板133,133間の幅寸法が小さくなってもクリック板100の幅寸法を小さくする必要がないので、クリック板100の強度を強く保てる。
【0039】
またこの回転式電子部品1は、カバー130が金属製であり、一方回転体本体部51上面の軸部53を突出した周囲に、カバー130の上面板131の下面の軸支部135の周囲に当接するカバー当接部57を設け、さらにカバー130の上面板131の下面に、回転体本体部51のケース載置部55の上面に形成したクリック部59に弾接してクリック感触を生ずる金属製のクリック板100を設置している。このように金属製のクリック板100を金属製のカバー130に電気的に接続した状態で取り付けるので、クリック板100の近傍に位置している、回転体50のケース載置部55とケース10の回転体載置部25との間の摺動部分によって生じる静電気はクリック板100に入り込み易くなる。このため静電気が検出手段へ侵入することをさらに確実に防止でき、ノイズの発生をさらに確実に予防できる。
【0040】
図8は回転式電子部品1に用いる他のカバー130−2の斜視図である。同図において前記カバー130と同一部分には同一符号(但し符号「−2」を付する)を付してその詳細な説明は省略する。同図に示すカバー130−2において前記カバー130と相違する点は回転体本体部逃げ部147−2の部分の構造のみである。即ちカバー130−2の回転体本体部逃げ部147−2は、側面板133−2の一部(ケース10の側壁貫通部23に対向する部分)に略矩形状の貫通孔を設けることで形成されている。このように回転体本体部逃げ部147−2を形成しても、前記カバー130の回転体本体部逃げ部147の場合と同様の効果、即ち回転体本体部51の外径寸法をさらに大きくできて検出手段を配置する空間をさらに広くでき、検出手段の機能をさらに高度化・複雑化することができ、逆に言い換えれば回転式電子部品1のさらなる小型化が図れるという効果を生じる。また貫通孔を設けるだけなので、その加工は前記回転体本体部逃げ部147よりも容易に行える。
【0041】
ところで上記各例では、ケース10に側壁貫通部23を設けるとともに、カバー130(130−2)にも回転体本体部逃げ部147(147−2)を設け、これによって回転体本体部51の外径寸法を大きくできるように構成したが、本発明は、ケース10に側壁貫通部23を設けるだけで、必ずしもカバー130に回転体本体部逃げ部147を設けなくてもよい。図9は回転式電子部品1に用いる他のカバー130−3の斜視図である。同図において前記カバー130と同一部分には同一符号(但し符号「−3」を付する)を付してその詳細な説明は省略する。同図に示すカバー130−3において前記カバー130と相違する点は回転体本体部逃げ部147を形成していない点のみである。このように回転体本体部逃げ部147を形成しない場合でも、ケース10に側壁貫通部23を設けた寸法だけ回転体本体部51の外径寸法を大きくすることができ、本発明の効果を発揮できる。もちろんカバー130に回転体本体部逃げ部147を設けた場合は、回転体本体部51の外周をカバー130の側面板133の内部まで(さらには側面板133を貫通してその外側まで)突出できるので、回転体本体部51の外径寸法をより大きくでき、本発明の効果をより効果的に発揮できることは言うまでもない。
【0042】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば上記実施形態ではケース10にインサート成形する回路基板としてフレキシブル回路基板30を用いたが、フレキシブル回路基板30の代りに硬質の回路基板を用いても良い。またケース10に回路基板をインサート成形する代わりに、金属板をその表面がケース10の回転体収納凹部13の内底面に露出するようにインサート成形し、金属板の表面を直接摺接パターンとしても良い。また検出手段は上記構造に限られず、例えばケース10側に摺動子を固定し、回転体50側に摺動子が摺接する摺接パターンを形成する構造等でも良く、また磁気的な検出手段や電気容量的な検出手段や光学的な検出手段などでもよい。要は回転体50の回転によって出力を変化する検出手段であればどのような構造であっても良い。また端子板45は必ずしも設置しなくても良い。
【0043】
また前記回転式電子部品1のカバー130において、側面板133の折り曲げを容易にするためにスリット状の開口部145を設けているが、この開口部145は省略してもよい。
【0044】
また上記例では、クリック板100を直線状の帯状としたが、曲線状(例えば円弧状)の帯状としても良く、要は帯状であってカバー130の上面板131の側面板133,133を設けていない一辺側の下面に設置できる形状・寸法であればよい。
【0045】
また上記例では、回転体50の軸部53のカバー130の軸支部135によって軸支されている内部の部分に横断面円形の中空部67を設けることで横断面リング形状に形成したが、中空部67の形状は図12(a)に示すこの実施形態のように、その横断面が円形のものに限られず、図12(b),(c),(d)に示すように、その横断面が四角形状,五角形状,六角形状等の多角形状等、他の各種形状でも良く、要は横断面リング形状となるものであればどのような形状であっても良い。
【0046】
また前記回転式電子部品1のケース10に設ける側壁貫通部23は、側壁部15の上辺を凹状に凹ませることで構成しているが、凹部の代わりに貫通口で構成してもよい。即ち要は側壁貫通部23は、カバー130の一対の側面板133に覆われる一対の側壁部15の回転体本体部51の外周面に対向する位置に設けられ、且つ側壁部15を貫通するものであれば、凹部でも貫通孔でもその他のどのような形状・構造であっても良い。
【符号の説明】
【0047】
1 回転式電子部品
10 ケース
13 回転体収納凹部
15 側壁部
23 側壁貫通部
25 回転体載置部
31 摺接パターン(検出手段)
50 回転体
51 回転体本体部
53 軸部
55 ケース載置部
57 カバー当接部
59 クリック部
67 中空部
80 摺動子(検出手段)
100 クリック板
130 カバー
131 上面板
133 側面板
135 軸支部
147 回転体本体部逃げ部
147−2 回転体本体部逃げ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体収納凹部を有するケースと、前記ケースの回転体収納凹部内に収納される回転体本体部の上面から軸部を突出してなる回転体と、前記回転体本体部を収納したケースの上部を覆うカバーと、前記ケースの回転体収納凹部の内底面と回転体本体部の間に設置され回転体本体部の回転によって出力を変化する検出手段とを具備する回転式電子部品において、
前記カバーは、前記回転体の軸部を回動自在に軸支する軸支部を設けてなる上面板と、上面板の外周辺の部分を下方に折り曲げて形成される互いに対向する一対の側面板とを具備して構成されており、
一方前記ケースの回転体収納凹部の周囲に設けた側壁部の内、前記カバーの一対の側面板に覆われる一対の側壁部の前記回転体本体部の外周面に対向する位置に、側壁部を貫通する側壁貫通部を設けたことを特徴とする回転式電子部品。
【請求項2】
請求項1に記載の回転式電子部品において、
前記カバーの一対の側面板の前記ケースの側壁貫通部を覆う位置に、これら側面板の一部を外方向に向けて突出変形させるか或いは貫通孔を設けることで回転体本体部逃げ部を形成したことを特徴とする回転式電子部品。
【請求項3】
請求項2に記載の回転式電子部品において、
前記回転体本体部の外周のケース載置部を、前記ケースの回転体収納凹部の周囲に設けた回転体載置部上に載置することで、前記ケースの回転体収納凹部の内底面に対向する前記回転体本体部の面全体をこの内底面から離間して設置したことを特徴とする回転式電子部品。
【請求項4】
請求項3に記載の回転式電子部品において、
前記回転体は成形樹脂製であって、その軸部の少なくとも前記カバーの軸支部によって軸支されている内部の部分を中空とすることで横断面リング形状に形成したことを特徴とする回転式電子部品。
【請求項5】
請求項4に記載の回転式電子部品において、
前記カバーは金属製であり、一方前記回転体本体部上面の軸部を突出した周囲に、前記カバーの上面板の下面の軸支部の周囲に当接するカバー当接部を設け、
さらに前記カバーの上面板の下面に、前記回転体本体部のケース載置部の上面に形成したクリック部に弾接してクリック感触を生ずる金属製のクリック板を設置し、このクリック板は帯状であって、前記カバーの上面板の前記側面板を設けていない一辺側の下面に電気的に接続した状態で取り付けられることを特徴とする回転式電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−138483(P2012−138483A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290189(P2010−290189)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000215833)帝国通信工業株式会社 (262)
【Fターム(参考)】